【解決手段】基板の製造方法が提供される。この製造方法は、研磨パッドをパッドドレッシングする工程(a)と;前記パッドドレッシングされた研磨パッドおよび研磨液を用いてダミー研磨する工程(b)と;研磨対象基板を研磨する工程(c)と;を含む。前記研磨液は、コロイダルシリカ砥粒とパッド表面調整剤とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0011】
<基板の製造方法>
ここに開示される技術は、基板を製造する方法を包含する。この製造方法は、研磨パッドをパッドドレッシングする工程(a)と;前記パッドドレッシングされた研磨パッドおよび研磨液を用いてダミー研磨する工程(b)と;研磨対象基板を研磨する工程(c)と;を含む。
【0012】
(基板)
ここに開示される研磨方法において、被研磨物となる基板は特に限定されない。例えば、磁気ディスク基板や、シリコンウエハ等の半導体基板のように、高精度な表面が要求される各種基板の製造に適用され得る。好ましい適用対象として、基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板(Ni−P基板)が例示される。上記基材ディスクは、例えば、アルミニウム合金製、ガラス製等であり得る。このような基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層以外の金属層または金属化合物層を備えたディスク基板であってもよい。なかでも好ましい適用対象として、アルミニウム合金製の基材ディスク上にニッケルリンめっき層を有するNi−P基板が挙げられる。
【0013】
(研磨パッド)
ここに開示される方法に用いられる研磨パッドは、全体が発泡ポリウレタンにより構成されているパッド、発泡ポリウレタンの層が不織布等のパッド基材に支持されたパッド等のポリウレタン製研磨パッドであり得る。研磨パッドは、スウェードタイプのバフパッドであってもよいが、典型的には、表面をバフ加工していないノンバフ状態にある研磨パッド(いわゆるノンバフパッド)を用いることが好ましい。バフ加工とは、砥石等を利用し、表面を荒削りする処理であって、典型的には研磨パッドの表層部分を除去してポアの開口径や開口率を調整する処理のことをいう。発泡ポリウレタンとしては、例えば特開2005−335028号公報に記載されているような、湿式成膜法で形成されたスウェードタイプと呼ばれるものが好ましく用いられる。
【0014】
(工程(a))
工程(a)において、上記研磨パッドはパッドドレッシング処理される。この工程(a)は、典型的には、該研磨パッドが研磨装置に装着された状態で行われる。研磨装置としては、研磨パッドを用いる研磨の分野において公知の各種片面研磨装置、両面研磨装置等を用いることができ、特に限定されない。工程(a)は、このような研磨装置の定盤に研磨パッドが、例えば粘着テープや接着剤等を用いて固定された状態で好ましく実施され得る。
【0015】
パッドドレッシングは、公知の材料や条件を適用して行うことができる。好ましい一態様では、パッドドレッシングは、研磨装置の定盤に固定されている研磨パッドに対し、ステンレススチール等の金属からなる基材の表面に電着または焼結によりダイヤモンド粉末を固定させたパッドコンディショナー(パッドドレッサーとも呼ぶ。)を用いて、研磨パッドの表層を削りとる処理(典型的にはダイヤモンドドレッシング処理)であり得る。パッドコンディショナーとしては、例えば特開2003−117823号公報に記載されているパッドコンディショナーが挙げられる。
【0016】
パッドドレッシングは、典型的には、上記研磨パッドの表層を、2μm以上削りとるか、あるいは研磨パッドの発泡部分(ポア)が2μm以上(通常は5μm以上40μm以下)の平均開口径で表面に現れるまで削りとるように行われる。平均開口径が例えば40μmより大きいと、研磨パッドと基板との接触部分に圧力集中が起こりやすくなり、研磨基板表面の微小うねりが増大してしまう場合がある。
なお、研磨パッド表面の平均開口径は、走査電子顕微鏡(SEM)写真の画像解析によって求められる。具体的には、写真1枚当たりポアが10〜150個観察されるように倍率を調整し、50個以上のポアの開口径を測定し、その平均値を採用すればよい。上記平均開口径は、例えば150μm×250μmの区画内に存在するポアの平均開口径であり得る。
【0017】
パッドドレッシングは、例えば1〜1.5L/分程度のレートで水を供給して行うとよい。水の供給量は、研磨パッド表面の単位面積(m
2)当たり3.5〜5.5L/分・m
2とすることが好ましい。パッドドレッシングの後、パッドの削り屑を除去するために、高圧ジェットまたはブラシドレス等で洗浄を行ってもよい。
【0018】
パッドドレッシングは、条件(a):平均開口径(μm)×ポア数(個)/写真面積(μm
2)≦0.4;を満たすように行うことが好ましい。上記条件(a)を満たさない場合、研磨パッドの表面状態よりも、パッド形状の影響を受けやすくなり、微小うねり低減効果が十分発揮されない場合がある。
【0019】
また、パッドドレッシングは、条件(b):ポア密度が3.0×10
−3(個/μm
2)以上である;を満たすように行うことが好ましい。上記条件(b)を満たさない場合、研磨パッドの表面状態よりも、パッド形状の影響を受けやすくなり、微小うねり低減効果が十分発揮されない場合がある。なお、ポア密度は、上述のSEM写真の画像解析によって求められる。特に好ましい一態様では、パッドドレッシングは、上記条件(a)および(b)を満たすように行われる。
【0020】
なお、ここに開示される方法は、例えば、研磨パッドを研磨装置に装着する前に工程(a)を行い、その工程(a)を経た研磨パッドを研磨装置に装着して後述の工程(b)を行う態様で実施することも可能である。
【0021】
(工程(b))
上記工程(a)を行った後、パッドドレッシングされた研磨パッドおよび研磨液を用いてダミー研磨を行う(工程(b))。具体的には、工程(b)は、研磨装置にダミー基板をセットして、該研磨装置に研磨液を供給して、上記工程(a)を経た研磨パッドによりダミー基板を研磨する工程である。上記研磨は常法により行えばよい。例えば、工程(a)を経た研磨パッドが装着された研磨装置にダミー基板をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記ダミー基板の表面(被研磨面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、ダミー基板の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。ダミー基板としては、被研磨物となる基板と同種のものを別途用意し、これをダミー基板として用いればよい。研磨液については後述する。研磨液の供給速度は特に限定されないが、ダミー基板1枚当たり毎分3〜15mL供給されることが好ましい。
【0022】
工程(b)の時間は、特に限定されず、通常は所定の研磨レートが安定して得られるまで行われる。工程(b)は少なくとも20分以上(より好ましくは60分以上)行うことが好ましい。ダミー研磨は通常、5分以上20分以下程度の時間内で行われる研磨を5回以上(好ましくは10回以上)繰り返す工程であり得る。ダミー 研磨時の温度は特に限定されないが、20〜35℃とすることが好ましい。
【0023】
(工程(c))
ここに開示される方法は、研磨対象基板を研磨する工程(c)をさらに含む。具体的には、工程(b)が終了すると、必要に応じて洗浄を行う等した後、ダミー基板を取り外し、研磨対象である基板を研磨装置にセットする。そして、研磨装置に研磨液を供給して、上記研磨パッドにより基板を研磨する。上記研磨は常法により行えばよい。例えば、上記研磨パッドが装着された研磨装置に研磨対象(被研磨物)としての基板をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記被研磨物の表面(被研磨面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、被研磨物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て被研磨物の研磨が完了する。その後、必要に応じて洗浄、乾燥等を行うことで、基板は製造され得る。
【0024】
工程(c)に使用される研磨液としては、基板の研磨に使用され得る各種研磨液を使用すればよく特に制限はない。上記研磨液は、典型的には、少なくとも砥粒および水を含む。研磨装置に供給される研磨液は、当初の研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)やpH調整等の操作を加えて調製された研磨液であり得る。あるいは、当初の研磨用組成物をそのまま研磨液として用いてもよい。工程(c)に使用される研磨液として、工程(b)の研磨液と異なる組成の研磨液を用いてもよいが、微小うねり低減の観点から、工程(c)に使用される研磨液として、工程(b)の研磨液と同種の研磨液を用いることが好ましい。
【0025】
<研磨用組成物>
次に、工程(b)に使用される研磨液(以下、研磨用組成物ともいう。)について説明する。この研磨液は、好ましくはさらに工程(c)に使用されるものであり得る。
【0026】
ここに開示される技術において使用される研磨用組成物は、コロイダルシリカ砥粒と、パッド表面調整剤と、を含む。この研磨液はまた、典型的には水を含む。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、蒸留水、純水等を用いることができる。
【0027】
(砥粒)
ここに開示される研磨用組成物は、コロイダルシリカ砥粒の1種または2種以上を含む。コロイダルシリカ砥粒の平均一次粒子径は、典型的には5nm以上、好ましくは10nm以上である。平均一次粒子径の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。上記砥粒の平均一次粒子径の上限は特に限定されない。より平滑性の高い表面を得る観点から、平均一次粒子径は、典型的には300nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。例えば、一次研磨を終えたNi−P基板を研磨する用途向けの研磨用組成物において、上記の平均一次粒子径を有する砥粒を好ましく採用し得る。小径のコロイダルシリカ砥粒はよりパッド表面に堆積しやすいと考えられることから、小径(例えば平均一次粒子径30nm以下)のコロイダルシリカ砥粒を含む態様において、後述のパッド表面調整剤を使用することの効果はよりよく発揮され得る。
【0028】
なお、砥粒の平均一次粒子径は、例えば、BET法により測定される比表面積S(m
2/g)から平均一次粒子径(nm)=2727/Sの式により算出することができる。砥粒の比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
【0029】
研磨用組成物中におけるコロイダルシリカ砥粒の平均二次粒子径は、典型的には10nm以上であり、通常は20nm超、好ましくは30nm超、より好ましくは40nm超、さらに好ましくは50nm超である。平均二次粒子径の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。上記砥粒の平均二次粒子径の上限は特に限定されず、例えば1μm以下であり得る。分散安定性等の観点から、平均二次粒子径は、通常は500nm以下が適当であり、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは110nm以下、特に好ましくは70nm以下である。さらに高品位の表面を得る観点から、平均二次粒子径は、例えば55nm以下であってもよい。
【0030】
この明細書において、砥粒の平均二次粒子径とは、超音波方式で測定される粒度分布における体積基準の平均粒子径(mean particle diameter)をいう。平均二次粒子径は、例えば、日本ルフト社製の超音波方式粒度分布・ゼータ電位測定装置(商品名「DT−1200」)を用いて測定することができる。
【0031】
研磨用組成物中におけるコロイダルシリカ砥粒の含有量(すなわちコロイダルシリカ砥粒の濃度)は、特に制限されない。上記コロイダルシリカ砥粒の濃度は、例えば30重量%以下とすることができ、通常は20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。また、上記砥粒の濃度は、1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは3重量%以上である。砥粒濃度が低すぎると、物理的な研磨作用が小さくなり、研磨速度が低下するため、実用上好ましくない場合がある。上記砥粒濃度は、被研磨物に供給される研磨液の砥粒濃度にも好ましく適用され得る。
【0032】
なお、ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、コロイダルシリカ砥粒以外の砥粒を含有してもよい。コロイダルシリカ砥粒以外の砥粒としては、例えばヒュームドシリカ砥粒、沈降性シリカ砥粒等のシリカ砥粒や、アルミナ砥粒、チタニア砥粒、ジルコニア砥粒、セリア砥粒等の金属酸化物砥粒、ポリアクリル酸等の樹脂砥粒等の非シリカ砥粒の1種または2種以上を使用することができる。これらコロイダルシリカ砥粒以外の砥粒の含有量は、コロイダルシリカ砥粒の含有量の100重量%(すなわち同量)未満であることが適当であり、好ましくは50重量%以下(例えば30重量%以下、典型的には10重量%以下)である。ここに開示される技術は、コロイダルシリカ砥粒以外の砥粒を実質的に含まない態様で実施することができる。
【0033】
(パッド表面調整剤)
ここに開示される研磨用組成物は、パッド表面調整剤を含むことによって特徴づけられる。研磨用組成物がパッド表面調整剤を含むことによって、基板の微小うねりは低減される。その理由を明らかにする必要はないが、例えば次のことが推察される。パッドドレッシング後の研磨パッドの表面は、平坦に削りとられることによって、気泡が開口してできたポアが多数存在し、毛羽立った部分(ナップ)も存在している状態となっている。このような表面状態の研磨パッドに対しダミー研磨を行うことで、毛羽立った部分(ナップ)は除去され、上記表面状態は整えられる。これにより、研磨パッド表面は、基板表面を均一にかつ好適なレートで研磨するうえで好ましい状態となり、微小うねりを低減するうえでも望ましい状態になると考えられる。上記のような表面状態を表面全体において均一に維持しながらパッド表面が摩耗し除去されていけば、微小うねりの低減は理想的に実現され得ると考えられる。しかし、コロイダルシリカ砥粒を用いる態様では、コロイダルシリカが研磨中にパッド表面に吸着して、シリカコーティングともいうべき硬質薄膜となり、これがパッド表面を微細なレベルで不均一な状態にしていることが判明した。より具体的には、通常であれば研磨において除去されていくべき部分が上記硬質被膜で覆われるために均一に除去されずポアを覆うように残存していると推察される。実際に、コロイダルシリカ砥粒を用いた従来の研磨後のパッド表面では、ポア開口の減少が認められており、上記推察を支持している。ここに開示されるパッド表面調整剤は、コロイダルシリカの吸着を阻止するようにパッド表面の状態を良好に調整するものである。具体的には、パッドドレッシングに続くダミー研磨工程において、コロイダルシリカのパッド表面への吸着を阻止し、シリカコーティングの発生を抑制することで、パッド表面の微細な不均一化を防止し、微小うねり低減の実現に寄与する。
【0034】
パッド表面調整剤としては、研磨液中において上記の機能を発揮し得るものであればよく、その限りにおいて特に制限はない。パッド表面調整剤としては、例えばスルホン酸系化合物等の有機化合物から選択され得る。なお、ここでいうスルホン酸系化合物の概念には、スルホン酸系化合物およびその塩が包含される。具体的には、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸等のスルホン酸系化合物、その塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩)等から選択され得る。なかでも、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のナフタレンスルホン酸系化合物およびその塩が好ましく、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩がより好ましい。
【0035】
パッド表面調整剤の分子量は特に限定されないが、コロイダルシリカのパッド表面への吸着を十分に阻止する観点から、凡そ400以上(例えば1000以上、典型的には1500以上)であることが好ましく、30万以下であることが適当であり、好ましくは5万以下(例えば9000以下、典型的には5000以下)である。なお、この明細書において分子量とは、構造式から求められる分子量または重量平均分子量(標準ポリスチレン基準)を指す。
【0036】
パッド表面調整剤の含有量は、コロイダルシリカのパッド表面への吸着を十分に阻止する観点から、0.001重量%以上とすることが適当であり、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.02重量%以上である。また、上記と同様の理由から、上記含有量は10重量%以下とすることが適当であり、好ましくは5重量%以下、例えば1重量%以下である。
【0037】
(分散剤)
研磨用組成物は、分散安定性向上等の目的で、水溶性ポリマー(典型的にはアニオン性水溶性ポリマー)等の分散剤を含んでもよい。分散剤としては、例えばポリスチレンスルホン酸およびその塩等が挙げられる。上記ポリスチレンスルホン酸系化合物の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。分散剤の他の例として、ポリアクリル酸およびその塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)等が挙げられる。分散剤を使用することで、パッド表面調整剤の効果がよりよく発揮され得る。
【0038】
上記水溶性ポリマーの分子量は、分散安定性向上効果を十分に発揮する観点から、凡そ1万以上(例えば5万超)であることが適当である。上記分子量の上限は特に限定されないが、凡そ80万以下(例えば60万以下、典型的には30万以下)程度であり得る。
【0039】
分散剤を含む態様の研磨用組成物では、分散剤の含有量を、例えば0.001重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の表面の平滑性等の観点から、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.02重量%以上である。また、上記含有量は通常、10重量%以下とすることが適当であり、好ましくは5重量%以下、例えば1重量%以下である。
【0040】
(アニオン性界面活性剤)
ここに開示される研磨用組成物は、アニオン性界面活性剤を含んでもよい。上記アニオン性界面活性剤は、典型的には分散剤と比べて比較的低分子量の化合物である。アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0041】
アニオン性界面活性剤を含む態様の研磨用組成物では、アニオン性界面活性剤の含有量を、例えば0.001重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の表面の平滑性等の観点から、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.02重量%以上である。また、上記含有量は通常、10重量%以下とすることが適当であり、好ましくは5重量%以下、例えば1重量%以下である。
【0042】
(酸または塩)
研磨用組成物は、砥粒および水の他に、研磨促進剤として、酸または塩を含有することが好ましい。ここで、酸または塩を含むとは、酸および塩の少なくとも一方を含むことを指し、酸を含み塩を含まない態様、塩を含み酸を含まない態様、および酸と塩の両方を含む態様、のいずれをも包含する意味である。
【0043】
酸の例としては、無機酸や有機酸(例えば、炭素原子数が1〜10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸等)が挙げられるが、これらに限定されない。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機酸の具体例としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホウ酸等が挙げられる。
有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、クロトン酸、ニコチン酸、酢酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グリコール酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、イソクエン酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ニコチン酸、ピコリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0044】
塩の例としては、上述した無機酸または有機酸の金属塩、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;上述した無機酸または有機酸のアンモニウム塩、例えばテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩;上述した無機酸または有機酸のアルカノールアミン塩、例えばモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩;等が挙げられる。
上述した無機酸または有機酸の金属塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;等が挙げられる。
その他、塩の例としては、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩(例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等。以下同じ。)、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。例えば、L−グルタミン酸二酢酸四ナトリウムを好ましく使用し得る。塩は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
ここに開示される技術は、リン酸を有する酸または塩を含む研磨液を用いる態様で好ましく実施され得る。パッド表面調整剤は、リン酸を介したコロイダルシリカの凝集を抑制し、パッド表面へのコロイダルシリカの吸着を好適に阻止し得る。なお、ここに開示される技術は、硫酸、有機ホスホン酸(例えば1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸)の少なくとも1種(例えば両方)を実質的に含まない態様でも好ましく実施することができる。
【0046】
このような酸または塩は、典型的には後述する酸化剤と合わせて用いられることにより、研磨促進剤として効果的に作用し得る。研磨効率の観点から好ましい酸として、メタンスルホン酸、硫酸、硝酸、リン酸、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等が例示される。なかでも好ましい酸として、メタンスルホン酸、クエン酸およびリン酸が挙げられる。研磨効率の観点から好ましい塩として、リン酸塩やリン酸水素塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0047】
研磨用組成物中に酸または塩を含む場合、その含有量は、0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上である。酸または塩の含有量が少なすぎると、研磨速度が低下し、実用上好ましくない場合がある。また、研磨用組成物中に酸または塩を含む場合、その含有量は、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下である。酸または塩の含有量が多すぎると、研磨対象物の表面精度が悪くなり、実用上好ましくない場合がある。
【0048】
(酸化剤)
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒および水の他に、研磨促進剤として、酸化剤を含有することが好ましい。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
【0049】
研磨用組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3重量%以上である。酸化剤の含有量が少なすぎると、研磨対象物を酸化する速度が遅くなり、研磨速度が低下するため、実用上好ましくない場合がある。また、研磨用組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、3重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5重量%以下である。酸化剤の含有量が多すぎると、研磨対象物の表面精度が悪くなったり、コストの点等から実用上好ましくない場合がある。
【0050】
(塩基性化合物)
研磨用組成物には、塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。例えば、アルカリ金属の水酸化物、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウムが挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等のアンモニウム塩が挙げられる。
【0052】
(イオン強度)
特に限定するものではないが、好ましい一態様に係る研磨用組成物は、砥粒含有量が6重量%となる濃度におけるイオン強度が0.150mol/L以下であり得る。イオン強度が0.150mol/L以下である研磨用組成物は、コロイダルシリカの分散安定性に優れる傾向がある。かかる観点から、イオン強度が0.110mol/L未満である研磨用組成物がさらに好ましい。イオン強度の下限は特に限定されず、研磨用組成物を所望のpHに調整できればよい。研磨速度の向上の観点から、通常は、イオン強度が0.01mol/L以上であることが好ましく、0.02mol/L以上であることがより好ましく、0.03mol/L以上であることがさらに好ましい。
【0053】
本明細書中においてイオン強度とは、研磨用組成物の砥粒含有量が6重量%となる濃度において、該研磨用組成物中の全てのイオンについて下記式(1)により算出される値をいう。目的とする研磨用組成物の砥粒含有量が6重量%とは異なる場合には、水の量を増減することにより砥粒含有量6重量%に濃度調整した場合における研磨用組成物についてイオン強度を算出する。
【0055】
ここで、式(1)中のIは、イオン強度[mol/L]を表す。m
iは、各イオンのモル濃度[mol/L]を表す。z
iは、各イオンの電荷(価数)を表す。各イオンのモル濃度は、イオン強度の算出に係る研磨用組成物のpH域において解離する(イオン化する)各物質のイオン量(割合)から算出される。例えば、砥粒含有量6重量%に調製された研磨用組成物中に1mol/Lの濃度で含まれる物質Aが、そのpH域において50%しかイオン化しない場合、イオン強度に反映させるモル濃度は0.5mol/Lとなる。
【0056】
イオン強度の算出に係る研磨用組成物(すなわち、砥粒含有量が6重量%となるように必要に応じて濃度調整を行った研磨用組成物)のpH域で解離している各物質のイオン量(割合)は、各物質の解離定数(電離定数、酸解離定数)によって求めることができる。
例えば、研磨用組成物中でA
−とH
+に解離する物質AHの酸解離定数がpKaであり、上記物質AHが研磨用組成物中に1.0mol/L含まれており、その研磨用組成物のpHが3である場合には、A
−の濃度m
Aは、(10
−pKa×1.0[mol/L])/1.0×10
−3の式で求められる。
研磨用組成物に塩を添加する場合には、その塩のカウンターイオンのモル濃度によってイオン強度を算出する。例えば、研磨用組成物中でA
−とB
+に解離する物質ABについては、研磨用組成物中AHまたはBOHについては、分けてイオン強度を算出する。
また、研磨用組成物中で一段階以上の多段階の解離をする物質を含む研磨用組成物においては、それぞれの段階で解離しているイオンについてイオン強度を求める。
なお、イオン強度の算出は、研磨用組成物の温度が25℃である場合について行うものとする。
【0057】
研磨用組成物のイオン強度は、例えば、該組成物に含まれるイオン性化合物の種類および使用量(濃度)により調節することができる。上記イオン性化合物としては、上述した研磨促進剤や塩基性化合物として機能する化合物を利用し得る。これら以外のイオン性化合物を用いてイオン強度を調節してもよい。
【0058】
(その他の成分)
研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤や防腐剤等の、研磨用組成物(典型的には、Ni−P基板等のような磁気ディスク基板の研磨に用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0059】
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸およびα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
【0060】
上述のような研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で被研磨物(例えば磁気ディスク基板)に供給されて、該被研磨物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、研磨用組成物を希釈して調製されたものであり得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、被研磨物に供給される研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。
【0061】
研磨用組成物は、被研磨物に供給される前には濃縮された形態(濃縮液の形態)であってもよい。かかる濃縮液の形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍〜50倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、通常は、2倍〜20倍(典型的には2倍〜10倍)程度の濃縮倍率が適当である。
このように濃縮液の形態にある研磨用組成物は、所望のタイミングで希釈して研磨液を調製し、その研磨液を被研磨物に供給する態様で好適に使用することができる。
【0062】
研磨用組成物のpHは特に限定されない。例えば、研磨レートや表面平滑性等の観点から、pH4以下が好ましく、pH3以下がより好ましい。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、Ni−Pの研磨に用いられる研磨液に好ましく適用され得る。
【0063】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0064】
<実施例および比較例>
(研磨液の調製)
砥粒、パッド表面調整剤、酸または塩、塩基性化合物、31%過酸化水素水およびイオン交換水を混合して、表1に示す組成および性質を有する研磨液1〜8を調製した。酸または塩、塩基性化合物の使用量は、研磨液のイオン強度を見ながら適宜調整した。表1中、「−」は不使用を意味する。また、GLDA4NaはL−グルタミン酸二酢酸四ナトリウムの略称である。
【0066】
(パッドドレッシング)
研磨パッドとして、ポリウレタン製でスウェードタイプのノンバフパッドを用意した。上記研磨パッドのサイズは、外径640mm、内径232mmのドーナツ盤状であり、したがって研磨面の面積は2792cm
2である。上記研磨パッド2枚を、両面研磨装置(スピードファム社製「9B−5P」)の上定盤と下定盤に各1枚ずつ固定した。ダイヤモンドドレッサーを2枚/キャリア×5キャリア(計10枚)装填し、1〜1.5L/分のレートでイオン交換水を供給しながら、研磨パッドの研磨面に対してパッドドレッシングを行った。
【0067】
(ダミー研磨)
次いで、上記研磨パッドが引き続き定盤に固定された状態で、該研磨パッドの研磨面に高圧ジェット水流を吹き付けて洗浄した。そして、上記両面研磨装置にダミー基板をセットし、表2に示す研磨液を用いて下記の条件でダミー研磨を行った。
ダミー基板としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えた直径3.5インチ(約95mm)、厚さ1.27mmのハードディスク用アルミニウム基板を用いた。
[ダミー研磨条件]
研磨荷重:120g/cm
2
基板装填枚数:2枚/キャリア×4キャリア(計8枚)
下定盤回転数:60rpm
研磨液の供給レート:83mL/分
研磨時間:5分
研磨回数:12回
【0068】
(研磨対象基板の研磨:本研磨)
ダミー研磨終了後、ダミー基板を取り外し、研磨対象基板をセットした。研磨対象基板としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えた直径3.5インチ(約95mm)、厚さ1.27mmのハードディスク用アルミニウム基板を、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Åとなるように予備研磨したものを使用した。表2に示す研磨液を用いて下記の条件で研磨対象基板を研磨した。
[研磨条件]
研磨荷重:120g/cm
2
基板装填枚数:2枚/キャリア×4キャリア(計8枚)
下定盤回転数:60rpm
研磨液の供給レート:83mL/分
研磨時間:5分
【0069】
<評価>
[毛羽立ち]
パッドドレッシングを終えた後の研磨パッド表面およびダミー研磨を終えた後の研磨パッド表面について、SEMで観察を行い、以下の2水準で評価した。結果を表2に示す。
〇:パッドドレッシング後に存在していたパッド表面の毛羽立ちが、ダミー研磨後には除去されていた。
×:パッドドレッシング後に存在していたパッド表面の毛羽立ちが、ダミー研磨後にも除去されていなかった。
【0070】
[ポア開口率]
研磨対象基板の研磨を終えた後の研磨パッド表面につき、SEMで観察を行い、以下の2水準で評価した。結果を表2に示す。
〇:パッド表面に十分数のポアが認められた。すなわち気泡が十分に開口していた。
×:パッド表面のポアが塞がれており、開口状態は十分でなく、表面がコロイダルシリカによって覆われていた。
【0071】
[微小うねり]
各実施例および各比較例に係る基板(研磨後の研磨対象基板)2枚の表裏、計4面につき、非接触表面形状測定機(商品名「NewView」、Zygo社製)を用いて、レンズ倍率2.5倍、ズーム倍率0.5倍、バンドパスフィルターを80〜500μmの条件で微小うねりを測定した。研磨後の基板の中心から径方向外側に37mmの位置に対し、90°ずつ4ヵ所を測定し、その平均値を微小うねり値(Å)として求めた。結果を表2に示す。
【0073】
表2に示されるように、ダミー研磨工程で用いるダミー研磨用組成物として、コロイダルシリカ砥粒を含む研磨液にパッド表面調整剤を含ませたものを用いた実施例1〜5では、パッド表面は十分に開口し、基板表面の微小うねりを有意に低減することができた。一方、ダミー研磨工程で用いるダミー研磨用組成物として、パッド表面調整剤を含まない研磨液を用いた比較例1〜4、パッド表面調整剤の機能を持たない分散剤を含む研磨液を用いた比較例5、6では、パッド表面の毛羽立ちは除去されず、パッド表面は十分に開口せず、実施例1〜5と比べて微小うねりは高い値を示した。これらの結果から、コロイダルシリカ砥粒を含む研磨液にパッド表面調整剤を含ませた研磨液を、ダミー研磨工程で用いるダミー研磨用組成物として用いることで、微小うねりを低減し得ることがわかる。
【0074】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。