【解決手段】リチウムイオン二次電池電極用合剤は、電極用活物質、導電助剤、ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体からなるバインダー、及び分散助剤を含む。ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体は、例えば、ビニルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸エステルとを共重合させて得られた共重合体を、アルカリ金属を含むアルカリの存在下、水性有機溶媒と水の混合溶媒中でケン化することによって得ることができる。
電極用活物質、導電助剤、ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体からなるバインダー、及び分散助剤を含むリチウムイオン二次電池電極用合剤。
前記分散助剤は、ヒドロキシル基、アミノ基及びイミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の置換基と、カルボキシル基とを含む有機酸、又はフミン酸である請求項1記載のリチウムイオン二次電池電極用合剤。
前記ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との前記共重合体において、ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物とのモル比が9/1〜1/9である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池電極用合剤。
前記エチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物は、アクリル酸アルカリ金属中和物またはメタクリル酸アルカリ金属中和物である、請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池電極用合剤。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のリチウムイオン二次電池電極用合剤は、正極または負極用活物質、導電助剤、バインダーとしてのビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体、および分散助剤を含んでいることを特徴とする。
【0022】
(実施形態1)
<バインダー>
本実施形態においてバインダーとして用いられるビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体とは、モノマーとしてビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物とを含む共重合体のことである。ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体は、例えば、ビニルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸エステルとを共重合させて得られた共重合体を、アルカリ金属を含むアルカリの存在下、水性有機溶媒と水の混合溶媒中でケン化することによって得ることができる。すなわち、ビニルアルコール自体は不安定であるため直接モノマーとして使用することはできないが、ビニルエステルをモノマーとして使用して得られた重合体をケン化することにより、生成された重合体は結果としてビニルアルコールをモノマーとして重合させた態様となるのである。
【0023】
前記ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、ケン化反応が進行しやすい観点から酢酸ビニルが好ましい。これらのビニルエステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
前記エチレン性不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸およびメタクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、iso−プロピルエステル、n−ブチルエステル、t−ブチルエステルなどが挙げられるが、ケン化反応が進行しやすい観点からアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルが好ましい。これらのエチレン性不飽和カルボン酸エステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
また、必要に応じてビニルエステル、エチレン性不飽和カルボン酸エステルと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体や架橋剤を共重合することも可能である。
【0026】
本実施形態におけるケン化反応の一例として、酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体が水酸化カリウム(KOH)により100%ケン化されたときのケン化反応を以下に示す。
【0028】
なお、上に示すように本実施形態に係るビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体は、ビニルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸エステルをランダム共重合させて、モノマー由来のエステル部分をケン化させた物質であり、モノマー同士の結合はC−C共有結合である(以下、ビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体ケン化物と記載する場合がある。)。
【0029】
本実施形態のビニルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体においては、ビニルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸エステルのモル比は、9/1〜1/9が好ましく、8/2〜2/8がより好ましい。9/1〜1/9の範囲を逸脱するとケン化後得られる重合体は、バインダーとしての保持力が不足するおそれがあるため好ましくない場合がある。
【0030】
したがって、得られるビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との前記共重合体において、共重合組成比はモル比で9/1〜1/9が好ましく、8/2〜2/8がより好ましい。
【0031】
エチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物としては、優れた結着性を示す点から、アクリル酸アルカリ金属中和物またはメタアクリル酸アルカリ金属中和物が好ましく、アクリル酸ナトリウムまたはメタアクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0032】
ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の前駆体であるビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体は、粉末状で共重合体が得られる観点から、重合触媒を含む分散剤水溶液中にビニルエステルおよびエチレン性不飽和カルボン酸エステルを主体とする単量体を懸濁させた状態で重合させて重合体粒子とする懸濁重合法により得られたものが好ましい。
【0033】
前記重合触媒としては、例えばベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキシドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物が挙げられるが、とりわけラウリルパーオキシドが好ましい。
【0034】
重合触媒の添加量は、単量体の総質量に対して、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜3質量%がより好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。0.01質量%未満では、重合反応が完結しない場合があり、5質量%を超えると最終的に得られるビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の結着効果が十分でない場合がある。
【0035】
重合を行わせる際の前記分散剤は、使用する単量体の種類、量などにより適当な物質を選択すればよいが、具体的にはポリビニルアルコール(部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール)、ポリ(メタ)アクリル酸およびその塩、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性高分子、リン酸カルシウム、珪酸マグネシムなどの水不溶性無機化合物などが挙げられる。これらの分散剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0036】
分散剤の使用量は、使用する単量体の種類などにもよるが、単量体の総質量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。
【0037】
さらに、前記分散剤の界面活性効果などを調製するため、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの水溶性塩を添加することもできる。例えば塩化ナトリム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、無水硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム及びリン酸三カリウムなどが挙げられ、これらの水溶性塩は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
水溶性塩の使用量は、使用する分散剤の種類、量などにもよるが、分散剤水溶液の質量に対して通常0.01〜10質量%である。
【0039】
単量体を重合させる温度は、重合触媒の10時間半減期温度に対して−20〜+20℃が好ましく、−10〜+10℃がより好ましい。
【0040】
10時間半減期温度に対して−20℃未満では、重合反応が完結しない場合があり、+20℃を超えると、得られるビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の結着効果が十分でない場合がある。
【0041】
単量体を重合させる時間は、使用する重合触媒の種類、量、重合温度などにもよるが、通常数時間〜数十時間である。
【0042】
重合反応終了後、共重合体は遠心分離、濾過などの方法により分離され、含水ケーキ状で得られる。得られた含水ケーキ状の共重合体はそのまま、もしくは必要に応じて乾燥し、ケン化反応に使用することができる。
【0043】
前記重合体の数平均分子量は、溶媒にDMFなどの極性溶媒を用いGFCカラム(Shodex社製OHpak)などを備えた分子量測定装置にて求めることができる。
【0044】
ケン化前の共重合体の数平均分子量は、10,000〜10,000,000が好ましく、50,000〜5,000,000がより好ましい。ケン化前の数平均分子量を10,000〜1,0,000,000の範囲内にすることで、バインダーとしての結着力が向上する。従って、電極合剤が水系スラリーであっても、スラリーの厚塗りが容易になる。
【0045】
ケン化反応はアルカリ金属を含むアルカリの存在下、水性有機溶媒と水との混合溶媒中で実施することができる。前記ケン化反応に使用するアルカリ金属を含むアルカリとしては、従来公知のものを使用することができるが、アルカリ金属水酸化物が好ましく、反応性が高いという観点より、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが特に好ましい。
【0046】
前記アルカリの量は、単量体のモル数に対して60〜140モル%が好ましく、80〜120モル%がより好ましい。60モル%より少ないアルカリ量ではケン化が不十分となる場合があり、140モル%を超えて使用してもそれ以上の効果が得られず経済的でない。
【0047】
前記ケン化反応に使用する水性有機溶媒と水との混合溶媒における水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどの低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、およびこれらの混合物などが挙げられるが、なかでも低級アルコール類が好ましく、優れた結着効果と機械的せん断に対して優れた耐性を有するビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体が得られることから、特にメタノールおよびエタノールが好ましい。
【0048】
前記水性有機溶媒と水の混合溶媒における水性有機溶媒/水の質量比は、2/8〜10/0が好ましく、3/7〜8/2がより好ましい。2/8〜10/0の範囲を逸脱する場合、ケン化前の共重合体の溶媒親和性またはケン化後の共重合体の溶媒親和性が不足し、充分にケン化反応を進行させることができないおそれがある。水性有機溶媒が2/8の比率より少ない場合、バインダーとしての結着力が低下するだけでなく、ケン化反応の際に著しく増粘するため工業的にビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体ケン化物を得ることが難しくなる。
【0049】
ビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体をケン化させる温度は、単量体のモル比にもよるが、20〜80℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。20℃より低い温度でケン化させた場合、ケン化反応が完結しないおそれがあり、80℃を超える温度の場合、アルカリによる分子量低下などの副反応が生じる恐れがある。
【0050】
ケン化反応の時間は、使用するアルカリの種類、量などにより異なるが、通常数時間程度で反応は終了する。
【0051】
ケン化反応が終了した時点で通常、ペーストないしスラリー状の共重合体ケン化物の分散体となる。遠心分離、濾過など従来公知の方法により固液分離し、メタノールなどの低級アルコールなどでよく洗浄して得られた含液共重合体ケン化物を乾燥することにより、球状単一粒子または球状粒子が凝集した凝集粒子として共重合体ケン化物、すなわちビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体を得ることができる。
【0052】
前記ケン化反応以降において、塩酸、硫酸、燐酸、硝酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸などの有機酸等の酸を用いて共重合体ケン化物を中和した後に、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化フランシウムなど任意のアルカリ金属を用いてビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物の共重合体を得ることもできる。
【0053】
含液共重合体ケン化物を乾燥する条件は、特に限定されないが通常、常圧もしくは減圧下、30〜120℃の温度で乾燥することが好ましい。
【0054】
乾燥時間は、乾燥時の圧力、温度にもよるが通常数時間〜数十時間である。
【0055】
ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の体積平均粒子径は、1〜200μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。1μm未満では結着効果が十分でなく、200μmを超えると水系増粘液が不均一になり結着効果が低下する場合がある。なお、共重合体の体積平均粒子径はレーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製、SALD−7100)に回分セル(同社製、SALD−BC)を設置し、分散溶媒に2−プロパノールまたはメタノールを用い測定した。
【0056】
含液共重合体ケン化物を乾燥し、得られた共重合体ケン化物の体積平均粒子径が100μmを超える場合は、メカニカルミリング処理などの従来公知の粉砕方法にて粉砕することにより体積平均粒子径を10〜100μmに調製することができる。
【0057】
メカニカルミリング処理とは、衝撃・引張り・摩擦・圧縮・せん断等の外力を得られた共重合体ケン化物に与える方法で、そのための装置としては、転動ミル、振動ミル、遊星ミル、揺動ミル、水平ミル、アトライターミル、ジェットミル、擂潰機、ホモジナイザー、フルイダイザー、ペイントシェイカー、ミキサー等などが挙げられる。例えば、遊星ミルは、共重合体ケン化物とボールとを共に容器に入れ、自転と公転をさせることによって生じる力学的エネルギーにより、共重合体ケン化物粉末を粉砕又は混合させるものである。この方法によれば、ナノオーダーまで粉砕されることが知られている。
【0058】
ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体のバインダーにおける増粘効果としては、ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体を1質量%含む水溶液の粘度が50mPa・s〜10000mPa・sであることが好ましく、50〜5000mPa・sであることがより好ましい。粘度が50mPa・s未満であると作製したスラリー状電極合剤の粘度が低くなり集電体へ塗工する際に合剤が広がってしまい、塗工が困難となることや、合剤中の活物質や導電助剤の分散が悪くなるおそれがあり、10000mPa・sを超えると作製した合剤の粘度が高いため集電体に薄く均一に塗工することが困難となる場合がある。
【0059】
なお、前記1質量%水溶液の粘度は、BROOKFIELD製回転粘度計(型式DV−I+)、スピンドルNo.5、50rpm(液温25℃)にて測定することができる。
【0060】
ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体であれば、結着力と結着持続性に優れるバインダーとして機能し得る。その理由としては、ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体は、集電体と活物質および活物質同士を強固に結着し、充放電の繰り返しに起因する活物質の体積変化によって集電体から電極合剤が剥離したり、活物質が脱落したりすることがないような結着持続性を有することで、活物質の容量を低下させることがないためであると考えられる。
【0061】
本実施形態のリチウムイオン二次電池電極用合剤に用いるバインダーとしては、ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体にさらに他の水系バインダーを加えてもよい。この場合他の水系バインダーの添加量は、ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体と他の水系バインダーとの合計質量に対して80質量%未満であることが好ましい。すなわち、換言すれば、バインダー中におけるビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の含有割合は、20質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0062】
他の水系バインダーの材料としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸塩などのアクリル樹脂、アルギン酸ナトリウム、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリアミドイミド、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン酢酸共重合体(EVA)等の材料を一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0063】
上記の他の水系バインダーのうち、ポリアクリル酸ナトリウムに代表されるアクリル樹脂、アルギン酸ナトリウム、ポリイミドが好適に用いられ、アクリル樹脂が特に好適に用いられる。
【0064】
<正極活物質>
正極活物質としては、本技術分野で使用される正極活物質が使用できる。例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO
4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO
4)、ピロリン酸鉄(Li
2FeP
2O
7)、コバルト酸リチウム複合酸化物(LiCoO
2)、スピネル型マンガン酸リチウム複合酸化物(LiMn
2O
4)、マンガン酸リチウム複合酸化物(LiMnO
2)、ニッケル酸リチウム複合酸化物(LiNiO
2)、ニオブ酸リチウム複合酸化物(LiNbO
2)、鉄酸リチウム複合酸化物(LiFeO
2)、マグネシウム酸リチウム複合酸化物(LiMgO
2)、カルシウム酸リチウム複合酸化物(LiCaO
2)、銅酸リチウム複合酸化物(LiCuO
2)、亜鉛酸リチウム複合酸化物(LiZnO
2)、モリブデン酸リチウム複合酸化物(LiMoO
2)、タンタル酸リチウム複合酸化物(LiTaO
2)、タングステン酸リチウム複合酸化物(LiWO
2)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物(LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2)、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物(LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2)、Li過剰系ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物、酸化マンガンニッケル(LiNi
0.5Mn
1.5O
4)、酸化マンガン(MnO
2)、バナジウム系酸化物、硫黄系酸化物、シリケート系酸化物、等が好適に使用される。
【0065】
<負極活物質>
負極活物質としては、特に限定はなく、グラファイトなどの結晶性黒鉛、ケイ素(Si)やスズ(Sn)などのようにリチウムイオンを大量に吸蔵放出可能な材料を用いることができる。このような材料であれば、単体、合金、化合物、固溶体およびケイ素含有材料やスズ含有材料を含む複合活物質の何れであっても、本実施形態の効果を発揮させることは可能である。ケイ素含有材料としては、Si、SiO
x(0.05<x<1.95)、またはこれらのいずれかにB、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N、Snからなる群から選択される少なくとも1つ以上の元素でSiの一部を置換した合金や化合物、または固溶体などを用いることができる。これらはケイ素又はケイ素化合物ということができる。スズ含有材料としてはNi
2Sn
4、Mg
2Sn、SnO
x(0<x<2)、SnO
2、SnSiO
3、LiSnOなどが適用できる。これらの材料は、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、Si単体や酸化ケイ素などのケイ素又はケイ素化合物が好ましい。
【0066】
<導電助剤>
導電助剤は、導電性を有していれば、特に限定されることはないが、炭素粉末が好ましい。炭素粉末としては、通常用いられているもの、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、黒鉛、カーボンファイバー、カーボンチューブ、グラフェン、非晶質炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラッシーカーボン、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられる。これらは一種単独で用いてもよいし、又は二種以上を併用してもよい。これらの中でも導電性向上の観点から、カーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブが好ましく、カーボンナノチューブがより好ましい。導電助剤としてカーボンナノチューブを使用する場合、その使用量については、特に限定的ではないが、例えば、導電助剤全体の30〜100質量%が好ましく、40〜100質量%がより好ましい。カーボンナノチューブの使用量が30質量%未満では電極活物質と集電体の間に十分な導電経路が確保されず、特に高速充放電において十分な導電経路を形成することができない点から好ましくない。なお、カーボンナノファイバーとは、太さが数nm〜数百nmの繊維状材料を言い、中空構造を有するものを特にカーボンナノチューブと言い単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブなどの種類がある。これらは気相成長法、アーク放電法、レーザー蒸発法などの種々方法により製造されるがその方法は問わない。
【0067】
<分散助剤>
分散助剤としては、ヒドロキシル基、アミノ基及びイミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の置換基と、カルボキシル基とを含む有機酸、又はフミン酸が好ましい。ヒドロキシル基とカルボキシル基とを有する有機酸としては、例えば、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、タルトロン酸、グルクロン酸、フミン酸などが挙げられる。アミノ基とカルボキシル基とを有する有機酸としては、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、4−アミノ酪酸、ロイシン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、トリプトファン、システイン、およびこれらのポリマーなどが挙げられる。イミノ基とカルボキシル基とを有する有機酸としては、例えば、プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、ピペコリン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさの観点から、グルクロン酸、フミン酸、グリシン、ポリグリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸が好ましい。
【0068】
前記分散助剤の特徴として、水分散のリチウムイオン二次電池電極用合剤は、活物質由来の水酸化リチウム、バインダー由来のアルカリ成分などの影響により合剤のpHが7以上となることがあるため、当該分散助剤はpH7以上の水溶液に溶けることが重要である。
【0069】
なお、分散助剤の効果の詳細は良くわからないが、バインダー中のカルボキシル基と分散助剤中のヒドロキシル基またはアミノ基またはイミノ基とが、また、バインダー中のアルコール基と分散助剤中のカルボキシル基とが相互作用することで、ゲル様になりスラリーを安定化させる効果があると考えられる。
【0070】
特許文献5には分散改良剤としてアミノ基含有有機酸、アミノ基含有有機酸塩、イミノ基含有有機酸、イミノ基含有有機酸塩が開示されており、本願と一部重複している。しかしながら、特許文献5では、バインダーと溶媒とが本願とは異なっている。特許文献5で用いられているバインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の有機バインダーあり、特許文献5で用いられている溶媒は、電極活物質、導電助剤及びバインダーを溶解、分散させることができる有機溶媒、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トリメチルフォスフェート、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等である。
【0071】
分散助剤(分散改良剤)は電極合剤中の他の構成物質との相互作用によってその機能を発揮するので、構成物質中のバインダー、溶媒が本願とは全く異なる特許文献5に開示された発明は、本願とは全く異なる技術的思想によるものである。
【0072】
<合剤の調製>
活物質に、導電助剤、バインダー、分散助剤、および水を加えてペースト状のスラリーとすることにより電極合剤が得られる。バインダーは、あらかじめ水に溶かして用いてもよいし、活物質、導電助剤、バインダー、分散助剤の粉末をあらかじめ混合し、その後に水を加え混合してもよい。
【0073】
液体媒体の水の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、活物質、導電助剤、バインダーの合計を100質量%とした場合、40質量%以上2000質量%以下が好ましく50質量%以上1000質量%以下がより好ましい。これは、液体媒体が上記の範囲を外れた場合、スラリーの取り扱いの悪化を招くためである。
【0074】
本願発明の合剤には、正極用、負極用いずれにもバインダーとしてビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体が使用される。バインダーは、活物質同士、活物質と導電助剤およびこれらと集電体との接着を目的として使用される。すなわち、両極の集電体上にスラリーを塗布し、乾燥させたときに良好な活物質層を形成するために使用される。
【0075】
導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、活物質、導電助剤およびバインダーの合計質量に対して、0.1〜30質量%程度が好ましく、0.5〜10質量%程度がより好ましく、2〜5質量%がさらに好ましい。導電助剤の使用量が0.1質量%未満であると、電極の導電性を十分に向上させることができないおそれがある。導電助剤の使用量が20質量%を超えると、活物質の割合が相対的に減少するため電池の充放電時に高容量が得られにくいこと、カーボンが水を弾くため均一分散することが難しいため活物質の凝集を招くこと、活物質と比較して小さいため表面積が大きくなり使用するバインダーの量が増えることなどの点で好ましくない。
【0076】
バインダーの使用量についても、特に限定的ではないが、例えば、負極活物質、導電助剤およびバインダー合計質量に対して、0.5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。これは、バインダーが多すぎると活物質の割合が相対的に減少するため、電池の充放電時に高容量が得られにくく、逆に少なすぎると結着力不足によりサイクル寿命特性が悪化し、スラリーの粘性不足による凝集が生じやすくなる。
【0077】
分散助剤の使用量については、活物質、バインダー、導電助剤の合計質量に対して、0.01質量%以上であれば、活物質分散液調製時の活物質等を効率よくかつ効果的に微分散することができる。なお、微分散性および分散安定性を維持するためには、その添加量は5.0質量%以下で十分である。
【0078】
<電気機器>
本願発明の電極用スラリーを用い製造された電極を具備したリチウムイオン二次電池は、寿命特性に優れており、様々な電気機器(電気を使用する乗り物を含む)の電源として利用することができる。
【0079】
電気機器としては、例えば、エアコン、洗濯機、テレビ、冷蔵庫、パソコン、タブレット、スマートフォン、パソコンキーボード、モニター、プリンター、マウス、ハードディスク、パソコン周辺機器、アイロン、衣類乾燥機、トランシーバー、送風機、音楽レコーダー、音楽プレーヤー、オーブン、レンジ、温風ヒーター、カーナビ、懐中電灯、加湿器、携帯カラオケ機、乾電池、空気清浄器、ゲーム機、血圧計、コーヒーミル、コーヒーメーカー、こたつ、コピー機、ディスクチェンジャー、ラジオ、シェーバー、ジューサー、シュレッダー、浄水器、照明器具、食器乾燥機、炊飯器、ズボンプレッサー、掃除機、体重計、電気カーペット、炊飯器、電気ポット、電子辞書、電子手帳、電磁調理器、電卓、電動カート、電動車椅子、電動工具、電動歯ブラシ、あんか、時計、インターホン、エアサーキュレーター、電撃殺虫器、ホットプレート、トースター、給湯器、粉砕機、はんだごて、ビデオカメラ、ビデオデッキ、ファクシミリ、布団乾燥機、ミキサー、ミシン、もちつき機、冷水器、電子楽器、オートバイ、おもちゃ類、芝刈り機、自転車、自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、鉄道、船、飛行機、非常用蓄電池などが挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて本願発明を説明するが、本願発明はこれに限定されない。なお、本実施例における部及び%は、特記しない限り質量基準である。実施例及び比較例中の評価は、それぞれ以下の条件にて行った。
【0081】
<バインダーの作製>
−製造例1− ビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体の合成
撹拌機、温度計、N2ガス導入管、還流冷却機および滴下ロートを備えた容量2Lの反応槽に、水768g、無水硫酸ナトリウム12gを仕込み、N2ガスを吹き込んで系内を脱酸素した。続いて部分ケン化ポリビニルアルコール(ケン化度88%)1g、ラウリルパーオキシド1gを仕込み内温60℃まで昇温した後、アクリル酸メチル104g(1.209mol)および酢酸ビニル155g(1.802mol)の単量体を滴下ロートにより4時間かけて滴下した後、内温65℃で2時間保持し反応を完結させた。その後、固形分を濾別することにより酢酸ビニルエステル/アクリル酸メチルエチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体288g(10.4%含水)を得た。得られた重合体をDMFに溶解させた後フィルターを実施、分子量測定により求めた数平均分子量は18.8万であった。
【0082】
−製造例2− ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の合成
上記同様の反応槽に、メタノール450g、水420g、水酸化ナトリウム132g(3.3mol)および得られた含水共重合体288g(10.4%含水)を仕込み、撹拌下で30℃、3時間ケン化反応を行った。ケン化反応終了後、得られた共重合体ケン化物をメタノールで洗浄、濾過し、70℃で6時間乾燥させ、酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体ケン化物(ビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体)193gを得た。酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体ケン化物(ビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体)の体積平均粒子径は180μmであった。
【0083】
−製造例3− ビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体の粉砕
上記ビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体193gを、ジェットミル(日本ニューマチック工業社製LJ)により粉砕し、微粉末状のビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体173gを得た。得られたビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体の粒子径をレーザー開回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製SALD−7100)により測定し46μmであった。以降、製造例3で得られたビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体を共重合体1とする。
【0084】
−製造例4−
前記製造例1におけるアクリル酸メチル104g(1.209mol)および酢酸ビニル155g(1.802mol)の単量体を、アクリル酸メチル155g(1.802mol)および酢酸ビニル104g(1.209mol)の単量体に変更した以外は製造例1と同様な操作を行い酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体を得た。得られた共重合体を前記製造例2と同様にしてケン化反応をすることによりビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体を得た。得られた共重合体ケン化物を前記製造例3と同様にして粉砕することにより、粒子径38μmの共重合体2を得た。
【0085】
−製造例5−
前記製造例1におけるアクリル酸メチル104g(1.209mol)および酢酸ビニル155g(1.802mol)の単量体を、アクリル酸メチル51.8g(0.602mol)および酢酸ビニル207.2g(2.409mol)の単量体に変更した以外は製造例1と同様な操作を行い酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体を得た。得られた共重合体を前記製造例2と同様にしてケン化反応をすることによりビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体を得た。得られた共重合体ケン化物を前記製造例3と同様にして粉砕することにより、粒子径39μmの共重合体3を得た。
【0086】
製造例で得られた共重合体1−3の1質量%水溶液の粘度、体積平均粒子径およびビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムの共重合体組成比を表1にまとめる。ケン化率は、共重合体全て99%以上である。
【0087】
【表1】
【0088】
(実施例1)
活物質として天然黒鉛90質量部、バインダーとして製造例5で得られたビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体(表1の共重合体3)4質量部、導電助剤としてケッチェンブラック(ライオン社製、ECP−300JD)3質量部、気相成長炭素繊維(昭和電工社製VGCF−H)3質量部、水186質量部、分散助剤としてグリシン(和光純薬工業株式会社製)0.3質量部を加え電極用合剤を調製した。
【0089】
(実施例2)
実施例1において、分散助剤としてグリシン(和光純薬工業株式会社製)0.3質量部に代えて、ポリグリシン(アルドリッチ社製)0.06質量部を用いた以外は実施例1と同様な操作にて電極用合剤を調製した。
【0090】
(実施例3)
実施例1において、天然黒鉛90質量部、共重合体3の4質量部、ケッチェンブラック3質量部、気相成長炭素繊維3質量部、グリシン0.3質量部に代えて、リン酸鉄リチウム(住友大阪セメント社製)90質量部、製造例3で得られた共重合体1の5質量部、ケッチェンブラック5質量部、グルクロン酸(和光純薬工業株式会社製)0.5質量部を用いた以外は実施例1と同様な操作にて電極用合剤を調製した。
【0091】
(実施例4)
実施例3において、共重合体1の5質量部、グルクロン酸(和光純薬工業株式会社製)0.5質量部に代えて、製造例4で得られた共重合体2の5質量部、フミン酸(和光純薬工業株式会社製)0.06質量部を用いた以外は、実施例3と同様な操作にて電極用合剤を調製した。
【0092】
(比較例1)
活物質として天然黒鉛90質量部、バインダーとして製造例5で得られたビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体(表1の共重合体3)4質量部、導電助剤としてケッチェンブラック(ライオン社製、ECP−300JD)4質量部、気相成長炭素繊維(昭和電工社製VGCF−H)3質量部、水186質量部を加え電極用合剤を調製した。
【0093】
(比較例2)
実施例3において、共重合体1の5質量部、ケッチェンブラック5質量部、水186質量部に代えて、バインダーとしてPVdF(クレハ社製、#1120)6質量部、ケッチェンブラック4質量部、分散液としてN−メチルピロリドン150質量部を用いた以外は、実施例3と同様な操作にて電極用合剤を調製した。
【0094】
(比較例3)
実施例1において、共重合体3の4質量部に代えて、SBRラテックス(JSR社製、TRD2001)2質量部、CMC(ダイセルファインケム社製#2260)2質量部を用いた以外は、実施例1と同様な操作にて電極用合剤を調製、評価した。
【0095】
各合剤の組成を表2に示した。
【0096】
【表2】
【0097】
スラリー沈降性評価は以下のように行った。
【0098】
<背景透視試験>
実施例1〜4および比較例1〜3で作成した合剤を20ccのガラス管に入れ、1週間後または1ヶ月後に背景が見えたものを×、それ以外を○とした。
【0099】
<固形分濃度差>
スラリー20ccを30cc遠沈管にいれ、遠心分離機(コクサン社製、卓上遠心機 H−36)にて、1,600G、30分回転させた後、上澄み部と底部分の固形分濃度を比較した。
【0100】
固形分濃度差が10%以内を○、それ以外を×とした。
【0101】
<電池製造>
実施例1、2および比較例1、3の合剤を1週間25℃で保存した後、ミキサーにて1分混合した。その後、各々アルミ箔上に塗工、80℃で乾燥後、120℃で減圧乾燥を12時間行った。その後プレス機にてプレスした後、得られた電極をφ12mmの円形に打ち抜き負極用電極とした。
【0102】
実施例3、4、および、比較例2のスラリーを1週間25℃で保存した後、ミキサーにて1分混合した。その後、各々銅箔上に塗工、80℃で乾燥後、120℃で減圧乾燥を12時間行った。その後プレス機にてプレスした後、得られた電極をφ12mmの円形に打ち抜き正極用電極とした。
【0103】
実施例1〜4、比較例1〜3を用い得られた電極、対極としてリチウム箔、電解液に1MLiPF6のEC/DEC(=1/1)溶液、セパレータにガラス繊維(GA100)を用い、コイン型セル2016(or2032)を作成した。
【0104】
25℃にて、0.2C CC−CVで充放電を繰り返し初回の電池容量と50回目の電池容量の比率を保持率(%)とした。
【0105】
各試験の評価結果を表3に示した。
【0106】
【表3】
【0107】
実施例1から4の電極合剤スラリーはいずれも、背景透視試験及び固形分濃度差試験の結果が良好で有り、これらのスラリーを用いて作成したリチウムイオン二次電池の電池容量の保持率も94%以上であり良好であった。
【0108】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0109】
実施例においてはバインダーのエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物としてアクリル酸ナトリウムを用いているが、エチレン性不飽和カルボン酸としてメタアクリル酸を用いても共重合比率や重合度などを調整することにより同様の効果を奏するバインダーが得られる。また、アルカリ金属もリチウムやカリウムであってもよい。
【0110】
実施例においては分散助剤のうち、カルボキシル基を含みヒドロキシル基を置換基とする有機酸はグルクロン酸のみであるが、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、タルトロン酸等であっても同じ2種類の官能基の働きによって同様の効果が得られる。
【0111】
実施例においては分散助剤のうち、カルボキシル基を含みアミノ基を置換基とする有機酸はグリシンとポリグリシンであるが、アラニン、フェニルアラニン、4−アミノ酪酸、ロイシン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、トリプトファン、システイン等であっても同じ2種類の官能基の働きによって同様の効果が得られる。
【0112】
実施例においては分散助剤のうち、カルボキシル基を含みイミノ基を置換基とする有機酸は示していないが、プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、ピペコリン酸等でのイミノ基を置換基とする有機酸であってもアミノ基を置換基とする有機酸と同様の効果が得られる。