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特開2015-202977ルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物の製造方法
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  • 特開2015202977-ルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-202977(P2015-202977A)
(43)【公開日】2015年11月16日
(54)【発明の名称】ルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20151020BHJP
   C01G 55/00 20060101ALI20151020BHJP
   B01J 27/188 20060101ALI20151020BHJP
【FI】
   C01B25/45 Z
   C01G55/00
   B01J27/188 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-82330(P2014-82330)
(22)【出願日】2014年4月11日
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】定金 正洋
(72)【発明者】
【氏名】佐野 庸治
(72)【発明者】
【氏名】中西 治通
【テーマコード(参考)】
4G048
4G169
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE08
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA21A
4G169BA36A
4G169BB01A
4G169BB01B
4G169BB07A
4G169BB07B
4G169BC01A
4G169BC03B
4G169BC23A
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD05A
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169BE01A
4G169BE17A
4G169BE28A
4G169CC32
4G169DA05
4G169FA01
4G169FB10
4G169FC02
4G169FC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】Ru置換ポリオキソメタレート化合物を簡便に高純度かつ高収率で得る方法の提供。
【解決手段】Qy[α−XW1139Ru(III)(H2O)](Qはプロトン、アルカリ金属、テトラアルキルアンモニウム及びテトラアルキルホスホニウムから選ばれる1価カチオン、XはSi、PまたはGe、yは当該化合物全体としての電荷が中性になるのに必要なカチオンQの個数)により表されるRu置換ポリオキソメタレート化合物の製造方法であって、(A)[α−XW1139Ru(II)(DMSO)]塩を用意する工程;及び(B)前記[α−XW1139Ru(II)(DMSO)]塩を水に溶解させ、次いで、水熱反応により[α−XW1139Ru(II)(DMSO)](n+1)-アニオン(XがPの場合nは4、XがSi又はGeの場合nは5)を[α−XW1139Ru(III)(H2O)]n-アニオンに転化させる工程を含む方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
y[α−XW1139Ru(III)(H2O)] (1)
(式中、Qは、プロトン、アルカリ金属カチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン及びテトラアルキルホスホニウムカチオンから独立に選ばれる1価のカチオンであり、XはSi、P及びGeからなる群から選ばれ、yは、当該化合物全体としての電荷が中性になるのに必要なカチオンQの個数である)
により表されるルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物の製造方法であって、
(A)[α−XW1139Ru(II)(DMSO)]塩を用意する工程;及び
(B)前記[α−XW1139Ru(II)(DMSO)]塩を水に溶解させ、次いで、水熱反応により[α−XW1139Ru(II)(DMSO)](n+1)-アニオン(XがPである場合にnは4であり、XがSi又はGeである場合にnは5である)を[α−XW1139Ru(III)(H2O)]n-アニオンに転化させる工程;
を含む、ルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、正八面体構造を有するMO(M=W6+、Mo6+など)を基本骨格とするアニオン性金属酸化物クラスターであるポリオキソメタレート化合物は、有機化合物の酸化反応や酸塩基反応のための触媒として注目されている。なかでも、ポリオキソメタレートの構成金属の一部をルテニウム(Ru)で置換したルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物は、特有の酸化還元特性及びルテニウム原子の反応性のために注目されている。ルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物は、水素分子(H2)を水素イオン(H)に酸化する能力を有するために、固体高分子型燃料電池などの燃料電池用の水素酸化触媒として有用である。
【0003】
ルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物の合成方法として、非特許文献1に、[PW11397-とルテニウムアクア錯体[Ru(H2O)62+とを溶液中で反応させた後、反応生成物を含む溶液に酸素をバブリングすることによりルテニウムを酸化し、次いで、反応生成物をセシウム塩として析出させてCs4[PW1139Ru(H2O)]・5H2Oを得たことが記載されている。ルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物を触媒として使用するには触媒効率の観点からルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物を高純度かつ高収率で得られる製造方法が求められるが、ルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物を簡便に高純度かつ高収率で製造する方法はこれまで提案されていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1992年、第114巻、第8号、第2932〜2938頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記課題に鑑みて、本発明は、ルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物を簡便に高純度かつ高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、DMSO配位子を有するルテニウム置換ポリオキソメタレートアニオン[α−XW1139Ru(II)(DMSO)]を水熱反応により[α−XW1139Ru(III)(H2O)]アニオンに転化させることにより[α−XW1139Ru(III)(H2O)]アニオンを有するルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物を高純度かつ高収率で製造できることを見出した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1):
y[α−XW1139Ru(III)(H2O)] (1)
(式中、Qは、プロトン、アルカリ金属カチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン及びテトラアルキルホスホニウムカチオンから独立に選ばれる1価のカチオンであり、XはSi、P及びGeからなる群から選ばれ、yは、当該化合物全体としての電荷が中性になるのに必要なカチオンQの個数である)
により表されるルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物の製造方法であって、
(A)[α−XW1139Ru(II)(DMSO)]塩を用意する工程;及び
(B)前記[α−XW1139Ru(II)(DMSO)]塩を水に溶解させ、次いで、水熱反応により[α−XW1139Ru(II)(DMSO)](n+1)-アニオン(XがPである場合にnは4であり、XがSi又はGeである場合にnは5である)を[α−XW1139Ru(III)(H2O)]n-アニオンに転化させる工程;
を含むルテニウム置換ポリオキソメタレートの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、従来の合成法により得られたK4[α−PW1139Ru(III)(H2O)]と本発明の製造方法により得られたK4[α−PW1139Ru(III)(H2O)]のサイクリックボルタモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、下記一般式(1):
y[α−XW1139Ru(III)(H2O)] (1)
(式中、Qyは、プロトン、アルカリ金属カチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン及びテトラアルキルホスホニウムカチオンから独立に選ばれる1価のカチオンであり、XはSi、P及びGeからなる群から選ばれ、yは、当該化合物全体としての電荷が中性になるのに必要なカチオンQの個数である)
により表されるルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物の製造方法である。
【0009】
上記一般式(1)において、Qは、プロトン;アルカリ金属カチオン、好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン及びセシウムイオン;テトラアルキルアンモニウムカチオン、例えばテトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオンなど;テトラアルキルホスホニウムカチオン、例えばテトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオンなどから独立に選ばれる一価のカチオンである。本発明の方法により製造されるルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物において、アニオン部分[α−XW1139Ru(III)(DMSO)]n-は、XがPである場合には、−4の電荷を帯び、XがSi又はGeである場合には、−5の電荷を帯びるため、電気的中性の原理により、一般式(1)において、XがPである場合には、yは4であり、XがSi又はGeである場合には、yは5である。本発明の方法により得られるルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物はケギン(Keggin)型の構造を有する。
【0010】
本発明の方法の第1工程である工程(A)は、[α−XW1139Ru(II)(DMSO)]塩を用意する工程である。[α−XW1139Ru(II)(DMSO)]塩は、M. Sadakane他、Z. Anorg. Allg. Chem.、2011年、第637巻、第1467-1474頁に記載されている公知の方法に従って製造することができる。この文献には、K7[α−PW1139]・15H2Oと[Ru(II)(DMSO)4]Cl2とを水熱条件下で反応させて[α−PW1139Ru(II)(DMSO)]アニオンを生成させることが記載されている。反応温度は、反応時間に応じて変わるが、典型的には80℃〜200℃、好ましくは100℃〜170℃である。反応時間は、典型的には2〜120時間(h)である。
【0011】
本発明の方法の第2工程である工程(B)は、第1工程により得られた[α−XW1139Ru(II)(DMSO)]塩を水に溶解させ、次いで、水熱反応により[α−XW1139Ru(II)(DMSO)](n+1)-アニオンを[α−XW1139Ru(III)(H2O)]n-アニオンに転化させる工程、すなわち[α−XW1139Ru(II)(DMSO)](n+1)-アニオン中のDMSO配位子をアクア配位子で置換して[α−XW1139Ru(III)(H2O)]n-アニオンを生成させる工程である。ここで、XがPである場合にnは4であり、XがSi又はGeである場合にnは5である。水熱反応は、典型的には80〜200℃、好ましくは120〜180℃の温度で、典型的には4〜120時間(h)行われる。
【0012】
工程(B)において生成した[α−XW1139Ru(III)(H2O)]n-アニオンを、適切な塩析剤及び/又は貧溶媒により析出させた後、濾過し、乾燥させることによって高純度の固形物として目的とするルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物を得ることができる。塩析剤として、上記一般式(I)におけるQをカチオンとして含むハロゲン化物塩、例えば塩化カリウム、塩化セシウムなど;テトラアルキルアンモニウムハライド、例えばテトラメチルアンモニウムクロリドなど;テトラアルキルホスホスホニウムハライド、例えばテトラメチルホスホニウムクロリドなどを使用することができる。反応混合物から貧溶媒により[α−XW1139Ru(III)(H2O)]n-アニオンをHn[α−XW1139Ru(III)(H2O)]として析出させることができる。貧溶媒の例としては、アセトン、メタノール、エタノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0013】
<比較例1>
Cs4[PW1139Ru(III)(H2O)]の合成
Cs4[PW1139Ru(III)(H2O)]をDalton Trans., 2012, Vol.41, p.9901に記載の方法に従って合成した。具体的には、以下の手順を用いた。
[Ru(ベンゼン)Cl22(0.085g, 0.17mmol)、K7[PW1139]・15H2O(1.063g, 0.33mmol)及び水(20mL)を100mLテフロン(登録商標)内張りオートクレーブに装入し、オートクレーブを、170℃に加熱された通常のオーブンに入れて5時間加熱した。オートクレーブを室温に冷却した後、反応混合物を濾過した。次に、濾液にCsCl(1.5g)を加え、溶液を室温で1時間撹拌した。生成した褐色固形物を濾別し、50mLのエタノール及び50mLのアセトンで洗浄し、最後に70℃で乾燥させた(収量0.97g、タングステンWを基準として86%)。
生成物を、サイクリックボルタンメトリ(CV)及び赤外分光分析法(IR)により分析した。
サイクリックボルタモグラム(0.5M KH2PO4水溶液(pH 4.3)中Ag/AgCl(3M NaCl)):E1/2(Ru(V/IV))=945mV,E1/2(Ru(IV/III))=421mV及びE1/2(Ru(III/II))=14mV.
IRスペクトル(νmax/cm-1):1084(w), 1046(w), 968(m), 875(m), 786(s), 668(w,sh).
【0014】
<実施例1>
4[α−PW1139Ru(H2O)]の合成
(1)第1工程:
5[α−PW1139Ru(DMSO)]・9H2OをM. Sadakane他、Z. Anorg. Allg. Chem.、2011年、第637巻、第1467-1474頁に記載されている方法に従って合成した。具体的には、以下の手順を用いた。
Ru(DMSO)4Cl2(0.16g, 0.34mmol)とK7[α−PWO1139]・15H2O(0.995g、0.32mmol)と水(20mL)を50mLテフロン(登録商標)内張りオートクレーブに装入し、アルゴンを30分間バブリングした。次に、オートクレーブを125℃で5時間加熱した。オートクレーブを室温に冷却した後、反応混合物を濾過し、得られた濾液にCsCl(2.0g)を加え、室温で1時間撹拌すると、黒色析出物が生成した。黒色析出物を濾過により分離し、エタノールで洗浄した後にアセトンで洗浄し、70℃のオーブン内で乾燥させることにより黒色粉末状の生成物としてK4[α−PW1139Ru(DMSO)]・9H2Oを得た(収量1.02g、収率92%(タングステンWを基準))。
生成物を、IR、紫外可視分光分析(UV−Vis)、CV、1H−NMR、31P−NMR、183W−NMR、元素分析により分析した。
分析結果:
IRスペクトル(νmax/cm-1):1064(s), 1045(s), 1017(m), 959(s), 880(s), 791(vs), 693(m).
UV-Visスペクトルλmax(0.5M KH2PO4):λmax=488nm(ε=2.5×103dm3・mol-1・cm-1).
サイクリックボルタモグラム:(0.5M KH2PO4水溶液(pH 4.5)中でE1/2(Ru(III/II))=0.376V,0.5M硫酸ナトリウム水溶液(pH 3.0)中でE1/2(Ru(III/II))=0.366V.
1H-NMR(D2O):(δ/ppm) 3.186 (s) (cf. 2.568 for free dmso). 31P-NMR(D2O):(δ/ppm) -10.746. 183W-NMR(D2O):(δ/ppm) 117.29 (2W), -2.381 (2W), -94.46 (2W), -105.45 (1W), -132.87 (2W), -145.02 (2W).
元素分析:実測値:Cs, 16.8; P, 0.8; W, 55.3; Ru, 2.8; O, 21.4; K, 0; Na, 0; H, 0.6; C, 0.7; S, 0.8; Cl, 0.1%; 合計99.3%;計算値:Cs, 17.1; P, 0.9; W, 55.5; Ru, 2.8; O, 21.5; K, 0; Na, 0; H, 0.7; C, 0.7; S, 0.9; Cl, 0.
(2)第2工程:
第1工程で得られたK5[α−PW1139Ru(DMSO)]・9H2O(0.10g、0.017mmol)を50mLテフロン(登録商標)内張りオートクレーブ内に入れた水10mLに溶解させ、得られた水溶液を空気雰囲気下、170℃で7.5時間加熱した。オートクレーブを室温に冷却した後、反応混合物を濾過し、得られた濾液にCsCl(0.5g)を加え、室温で30分間撹拌すると、黒色析出物が生成した。黒色析出物を濾過により分離し、アセトンで洗浄した後、70℃のオーブン内で乾燥させることにより黒色粉末状の生成物としてK4[α−PW1139Ru(H2O)]を得た(収量0.8g、収率80%(タングステンWを基準))。
分析結果:
IR(KBr):ν=1079 (m), 1050 (w), 968 (s), 882 (s), 794 (vs) cm-1
サイクリックボルタモグラム(0.5M KH2PO4水溶液(pH 4.3)中):E1/2(Ru(V/IV))=937mV, E1/2(Ru(IV/III))=429mV及びE1/2(Ru(III/II))=9mV.
【0015】
なお、下記の装置及び条件を用いて上記生成物の分析を行った。
赤外分光分析分析(IR):使用した測定装置はNICOLET 6700 FT-IR(Thermo Fisher Scientific製)であった。KBr錠剤法で測定を行った。
サイクリックボルタンメトリー(CV):使用した測定装置はCHI620Dシステム(BAS Inc.製)であった。測定温度は20℃であり、作用電極はグラッシーカーボンであり、対電極は白金ワイヤーであり、参照電極はAg/AgCl(3M NaCl、202mV vs.NHE)であった。開始電圧は500または0mV vs.Ag/AgClであり、折り返し電圧は1000mV vs.Ag/AgClであり、スキャン速度は25mV/秒であった。測定対象の濃度は、0.5M KH2PO4水溶液(pH 4.3)中で約1mMであった。
紫外可視分光分析(UV-Vis):使用した測定装置は、8453 UV-Visスペクトロメーター(Agilent製)であった。測定温度は常温(約20℃)であった。
1H-NMR及び31P-NMRの測定には、Varian System 500(500MHz)スペクトロメーター(Agilent)を使用し、183W-NMRの測定には、ECA500(500MHz)スペクトロメーター(JEOL製)を使用した。1H-NMRスペクトルの測定では、D2O中のHOD(4.659ppm)を内部標準として使用し、31P-NMRスペクトルの測定では、85%H3PO4(0ppm)を外部標準として使用し、183W-NMRスペクトルの測定では、飽和Na2WO4(0ppm)を外部標準として使用した。
元素分析は、ドイツの元素分析会社Microanalytisches Labor Pascherに依頼した。
【0016】
図1に比較例1の生成物と実施例1の生成物についてCV測定により得られた電流−電圧曲線(サイクリックボルタモグラム)を示す。実施例1とは対照的に、比較例1の生成物の電流−電圧曲線には、矢印で示した付近にルテニウムの酸化還元波が存在し、他のルテニウム化合物が不純物として含まれていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の製造方法は、例えば酸化反応や酸塩基反応のための触媒として有用なルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物を高純度かつ高収率でもたらすことができる。本発明の製造方法により得られるルテニウム置換ポリオキソメタレート化合物は、高純度であるため、酸化反応や酸塩基反応を利用する様々な用地のための触媒、特に、水素分子が水素イオンに酸化される水素酸化反応を利用する様々な用途、例えば、燃料電池において水素酸化触媒として有用である。
図1