特開2015-206056(P2015-206056A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-206056アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂、樹脂組成物及び塗料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-206056(P2015-206056A)
(43)【公開日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂、樹脂組成物及び塗料
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/36 20060101AFI20151023BHJP
   C08L 61/14 20060101ALI20151023BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20151023BHJP
   C09D 161/06 20060101ALI20151023BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20151023BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20151023BHJP
【FI】
   C08G8/36
   C08L61/14
   C08L67/00
   C09D161/06
   C09D167/00
   C09D7/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-156058(P2015-156058)
(22)【出願日】2015年8月6日
(62)【分割の表示】特願2015-537477(P2015-537477)の分割
【原出願日】2015年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-81037(P2014-81037)
(32)【優先日】2014年4月10日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】鹿毛 孝和
(72)【発明者】
【氏名】木田 成信
【テーマコード(参考)】
4J002
4J033
4J038
【Fターム(参考)】
4J002CC09W
4J002CF03X
4J002CF04X
4J002CF05X
4J002CF06X
4J002FD090
4J002FD140
4J002FD150
4J002GH01
4J033CA01
4J033CA02
4J033CA11
4J033CA12
4J033CA32
4J033CB02
4J033CB18
4J033CC03
4J033CC04
4J033CC07
4J033CC08
4J033CC09
4J033CC11
4J033CD01
4J033CD04
4J033HA02
4J033HA13
4J033HA24
4J033HB08
4J038DA041
4J038DA042
4J038DD001
4J038DD002
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038LA06
4J038MA07
4J038MA14
4J038NA12
4J038NA14
4J038PA18
4J038PB04
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】
本発明は、主剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂に限定せずとも耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜を得ることができる硬化剤(アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂)を得ることを目的とする。
【手段】
メタクレゾールを含むフェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)とを塩基性化合物の存在下で反応させてレゾール型フェノール樹脂(A)を得た後、該レゾール型フェノール樹脂(A)とアルコール類(B)とを、酸解離定数(pKa)が0以下の酸性化合物の存在下で、該レゾール型フェノール樹脂(A)が有するメチロール基の60〜90%がアルコキシ基となるように反応させることを特徴とするアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクレゾールを含むフェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)とを塩基性化合物の存在下で反応させてレゾール型フェノール樹脂(A)を得た後、該レゾール型フェノール樹脂(A)とアルコール類(B)とを、酸解離定数(pKa)が0以下の酸性化合物の存在下で、該レゾール型フェノール樹脂(A)が有するメチロール基の60〜90%がアルコキシ基となるように反応させることを特徴とするアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項2】
得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量が600〜1,800の範囲である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
下記構造式(1)で表される構造部位(I)と下記構造式(2)で表される構造部位(II)とを繰り返し構造単位とするレゾール型樹脂構造を有し、Rの60〜90%がアルコキシ基であるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂であって、Rをアルコキシ基に変性した際の触媒が、酸解離定数(pKa)が0以下の酸性化合物であることを特徴とするアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂。
【化1】
[式中Rは水酸基又は炭素原子数4又は5のアルコキシ基である。xは水素原子、或いは、構造式(1)で表される構造部位(I)又は構造式(2)で表される構造部位(II)と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点である。]
【請求項4】
請求項記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂と、水酸基を有するポリエステル樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項5】
請求項記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする塗料。
【請求項6】
缶の内面用途である請求項記載の塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属缶、特に飲料缶、食缶等の缶胴や蓋の缶用塗料における硬化剤として特に好適に使用できるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂、該フェノール樹脂を得るための製造方法に関する。また、本発明は、前記飲料缶、食缶等の缶胴や蓋の缶用塗料用途に好適に用いることができる樹脂組成物及びこれを用いた塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料缶や食缶の内面には、飲料や食品から間の腐食を防ぐために塗膜が施されている。この塗膜は、通常、製缶の前に金属上に形成される為、製缶する際に塗膜が缶から剥がれたりすることがない加工性が求められる。加えて、前記塗膜は、金属との密着性や耐熱水性も求められている。
【0003】
前記塗膜を形成する際に用いられる塗料としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主剤として、フェノール樹脂を硬化剤として用いる塗料が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた塗料は加工性や耐熱水性、金属との密着性にも優れている。そして、特許文献1では、硬化剤として、メタクレゾールとホルムアルデヒド類とを反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂が有するメチロール基の60%以上をアルコキシ化してなり、重量平均分子量(Mw)が600〜1,800で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下であるフェノール樹脂(アルコキシ化レゾール樹脂)が開示されている。
【0004】
しかしながら、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂には、環境ホルモンの問題や生物の脳に影響を与える可能性が指摘されているビスフェノールAが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の製造時の未反応物として含まれてしまうことがある。また、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む塗料の塗膜は、洗剤で洗浄した場合や酸・高温の液体に接触させた場合にビスフェノールAが溶け出すことが危惧されている。その為、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用しない缶用塗料が求められている。
【0005】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の代替樹脂として、例えば、水酸基を有するアクリル樹脂、水酸基を有するアルキド樹脂、水酸基を有するポリエステル樹脂等が挙げられ、前記特許文献1に記載されているアルコキシ化レゾール樹脂は、これらのビスフェノールA型エポキシ樹脂以外の樹脂の硬化剤としても使用できると前記特許文献1には開示されている。
【0006】
前記特許文献1において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の硬化剤として用いるアルコキシ化レゾール樹脂は、実施例によると、メタクレゾールとホルムアルデヒドとを水酸化ナトリウムを触媒として反応させてレゾール型フェノール樹脂を得た後、該レゾール型フェノール樹脂とアルコールとをギ酸を触媒として反応させて得ている。しかしながら、特許文献1で、好ましい形態として実施例に記載されているアルコキシ化レゾール樹脂を単に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂A以外の樹脂、例えば、水酸基を有するポリエステル樹脂と組み合わせて使用しても、耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−336304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、主剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂に限定せずとも耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜を得ることができる硬化剤(アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂)を得ることにある。また、本発明が解決しようとする課題は、該アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を得るための製造方法を提供することである。更に、本発明が解決しようとする課題は、飲料缶、食缶等の缶胴や蓋の缶用塗料用途に好適に用いることができる樹脂組成物及びこれを用いた塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、レゾール型フェノール樹脂を得る際にメタクレゾールを含むフェノール類を用い、更に、得られるレゾール型フェノール樹脂とアルコール類(B)とを、酸解離定数(pKa)が0以下の酸性化合物の存在下で反応させることにより耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜を得ることができる硬化剤として用いることができるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂が得られること、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に限定せずとも、重量平均分子量とレゾール型フェノール樹脂が有するメチロール基をアルコキシ化する割合(アルコキシ化率)とを特定範囲にすることにより、耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜を得ることができる硬化剤として用いることができること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、メタクレゾールを含むフェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)とを塩基性化合物の存在下で反応させてレゾール型フェノール樹脂(A)を得た後、該レゾール型フェノール樹脂(A)とアルコール類(B)とを、酸解離定数(pKa)が0以下の酸性化合物の存在下で、該レゾール型フェノール樹脂(A)が有するメチロール基の60〜90%がアルコキシ基となるように反応させることを特徴とするアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、メ下記構造式(1)で表される構造部位(I)と下記構造式(2)で表される構造部位(II)とを繰り返し構造単位とするレゾール型樹脂構造を有し、Rの60〜90%がアルコキシ基であるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂であって、Rをアルコキシ基に変性した際の触媒が、酸解離定数(pKa)が0以下の酸性化合物であることを特徴とするアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を提供するものである。
【0012】
【化1】
[式中Rは水酸基又は炭素原子数4又は5のアルコキシ基である。xは水素原子、或いは、構造式(1)で表される構造部位(I)又は構造式(2)で表される構造部位(II)と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点である。]
【0013】
更に、本発明は、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂と、水酸基を有するポリエステル樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物を提供するものである。
【0014】
更に、本発明は、前記樹脂組成物を含有することを特徴とする塗料を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法は、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜を得ることができる硬化剤(アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂)を得ることができる。また、本発明の製造方法により得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂や本発明のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、種々の主剤、好ましくは水酸基を含有するポリエステル樹脂と好適に組み合わせて使用し組成物とすることができる。更に、この組成物を用いた塗料は飲料缶、食品缶の内面の塗料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法は、メタクレゾールを含むフェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)とを塩基性化合物の存在下で反応させてレゾール型フェノール樹脂(A)を得た後、該レゾール型フェノール樹脂(A)とアルコール類(B)とを、酸解離定数(pKa)が0以下の酸性化合物の存在下で反応させることを特徴とする。
【0017】
前記本発明で用いるフェノール類(a1)には、本発明の効果を損なわない範囲でメタクレゾール以外のフェノール類を有していても良い。ここで、フェノール類(a1)中のメタクレゾールの含有率としては、10〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましい。
【0018】
前記メタクレゾール以外のフェノール類としては、例えば、石炭酸、メタエチルフェノール、3,5−キシレノール、メタメトキシフェノール、パラクレゾール、オルトクレゾール、パラ−tert−ブチルフェノール、パラ−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、メタ−メトキシフェノール等が挙げられる。メタクレゾール以外のフェノール類を使用する際は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0019】
本発明で用いるアルデヒド類(a2)としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキザール等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも経済的に有利であることからホルムアルデヒドが好ましい。
【0020】
本発明で用いるアルデヒド類(a2)の使用量は、フェノール類(a1)1モルに対して1.0〜4.0モルが、反応性が良好で効率的にアルコキシル化レゾール型フェノール樹脂が得られることから好ましく、1.5〜3.5モルがより好ましい。
【0021】
本発明で用いる塩基性化合物は、フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)とを反応させる際の触媒として機能する。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;トリエチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミンのようなアミン類等が挙げられる。塩基性化合物の使用量は、フェノール類(a1)1モルに対して0.01〜0.5モルが、フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)との反応性が良好となることから好ましく、0.05〜0.3モルがより好ましい。
【0022】
本発明の製造方法では、まず、フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)とを塩基性化合物の存在下で反応させてレゾール型フェノール樹脂(A)を得る。このときの反応条件としては、反応温度は、例えば50〜80℃である。反応時間は1〜5時間である。
【0023】
フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)とを塩基性化合物の存在下で反応させレゾール型フェノール樹脂(A)を得た後、必要に応じて塩基性化合物を中和する。中和に用いる化合物としては、例えば、硫酸、酢酸、リン酸等が挙げられる。そして、必要に応じて中和を行った後、レゾール型フェノール樹脂(A)の水洗を行い、減圧濃縮して水分を除去しても良い。
【0024】
上記製造方法で得られるレゾール型フェノール樹脂(A)を、次に、アルコール類(B)と酸解離定数(pKa)が0以下の酸性化合物の存在下で反応させる。
【0025】
前記アルコール類(B)としては、例えば、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール等が挙げられる。アルコール類(B)の使用量としては、レゾール型フェノール樹脂(A)100質量部に対して100〜500質量部が、レゾール型フェノール樹脂(A)とアルコール類(B)との反応性が良好となることから好ましく、200〜400質量部がより好ましい。
【0026】
本発明において、前記酸性化合物は、酸解離定数(pKa)が0以下のものを用いる。この様な化合物をレゾール型フェノール樹脂(A)とアルコール類(B)との反応の触媒として使用する事により、後述するポリエステル樹脂(主剤)との反応性が良好となり、その結果、耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜が得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)が得られる。本発明で用いる前記酸性化合物の中でも酸解離定数(pKa)が−5〜0のものがより好ましい。
【0027】
前記酸解離定数(pKa)が0以下の酸性化合物としては、例えば、硫酸、塩酸等の鉱酸類;パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸等のフェノールスルホン酸類の芳香族スルホン酸等が挙げられる。中でも、経済的に有利なことから鉱酸類が好ましく、硫酸がより好ましい。
【0028】
なお、前記のpKaとは、25℃の水溶液において、下記数式(1)で定義される酸の強度を表す定数である。
【0029】
【数1】
(式中、[HA]は上記酸の濃度を、[H]は、オキソニウムイオン(=水和した水素イオン)濃度を、[A]は、上記酸の共役塩基(=酸残基)の濃度を、またlog10は常用対数を表わす。)
【0030】
前記前記酸解離定数(pKa)が0以下の酸性化合物の使用量は、フェノール類(a1)1モルに対して0.01〜0.5モルが、フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)との反応性が良好で、効率よくアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂が得られることから好ましく、0.01〜0.2モルがより好ましい。
【0031】
本発明において、レゾール型フェノール樹脂(A)とアルコール類(B)とを前記酸性化合物の存在下で反応させることにより、レゾール型フェノール樹脂(A)が有するメチロール基の一部乃至全部がアルコキシ化される。このようにアルコキシル化されることにより後述するポリエステル樹脂(主剤)との相溶性が良好なレゾール型フェノール樹脂となり、結果として耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜が得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)が得られると本発明者らは考えている。
【0032】
また、本発明の製造方法においては、前記レゾール型フェノール樹脂(A)とアルコール類(B)とを、該レゾール型フェノール樹脂(A)が有するメチロール基の60〜90%がアルコキシ基となるように反応させることが、後述するポリエステル樹脂(主剤)との相溶性が向上するアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂が得られることから好ましい
【0033】
ここで、メチロール基がアルコキシ基となる割合(%)(本発明において、アルコキシ化度と言うことがある。)は、メチロール基の質量を基準として求めた値である。
【0034】
本発明の製造方法において、得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)が1,900〜6,000となるように前記フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)及びアルコール類(B)を反応させるのが、耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜が得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)が得られることから好ましく、1,900〜4,000となるように反応させることがより好ましい。
【0035】
また、本発明の製造方法において、得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)が600〜1,800となるように前記フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)及びアルコール類(B)を反応させるのが、後述するポリエステル樹脂(主剤)と良好な硬化性を奏するアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)が得られることから好ましく、600〜1,500となるように反応させることがより好ましい。
【0036】
従って、本発明の製造方法においては、得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)が1,900〜6,000で、且つ、メチロール基の60〜90%がアルコキシ基となるように前記フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)及びアルコール類(B)を反応させるのが、後述するポリエステル樹脂(主剤)との相溶性が向上し、耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜が得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)が得られることから好ましく、重量平均分子量(Mw)が1,900〜4,000で、且つ、メチロール基の60〜90%がアルコキシ基となるように反応させることがより好ましい。
【0037】
ここで、本発明において、上記重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである(この測定条件を「GPC測定条件(1)」と略記することがある。)。
【0038】
ここで、上記重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである(この測定条件を「GPC測定条件(1)」と略記することがある。)。
【0039】
[GPC測定条件(1)]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」(6.0mmI.D.×4cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL G1000HXL」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0040】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0041】
尚、前記の通り、本発明で言う重量平均分子量(Mw)や数平均分子量(Mn)は、「GPC測定条件(1)」で求められる値である。しかしながら、本発明において、重量平均分子量(Mw)や数平均分子量(Mn)は、GPCの測定条件により得られる測定値が変化することがある。例えば、本発明の製造方法で得られるアルコキシ化レゾール樹脂は、下記「GPC測定条件(2)」で測定した値で好ましい範囲を規定すると、前記「重量平均分子量(Mw)が1,900〜6,000となるように前記フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)及びアルコール類(B)を反応させるのが、耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜が得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)が得られることから好ましく、1,900〜4,000となるように反応させることがより好ましい。」との記載は、「重量平均分子量(Mw)が1,700〜5,500となるように前記フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)及びアルコール類(B)を反応させるのが、耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜が得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)が得られることから好ましく、1,700〜3,600となるように反応させることがより好ましい」となる、
【0042】
また、下記GPC測定条件(2)で測定した値で好ましい範囲を規定すると、前記「重量平均分子量(Mw)が600〜1,800となるように前記フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)及びアルコール類(B)を反応させるのが、後述するポリエステル樹脂(主剤)と良好な硬化性を奏するアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)が得られることから好ましく、600〜1,500となるように反応させることがより好ましい。」との記載は、「重量平均分子量(Mw)が500〜1,600となるように前記フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)及びアルコール類(B)を反応させるのが、後述するポリエステル樹脂(主剤)と良好な硬化性を奏するアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)が得られることから好ましく、500〜1,400となるように反応させることがより好ましい。」となる
【0043】
従って、前記GPC測定条件(2)で測定した場合、本発明の製造方法において、得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)が1,700〜5,500で、且つ、メチロール基の50%以上がアルコキシ基となるように前記フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)及びアルコール類(B)を反応させるのが、後述するポリエステル樹脂(主剤)との相溶性が向上し、耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜が得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)が得られることから好ましく、重量平均分子量(Mw)が1,700〜3,600で、且つ、メチロール基の60〜90%がアルコキシ基となるように反応させることがより好ましい。
【0044】
そして、前記GPC測定条件(2)で測定した場合、本発明の製造方法においては、得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)が500〜1,600で、且つ、メチロール基の40〜59%がアルコキシ基となるように前記フェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)及びアルコール類(B)を反応させるのが、後述するポリエステル樹脂(主剤)との相溶性が向上し、耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜が得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)が得られることから好ましく、重量平均分子量(Mw)が500〜1,400で、且つ、メチロール基の40〜59%がアルコキシ基となるように反応させることがより好ましい。
【0045】
[GPC測定条件(2)]
測定装置:昭和電工株式会社製「Shodex GPC−104」、
カラム:昭和電工株式会社製ガードカラム「LF−G」(6.0mmI.D.×4cm)+昭和電工株式会社製「KF−804」(7.8mmI.D.×30cm)+ショーデックス株式会社製「KF−803」(7.8mmI.D.×30cm)+ショーデックス株式会社製「KF−802」(7.8mmI.D.×30cm)+ショーデックス株式会社製「KF−802」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ショーデックス株式会社社製「GPC−104」内臓RI検出器)
データ処理:システムインスツルメンツ株式会社製「SIC μ7 Data Station」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0046】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0047】
本発明のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、メタクレゾールを含むフェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)とを塩基性化合物の存在下で反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂(A)と、アルコール類(B)とを反応させて得られ、重量平均分子量が1,900〜6,000で、且つ、レゾール型フェノール樹脂(A)が有するメチロール基の50%以上がアルコキシ化されていることを特徴とする(以下、これを本発明の第一のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂と言う事がある。)。また、本発明のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、メタクレゾールを含むフェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)とを塩基性化合物の存在下で反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂(A)と、アルコール類(B)とを反応させて得られ、重量平均分子量が600〜1,800で、且つ、レゾール型フェノール樹脂(A)が有するメチロール基の40〜59%がアルコキシ化されていることを特徴とする(以下、これを本発明の第二のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂と言う事がある。)。第一のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂も第二のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂も、上記のような形態を取ることにより、後述するポリエステル樹脂(主剤)との相溶性が向上し、耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜が得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(硬化剤)となる。
【0048】
本発明の第一のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量と、本発明の第二のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、前記「GPC測定条件(1)」により測定し得られた値である。「GPC測定条件(2)」により測定する事により得られる本発明の第一のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、例えば、1,700〜5,500であり、本発明の第二のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、例えば、500〜1,600である。
【0049】
上記のような本発明の前記第一のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂や第一のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、例えば、本発明の製造方法で得られる樹脂、具体的には、メタクレゾールを含むフェノール類(a1)とアルデヒド類(a2)とを塩基性化合物の存在下で反応させてレゾール型フェノール樹脂(A)を得た後、該レゾール型フェノール樹脂(A)とアルコール類(B)とを、酸解離定数(pKa)が0以下の酸性化合物の存在下で反応させて得られる樹脂を好ましく例示することができる。
【0050】
本発明のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、水酸基を有する種々の樹脂の硬化剤として使用することができる。その為、本発明のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を硬化剤として、水酸基を有する樹脂を主剤として含有する樹脂組成物を得ることができる。この樹脂組成物は後述するように塗料等の分野に好ましく使用できる。
【0051】
前記水酸基を有する樹脂としては、例えば、水酸基を有するエポキシ樹脂、水酸基を有するアクリル樹脂、水酸基を有するアルキド樹脂、水酸基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。水酸基を有する樹脂の中でも、環境汚染の懸念や人体への影響の懸念が小さく、耐熱水性、加工性及び金属との密着性に優れる塗膜を得ることができる樹脂組成物が得られることから水酸基を有するポリエステル樹脂が好ましい。以下に、前記本発明の製造方法で得られるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂又は前記本発明のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂と、水酸基を有するポリエステル樹脂とを含有する樹脂組成物について詳述する。
【0052】
前記水酸基を有するポリエステル樹脂は、水酸基をその分子内中に含有するポリエステル樹脂である。このようなポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを、多価アルコールが有する水酸基が多塩基酸が有するカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させることにより得ることができる。
【0053】
前記多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸等の二塩基酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の三官能以上の多塩基酸等が挙げられる。多塩基酸は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0054】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、トリエチレングリコール、トリシクロデカングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエスリトール等が挙げられる。多価アルコールは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0055】
本発明で用いる水酸基を有するポリエステル樹脂は、上記の多塩基酸、多価アルコールを用い、種々のエステル化反応により製造することができる。また、上記の多塩基酸の代わりに多塩基酸の低級アルキルエステルを使用したエステル交換反応によっても製造することができる。
【0056】
本発明で用いる水酸基を有するポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、5,000〜100,000が好ましく、8,000〜35,000がより好ましい。ここで、数平均分子量(Mn)は、例えば、前記重量平均分子量(Mw)と同様の方法〔GPC測定条件(1)〕で求めることができる。
【0057】
本発明で用いる水酸基を有するポリエステル樹脂は、市販品を使用しても良い。市販品としては、例えば、バイロン103、バイロン822、バイロン885、バイロンGK330、バイロンGK570、バイロンGK590、バイロンGK640、バイロンGK680、バイロンGK780、バイロンGK810、バイロンGK880、バイロンGK890(以上、東洋紡績株式会社製);エリエーテルUE−3230(ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
【0058】
本発明の樹脂組成物中のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂と水酸基を有するポリエステル樹脂の配合割合としては、〔(フェノール樹脂)/(ポリエステル樹脂)〕=1/19〜1/1の範囲が好ましく、1/9〜1/2の範囲がより好ましい。
【0059】
本発明の塗料は前記本発明の樹脂組成物を含有することを特徴とする。本発明の塗料には、必要に応じて顔料、溶剤、添加剤等を添加することができる。
【0060】
前記顔料としては、例えば、無機顔料や有機顔料等を例示することができる。前記無機顔料としては、例えば、クロム酸塩(黄鉛、クロムバーミリオン)フエロシアン化物(紺青)、硫化物(カドミウムエロー、カドミウムレッド)、酸化物(酸化チタン、ベンガラ、鉄黒、酸化亜鉛)硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸鉛)、珪酸塩(群青、珪酸カルシウム)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)、燐酸塩(コバルトバイオレット)、金属粉末(アルミニウム粉末、ブロンズ)、炭素(カーボンブラック)等が挙げられる。
【0061】
前記有機顔料としては、例えば、アゾ系(ベンジジンイエロー、ハンザエロー、バルカンオレンジ、パーマネントレッドF5R、カーミン6B、レーキレッドC、クロモフタールレッド、クロモフタールエロー)、フタロシアニリン系(フタロシアニンブルー、フタロシアニリングリーン)等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0062】
前記溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系溶剤;エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0063】
前記添加剤としては、例えば、種々の滑剤、消泡剤、レベリング剤、滑剤等が挙げられる。また、硬化補助剤として、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、イソシアネート樹脂等の他の硬化剤を併用しても良い。
【0064】
更に、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂と水酸基を有するポリエステル樹脂との反応を促進する硬化触媒を本発明の樹脂組成物や塗料に含有させても良い。前記硬化触媒としては、例えば、リン酸等の無機酸;ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸及びこれらをアミン等でブロックしたもの等を好ましく使用することができる。硬化触媒の配合比は本発明の塗料や樹脂組成物の固形分量を基準として0.01〜5質量%含有することが好ましい。
【0065】
本発明の樹脂組成物や塗料は、缶のコーティング材として好ましく使用でき、特に、缶の内面用途のコーティング剤として好ましく使用できる。
【0066】
本発明の樹脂組成物や塗料は、エアースプレー、エアレススプレーまたは静電スプレー等の種々のスプレー塗装;浸漬塗装;ロールコーター塗装;グラビアコーターならびに電着塗装等種々の手段により、鋼板、缶用アルミニウム板等の金属基材やPETペットフィルム等の塗料として塗装することが出来る。塗布量は、乾燥塗膜厚では、0.1〜20μm程度が好ましい。
【0067】
また、本発明の樹脂組成物や塗料は、缶用塗料として使用する場合には、100〜28℃、1秒〜30分間なる範囲内で焼付けされることが好ましく、この範囲であると性能良好な硬化塗膜を形成することが出来る。
【実施例】
【0068】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。例中、「部」、「%」は特に断りのない限り質量基準である。なお、得られたアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の13C−NMRスペクトルの測定条件は下記の通りである。
【0069】
13C−NMRスペクトル測定条件]
装置:日本電子株式会社製「JNM−ECA500」
溶媒:アセトン
【0070】
実施例1(本発明のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法)
攪拌機、コンデンサー、温度計を備えた4つ口フラスコに、m−クレゾール108g(1モル)、37%ホルマリン324g(3モル)及び25%水酸化ナトリウム水溶液16g(0.1モル)を加え、70℃まで昇温し、70℃で3時間反応させ、重量平均分子量800のレゾール型フェノール樹脂を得た。反応終了後50%硫酸水溶液を添加して中和し、分離沈殿した樹脂を4回水洗した。更に、減圧脱水により水分を除去後、生成したレゾール型フェノール樹脂100部に対してn−ブタノールを400部加え、60%硫酸にて系内pHを3.7に調整した後、110℃で4時間反応させた。反応終了後、イオン交換水600gを添加し、60℃で攪拌、静置し、分離した下層の水を除去した。ついで減圧・脱溶剤し、固形分50%のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂()のn−ブタノール溶液を得た。該アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂()中のメチロール基に対するブトキシ基の置換度(アルコキシ化度)は80%であった。前記「GPC測定条件(1)」による重量平均分子量は1,000で、前記「GPC測定条件(2)」による重量平均分子量は900であった。
【0071】
比較例1(比較対照用のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法)
攪拌機、コンデンサー、温度計を備えた4つ口フラスコに、m−クレゾール540g(5モル)、92%パラホルム489g(15モル)、n−ブタノール740g(10モル)及び水酸化ナトリウム5.4gを加え、70℃まで昇温し、70℃で3時間反応させた。ついで、n−ブタノール1110g(15モル)を加え、60%蟻酸にて系内pHを3.7に調整した後、110℃で4時間反応させた。反応終了後、イオン交換水600gを添加し、60℃で攪拌、静置し、分離した下層の水を除去した。ついで減圧・脱溶剤し、固形分50%の比較対照用アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(1´)のn−ブタノール溶液を得た。該比較対照用アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(1´)中のメチロール基に対するブトキシ基の置換度(アルコキシ化度)は55%であった。前記「GPC測定条件(1)」による重量平均分子量は1,140で、前記「GPC測定条件(2)」による重量平均分子量は1,020であった。
【0072】
実施例〔本発明の樹脂組成物(塗料)〕
東洋紡績株式会社製ポリエステル樹脂「バイロンGK640」(該社により公表されている数平均分子量は18,000、Tg79℃、OH価5mgKOH/g)をメチルイソブチルケトンに最終濃度が50%となるように溶解し、ポリエステル樹脂溶液を作製した。このポリエステル樹脂溶液80部、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(1)のn−ブタノール溶液20部及びドデシルベンゼンスルホン酸0.05部を混合して、本発明の樹脂組成物(1)〔塗料(1)〕を得た。得られた樹脂組成物(1)〔塗料(1)〕を用いて下記方法にて塗膜を作製し、硬化性、耐熱水性、加工性及び金属との密着性を評価した。評価結果を第1表に示す。
【0073】
<硬化性の評価方法>
アルミ板にバーコーターで塗布量が70mg/dmとなるように樹脂組成物(1)を塗布した。この塗膜に対して剛体振り子試験を行いて硬化性を評価した。具体的には、剛体振り子粘弾性測定器(RPT−3000W型:AandD社)を用いて行い、塗膜と接触するエッジとして、ナイフエッジのRBE−160を用い、振り子としてはFRB−1000タイプを用いた。アルミ板にバーコーターで塗布量が70mg/dmとなるように樹脂組成物(1)を塗布し乾燥して得られた乾燥塗膜上に振り子を乗せ、昇温温度40℃/分で行い、振り子の揺れの対数減衰率が0.1となった時点を塗膜の硬化温度とした。この温度が低い程、硬化性に優れることを表す。
【0074】
<耐熱水性(耐レトルト性)の評価方法>
アルミ板にバーコーターで塗布量が70mg/dmとなるように樹脂組成物(1)を塗布し、250℃で2分間硬化させて硬化塗膜を有するアルミ板を得た。この板を、125℃で30分間、加圧レトルト装置にかけて熱水レトルト処理を行った。処理後、塗膜の表面を目視で確認し、下記基準に従って評価した。
【0075】
○:塗膜表面に白化や、浮き又は腫れ(ブリスター)が確認されない。
△:塗膜表面に若干の白化または若干のブリスターが確認される。
×:塗膜表面に多量の白化またはブリスターが確認される。
【0076】
<加工性の評価方法>
アルミ板にバーコーターで塗布量が70mg/dmとなるように樹脂組成物(1)を塗布したアルミ板を4×5cmに切断した試験片を、塗装面が外側になるように予備折り曲げし、試験片と同じ板厚のアルミ板2枚をスペーサーとして挟み込み、重さ3kgの錘を高さ50cmから落下させ試験片を得た。この試験片の折り曲げ部の外側を、1%食塩水をしみこませたスポンジに押し当て試験片に6V×3秒間通電させ通電試験機を用い電流値を測定し、以下の3段階で評価した。
○:電流値が1mA未満である。
△:電流値が1mA以上〜5mA未満である。
×:電流値が5mA以上である。
【0077】
<金属との密着性の評価方法>
アルミ板にバーコーターで塗布量が70mg/dmとなるように樹脂組成物(1)を塗布し、125℃で30分間硬化させて硬化塗膜を有するアルミ板を得た。この硬化塗膜に対して、JIS K 5400に準拠した碁盤目試験を行った。具体的には塗布面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目をいれ、1mm角の碁盤目を100個作成した。この上に粘着テープを貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った碁盤目の数をmとし、mの数を評価値とした。mの値が多い程、金属との密着性に優れる塗膜である。
【0078】
比較例2
アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(1)のn−ブタノール溶液のかわりに比較対照用アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂(1´)のn−ブタノール溶液を用いた以外は実施例3と同様にして比較対照用樹脂組成物(1´)〔比較対照用塗料(1´)〕を得た。実施例3と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0079】
【表1】