【解決手段】少なくとも一方の対向面31aに調心溝31bを形成した一対の素子31を有するメカニカルスプライスと、調心溝31b上で突き合わせるために前記メカニカルスプライスにその両端から光ファイバをそれぞれ導入する導入機構とを備えた光ファイバ接続器において、調心溝31bを有する一方の素子31に、調心溝31bを長さ方向に分断する溝部31hを設け、この溝部31hに弾性変形可能な固形の屈折率整合体を配置する。前記導入機構によってそれぞれ導入された光ファイバ同士が、溝部31hからずれた調心溝31h上で、一方の光ファイバの先端で押し伸ばされた前記屈折率整合体を介して突き合わせられる。
少なくとも一方の対向面に調心溝を形成した一対の素子を有するメカニカルスプライスと、前記調心溝上で突き合わせるために前記メカニカルスプライスにその両端から光ファイバをそれぞれ導入する導入機構とを備え、
前記調心溝を有する一方の前記素子に、前記調心溝を長さ方向に分断する溝部を設け、この溝部に弾性変形可能な固形の屈折率整合体を配置し、
前記導入機構によってそれぞれ導入された光ファイバ同士が、前記溝部からずれた前記調心溝上で、一方の光ファイバの先端で押し伸ばされた前記屈折率整合体を介して突き合わせられる光ファイバ接続器。
少なくとも一方の対向面に調心溝を形成した一対の素子を有するメカニカルスプライスと、前記調心溝上で突き合わせるために前記メカニカルスプライスにその両端から光ファイバをそれぞれ導入する導入機構とを用い、
前記メカニカルスプライスでは、前記調心溝を有する一方の前記素子に、前記調心溝を長さ方向に分断する溝部を設け、この溝部に弾性変形可能な固形の屈折率整合体を配置し、
前記導入機構によってそれぞれ導入された光ファイバ同士を、前記溝部からずれた前記調心溝上で、一方の光ファイバの先端で押し伸ばされた前記屈折率整合体を介して突き合わせる光ファイバの接続方法。
前記導入機構によって前記2本の光ファイバを前記調心溝に導入するにあたって、前記2本の光ファイバのうちの一方の光ファイバを前記素子の一端側から前記調心溝に導入し、前記一方の光ファイバの先端を前記一対の素子の間に固定した後、
前記2本の光ファイバのうちの他方の光ファイバを前記素子の他端側から前記調心溝に導入し、前記屈折率整合体を介して前記第1の光ファイバに突き合わせる請求項10に記載の光ファイバの接続方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜
図12は、本発明の光ファイバ接続器の第1形態例である光ファイバ接続器10Aを示す。
図9〜
図12に示すように、光ファイバ接続器10Aは、第1光ファイバ1Aと第2光ファイバ1Bとを突き合わせ接続するメカニカルスプライス30(接続機構)と、メカニカルスプライス30およびファイバ1A、1Bを保持する光ファイバ接続用ユニット10(導入機構)とを有する。
光ファイバ1A、1Bは、裸光ファイバ2aの外周面(側面)を被覆2bで覆った構成の被覆付き光ファイバ(光ファイバ2)であり、例えば光ファイバ心線や光ファイバ素線等である。メカニカルスプライス30は、以下、単にスプライス30ということがある。
【0011】
図9〜
図11に示すように、光ファイバ接続用ユニット10は、光ファイバ1A、1Bを保持する光ファイバホルダ20、20と、光ファイバホルダ20、20およびスプライス30を支持する支持台40(支持体)と、スプライス30の素子31、32間を開放する介挿片51を有する介挿部材50、50とを備えている。
【0012】
図9および
図10に示すように、支持台40は、スプライス30を支持する接続器支持部41と、接続器支持部41の一端側および他端側に光ファイバホルダ20,20を支持する一対のホルダ支持部42,42を有する。
以下、XYZ直交座標系を設定して各構成の位置関係を説明する。支持台40の長手方向をX方向とし、支持台40の底壁部43、46に垂直であって、X方向と直交する方向をY方向とする。X方向およびY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0013】
接続器支持部41は、細長板状の底壁部43と、底壁部43の上面43aにZ方向に間隔をおいて立設された一対の側壁部44,44と、底壁部43の上面43aの両端位置に立設された一対の端壁部45,45とを有する。
接続器支持部41は、底壁部43と側壁部44と端壁部45とによって構成される空間にスプライス30を位置決めして収納できる。
【0014】
図12に示すように、底壁部43には、介挿部材50の介挿片51を通すための介挿片通過口(介挿片通過部)43cが形成されている。介挿片通過口43cは、スプライス30の介挿片挿入穴35に相当する位置に形成されている。
図10に示すように、端壁部45は、スプライス30の両端面に当接してスプライス30の移動を規制できる。端壁部45には、光ファイバ1A、1Bを挿通させる切欠状のファイバ挿通部45bが形成されている。
【0015】
図9および
図10に示すように、ホルダ支持部42は、底壁部43と同じ方向に延在する長方形の底壁部46と、光ファイバホルダ20を接続器支持部41に接近および離間する方向(X方向)に案内するレール機構47と、ホルダ位置決め機構48(光ファイバ位置決め機構)とを有する。
レール機構47は、レール台部47Aと、レール台部47からZ方向に離れて形成された案内凸部47Bとを有する。
レール台部47Aと案内凸部47Bは、底壁部46の上面46aから上方に突出して形成され、それぞれX方向に沿って延在しており、光ファイバホルダ20の側方(Z方向)移動を規制するとともに、光ファイバホルダ20の前後方向(X方向)のスライド移動を案内できる。
【0016】
ホルダ位置決め機構48は、光ファイバホルダ20を所定位置に位置決めする機構であって、レール部46の上面46aにZ方向に互いに対向して設けられた一対の弾性係止片48a,48aを有する。
弾性係止片48aは、底壁部46の上面46aから上方に延出する延出板部48bの先端に、板状の係合片部48cを突設した形状になっている。係合片部48cは、延出板部48bの先端から内方に向けて張り出している。
【0017】
係合片部48cの突端の前後方向中央部には、光ファイバホルダ20の係止用突起24bが入り込む係合用凹所48dが形成されている。係合用凹所48dは、係合片部48cの突端から窪む切り欠き状に形成されている。
弾性係止片48aは、係合用凹所48dに光ファイバホルダ20の係止用突起24bが入り込んで該係止用突起24bと係合したときに、光ファイバホルダ20の前後方向の移動を規制できる。
この状態では、弾性係止片48aが、延出板部48bの弾性によって光ファイバホルダ20を挟み込み、光ファイバホルダ20を安定に保持し、位置決めする。
【0018】
図6〜
図8に示すように、スプライス30は、本発明のメカニカルスプライスの第1形態例であり、細長板状のベース部材31と、ベース部材31の長手方向に沿って配列設置した3つの蓋部材321、322、323によって構成される押さえ蓋32と、これらを内側に一括保持した細長形状のクランプばね33と、固形の屈折率整合材からなる屈折率整合体39(屈折率整合材層)を有する整合体チップ36とを備えている。
【0019】
図6および
図7に示すように、スプライス30は、ベース部材31(ベース側素子)と蓋部材321、322、323(蓋側素子)とからなる半割り把持部材34を有する。ベース部材31と蓋部材321、322、323とは、クランプばね33の弾性によって互いに閉じ合わせ方向に弾性付勢されている。
【0020】
ベース部材31の長手方向に沿って配列設置した3つの蓋部材321、322、323のうち、中央に位置する符号322の蓋部材を、以下、中央蓋、該中央蓋322の両側の蓋部材321、323をサイド蓋とも言う。また、サイド蓋のうち、符号321の蓋部材を、以下、第1サイド蓋、符号323の蓋部材を、以下、第2サイド蓋とも言う。
【0021】
スプライス30のベース部材31の対向面31aは、ベース部材31の長手方向全長にわたって延在形成されている。このベース部材31の対向面31aの長手方向(延在方向)中央部には、裸光ファイバ2a同士を突き合わせ接続(光接続)可能に互いに高精度に位置決め、調心するための調心溝31bと、整合体チップ36を保持する保持凹所31h(溝部)と、が形成されている。
【0022】
調心溝31bは、ベース部材31の対向面31aの中央蓋323に対向する部分に形成されている。
図8に示すように、調心溝31bは、形成角度が互いに異なる一対の内側面31b3、31b4を有し、深さ方向に徐々に幅が狭くなる形状を有する。図示例の調心溝31bは、互いに近づく方向に傾斜する平面である内側面31b3、31b4からなる断面V字形とされている。内側面31b3、31b4は、光ファイバ2の外周面に接して、この光ファイバ2を位置決めする。
なお、調心溝31bの断面形状は、U字形、半円形、矩形、深さ方向に幅を減じる台形など、任意としてよい。
【0023】
図7に示すように、ベース部材31の対向面31aの第1、第2サイド蓋321、323に対向する部分には、調心溝31bに比べて溝幅を大きくした被覆部挿入溝31c、31dが形成されている。被覆部挿入溝31c、31dは、ベース部材31長手方向において調心溝31bの延長上に延在形成されている。
被覆部挿入溝31c、31dと調心溝31bとの間には、被覆部挿入溝31c、31dから調心溝31b側に行くにしたがって溝幅が小さくなるテーパ状のテーパ溝31eが形成されている。各被覆部挿入溝31c、31dは、前記テーパ溝31eを介して調心溝31bと連通されている。
被覆部挿入溝31c、31dは、光ファイバ2の被覆2bが除去されていない被覆付き部分(被覆部)を、調心溝31bによって位置決めしたときの裸光ファイバ2aと同軸上に位置決めする。
【0024】
以下、
図1〜
図5を参照して、整合体チップ36およびこれを保持する構造について説明する。
図1〜
図5において、スプライス30のベース部材31の長手方向(
図3(a)の左右方向)は上述のX方向であり、ベース部材31の対向面31a内においてX方向と直交する方向は上述のY方向である。
【0025】
図1および
図3に示すように、保持凹所31hは、調心溝31bより深く形成された溝状の凹所であり、調心溝31bを横切って形成されており、これにより調心溝31bを長さ方向(
図3(a)の左右方向)に分断している。すなわち、保持凹所31hは、調心溝31bを、保持凹所31hより一端側(
図3(a)の右側)の調心溝31b1と、保持凹所31hより他端側(
図3(a)の左側)の調心溝31b2とに分断している。
保持凹所31hの形成方向は、調心溝31bに交差する方向であって、例えば調心溝31bに対し垂直な方向(Y方向)である。
なお、保持凹所31hは、調心溝31bを分断し得る形状であれば溝状に限らない。保持凹所の平面視形状は、例えばY方向寸法よりX方向寸法の方が大きい長方形や、正方形であってもよい。
【0026】
図3(a)に示すように、保持凹所31hの間隔(X方向の寸法)は、光ファイバ2が挿通部37に挿通可能となるように整合体チップ36のX方向移動を規制できればよく、例えば整合体チップ36の厚さよりやや大きく形成することができる。
保持凹所31hの幅方向(Y方向)の寸法は、光ファイバ2が挿通部37に挿通可能となるように整合体チップ36のY方向移動を規制できればよい。
図示例の保持凹所31hは、整合体チップ36の収容部分の形状に沿う形状とされ、整合体チップ36のおよそ半分を収容できる。
【0027】
保持凹所31hのX方向位置は、ベース部材31の長手方向の中央位置C1に対して、ベース部材31の長手方向にずれた位置とすることができる。
図3(a)および
図4において、保持凹所31hは、中央位置C1より右寄りの位置にある。
【0028】
図4において、保持凹所31hの中央位置C1側の内面31h1に整合体チップ36が当接した状態で、整合体チップ36の屈折率整合体39(位置P1)と中央位置C1とのX方向の距離A1は、例えば0.2〜1mmとすることができる。
距離A1を0.2mm以上とすることで、突き合わせ接続される一対の光ファイバ2の先端を確実に調心溝31bに載せ、調心の精度を高め、接続損失を低減できる。また、距離A1を1mm以下とすることで、屈折率整合体39の押し伸ばしが過剰となることによる屈折率整合体39の破損を防ぎ、反射特性を良好にできる。
上述の屈折率整合体39の位置P1は、中央位置C1側の面(
図4の左面)にあって、挿通部37の中心軸が通る箇所P2のX方向の位置である。
【0029】
図4に示す屈折率整合体39では、最薄部の表面(挿通部37の中央に相当する箇所P2)の厚さ方向の位置は、拡径部37b側から見て、開放面37cに比べて浅い位置(
図4の左寄り)にある。
【0030】
2本の光ファイバ2、2の突き合わせ接続位置は、2本の光ファイバ2、2の先端間の屈折率整合体39の厚さ方向の中間点とすることができる。
図5は、光ファイバ2、2の先端間の屈折率整合体39の厚さ方向の中間点のX方向位置が中央位置C1と一致している例を示す。
【0031】
光ファイバ2、2の突き合わせ接続点のX方向位置は中央位置C1でなくてもよく、例えば、
図4および
図5において、中央位置C1よりも左寄りの位置、すなわち、2本の光ファイバ2、2のうち、スプライス30に挿入された光ファイバ2Aの先端が、中央位置C1を越えて達した位置としてもよい。
光ファイバ2、2は、スプライス30の素子31、32の長さの半分を越える長さとすれば、光ファイバ2の長さに多少の変動があった場合でも、確実な突き合わせ接続が可能となる。
【0032】
第1、第2サイド蓋321、323の対向面の、ベース部材31の被覆部挿入溝31c、31dに対向する部位は、光ファイバ2(1A、1B)の被覆部を被覆部挿入溝31c、31dに押さえ込む平坦なファイバ押さえ面とされている。
中央蓋322の対向面322aの、ベース部材31の調心溝31bに対向する部位は、光ファイバ2(1A、1B)の裸光ファイバ2aを調心溝31bに押さえ込む平坦なファイバ押さえ面とされている。
なお、図示例ではベース部材31と押さえ蓋32のうちベース部材31のみに調心溝31bが形成されているが、調心溝はベース部材31と押さえ蓋32の両方に形成してもよいし、押さえ蓋32にのみ形成してもよい。
【0033】
図3(b)に示すように、中央蓋322の対向面322aには、整合体チップ36の一部を収容する収容凹所322dが形成されている。
収容凹所322dは、中央蓋322の長手方向に交差する方向に沿う溝状の凹所であり、保持凹所31hの形成方向に応じて形成することができる。例えば、保持凹所31hと同様に、Y方向に沿って形成することができる。
収容凹所322dの間隔(X方向の寸法)は、保持凹所31hの間隔より大きくすると、スプライス30を組み立てる操作が容易になる。
収容凹所322dのX方向の位置は、保持凹所31hのX方向の位置に応じた位置とされる。
【0034】
図2および
図4に示すように、整合体チップ36(整合体ユニット)は、裸光ファイバ2aが挿通する挿通部37を有する枠体38と、挿通部37内に形成された屈折率整合体39とを有する。
枠体38は、略矩形の板状に形成されている。
挿通部37は、枠体38を厚さ方向に貫通して形成され、枠体38の第1面38aに開口37a2を有する平面視略円形の挿通基部37aと、挿通基部37aより内径が大きい平面視略円形の拡径部37bとを有する。拡径部37bは、第2面38b(第1面38aとは反対の面。枠体38の一方の面)に開口37b2を有する。
挿通基部37aの内径は、例えば0.2〜0.5mmであり、拡径部37bの内径は、例えば0.5〜1mmである。
【0035】
開放面37cは、挿通基部37aの拡径部37b側の端部37a3から、拡径部37bの挿通基部37a側の端部37b3にかけて形成された面である。開放面37cは、拡径部37bの開口37b2に臨んで形成され、挿通部37の軸方向(X方向)に対し交差する面に沿う。開放面37cは、例えば面38a、38bに平行な面とすることができる。
なお、開放面37cは、挿通基部37aに近づくほど内径が小さくなるテーパ状の傾斜面としてもよい。
【0036】
図4に示すように、屈折率整合体39は、挿通部37内に、挿通部37を塞いで膜状に形成されている。
屈折率整合体39は、挿通部37における光ファイバ2の挿通方向(挿通部37の軸方向)に対して交差する面に沿う膜状とされている。図示例の屈折率整合体39は、概略、挿通部37の軸方向に対しほぼ垂直な面に沿って形成されており、その厚さ方向は挿通部37の軸方向に一致している。
屈折率整合体39は膜状に形成されているため、厚さ方向に押圧されることにより容易に伸び変形し、調心溝31bに到達する(
図5参照)。
【0037】
屈折率整合体39は、挿通基部37aから拡径部37bにかけて形成されている。具体的には、挿通基部37aの内周面37a1、拡径部37bの内周面37b1および開放面37cのほぼ全面に接して形成されている。
屈折率整合体39は挿通部37を塞ぐように形成されているため、挿通部37の内周面に全周にわたり接することから、屈折率整合体39の枠体38に対する接触面積が大きくなり、接着強度が高くなる。このため、屈折率整合体39は、光ファイバ2により押し伸ばされても枠体38から剥がれにくくなる。
また、挿通部37は挿通基部37aだけでなく拡径部37bを有するため、屈折率整合体39に対する接触面積が大きくなることから、接着強度が高くなり、屈折率整合体39が剥離しにくくなる。
開放面37cは光ファイバ2の挿通方向(
図4の左方向)に対し交差する面であるため、光ファイバ2により押し伸ばされた際に屈折率整合体39の剥離抵抗が大きくなることから、屈折率整合体39は枠体38から剥がれにくくなる。
【0038】
屈折率整合体39が枠体38に接する領域は、内周面37a1、37b1と開放面37cの全面でなくてもよい。例えば、内周面37a1、37b1については、全領域でなく一部領域であってもよい。また、屈折率整合体39は、内周面37a1と開放面37cにのみ接していてもよいし、内周面37b1と開放面37cにのみ接していてもよい。
【0039】
屈折率整合体39の第2面38b側の面39bは、挿通部37の中央に近づくほど深く形成された湾曲凹面となっている。
図4では、面39bは、拡径部37bの開口37b2の縁部37b4を通る断面略円弧形の湾曲凹面である。
この面39bは、第2面38bに対して凹面をなすため、
図4に示す未変形の屈折率整合体39は、枠体38が保持凹所31hの内面31h1(
図4の左側の面)に当接した位置にあっても、調心溝31b(31b2)の端部31i(保持凹所31h側の端部)から離れた位置にある。
【0040】
図5に示すように、光ファイバ2先端に押し伸ばされた屈折率整合体39は、枠体38から離れるほど幅が狭くなる形状となるため、調心溝31bの端部31iに相当する位置では十分に幅が狭くなっており、端部31iに強く押し付けられることがない。よって、端部31iに引っかかって過大な引張力が加えられることによる屈折率整合体39の破損が起こりにくい。
【0041】
屈折率整合体39は、第1面38a側の面39aも、挿通部37の中央に近づくほど深く形成された湾曲凹面となっている。この面39aは、挿通基部37aの開口37a2の縁部37a4を通る断面略円弧形の湾曲凹面である。
屈折率整合体39は、両面が凹面であるため、中央に行くほど厚さを減じ、挿通部37の中央に相当する箇所P2が最も薄くなっている。
【0042】
屈折率整合体39は、屈折率整合性を有することが必要である。
屈折率整合性とは、この屈折率整合体39の屈折率と、光ファイバ2の屈折率との近接の程度をいう。屈折率整合体39の屈折率は、光ファイバ2に近いほどよいが、フレネル反射の回避による伝送損失低減の点から、光ファイバ2との屈折率の差が±0.1以内であることが好ましく、さらに好ましくは±0.05以内である。突き合わせ接続される2本の光ファイバ2の屈折率が互いに異なる場合には、2本の光ファイバ2の屈折率の平均値と屈折率整合体39の屈折率との差が上記範囲内にあることが望ましい。
【0043】
屈折率整合体39は、弾性的に変形可能とされる。屈折率整合体39の材質としては、例えばアクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系などの高分子材料を挙げることができる。
【0044】
屈折率整合体39のショア硬度E(JIS K 6253に準拠)は、例えば30以下とすることができる。これによって、屈折率整合体39は、光ファイバ2に押圧される際に、十分な伸び変形が可能となる。
屈折率整合体39の厚みは、例えば50μm以下(例えば10〜50μm)とすることができる。これによって、突き合わせされる光ファイバ2A1、2B1の端部の位置を正確に定め、初期特性を安定にし、接続損失を低くできる。
前記厚みとは、例えば光ファイバ2の先端に当接する部分の屈折率整合体39の平均厚みであってもよいし、前記部分の最大または最小厚みであってもよい。
前記厚みは、平面視において挿通基部37a内に位置する部分の厚み(前記部分の平均、最大または最小の厚み)であってもよい。
【0045】
屈折率整合体39は、調心溝31b内に設けられるため、調心溝31bを長さ方向に分断する位置に設置されることになる。このため、屈折率整合体39は、調心溝31bに案内された光ファイバ2の進行経路に位置することになる(
図5参照)。
【0046】
屈折率整合体39は、液状屈折率整合材を挿通部37に滴下して挿通部37内に膜状に形成した後、硬化させることによって形成することができる。
【0047】
図4に示すように、屈折率整合体39は、未変形状態では保持凹所31h内にあるが、
図5に示すように、光ファイバ2(2A)の先端2A1により押圧されると調心溝31b(31b2)上に達するまで押し伸ばされる。
光ファイバ2Aは、先端2A1だけでなく先端2A1の近傍部分も含めて調心溝31b(31b2)上に位置するのが好ましい。近傍部分とは、例えば先端2A1から例えば長さ0.01〜0.5mmの部分である。
これによって、光ファイバ2A1、2B1は高い精度で調心され、光ファイバ2A1、2B1間の接続損失を低くできる。
【0048】
図7に示すように、クランプばね33は、細長板状の背板部33aの両側から、該背板部33aの長手方向全長にわたって、背板部33aに垂直に側板部33bが張り出された構成になっている。
一対の側板部33bの一方はベース部材31の蓋部材321、322、323に対向する対向面31aとは反対の背面に当接し、他方の側板部33bは蓋部材321、322、323のベース部材31に対向する対向面とは反対の背面に当接する。クランプばね33は、ベース部材30と蓋部材321、322、323とを、互いに対向する対向面を閉じ合わせる方向に弾性付勢している。
【0049】
クランプばね33の一対の側板部33bは、それぞれ、スプライス30の押さえ蓋32の3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分かれている。押さえ蓋32に当接する側板部33bは、第1サイド蓋321と中央蓋322との境界、及び中央蓋322と第2サイド蓋323との境界に対応する位置にそれぞれ形成されたスリット状の切り込み部33dによって、3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分断されている。ベース部材31に当接する側板部33bは、蓋部材321、322、323に当接する側板部33bの切り込み部33dに対応する位置に形成された切り込み部33dによって、3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分断されている。
【0050】
クランプばね33は、第1サイド蓋321とベース部材31とを保持する第1クランプばね部331と、中央蓋322とベース部材31とを保持する第2クランプばね部332と、第2サイド蓋323とベース部材31とを保持する第3クランプばね部333とを有する。第1〜3クランプばね部331〜333は、互いに独立したクランプばねとして機能する。
なお、第1クランプばね部331の一対の側板部に符号331b、第2クランプばね部332の一対の側板部に符号332b、第3クランプばね部333の一対の側板部に符号333bを付記する。
【0051】
スプライス30は、3つのクランプばね部に対応する3つのクランプ部を有する。
すなわち、このスプライス30は、第1クランプばね部331の内側に第1サイド蓋321とベース部材31とを保持した第1クランプ部と、第2クランプばね部332の内側に中央蓋322とベース部材31とを保持した第2クランプ部と、第3クランプばね部333の側に第2サイド蓋323とベース部材31とを保持した第3クランプ部とを有する。
3つのクランプ部は、それぞれ、個々のクランプ部に対応するクランプばね部の弾性によって、半割りの素子(ベース部材31(ベース側素子)と蓋部材(蓋側素子))の間に光ファイバを把持固定できる。
【0052】
スプライス30の半割り把持部材34は、クランプばね33の背板部33aとは反対側(開放側)に露出する側面(開放側の側面)を有する。該開放側の側面には、前記介挿片41を挿入するための介挿片挿入穴35が開口されている。
この介挿片挿入穴35は、ベース部材31及び3つの蓋部材321、322、323の対向面の互いに対応する位置に形成された介挿片挿入溝31g、321c、322c、323cによって、ベース部材31と蓋部材321、322、323との間に確保されている。
介挿片挿入穴35は、中央蓋322におけるベース部材31長手方向に沿う方向の中央部を介して両側に対応する2カ所、第1サイド蓋321及び第2サイド蓋323のベース部材31長手方向に沿う方向の中央部に対応する位置の、計4箇所に形成されている。
【0053】
図9に示すように、スプライス30は、クランプばね33の背板部33aを上方に向け、クランプばね33の一対の側板部33bを側壁部44に向けて接続器支持部41内に収容されている。このため、スプライス30は、クランプばね33の背板部33aとは反対の側(開放側)を底壁部43に向けて接続器支持部41内に収容されている。
【0054】
光ファイバホルダ20は、ホルダベース体22と、このホルダベース体22の上面に載置された光ファイバ2(1A、1B)を上から押さえる押さえ部材23とを備えている。
【0055】
図11および
図12に示すように、第1および第2介挿部材50(50A,50B)は、支持台40の底壁部43の下面43b側に、互いに独立に動作可能となるように取り付けられている。
介挿部材50(50A,50B)は、支持台40に軸支された回転軸部52から延出する介挿部材本体53と、介挿部材本体53の基端部53aから延出する操作片54とを備えている。
介挿部材本体53は、断面略矩形の延出体55と、その上面55a(支持台40側の面)に形成された介挿片51、51とを有する。
介挿片51は、その厚さ方向が幅方向と一致する向きで、介挿部材本体53の長手方向に間隔をおいて2箇所に突設されている。
【0056】
第1介挿部材50Aの介挿片51は、スプライス30の第1サイド蓋321に対応する1カ所、及び中央蓋322における第1サイド蓋321側の1カ所の計2カ所の介挿片挿入穴35に挿入可能な位置に形成されている(
図6、
図7参照)。
これら2カ所の介挿片挿入穴35は、スプライス30の略中央より一端側の位置にある。この位置は、スプライス30の一端側を開放できる位置であって、スプライス30の略中央から一端までの範囲にある。
第2介挿部材50Bの介挿片51は、スプライス30の中央蓋322における第2サイド蓋323側の1カ所、及び第2サイド蓋323に対応する1カ所の計2カ所の介挿片挿入穴35に挿入可能な位置に形成されている。
これら2カ所の介挿片挿入穴35は、スプライス30の略中央より他端側の位置にある。この位置は、スプライス30の他端側を開放できる位置であって、スプライス30の略中央から他端までの範囲にある。
【0057】
図11に示すように、回転軸部52は、幅方向に間隔をおいて立設された一対の突出板部52aを有し、突出板部52aには、軸受口部52bが形成されている。
軸受口部52bには、軸受口部52aを有する支持台40の端壁部45に外側方に突出して形成された凸状の軸部45dが挿入され、これによって介挿部材50は支持台40に軸支される。
介挿部材50は、回転軸部52を中心にして回動可能である。すなわち、介挿部材50は、実線で示すように介挿片51がスプライス30の介挿片挿入穴35に挿入される位置(挿入位置)と、2点鎖線で示すように介挿片51がスプライス30から抜出された位置(抜出位置)との間で任意に回動できる。
介挿片51は、支持台40の接続器支持部41の底壁部43に形成された介挿片通過口43cを通してスプライス30に対し挿入および抜出できる。
操作片54は、介挿部材本体53とは異なる方向に延出して形成されている。具体的には、介挿部材本体53に対し傾斜する方向に延出している。
【0058】
図24は、光ファイバ2(1A、1B)として使用可能な空孔付き光ファイバ70を示す断面図である。
空孔付き光ファイバ70は、コア71と、その周囲を囲むクラッド部72とを備え、クラッド部72内には光ファイバ70の長手方向に沿在する複数の空孔73が形成されている。空孔73は、例えば、コア71に対して同心円状に配列される。空孔73の数や配置は図示例に限定されない。空孔付き光ファイバは、例えば、光ファイバの光閉じ込め効果を高め、曲げ損失を低減できる。
光ファイバ接続器10Aでは、固形の屈折率整合材からなる屈折率整合体39を用いるため、空孔付き光ファイバ70を用いる場合でも屈折率整合体39が空孔73内に浸入することはなく、光学特性への悪影響は生じない。なお、
図24では被覆は図示していない。
光ファイバ2(1A、1B)としては、空孔がない光ファイバを使用してもよい。
【0059】
次に、本発明の光ファイバの接続方法の一例について説明する。
ここに説明する光ファイバ接続方法は、まず、第1光ファイバ1Aをスプライス30に挿入する第1ファイバ挿入工程を行い、次いで第2光ファイバ1Bをスプライス30に挿入する第2ファイバ挿入工程を行う。
【0060】
(予備工程)
図13(a)に示すように、スプライス30を接続器支持部41に収容する。
スプライス30は、整合体チップ36が、中央位置C1よりも第1ホルダ支持部42A側(
図13の右側)に位置するように配置してもよいし、中央位置C1よりも第2ホルダ支持部42B側(
図13の左側)に位置するように配置してもよい。
ここでは、スプライス30は、整合体チップ36が中央位置C1よりも第1ホルダ支持部42A側(
図13の右側)に位置するように配置する。
介挿部材50(50A,50B)を、回転軸部52を中心として回動させることにより、介挿片51を素子31、32間に挿入する。
図8に示すように、介挿片51が介挿片挿入穴35に挿入されると、素子31、32は、光ファイバ1A、1Bの挿入が可能な程度に押し開かれる。
【0061】
光ファイバ1A、1B(光ファイバ2)を、ホルダベース体22上に、押さえ部材23で押さえつけて把持した後(
図9参照)、図示せぬ被覆除去器によって光ファイバ1A、1Bの先端部分の被覆を除去する。必要に応じて光ファイバカッター(図示略)を用いて光ファイバ1A、1Bの先端部分を切除し、光ファイバ1A、1Bを所定の長さとする。
【0062】
第1光ファイバ1Aの光ファイバホルダ20前端からの突出長は、この光ファイバホルダ20がホルダ位置決め機構48により位置決めされた状態で、スプライス30の一端側から挿入された第1光ファイバ1Aの先端が、スプライス30の長手方向中央位置C1に達する長さ、または中央位置C1よりもやや他端側の位置に達する長さとするのが好ましい。
【0063】
(第1ファイバ挿入工程)
第1光ファイバ1Aを把持した光ファイバホルダ20が載置されるホルダ支持部42を第1ホルダ支持部42Aといい(
図13の右のホルダ支持部42)、第2光ファイバ1Bを把持した光ファイバホルダ20が載置されるホルダ支持部42を第2ホルダ支持部42B(同図における左のホルダ支持部42)という。
【0064】
図13(a)に示すように、第1光ファイバ1Aを把持した光ファイバホルダ20を、第1ホルダ支持部42A上に載置し、レール機構47に沿ってスプライス30に向けて前進させる。第1光ファイバ1Aはスプライス30の一端側から素子31、32間に挿入され、調心溝31bに導入される。
光ファイバホルダ20の係合突起24b、24bがホルダ位置決め機構48の係合用凹所48d,48dに係合すると、光ファイバホルダ20および第1光ファイバ1Aは位置決めされる。
【0065】
光ファイバホルダ20が前進する過程で、第1光ファイバ1Aは調心溝31bに沿って進行し、整合体チップ36の挿通部37に挿入され、屈折率整合体39を押し伸ばす。光ファイバホルダ20および第1光ファイバ1Aは位置決めされた状態では、光ファイバ1Aの先端2cは、保持凹所31hよりも第2ホルダ支持部42B寄りの位置で調心溝31b上に配置される。
この過程を、
図5を参照して説明する。光ファイバ2A(第1光ファイバ1A)は、調心溝31b内を右から左に向けて進行し、先端2A1は挿通部37内に挿通基部37a側から挿入され、屈折率整合体39を押圧する。
未変形状態では保持凹所31h内に位置していた屈折率整合体39は、光ファイバ2Aの先端2A1によって左方に押し伸ばされ、先端2A1に接する部分は、先端2A1とともに調心溝31b(31b2)上に至る。この際、光ファイバ2Aは、先端2A1だけでなくその近傍部分も含めて調心溝31b(31b2)上に配置されるのが好ましい。
図5では、先端2A1はほぼ中央位置C1に達しているが、先端2A1は中央位置C1を越えてさらに左に進行した位置に達してもよい。
【0066】
次いで、
図13(b)に示すように、第1介挿部材50Aの操作片54の操作により第1介挿部材50Aを回動させると、介挿部材本体53がスプライス30から離れる方向に移動し、介挿片51がスプライス30から抜き出される。
第1スプライス用工具40の介挿片51をスプライス30から抜き去ると、第1光ファイバ1Aが、スプライス30のクランプばね33の弾性によって、スプライス30の第1サイド蓋321とベース部材31との間、及び中央蓋322とベース部材31との間に把持固定される。これによって、光ファイバ1Aは、長さ方向の移動が規制される。
なお、光ファイバ1Aの長さ方向の移動規制には、介挿片51の抜去により光ファイバ1Aを素子31、32間に把持固定する手法に限らず、他の手法を採用してもよい。
【0067】
第1介挿部材50Aを回動させると、介挿部材本体53は基端部53a側を中心として傾動するため、2つの介挿片51のうち、介挿部材本体53の先端側にある第1介挿片51aは、基端側に位置する第2介挿片51bよりも移動距離が大きくなり、抜き去りが比較的早期に完了する。
【0068】
(第2ファイバ挿入工程)
図13(c)に示すように、第2光ファイバ1Bを把持した光ファイバホルダ20を、第2ホルダ支持部42B上に載置し、レール機構47に沿ってスプライス30に向けて前進させる。
第2光ファイバ1Bはスプライス30の他端側から素子31、32間に挿入され、調心溝31bに導入される。
光ファイバホルダ20の係合突起24b、24bがホルダ位置決め機構48の係合用凹所48d,48dに係合すると、光ファイバホルダ20および第2光ファイバ1Bは位置決めされる。
【0069】
光ファイバホルダ20が前進する過程で、第2光ファイバ1Bは、調心溝31bに沿って進行し、第1光ファイバ1A先端に、屈折率整合体39を介して突き当てられる。
図13のP1は、光ファイバ1A、1Bの突き合わせ位置である。
この過程を、
図5を参照して説明する。光ファイバ2B(第2光ファイバ1B)は、調心溝31b内を左から右に向けて進行し、調心溝31b(31b2)上で、光ファイバ2Aの先端2A1に、屈折率整合体39を介して突き当てられる。
光ファイバ1A、1Bの先端同士の突き当ては、具体的には第2光ファイバ1Bの先端部に口出しされた裸光ファイバ2a先端と、第1光ファイバ1A先端部に口出しされた裸光ファイバ2a先端との突き合わせである。
【0070】
第1光ファイバ1Aはスプライス30に固定済みであるので、第2光ファイバ1Bを第1光ファイバ1Aに突き当て(突き合わせ)たときに、第1光ファイバ1Aに長手方向の位置ずれは生じない。
このため、光ファイバ1A、1Bの長手方向の位置変動により過大な力が加えられることを原因として屈折率整合体39が破損するのを防止できる。
【0071】
第2光ファイバ1Bには、光ファイバホルダ20とスプライス30との間に、たわみ部2dを形成してもよい。たわみ部2dの形成を確認することにより、光ファイバ1A、1Bが突き合わせられたことを目視で確認することができる。
【0072】
次いで、
図13(d)に示すように第2介挿部材50Bの操作片54に、支持台40に近づく方向への押圧力を作用させて、第2介挿部材50Bを回動させる。第2介挿部材50Bは介挿部材本体53がスプライス30から離れる方向に移動し、介挿片51がスプライス30から抜き出される。
介挿片51をスプライス30から抜き去ると、第2光ファイバ1Bが、第1光ファイバ1Aとの突き合わせ状態を保ったまま、スプライス30のクランプばね33の弾性によって、スプライス30の第1サイド蓋321とベース部材31との間、及び中央蓋322とベース部材31との間に把持固定される。
これにより、光ファイバ1A、1Bは、突き合わせ接続された状態でスプライス30に把持固定される。
次いで、光ファイバホルダ20の押さえ部材23を開放し、光ファイバ1A、1Bを取り外し可能とし、スプライス30および光ファイバ1A、1Bを光ファイバ接続用ユニット10から取り外す。
【0073】
前記予備工程においては、スプライス30の姿勢を逆にしてもよい。すなわち、整合体チップ36が、中央位置C1よりも第2ホルダ支持部42B側(
図13の左側)に位置するようにスプライス30を接続器支持部41に収容して、同様の工程により光ファイバ1A、1Bを接続することもできる。
この場合には、第1光ファイバ挿入工程において、第1光ファイバ1Aの先端は、整合体チップ36に到達せず、整合体チップ36より手前の調心溝31b上に位置する。
介挿片51をスプライス30から抜き出し、第1光ファイバ1Aを押さえ蓋32とベース部材31との間に把持固定する。これによって、光ファイバ1Aは、長さ方向の移動が規制される。
【0074】
第2光ファイバ挿入工程では、第2光ファイバ1Bは、整合体チップ36の屈折率整合体39を押し伸ばしつつ、保持凹所31hよりも第1ホルダ支持部42A寄りの位置で調心溝31bに載り、屈折率整合体39を介して光ファイバ1Aに突き合わせ接続される。
このとき、第1光ファイバ1Aはスプライス30に固定済みであるので、第2光ファイバ1Bを第1光ファイバ1Aに突き当てたときに、第1光ファイバ1Aに位置ずれは生じない。このため、光ファイバ1A、1Bの長手方向の位置変動により屈折率整合体39に過大な力が加えられることを原因として屈折率整合体39が破損するのを防止できる。
【0075】
光ファイバ接続器10Aでは、光ファイバ1A先端または光ファイバ1B先端で押し伸ばされた屈折率整合体39を介して光ファイバ1A、1Bが突き合わせ接続され、この光ファイバ1A、1B先端が調心溝31bで位置決め調心されるので、接続損失の低減を図ることができる。
これに対し、光ファイバ1A、1Bが調心溝31bに到達せず、保持凹所31h内で突き合わせ接続される場合には、光ファイバ1A、1Bの先端は調心溝31bによる位置決めがなされないため、軸心位置のズレが起こりやすく、接続損失が大きくなるおそれがある。
【0076】
また、前述の光ファイバ接続方法によれば、光ファイバ1A先端または光ファイバ1B先端で屈折率整合体39を押し伸ばすとともに、光ファイバ1A、1Bの先端を、屈折率整合体39を介して調心溝31bで位置決め調心するので、接続損失の低減を図ることができる。
【0077】
図14および
図15に示すように、拡径部37b側(第2面38b側)から見た、屈折率整合体39の表面の深さ位置は、
図4に示すものに限定されず、適宜変更可能である。例えば、最薄部(挿通部37の中央に相当する箇所P2)の表面は、拡径部37b側から見て、開放面37cとほぼ同じ深さ位置にあってもよいし(
図14参照)、開放面37cより深い位置にあってもよい(
図15参照)。
【0078】
図16は、整合体チップの他の例である整合体チップ36Aを示す斜視図である。整合体チップ36Aの枠体38Aの挿通部37Aの挿通基部37d1および拡径部37e1の平面視形状は、矩形とされている。
この整合体チップ36Aは、挿通基部37d1および拡径部37e1が角部を、断面V字形の調心溝31bの最深部に合せて配置することによって、押し伸ばされる屈折率整合体39の形状を、調心溝31bに応じた形状とすることができる。このため、屈折率整合体39が調心溝31bの端部(例えば
図4の端部31i)に当接しにくくなる。
【0079】
図17は、整合体チップの他の例である整合体チップ36Bを示す斜視図である。整合体チップ36Bの枠体38Bの挿通部37Bは、挿通基部37d2の両面側にそれぞれ拡径部37e2が形成されている点で、
図4に示す整合体チップ36と異なる。
この整合体チップ36Bは、厚さ方向に対称な構造であるため、表裏面の取り違えによる誤操作が起こらないという利点がある。
【0080】
図22および
図23は、本発明の光ファイバ接続器の第2形態例である光コネクタ110を示す斜視図である。
光コネクタ110は、現場組立形の光コネクタであり、光ファイバケーブル131の端末に組み立てられ、光ファイバケーブル131の光ファイバ2と内蔵光ファイバ62とを接続する。
光ファイバケーブル131は、例えば、光ファイバ2と、可撓性を有する線状の抗張力体(図示略)とを互いに並行になるように合成樹脂製の外被133によって一括被覆したものである。
以下の説明において、フェルール61の接合端面61bに向かう方向を前方といい、その反対方向を後方ということがある。また、第1形態例のスプライス30との共通部分については、同じ符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0081】
光コネクタ110は、スリーブ状のつまみ91と、つまみ91内に設けられたプラグフレーム92と、プラグフレーム92内に設けられたクランプ部付きフェルール60と、プラグフレーム92に取り付けられた後側ハウジング140と、クランプ部付きフェルール60を前方へ弾性付勢するスプリング153とを備えている。
光コネクタ110は、例えばSC形光コネクタ(JIS C5973に制定されるF04形光コネクタである。プラグフレーム92および後側ハウジング140は、クランプ部付きフェルール60を支持する支持体として機能する。
【0082】
図18および
図19に示すように、クランプ部付きフェルール60は、光ファイバ62(内蔵光ファイバ62)を内挿固定したフェルール61の後側に、内蔵光ファイバ62の後側突出部62aと、後側から挿入して内蔵光ファイバ62後端に突き当てた光ファイバ2先端部とを把持固定して光ファイバ62、2同士の突き合わせ接続状態を維持するクランプ部63を組み立てたものである。
【0083】
クランプ部63は、本発明のメカニカルスプライスの第2形態例であって、フェルール61のフランジ部64から後側に延出するベース部材65(後側延出片65)(ベース側素子)と蓋部材66、67(蓋側素子)と、これらを内側に一括保持したクランプばね68と、屈折率整合体39を有する整合体チップ36とを備えている。
クランプ部63は、ベース部材65と蓋部材66、67との間に、内蔵光ファイバ62の後側突出部62aと、内蔵光ファイバ62後端に突き当てた光ファイバ2先端部とを挟み込んで把持固定することができる。
クランプ部付きフェルール60の内蔵光ファイバ62後端に突き合わせ接続する光ファイバ2を、挿入光ファイバ2ともいう。
【0084】
内蔵光ファイバ62は、フェルール61にその軸線と同軸に貫設された微細孔であるファイバ孔61aに内挿され、接着剤を用いた接着固定等によってフェルール61に固定されている。このため、フェルール61は内蔵光ファイバ62を、クランプ部63の前側でクランプ部63に対し位置決めする位置決め機構として機能する。
内蔵光ファイバ62の前端の端面は、フェルール61先端(前端)の接合端面61bに露出している。
フェルール61の後端部には、その外周に周設(突設)されたフランジ部64が一体化されている。
クランプ部63は、フランジ部64からフェルール61後側へ延出された後側延出片65と、蓋部材66、67とを、クランプばね68の内側に一括保持した構成になっている。
【0085】
後側延出片65の蓋部材66、67に対面する対向面65a(溝形成面)には、内蔵光ファイバ62の後側突出部62aをフェルール61のファイバ孔61aの後方延長上に位置決めする調心溝69aと、整合体チップ36を保持する保持凹所131h(溝部)と、調心溝69aの後端から後方に延在する被覆部収納溝69bが形成されている。
【0086】
後蓋部材67の対向面67aには、後側延出片65の被覆部収納溝69bに対応する位置に被覆部収納溝69cが延在形成されている。
前蓋部材66には、後側延出片65の対向面65aに対面する平坦な対向面66aが形成されている。
【0087】
図18および
図20および
図21(a)に示すように、保持凹所131hは溝状の凹所であり、調心溝69aを横切って形成され、調心溝69aを長さ方向に分断している。このため、保持凹所131h内に設置される整合体チップ36の屈折率整合体39は、調心溝69aを分断して設置される。
保持凹所131hの形成方向は、調心溝69aに交差する方向であって、例えば調心溝69aに対し垂直な方向である。
保持凹所131hは、整合体チップ36のおよそ半分を収容できる。
【0088】
保持凹所131hの、クランプ部63の長手方向の位置は、内蔵光ファイバ62の後端62bよりも、前記長手方向の後方にずれた位置とすることができる。
保持凹所131h内の整合体チップ36の屈折率整合体39と内蔵光ファイバ62の後端62bとの前後方向の距離は、例えば0.2〜1mmとすることができる。
【0089】
図21(b)に示すように、前蓋部材66の対向面66aには、整合体チップ36の一部を収容する収容凹所66bが形成されている。収容凹所66bは、前蓋部材66の長手方向に交差する方向に沿う溝状の凹所であり、保持凹所131hの形成方向に応じて形成することができる。例えば、保持凹所131hと同様に、調心溝69aに対し垂直な方向に沿って形成することができる。
【0090】
後側延出片65と蓋部材66、67との間には、スプライス用工具80介挿片81が抜き去り可能に介挿できる(
図22参照)。
介挿片81は、つまみ91の介挿片挿通孔91a、プラグフレーム92の介挿片挿通孔92a、および、後側ハウジング140の胴部141eの介挿片挿通孔141bを介してクランプ部63の後側延出片65と蓋部材66、67との間に挿入できる。
【0091】
後側ハウジング140は、スリーブ状の胴部141eを有するストップリング部141と、後方に延出する固定部材受け部143と、固定部材付きケーブル端末131aの前進を案内する挿入補助スライダ145と、固定部材付きケーブル端末131aを引き留める引き留めカバー146(光ファイバ位置決め機構)とを有する。
固定部材付きケーブル端末131aは、光ファイバケーブル131端末と、該端末に固定した引留用固定部材120とからなる。
【0092】
次に、光ファイバケーブル131端末への光コネクタ110の組み立て方法の一例を説明する。
挿入補助スライダ145に載置した固定部材付きケーブル端末131aを前進させ、光ファイバケーブル131端末から突出する光ファイバ2を、クランプ部付きフェルール60の調心溝69aに送り込む。
【0093】
この際、光ファイバ2は、整合体チップ36の屈折率整合体39を押し伸ばしつつ、保持凹所131hよりも前方寄りの位置で調心溝69aに載り、屈折率整合体39を介して内蔵光ファイバ62の後端62bに突き合わせ接続される。
このとき、内蔵光ファイバ62はフェルール61に固定されているため、内蔵光ファイバ62に位置ずれは生じない。このため、光ファイバ2、62の長手方向の位置変動により屈折率整合体39に過大な力が加えられることを原因として屈折率整合体39が破損することはない。
【0094】
固定部材付きケーブル端末131aは、前進によって、固定部材受け部143内側に収納される。
引き留めカバー146を回動させ固定部材付きケーブル端末131aに被せると、後退規制片146fを、固定部材付きケーブル端末131aの引留用固定部材120の後端に当接させ、固定部材付きケーブル端末131aの後退を規制することができる。また、固定部材付きケーブル端末131aは、後側ハウジング140内の凸部等(図示略)に当接することにより前進が規制される。
これによって、固定部材付きケーブル端末131aは前後方向の位置が定められ、クランプ部付きフェルール60の内蔵光ファイバ62に対する光ファイバ2の突き合わせ接続状態を保つことができる。
【0095】
クランプ部付きフェルール60のクランプ部63から、後側延出片65と蓋部材66、67との間に介挿されている介挿片81を抜き去ると、クランプばね68の弾性によって、後側延出片65と蓋部材66、67との間に光ファイバ2先端の裸光ファイバ2aが把持固定される。これにより、クランプ部付きフェルール60の内蔵光ファイバ62に対する光ファイバ2の突き合わせ接続状態を安定に保つことができる。
【0096】
光コネクタ110では、光ファイバ2の先端で押し伸ばされた屈折率整合体39を介して光ファイバ2、62が突き合わせ接続され、この光ファイバ2、62の端部は調心溝69aで位置決め調心されるので、接続損失の低減を図ることができる。
【0097】
本発明は上述の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、
図1等に示す整合体チップ36は、スプライス30のベース部材31および押さえ蓋32とは別体であるが、整合体チップ36は、枠体38をベース部材31または押さえ蓋32と一体に形成してもよい。
【0098】
図25(a)および
図25(b)に示すように、ベース部材31の調心溝31b(31b2)の内面には、切欠き31kを形成することができる。
切欠き31kは、保持凹所31hより中央位置C1側(光ファイバ2、2の突き合わせ位置側)の調心溝31b(31b2)に、保持凹所31hに臨んで形成される。
切欠き31kは、調心溝31bの内部空間を拡張する形状とされる。切欠き31kの形状は特に限定されないが、例えば、保持凹所31hに近づくに従って内径が徐々に大きくなるテーパ状の内面を有する形状とすることができる。
切欠き31kは、例えば、調心溝31b(31b2)に保持される光ファイバ2の中心軸にほぼ一致する中心軸を有し、調心溝31bに対し垂直な断面(YZ断面)が略半円形となる形状としてよい。
切欠き31kの内面は、例えば、傾斜角度(YZ面に対する傾斜角度)が、径方向外方に行くほど小さくなる形状(裾広がり形状)とすることができる。切欠き31kの外縁31k1は調心溝31bの端縁部31b5よりも外方寄りに位置していることが望ましい。
切欠き31kの最大幅W1(最大内径)は、調心溝31bの幅W2より大きい。
なお、前記切欠きの内面は、円錐面に沿う形状としてもよい。
【0099】
図25に示す構造によれば、調心溝31bに、保持凹所31hに臨む切欠き31kが形成されるため、光ファイバ2により押し伸ばされた屈折率整合体39が、調心溝31bの端縁部に当接するのを回避できる。
よって、屈折率整合体39が押し伸ばされる際に調心溝31bの端縁部によって過大な引張力が加えられることによる屈折率整合体39の破損を防止できる。
【0100】
前記切欠きの形状は、調心溝31bの内部空間を拡張する形状であれば、
図25に示すものに限らない。
図26に示す切欠き31jは、調心溝31bより幅広とされた拡径部31mを有する。
拡径部31mは、例えば、調心溝31b(31b2)に保持される光ファイバ2の中心軸にほぼ一致する中心軸を有する円柱面に沿う内面を有する形状としてよい。拡径部31m(切欠き31jの外縁)は全長にわたって調心溝31bよりも外方寄りに位置している。
拡径部31mの最大幅W3(最大内径)は、調心溝31bの幅W2より大きい。
段差面31nは、調心溝31bと拡径部31mとの幅寸法の差により形成された、YZ平面に沿う面である。
【0101】
切欠き31jを形成することによって、屈折率整合体39が押し伸ばされる際に調心溝31bの端縁部によって過大な引張力が加えられることによる屈折率整合体39の破損を防止できる。
また、屈折率整合体39は、挿通部37内だけでなく、一部が第2面38b上にはみ出して形成されていてもよい。
【0102】
本発明では、メカニカルスプライスの調心溝は、一対の素子のいずれか一方または両方に形成することができる。
図1等に示すスプライス30では、調心溝31bはベース部材31の対向面31aにのみ形成されているが、調心溝は、ベース部材31の対向面31aと押さえ蓋32の対向面(例えば対向面322a)の両方に形成してもよいし、押さえ蓋32側にのみ形成してもよい。
調心溝を押さえ蓋32に形成する場合には、押さえ蓋32に、調心溝を長さ方向に分断する保持凹部(溝部)を形成するのが好ましい。
図1等に示す光ファイバ接続器10Aでは、屈折率整合材からなる屈折率整合体39を枠体38内に形成した整合体チップ36が用いられているが、整合体チップ36に代えて、屈折率整合材からなる(例えば板状の)屈折率整合体を用いてもよい。