特開2015-20932(P2015-20932A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社太陽電池総合研究所の特許一覧 ▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧

<>
  • 特開2015020932-カルコパイライトナノ粒子の製造方法 図000004
  • 特開2015020932-カルコパイライトナノ粒子の製造方法 図000005
  • 特開2015020932-カルコパイライトナノ粒子の製造方法 図000006
  • 特開2015020932-カルコパイライトナノ粒子の製造方法 図000007
  • 特開2015020932-カルコパイライトナノ粒子の製造方法 図000008
  • 特開2015020932-カルコパイライトナノ粒子の製造方法 図000009
  • 特開2015020932-カルコパイライトナノ粒子の製造方法 図000010
  • 特開2015020932-カルコパイライトナノ粒子の製造方法 図000011
  • 特開2015020932-カルコパイライトナノ粒子の製造方法 図000012
  • 特開2015020932-カルコパイライトナノ粒子の製造方法 図000013
  • 特開2015020932-カルコパイライトナノ粒子の製造方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-20932(P2015-20932A)
(43)【公開日】2015年2月2日
(54)【発明の名称】カルコパイライトナノ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 19/00 20060101AFI20150106BHJP
   H01L 31/06 20120101ALI20150106BHJP
【FI】
   C01B19/00 Z
   H01L31/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-150685(P2013-150685)
(22)【出願日】2013年7月19日
(71)【出願人】
【識別番号】513183577
【氏名又は名称】株式会社太陽電池総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 克昭
(72)【発明者】
【氏名】菅原 徹
(72)【発明者】
【氏名】酒 金▲テイ▼
(72)【発明者】
【氏名】マンジート シンハ
(72)【発明者】
【氏名】曽 俊博
(72)【発明者】
【氏名】翁 租偉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 卓磨
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA10
(57)【要約】
【課題】粒径が小さく且つ粒径の揃ったカルコパイライトナノ粒子を簡単に且つ、大量に製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、周期律表の第I族金属化合物、第III族金属化合物、及び第VI族金属の単体をアミン系溶媒中に入れて混合し、加熱して、前記第I族金属化合物及び前記第III族金属化合物と、前記第VI族金属の単体を反応させることによりカルコパイライトナノ粒子を製造する方法である。本発明では、加熱する工程が、第1昇温速度で室温から100℃まで昇温する第1昇温工程と、前記第1昇温速度よりも遅い第2昇温速度で100℃から200℃まで昇温する第2昇温工程とを有するため、粒径が小さく且つ粒径の揃った均一なカルコパイライトナノ粒子を得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期律表の第I族金属化合物、第III族金属化合物、及び第VI族金属の単体をアミン系溶媒中に入れて混合し、加熱して、前記第I族金属化合物及び前記第III族金属化合物と、前記第VI族金属の単体を反応させることによりカルコパイライトナノ粒子を製造する方法であって、
加熱する工程が、
第1昇温速度で室温から100℃まで昇温する第1昇温工程と、
前記第1昇温速度よりも遅い第2昇温速度で100℃から200℃まで昇温する第2昇温工程と
を有することを特徴とするカルコパイライトナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第2昇温工程が、100℃から150℃まで昇温する前期工程と、該前期工程よりも遅い昇温速度で150℃から200℃まで昇温する後期工程から成ることを特徴とする請求項1に記載のカルコパイライトナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
加熱する工程が、さらに、前記第2昇温速度よりも遅い第3昇温速度で200℃から250℃まで昇温する第3昇温工程を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のカルコパイライトナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第I族金属化合物が銅塩、前記第III族金属化合物がインジウム塩又は/及びガリウム塩、前記第VI族金属がセレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカルコパイライトナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
アミン系溶媒が、ドデシル・アミンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカルコパイライトナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記第1昇温速度が2.5℃/min〜3.5℃/minであり、前記第2昇温速度が0.8℃/min〜2.5℃/minであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカルコパイライトナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物太陽電池に用いられるカルコパイライトナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物太陽電池とは、複数の元素から成る化合物半導体から形成された光吸収層を備えた太陽電池をいう。化合物太陽電池に用いられる化合物半導体の代表的なものとして、周期律表のIII族とV族の組み合わせ(GaAs、GaP、InP等)、II族とVI族の組み合わせ(CdTe、ZnSe等)、IV族同士の組み合わせ(SiC)、 I族とIII族とVI族の組み合わせ(CuInSe、CuInGaSe)からなる化合物半導体が挙げられる。CuInSeやCuInGaSeは、その結晶構造が黄銅鉱に似ていることから、カルコパイライト系化合物半導体とも呼ばれる。また、化合物半導体を構成する元素記号から、CIS系化合物半導体、CIGS系化合物半導体とも呼ばれている。これらの化合物半導体を用いた太陽電池は、Si系の太陽電池に比べて遜色ない変換効率を示すだけでなく、製造方法が簡単で、素子に使用する膜厚が薄く原料の省資源化につながる。また、原料に要求される純度が低い事や放射線への高い安定性も言及されており、近年、著しい注目を集めている。
【0003】
従来、化合物半導体から光吸収層を形成する方法としては、加熱蒸着法やスパッタリング法が用いられていた。ところが、これらの方法は超高真空環境下で行わなければならず、高価な製造設備が必要となることから、近年、安価な設備で製造できる方法が提案されている。その一つに、カルコパイライト系化合物半導体のナノ粒子を形成し、このナノ粒子を用いて光吸収層を製造する方法がある。
【0004】
例えば、特許文献1〜3には、CuInSe化合物(CIS系化合物半導体)やCuInGaSe化合物(CIGS系化合物半導体)を構成する元素の塩と金属塩を反応させることによりカルコパイライトナノ粒子を形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-79770号公報
【特許文献2】特開2012-49358号公報
【特許文献3】特開2012-33728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に記載されている方法では、アニリンやアルコールアミン、エチレンジアミン等の有機溶媒にCu、In、及びGaのハロゲン化物とSe単体を溶解して原料溶液を作製し、該原料溶液を加熱して、Cu、In、及びGaのハロゲン化物とSe単体を反応させることによりナノ粒子を形成している。この場合、原料溶液の加熱は150℃〜200℃で1分間〜20時間行うとされている。
Cu、In、及びGaのハロゲン化物とSe単体の反応は200℃付近で進行する。従って、加熱時間が短いと、反応が十分に進まず、均一なナノ粒子を得ることができない。一方、加熱時間が長いとナノ粒子が成長するため、得られるナノ粒子の粒径が大きくなる。また、原料溶液の作製は、通常、室温下で行われる。従って、室温状態の原料溶液を一定の速度で急速に150℃〜200℃まで昇温させると、ナノ粒子の成長過程の相状態をうまくコントロールすることができず、均一な粒径のナノ粒子を得ることが難しい。光吸収層の光電変換効率を上げるためには、緻密な半導体膜を形成する必要があるが、ナノ粒子の粒径が大きかったり、粒径が不均一であったりすると、緻密な半導体膜を形成することができない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、粒径が小さく且つ粒径が均一なカルコパイライトナノ粒子を簡単に製造することができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明は、周期律表の第I族金属化合物、第III族金属化合物、及び第VI族金属の単体をアミン系溶媒中に入れて混合し、加熱して、前記第I族金属化合物及び前記第III族金属化合物と、前記第VI族金属の単体を反応させることによりカルコパイライトナノ粒子を製造する方法であって、
加熱する工程が、
第1昇温速度で室温から100℃まで昇温する第1昇温工程と、
前記第1昇温速度よりも遅い第2昇温速度で100℃から200℃まで昇温する第2昇温工程と
を有することを特徴とする。
【0009】
上記の製造方法においては、さらに、第2昇温工程が、100℃から150℃まで昇温する前期工程と、該前期工程よりも遅い昇温速度で150℃から200℃まで昇温する後期工程から構成されていることが好ましい。このように、第2昇温工程を細分化することにより、カルコパイライトナノ粒子の大きさを制御しやすくなる。さらに、カルコパイライトナノ粒子の大きさも制御しやすくなるという効果もある。
【0010】
さらに、本発明に係るカルコパイライトナノ粒子の製造方法は、前記第2昇温速度よりも遅い第3昇温速度で200℃から250℃まで昇温する第3昇温工程を有することが好ましい。200℃から250℃までゆっくりとした速度で昇温する第3昇温工程では、第I族金属化合物、第III族金属化合物、及び第VI族金属の単体とアミン系溶媒との反応が安定的に進行するため、均一なカルコパイライトナノ粒子を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法では、第I族と第III族の金属化合物と第VI族金属の単体を有機溶媒中に入れて混合した後、加熱する工程において、最初は昇温速度を速くして反応を進め、反応が進んだ段階で昇温速度を遅くして安定的に反応させるようにしたため、粒径が小さく且つ粒径の揃った均一なカルコパイライトナノ粒子を得ることができる。また、安定的に反応させることができる結果、カルコパイライト粒子の大量製造が可能となる。さらに、加熱する工程を少なくとも2つの工程から構成したため、各工程における昇温速度を調整することにより、得られるカルコパイライトナノ粒子のサイズだけでなく、元素組成や形状を自由に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】製造例1における製造手順の概略図。
図2】製造例1の第1工程から第3(前期)工程までの各工程におけるナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真。
図3】第3(後期)工程におけるナノ粒子のSEM写真。
図4図2に示すナノ粒子のXRD解析結果。
図5図3に示すナノ粒子のXRD解析結果。
図6】製造例2の実験1におけるSEM写真(a)及びTGA解析結果(b)。
図7】製造例2の実験2におけるSEM写真(a)及びTGA解析結果(b)。
図8】製造例2の実験3におけるSEM写真(a)及びTGA解析結果(b)。
図9】実験1〜3で得られるナノ粒子のXRD解析結果。
図10】溶媒としてPDAを用いた場合のSEM写真。
図11】TGA解析結果及びXRD解析結果。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、周期律表の第I族金属化合物、第III族金属化合物、及び第VI族金属の単体を原料とし、これら原料とアミン系溶媒を混合して段階的に温度を上げながら加熱することにより原料とアミン系溶媒を反応させ、カルコパイライトナノ粒子(以下、「ナノ粒子」ともいう。)を製造する方法である。
【0014】
本発明の製造方法では、アミン系溶媒は原料の分散剤及び還元剤として作用する。このとき、原料とアミン系溶媒の反応温度である200℃付近まで、少なくとも2つの昇温工程により段階的に温度を上げることにより、ナノ粒子の成長過程の相状態を制御し、得られるナノ粒子の形状や大きさを自在に変化させることができる。特に、本発明では、100℃まで昇温する速度を相対的に速く、100℃から200℃まで昇温する速度を相対的に遅くすることにより、ナノ粒子の過度な成長を抑えつつ安定的に反応させるようにしたため、粒径が小さく、且つ、粒径の揃ったナノ粒子を大量に得ることができる。
【0015】
しかも、複数の昇温工程を経て200℃まで加熱するようにしたため、各昇温工程における昇温速度をそれぞれ独立的に制御することができ、ナノ粒子の成長過程の相状態の制御の自由度が増す。このため、ナノ粒子の形状や大きさをより一層自在に変化させることができる。
【0016】
本発明では、第I族金属化合物としてはCu化合物が好適に用いられるが、これ以外の例えばAg化合物を用いることもできる。また、第III族金属化合物としては、In又は/及びGa化合物を用いることが好ましい。これら第I族金属化合物、第III族金属化合物としては、CuCl、InCl3、Ga(Cl)3等のハロゲン化物が好適であるが、この他、酢酸塩、硝酸塩、塩酸塩や金属錯体を用いることができる。
【0017】
第VI族金属の単体としてはSe粉末が好適に用いられるが、硫黄(S)の粉末でも良い。
アミン系溶媒としては、ドデシル・アミンやペンタジル・アミン等、種々のアミンを用いることができるが、ドデシル・アミンは他のアミンに比べてメタノール系溶媒やトルエンを用いて完全に除去できる点、分解温度が低い点で他のアミンよりも優れており、溶媒にドデシル・アミンを用いた場合は、粒径の小さなナノ粒子を高収率で得ることができる。
【0018】
以下、本発明に係るナノ粒子の具体的な製造方法を、いくつかの製造例を参照しながら説明する。
[製造例1]
製造例1は、第I族金属化合物としてはCuClを、第III族金属化合物としてInCl3とGa(acac)3(アセチルアセトンガリウム)を、第VI族金属の単体としてはSe粉末を、アミン系溶媒としてドデシル・アミン(DDA)を用いた例である。具体的には、以下の製造手順から成る。
【0019】
[製造手順]
(1)CuCl、InCl3、Ga(acac)3をSe粉末と共に室温状態でDDAと混合し原料液とする(図1(a))。
(2)次に、原料液を250℃まで段階的に昇温する。具体的には、次の5工程を経て段階的に昇温する(図1(b))。
第1工程:室温から100℃まで0.5時間かけて昇温。
第2(前期)工程:100℃から150℃まで0.5時間かけて昇温。
第2(後期)工程:150℃から200℃まで1時間かけて昇温。
第3(前期)工程:200℃から225℃まで1時間かけて昇温。
第3(後期)工程:225℃から250℃まで1時間かけて昇温。
以上の昇温工程により、ナノ粒子がDDA中に分散したナノ粒子分散液が得られる(図1(c))。
【0020】
(3)得られたナノ粒子分散液からナノ粒子を取り出してメタノールで洗い、トルエンに分散させる。トルエン分散液は、印刷法により化合物太陽電池の光吸収層を作製するためのインクとして利用することができる。なお、製造例1での、収率は90%以上であった。
【0021】
図2は、第1工程、第2(前期)工程、第2(後期)工程、第3(前期)工程の各工程における走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)であり(図2の(a)〜(d))、図3は第3(後期)工程におけるSEM写真である。これらの図から分かるように、第1工程では比較的大きなプレート状の粒子が観察された。第2(前期)工程では、ところどころプレート状の粒子がみられるものの球状の微小粒子が多く観察された。また、第2(後期)工程及び第3(前期)工程では、ほぼ全てが球状の微小粒子であり、プレート状の粒子はわずかしか存在しなかった。第3(後期)工程では、粒径が20 nm以下の球状の均一な微小粒子が観察された。
【0022】
図4に、図2の(a)〜(d)及び図3に示す粒子のXRD結果を示し、図5に、図3に示す粒子のXRD結果とJCPDS(Joint Committee for Powder Diffraction Standards)カードから参照したCIGSのXRDパターンを示す。これらの図から、第3(前期)工程までに得られた粒子は、CuInGaSe、CuInSe、CuSe、Se単体の混合物であったが、第3(後期)工程において得られた粒子はほぼ全てがCuInGaSeであることが分かった。
【0023】
下記の表1は、原料元素の配合比率を変えてナノ粒子を合成したときの該ナノ粒子の組成比の測定値及びバンドギャップの値を示したものである。表1に示すように、製造例1の方法では、原料元素の配合比率を変えることにより、CuInGaSe系ナノ粒子の組成比やバンドギャップを制御できることが分かる。
【表1】
【0024】
[製造例2]
原料金属と溶媒との反応は200℃付近で進行することから、第2(後期)工程の昇温速度が、得られるナノ粒子の大きさや形状に及ぼす影響を調べた。第2(後期)工程以外の工程の昇温速度は製造例1と同じである。また、この製造例2では、第3工程により250℃まで加熱した後、250℃の状態を4時間保持してから得られたナノ粒子について調べた。
[実験1]
実験1では、第2(後期)工程の昇温速度を約0.7℃/minとしてナノ粒子を合成した。得られたナノ粒子のSEM写真を図6(a)に、TG解析の結果を図6(b)に示す。図6(a)から、ナノ粒子は比較的大きく、板状をしていることが分かる。また、図6(b)に示すように、TG解析からは不純物量が10%程度であることが分かった。
【0025】
[実験2]
実験2は製造例1とほぼ同じ手順でナノ粒子を合成した。すなわち、第2(後期)工程の昇温速度を約1℃/minとしてナノ粒子を合成した。得られたナノ粒子のSEM写真を図7(a)に、TG解析の結果を図7(b)に示す。図7(a)から、ナノ粒子は、粒径が20-25 nm程度の、均一な(単分散の)球状粒子であることが分かる。また、TG解析から不純物量は10%程度であった。
[実験3]
実験3では、第2(後期)工程の昇温速度を約2.5℃/minとしてナノ粒子を合成した。得られたナノ粒子のSEM写真を図8(a)に、TG解析の結果を図8(b)に示す。図8(a)から、ナノ粒子は、粒径が15-20 nm程度の、均一な(単分散の)球状粒子であることが分かった。また、図8(b)のTG解析の結果から不純物量は10%程度であった。
【0026】
図9に、実験1〜3で得られたナノ粒子のXRD解析の結果を示す。図9から分かるように、実験1〜3で得られたナノ粒子は、XRDパターンにショルダが現れ、不純物ピークが観察された。特に実験1のナノ粒子のXRDパターンには比較的大きなショルダが現れた。以上の結果から、実験1のように150℃から200℃までゆっくりと昇温した場合は、実験1よりも昇温速度が速い実験2及び実験3の場合に比べて、得られるナノ粒子の粒径が大きく且つ板状になることが分かった。また、ナノ粒子の純度の点でも昇温速度が速いほうが優れていることが分かった。このことから、第2(後期)工程の昇温速度は、ナノ粒子の形状や粒径、粒径分布、純度に影響を及ぼすと思われた。
【0027】
<溶媒の検討>
溶媒による違いを調べるために、DDAに代えてペンタデシルアミン(C15H33N、(PDA))を用いて、実験2と同じ工程でナノ粒子を合成した。その結果、得られたナノ粒子の粒径は25-30 nm程度であり、DDAを用いた時に比べると粒径が大きいことが分かった。また、粒径の分布はDDAに比べると不均一であった。さらに、TGA解析の結果から、有機成分の不純物の量は10%程度であり、DDAとほとんど差はないことが分かった。
一方、XRD解析の結果から、PDAを用いた場合に得られる微粒子は、CIGS単相でなく無機系の不純物が含まれていると考えられた。図10に、溶媒としてDDAを用いた場合、PDAを用いた場合のそれぞれにおいて得られたナノ粒子のSEM写真を示す。また、図11に、PDAを用いたときに得られたナノ粒子のTGA解析の結果及びXRD解析の結果を示す。
図1
図4
図5
図9
図11
図2
図3
図6
図7
図8
図10