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特開2015-2093463成分混合系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材及び該抑制材を用いたコンクリート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-209346(P2015-209346A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】3成分混合系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材及び該抑制材を用いたコンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/04 20060101AFI20151027BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20151027BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20151027BHJP
   C04B 7/02 20060101ALI20151027BHJP
【FI】
   C04B28/04
   C04B18/14 A
   C04B18/08 Z
   C04B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-90531(P2014-90531)
(22)【出願日】2014年4月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】堺 孝司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康範
(72)【発明者】
【氏名】多田 紀枝
(72)【発明者】
【氏名】草野 昌夫
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐治
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 彩野
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA27
4G112PA29
(57)【要約】
【課題】CO削減のために、ポルトランドセメントに高炉スラグ微粉末とフライアッシュとを配合するとともに、ASR抑制効果に優れる、ポルトランドセメントに高炉スラグとフライアッシュとを配合したアルカリシリカ反応抑制材及び当該抑制材を用いたコンクリートを提供する。
【解決手段】本発明の3成分混合系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材は、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュの3成分からなる結合材であって、ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの混合割合が、質量比で60±5%、20±5%、20±5%である
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュの3成分からなる結合材であって、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュの混合割合が、質量比で60±5%、20±5%、20±5%であることを特徴とする、3成分混合系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材。
【請求項2】
請求項1記載の3成分混合系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材において、ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント及び低熱ポルトランドセメントからなる群より選ばれる1種であることを特徴とする、3成分混合系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材。
【請求項3】
請求項2記載の3成分混合系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材において、ポルトランドセメントは、中庸熱ポルトランドセメント又は低熱ポルトランドセメントであることを特徴とする、3成分混合系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかの項記載の3成分混合系結合材を配合し、相対動弾性係数が100%以上であることを特徴とする、コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3成分系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材及び該抑制材を用いたコンクリートに関し、特に高炉セメントB種と比較して、同一混和量で優れたアルカリシリカ反応抑制効果を有する、3成分混合系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材及び該抑制材を用いたコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートに使用されてきた良質な河川産の骨材は枯渇しており、現在ではおもに粗骨材に砕石、細骨材に山砂、陸砂、海砂、砕砂が使用されるようになってきている。
しかし、骨材の岩種によっては、アルカリシリカ反応を示すものが存在する。アルカリシリカ反応(以下、「ASR」と略す)は、ある種のシリカ鉱物を含有する骨材と、コンクリート中の高いアルカリ性を呈する水溶液とが反応して、骨材の周囲にアルカリシリカゲルを生成し、そのアルカリシリカゲルが吸水及び膨潤する性質を有することから、コンクリートの異常な膨張やひび割れを発生させる現象である。
【0003】
コンクリートのASR抑制対策として、例えば、JIS A 5308:2009「レディーミクストコンクリート」附属書B(規定)アルカリシリカ反応抑制対策の方法(非特許文献1)に、1)コンクリート中のアルカリ総量を規制する抑制対策、2)アルカリ骨材反応抑制効果のある混合セメントなどを使用する抑制対策、3)安全と認められる骨材を使用する抑制対策、のいずれか1つの対策を講じることで、ASRに対する耐久性を満足すると示されている。
【0004】
具体的には、上記ASR抑制対策として、1)コンクリート中のアルカリ総量を規制することについては、コンクリート中に含まれるアルカリ総量が3.0kg/m以下となることとしている。
また、2)ASR抑制効果のある混合セメントなどを使用することについては、JIS R 5211:2009「高炉セメント」に適合する高炉セメントB種(スラグ混合率40質量%以上)若しくはC種、又はJIS R 5213:2009「フライアッシュセメント」に適合するフライアッシュセメントB種(フライアシュ混合率15%以上)若しくはC種を用いること、又は、高炉スラグ微粉末(以下、「高炉スラグ」と略す)やフライアッシュ等の混和材をポルトランドセメントに混入した結合材でASR抑制効果の確認された単位量で使用することとしている。
更に3)安全と認められる骨材を使用することについては、JIS A 1145:2007「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」及びJIS A 1146:2007「骨材のアルカリシリカ反応性試験(モルタルバー法)」により区分A「無害」であることが確認された骨材を使用することとしている。
【0005】
しかし、上記に示したASR抑制対策において、1)コンクリート中のアルカリ総量の規制をすることについては、当該アルカリ総量を規制してもASRによる劣化が生じた構造物が存在するとの指摘もあり、アルカリ総量を規制するだけでは必ずしもASRを抑制することはできない。
また、3)アルカリシリカ反応性試験で区分A「無害」と判定される骨材を使用することについては、我が国の地域によっては無害と確認された骨材を入手することが困難となる。上記JIS A 1145及びJIS A 1146において、骨材のアルカリシリカ反応性を確認することは、骨材のロット間の差や採取方法によって試験の検出能力に差が生じる可能性があること、さらに試験費用が高く、測定時間が長期間に及ぶことが問題となる。
従って、ASR抑制対策は、2)アルカリ骨材反応抑制効果を有する混合セメントを使用する対策を適用することが現実的であり、混合セメントや高炉スラグまたはフライアッシュの1種類の混和材を用いた対策が例示される。
【0006】
ここで、ASR抑制対策として,混合セメントまたは1種類の混和材を用いた検討は多くみられる一方、セメント、高炉スラグおよびフライアッシュを用いた3成分混合系結合材に関しては十分な検討がなされておらず、また、母材であるポルトランドセメントの最適化によるASR抑制効果も十分な検討がなされていない。
【0007】
また、セメント、高炉スラグ及びフライアッシュを用いた3成分混合系結合材は、混合セメントと同様に、産業副産物の有効利用や二酸化炭素排出量削減等の環境負荷低減の性能を有しており、低炭素社会の構築に向けた有効な材料となることが期待されている。
【0008】
なお、本出願人は、フライアッシュや高炉スラグを用いた3成分混合系結合材によって達成される二酸化炭素排出量削減および資源有効利用による環境負荷低減の効果と、環境負荷低減コンクリートの性能の両方を定量的に評価し、その使用材料と量とを最適化する評価方法を特願2014−30595(2014年2月20日出願)(特許文献1)に提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2014−30595(2014年2月20日出願)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】JIS A 5308:2009「レディーミクストコンクリート」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決し、CO削減のために、ポルトランドセメントに高炉スラグとフライアッシュとを配合するとともに、ASR抑制効果に優れ、ASRによるひび割れ抵抗性を有する、ポルトランドセメントに高炉スラグとフライアッシュとを配合したASR抑制材及び当該抑制材を用いたコンクリートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの混合質量割合の最適化を図り、好ましくは、ポルトランドセメントの種類を限定することで、ASR抑制効果に優れることを見出し、本発明に至った。
また特に、ポルトランドセメントの種類を特定することで、フライアッシュや高炉スラグを用いたコンクリートのASR抑制効果が大きく高まることを見出した。
【0013】
即ち、請求項1記載の発明は、ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの3成分からなる結合材であって、ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの混合割合が、質量比で60±5%、20±5%、20±5%であることを特徴とする、3成分混合系結合材からなるASR抑制材である。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の3成分混合系結合材からなるASR抑制材において、ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント及び低熱ポルトランドセメントからなる群より選ばれる1種であることを特徴とする、3成分混合系結合材からなるASR抑制材である。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の3成分混合系結合材からなるASR抑制材において、ポルトランドセメントは、中庸熱ポルトランドセメント又は低熱ポルトランドセメントであることを特徴とする、3成分混合系結合材からなるASR抑制材である。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3いずれかの項記載の3成分混合系結合材を配合し、相対動弾性係数が100%以上であることを特徴とする、コンクリートである。
【0016】
ここで、本発明においては、「コンクリート」には、公知のセメント材料である、モルタル、コンクリートの双方を含むものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の、ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの混合質量割合の最適化を図った3成分混合系結合材からなるASR抑制材及び当該抑制材を用いたコンクリートは、高炉セメントB種よりも優れたASR抑制効果を有する。
また特に、ポルトランドセメントの種類を特定することで、より有効なASR抑制効果を有することが可能となる。
また、本発明の3成分混合系結合材からなるASR抑制材は、低炭素型であるため、製造時の排出二酸化炭素量が軽減され、環境的にも優れるものである。
なお、「低炭素型」とは、本発明の3成分混合系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材を製造するのに必要とされるセメント製造時に排出される二酸化炭素の量が、結合材総量と同量のポルトランドセメントを製造するのに排出される二酸化炭素の量と比較して、ポルトランドセメント以外の結合材量に相当する分だけ減少していることを意味するものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明のASR抑制材は、ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの3成分からなる結合材であって、ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの混合割合が、質量比で60±5%、20±5%、20±5%である、3成分混合系結合材からなるものである。
また、本発明のコンクリートは、ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの3成分混合系結合材からなり、ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの混合割合が、質量比で60±5%、20±5%、20±5%である上記本発明の3成分混合系結合材からなるASR抑制材を用いて製造されるコンクリートであり、相対動弾性係数が100%以上である、コンクリートである。
【0019】
本発明のASR抑制材は、ポルトランドセメント、高炉スラグ及びフライアッシュを特定の割合で配合した3成分混合系結合材とすることが、ASRを抑制するのに使用されている高炉セメントB種よりも、同一混和量で優れたASR抑制効果を有することができる。
【0020】
また、3成分混合系結合材を構成するポルトランドセメントと、高炉スラグと、フライアッシュとの混合割合は、セメントを製造する際に排出されるCOを減少させ、良好なASR抑制効果を有するために、質量比で60±5%、20±5%、20±5%とする。
望ましくは、質量比で60±2%、20±2%、20±2%である。
【0021】
本発明に用いるポルトランドセメントは、任意の市場で入手し得るポルトランドセメントを用いることができ、例えば、JIS R 5210に規定される、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱又は耐硫酸塩ポルトランドセメントを例示することができる。好ましくは、ASR抑制効果の点から普通、早強、中庸熱又は低熱ポルトランドセメントを用いることができ、更に好ましくは、より高いASR抑制効果を有するために、中庸熱又は低熱ポルトランドセメントを用いることが望ましい。
【0022】
特に中庸熱ポルトランドセメントは、フレッシュコンクリートの流動性、強度発現性能、環境負荷低減性能、ひび割れ抵抗性能およびASR抑制効果を含む耐久性能などを総合的に勘案すると、CS量30〜50%、CS量35〜50%、間隙質量(CA+CAF)10〜15%、ブレーン比表面積3000〜3900cm/gであることが望ましい。
また、低熱ポルトランドセメントは、フレッシュコンクリートの流動性、強度発現性能、環境負荷低減性能、ひび割れ抵抗性能およびASR抑制効果を含む耐久性能などを総合的に勘案すると、CS量20〜30%、CS量50〜60%、間隙質量(CA+CAF)9〜14%、ブレーン比表面積3200〜4300cm/gであることが望ましい。
【0023】
また高炉スラグとしては、任意の高炉スラグを使用でき、例えばJIS A 6206:2013「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に規定されるものを使用することができる。フレッシュコンクリートの流動性,強度発現性能、環境負荷低減性能、ひび割れ抵抗性能およびASR抑制効果を含む耐久性能などを総合的に勘案すると、高炉スラグ3000又は4000に規定されるものを用いるのが望ましい。
具体的には、比表面積2800〜4800cm/g、酸化マグネシウム6.3%以下、強熱減量1.4%以下、フロー値比95〜103%、活性度指数(7日)72〜83%、活性度指数(28日)62〜107%、活性度指数(91日)85〜118%であることが望ましい。
【0024】
さらに、フライアッシュとしては、任意のフライアッシュを使用でき、例えばJIS A 6201:2008「コンクリート用フライアッシュ」に規定されるものを使用することができる。フレッシュコンクリートの流動性、強度発現性能、環境負荷低減性能、ひび割れ抵抗性能およびASR抑制効果を含む耐久性能などを総合的に勘案すると、フライアッシュI種又はII種に規定されるものを用いるのが望ましい。
具体的には、SiO量51〜59%、強熱減量2.3%以下、メチレンブルー吸着量0.60mg/g以下、密度2.20〜2.40g/cm、ブレーン比表面積3600〜4200cm/g、フロー値比107〜116%、活性度指数(28日)82〜105%、活性度指数(91日)95〜120%であることが望ましい。
【0025】
なお、ここで活性度指数とは、JIS A 0203[コンクリート用語]に規定されるように、普通ポルトランドセメントを用いて作製した基準とするモルタルの圧縮強度に対する、混和材(高炉スラグやフライアッシュ等)と普通ポルトランドセメントとを用いて作製した試験モルタルの圧縮強度の比を百分率で表した値である。
【0026】
上記構成の3成分混合系結合材からなるASR抑制材をコンクリートに配合して、相対動弾性係数が100%以上のコンクリートを得ることができる。また、コンクリートに配合する細骨材や粗骨材は任意のものを用いることが可能であり、その他の混和剤、例えば減水剤、凝結遅延剤、硬化促進剤、消泡剤、乾燥収縮低減剤、防錆剤、防凍剤、着色剤などの混和材や、耐久性を向上させるための炭素繊維や鋼繊維などの補強材を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することも可能である。
減水剤としては、例えば、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等の液状または粉末状のいずれの公知の減水剤等が使用できる。
得られるコンクリートは、強度発現性能、環境負荷低減性能、ひび割れ抵抗性能に優れるばかりでなく、高いASR抑制効果を含む耐久性能のコンクリートが得られる。
【実施例】
【0027】
本発明を以下の実施例、比較例および試験例により具体的に説明する。
(使用材料)
以下の表1に示す各材料を用いて、コンクリート調製した。
なお、表1中に、各種ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュ、骨材および混和剤の品質及び物性等も示す。
【0028】
表1中、骨材の粗粒率、実績率、表乾密度、吸水率、アルカリ濃度減少量及び溶解シリカ量の各数値は、以下のようにして求めた値である。
骨材の粗粒率は、骨材のふるい分け試験により、公称寸法が0.15、0.3、0.6、1.2、2.5、5、10、20、40および80mmの各ふるいに留まる累計残留百分率(%)の総和を求め、これを100で除した値を示す。
また、実積率とは、JIS A 0203「コンクリート用語」に規定されているように、容器に満たした骨材の絶対容積の、その容器の容積に対する百分率を示す。
【0029】
表乾密度は、細骨材の場合にはJIS A 1109:2006「細骨材の密度及び吸水率試験方法」、粗骨材の場合にはJIS A 1110:2006「粗骨材の密度及び吸水率試験方法」により、表面乾燥飽水状態の骨材の質量を、骨材の絶対容積で除した値を示す。
吸水率は、細骨材の場合にはJIS A 1109:2006「細骨材の密度及び吸水率試験方法」、粗骨材の場合にはJIS A 1110:2006「粗骨材の密度及び吸水率試験方法」により、表面乾燥飽水状態の骨材に含まれている全水量の、絶対乾燥状態の骨材質量に対する百分率を示す。
【0030】
アルカリ濃度減少量は、JIS A 1145:2007「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」により、骨材との反応によって消費された水酸化ナトリウムの量を示す。
溶解シリカ量は、JIS A 1145:2007「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」の原子吸光光度法により、骨材とアルカリとの反応によって溶出したシリカの量を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
(コンクリートの調製)
上記表1に示す各材料を用い、表2に示す配合割合で、各材料を混合して、コンクリートを調製した。
なお、水/結合材(W/B:水に対する、ポルトランドセメント、高炉スラグ及びフライアッシュの質量比)は55質量%とし、得られる各コンクリートの目標スランプ値が12±2.5cm(JIS A 1101)であって、目標空気量が4.5±1.5容量%(JIS A 1128)となるように、単位水量及びAE減水剤及びAE剤の配合量を変化させた。また、実験Iでは、粗骨材は反応性粗骨材を100%用い、細骨材中の反応性細骨材の量を変化させ、実験IIでは粗骨材、細骨材ともに反応性骨材を100%としたコンクリートを調製した。
【0033】
【表2】
【0034】
(試験例)
ASR反応性試験
ASR反応性試験を、ZKT−206:2007「コンクリートのアルカリシリカ反応性迅速試験方法」(以下、「ZKT法」と略す)に準じて実施した。
具体的には、上記「コンクリートの調製」で製造した各コンクリートをミキサで練混ぜた後に、JIS A 1128:2005「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力方法」に規定する容器に各コンクリートを詰めて、詰めたコンクリートを練り板上にあけて、粒状水酸化ナトリウム(特級試薬:和光純薬工業製)をNaO換算で9kg/m添加して均質になるまで練混ぜた後、φ100×200mmの試験体を3体製造した。該試験体を成型後、温度20℃、相対湿度95%以上の湿空中で24時間養生を行った後に脱型し、温度20℃の水中でさらに24時間養生した。
【0035】
水中養生後、各試験体の表面の水を拭き取り、JIS A 1127:2010「共鳴振動によるコンクリートの動弾性係数、動せん断弾性係数及び動ポアソン比試験方法」に準じて、各試験体の縦振動による一次共鳴振動数を測定した。前記測定を終了した各試験体を、予め水温40℃に設定した圧力容器内に浸漬した後に、30±10分間でゲージ圧50kPa(111℃)となるように加熱し、さらに2時間、同一圧力下で煮沸した。煮沸後、水を注ぎ、30±10分間で水温を20〜40℃とした後、各試験体を圧力容器から取り出し、温度20℃の水中にさらに20分間浸漬させた。各試験体を水中から取り出し、再び表面の水を拭き取り、縦振動による一次共鳴振動数を測定した。
【0036】
煮沸前後の一次共鳴振動数値から、下記式(1)を用いて相対動弾性係数を算出し、各試験体3体の平均値を求めた。一般的にASR抑制効果があるとされている高炉セメントB種を用いた場合の相対動弾性係数の平均値を基準として、各試験体のASR抑制効果を評価した。
【0037】
【数1】
【0038】
具体的には、ASR反応性試験は、実験Iおよび実験IIの2種類に分けて行い、その結果を各々表3及び表4に示す。
表3に示すように、粗骨材中の反応性粗骨材の容積割合を100%と一定にした場合において、細骨材中の反応性細骨材の容積割合がZKT法により算定した相対動弾性係数に及ぼす影響を検討するために、普通ポルトランドセメント単体(比較例1)を対象に、細骨材中の反応性細骨材の割合を0、25、50、75、100%の5つの場合に変化させた(比較例1〜5)。また、目視による試験体にひび割れ発生の有無を判定した。これらの結果を表3に示す。
なお、反応性細骨材および反応性粗骨材とは、骨材のアルカリシリカ反応性試験(化学法およびモルタルバー法)により「無害でない」と判定されたものであり、具体的には、これらの骨材のアルカリシリカ反応性試験は、JIS A 1145「骨材のアルカリシリカ反応性試験(化学法)」およびJIS A 1146「骨材のアルカリシリカ反応性試験(モルタルバー法)」に準じて行ったものである。
【0039】
【表3】
【0040】
表3の結果より、細骨材中の反応性細骨材の容積割合が増加するに伴い、相対動弾性係数は低下する傾向を示した。また、相対動弾性係数の結果から、比較例5(細骨材中の反応性細骨材の割合が100%)が最も小さい相対動弾性係数の値を示し、最もASRによる劣化を受けていることを示す。
【0041】
また、表4に示すように、実験IIにおいては、実験Iで得られた結果から、最も相対動弾性係数が小さく、細骨材中の反応性細骨材の割合が100%のものについて、3成分混合系結合材のASR抑制効果の相違を検討するために、3成分混合系結合材の母材のポルトランドセメントを普通、早強、中庸熱および低熱ポルトランドセメントの4種類に変化させると共に(実施例1〜4)、高炉セメントB種(比較例6)についてもASR反応性試験を行った。また、目視による試験体にひび割れ発生の有無を判定した。普通ポルトランドセメント単体のものとともに(比較例5)、これらの結果を表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
表4の結果より、実施例1〜4においては、相対動弾性係数が100%以上となり、比較例5(普通ポルトランドセメント単体)および比較例6(高炉セメントB種)よりも大きな値を示し、ASR抑制効果に優れることがわかる。また、実施例1〜4の結果より、3成分混合系結合材の母材となるポルトランドセメントが中庸熱または低熱ポルトランドセメントとした場合が、ASR抑制効果に特に優れていることが確認された。
したがって、ASR抑制効果の点より、中庸熱または低熱ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの置換率を60:20:20とした3成分混合系結合材を用いることが、より有利であると言える。
【0044】
上記結果より、ASR反応を抑制するコンクリートであって、COの排出を抑制して環境に配慮したコンクリートは、上記特定の配合割合のポルトランドセメント、高炉スラグ及びフライアッシュを含有する低炭素型3成分混合系結合材が有効であり、特にポルトランドセメントとして中庸熱または低熱ポルトランドセメントを用いた、本発明のコンクリートが有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、COの排出量を削減することができるとともに、ASR反応抑制が要求される建築、土木構造物に有効に適用することが可能となる。