特開2015-209474(P2015-209474A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-209474ポリアセタール樹脂組成物、及びこのポリアセタール樹脂組成物の成形品を備える硫黄燃料接触体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-209474(P2015-209474A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物、及びこのポリアセタール樹脂組成物の成形品を備える硫黄燃料接触体
(51)【国際特許分類】
   C08L 59/00 20060101AFI20151027BHJP
   C08K 5/134 20060101ALI20151027BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20151027BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20151027BHJP
【FI】
   C08L59/00
   C08K5/134
   C08K3/22
   C08K5/103
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-91119(P2014-91119)
(22)【出願日】2014年4月25日
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】霜田 暁英
(72)【発明者】
【氏名】中田 徳美
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CB001
4J002CH022
4J002DE067
4J002EH048
4J002EJ066
4J002FD017
4J002FD076
4J002FD168
4J002GG01
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】成形品にした際、硫黄燃料に接触したときの劣化を最小限に抑えることの可能なポリアセタール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部と、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜1.0重量部と、(C)アルカリ土類金属酸化物0.1〜2.0重量部と、(D)ポリアルキレングリコール0.5〜3.0重量部と、(E)多価脂肪酸フルエステル0.01〜1.0重量部とを含有する。本発明のポリアセタール樹脂組成物によると、成形品を硫黄燃料に浸漬後であっても、成形品の重量減少を最小限に抑えられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアセタール樹脂100重量部と、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜1.0重量部と、
(C)アルカリ土類金属酸化物0.1〜2.0重量部と、
(D)ポリアルキレングリコール0.5〜3.0重量部と、
(E)多価脂肪酸フルエステル0.01〜1.0重量部とを含有するポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ポリアセタール樹脂がポリアセタールコポリマー樹脂である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアセタールコポリマー樹脂は、ホルムアルデヒドの環状オリゴマーを主モノマーとし、少なくとも1つの炭素−炭素結合を有する環状エーテル及び/又は環状ホルマールから選択される化合物をコモノマーとする共重合体である、請求項2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)アルカリ土類金属酸化物が酸化マグネシウムである、請求項1から3のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
前記多価脂肪酸フルエステルは、炭素数が3以上の多価アルコールと脂肪酸とのフルエステル化合物の多価脂肪酸エステルである、請求項1から4のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の成形品を備える燃料接触体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアセタール樹脂組成物、及びこのポリアセタール樹脂組成物の成形品を備える硫黄燃料接触体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は耐薬品性に優れることから、ポリアセタール樹脂を原料とする成形品は自動車部品として広く使用されている。例えば、燃料油と直接接触する燃料ポンプモジュール等に代表される燃料搬送ユニット等の大型部品として用いられる。
【0003】
近年、各国の環境規制に対応するため、燃料の低硫黄化が進められている。しかしながら、脱硫設備には多大な費用がかかることから、一部の国では未だ高硫黄燃料が流通している。これらの高硫黄燃料は、低硫黄燃料に比べてポリアセタール樹脂を劣化させやすい傾向がある。
【0004】
ところで、ポリアセタール樹脂から製造される射出成形品は、射出成形時の冷却により、成形品内部で残留応力を有している。この射出成形品に高硫黄燃料等が接触すると、残留応力の大きな箇所でクラックが発生し、燃料漏れ等のトラブルの原因となり得る。したがって、高硫黄燃料が流通している国々に対しては、高硫黄燃料に対して高い耐性を有する樹脂材料を原料にする必要がある。
【0005】
高い酸耐性を有するポリアセタール樹脂組成物として、(A)ポリアセタール樹脂100重量部と、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜3.0重量部と、(C)含窒素化合物0.001〜3.0重量部と、(D)脂肪酸カルシウム塩0.1〜3.0重量部と、(E)滑剤0.1〜3.0重量部とを含有するポリアセタール樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−031200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、より高い酸耐性を有するポリアセタール樹脂組成物を提供することが好ましい。
【0008】
本発明は、成形品にした際、硫黄燃料に接触したときの劣化を最小限に抑えることの可能なポリアセタール樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ポリアセタール樹脂組成物の組成を特定の組成にすることで、成形品にした際、硫黄燃料に接触したときの劣化を最小限に抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1)本発明は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部と、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜1.0重量部と、(C)アルカリ土類金属酸化物0.1〜2.0重量部と、(D)ポリアルキレングリコール0.5〜3.0重量部と、(E)多価脂肪酸フルエステル0.01〜1.0重量部とを含有するポリアセタール樹脂組成物である。
【0011】
(2)また、本発明は、前記(A)ポリアセタール樹脂がポリアセタールコポリマー樹脂である、(1)に記載のポリアセタール樹脂組成物である。
【0012】
(3)また、本発明は、前記ポリアセタールコポリマー樹脂が、ホルムアルデヒドの環状オリゴマーを主モノマーとし、少なくとも1つの炭素−炭素結合を有する環状エーテル及び/又は環状ホルマールから選択される化合物をコモノマーとする共重合体である、(2)に記載のポリアセタール樹脂組成物である。
【0013】
(4)また、本発明は、前記(C)アルカリ土類金属酸化物が酸化マグネシウムである、(1)から(3)のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物である。
【0014】
(5)また、本発明は、前記多価脂肪酸フルエステルが、炭素数が3以上の多価アルコールと脂肪酸とのフルエステル化合物の多価脂肪酸エステルである、(1)から(4)のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物である。
【0015】
(6)また、本発明は、(1)から(5)のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の成形品を備える燃料接触体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、成形品にした際、硫黄燃料に接触したときの劣化を最小限に抑えることの可能なポリアセタール樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
<ポリアセタール樹脂組成物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部と、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜1.0重量部と、(C)アルカリ土類金属酸化物0.1〜2.0重量部と、(D)ポリアルキレングリコール0.5〜3.0重量部と、(E)多価脂肪酸フルエステル0.01〜1.0重量部とを含有する。以下、(A)ポリアセタール樹脂を(A)成分ともいい、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を(B)成分ともいい、(C)アルカリ土類金属酸化物を(C)成分ともいい、(D)ポリアルキレングリコールを(D)成分ともいい、(E)多価脂肪酸フルエステルを(E)成分ともいう。
【0019】
[(A)ポリアセタール樹脂]
本発明で用いられる(A)ポリアセタール樹脂とは、オキシメチレン基(−CHO−)を主たる構成単位とする高分子化合物をいい、実質的にオキシメチレン基の繰り返し単位のみからなるポリアセタールポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を少量含有するポリアセタールコポリマー等が挙げられる。これらは何れも使用可能であるが、本発明の目的である耐酸性の観点から、ポリアセタールコポリマーを基体樹脂とするのが好ましい。
【0020】
(A)成分がポリアセタールコポリマーである場合、ポリアセタールコポリマーとしては、コモノマー成分を0.5〜30重量%共重合させてなるポリアセタールコポリマーが好ましく、特に好ましくはコモノマー成分を0.5〜10重量%共重合させてなるものである。コモノマー成分を共重合させてなるポリアセタールコポリマーは、耐酸性に優れると共に、優れた熱安定性、機械的強度等を保持できる。また、ポリアセタールコポリマーは、分子が線状構造を有するものだけでなく、分岐構造、架橋構造を有するものであっても良い。
【0021】
このようなポリアセタールコポリマーを製造するにあたり、主モノマーとしては、トリオキサンに代表されるホルムアルデヒドの環状オリゴマーが用いられる。また、コモノマー成分としては、少なくとも1つの炭素−炭素結合を有する環状エーテル及び/又は環状ホルマールから選ばれた化合物が用いられる。このようなコモノマーとしては、例えばエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,3−ジオキサン、プロピレンオキシド等が挙げられる。
【0022】
上記のような(A)ポリアセタール樹脂、特にポリアセタール共重合体において、その重合度等については特に制約はなく、その使用目的や成形手段に応じた重合度等の調整が可能であるが、耐酸性と成形性の両立の観点から、温度190℃、荷重2.16kgにおいて測定されるメルトインデックス(MI)が1〜100g/10分であることが好ましく、特に好ましくは5〜30g/10分である。
【0023】
[(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤]
【0024】
本発明において使用される(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ヘキサメチレングリコール−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、テトラキス[メチレン3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(6−t−ブチル−3−メチル−フェノール)、ジ−ステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が例示される。
【0025】
本発明においては、これらの酸化防止剤から選ばれた少なくとも一種又は二種以上を使用することができる。
【0026】
本発明における(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、0.1〜1.0重量部であり、0.2〜0.5重量部であることがより好ましい。(B)酸化防止剤の配合量が少ないと、本来の目的である酸化防止特性が不十分になるだけでなく、本発明の目的である耐燃料性も劣るものとなる。(B)酸化防止剤の配合量が過剰の場合は、樹脂組成物の機械特性や成形性等の好ましくない影響が生じる。
【0027】
[(C)アルカリ土類金属酸化物]
本発明において使用される(C)アルカリ土類金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム等が挙げられる。これらの金属酸化物の中では酸化マグネシウムが最も耐燃料性の改善と機械物性や成形性等の性能のバランスが優れており好ましい。
【0028】
本発明における(C)アルカリ土類金属酸化物の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、0.1〜2.0重量部であり、1.0〜2.0重量部であることがより好ましい。(C)アルカリ土類金属酸化物の配合量が少ないと、本発明の目的である耐燃料性が劣るものとなる。(C)アルカリ土類金属酸化物の配合量が過剰の場合は、ポリアセタール樹脂中の不安定末端の分解を促進し、機械特性や成形性等の好ましくない影響が生じる。
【0029】
[(D)ポリアルキレングリコール]
本発明において使用される(D)ポリアルキレングリコールの種類は特に限定されないが、ポリアセタール樹脂との親和性の観点から、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールを含有するものが好ましく、ポリエチレングリコールを含有するものがより好ましい。
【0030】
ポリアルキレングリコールの数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、ポリアセタール樹脂中での分散性の観点から、1,000以上50,000以下であることが好ましく、5,000以上30,000以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、数平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求めたポリスチレン換算の分子量であるものとする。
【0031】
本発明における(D)ポリアルキレングリコールの含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、0.5〜3.0重量部であり、1.0〜2.0重量部であることがより好ましい。(D)ポリアルキレングリコールの配合量が少ないと、十分な応力緩和が行われない可能性がある。(D)ポリアルキレングリコールの配合量が過剰の場合、成形品の機械物性が低下する可能性がある。
【0032】
[(E)多価脂肪酸フルエステル]
本発明において使用される(E)多価脂肪酸フルエステルは、炭素数が3以上の多価アルコールと脂肪酸とのフルエステル化合物の多価脂肪酸エステルであることが好ましい。本明細書において、「フルエステル化合物」のエステル化率は、必ずしも100%である必要はなく、80%以上であれば足り、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0033】
多価アルコールは脂肪族であっても芳香族であってもよいが、ポリアセタール樹脂との親和性の点で脂肪族であることが好ましい。
【0034】
多価アルコールの価数は特に限定されるものではないが、3以上4以下であることが好ましい。また、多価アルコールの炭素数は特に限定されるものではないが、ポリアセタール樹脂との親和性の点で、3以上10以下であることが好ましく、3以上5以下であることがより好ましい。
【0035】
(E)成分のエステルを形成するための好ましい多価アルコールとして、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、メソエリスリトール、ペンチトース、ヘキシトール、ソルビトール等が挙げられるが、硫黄燃料に浸漬した後におけるポリアセタール樹脂組成物の重量減少を低く抑えられる点で、多価アルコールは、ペンタエリスリトールであることが好ましい。
【0036】
脂肪酸の種類は特に限定されるものでないが、ポリアセタール樹脂との親和性の点で、炭素数10以上30以下の脂肪酸であることが好ましく、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸であることがより好ましい。
【0037】
(E)成分のエステルを形成するための好ましい脂肪酸として、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等が挙げられ、好ましくはステアリン酸が挙げられる。
【0038】
(E)成分のエステルとして、グリセリントリステアリレート、ペンタエリスリトールテトラステアリレートが好適に用いられ、ペンタエリスリトールテトラステアリレートがより好適に用いられる。なお、(E)成分は、それを構成する多価アルコールや脂肪酸が異なるエステル化物や、エステル化率の異なるエステル化物の2種以上を併用してもよい。
【0039】
本発明における(E)多価脂肪酸フルエステルの含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、0.01〜1.0重量部であり、0.05〜1.0重量部であることがより好ましい。(E)多価脂肪酸フルエステルの配合量が少ないと、成形品の離型性が悪化する可能性がある。(E)多価脂肪酸フルエステルの配合量が過剰の場合は、成形品の加工性が低下する可能性がある。
【0040】
<燃料接触体>
本発明の燃料接触体は、上記ポリアセタール樹脂組成物の成形品を備える。この成形品は、上記ポリアセタール樹脂組成物を用いて、慣用の成形方法、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形等の方法で成形することにより得ることができる。
【0041】
本発明の燃料接触体は、低硫黄燃料に限らず、高硫黄燃料を接触させたものであってもよい。高硫黄燃料を接触させたとしても、クラックの発生を抑え、良好な成形品表面外観を保持できるため、燃料の漏出を抑えることができる。なお、本明細書において、「低硫黄燃料」とは、硫黄の濃度が50ppm以下の燃料をいい、例えば、日本のJIS2号軽油、欧州のEN590軽油等が挙げられる。一方、「高硫黄燃料」とは、硫黄の濃度が50ppmを超える燃料をいい、中国、インド等で流通している高硫黄ディーゼル燃料等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0043】
【表1】
【0044】
表1における各種成分は次のとおりである。
(A)ポリアセタール樹脂
トリオキサン96.7重量%と1,3−ジオキソラン3.3重量%とを共重合させてなるポリアセタール共重合体(メルトインデックス(190℃,荷重2160gで測定):9g/10min)
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
テトラキス[メチレン3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
(製品名:Irganox1010,BASF社製)
(C)アルカリ土類金属酸化物
酸化マグネシウム(製品名:MF−150,キョーワマグ社製)
(D)ポリアルキレングリコール
製品名:PEG6000S(三洋化成工業社製)
(E)多価脂肪酸フルエステル
(E1)多価脂肪酸フルエステル1
ペンタエリスリトールステアリン酸エステル(製品名:ユニスターH476,日油社製)
(E2)多価脂肪酸フルエステル2
グリセリントリステアレート(製品名:ポエムS−95,理研ビタミン社製)
(E’)多価脂肪酸エステル
(E’1)多価脂肪酸フルエステル1
グリセリンモノステアレート(製品名:リケマールS−100A,理研ビタミン社製)
(E’2)多価脂肪酸フルエステル2
ステアリルステアレート(製品名:ユニスターM9676,日油社製)
【0045】
<実施例及び比較例>
表1に示す各種成分を表1に示す割合で添加混合し、二軸の押出機で溶融混練してペレット状の組成物を調製した。次いで、このペレットを用いて射出成形により厚さ1mmのASTM 4号ダンベル試験片を作製した。
【0046】
<評価>
ポリアセタール樹脂組成物の耐燃料性を評価するため、上記ダンベル試験片をディーゼル燃料(製品名:CEC RF 90−A−92,ハルターマン社製)に100℃で14日間浸漬し、その前後の試験片の重量から燃料浸漬による重量変化率を算出した。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
(A)ポリアセタール樹脂100重量部と、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜1.0重量部と、(C)アルカリ土類金属酸化物0.1〜2.0重量部と、(D)ポリアルキレングリコール0.5〜3.0重量部と、(E)多価脂肪酸フルエステル0.01〜1.0重量部とを含有するポリアセタール樹脂組成物を原料とする樹脂成形品は、硫黄燃料に浸漬した後であっても、重量変化率を−10%以内に抑えられることが確認された。中でも、(E)多価脂肪酸フルエステルがペンタエリスリトールステアリン酸エステルである場合、硫黄燃料に浸漬した後におけるポリアセタール樹脂組成物の重量減少をより低く抑えられることが確認された。
【0049】
一方、上記(C)成分から(E)成分のいずれか一種でも含まない場合、高硫黄燃料の浸漬によりポリアセタール樹脂組成物の劣化が始まり、ポリアセタール樹脂組成物の重量が著しく減少することが確認された(比較例1〜6)。
【手続補正書】
【提出日】2015年8月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアセタール樹脂100重量部と、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜1.0重量部と、
(C)アルカリ土類金属酸化物0.1〜2.0重量部と、
(D)ポリアルキレングリコール0.5〜3.0重量部と、
(E)エステル化率が80%以上である多価脂肪酸エステル0.01〜1.0重量部とを含有するポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ポリアセタール樹脂がポリアセタールコポリマー樹脂である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアセタールコポリマー樹脂は、ホルムアルデヒドの環状オリゴマーを主モノマーとし、少なくとも1つの炭素−炭素結合を有する環状エーテル及び/又は環状ホルマールから選択される化合物をコモノマーとする共重合体である、請求項2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)アルカリ土類金属酸化物が酸化マグネシウムである、請求項1から3のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
前記多価脂肪酸エステルは、炭素数が3以上の多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物である、請求項1から4のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の成形品を備える燃料接触体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
【表1】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
表1における各種成分は次のとおりである。
(A)ポリアセタール樹脂
トリオキサン96.7重量%と1,3−ジオキソラン3.3重量%とを共重合させてなるポリアセタール共重合体(メルトインデックス(190℃,荷重2160gで測定):9g/10min)
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
テトラキス[メチレン3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
(製品名:Irganox1010,BASF社製)
(C)アルカリ土類金属酸化物
酸化マグネシウム(製品名:MF−150,キョーワマグ社製)
(D)ポリアルキレングリコール
製品名:PEG6000S(三洋化成工業社製)
(E)多価脂肪酸フルエステル
(E1)多価脂肪酸フルエステル1
ペンタエリスリトールステアリン酸エステル(製品名:ユニスターH476,日油社製)
(E2)多価脂肪酸フルエステル2
グリセリントリステアレート(製品名:ポエムS−95,理研ビタミン社製)
(E’)他の脂肪酸エステル
(E’1)エステル化率が80%未満の多価脂肪酸エステ
グリセリンモノステアレート(製品名:リケマールS−100A,理研ビタミン社製)
(E’2)1価脂肪酸エステル
ステアリルステアレート(製品名:ユニスターM9676,日油社製)