特開2015-209528(P2015-209528A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-209528(P2015-209528A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】インクジェット記録用水性インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20151027BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20151027BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20151027BHJP
【FI】
   C09D11/30
   B41J2/01 501
   B41M5/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-93645(P2014-93645)
(22)【出願日】2014年4月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】尾島 治
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EC08
2C056EC37
2C056FA04
2C056FC01
2H186AA02
2H186FA20
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB54
4J039AD06
4J039AD09
4J039AD14
4J039AD23
4J039AE04
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA06
4J039DA02
4J039EA41
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 吐出信頼性及び保存安定性に優れたインクジェット記録用インクを提供する。
【解決手段】 顔料と、水溶性溶媒及び/または水と、分散樹脂とを含有するインクジェット記録用水性インクであって、インクジェット方式で基材に印字する際の連続インク吐出速度(Vr)と間欠インク吐出5秒以内の初発速度(Vs)との関係式(Vs/Vr)×100で算出される値が1以上であるインクジェット記録用水性インク。前記インクジェット記録用水性インクは、前記顔料と、前記水溶性溶媒及び/または水と、前記分散樹脂とを、メディアミルで分散させた後メディアレスミルで分散させる工程を経て得たものであることが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、水溶性溶媒及び/または水と、分散樹脂とを含有するインクジェット記録用水性インクであって、インクジェット方式で基材に印字する際の連続インク吐出速度(Vr)と間欠インク吐出5秒以内の初発速度(Vs)との関係式(Vs/Vr)×100で算出される値が1以上であることを特徴とするインクジェット記録用水性インク。
【請求項2】
前記インクジェット記録用水性インクが、前記顔料と、前記水溶性溶媒及び/または水と、前記分散樹脂とを、メディアミルで分散させた後メディアレスミルで分散させる工程を経て得たものである請求項1に記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項3】
前記メディアレスミルが超音波ホモジナイザーである請求項2に記載のインクジェット記録用水性インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録用水性インクに関する。
【背景技術】
【0002】
主溶剤として水を用いる水性インクは、溶剤インクのような火災の危険性や変異原性などの毒性が皆無か、より低減できるという優れた特徴を有している。このため産業用途以外のインクジェット記録用インクとしては、水性インクがインクジェット記録の主流となっている。
一般にインクジェット記録に使用されるインクには様々な課題が要求される。例えば耐水性や耐光性に優れることや、記録媒体上ににじみのない高発色,高解像度、高濃度で均一な画像が得られること、ノズル先端においてインクの乾燥による目詰まりが発生せず吐出信頼性が良好なこと、記録媒体上でのインクの乾燥性が良好であること、画像の堅牢性が良好であること、長期保存安定性が良好であること、等があげられる。
中でも吐出信頼性はインクジェット記録法に特有の課題であり、従来様々な検討がなされてきた。
【0003】
例えば、インク組成に着眼した方法として、特許文献1には、吐出信頼性に劣る原因は、十分に分散剤が吸着していない色材や粒径の非常に小さい色材等のインクの乾燥により凝集し易い不安定な粒子が、吐出ノズル部分に乾燥等で付着物として残留することであるとし、アニオン性着色粒子を含有する水分散液と二酸化炭素ガスを混合し分散する方法が開示されている。
また、特許文献2には、水分が蒸発しても、粘度が吐出信頼性を損なうほど上昇することがなく、更に、吐出ノズル近傍での物性変化を起こしにくく、良好に吐出を行うことができるインクとして、水と、色材と、酸性化合物と、揮発性アルカリ化合物と、前記酸性化合物により低粘度化状態となると共に、前記揮発性アルカリ化合物により高粘度化状態となる水溶性樹脂とを含むインクジェット記録用インクが開示されている。
【0004】
また、記録装置に着眼した方法として、特許文献3には、総固形分の相転移点が10〜60℃の水性インクを使用し、印字中に、該インクジェット記録ヘッドのインクを吐出しない休止ノズルのメニスカスに、インク吐出電圧の0.3〜0.9倍の電圧で微振動を与え、その後、該休止ノズルからインク滴の吐出を開始する時、吐出を開始する0.5〜2.0AL(1AL:Acoustic Length 音響的共振周期の1/2)時間以前に該休止ノズルの微振動を停止して、該水性インクを吐出するインクジェット記録方法が開示されている。
【0005】
しかしながらこれらの方法は、いずれも、特定のインク組成や記録装置を必要とする方法であり、汎用的ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−122114号公報
【特許文献2】特開2010−95628号公報
【特許文献3】特開2004−202955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、吐出信頼性及び保存安定性に優れたインクジェット記録用インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定のインク組成や記録装置に限定されることなく、吐出信頼性の高いインクを得る方法として、インクジェット方式で基材に印字する際の連続インク吐出速度(Vr)と間欠インク吐出5秒以内の初発速度(Vs)との関係が、特定の関係を満たすインクが、吐出信頼性に優れることを見出した。
【0009】
即ち本発明は、顔料と、水溶性溶媒及び/または水と、分散樹脂とを含有するインクジェット記録用水性インクであって、インクジェット方式で基材に印字する際の連続インク吐出速度(Vr)と間欠インク吐出5秒以内の初発速度(Vs)との関係式(Vs/Vr)×100で算出される値が1以上であるインクジェット記録用水性インクを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、長期に安定した吐出信頼性、及び保存安定性を有するインクジェット記録用インクを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(顔料)
本発明で使用する顔料は、特に限定はなく、水性インクジェットインクにおいて通常使用される有機顔料あるいは無機顔料を使用することができる。また未処理顔料、処理顔料のいずれでも適用することができる。また、プラスチックを被記録材とする印刷の場合ではイエローインク、シアンインク、マゼンタインク、ブラックインク等のほか、視認性を高める目的から白色インクやレッドインクも使用される。
【0012】
これらの使用される顔料は特に限定はなく、通常水性インクジェット記録用インク用の顔料として使用されているものが使用できる。具体的には、水や水溶性有機溶剤に分散可能であり、公知の無機顔料や有機顔料が使用できる。無機顔料としては例えば、酸化鉄、アルミナ、酸化チタン、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック等がある。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ジケトピロロピロール顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0013】
例えば、ブラックインクに使用される顔料としては、カーボンブラックとして、三菱化学社製のNo.2300、No.2200B、No.900、No.960、 No.980、No.33、No.40、No,45、No.45L、No.52、HCF88、MA7、MA8、MA100、等が、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等が、キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Mogul 700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400等が、デグサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同1400U、Special Black 6、同5、同4、同4A、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180、等が挙げられる。
【0014】
また、イエローインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185、等が挙げられる。
【0015】

また、マゼンタインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209、等が挙げられる。
【0016】
また、シアンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、63、66、等が挙げられる。
【0017】
また、白インクに使用される顔料の具体例としては、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、微粉ケイ酸、合成珪酸塩、等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ、等があげられる。また、前記無機白色顔料が各種表面処理方法で表面処理されていてもよい。
【0018】
また、レッドインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド177、179、254、255、264、等が挙げられる。
【0019】
本発明においては、顔料表面に水分散性付与基を有し、分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆる自己分散型顔料(表面処理顔料)でも良いし、顔料表面の全体をポリマーで被覆し、これにより分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆるカプセル顔料(水分散性ポリマー包含顔料)でも良いし、分散剤により分散された顔料を使用してもよい。
【0020】
本発明で使用する顔料は、ドライパウダー及びウェットケーキのいずれも用いることができる。また、これらの顔料は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明で使用する顔料は、その粒子径が25μm以下のものからなる顔料が好ましく、1μm以下のものからなる顔料が特に好ましい。粒子径がこの範囲にあれば、顔料の沈降が発生しにくく、顔料分散性が良好となる。
粒子径の測定は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定した値を採用することができる。
【0022】
(水溶性溶媒及び/または水)
本発明で使用する水溶性溶媒及び/または水は、従来よりインクジェット記録用水性インクの調製に用いられているものをいずれも使用できる。
水溶性溶媒としては、例えば、1価又は多価のアルコール類、アミド類、ケトン類、ケトアルコール類、環状エーテル類、グリコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ポリアルキレングリコール類、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類,エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類および多価アルコールアラルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類、1,3−ジメチルイミダゾリジノンアセトン、N−メチルー2−ピロリドン、m−ブチロラクトン、グリセリンのポリオキシアルキレン付加物、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどである。これらは、単独で用いても、又は2種以上を併用してもよい。
【0023】
また水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、インクを長期保存する場合にカビまたはバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0024】
(分散樹脂)
前記顔料樹脂の好ましい例としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル酸−ポリウレタン共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体(ハーフエステル化又はエステル化されたマレイン酸を原料とする樹脂も含む)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、及び該水性樹脂の塩が挙げられる。これらの樹脂が有するカルボキシル基は、親水性基としてだけでなく、架橋性官能基としての機能も持つため、後述する架橋処理により光沢向上、耐擦性向上等が期待できる。
【0025】
前記共重合体の塩を形成するための化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化アルカリ金属類、およびジエチルアミン、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどが挙げられる。これらの塩を形成するための化合物の使用量は、前記共重合体の酸価に基づき、中和率として20〜200%となる範囲であることが好ましい。
【0026】
尚、ここでいう酸価とは、日本工業規格「 K 0070:1992. 化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」に従って測定された数値であり、樹脂1gを完全に中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)である。
【0027】
前記中和率として20%以上であると、水溶性溶媒及び/または水中に、分散樹脂をより安定に乳化又は懸濁化することができる。また100%以上の塩基を加えた場合多くの分散樹脂が水性媒体中に溶解するが、低い酸価の樹脂や高分子量の樹脂等では、完全に溶解せずに乳化又は懸濁化状態を保つものもあり、このような樹脂の場合、100%以上の中和率に相当する塩基を添加することができる。
一方、長期保存時におけるゲル化を防ぐ目的や、得られる印字物の耐水性の予期せぬ低下を防ぐ観点から、中和率は200%以下とすることが好ましい。
なお本発明において、中和率は、塩基性化合物の配合量が前記共重合体中の全てのカルボキシル基の中和に必要な量に対して何%かを示す数値であり、以下の式で計算される。
【0028】
【数1】
【0029】
また市販品を使用することも勿論可能である。市販品としては、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPBシリーズ、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbykシリーズ、BYK−シリーズ、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のEFKAシリーズ、日本ルーブリゾール社製のソルスパーズシリーズ等を使用できる。
【0030】
(吐出速度)
本発明において、インクジェット方式で基材に印字する際の連続インク吐出速度(Vr)とは、駆動周波数10kHz、30℃に加熱した積層ピエゾ型ヘッド(プッシュモード方式)を用い、インク液滴10plを120秒間連続吐出させたもので、ノズルからの吐出インクを基材に印字、その状態を目視で観察、ノズル欠が発生しない中での吐出速度のことである。
【0031】
また、本発明において、間欠インク吐出5秒以内の初発速度(Vs)とは、駆動周波数10kHz、30℃に加熱した積層ピエゾ型ヘッド(プッシュモード方式)を用い、インク液滴10plを120秒間連続吐出、5秒間停止させた後、最初に初発吐出する液滴吐出速度のことである。
【0032】
本発明のインクは(Vs/Vr)×100で算出される値が1以上のインクである。本発明において(Vs/Vr)×100とは、連続インク吐出速度と間欠インク吐出5秒以内の初発速度の速度比率(%)を表したものである。即ち、間欠吐出速度の低下率を表すものである。両者の速度比率が大きい程、連続インク吐出速度と間欠インク吐出初発速度の差が小さく、吐出ノズル先端においてインクの乾燥による付着物が残留することなどで発生する目詰まりを起こしにくく、吐出信頼性が良好である。間欠吐出速度が全く低下しない場合(Vs/Vr)×100は100となる。前記間欠吐出速度が全く低下しないインクあるいは吐出条件が理想であるが、オフィス用途等の通常の居住環境下において使用されるインクジェットプリンターによる印字は、吐出ノズル先端でのインクの乾燥による付着物の残留などは避けられないため、一般に小さくなる傾向にある。
【0033】
(Vs/Vr)×100で算出される値が1を下回る場合、連続インク吐出速度と間欠インク吐出初発速度の差が大きすぎるため、吐出ノズル先端においてインクの乾燥による付着物が残留しやすくなることなどで発生する目詰まりを起こしやすく、吐出信頼性は著しく不良になる可能性がある。
【0034】
本発明においては、前記(Vs/Vr)×100で算出される値が1以上であれば課題を満たすため、上限については特に限定はない。(Vs/Vr)×100で算出される値が前述の通り間欠吐出速度が全く低下しない場合は100となる。一方、例えばオフィス用途のような、室温25℃前後且つ湿度50%前後のごく一般的な居住環境では、間欠吐出速度は低下することが多く、前記(Vs/Vr)×100で算出される値は50程度、実質的には30程度となることが多い。即ち前記(Vs/Vr)×100で算出される値が1〜50の範囲内であればオフィス用途として好ましく使用できる範囲であり、1〜30の範囲内であっても十分オフィス用途として好ましく使用できる範囲である。しかしながらこういった環境下においても、前記(Vs/Vr)×100で算出される値が1を下回る場合は、吐出信頼性を著しく損なう恐れがあり、実使用上好ましくない範囲である。
【0035】
本発明において、インクジェット方式で基材に印字する際の連続インク吐出速度(Vr)と間欠インク吐出5秒以内の初発速度(Vs)は、次の印字システムを用いて計測した値を採用した。
【0036】
ヘッド 方式:積層ピエゾプッシュモード
温度:30℃加温(ヒーター・サーミスタ制御)
駆動周波数:10kHz
液適量:10pl
システム 対象インクに合わせて、駆動条件(時間(μs)と電圧(率)の関係を波形グラフとして作成)を変更、安定したインクの連続吐出が確認される条件で実施した。
吐出液滴画像は、カメラで撮像し、吐出液滴速度は、カメラ撮像の遅延時間を変更する(差:300μs)ことで、測定した。
吐出観察パラメータ
解像度 2.3μm/pixel
測定距離 1.0mm
最小ドット幅 5pixel
開始座標 上端Y座標 30pixel
終了座標 下端Y座標 450pixel
測定領域幅+ドット検出高さ( 単位:pixel)
特徴抽出パラメータ
撮像画像分割幅 10pixel
撮像画像分割高さ 5pixel
X方向移動量(幅) 5pixel
Y方向移動量(高さ)5pixel
しきい値 5
階調差 10
最小面積(指定した値より大きい)
「階調差」を超えた領域の面積(画素数) 100pixel
最大面積(指定した値より小さい)
「階調差」を超えた領域の面積(画素数)1000pixel
【0037】
本発明において使用するインクジェット記録用水性インクの基本物性としては、インクジェット方式で基材に印字する際の連続インク吐出速度(Vr)と間欠インク吐出5秒以内の初発速度(Vs)が計測できる範囲内であれば良く、特に限定されるものではない。例えば粘度は10〜15mPa・sの範囲が好ましく、表面張力は、28〜35mN/mであることが好ましい。
【0038】

(製造方法)
本発明のインクジェット記録用水性インクは、特に限定なく公知の方法で製造できるが、中でも、前記顔料と、前記水溶性溶媒及び/または水と、前記分散樹脂とをメディアミルで分散させて水性顔料分散体(1)を得る工程1と、前記水性顔料分散体(1)をメディアレスミルで分散させて水性顔料分散体(2)を得る工程2とを有する製造方法により得る方法が好ましい。
【0039】
前記水性顔料分散体(1)や前記水性顔料分散体(2)の粒径は、日本工業規格「 Z 8819:粒子径測定結果の表現」に従った手法で、その分布状態を把握、粒径を計算すればよく、この原理を取り入れた市販される粒径測定装置を用いることができる。ここで述べる顔料の平均粒径は、インク中に懸濁した状態で存在する顔料粒子の無作為な衝突から起こるブラウン運動を利用した測定原理からなる、日機装社製のナノトラックUPAを用いて測定した値を使用する。
【0040】
(工程1)
前記工程1で使用するメディアミルとは、ビーズ等の分散メディアを使用した分散機であれば特に限定されない。例えば、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ディスパーマット、井上製作所社製「スパイクミル」、Getzmann社製「TORUSMILL」、アシザワファインテック社製「スターミル」、アイメックス社製「ビスコミル」、シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」、三菱重工社製「ダイヤモンドファインミル」、コトブキ技研工業社製「アペックスメガ」、浅田鉄工社製「ナノミル」、「ピコミル」、ユーロテック社製「OBミル」、ドライスヴェルケ社製DCPミル、日本コークス社製「SCミル」、等が挙げられるが、上記のタイプの分散機であれば、これらの機種に限定されるものではない。また、分散機は1種のみを使用してもよいし、複数種を連続して使用してもよい。
【0041】
一方、分散メディアとしては、ジルコニア、ジルコン、チタニア、アルミナ、ガラス、スチール、窒化ケイ素、等の様々な材質のビーズが使用できるが、耐薬品性、耐摩耗性の観点から、ジルコニア、ジルコンが好ましく、特にジルコンがなお好ましい。
【0042】
メディアの直径としては、0.1mm〜2.0mmが好ましい。この範囲より小さい直径のメディアを選択すると、個々のビーズの運動エネルギーが小さく、乾燥凝集の強い顔料の場合は粉砕が困難で、最後まで粗大粒子が残り、粒度分布のブロードな分散体となる。また、スラリーとの分離の観点からも、使用できるミルが限定される。一方、大きい直径のメディアを選択すると、ビーズ表面積に対し、顔料粉砕として仕事する衝突・接触面積が小さく、ビーズ間の空隙が大きいため分散効率が悪くなる。
【0043】
メディアの充填率としては特に限定されるものではないが、分散機の容積に対し、25〜90%が好ましい。メディアの直径と充填率と分散性能は密接な関係があり、充填率が低い場合は、広い自由空間によりビーズの運動エネルギーが大きく、乾燥凝集の強さに関係なく粉砕が可能となる点で、顔料の選択幅が拡がる。一方、その大きな運動エネルギーのために、必要以上の顔料の微細化が起こり、分散させた顔料粒子が再凝集したり、分散安定性を損なう等、好ましくない現象を引き起こす。また、充填率が高い場合は、ビーズの稼動する空間が狭くなり、運動エネルギーが小さくなるため、粉砕が殆ど進行しなくなるだけでなく、ビーズパッキングを起こし、ビーズ全体が一固体として稼動する等、分散の進行を妨げる好ましくない現象を引き起こす。したがって、メディアの直径および充填率は、顔料の解砕し易さ、所望の分散粒径によって、適宜選択されるべきである。
【0044】
本発明におけるメディア攪拌型分散機の分散工程初期のローター周速は、特に限定されないが、例えば、5m/秒以上15m/秒以下の範囲で制御することが好ましい。分散工程初期のローター周速が5m/秒未満では、循環流量が少なくなるため、分散機に到達する前に予備混合したスラリー中の顔料の沈降が見られ、不均一な分散となるだけでなく、分散時間が長くなり経済的ではない。一方、周速が15m/秒を超えると、過分散傾向を発現しやすく、微細化した粒子に起因する凝集が起こり、インクジェット記録用インクとして使用すると、ノズル詰まり等を引き起こし、トラブルの原因となる。
【0045】
ここで、本発明におけるローター周速とは、ローターの外周を直径より計算で求め、それに回転数を乗じて求めたものと定義される。また、メディア攪拌型分散機の分散工程初期のローター周速を、5〜15m/秒の範囲とし、全分散時間の30%以上を該周速範囲に維持することが、粒度分布のシャープな分散体を得る上で好ましい。
【0046】
前記工程(1)においては、公知の方法で行うことができる。
例えば、各々の原材料を攪拌装置で混合物として調整し、前記したメディアミルの内、サンドグラインダー、ダイノーミル、SCミル、等の分散機を用いて顔料分散させることが好ましい。これらの工程は、単独の分散機で処理を行なってもよく、2種類以上を組み合わせて行ってもよい。
【0047】
前記工程(1)において、分散時の顔料濃度は、通常水性顔料分散体仕込み全量に対して5〜70質量%の範囲であり、10〜50質量%の範囲がなお好ましい。顔料濃度が5質量%未満であると、顔料分散させることは比較的容易であるが、インク化時に要求される顔料濃度を実現するには自由度がなく、その設計幅を小さくする点で、現実的でないことに加え、調製した水性インクの着色が不充分となり、満足いく画像濃度が得られない傾向にある。また、逆に70質量%を超えると、対象スラリーの粘度が非常に高くなり、メディアミルで分散処理できる限界を超えてしまうことに加え、顔料分散体の分散および保存安定性が低下する傾向にある点で好ましくないからである。
【0048】
(工程2)
前記工程2で使用するメディアレスミルとは、具体的には、超音波ホモジナイザー、高速ディスクインペラー、コロイドミル、ロールミル、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、等による分散法があげられるが、生産性、顔料表面に損傷を与えにくいこと、などを顧慮すると超音波分散法が好ましい。本発明においては、以下超音波ホモジナイザーを用いた例を用いて詳細に述べる。
【0049】
超音波照射の条件は特に制限されないが、200〜3000Wの出力と15〜40kHzの周波数で行うことが好ましく、さらに好ましくは500〜2000Wの出力と15〜25kHzの周波数で行うことが出来る。
【0050】
出力を前記範囲に設定すると、キャビテーションの効率が高くなる結果、顔料分散工程が効率化できたり、粗大粒子が破砕でき、水性顔料分散体中に粗大粒子が残存しにくくなること、その結果、水性顔料分散体自身から得られる着色被膜の彩度(質感)が改良され、水性顔料分散体から水性顔料記録液として後述するインクジェット記録用水性インクを調製した際にスムーズな吐出が得られる(良好な吐出安定性)こと、顔料粒子の沈降や再凝集等による製品品質の低下がなくなる(良好な保存安定性)こと、発振棒のエロージョン(腐食)が著しく小さくなり機器メンテナンスコストが下がること、等の理由により、大変好ましい。
【0051】
一方、周波数を前記範囲に設定することで、キャビテーションをうまく起こさせることができ、顔料分散工程が効率化できたり、粗大粒子が選択的に破砕でき、水性顔料分散体中に粗大粒子が残存しにくくなる。
【0052】
超音波照射を行う時間は、分散液中に含まれる顔料質量に対して0.5〜2.0W/gの電力量を与えるのが適当である。
【0053】
超音波処理は、これ以上、長時間の処理を行うことも、短時間で処理をとりやめることもできるが、これ以下の電力量であると分散粒径、粘度、画像鮮明度などのパフォーマンスに支障を生じ易く、好ましくない。またこれ以上の電力量を与えると同様のパフォーマンスは良い方向へ進むが、分散に寄与するよりも熱に変化する電力量が増加するため、与える電力に対する分散効率、さらには時間的な生産性の低下が生じるため好ましくない。
【0054】
水性顔料分散体に超音波照射を終えた後に、必要であれば更に分散を行うこともできる。また、分散と超音波照射を繰り返し行うこともできる。
【0055】
超音波照射に供する水性顔料分散体の温度は、特に制限されるものではないが、この水性顔料分散体を凝固点〜70℃となる様に制御しながら、超音波を照射する様にすることが好ましい。凝固点以下だと超音波分散が不可能になり、70℃以上であると水分の蒸発が生じ、固形分の変化、即ち、顔料濃度の増加などの不確定条件が生じるからである。
【0056】
水性顔料分散体の冷却の手段は、公知のものを、ごく一般的に使うことができるが、それを例示するならば、氷冷、風冷、水冷などである。この冷却としては、具体的には、水性顔料分散体を保持する容器の外套(ジャケット)中に冷媒を流す方法、水性顔料分散体の入っている容器を冷媒の中に浸漬する方法、気体の風を吹き付ける方法、水などの冷媒と風とを使って蒸発熱で冷却する方法などが挙げられる。
例えば、冷媒として、予め0℃を越えて20℃以下、好ましくは0℃を越えて10℃以下に冷却された冷却水を使用する方法は、比較的に経済的であり、しかも冷却効率も優れているため望ましい方法の一つである。この際、冷却水を循環装置で循環すると同時に、冷却装置で冷却も行うことが出来る。この際、冷却水中に、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの凍結温度を下げるものを加えたり、塩化ナトリウムなどを加えて凝固点降下を起こさせるのも大変望ましい。その結果、0℃を越える冷却水では十分な冷却効果が得られない時でも、それ以下の温度の冷却水とすることが出来、より水性顔料分散体を前記温度範囲内でもより低温となる様に保持して超音波照射することが可能になる。風冷する場合も、単に雰囲気温度の風を吹き付けるのではなく、予め冷やした冷風を用いることが好ましい。
【0057】
上記超音波照射に用いる装置は、出来るだけ少ない台数で行うことがコストの関係から望ましいが、必要ならば最低限の複数の装置を、直列または並列に連結させて処理を行うことも出来る。
【0058】
なお、超音波照射の終点は、粒ゲージや市販の粒径測定装置で顔料粒子や前記複合粒子の粒径を測定して決める他、粘度、接触角、各種の方法で調製した塗膜の反射光度、色彩等の物性測定で決定しても良い。また顕微鏡などを使った直接観察を行って決定しても良い。
【0059】
前記工程(2)においては、公知の方法で行うことができる。
例えば、前記したメディアレスミルの内、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、等の分散法を用いて顔料分散させることが好ましい。これらの工程は、単独の分散機で処理を行なってもよく、2種類以上を組み合わせて行ってもよい。
【0060】
本発明は、前記工程(1)と工程(2)とを、その顔料粒径を制御しながら連続して行うことに特徴を持つが、前記工程(1)、あるいは前記工程(2)の前後に、必要に応じて濾過、顔料濃度調整、分級等の工程を入れてもよい。特に、粗大粒子が存在する場合は、ノズル詰まりやその他の画像特性を劣化させる原因になるため、インク調製前後に、遠心分離、あるいは濾過処理等により粗大粒子を除去することが好ましい。
【0061】
分散工程の後に、イオン交換処理や限外処理による不純物除去工程を経て、その後に後処理を行っても良い。イオン交換処理によって、カチオン、アニオンといったイオン性物質(2価の金属イオン等)を除去することができ、限外処理によって、不純物溶解物質(顔料合成時の残留物質、分散液組成中の過剰成分、有機顔料に吸着していない樹脂、混入異物等)を除去することができる。イオン交換処理は、公知のイオン交換樹脂を用いることができる。限外処理は、公知の限外ろ過膜を用いることができ、通常タイプ又は2倍能力アップタイプのいずれでもよい。
【0062】
(インクジェット記録用インク)
このようにして得られた水性顔料分散体は、水性顔料分散体全量に対し、顔料量が5〜70質量%、より好ましくは10〜50質量%の、顔料の高濃度水分散液である。通常、この分散液をインクジェット記録用インクとするには、該水性顔料分散体を水溶性溶媒及び/または水で更に希釈し、バインダー樹脂、その他インクに必要な添加剤を添加して調製することができる。
【0063】
(バインダー樹脂)
本発明において、使用するバインダー樹脂は、通常水性インクジェット記録用インクのバインダーとして知られているものであれば特に限定なく使用することができる。例えば水性あるいは水分散性のポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体などのアクリル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体などのスチレン−アクリル酸樹脂;スチレン−マレイン酸;スチレン−無水マレイン酸;ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体;ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体;酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びこれらの塩が挙げられる。
【0064】
(インク添加剤−湿潤剤)
インク用の添加剤の1つである湿潤剤は、インクの乾燥防止を目的として添加する。乾燥防止を目的とする湿潤剤のインク中の含有量は3〜50質量%であることが好ましい。
本発明で使用する湿潤剤としては特に限定はないが、水との混和性がありインクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものが好ましい。例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、等が挙げられる。中でも、グリセリン、トリエチレングリコール、1,3−ブチルグリコールを含むことが安全性を有し、かつインク乾燥性、吐出性能に優れた効果が見られる。
【0065】
(インク添加剤−浸透剤)
インク用の添加剤の1つである浸透剤は、被記録媒体への浸透性改良や記録媒体上でのドット径調整を目的として添加する。
浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物、等が挙げられる。
インク中の浸透剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。
【0066】
(インク添加剤−界面活性剤)
インク用の添加剤の1つである界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために添加する。このために添加することのできる界面活性剤は特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、等が挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0067】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩、等を挙げることができる。
【0068】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0069】
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント、等も使用することができる。
【0070】
これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、2種類以上を混合して用いることもできる。また、界面活性剤の溶解安定性等を考慮すると、そのHLBは、7〜20の範囲であることが好ましい。界面活性剤を添加する場合は、その添加量はインクの全質量に対し、0.001〜2質量%の範囲が好ましく、0.001〜1.5質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%の範囲であることがさらに好ましい。界面活性剤の添加量が0.001質量%未満の場合は、界面活性剤添加の効果が得られない傾向にあり、2質量%を超えて用いると、画像が滲むなどの問題を生じやすくなる。
【0071】
また、必要に応じて防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、架橋剤、等を添加することができる。
【0072】
前記希釈、添加剤の添加方法は、特に限定なく、従来一般的に用いられる方法により行うことができる。例えば、前記水性顔料分散体と、バインダー樹脂、添加剤として界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、酸化防止剤または紫外線吸収剤、防腐剤、等を希釈率に応じた溶媒に混合した後、各種分散機や攪拌機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、パールミル、等を利用して分散・混合する方法が挙げられる。必要に応じてこの後に更に、各種添加剤を添加してもよい。
【0073】
(記録媒体)
インクジェット記録用インクの記録媒体としては特に限定はなく、複写機で一般的に使用されているコピー用紙(PPC紙)等の吸収性の記録媒体、インク吸収層を有する記録媒体、インク吸収性を有しない非吸水性やインク吸水性の低い難吸収性の記録媒体などがありうる。
吸収性の記録媒体の例としては、例えば普通紙、布帛、人工皮革、天然皮革、ダンボール、木材等があげられる。布帛は、繊維で構成される媒体であることが好ましく、織物の他不織布でもよい。素材は綿、絹、羊毛、麻、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン等の任意の天然・合成繊維からなる布帛を用いることができる。
また吸収層を有する記録媒体の例としては、インクジェット専用紙等があげられる。
【0074】
非吸水性の記録媒体はインク吸水性を有しない記録媒体だけでなく、インク吸水性の低い記録媒体も含有する。非吸水性の記録媒体の例には、印刷本紙などのコート紙、樹脂基材、金属基材、ガラス基材などが含まれる。樹脂基材は、好ましくは疎水性樹脂からなる樹脂基材(プレート、シートおよびフィルムを含む)、該樹脂基材とその他の基材(紙など)との複合基材などであってよい。疎水性樹脂の例には、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、軟質塩ビや硬質塩ビ等の塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、等などが含まれる。
【0075】
本発明の製造方法で得られた顔料分散体、およびそこから作製した水性顔料インクは、インクジェットプリンター用インクのみならず、筆記具用インク、水性塗料、布帛に印捺する顔料捺染剤等にも用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明の効果を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の記載において部および%は質量部を示す。
【0077】
(実施例1)
スチレン−マレイン酸ハーフエステル(岐阜セラック製造所製の製品名「DSS−25」、酸価:116mgKOH/g、重量平均分子量:42,000、SP:11.0)15部、水酸化カリウム1.57部(スチレン−マレイン酸ハーフエステル中の酸性基の総量に対して0.90当量に相当する量)及び水83.43部を、撹拌機を用いて、70℃で混合撹拌することにより、半透明の樹脂分散液(Re)を得た。
次に、樹脂分散液(Re)40部にブラック色顔料(製品名「#40」、Pigment Black 7、三菱化学製)20部、水40部を加え、十分攪拌混合し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで7時間摩砕し、工程1を行った。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、ブラック顔料分散体(MBk)を得た。
【0078】
前記工程1で得たブラック顔料分散体(MBk)60部、水40部を攪拌混合し、出力600Wの超音波ホモジナイザーを用いて3時間細分化処理して工程2を行い、ブラック顔料分散体(D−MBk)を得た。
【0079】
前記工程2で得たブラック顔料分散体(D−MBk)25部、トリエチレングリコール15部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2部、水58部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性ブラック顔料インク(1)を得た。
【0080】
(実施例2)
実施例1で作製した樹脂分散液(Re)49部にシアン色顔料(製品名「Fastogen Blue 5327 Wet」、Pigment Blue 15:4、DIC製)20部(固形分換算)、水31部を加え、十分攪拌混合し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで6時間摩砕し、工程1を行った。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、シアン顔料分散体(MC)を得た。
【0081】
前記工程1で得たシアン顔料分散体(MC)60部、水40部を攪拌混合し、出力600Wの超音波ホモジナイザーを用いて3時間細分化処理して工程2を行い、シアン顔料分散体(D―MC)を得た。
【0082】
前記工程2でシアン顔料分散体(D―MC)24部、トリエチレングリコール16部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2部、水58部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性シアン顔料インク(2)を得た。
【0083】
(実施例3)
実施例1で作製した樹脂分散液(Re)40部にマゼンタ色顔料(製品名「Fastogen Super Magenta RG」、Pigment Red 122、DIC製)18部、水42部を加え、十分攪拌混合し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで6時間摩砕し、工程1を行った。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、マゼンタ顔料分散体(MM)を得た。
【0084】
前記工程1で得たマゼンタ顔料分散体(MM)70部、水30部を攪拌混合し、出力600Wの超音波ホモジナイザーを用いて3時間細分化処理して工程2を行い、マゼンタ顔料分散体(D―MM)を得た。
【0085】
前記工程2で得たマゼンタ顔料分散体(D―MM)26部、トリエチレングリコール16部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2部、水56部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性マゼンタ顔料インク(3)を得た。
【0086】
(実施例4)
実施例1で作製した樹脂分散液(Re)30部にイエロー色顔料(製品名「Novoperm Yellow 4G01」、Pigment Yellow 155、クラリアント製)22部、水48部を加え、十分攪拌混合し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで4.5時間摩砕し、工程1を行った。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、イエロー顔料分散体(MY)を得た。
【0087】
前記工程1で得たイエロー顔料分散体(MY)70部、水30部を攪拌混合し、出力600Wの超音波ホモジナイザーを用いて3時間細分化処理して工程2を行い、イエロー顔料分散体(D―MY)を得た。
【0088】
前記工程2で得たイエロー顔料分散体(D―MY)26部、トリエチレングリコール15部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2部、水57部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性イエロー顔料インク(4)を得た。
【0089】
(実施例5)
実施例1で作製した樹脂分散液(Re)40部にレッド色顔料(製品名「Irgagin Red L3630」、Pigment Red 254、BASF製)18部、水42部を加え、十分攪拌混合し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで6時間摩砕し、工程1を行った。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、レッド顔料分散体(MR)を得た。
【0090】
前記工程1で得たレッド顔料分散体(MR)70部、水30部を攪拌混合し、出力600Wの超音波ホモジナイザーを用いて3時間細分化処理して工程2を行い、レッド顔料分散体(D―MR)を得た。
【0091】
前記工程2で得たレッド顔料分散体(D―MR)23部、トリエチレングリコール16部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2部、水59部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性レッド顔料インク(5)を得た。
【0092】
(実施例6)
実施例2で作製したシアン顔料分散体(D―MC)23部に、グリセリン8部、トリエチレングリコール10部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル4部、水55部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性シアン顔料インク(6)を得た。
【0093】
(実施例7)
実施例2で作製したシアン顔料分散体(D―MC)22.5部に、グリセリン8部、トリエチレングリコール15部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル1部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5部、水53部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性シアン顔料インク(7)を得た。
【0094】
(比較例1)
実施例1で作製した樹脂分散液(Re)24部にブラック色顔料(製品名「#40」、Pigment Black 7、三菱化学製)12部、水64部を加え、十分攪拌混合し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで9時間摩砕し、工程1を行った。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、ブラック顔料分散体(MBk−S)を得た。
【0095】
前記工程1で得たブラック顔料分散体(MBk−S)25部、トリエチレングリコール15部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2部、水58部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性ブラック顔料インク(8)を得た。
【0096】
(比較例2)
実施例1で作製した樹脂分散液(Re)29.4部にシアン色顔料(製品名「Fastogen Blue 5327 Wet」、Pigment Blue 15:4、DIC製)12部(固形分換算)、水58.6部を加え、十分攪拌混合し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで9時間摩砕し、工程1を行った。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、シアン顔料分散体(MC−S)を得た。
【0097】
前記工程1で得たシアン顔料分散体(MC−S)24部、トリエチレングリコール16部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2部、水58部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性シアン顔料インク(9)を得た。
【0098】
(比較例3)
実施例1で作製した樹脂分散液(Re)28部にマゼンタ色顔料(製品名「Fastogen Super Magenta RG」、Pigment Red 122、DIC製)12.6部、水59.4部を加え、十分攪拌混合し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで8.5時間摩砕し、工程1を行った。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、マゼンタ顔料分散体(MM−S)を得た。
【0099】
前記工程1で得たマゼンタ顔料分散体(MM−S)26部、トリエチレングリコール16部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2部、水56部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性マゼンタ顔料インク(10)を得た。
【0100】
(比較例4)
実施例1で作製した樹脂分散液(Re)21部にイエロー色顔料(製品名「Novoperm Yellow 4G01」、Pigment Yellow 155、クラリアント製)15.4部、水63.6部を加え、十分攪拌混合し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで6.5時間摩砕し、工程1を行った。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、イエロー顔料分散体(MY−S)を得た。
【0101】
前記工程1で得たイエロー顔料分散体(MY−S)26部、トリエチレングリコール15部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2部、水57部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性イエロー顔料インク(11)を得た。
【0102】
(比較例5)
実施例1で作製した樹脂分散液(Re)28部にレッド色顔料(製品名「Irgagin Red L3630」、Pigment Red 254、BASF製)12.6部、水59.4部を加え、十分攪拌混合し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで8時間摩砕し、工程1を行った。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、レッド顔料分散体(MR−S)を得た。
【0103】
前記工程1で得たレッド顔料分散体(MR−S)23部、トリエチレングリコール16部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2部、水59部を混合し、0.5μmフィルターで濾過、水性レッド顔料インク(12)を得た。
【0104】
(吐出速度測定方法)
参考例および比較参考例で得た水性顔料インクの、インクジェット方式で基材に印字する際の連続インク吐出速度(Vr)と間欠インク吐出5秒以内の初発速度(Vs)は、次の印字システムを用いて計測した値を採用した。
【0105】
ヘッド 方式:積層ピエゾプッシュモード
温度:30℃加温(ヒーター・サーミスタ制御)
駆動周波数:10kHz
液適量:10pl
システム 対象インクに合わせて、駆動条件(時間(μs)と電圧(率)の関係を波形グラフとして作成)を変更、安定したインクの連続吐出が確認される条件で実施した。
吐出液滴画像は、カメラで撮像し、吐出液滴速度は、カメラ撮像の遅延時間を変更する(差:300μs)ことで、測定した。
【0106】
吐出観察パラメータ
解像度 2.3μm/pixel
測定距離 1.0mm
最小ドット幅 5pixel
開始座標 上端Y座標 30pixel
終了座標 下端Y座標 450pixel
測定領域幅+ドット検出高さ( 単位:pixel)
【0107】
特徴抽出パラメータ
撮像画像分割幅 10pixel
撮像画像分割高さ 5pixel
X方向移動量(幅) 5pixel
Y方向移動量(高さ)5pixel
しきい値 5
階調差 10
最小面積(指定した値より大きい)
「階調差」を超えた領域の面積(画素数) 100pixel
最大面積(指定した値より小さい)
「階調差」を超えた領域の面積(画素数)1000pixel
【0108】
(物性測定方法)
実施例および比較例に記した水性顔料インクの物性値として、分散粒径を測定した。
【0109】
(保存安定性)
実施例および比較例の水性顔料インクを20mlガラス容器に入れ、恒温槽内にて60℃で720時間静置、保存した。静置保存前後の分散粒径を比較し、その変化率を、下記式により求めた。尚、分散粒径の測定方法は、前述した分散粒径の測定方法に準じて行った。なおこの時の静置保存対象物は、水性顔料インクである。
【0110】
【数2】
【0111】
表に実施例及び比較例の結果を示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
この結果、実施例の水性顔料インクは、安定した連続吐出と間欠吐出が可能で、長期的にも良好な印字品質を保っており、又、保存安定性にも優れる(分散粒径D50の変化率が小さい)ことから、実使用に見合ったものであった。
【0115】
また、本水性顔料インクは、印字濃度の高い高印字品質で、連続印字においても目詰まり等の問題がなく、高品位の性能を有するものであった。
【0116】
それに対し、微細粒子の積極的破砕をも引き起こす比較例記載のメディアミルのみで強分散処理させて、目標顔料粒径を得ようとする工程1のみからなる水性顔料インクは、請求項記載の速度比率を満たさず、初期的には安定した連続吐出が可能であったが、時間と共に印字品質に乱れ(ヨレ)が生じ、間欠吐出ではヘッド目詰まり傾向が著しかった。加えて、印字に係る吐出は可能であるものの、その使用頻度と共に大きく印字が乱れるなど品質の低下が確認され、更に、インクの保存安定性も不良(分散粒径D50の変化率が大きい−粗粒子化)であったことから、全く実使用に耐え得るものではなかった。