【解決手段】一端側に第1くびれ部Aを備えた複数のカーボンナノチューブ20aと、複数のカーボンナノチューブ20aの間に充填された熱可塑性の樹脂部30とを含み、カーボンナノチューブ20aは、熱可塑性の樹脂部30の一方の表面側で第1くびれ部Aから横方向に折れ曲がっている。第1カーボンナノチューブ部21の長さは20μm程度であり、その全体が発熱体40に接触する。
前記カーボンナノチューブは、前記樹脂部の一方の表面側で前記第1くびれ部から横方向に折れ曲がっていることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブシート。
一端側に第1くびれ部を備えた複数のカーボンナノチューブと、前記複数のカーボンナノチューブの間に充填された樹脂部とを有し、前記カーボンナノチューブは、前記樹脂部の一方の表面側で前記第1くびれ部から横方向に折れ曲がっているカーボンナノチューブシートと、
前記カーボンナノチューブシートの一方の面に配置され、前記複数のカーボンナノチューブの一端側の前記第1くびれ部から折れた部分と接触する発熱体と、
前記カーボンナノチューブシートの他方の面に配置され、前記カーボンナノチューブの他端側に接触する放熱部材と
を有することを特徴とする電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0015】
実施形態を説明する前に、基礎となる予備的事項について説明する。
図1は予備的事項に係るカーボンナノチューブシートの課題を説明するための図である。
【0016】
図1(a)に示すように、カーボンナノチューブ200は、CVD法によって基板100の上に成長される。カーボンナノチューブ200は基端から先端までほぼ同じ直径で形成される。
【0017】
カーボンナノチューブ200の直径は15nm程度と小さいため、基板100上でカーボンナノチューブ200が占有するトータル面積の密度は5%程度しかない。
【0018】
その後に、
図1(b)に示すように、カーボンナノチューブ200の集合体に樹脂部300を充填した後に、基板200が剥離されてカーボンナノチューブシート400が得られる。
【0019】
そのようなカーボンナノチューブシート400をそのまま半導体装置の熱伝導性シートとして使用すると、半導体素子及び放熱部材との接触面積が小さいため、カーボンナノチューブ200の本来の高い熱伝導性を引き出すことができない課題がある。
【0020】
この対策として、半導体素子の上にカーボンナノチューブシート400を配置し、放熱部材でカーボンナノチューブシート400を下側に押圧して、各カーボンナノチューブ200の両端側を曲げて接触面積を増加させることが考えられる。
【0021】
しかし、各カーボンナノチューブ200を曲げるには、比較的高い圧力でカーボンナノチューブシート400を押圧する必要があるため、半導体素子に過剰な押圧力がかかり、半導体素子が破壊することがある。
【0022】
以下に説明する実施形態では、前述した課題を解消することができる。
【0023】
(第1実施形態)
図2〜
図5は第1実施形態のカーボンナノチューブシートの製造方法を示す図、
図6は第1実施形態のカーボンナノチューブシートを示す図である。
【0024】
第1実施形態のカーボンナノチューブシートの製造方法では、
図2(a)に示すように、まず、シリコン基板10を用意する。シリコン基板10は、カーボンナノチューブを形成するための土台として使用される。シリコン基板10の両面にシリコン酸化層などの絶縁層が形成されていてもよい。
【0025】
シリコン基板10上には複数のカーボンナノチューブ形成領域が画定されており、
図2(a)では一つのカーボンナノチューブ形成領域が示されている。
【0026】
基板としてシリコン基板10を例示するが、セラミックス基板又はガラス基板などの各種の基板を使用することができる。
【0027】
次いで、
図2(b)に示すように、シリコン基板10上の全面に、スパッタ法などにより膜厚が2.5nm程度の鉄(Fe)膜を形成して触媒金属膜12とする。触媒金属膜12は、CVD法によってカーボンナノチューブを形成するための触媒として形成される。
【0028】
触媒金属膜12としては、鉄以外に、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、又は白金(Pt)を使用してもよい。
【0029】
次いで、
図2(c)に示すように、シリコン基板10を650℃の温度で5分〜10分間、加熱処理する。これにより、触媒金属膜12が微粒子化されて触媒金属微粒子12aが得られる。
【0030】
続いて、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、カーボンナノチューブを成長させる方法について説明する。本実施形態では、カーボンナノチューブの成長条件として、第1の成長条件及び第2の成長条件を使用する。
【0031】
第1の成長条件は、直径が15nm程度のカーボンナノチューブを成長させる条件である。
【0032】
第1の成長条件は、例えば、原料ガスとして分圧比が1:9のアセチレン・アルゴンガスの混合ガスを20sccmの流量でチャンバに流し、チャンバの総ガス圧が1kPa、温度が650℃に設定される。
【0033】
一方、第2の成長条件は、直径が10nm程度のカーボンナノチューブを成長させる条件であり、第1の成長条件を使用する場合よりもカーボンナノチューブの直径が小さくなる条件である。
【0034】
第2の成長条件は、第1の成長条件において、アセチレン・アルゴンガスの混合ガスの流量を半分に減らし、10sccmの流量でチャンバに流す。その他の条件は第1の成長条件と同じである。
【0035】
あるいは、第2の成長条件は、第1の成長条件において、温度を650℃から700℃に上昇させてもよい。又は、温度を650℃から600℃に下降させてもよい。その他の条件は第1の成長条件と同じである。
【0036】
第1の成長条件及び第2の成長条件を使用することにより、カーボンナノチューブの成長過程で直径を変えることができる。
【0037】
具体的に説明すると、
図3(a)に示すように、まず、第1の成長条件で、触媒金属微粒子12aを触媒としてシリコン基板10の上に第1カーボンナノチューブ部21を高さが20μm程度になるまで成長させる。このとき、第1カーボンナノチューブ部21はその直径が15nm程度で成長する。
【0038】
図3(a)の部分拡大図に示すように、触媒金属微粒子12aに成長する各々の第1カーボンナノチューブ部21は、シリコン基板10の表面に対して垂直方向に配向して形成される。
【0039】
続いて、同じく
図3(a)に示すように、第2の成長条件に変更し、連続して第1カーボンナノチューブ部21にカーボンナノチューブを成長させる。このとき、カーボンナノチューブはその直径が10nm程度と小さくなって成長し、第1カーボンナノチューブ部21に繋がる第1くびれ部Aとなる。第1くびれ部Aの高さは2μm〜5μm、例えば3.5μmに設定される。
【0040】
さらに、
図3(b)に示すように、第1の成長条件に戻し、第1くびれ部Aに繋がる第2カーボンナノチューブ部22を成長させる。第2カーボンナノチューブ部22の第1くびれ部Aからの高さは150μm程度に設定される。
【0041】
続いて、
図4(a)に示すように、再度、第2の成長条件に変更し、連続して第2カーボンナノチューブ部22に繋がるカーボンナノチューブを成長させる。このとき同様に、カーボンナノチューブはその直径が10nm程度と小さくなって成長し、第2カーボンナノチューブ部22に繋がる第2くびれ部Bとなる。
【0042】
さらに、同じく
図4(a)に示すように、再度、第1の成長条件に戻し、第2くびれ部Bに繋がる第3カーボンナノチューブ部23を成長させる。第3カーボンナノチューブ部23は、第1カーボンナノチューブ部21と同様に、その高さは20μm程度であり、直径は15nmに設定される。
【0043】
このようにして、第1カーボンナノチューブ部21と第2カーボンナノチューブ部22とが第1くびれ部Aで繋がり、第2カーボンナノチューブ部22と第3カーボンナノチューブ部23とが第2くびれ部Bで繋がるカーボンナノチューブ20aが形成される。
【0044】
これにより、シリコン基板10の上に、複数のカーボンナノチューブ20aが横方向に並んで配列されたカーボンナノチューブ集合体20が得られる。各カーボンナノチューブ20aは、基端側に第1くびれ部Aを備え、先端側に第2くびれ部Bを備える。
【0045】
後述するように、カーボンナノチューブ集合体20は熱伝導性シートとして使用され、発熱体と放熱部材との間に配置される。このとき、各カーボンナノチューブ20aは、第1くびれ部A及び第2くびれ部Bから横方向に折り曲げられ、第1、第3カーボンナノチューブ部21,23が横方向に延在して発熱体及び放熱部材に接触する。
【0046】
これにより、カーボンナノチューブ集合体20と、発熱体及び放熱部材との接触面積を大きくすることができる。
【0047】
次いで、
図4(b)に示すように、熱可塑性樹脂シート30aをカーボンナノチューブ集合体20の上に配置し、押圧部材(不図示)で熱可塑性樹脂シート30aを下側に押圧しながら、200℃程度の温度で加熱処理を行う。
【0048】
これにより、熱可塑性樹脂シート30aを軟化させ、カーボンナノチューブ集合体20内の隙間に樹脂を流し込んで含侵させる。
【0049】
このようにして、
図5に示すように、カーボンナノチューブ集合体20の隙間に樹脂部30が充填される。これにより、カーボンナノチューブ集合体20は、樹脂部30によってシート状に一体化される。
【0050】
あるいは、液状の熱可塑性樹脂をディスペンサなどで塗布して樹脂部30を形成してもよい。
【0051】
続いて、樹脂部30によってシート状に一体化されたカーボンナノチューブ集合体20をシリコン基板10から引き剥がす。その後に、シート状のカーボンナノチューブ集合体20を個々のカーボンナノチューブ形成領域が得られるように切断する。
【0052】
以上により、
図6に示すように、実施形態のカーボンナノチューブシート1が製造される。カーボンナノチューブシート1は、カーボンナノチューブ集合体20を樹脂部30で一体化して一枚のシート状にしているため、良好なハンドリング性を有する。
【0053】
次に、カーボンナノチューブシート1を熱伝導性シートとして使用する方法について説明する。
図7に示すように、半導体素子などの発熱体40の上に上記した
図6のカーボンナノチューブシート1を配置する。さらに、カーボンナノチューブシート1の上に放熱部材50を配置し、放熱部材50を下側に押圧しながら、250℃程度の温度で加熱処理を行う。
【0054】
これにより、
図8に示すように、カーボンナノチューブシート1の熱可塑性の樹脂部30が溶融しながら、各カーボンナノチューブ20aがその第1くびれ部A及び第2くびれ部Bから横方向に折れ曲がる。その結果、下端側の第1カーボンナノチューブ部21及び上端側の第3カーボンナノチューブ部23が横方向に配置される。
【0055】
これにより、各カーボンナノチューブ10aの下端側の第1くびれ部Aから折れた第1カーボンナノチューブ部21が発熱体40に接触する。第1カーボンナノチューブ部21の長さは20μm程度であり、その全体が発熱体40に接触する。
【0056】
また同様に、各カーボンナノチューブ20aの上端側の第2くびれ部Bから折れた第3カーボンナノチューブ部23が放熱部材50に接触する。第3カーボンナノチューブ部23においても、その長さは20μm程度であり、その全体が放熱部材50に接触する。
【0057】
以上により、
図8に示すように、
図6のカーボンナノチューブシート1を備えた電子機器2が製造される。
【0058】
予備的事項で説明したように、本実施形態と違って、カーボンナノチューブを折り曲げない場合は、発熱体及び放熱部材の各面上でカーボンナノチューブ集合体が占有するトータルの面積の密度は5%程度である。
【0059】
これに対して、本実施形態の電子機器2では、各カーボンナノチューブ20aの両端側を折り曲げて発熱体40及び放熱部材50に接触させている。このため、発熱体40及び放熱部材50の各面上でカーボンナノチューブ集合体20が占有するトータルの面積の密度を40〜60%程度に増加させることができる。
【0060】
これにより、カーボンナノチューブシート1と発熱体40及び放熱部材50との熱伝導経路の熱抵抗が小さくなる。よって、発熱体40から発する熱を、カーボンナノチューブシート1を介して放熱部材50側に十分に伝導して放熱することができる。
【0061】
このように、カーボンナノチューブ集合体20と発熱体40及び放熱部材50との接触面積を増加させることができるので、カーボンナノチューブシート1の本来の特性を引き出すことができ、熱伝導性を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態と違って、カーボンナノチューブにくびれ部を形成しないで、カーボンナノチューブを折り曲げる場合は、1MPa程度の高い圧力でカーボンナノチューブシートを押圧する必要がある。発熱体が半導体素子の場合、半導体素子に過剰な押圧力がかかると、半導体素子が破壊することがある。
【0063】
しかし、本実施形態では、カーボンナノチューブ20aの両端側に第1くびれ部A及び第2くびれ部Bを形成し、それらを基点としてカーボンナノチューブ20aを折り曲げている。
【0064】
このため、0.5Mpa程度の低い圧力でカーボンナノチューブシート1を押圧することにより、各カーボンナノチューブ20aを容易に折り曲げることができる。従って、発熱体40が半導体素子の場合であっても、半導体素子が破壊するおそれがなくなる。
【0065】
図8では、全てのカーボンナノチューブ20aが同じ方向に折れ曲がっている。
【0066】
あるいは、
図9に示すように、多数のカーボンナノチューブ20aの中で、屈曲方向が逆の方向になっていてもよい。
【0067】
さらには、多数のカーボンナノチューブ20aがランダムな方向に折れ曲がる場合もある。
【0068】
このように、カーボンナノチューブ20aの成長条件、第1、第2くびれ部A,Bの直径や長さ、及び押圧条件などによって、カーボンナノチューブ20aの屈曲方向は様々な態様となる。
【0069】
本実施形態では、好適な態様として、各カーボンナノチューブ20aの両端側に第1、第2くびれ部A,Bをそれぞれ形成し、両端側においてカーボンナノチューブ20aを折り曲げている。これ以外に、各カーボンナノチューブ20aの一端側(下端側)及び他端側(上端側)のうちの少なくとも一端側にくびれ部が形成されていればよい。
【0070】
図10の変形例のカーボンナノチューブシート1aでは、各カーボンナノチューブ20aの一端側のみにくびれ部Aが形成されており、他端側にはくびれ部が形成されていない。また同様に、カーボンナノチューブ集合体20の隙間に樹脂部30が充填されている。
【0071】
そして、
図11に示すように、発熱体40の上に
図10の変形例のカーボンナノチューブシート1aを配置する。さらに、カーボンナノチューブシート1aの上に放熱部材50を配置し、放熱部材50を下側に押圧しながら、加熱処理を行う。
【0072】
これにより、
図12に示すように、各カーボンナノチューブ20aの第1カーボンナノチューブ部21が一端側のくびれ部Aで横方向に折れ曲がる。その結果、横方向に折り曲がって配置された第1カーボンナノチューブ部21が発熱体40に接触する。
【0073】
一方、各カーボンナノチューブ20aの上端側では、くびれ部が形成されていないため、第2カーボンナノチューブ部22は折れ曲がらず、各カーボンナノチューブ20aの先端面が放熱部材50に接触する。
【0074】
あるいは、
図10とは逆に、各カーボンナノチューブ20aの他端側(上端側)のみにくびれ部を形成し、一端側(下端側)にくびれ部を形成しない形態としてもよい。この形態では、カーボンナノチューブの上端側では、折れ曲がって横方向に配置されたカーボンナノチューブ部が放熱部材に接触する。また、カーボンナノチューブの一端側では、カーボンナノチューブの先端面が発熱体に接触する。
【0075】
このように、各カーボンナノチューブ20aの一端側(下端側)及び他端側(上端側)のうち少なくともいずれかにくびれ部を形成して折り曲げてもよい。発熱体及び放熱部材のうちのいずれかとの接触面積を増加させることができるので、折り曲げない場合よりも熱伝導性を向上させることができる。
【0076】
本実施形態のカーボンナノチューブシート1、1aは各種の発熱体から発する熱を放熱部材に放熱する熱伝導性シートとして使用することができる。
【0077】
発熱体40としては、半導体素子の他に、LED(Light Emitting Diode)、自動車などのモーター、太陽光パネルシステムなどで使用される直流を交流に変換するインバータ装置などがある。
【0078】
次に、本実施形態の
図6のカーボンナノチューブシート1を半導体装置に適用する例について説明する。半導体装置は電子機器の一例である。
【0079】
図13(a)に示すように、まず、配線基板60を用意する。配線基板60は、上面側に銅などからなる接続パッドPを備え、下面側にはんだなどからなる外部接続端子Tを備えている。接続パッドPは、配線基板60の内部に形成された多層配線(不図示)を介して外部接続端子Tに電気的に接続されている。
【0080】
さらに、
図13(b)に示すように、下面側にバンプ電極72を備えた半導体素子70(LSIチップ)を用意する。そして、半導体素子70のバンプ電極72をはんだ(不図示)を介して配線基板60の接続パッドPにフリップチップ接続する。半導体素子70としては、動作時に発熱量が大きなCPUチップなどが使用される。
【0081】
その後に、半導体素子70と配線基板60との隙間にアンダーフィル樹脂74が充填される。
【0082】
次いで、
図13(c)に示すように、前述した
図6の折り曲げる前の状態のカーボンナノチューブシート1を半導体素子70の背面に配置する。
【0083】
さらに、
図14に示すように、放熱部材としてヒートスプレッダ80を用意する。ヒートスプレッダ80は、平板部82と、その周縁から下側に突き出る環状の突出部84とを備えており、下面側の中央部に凹部Cが設けられている。ヒートスプレッダ80の一例としては、無酸素銅部材の外面にニッケルめっきを施したものが使用される。
【0084】
そして、ヒートスプレッダ80の突出部84を熱硬化性の接着剤86を介して配線基板60の周縁部に配置する。
【0085】
さらに、押圧部材(不図示)でヒートスプレッダ80を下側に押圧しながら、250℃程度の温度で加熱処理を行う。
【0086】
これにより、
図15に示すように、前述した
図7及び
図8と同様に、各カーボンナノチューブ20aがその第1くびれ部A及び第2くびれBから横方向に折れ曲がる。その結果、各カーボンナノチュー20aの下端側の第1カーボンナノチューブ部21が横方向に配置されて半導体素子70の背面に接触する。
【0087】
また同様に、各カーボンナノチューブ20aの上端側の第3カーボンナノチューブ部23が横方向に配置されてヒートスプレッダ80の凹部Cの底面に接触する。
【0088】
ヒートスプレッダ80の凹部Cの底面と半導体素子70の背面との間に折れ曲がった複数のカーボンナノチューブ20aが収容されるように、ヒートスプレッダ80の凹部Cの深さが調節されている。
【0089】
以上により、実施形態の半導体装置3が得られる。
【0090】
また、
図15の半導体装置3のヒートスプレッダ80の上に熱伝導材を介してヒートシンクがさらに設けられてもよい。ヒートシンクは平板部とその上に突き出る多数の放熱フィンとから形成される。熱伝導材として、前述した
図6のカーボンナノチューブシート1を使用してもよい。
【0091】
さらには、
図15の半導体装置3のヒートスプレッダ80の上に熱伝導材を介してヒートパイプがさらに設けられていてもよい。ヒートパイプでは、密閉したパイプ内に封入された作動液体の蒸発・凝縮の相変化で熱を輸送して放熱する。
【0092】
この場合も、熱伝導材として、前述した
図6のカーボンナノチューブシート1を使用してもよい。
【0093】
(第2実施形態)
前述した第1実施形態では、カーボンナノチューブ集合体20に樹脂部30を充填してシート状に一体化している。
【0094】
第2実施形態では、カーボンナノチューブ集合体にアルミナ膜を被覆することにより、シート状に一体化する。
【0095】
第2実施形態のカーボンナノチューブシートの製造方法では、
図16(a)に示すように、前述した
図2(a)〜
図4(a)の工程を遂行することにより、
図4(a)と同様なカーボンナノチューブ集合体20をシリコン基板10の上に形成する。
【0096】
その後に、
図16(a)及び(b)に示すように、ALD(Atomic Layer Deposition)法により、各カーボンナノチューブ20aの表面を原子層レベルの超薄膜のアルミナ膜(Al
2O
3膜)24で被覆する。
【0097】
図16(a)では、複数のカーボンナノチューブ20aは分離されて描かれているが、実際には、
図16(b)の模式図に示すように、複数のカーボンナノチューブ20aはお互いに絡み合うようにして一部が接触した状態で形成される。
【0098】
このため、各カーボンナノチューブ20aを超薄膜のアルミナ膜24で被覆して、カーボンナノチューブ20a同士をアルミナ膜24で連結することにより、一体化されたカーボンナノチューブシート1bを得ることができる。以下の工程は、
図16(a)を使用して説明する。
【0099】
次いで、
図17に示すように、アルミナ膜24で一体化されたカーボンナノチューブシート1bをシリコン基板10から引き剥がす。このとき、カーボンナノチューブシート1bはアルミナ膜24で一体化されているため、ばらばらになることなく、シート状に扱うことができる。
【0100】
続いて、
図18(a)に示すように、
図17のカーボンナノチューブシート1bを発熱体40の上に配置する。さらに、
図18(b)に示すように、カーボンナノチューブシート1bの上に押圧部材52を配置し、押圧部材52を下側に押圧する。この時点では、カーボンナノチューブシート1bに樹脂部が充填されていないため、加熱処理を行う必要はない。
【0101】
これにより、前述した
図8と同様に、各カーボンナノチューブ20aが第1くびれ部A及び第2くびれBから横方向に折れ曲がる。その結果、各カーボンナノチューブ20aの下端側の第1くびれ部Aから折れた第1カーボンナノチューブ部21が横方向に配置されて発熱体40に接触する。
【0102】
また同様に、各カーボンナノチューブ20aの上端側の第2くびれ部Bから折れた第3カーボンナノチューブ部23が横方向に配置されて押圧部材52に接触する。
【0103】
第2実施形態では、カーボンナノチューブシート1bを折り曲げる際に、樹脂部が充填されていないため、第1実施形態よりも低い圧力で各カーボンナノチューブを折り曲げることができる。従って、発熱体40として半導体素子を使用する場合に、第1実施形態よりも半導体素子へのダメージを低減することができる。
【0104】
次いで、
図19(a)に示すように、押圧部材52をカーボンナノチューブシート1bから取り外す。このとき、各カーボンナノチューブ20aの上端側の第3カーボンナノチューブ部23は、横方向に折れ曲がった状態のままで維持される。
【0105】
次いで、
図19(b)に示すように、前述した
図4(b)及び
図5と同様な方法により、カーボンナノチューブシート1b内の隙間に熱可塑の樹脂部30を充填する。
【0106】
続いて、
図20に示すように、カーボンナノチューブシート1bの上に放熱部材50を配置し、放熱部材50を下側に押圧しながら、250℃程度の温度で加熱処理を行う。
【0107】
このとき、各カーボンナノチューブ20aの上端面に薄皮状の樹脂部30が残っている場合は、樹脂部30が再溶融して外側に排出される。これにより、各カーボンナノチューブ20aの上端側の折り曲げられた第3カーボンナノチューブ部23が放熱部材50に接触する。
【0108】
なお、前述した
図18(b)の工程で、押圧部材52でカーボンナノチューブシート1bを押圧しているが、放熱部材50で押圧してもよく、押圧できる各種の部材を使用することができる。
【0109】
以上により、
図20に示すように、第2実施形態のカーボンナノチューブシート1bを備えた電子機器2aが製造される。
図20の電子機器2aは、前述した第1実施形態の
図8の電子機器2と実質的に同一構造あり、同様な効果を奏する。