【実施例】
【0038】
[合成例1]β−シクロデキストリン(以下、「β−CD」と称する。)と二塩化テレフタロイルとを縮合させたポリマーの末端をメチル基で処理したポリマー(以下、「テレフタル酸−β−CD−メチル高分子」あるいは「TPBCDM高分子」と称する。)の合成
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓及び攪拌棒(攪拌機によって攪拌)の付いた1lの4つ口セパラブルフラスコに、乾燥β−CD(17g、0.015mol、含水量1%以下、純正化学工業)と特級ピリジン(658ml、和光純薬工業)を入れて室温で1時間攪拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(260mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(30g、0.15mol、東京化成工業)を2時間かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(70℃)により内温70℃で2.5時間攪拌した。反応終了後、フラスコを氷浴につけて、1級メタノール(30mL 、純正化学工業)を0.5時間かけて滴下した。滴下後、フラスコを氷浴につけたまま、0.5時間攪拌した。得られた懸濁液結晶を吸引濾過した後、メタノール(100mL)を桐山ロート上の濾物の上に溜め、吸引濾過した(5回)。その後、アセトン(100mL)を桐山ロート上の濾物の上に溜め、吸引濾過した(5回)。得られた濾物を室温で8時間、40℃で1時間、80℃で1時間乾燥させた後に、120℃で13時間乾燥した。35gのシクロデキストリンポリマーが得られた。
赤外スペクトルIR (KBr)による同定:3448, 1718, 1277, 1105, 1018, 731 cm
-1
【0039】
[比較実施例1〜6]カラム移動相として高極性溶剤を用いたカラム実験
【0040】
カラム実験には、窒素ボンベ、油貯蔵容器、ステンレスカラム及び油受け容器を直列に接続した装置を用いた。TPBCDM高分子(5g)を充填したステンレスカラム(内径20mm×長さ250mm)を作製した。このカラムを恒温槽内に取り付けた。次に2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル(以下、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPと称する。)を含有する絶縁油(2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度:50ppm)10gと特級アセトン(純正化学工業)10gとを混合して混合溶液を作り、これを油貯蔵容器に入れた。油貯蔵容器に窒素ガスを導入して、該混合溶液を該カラム内に流し込んだ。全ての混合溶液をカラムに移動させた後、油貯蔵容器に特級アセトン45gを入れた。油貯蔵容器に窒素ガスを導入して、該アセトンを該カラム内に流し込んだ。このとき恒温槽の温度を20℃とし、油受け容器に流出してきた混合溶液を分画した。回収した混合溶液中の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度をガスクロマトグラフィーで測定したところ、回収量6.1gの時点で2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出された(2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度:28ppm)。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、3.1gであることがわかった(絶縁油回収率31%に相当)。なお、2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度の測定は、QCMS-QP5050(SHIMADZU)を使用し、M/Z 360を用いてSIM(selective ion monitoring)法により行った。
【0041】
比較実施例2は、特級アセトンの代わりに特級酢酸エチル(純正化学工業)を用いたこと以外は比較実施例1と同様に行った。混合溶液の回収量5.0gの時点で2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出された(2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度:35ppm)。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、1.8gであることがわかった(絶縁油回収率18%に相当)。
【0042】
比較実施例3は、特級アセトンの代わりに特級トルエン(純正化学工業)を用いたこと以外は比較実施例1と同様に行った。混合溶液の回収量5.5gの時点で2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出された(2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度:16ppm)。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、3.2gであることがわかった(絶縁油回収率32%に相当)。
【0043】
比較実施例4は、特級アセトンの代わりに特級ジクロロメタン(純正化学工業)を用いたこと以外は比較実施例1と同様に行った。混合溶液の回収量3.9gの時点で2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出された(2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度:27ppm)。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、3.6gであることがわかった(絶縁油回収率36%に相当)。
【0044】
比較実施例5は、特級アセトンの代わりに特級テトラヒドロフラン(純正化学工業)を用いたこと以外は比較実施例1と同様に行った。混合溶液の回収量4.7gの時点で2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出された(2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度:49ppm)。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、3.2gであることがわかった(絶縁油回収率32%に相当)。
【0045】
比較実施例6は、特級アセトンの代わりに特級ブタノール(純正化学工業)を用いたこと以外は比較実施例1と同様に行った。混合溶液の回収量5.4gの時点で2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出された(2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度:12ppm)。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、3.4gであることがわかった(絶縁油回収率34%に相当)。
【0046】
[実施例1]カラム移動相として非極性溶剤を用いたカラム実験
カラム実験には、窒素ボンベ、油貯蔵容器、ステンレスカラム及び油受け容器を直列に接続した装置を用いた。TPBCDM高分子(5g)を充填したステンレスカラム(内径20mm×長さ250mm)を作製した。このカラムを恒温槽内に取り付けた。次に2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル(以下、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPと称する。)を含有する絶縁油(2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度:50ppm)10gと特級ヘキサン(純正化学工業)10gとを混合して混合溶液を作り、これを油貯蔵容器に入れた。油貯蔵容器に窒素ガスを導入して、該混合溶液を該カラム内に流し込んだ。全ての混合溶液をカラムに移動させた後、油貯蔵容器に特級ヘキサン45gを入れた。油貯蔵容器に窒素ガスを導入して、該アセトンを該カラム内に流し込んだ。このとき恒温槽の温度を20℃とし、油受け容器に流出してきた混合溶液を分画した。回収した混合溶液中の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度をガスクロマトグラフィーで測定したところ、混合溶液の回収量33gまで2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出されなかった。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、9.9gであることがわかった(絶縁油回収率99%に相当)。なお、2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度の測定は、QCMS-QP5050(SHIMADZU)を使用し、M/Z 360を用いてSIM(selective ion monitoring)法により行った。
【0047】
[実施例2〜5]カラム移動相として非極性溶剤を用いたカラム実験
【0048】
実施例2は、特級ヘキサンの代わりに特級シクロヘキサン(東京化成工業)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。混合溶液の回収量30gまで2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出されなかった。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、9.9gであることがわかった(絶縁油回収率99%に相当)。
【0049】
実施例3は、特級ヘキサンの代わりに特級ウンデカン(東京化成工業)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。混合溶液の回収量34gまで2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出されなかった。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、9.9gであることがわかった(絶縁油回収率99%に相当)。
【0050】
実施例4は、特級ヘキサンの代わりに特級ドデカン(東京化成工業)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。混合溶液の回収量32gまで2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出されなかった。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、9.9gであることがわかった(絶縁油回収率99%に相当)。
【0051】
実施例5は、特級ヘキサンの代わりに特級ドデカン(東京化成工業)を用い、有機媒体としてKC−500(主成分として約50%の5塩素化PCBを含有し、その他3塩素化PCB、4塩素化PCB、6塩素化PCB、7塩素化PCB等の複数種のPCBを含有する混合物、和光純薬工業株式会社)を含有する絶縁油(KC−500濃度:50ppm)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。混合溶液の回収量34gまでKC−500が検出されなかった。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、9.9gであることがわかった(絶縁油回収率99%に相当)。なお、回収された混合溶液中に含まれるKC−500の測定は、平成4年厚生省告示第192号別表第3の第1に規定される方法によりガスクロマトグラフフィーで測定した。
【0052】
[実施例6]口径の大きいカラムを用いたカラム実験
カラム実験には、窒素ボンベ、油貯蔵容器、ステンレスカラム及び油受け容器を直列に接続した装置を用いた。TPBCDM高分子(24g)を充填したステンレスカラム(内径40mm×長さ250mm)を作製した。このカラムを恒温槽内に取り付けた。次に2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル(以下、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPと称する。)を含有する絶縁油(2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度:50ppm)48gと特級ヘキサン(純正化学工業)48gとを混合して混合溶液を作り、これを油貯蔵容器に入れた。油貯蔵容器に窒素ガスを導入して、該混合溶液を該カラム内に流し込んだ。全ての混合溶液をカラムに移動させた後、油貯蔵容器に特級ヘキサン180gを入れた。油貯蔵容器に窒素ガスを導入して、該アセトンを該カラム内に流し込んだ。このとき恒温槽の温度を20℃とし、油受け容器に流出してきた混合溶液を分画した。回収した混合溶液中の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度をガスクロマトグラフィーで測定したところ、混合溶液の回収量136gまで2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出されなかった。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、47gであることがわかった(絶縁油回収率98%に相当)。なお、2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度の測定は、QCMS-QP5050(SHIMADZU)を使用し、M/Z 360を用いてSIM(selective ion monitoring)法により行った。
【0053】
[実施例7〜10]口径の大きいカラムを用いたカラム実験
【0054】
実施例7は、特級ヘキサンの代わりに特級シクロヘキサン(東京化成工業)を用いたこと以外は実施例6と同様に行った。混合溶液の回収量143gまで2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出されなかった。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、47gであることがわかった(絶縁油回収率98%に相当)。
【0055】
実施例8は、特級ヘキサンの代わりに特級ウンデカン(東京化成工業)を用いたこと以外は実施例6と同様に行った。混合溶液の回収量145gまで2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出されなかった。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、47gであることがわかった(絶縁油回収率98%に相当)。
【0056】
実施例9は、特級ヘキサンの代わりに特級ドデカン(東京化成工業)を用いたこと以外は実施例6と同様に行った。混合溶液の回収量145gまで2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出されなかった。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、47gであることがわかった(絶縁油回収率98%に相当)。
【0057】
実施例10は、特級ヘキサンの代わりに特級ドデカン(東京化成工業)を用い、有機媒体としてKC−500(主成分として約50%の5塩素化PCBを含有し、その他3塩素化PCB、4塩素化PCB、6塩素化PCB、7塩素化PCB等の複数種のPCBを含有する混合物、和光純薬工業株式会社)を含有する絶縁油(KC−500濃度:50ppm)を用いたこと以外は実施例6と同様に行った。混合溶液の回収量145gまでKC−500が検出されなかった。この際回収された混合溶液中に含まれる絶縁油の量をガスクロマトグラフィーにより見積もったところ、47gであることがわかった(絶縁油回収率98%に相当)。なお、回収された混合溶液中に含まれるKC−500の測定は、平成4年厚生省告示第192号別表第3の第1に規定される方法によりガスクロマトグラフィーで測定した。
【0058】
[参考例1]
参考例1として、移動相としての溶剤を使用しない実験を行った。カラム実験には、窒素ボンベ、油貯蔵容器、ステンレスカラム及び油受け容器を直列に接続した装置を用いた。TPBCDM高分子(110mg)を充填したステンレスカラム(内径4.6mm×長さ100mm)を作製した。このカラムを恒温槽内に取り付けた。次に2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル(以下、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPと称する。)を含有する絶縁油(2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度:100ppm)660mgを油貯蔵容器に入れた。油貯蔵容器に窒素ガスを導入して、該絶縁油を該カラム内に流し込んだ。引き続き窒素ガスを導入して絶縁油を流出させた。このとき恒温槽の温度を85℃とし、約18時間かけて絶縁油を油受け容器に流出させた(356mg、絶縁油の回収率54%)。回収した絶縁油中の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度をガスクロマトグラフィーで測定したところ、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出されなかった。
【0059】
[参考例2]
参考例2として、移動相としての溶剤を使用しない実験を行った。カラム実験には、窒素ボンベ、油貯蔵容器、ステンレスカラム及び油受け容器を直列に接続した装置を用いた。TPBCDM高分子(32g)を充填したステンレスカラム(内径40mm×長さ250mm)を作製した。このカラムを恒温槽内に取り付けた。次に2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル(以下、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPと称する。)を含有する絶縁油(2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度:100ppm)192gを油貯蔵容器に入れた。油貯蔵容器に窒素ガスを導入して、該絶縁油を該カラム内に流し込んだ。引き続き窒素ガスを導入して絶縁油を流出させた。このとき恒温槽の温度を85℃とし、約22時間かけて絶縁油を油受け容器に流出させた(27g、絶縁油の回収率14%)。回収した絶縁油中の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP濃度をガスクロマトグラフィーで測定したところ、2,2’,3,3’,5,5’-HECBPが検出されなかった。
【0060】
図3は、比較実施例1〜6と、実施例1〜5の、絶縁油回収率と回収混合溶液中の2,2’,3,3’,5,5’-HECBP(PCB)濃度との関係をグラフにしたものである。そして
図4は、実施例6〜10と、参考例1および2の絶縁油回収時間と絶縁油回収率との関係をグラフにしたものである。
図5は、実施例6〜10と、参考例1および2の絶縁油回収率と回収混合液中のPCB濃度との関係をグラフにしたものである。
【0061】
カラム移動相として高極性溶剤を使用した比較実施例1〜6は、混合溶液流出の早い段階からPCBが漏出してくるのに対し、カラム移動相として非極性溶剤を使用した実施例1〜5は、混合溶液中にPCBが漏出してこないことがわかった。
【0062】
また
図2に示すような、カラム移動相としての溶剤を使用しない従来方法により絶縁油を直接流出させた参考例1および2は、PCBを漏出させることなく絶縁油を回収することはできるが(
図5)、絶縁油を回収するには多大な時間を費やし、流出のために温度を高くする必要もあることがわかった(
図4)。これに対し実施例6〜10は、カラムの口径を大きくしてもPCBを漏出させることなく高い回収率で絶縁油を回収することができることがわかる(
図4及び5)。