【実施例】
【0128】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0129】
≪実施例1:含フッ素化合物(1)の合成≫
500mLのナスフラスコに、4−ヒドロキシ−3−メトキシアセトフェノンを20.8g(125mmol,1.0eq.)、アセトンを220mL、炭酸カリウムを17.4g(126mmol,1.0eq.)入れ、室温で30分撹拌した後、臭化ベンジルを18mL(151mmol,1.2eq.)加え、60℃で21時間還流した。濃縮後、精製水を200mL加え、クロロホルム(100mL×3)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、再結晶(酢酸エチル50mL,ヘキサン1mL,60℃)、吸引ろ過、真空乾燥し、第一結晶を得た。ろ液を濃縮、再結晶(酢酸エチル5mL,60℃)、吸引ろ過、真空乾燥し、第二結晶を得た。合わせて白色結晶(化合物(I1))、収量:29.2g(114mmol,91%)を得た。
【0130】
上記合成で得られた化合物(I1)(4−ベンジルオキシ−3−メトキシアセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.55(3H,s),3.95(3H,s),5.24(2H,s),6.89(1H,d,J=8.4Hz),7.29−7.57(7H,m).
IR(KBr):1670(C=O)cm
−1.
【0131】
【化26】
【0132】
次に、500mLのナスフラスコに、化合物(I1)を29.0g(113mmol)、酢酸を210mL入れ、氷浴上で発煙硝酸を25mLゆっくり滴下し、20時間撹拌した。反応溶液を精製水300mLに注ぎ、析出した固体を吸引ろ過した。再結晶(アセトン250mL,55℃)、吸引ろ過、真空乾燥し、第一結晶を得た。ろ液を濃縮、再結晶(アセトン122mL,55℃)、吸引ろ過、真空乾燥し、第二結晶を得た。合わせて黄色結晶(化合物(I2))、収量:21.0g(69.8mmol,62%)を得た。
【0133】
上記合成で得られた化合物(I2)(4−ベンジルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.49(3H,s),3.98(3H,s),5.22(2H,s),6.77(1H,s),7.33−7.48(5H,m),7.67(1H,s).
IR(KBr):1699(C=O),1517(NO
2),1337(NO
2)cm
−1.
【0134】
【化27】
【0135】
次に、500mLのナスフラスコに、化合物(I2)を34.9g(116mmol)、トリフルオロ酢酸を300mL入れ、室温で14時間撹拌した。濃縮後、5%の炭酸水素ナトリウム水溶液を200mL加え、酢酸エチル(300mL×7)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、再結晶(酢酸エチル300mL,80℃)、吸引ろ過、真空乾燥して第一結晶を得た。ろ液を濃縮、再結晶(酢酸エチル20mL,80℃)、吸引ろ過、真空乾燥して第二結晶を得た。合わせて黄色結晶(化合物(I3))、収量:20.9g(98.9mmol,86%)を得た。
【0136】
上記合成で得られた化合物(I3)(4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.49(3H,s),4.02(3H,s),5.93(1H,s),6.80(1H,s),7.67(1H,s).
IR(KBr):3155(OH),1658(C=O),1530(NO
2),1335(NO
2)cm
−1.
【0137】
【化28】
【0138】
次に、200mLの二口ナスフラスコに、化合物(I3)を3.02g(14.3mmol,1.0eq.)、炭酸カリウムを3.99g(28.8mmol,2.0eq.)、N,N−ジメチルホルムアミド乾燥溶媒(以下、「DMF」という。)を30mL入れ、窒素雰囲気下、室温で5分間撹拌した後、ヘキサフルオロベンゼンを26.4g(142mmol,9.9eq.)加えて100℃で14時間撹拌した。放冷後、精製水(60mL)を加えて酢酸エチル(50mL×4)で抽出し、有機層を飽和食塩水(60mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して白色固体(化合物(I4))、収量:3.51g(9.30mmol,65%)を得た。
【0139】
上記合成で得られた化合物(I4)(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(ペンタフルオロフェニルオキシ)アセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.53(3H,s),4.02(3H,s),6.87(1H,s),7.58(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ30.4,57.1,110.2,112.1,129.2(t,J=14Hz),136.5,137.8,138.3(dt,J=253,13Hz),139.3(2C,dt,J=255,14Hz),141.5(2C,dd,J=254,13Hz),146.0,154.5,199.3.
IR(KBr):1705(C=O),1515(NO
2),1346(NO
2)cm
−1
Anal. Calcd for C
15H
8F
5NO
5:C,47.76;H,2.14;N,3.71. Found: C, 47.65; H, 2.04; N, 3.67.
【0140】
【化29】
【0141】
次に、200mLのナスフラスコに、化合物(I4)を3.00g(7.95mmol,1.0eq.)、テトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)を40mL、メタノ−ルを35mL入れ、氷浴上で水素化ホウ素ナトリウムを0.650g(17.2mmol,2.2eq.)ゆっくり加え、0℃から室温で1時間撹拌した。濃縮後、精製水(100mL)と2規定の塩酸(20mL)を加えて酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して白色固体(化合物(I5))、収量:2.73g(7.21mmol,91%)を得た。
【0142】
上記合成で得られた化合物(I5)(1−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(ペンタフルオロフェニルオキシ)フェニル)エタノ−ル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.57(3H,d,J=6.2Hz),2.21(1H,d,J=3.7Hz),4.03(3H,s),5.63(1H,qd,J=6.2,3.7Hz),7.48(1H,s),7.54(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ24.6,56.7,65.8,110.3,113.0,129.7(t,J=12Hz),138.2(dt,J=256,14Hz),139.0(2C,dt,J=254,14Hz),139.1,140.9,141.5(2C,dd,J=253,12Hz),144.3,154.0.
IR(KBr):3420(OH),1518(NO
2),1336 (NO
2)cm
−1.
【0143】
【化30】
【0144】
次に、200mLの二口ナスフラスコに、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下、「EDC・HCl」という。)を1.66g(8.66mmol,1.5eq.)とドライTHFを15mL入れ、窒素雰囲気下、氷浴で20分間撹拌した後、化合物(I5)を2.16g(5.69mmol,1.0eq.)、4−ペンテン酸を1.25g(12.5mmol,2.2eq.)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(以下、「DMAP」という。)を0.862g(7.06mmol,1.2eq.)含むドライTHF 15mLの混合溶液を滴下し、窒素雰囲気下、氷浴で10分間撹拌後、室温で11時間撹拌した。濃縮後、精製水(100mL)と2規定の塩酸(15mL)を加えて酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、有機層を5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)で精製して白色固体(化合物(I6))、収量:2.14g(4.64mmol,82%)を得た。
【0145】
上記合成で得られた化合物(I6)(4−ペンテン酸1−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(ペンタフルオロフェニルオキシ)フェニル)エチル)の同定を以下に示す。さらにUV測定の結果を示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.63(3H,d,J=6.4Hz),2.35−2.54(4H,m),4.00(3H,s),4.99−5.09(2H,m),5.76−5.86(1H,m),6.50(1H,q,J=6.4Hz),7.14(1H,s),7.52(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ22.1,28.8,33.6,56.7,68.2,109.8,112.8,115.8,129.5(t,J=15Hz),136.4,137.2,138.2(dt,J=253,13Hz),139.1(2C,dt,J=245,13Hz),139.5,141.6(2C,dd,J=251,12Hz),144.6,153.8,171.6.
IR(KBr):1728(C=O),1519(NO
2),1338(NO
2)cm
−1.
Anal. Calcd for C
20H
16F
5NO
6: C, 52.07; H, 3.50; N, 3.04. Found: C, 52.16; H, 3.35; N, 3.03.
UV (ethanol): ε 14500 (218 nm), 12900 (236 nm), 5730 (294 nm) M
−1cm
−1.
【0146】
【化31】
【0147】
次に、30mLの二口ナスフラスコに、化合物(I6)を0.504g(1.09mmol,1.0eq.)入れて1時間真空乾燥した後、ドライTHF 2mLで溶解し、トリメトキシシランを1.36g(11.1mmol,10eq.)と、カルステッド触媒をパスツ−ルピペットで6滴加え、窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。濃縮後、中圧カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=6:1:0.07)で精製して白色固体(含フッ素化合物(1))、収量:0.469g(0.804mmol,74%)を得た。
【0148】
上記合成で得られた含フッ素化合物(1)(5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸1−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(ペンタフルオロフェニルオキシ)フェニル)エチル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ0.62−0.68(2H,m),1.40−1.50(2H,m),1.62(3H,d,J=6.4Hz),1.64−1.72(2H,m),2.29−2.43(2H,m),3.56(9H,s),4.01(3H,s),6.48(1H,q,J=6.4Hz),7.14(1H,s),7.51(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ9.03,22.1,22.4,28.2,34.1,50.6(3C),56.7,68.0,109.8,112.9,129.5(t,J=15Hz)137.3,138.3(dt,J=253,15Hz),139.1(2C,dt,J=251,14Hz),139.5,141.6(2C,dd,J=251,12Hz),144.5,153.9,172.3.
IR(KBr):1737(C=O),1520(NO
2),1343(NO
2)cm
−1.
Anal. Calcd for C
23H
26F
5NO
9Si: C, 47.34; H, 4.49; N, 2.40. Found: C, 46.97; H, 4.28; N, 2.39.
【0149】
【化32】
【0150】
≪実施例2:化合物(2)の合成≫
100mLの二口ナスフラスコに、4−ヒドロキシ−3−メトキシアセトフェノンを1.02g(6.16mmol,1.0eq.)、炭酸カリウムを1.65g(11.9mmol,1.9eq.)、DMF乾燥溶媒を10mL入れ、窒素雰囲気下、室温で5分間撹拌した後、ヘキサフルオロベンゼンを11.5g(62.0mmol,10eq.)加えて80℃で5時間撹拌した。放冷後、精製水(10mL)を加えて酢酸エチル(5mL×5)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=7:1)で精製して白色固体(化合物(2))、収量:1.57g(4.71mmol,76%)を得た。
【0151】
上記合成で得られた化合物(2)(3−メトキシ−4−(ペンタフルオロフェニルオキシ)アセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.59(3H,s),3.96(3H,s),6.82(1H,d,J=8.4Hz),7.49(1H,dd,J=8.4,2.0Hz),7.63(1H,d,J=2.0Hz).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ26.4,56.3,112.0,115.1,122.3,129.9(t,J=13Hz),134.0,138.2(dt,J=251,14Hz),138.8(2C,dt,J=251,14Hz),141.6(2C,dd,J=251,12Hz),149.5,149.8,196.5.
IR(KBr):1682(C=O)cm
−1.
Anal. Calcd for C
15H
9F
5O
3:C,54.23;H,2.73. Found: C, 54.27; H, 2.35.
【0152】
【化33】
【0153】
≪実施例3〜4:含フッ素化合物(1)による基板の表面修飾≫
上記の合成方法によって得られた、含フッ素化合物(1)を用いて基板の表面修飾を行った。
得られた修飾基板は、水の静的接触角を測定し、UVから表面密度を算出した。光分解については、水の静的接触角の変化により追跡し、X線光電子分光法(X−ray photoelectron spectroscopy,以下、「XPS」という。)、X線反射率法(X−ray reflectometry,以下、「XRR」という。)により光照射前後を比較した。
【0154】
[前処理工程]
シリコンウェハ(3cm×1.5cm)、石英ガラス(4cm×1cm)について、UV−オゾンクリ−ナ−により前処理を行った。
シリコンウェハ、石英ガラスを純水、メタノ−ル、アセトンでそれぞれ5分間超音波洗浄した。基板を取り出し窒素気流で乾燥させ、UVオゾンクリ−ナ−で前処理した。UV−オゾンクリ−ナ−の酸素注入は流量6L/minで3分間注入し、UV照射は1.5時間とし、生じたオゾンは窒素を流量6L/minで10分間流して排出した。
シリコンウェハは鏡面にUVを1.5時間照射し、石英ガラスは1.5時間ずつ両面を前処理した。
【0155】
[表面修飾工程]
続いて、50mL太口ナスフラスコに含フッ素化合物(1)の1mM ドライトルエン溶液20mL、酢酸63μL(1.10mmol,50mM)、前処理した基板を入れ、窒素雰囲気下、30℃で19時間浸漬した。基板をメタノ−ルで洗浄し、メタノ−ル、クロロホルムで各10分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した。
比較例として、50mL太口ナスフラスコに化合物(11)又は(12)のいずれか1mM ドライトルエン溶液20mL、前処理した基板を入れ、窒素雰囲気下、100℃で3時間浸漬した。
【0156】
【化34】
【0157】
得られた基板表面の水の静的接触角を基板種類等と共に表1に記載する。修飾剤に、含フッ素化合物(1)を用いた実施例3〜4は、比較例1に比べて接触角が大きく、いずれも疎水性を示したことから基板上が修飾されたと考えられる。実施例3〜4と、比較例2とを比べると、比較例2のほうが接触角は大きいものの、後述するように、比較例2は有機半導体の塗布性が劣るものであった。また、XPSより、修飾後の基板においてF(フッ素)及びニトロ基由来のピ−クの出現が見られたことからも修飾できたことを示した(
図6)。また、石英ガラスにおいてUVから算出した表面密度は、3.1×10
14molecules/cm
2であった。
【0158】
【表1】
【0159】
≪修飾基板への光照射≫
その後、実施例3〜4について、得られた修飾基板の光分解性を調べるために、超高圧水銀灯で、320nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルタ−を通して、照度50mW/cm
2で光照射した。光照射した基板をメタノ−ル、クロロホルムで洗い流し、クロロホルムで5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した。
光分解は次式のようになされ、光照射するとニトロベンジル基の光分解によりニトロソ化合物が脱離し、基板表面にカルボキシ基を導入できると思われる。
【0160】
【化35】
【0161】
図5に、実施例3〜4の光照射時の水の静的接触角の経時変化を示す。水の静的接触角の変化より、照射時間に伴い接触角は減少し、最終的に50〜52°になったことから、光分解が進行したことが確認できた。
図5の上段のグラフは、実施例3の修飾基板について、光照射して水の静的接触角の経時変化を表すものである。
図5の下段のグラフは、実施例4の修飾基板について、光照射して水の静的接触角の経時変化を表すものである。
図5に示すとおり、実施例3〜4は光照射前後で接触角差が大きかった。
【0162】
また
図6は、実施例3の修飾基板について、光照射前後でのXPSスペクトル結果を示すものである。
図6に示すとおり、光照射後にはF(フッ素)及びニトロ基由来のピ−クが消失したことから光分解性基が光照射により脱離したことが確認できた。
【0163】
実施例3について、光照射前後でXRR測定を行ったところ、光照射前は膜厚1.4nm(実測値、計算値は1.7nm)だったものが、光照射後には、膜厚0.75nm(実測値、計算値は0.8nm)に減少した。
このことからも、光照射により光分解性基が脱離したことが確認できた。
【0164】
≪有機薄膜トランジスタの作製≫
[基板の前処理]
電極付シリコンウェハを純水、メタノ−ル、アセトンで各5分間超音波洗浄した後、窒素気流で乾燥した。UV−オゾンクリ−ナ−にて、酸素を流量6L/minで3分間注入し、UVを1.5時間照射し、生じたオゾンを排出するため窒素を流量6L/minで10分間流した。
[使用した基板]
Au電極付シリコンウェハ
SiO
2膜厚:150nm
チャネル長:5、20、50μm
チャネル幅:500μm
【0165】
[実施例5:含フッ素化合物(1)による表面修飾]
1000mLのセパラブルフラスコ(口内径φ120mm筒型)に含フッ素化合物(1)の1mMドライトルエン溶液を40mL入れ、酢酸を125μL(2.20mmol、50mM)加え、修飾面を上にして前処理した基板を入れ、窒素雰囲気下室温で24時間浸漬した。基板を取り出し、メタノ−ルで洗浄後、メタノ−ル、クロロホルムで各10分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した。得られた各基板の水の接触角を測定した。各基板の水の接触角を表3に示す。なお、実施例5の水の接触角は87±1°であった。実施例5は接触角が大きく、疎水性を示したことから、
図2に示すようにドレイン電極13とソ−ス電極14の間に自己組織化単分子層10aが形成されたことが確認できた。
[比較例3〜4:化合物(11)又は(12)による表面修飾]
上記化合物(11)又は(12)を用い、浸漬条件を室温で19時間としたこと以外は実施例5と同様の表面修飾を行った。化合物(11)を用いたものを比較例3、化合物(12)を用いたものを比較例4とする。
[比較例5]
上記と同様の条件で基板を前処理し、表面修飾を行わなかった。
【0166】
[有機薄膜トランジスタの作製]
上記実施例5、比較例3〜4の方法により表面修飾した金電極付シリコンウェハ基板、表面修飾を行わなかった金電極付シリコンウェハ基板(比較例5)(1枚にチャネル長:5、20、50μmで各4素子)を10°傾けた台にソ−ス電極側を低い位置に置き、下記化合物(20)の2wt%トルエン溶液を300μLドロップキャストし、自然乾燥させ、ソ−ス電極及びドレイン電極をつなぐように結晶薄膜を形成し、有機薄膜トランジスタを得た。
図3に本発明の有機薄膜トランジスタの一例を示す。
図3に示すように、疎水性の自己組織単分子層10aの領域に有機半導体11が塗布された有機薄膜トランジスタを形成した。
次いで、得られた有機薄膜トランジスタを105℃で30分間熱処理した。
【0167】
【化36】
【0168】
≪有機薄膜トランジスタの特性評価≫
上記実施例により製造した有機薄膜トランジスタのI
d−V
g特性を半導体パラメ−タ−ソフトを用いて測定した。
閾値電圧とキャリア移動度は、半導体パラメ−タ−によりI
d−V
g特性を得た後、I
d1/2−V
gプロットに変形して算出し、キャリア移動度は当該I
d1/2−V
gプロットから得られた直線部分の傾きを、以下の式に当てはめて算出した。
傾き=(WμC
i/2L)
1/2
閾値電圧は、I
d1/2−V
gプロットの直線におけるx切片として算出した。
I
d:ドレイン電流
V
g:ゲ−ト電圧
また、有機薄膜トランジスタにおける飽和電流領域は、I
d−V
d特性から求めた。
【0169】
【数1】
【0170】
式中、
I
d:ドレイン電流(A)
W:チャネル幅(500μm)
L:チャネル長(5、20、50μm)
μ:キャリア移動度(cm
2/V・s)
C
i:ゲ−ト絶縁層の容量(ε
1ε
0/d)
ε
1:SiO
2の比誘電率3.9
ε
2:真空の誘電率8.85×10
−12F/m
V
g:ゲ−ト電圧(V)
V
th:閾値電圧(V)
を意味する。
なお、ON/OFF比は、I
d−V
g特性の、(最大I
d値)/(最少I
d値)から算出した。
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】
【0173】
≪実施例6:含フッ素化合物(3)の合成≫
100mLの二口ナスフラスコに、化合物(I3)を1.56g(7.39mmol,1.0eq.)、60%水素化ナトリウムを0.297g(7.42mmol,1.0eq.)、ドライDMFを16mL入れ、窒素雰囲気下、室温で30分撹拌した後、3−ブロモ−1−プロパノ−ルを1.03g(7.41mmol,1.0eq.)とドライDMFを4mL加えて80℃で25時間撹拌した。3−ブロモ−1−プロパノ−ルを0.513g(3.69mmol,0.5eq.)とドライDMFを1mL追加し、80℃で5時間撹拌した。放冷後、減圧留去し、精製水(200mL)を加えて酢酸エチル(100mL×4)で抽出し、有機層を飽和食塩水(100mL×2)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=2:3)で精製して白色固体(化合物(III1))、収量:1.48g(5.50mmol,74%)を得た。
【0174】
上記合成で得られた化合物(III1)(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.00(1H,t,J=5.5Hz),2.14(2H,quint.,J=5.8Hz),2.50(3H,s),3.90(2H,q,J=5.6Hz),3.96(3H,s),4.29(2H,t,J=6.0Hz),6.76(1H,s),7.64(1H,s).
IR(KBr):3397(OH),3312(OH),1712(C=O),1521(NO
2),1340(NO
2)cm
−1.
Anal.Calcd for C
12H
15NO
6:C,53.53;H,5.62;N,5.20.Found:C,53.49;H,5.40;N,5.15.
【0175】
【化37】
【0176】
次に、100mLの二口ナスフラスコに、化合物(III1)を1.60g(5.94mmol,1.0eq.)、炭酸カリウムを1.74g(12.6mmol,2.1eq.)、ドライDMFを16mL入れ、窒素雰囲気下、室温で10分撹拌した後、ヘキサフルオロベンゼンを11.7g(63.1mmol,11eq.)とドライDMFを5mL加えて100℃で18時間撹拌した。放冷後、減圧留去し、精製水(100mL)を加えて酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、有機層を飽和食塩水(100mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して白色固体(化合物(III2))、収量:1.86g(4.27mmol,72%)を得た。
【0177】
上記合成で得られた化合物(III2)(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)アセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.34(2H,quint.,J=6.0Hz),2.51(3H,s),3.95(3H,s),4.33(2H,t,J=6.1Hz),4.39(2H,t,J=5.9Hz),6.76(1H,s),7.66(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ29.6,30.4,56.6,65.6,71.8(t,J=2.9Hz),108.3,108.9,133.1,133.5,(t,J=12Hz),137.5(dt,J=253,15Hz),138.1(2C,dm,J=248Hz),138.4,141.8,(2C,dm,J=247Hz),148.9,154.4,200.1.
IR(KBr):1704(C=O),1511(NO
2),1337(NO
2)cm
−1.
Anal.Calcd for C
18H
14F
5NO
6:C,49.67;H,3.24;N,3.22.Found:C,49.81;H,3.10;N,3.20.
【0178】
【化38】
【0179】
次に、100mLのナスフラスコに、化合物(III2)を1.61g(3.69mmol,1.0eq.)、ドライTHFを16mL、メタノ−ルを16mL入れ、氷浴上で水素化ホウ素ナトリウムを0.279g(7.38mmol,2.0eq.)ゆっくり加え、0℃から室温で1時間撹拌した。濃縮後、精製水(100mL)と2規定の塩酸(20mL)を加えて酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。クロロホルム(100mL)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL×3)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥して黄色固体(化合物(III3))、収量:1.48g(3.38mmol,91%)を得た。
【0180】
上記合成で得られた化合物(III3)(1−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)フェニル)エタノ−ル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.56(3H,d,J=6.4Hz),2.26(1H,d,J=3.6Hz),2.32(2H,quint.,J=6.0Hz),3.97(3H,s),4.28(2H,t,J=6.0Hz),4.39(2H,t,J=6.0Hz),5.58(1H,qd,J=6.4,3.6Hz),7.31(1H,s),7.62(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ24.3,29.7,56.4,65.5,65.8,72.0(t,J=2.9Hz),108.8,109.5,133.6(t,J=12Hz),137.2,137.4(dt,J=252,16Hz),138.0(2C,dt,J=251,14Hz),139.6,141.8(2C,dm,J=246Hz),146.9,154.2.
IR(KBr):3386(OH),3321(OH),1520(NO
2),1340(NO
2)cm
−1.
Anal.Calcd for C
18H
16F
5NO
6:C,49.44;H,3.69;N,3.20.Found:C,49.51;H,3.31;N,3.19.
【0181】
【化39】
【0182】
次に、100mLの二口ナスフラスコに、EDC・HClを0.667g(3.48mmol,1.3eq.)、ドライTHFを10mL入れ、窒素雰囲気下、氷浴で20分間撹拌した後、化合物(III3)を1.20g(2.75mmol,1.0eq.)、4−ペンテン酸を0.462g(4.61mmol,1.7eq.)、DMAPを0.332g(2.71mmol,1.0eq.)を含むドライTHF10mLの混合溶液を滴下し、窒素雰囲気下、氷浴で10分間撹拌後、室温で5時間撹拌した。濃縮後、精製水(100mL)と1規定の塩酸(20mL)を加えてクロロホルム(100mL×3)で抽出し、有機層を5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して白色固体(化合物(III4))、収量:1.31g(2.52mmol,92%)を得た。
【0183】
上記合成で得られた化合物(III4)(4−ペンテン酸1−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)フェニル)エチル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.62(3H,d,J=6.4Hz),2.27−2.53(6H,m),3.94(3H,s),4.28(2H,t,J=6.1Hz),4.38(2H,t,J=5.9Hz),5.00(1H,dq,J=10,1.6Hz),5.05(1H,dq,J=17,1.6Hz),5.80(1H,ddt,J=17,10,6.3Hz),6.49(1H,q,J=6.4Hz),7.01(1H,s),7.62(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ22.1,28.8,29.6,33.7,56.3,65.4,68.4,71.9(t,J=3.1Hz),108.3,109.3,115.7,133.5,133.6(t,J=12Hz),136.5,137.4(dt,J=256,16Hz),138.0(2C,dt,J=254,15,5Hz),139.9,141.8(2C,dm,J=250Hz),147.2,154.0,171.7.
IR(KBr):1730(C=O),1510(NO
2),1336(NO
2)cm
−1.
Anal.Calcd for C
23H
22F
5NO
7:C,53.18;H,4.27;N,2.70.Found:C,53.09;H,4.04;N,2.68.
【0184】
【化40】
【0185】
次に、30mLの二口ナスフラスコに、化合物(III4)を0.396g(0.762mmol,1.0eq.)入れて1時間真空乾燥した後、ドライTHF2mLで溶解し、トリメトキシシランを0.938g(7.68mmol,10eq.)、カルステッド触媒をパスツ−ルピペットで6滴加え、窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。濃縮後、中圧カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=5:1:0.06)で精製して黄色粘体(含フッ素化合物(3))、収量:0.341g(0.531mmol,70%)を得た。
【0186】
上記合成で得られた含フッ素化合物(3)(5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸1−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)フェニル)エチル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ0.61−0.67(2H,m),1.39−1.49(2H,m),1.61(3H,d,J=6.4Hz),1.67(2H,quint.,J=7.8Hz),2.27−2.41(4H,m),3.55(9H,s),3.94(3H,s),4.28(2H,t,J=6.2Hz),4.38(2H,t,J=6.0Hz),6.47(1H,q,J=6.4Hz),7.01(1H,s),7.62(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ9.0,22.1,22.4,28.2,29.6,34.2,50.5(3C),56.3,65.4,68.2,71.9(t,J=2.9Hz),108.3,109.3,133.6(t,J=11Hz),133.7,137.4(dt,J=254,14Hz),138.0(2C,dt,J=250,15Hz),139.8,141.8(2C,dd,J=248,15Hz),147.1,154.1,172.3.
IR(NaCl):1739(C=O),1520(NO
2),1339(NO
2)cm
−1.
【0187】
【化41】
【0188】
≪実施例7:含フッ素化合物(4)の合成≫
200mLのナスフラスコに、3−ヒドロキシ−4メトキシアセトフェノンを4.66g(28.1mmol,1.0eq.)、炭酸カリウムを3.89g(28.1mmol,1.0eq.)、アセトンを50mL入れ、室温で30分撹拌した後、臭化ベンジルを3.5mL(29.4mmol,1.0eq.)加え、16時間還流した。放冷後、濃縮し、精製水を150mL加え、クロロホルム(100mL×4)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、再結晶(酢酸エチル3mL)、吸引ろ過、真空乾燥し、第一結晶を得た。ろ液を濃縮、再結晶(酢酸エチル0.5mL)、吸引ろ過、真空乾燥し、第二結晶を得た。合わせて淡黄色結晶(化合物(IV1))、収量:6.69g(26.1mmol,93%)を得た。
【0189】
上記合成で得られた化合物(IV1)(3−ベンジルオキシ−4−メトキシアセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.53(3H,s),3.95(3H,s),5.19(2H,s),6.91(1H,d,J=8.7Hz),7.28−7.49(5H,m),7.54−7.61(2H,m).
IR(KBr):1670(C=O)cm
−1.
【0190】
【化42】
【0191】
次に、200mLのナスフラスコに、化合物(IV1)を4.00g(15.6mmol,1.0eq.)、酢酸を40mL入れ、氷浴上で70%硝酸を30mLゆっくり滴下し、0℃から室温で3時間撹拌した。反応溶液を冷精製水300mLに注ぎ、酢酸エチル(100mL×6)で抽出し、有機層を5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(60mL×6)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、再結晶(酢酸エチル7mL、ヘキサン3mL)、吸引ろ過、真空乾燥し、第一結晶を得た。ろ液を濃縮、再結晶(酢酸エチル1mL、ヘキサン1mL)、吸引ろ過、真空乾燥し、第二結晶を得た。合わせて黄色固体(化合物(IV2))、収量:3.06g(10.2mmol,65%)を得た。
【0192】
上記合成で得られた化合物(IV2)(5−ベンジルオキシ−4−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.45(3H,s),3.98(3H,s),5.22(2H,s),6.81(1H,s),7.33−7.44(5H,m),7.62(1H,s).
IR(KBr):1708(C=O),1521(NO
2),1326(NO
2)cm
−1.
【0193】
【化43】
【0194】
次に、100mLのナスフラスコに、化合物(IV2)を3.13g(10.4mmol,1.0eq.)、トリフルオロ酢酸を30mL入れ、室温で16時間撹拌した。濃縮後、5%の炭酸水素ナトリウム水溶液を100mL加え、クロロホルム(100mL×5)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、再結晶(酢酸エチル4mL)、吸引ろ過、真空乾燥して第一結晶を得た。ろ液を濃縮、再結晶(酢酸エチル1mL)、吸引ろ過、真空乾燥して第二結晶を得た。合わせて暗黄色固体(化合物(IV3))、収量:1.78g(8.43mmol,81%)を得た。
【0195】
上記合成で得られた化合物(IV3)(5−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.50(3H,s),4.03(3H,s),6.27(1H,s),6.86(1H,s),7.64(1H,s).
IR(KBr):3378(OH),1699(C=O),1515(NO
2),1345(NO
2)cm
−1.
【0196】
【化44】
【0197】
次に、100mLの二口ナスフラスコに、化合物(IV3)を1.01g(4.79mmol,1.0eq.)、60%水素化ナトリウム0.232g(5.79mmol,1.2eq.)、ドライDMFを10mL入れ、窒素雰囲気下、室温で30分撹拌した後、3−ブロモ−1−プロパノ−ルを0.816g(5.87mmol,1.2eq.)加えて85℃で24時間撹拌した。放冷後、減圧留去し、精製水(100mL)を加えて酢酸エチル(50mL×5)で抽出し、有機層を飽和食塩水(50mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=1:2)で精製して白色固体(化合物(IV4))、収量:0.906g(3.36mmol,70%)を得た。
【0198】
上記合成で得られた化合物(IV4)(5−(3−ヒドロキシプロポキシ)−4−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.95(1H,t,J=5.4Hz),2.13(2H,quint.,J=5.8Hz),2.50(3H,s),3.88(2H,q,J=5.6Hz),3.96(3H,s),4.28(2H,t,J=6.1Hz),6.79(1H,s),7.61,(1H,s).
IR(KBr):3447(OH),3394(OH),1704(C=O),1523(NO
2),1343(NO
2)cm
−1.
Anal.Calcd for C
12H
15NO
6:C,53.53;H,5.62;N,5.20.Found:C,53.52;H,5.64;N,5.18.
【0199】
【化45】
【0200】
次に、100mLの二口ナスフラスコに、化合物(IV4)を0.795g(2.95mmol,1.0eq.)、炭酸セシウムを0.972g(2.98mmol,1.0eq.)、ドライDMFを8mL入れ、窒素雰囲気下、室温で10分撹拌した後、ヘキサフルオロベンゼンを5.52g(29.7mmol,10eq.)加えて100℃で18時間撹拌した。放冷後、減圧留去し、精製水(100mL)を加えて酢酸エチル(80mL×5)で抽出し、有機層を飽和食塩水(80mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して淡黄色固体(化合物(IV5))、収量:0.934g(2.15mmol,73%)を得た。
【0201】
上記合成で得られた化合物(IV5)(4−メトキシ−2−ニトロ−5−(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)アセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.34(2H,quint.,J=6.0Hz),2.50(3H,s),3.95(3H,s),4.33(2H,t,J=6.2Hz),4.37(2H,t,J=5.9Hz),6.81(1H,s),7.61(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ29.5,30.4,56.5,65.6,71.7(t,J=3.1Hz),107.1,109.8,132.7,133.5,(t,J=12Hz),137.5(dt,J=253,15Hz),138.0(2C,dm,J=248Hz),138.7,141.8,(2C,dm,J=251Hz),150.0,153.3,200.0.
IR(KBr):1706(C=O),1512(NO
2),1336(NO
2)cm
−1.
Anal.Calcd for C
18H
14F
5NO
6:C,49.67;H,3.24;N,3.22.Found:C,49.69;H,3.15;N,3.19.
【0202】
【化46】
【0203】
次に、100mLのナスフラスコに、化合物(IV5)を0.800g(1.84mmol,1.0eq.)、ドライTHFを8mL、メタノ−ルを8mL入れ、氷浴上で水素化ホウ素ナトリウムを0.073g(1.93mmol,1.0eq.)ゆっくり加え、0℃から室温で1時間撹拌した。濃縮後、精製水(100mL)と2規定の塩酸(10mL)を加えてクロロホルム(80mL×3)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、真空乾燥して黄色粘体(化合物(IV6))、収量:0.798g(1.82mmol,99%)を得た。
【0204】
上記合成で得られた化合物(IV6)(1−(4−メトキシ−2−ニトロ−5−(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)フェニル)エタノ−ル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.56(3H,d,J=6.2Hz),2.24(1H,d,J=3.6Hz),2.34(2H,quint.,J=6.0Hz),3.91(3H,s),4.36(2H,t,J=6.1Hz),4.39(2H,t,J=5.8Hz),5.57(1H,qd,J=6.2,3.8Hz),7.34(1H,s),7.57(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ24.3,29.6,56.3,65.3,65.7,71.9(t,J=3.1Hz),107.9,109.8,133.6(t,J=13Hz),136.9,137.4(dt,J=253,16Hz),138.0(2C,dt,J=248,14Hz),139.7,141.8(2C,dm,J=246Hz),148.0,153.1.
IR(NaCl):3534(OH),3423(OH),1516(NO
2),1334(NO
2)cm
−1.
Anal.Calcd for C
18H
16F
5NO
6:C,49.44;H,3.69;N,3.20.Found:C,49.34;H,3.38;N,3.18.
【0205】
【化47】
【0206】
次に、100mLの二口ナスフラスコに、EDC・HClを0.460g(2.40mmol,2.0eq.)、ドライTHFを10mL入れ、窒素雰囲気下、氷浴で20分間撹拌した後、化合物(IV6)を0.520g(1.19mmol,1.0eq.)、4−ペンテン酸を0.180g(1.80mmol,1.5eq.)、DMAPを0.230g(1.88mmol,1.6eq.)を含むドライTHF5mLの混合溶液を滴下し、窒素雰囲気下、氷浴で5分間撹拌後、室温で3時間撹拌した。濃縮後、精製水(50mL)と2規定の塩酸(5mL)を加えてクロロホルム(50mL×3)で抽出し、有機層を5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して白色固体(化合物(IV7))、収量:0.539g(1.04mmol,87%)を得た。
【0207】
上記合成で得られた化合物(IV7)(4−ペンテン酸1−(4−メトキシ−2−ニトロ−5−(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)フェニル)エチル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.61(3H,d,J=6.4Hz),2.30−2.52(6H,m),3.91(3H,s),4.28−4.37(2H,m),4.39(2H,t,J=5.8Hz),4.98(1H,dq,J=10,1.4Hz),5.03(1H,dq,J=17,1.6Hz),5.79(1H,ddt,J=17,10,6.2Hz),6.48(1H,q,J=6.4Hz),7.06(1H,s),7.58(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ22.1,28.8,29.6,33.6,56.3,65.3,68.3,71.9(t,J=3.1Hz),108.0,109.5,115.6,133.1,133.5(t,J=13Hz),136.5,137.5(dt,J=253,15Hz),138.0(2C,dm,J=250Hz),140.1,141.8(2C,dm,J=244Hz),148.3,152.9,171.7.
IR(KBr):1734(C=O),1514(NO
2),1337(NO
2)cm
−1.
Anal.Calcd for C
23H
22F
5NO
7:C,53.18;H,4.27;N,2.70.Found:C,53.23;H,3.99;N,2.70.
【0208】
【化48】
【0209】
次に、30mLの二口ナスフラスコに、化合物(IV7)を0.201g(0.387mmol,1.0eq.)入れて一時間真空乾燥した後、ドライTHF 2mLで溶解し、トリメトキシシランを0.476g(3.90mmol,10eq.)、カルステッド触媒をパスツ−ルピペットで3滴加え、窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。濃縮後、中圧カラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=5:1:0.06)で精製して黄緑色固体(含フッ素化合物(4))、収量:0.170g(0.265mmol,68%)を得た。
【0210】
上記合成で得られた含フッ素化合物(4)(5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸1−(4−メトキシ−2−ニトロ−5−(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)フェニル)エチル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ0.60−0.65(2H,m),1.38−1.48(2H,m),1.61(3H,d,J=6.4Hz),1.66(2H,quint.,J=7.6Hz),2.26−2.41(4H,m),3.54(9H,s),3.90(3H,s),4.27−4.37(2H,m),4.40(2H,t,J=5.8Hz),6.46(1H,q,J=6.4Hz),7.06(1H,s),7.57(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ8.9,22.0,22.3,28.2,29.6,34.1,50.5(3C),56.3,65.3,68.1,71.9(t,J=2.9Hz),108.0,109.4,133.2,133.5(t,J=13Hz),137.5(dt,J=252,15Hz),138.0(2C,dm,J=248Hz),140.1,141.8(2C,dm,J=246),148.3,152.9,172.3.
IR(KBr):1728(C=O),1515(NO
2),1336(NO
2)cm
−1.
Anal.Calcd forC
26H
32F
5NO
10Si:C,48.67;H,5.03;N,2.18.Found:C,48.79;H,4.82;N,2.20.
【0211】
【化49】
【0212】
≪実施例8〜11:含フッ素化合物(3)〜(4)による基板の表面修飾≫
上記の合成方法によって得られた、含フッ素化合物(3)〜(4)を用いて基板の表面修飾を行った。
【0213】
[前処理工程]
シリコンウェハ(3cm×1.5cm)、石英ガラス(4cm×1cm)について、UV−オゾンクリ−ナ−により前処理を行った。
シリコンウェハ、石英ガラスを純水、メタノ−ル、アセトンでそれぞれ5分間超音波洗浄した。基板を取り出し窒素気流で乾燥させ、UVオゾンクリ−ナ−で前処理した。UV−オゾンクリ−ナ−の酸素注入は流量6L/minで3分間注入し、UV照射は1.5時間とし、生じたオゾンは窒素を流量6L/minで10分間流して排出した。
シリコンウェハは鏡面にUVを1.5時間照射し、石英ガラスは1.5時間ずつ両面を前処理した。
【0214】
[表面処理工程]
続いて、50mL太口ナスフラスコに含フッ素化合物(3)または(4)の1mMドライトルエン溶液20mL、酢酸57μL(0.997mmol,50mM)、前処理した基板を入れ、窒素雰囲気下、室温で24時間浸漬した。基板をメタノ−ルで洗浄し、メタノ−ル、クロロホルムで各10分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した。
【0215】
得られた基板表面の水の静的接触角を基板種類等と共に表4に記載する。また、表4中に、前記実施例3〜4及び比較例1〜2の静的接触角と基板種類等を併記する。修飾剤に、含フッ素化合物(3)を用いた実施例8〜9及び含フッ素化合物(4)を用いた実施例10〜11は、比較例1に比べて接触角が大きく、いずれも疎水性を示したことから基板上が修飾されたと考えられる。実施例8〜11と、比較例2とを比べると、比較例2のほうが接触角は大きいものの、後述するように、比較例2は有機半導体の塗布性が劣るものであった。また、XPSより、修飾後の基板においてF(フッ素)及びニトロ基由来のピ−クの出現が見られたことからも修飾できたことを示した(
図9〜10)。また、石英ガラスにおいてUVから算出した表面密度は、実施例9については3.3×10
14molecules/cm
2であり、実施例11については2.8×10
14molecules/cm
2であった。
【0216】
【表4】
【0217】
≪修飾基板への光照射≫
その後、実施例8〜11について、得られた修飾基板の光分解性を調べるために、超高圧水銀灯で、320nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルタ−を通して、照度50mW/cm
2で光照射した。光照射した基板をメタノ−ル、クロロホルムで洗い流し、クロロホルムで5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した。
光分解は含フッ素化合物(3)は下記式(3)−1のように、含フッ素化合物(4)は下記式(4)−1のようになされ、光照射するとニトロベンジル基の光分解によりニトロソ化合物が脱離し、基板表面にカルボキシ基を導入できると思われる。
【0218】
【化50】
【0219】
【化51】
【0220】
図7〜8に実施例8〜11の光照射時の水の静的接触角の経時変化を示す。水の静的接触角の変化より、照射時間に伴い接触角は減少し、最終的に50〜54°になったことから、光分解が進行したことが確認できた。
図7の上段のグラフは、実施例8の修飾基板について、光照射して水の静的接触角の経時変化を表すものである。
図7の下段のグラフは、実施例9の修飾基板について、光照射して水の静的接触角の経時変化を表すものである。
図8の上段のグラフは、実施例10の修飾基板について、光照射して水の静的接触角の経時変化を表すものである。
図8の下段のグラフは、実施例11の修飾基板について、光照射して水の静的接触角の経時変化を表すものである。
図7〜8に示すとおり、実施例8〜11は光照射前後で接触角差が大きかった。
【0221】
また
図9は実施例8、
図10は実施例10の修飾基板について、光照射前後でのXPSスペクトル結果を示すものである。
図9〜10に示すとおり、光照射後にはF(フッ素)及びニトロ基由来のピ−クが消失したことから光分解性基が光照射により脱離したことが確認できた。
【0222】
実施例8について、光照射前後でXRR測定を行ったところ、光照射前は膜厚1.8nm(実測値、計算値は2.2nm)だったものが、光照射後には、膜厚0.80nm(実測値、計算値は0.8nm)に減少した。また実施例10について、光照射前後でXRR測定を行ったところ、光照射前は膜厚1.3nm(実測値、計算値は2.2nm)だったものが、光照射後には、膜厚0.85nm(実測値、計算値は0.8nm)に減少した。これらのことからも、光照射により光分解性基が脱離したことが確認できた。
【0223】
≪有機薄膜トランジスタの作製≫
[基板の前処理]
電極付シリコンウェハを純水、メタノ−ル、アセトンで各5分間超音波洗浄した後、窒素気流で乾燥した。UV−オゾンクリ−ナ−にて、酸素を流量6L/minで3分間注入し、UVを1.5時間照射し、生じたオゾンを排出するため窒素を流量6L/minで10分間流した。
[使用した基板]
Au電極付シリコンウェハ
SiO
2膜厚:150nm
チャネル長:5、20、50μm
チャネル幅:500μm
【0224】
[実施例12〜13:含フッ素化合物(3)〜(4)による表面修飾]
1000mLのセパラブルフラスコ(口内径φ120mm筒型)に含フッ素化合物(3)又は(4)のいずれかの1mMドライトルエン溶液を40mL入れ、酢酸を125μL(2.20mmol、50mM)加え、修飾面を上にして前処理した基板を入れ、窒素雰囲気下室温で24時間浸漬した。基板を取り出し、メタノ−ルで洗浄後、メタノ−ル、クロロホルムで各10分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した。得られた各基板の水の接触角を測定した。各基板の水の接触角を表5に示す。
なお、実施例12の水の接触角は82±1°であった。実施例12は接触角が大きく、疎水性を示したことから、
図2に示すようにドレイン電極13とソ−ス電極14の間に自己組織化単分子層10aが形成されたことが確認できた。
なお、実施例13の水の接触角は83±1°であった。実施例13は接触角が大きく、疎水性を示したことから、
図2に示すようにドレイン電極13とソ−ス電極14の間に自己組織化単分子層10aが形成されたことが確認できた。
【0225】
[有機薄膜トランジスタの作製]
上記実施例12〜13の方法により表面修飾した金電極付シリコンウェハ基板、表面修飾を行わなかった金電極付シリコンウェハ基板(比較例5)(1枚にチャネル長:5、20、50μmで各4素子)を10°傾けた台にソ−ス電極側を低い位置に置き、前記化合物(20)の2wt%トルエン溶液を300μLドロップキャストし、自然乾燥させ、ソ−ス電極及びドレイン電極をつなぐように結晶薄膜を形成し、有機薄膜トランジスタを得た。
図3に本発明の有機薄膜トランジスタの一例を示す。
図3に示すように、疎水性の自己組織単分子層10aの領域に有機半導体11が塗布された有機薄膜トランジスタを形成した。
次いで、得られた有機薄膜トランジスタを105℃で30分間熱処理した。
【0226】
その後、前記実施例5と同様の方法により、実施例12〜13の有機薄膜トランジスタについて、特性を評価した。その結果を表5に記載する。なお、表5中に前記実施例5及び比較例5の結果を併記する。
【0227】
【表5】
【0228】
本発明の含フッ素化合物を用いて自己組織化単分子層を形成した有機薄膜トランジスタでは、有機半導体トランジスタ特性及び、移動度の向上が確認された。
【0229】
≪実施例14:含フッ素化合物(5)の合成≫
300mLのナスフラスコに、3,4−ジヒドロキシアセトフェノンを10.0g(65.7mmol,1.0eq.)、アセトンを100mL、炭酸カリウムを27.3g(197mmol,3.0eq.)入れ、室温で2時間撹拌した後、臭化ベンジルを23.4g(137mmol,2.1eq.)加え、7時間還流した。放冷後、精製水を200mL加えてクロロホルム(100mL×3)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、再結晶(酢酸エチル16mL)、吸引ろ過、真空乾燥し、第一結晶を得た。ろ液を濃縮、再結晶(酢酸エチル3mL)、吸引ろ過、真空乾燥し、第二結晶を得た。合わせて白色結晶(化合物(V1))、収量:18.7g(56.4mmol,86%)を得た。
【0230】
上記合成で得られた化合物(V1)(3,4−ビス(ベンジルオキシ)アセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.51(3H,s),5.21(2H,s),5.24(2H,s),6.93(1H,d,J=8.4Hz),7.29−7.49(10H,m),7.53(1H,dd,J=8.4,2.1Hz),7.61(1H,d,J=2.1Hz).
IR(KBr):1670(C=O)cm
−1.
【0231】
【化52】
【0232】
次に、50mLのナスフラスコに、化合物(V1)を0.504g(1.52mmol,1.0eq.)、酢酸を5mL入れ、氷浴上で発煙硝酸を1mLゆっくり滴下し、0℃で3時間撹拌した。反応溶液を冷精製水50mLに注ぎ、酢酸エチル(50mL×3)で抽出し、有機層を5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して黄色固体(化合物(V2))、収量:0.350g(0.927mmol,61%)を得た。
【0233】
上記合成で得られた化合物(V2)(4,5−ビス(ベンジルオキシ)−2−ニトロアセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.44(3H,s),5.24(4H,s),6.83(1H,s),7.32−7.47(10H,m),7.68(1H,s).
IR(KBr):1700(C=O),1525(NO
2),1328(NO
2)cm
−1.
【0234】
【化53】
【0235】
次に、50mLのナスフラスコに、化合物(V2)を1.05g(2.79mmol,1.0eq.)、トリフルオロ酢酸を10mL入れ、室温で44時間撹拌した。濃縮後、精製水を20mL加えて酢酸エチル(20mL×3)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。粗生成物をクロロホルムで洗い、ろ過、真空乾燥して緑色固体(化合物(V3))、収量:0.332g(1.68mmol,60%)を得た。
【0236】
上記合成で得られた化合物(V3)(4,5−ジヒドロキシ−2−ニトロアセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CD
3OD):δ2.43(3H,s),6.77(1H,s),7.49(1H,s).
【0237】
【化54】
【0238】
次に、30mLの二口ナスフラスコに、化合物(V3)を1.01g(5.12mmol,1.0eq.)、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」という。)乾燥溶媒を5mL、炭酸カリウムを0.861g(6.23mmol,1.2eq.)入れ、窒素雰囲気下、室温で10分撹拌した後、ヘキサフルオロベンゼンを5.5mL(47.6mmol,9.3eq.)加えて100℃で30分撹拌した。放冷後、精製水を100mL加えて酢酸エチル(200mL×3)で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して白色固体(化合物(V4))、収量:0.355g(1.03mmol,20%)を得た。
【0239】
上記合成で得られた化合物(V4)(1−(6,7,8,9−テトラフルオロ−3−ニトロジベンゾ[b,e][1,4]ジオキシン−2−イル)エタノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.52(3H,s),7.01(1H,s),7.77(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ30.1,113.8,115.9,127.7(2C,dm,J=12Hz),136.0,136.9(2C,dm,J=250Hz),138.2(2C,dm,J=246Hz),140.5,142.0,144.2,197.4.
Anal. Calcd for C
14H
5F
4NO
5:C,49.00;H,1.47;N,4.08. Found:C,49.23;H,1.19;N,3.98.
【0240】
【化55】
【0241】
次に、50mLのナスフラスコに、化合物(V4)を0.29g(0.85mmol,1.0eq.)、ドライTHFを5mL、メタノールを5mL入れ、氷浴上で水素化ホウ素ナトリウムを0.032g(0.85mmol,1.0eq.)ゆっくり加え、0℃で30分、室温で1時間撹拌した。濃縮後、精製水を40mLと1規定の塩酸を5mL加えてクロロホルム(40mL×3)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥して白色固体(化合物(V5))、収量:0.29g(0.85mmol,99%)を得た。
【0242】
上記合成で得られた化合物(V5)(1−(6,7,8,9−テトラフルオロ−3−ニトロジベンゾ[b,e][1,4]ジオキシン−2−イル)エタノール)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.54(3H,d,J=6.4Hz),2.19(1H,d,J=3.8Hz),5.49(1H,qd,J=6.4,3.8Hz),7.51(1H,s),7.70(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ24.4,65.3,113.9,116.0,128.0(2C,dm,J=14Hz),136.8(2C,dm,J=253Hz),137.8(2C,dm,J=238Hz),138.7,140.7,143.1,144.0.
【0243】
【化56】
【0244】
次に、30mLの二口ナスフラスコに、化合物(V5)を0.251g(0.73mmol,1.0eq.)、EDC・HClを0.210g(1.09mmol,1.5eq.)、DMAPを0.109g(0.89mmol,1.2eq.)、4−ペンテン酸を0.124g(1.24mmol,1.7eq.)、ドライTHFを10mL入れ、窒素雰囲気下、氷浴で30分間撹拌した後、室温で24時間撹拌した。1規定の塩酸を4mL加えてクロロホルム(30mL×3)で抽出し、有機層を5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して黄色固体(化合物(V6))、収量:0.258g(0.60mmol,82%)を得た。
【0245】
上記合成で得られた化合物(V6)(4−ペンテン酸1−(6,7,8,9−テトラフルオロ−3−ニトロジベンゾ[b,e][1,4]ジオキシン−2−イル)エチル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.60(3H,d,J=6.5Hz),2.34−2.43(2H,m),2.44−2.50(2H,m),5.02(1H,dq,J=10,1.3Hz),5.06(1H,dq,J=17,1.6Hz),5.81(1H,ddt,J=17,10,6.3Hz),6.33(1H,q,J=6.5Hz),7.21(1H,s),7.71(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ21.8,28.7,33.5,67.7,114.1,115.4,115.9,128.0(2C,dm,J=15Hz),136.4,136.8(2C,dm,J=250Hz),137.5,137.9(2C,dm,J=247Hz),138.8,143.3,143.9,171.8.
【0246】
【化57】
【0247】
次に、30mLの二口ナスフラスコに、化合物(V6)を0.104g(0.243mmol,1.0eq.)入れて1時間真空乾燥した後、ドライTHF1mLで溶解し、トリメトキシシランを0.300g(2.45mmol,10eq.)、カルステッド触媒をパスツールピペットで6滴加え、窒素雰囲気下、室温で2.5時間撹拌した。濃縮後、中圧カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=5:1:0.07)で精製して白色固体(含フッ素化合物(5))、収量:0.064g(0.117mmol,48%)を得た。
【0248】
上記合成で得られた含フッ素化合物(5)(5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸1−(6,7,8,9−テトラフルオロ−3−ニトロジベンゾ[b,e][1,4]ジオキシン−2−イル)エチル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ0.62−0.68(2H,m),1.39−1.49(2H,m),1.60(3H,d,J=6.4Hz),1.66(2H,quint.,J=7.6Hz),2.32−2.38(2H,m),3.55(9H,s),6.32(1H,q,J=6.4Hz),7.21(1H,s),7.71(1H,s).
【0249】
【化58】
【0250】
≪実施例15:化合物(6)の合成≫
30mLの二口ナスフラスコに、3,4−ジヒドロキシアセトフェノンを0.50g(3.3mmol,1.0eq.)、ドライDMSOを3mL、炭酸カリウムを0.95g(6.9mmol,2.0eq.)入れ、窒素雰囲気下、室温で10分撹拌した後、ヘキサフルオロベンゼンを3.9mL(34mmol,10eq.)加えて130℃で15時間撹拌した。放冷後、精製水を150mLと1規定の塩酸を20mL加えて酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製して白色固体(化合物(6))、収量:0.41g(1.4mmol,41%)を得た。
【0251】
上記合成で得られた化合物(6)(1−(6,7,8,9−テトラフルオロジベンゾ[b,e][1,4]ジオキシン−2−イル)エタノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.56(3H,s),7.05(1H,d,J=8.4Hz),7.59(1H,d,J=2.0Hz),7.64(1H,dd,J=8.4,2.0Hz).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ26.4,116.96,117.02,126.1,128.5(2C,dm,J=22Hz),134.7,136.8(2C,dm,J=249Hz),137.6(2C,dm,J=245Hz),140.0,143.6,195.4.
IR(KBr):1687(C=O)cm
−1.
【0252】
【化59】
【0253】
≪実施例16:含フッ素化合物(7)の合成≫
100mLの二口ナスフラスコに、3,4−ジヒドロキシアセトフェノンを2.91g(19.1mmol,1.0eq.)、炭酸カリウムを5.28g(38.2mmol,2.0eq.)、ドライアセトニトリルを30mL入れ、窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した後、3−ブロモ−1−プロパノールを5.33g(38.3mmol,2.0eq.)加えて60℃で15時間撹拌した。放冷後、精製水を200mLと1規定の塩酸を35mL加えて酢酸エチル(150mL×4)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製して白色固体(化合物(VII1))、収量:2.49g(9.29mmol,49%)を得た。
【0254】
上記合成で得られた化合物(VII1)(3,4−ビス(3−ヒドロキシプロポキシ)アセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.09(2H,quint.,J=5.4Hz),2.10(2H,quint.,J=5.4Hz),2.56(3H,s),2.59(1H,t,J=5.8Hz),2.78(1H,t,J=5.8Hz),3.87(2H,q,J=5.5Hz),3.88(2H,q,J=5.5Hz),4.25(2H,t,J=5.7Hz),4.26(2H,t,J=5.7Hz),6.90(1H,d,J=8.4Hz),7.53(1H,d,J=2.0Hz),7.58(1H,dd,J=8.4,2.0Hz).
Anal. Calcd for C
14H
20O
5:C,62.67;H,7.51. Found:C,62.93;H,7.57.
【0255】
【化60】
【0256】
次に、100mLの二口ナスフラスコに、化合物(VII1)を0.948g(3.53mmol,1.0eq.)、炭酸セシウムを2.32g(7.12mmol,2.0eq.)、ドライDMFを10mL入れ、窒素雰囲気下、室温で10分撹拌した後、ヘキサフルオロベンゼンを13.1g(70.5mmol,20eq.)加えて80−100℃で64時間撹拌した。放冷後、精製水を50mL加えて酢酸エチル(30mL×3)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して白色固体(化合物(VII2))、収量:1.40g(2.33mmol,66%)を得た。
【0257】
上記合成で得られた化合物(VII2)(3,4−ビス(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)アセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.27(2H,quint.,J=6.1Hz),2.30(2H,quint.,J=6.1Hz),2.56(3H,s),4.25(2H,t,J=6.1Hz),4.27(2H,t,J=6.1Hz),4.37(2H×2,t,J=6.1Hz),6.93(1H,d,J=8.4Hz),7.55(1H,d,J=2.0Hz),7.58(1H,dd,J=8.4Hz,2.0Hz).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ26.2,29.8,29.9,64.8,65.0,72.0(t,J=3.1Hz),72.2(t,J=2.9Hz),111.9,112.7,123.6,130.8,133.6(2C,m),137.4(2C,dm,J=255Hz),138.0(4C,dm,J=253Hz),141.8(4C,dm,J=249Hz),148.5,153.1,196.8.
【0258】
【化61】
【0259】
次に、50mLナスフラスコに、化合物(VII2)を0.515g(0.858mmol,1.0eq.)、酢酸を5mL入れて、−30℃下で発煙硝酸を5mLゆっくりと滴下した後、反応溶液を冷精製水50mLに注ぎ、酢酸エチル(10mL×4)で抽出し、有機層を5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL×4)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、再結晶(酢酸エチル1mL,ヘキサン3mL)した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、再結晶と合わせて白色固体(化合物(VII3))、収量:0.412g(0.638mmol,75%)を得た。
【0260】
上記合成で得られた化合物(VII3)(2−ニトロ−4,5−ビス(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)アセトフェノン)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ2.31(2H,quint.,J=6.0Hz),2.32(2H,quint.,J=6.0Hz),2.50(3H,s),4.31(2H×2,t,J=6.1Hz),4.35(2H,t,J=5.6Hz),4.36(2H,t,J=5.6Hz),6.80(1H,s),7.65(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):29.6,30.4(2C),65.4(2C),71.6(t,2.6Hz),71.7(t,2.6Hz),108.5,110.0,133.0,133.5(2C,t,J=13Hz),137.5(2C,dt,J=255,16Hz),138.0(4C,dt,J=255,16Hz),138.6,141.8(4C,dm,J=249Hz),149.1,153.6,200.0.
【0261】
【化62】
【0262】
次に、30mLのナスフラスコに、化合物(VII3)を0.250g(0.387mmol,1.0eq.)、THFを3mL、メタノールを3mL入れて、氷冷しながら水素化ホウ素ナトリウムを0.022g(0.582mmol,1.5eq.)ゆっくり加え、0℃から室温で30分撹拌した。濃縮後、精製水を10mLと2規定の塩酸を1mL加えてクロロホルム(10mL×3)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して黄色固体(化合物(VII4))、収量:0.211g(3.26mmol,84%)を得た。
【0263】
上記合成で得られた化合物(VII4)(1−(2−ニトロ−4,5−ビス(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)フェニル)エタノール)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.56(3H,d,J=6.4Hz),2.24(1H,d,J=3.8Hz),2.29(2H,quint.,J=6.1Hz),2.31(2H,quint.,J=6.1Hz),4.26(2H,t,J=6.1 Hz),4.34(2H,t,J=6.1 Hz),4.36(2H,t,J=6.0Hz),4.37(2H,t,J=6.0Hz),5.56(1H,qd,J=6.4,3.8Hz),7.34(1H,s),7.61(1H,s).
【0264】
【化63】
【0265】
次に、100mLの二口ナスフラスコに、EDC・HClを0.047g(0.245mmol,1.6eq.)とドライTHFを1mL入れ、窒素雰囲気下、氷浴で20分間撹拌した後、化合物(VII4)を0.101g(0.156mmol,1.0eq.)、4−ペンテン酸を0.027g(0.270mmol,1.1eq.)、DMAPを0.021g(0.172mmol,1.1eq.)を含むドライTHF1mLの混合溶液を滴下し、窒素雰囲気下、氷浴で10分間撹拌後、室温で6時間撹拌した。濃縮後、精製水(10mL)と2規定の塩酸(1mL)を加えてクロロホルム(10mL×3)で抽出し、有機層を5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して黄色固体(化合物(VII5))、収量:0.093g(0.127mmol,81%)を得た。
【0266】
上記合成で得られた化合物(VII5)(4−ペンテン酸1−(2−ニトロ−4,5−ビス(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)フェニル)エチル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.61(3H,d,J=6.4Hz),2.26−2.52(8H,m),4.24−4.35(4H,m),4.36(1H,t,J=6.1Hz),4.38(1H,t,J=6.1Hz),4.98(1H,dq,J=10,1.5Hz),5.03(1H,dq,J=17,1.6Hz),5.80(1H,ddq,J=17,10,6.2Hz),6.48(1H,q,J=6.4Hz),7.06(1H,s),7.61(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):22.1,28.8,29.6,29.7,33.7,65.1,65.2,68.3,71.8(t,3.1Hz),71.8(t,3.3Hz),109.5,109.7,115.6,133.5(2C,m),133.5,136.5,137.5(2C,dm,J=258Hz),138.0(4C,dm,J=252Hz),140.1,141.8(4C,dm,J=247Hz),147.4,153.2,171.7.
【0267】
【化64】
【0268】
次に、30mLの二口ナスフラスコに、化合物(VII5)を0.048g(0.0658mmol,1.0eq.)入れて1時間真空乾燥した後、ドライTHF0.5mLで溶解し、トリメトキシシランを0.082g(0.671mmol,10eq.)とカルステッド触媒をパスツールピペットで3滴加え、窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。濃縮後、中圧カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=5:1:0.06)で精製して黄色粘体(含フッ素化合物(7))、収量:0.028g(0.0329mmol,50%)を得た。
【0269】
上記合成で得られた含フッ素化合物(7)(5−トリメトキシシリル)ペンタン酸1−(2−ニトロ−4,5−ビス(3−(ペンタフルオロフェニルオキシ)プロポキシ)フェニル)エチル)の同定を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ0.60−0.66(2H,m),1.39−1.48(2H,m),1.61(3H,d,J=6.4Hz),1.66(2H,quint.,J=7.6Hz),2.25−2.41(6H,m),3.54(9H,s),4.23−4.33(4H,m),4.35(2H,t,J=6.0Hz),4.37(2H,t,J=6.0Hz),6.46(1H,q,J=6.4Hz),7.05(1H,s),7.61(1H,s).
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):8.94,22.1,22.3,28.1,29.6,29.6,34.1,50.5(3C),65.0,65.2,68.1,71.8(t,3.6Hz),71.8(t,3.3Hz),109.5,109.6,133.5(2C,m),133.6,137.4(2C,dm,J=252Hz),138.0(4C,dm,J=250Hz),140.1,141.8(4C,dm,J=248Hz),147.4,153.2,172.3.
【0270】
【化65】
【0271】
≪実施例17〜20:含フッ素化合物(5)及び(7)による基板の表面修飾≫
上記の合成方法によって得られた、含フッ素化合物(5)及び(7)を用いて基板の表面修飾を行った。
【0272】
[前処理工程]
シリコンウェハ(3cm×1.5cm)、石英ガラス(4cm×1cm)について、UV−オゾンクリ−ナ−により前処理を行った。
シリコンウェハ、石英ガラスを純水、メタノ−ル、アセトンでそれぞれ5分間超音波洗浄した。基板を取り出し窒素気流で乾燥させ、UVオゾンクリ−ナ−で前処理した。UV−オゾンクリ−ナ−の酸素注入は流量6L/minで3分間注入し、UV照射は1.5時間とし、生じたオゾンは窒素を流量6L/minで10分間流して排出した。
シリコンウェハは鏡面にUVを1.5時間照射し、石英ガラスは1.5時間ずつ両面を前処理した。
【0273】
[表面処理工程]
続いて、50mL太口ナスフラスコに含フッ素化合物(5)または(7)の1mMドライトルエン溶液20mL、酢酸57μL(0.997mmol,50mM)、前処理した基板を入れ、窒素雰囲気下、室温で24時間浸漬した。基板をメタノ−ルで洗浄し、メタノ−ル、クロロホルムで各10分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した。
【0274】
得られた基板表面の水の静的接触角を基板種類等と共に表6に記載する。また、表6中に、前記実施例3〜4、8〜11及び比較例1〜2の静的接触角と基板種類等を併記する。修飾剤に、含フッ素化合物(5)を用いた実施例17〜18及び含フッ素化合物(7)を用いた実施例19〜20は、比較例1に比べて接触角が大きく、いずれも疎水性を示したことから基板上が修飾されたと考えられる。実施例17〜20と、比較例2とを比べると、比較例2のほうが接触角は大きいものの、後述するように、比較例2は有機半導体の塗布性が劣るものであった。また、XPSより、修飾後の基板においてF(フッ素)及びニトロ基由来のピークの出現が見られたことからも修飾できたことを示した(
図13〜14)。また、石英ガラスにおいてUVから算出した表面密度は、実施例18については4.3×10
14molecules/cm
2であり、実施例20については2.7×10
14molecules/cm
2であった。
【0275】
【表6】
【0276】
≪修飾基板への光照射≫
その後、実施例17〜20について、得られた修飾基板の光分解性を調べるために、超高圧水銀灯で、光学フィルターを通して365nmの波長の光を照度50mW/cm
2で光照射した。光照射した基板をメタノール、クロロホルムで洗い流し、クロロホルムで5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した。
光分解は含フッ素化合物(5)は下記式(5)−1のように、含フッ素化合物(7)は下記式(7)−1のようになされ、光照射するとニトロベンジル基の光分解によりニトロソ化合物が脱離し、基板表面にカルボキシ基を導入できると思われる。
【0277】
【化66】
【0278】
【化67】
【0279】
図11〜12に実施例17〜20の光照射時の水の静的接触角の経時変化を示す。水の静的接触角の変化より、照射時間に伴い接触角は減少し、最終的に54〜59°になったことから、光分解が進行したことが確認できた。
図11の上段のグラフは、実施例17の修飾基板について、光照射して水の静的接触角の経時変化を表すものである。
図11の下段のグラフは、実施例18の修飾基板について、光照射して水の静的接触角の経時変化を表すものである。
図12の上段のグラフは、実施例19の修飾基板について、光照射して水の静的接触角の経時変化を表すものである。
図12の下段のグラフは、実施例20の修飾基板について、光照射して水の静的接触角の経時変化を表すものである。
図11〜12に示すとおり、実施例17〜20は光照射前後で接触角差が大きかった。
【0280】
また
図13は実施例17、
図14は実施例19の修飾基板について、光照射前後でのXPSスペクトル結果を示すものである。
図13〜14に示すとおり、光照射後にはF(フッ素)及びニトロ基由来のピークが消失したことから光分解性基が光照射により脱離したことが確認できた。
【0281】
実施例17について、光照射前後でXRR測定を行ったところ、光照射前は膜厚1.3nm(実測値、計算値は1.9nm)だったものが、光照射後には、膜厚0.76nm(実測値、計算値は0.8nm)に減少した。
このことからも、光照射により光分解性基が脱離したことが確認できた。
【0282】
≪有機薄膜トランジスタの作製≫
[基板の前処理]
電極付シリコンウェハを純水、メタノ−ル、アセトンで各5分間超音波洗浄した後、窒素気流で乾燥した。UV−オゾンクリ−ナ−にて、酸素を流量6L/minで3分間注入し、UVを1.5時間照射し、生じたオゾンを排出するため窒素を流量6L/minで10分間流した。
[使用した基板]
Au電極付シリコンウェハ
SiO
2膜厚:150nm
チャネル長:5、20、50μm
チャネル幅:500μm
【0283】
[実施例21〜22:含フッ素化合物(5)及び(7)による表面修飾]
1000mLのセパラブルフラスコ(口内径φ120mm筒型)に含フッ素化合物(5)又は(7)のいずれかの1mMドライトルエン溶液を40mL入れ、酢酸を125μL(2.20mmol、50mM)加え、修飾面を上にして前処理した基板を入れ、窒素雰囲気下室温で24時間浸漬した。基板を取り出し、メタノ−ルで洗浄後、メタノ−ル、クロロホルムで各10分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した。得られた各基板の水の接触角を測定した。各基板の水の接触角を表7に示す。
なお、実施例21の水の接触角は85±2°であり、実施例22の水の接触角は88±1°であった。実施例21〜22は接触角が大きく、疎水性を示したことから、
図2に示すようにドレイン電極13とソ−ス電極14の間に自己組織化単分子層10aが形成されたことが確認できた。
【0284】
[有機薄膜トランジスタの作製]
上記実施例21〜22の方法により表面修飾した金電極付シリコンウェハ基板、表面修飾を行わなかった金電極付シリコンウェハ基板(比較例5)(1枚にチャネル長:5、20、50μmで各4素子)を10°傾けた台にソ−ス電極側を低い位置に置き、前記化合物(20)の2wt%トルエン溶液を300μLドロップキャストし、自然乾燥させ、ソ−ス電極及びドレイン電極をつなぐように結晶薄膜を形成し、有機薄膜トランジスタを得た。
図3に本発明の有機薄膜トランジスタの一例を示す。
図3に示すように、疎水性の自己組織単分子層10aの領域に有機半導体11が塗布された有機薄膜トランジスタを形成した。
次いで、得られた有機薄膜トランジスタを105℃で30分間熱処理した。
【0285】
その後、前記実施例5、12〜13と同様の方法により、実施例21〜22の有機薄膜トランジスタについて、特性を評価した。その結果を表7に記載する。なお、表7中に前記実施例5、12〜13及び比較例5の結果を併記する。
【0286】
【表7】
【0287】
本発明の含フッ素化合物を用いて自己組織化単分子層を形成した有機薄膜トランジスタでは、有機半導体トランジスタ特性及び、移動度の向上が確認された。