【解決手段】半導体装置1は、配線基板10と、配線基板10の上面に実装された半導体素子20と、凹部33と貫通孔34とを有し、配線基板10の上面に搭載された放熱板30と、半導体素子20の上面に接合されるとともに、凹部33の底面33Aに接合された熱伝導部材40とを有する。熱伝導部材40は、半導体素子20と放熱板30との間に林立するように形成された線状のカーボンナノチューブ41と、半導体素子20の上面に接合され、カーボンナノチューブ41の下端部を被覆する合金層42と、凹部33の底面33Aに接合され、カーボンナノチューブ41の上端部を被覆する合金層43とを有する。貫通孔34は、平面視で熱伝導部材40と離間した位置から熱伝導部材40に近づく方向に貫通するように形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態を添付図面を参照して説明する。
なお、添付図面は、特徴を分かりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示し、一部の部材のハッチングを省略している。
【0010】
まず、半導体装置1の構造について説明する。
図1(a)に示すように、半導体装置1は、BGA(Ball Grid Array)型の配線基板10と、その配線基板10の上面に実装された半導体素子20と、配線基板10の上面に搭載された放熱板30と、半導体素子20と放熱板30とを熱的に接続する熱伝導部材40とを有している。
【0011】
配線基板10は、基板本体11と、接続用パッド12と、はんだボール13とを有している。基板本体11としては、接続用パッド12及びはんだボール13が基板内部を通じて相互に電気的に接続された構造を有していれば十分である。このため、基板本体11の内部には配線層が形成されていてもよく、配線層が形成されていなくてもよい。なお、基板本体11の内部に配線層が形成される場合には、複数の配線層が層間絶縁層を介して積層され、各配線層と各層間絶縁層に形成されたビアとによって接続用パッド12及びはんだボール13が電気的に接続されている。基板本体11としては、例えばコア基板を有するコア付きビルドアップ基板やコア基板を有さないコアレス基板等を用いることができる。
【0012】
接続用パッド12は、基板本体11の上面に形成されている。接続用パッド12の材料としては、例えば、銅(Cu)や銅合金を用いることができる。
はんだボール13は、基板本体11の下面に形成されている。はんだボール13の材料としては、例えば、鉛(Pb)を含む合金、錫(Sn)とCuの合金、Snと銀(Ag)の合金、SnとAgとCuの合金などを用いることができる。このはんだボール13は、例えば、マザーボード等と接続される外部接続端子として機能する。
【0013】
半導体素子20は、例えば、シリコン(Si)等からなる薄板化された半導体基板上に、半導体集積回路(図示略)が形成された素子形成面(ここでは、下面)側がパッシベーション膜で覆われ、その素子形成面に接続端子21が配設された構造を有している。また、半導体素子20は、素子形成面とは反対側の面(ここでは、上面)に金属膜22が形成された構造を有している。
【0014】
半導体素子20としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)チップやGPU(Graphics Processing Unit)チップなどのロジックチップを用いることができる。また、半導体素子20としては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)チップ、SRAM(Static Random Access Memory)チップやフラッシュメモリチップなどのメモリチップを用いることができる。半導体素子20の大きさは、例えば、平面視で10mm×10mm程度である。半導体素子20の厚さは、例えば、10〜50μmとすることができる。
【0015】
半導体素子20は、例えば、配線基板10にフリップチップ実装されている。すなわち、半導体素子20は、接続端子21を介して、配線基板10の接続用パッド12と電気的に接続されている。接続端子21としては、例えば、金(Au)バンプやはんだバンプを用いることができる。はんだバンプの材料としては、例えば、Pbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金などを用いることができる。また、金属膜22の材料としては、例えば、AuやAu合金を用いることができる。金属膜22の厚さは、例えば、0.01〜0.5μm程度とすることができる。
【0016】
半導体素子20の下面と配線基板10の上面との間にはアンダーフィル樹脂25が充填されている。アンダーフィル樹脂25の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂などの絶縁樹脂を用いることができる。
【0017】
半導体素子20の上方には、放熱板30が配置されている。放熱板30はヒートスプレッダとも呼ばれる。放熱板30の材料としては、熱伝導率の良好な材料であることが好ましい。例えば、放熱板30の材料としては、Cu、Ag、アルミニウム(Al)又はそれらの合金等を用いることができ、本実施形態ではAlを用いる。なお、放熱板30の材料としては、熱伝導率が良好な材料であれば、金属以外の材料を用いることもできる。
【0018】
放熱板30は、配線基板10上に搭載されている。放熱板30は、例えば、半導体素子20を取り囲むように配線基板10の周縁部に接着剤35によって接着されている。接着剤35の材料としては、例えば、シリコンポリマー系の樹脂を用いることができる。
【0019】
放熱板30は、板状に形成された板状部31と、この板状部31の周囲に一体的に形成され、底面が接着剤35を介して配線基板10に接合された枠状の側壁部32とを有している。これら板状部31と側壁部32とによって、放熱板30には凹部33が形成されている。この凹部33と配線基板10とによって形成された収容部A1に半導体素子20が収容されている。なお、放熱板30の大きさは、例えば、平面視で20mm×20mm〜50mm×50mm程度である。また、放熱板30の板状部31の厚さは、例えば、0.5〜4mm程度とすることができる。
【0020】
放熱板30には、例えば、板状部31を厚さ方向に貫通する貫通孔34が形成されている。すなわち、板状部31には、当該板状部31の上面と凹部33の底面33Aとの間を貫通する貫通孔34が形成されている。貫通孔34は、例えば、平面視で熱伝導部材40から離間した位置から熱伝導部材40に近づく方向に貫通するように形成されている。本例の貫通孔34は、熱伝導部材40と平面視で重ならない位置から熱伝導部材40に近づくように、板状部31の上面に対して斜めに貫通するように形成されている。ここで、平面視とは、対象物(ここでは、板状部31)を板状部31の上面の鉛直方向(垂直方向)から視ることをいう。
【0021】
熱伝導部材40は、半導体素子20の上面と放熱板30の凹部33の底面33Aとの間に設けられている。そして、半導体素子20の上面は、熱伝導部材40を介して放熱板30の凹部33の底面33Aに熱的に結合されている。これにより、半導体素子20から発生する熱は、熱伝導部材40を介して放熱板30に放熱される。例えば、半導体素子20が動作すると、100〜110℃程度の熱を発する。半導体素子20から発する熱は、半導体素子20上に設けられた熱伝導部材40を介して放熱板30に伝導される。このように、熱伝導部材40は、半導体素子20と放熱板30とを直接接触させずに熱的に接続する手段として機能する。
【0022】
次に、熱伝導部材40の構造について説明する。
図1(b)に示すように、熱伝導部材40は、カーボンナノチューブ41と、合金層42と、合金層43とを有している。
【0023】
カーボンナノチューブ41は、合金層42と合金層43との間に林立するように多数形成されている。多数のカーボンナノチューブ41は、例えば、合金層42の上面に、熱伝導方向(例えば、半導体素子20の上面の鉛直方向)に林立するように形成されている。各カーボンナノチューブ41は、例えば、直径が0.7〜300nm程度の略円筒形状(線状)をした炭素の結晶である。また、カーボンナノチューブ41は、熱伝導性が高い(例えば、3000W/m・K程度)熱伝導性物質である。すなわち、カーボンナノチューブ41は、線状の熱伝導性物質である。カーボンナノチューブ41としては、単層カーボンナノチューブであってもよいし、多層カーボンナノチューブであってもよい。また、線状の熱伝導物質としては、カーボンナノチューブ以外に、例えば、フラーレンやグラファイト等を用いることができる。なお、カーボンナノチューブ41の長さは、例えば、40〜50μm程度とすることができる。カーボンナノチューブ41の上端部の位置は、例えば、所定のばらつきを有する。最短のカーボンナノチューブ41と最長のカーボンナノチューブ41のそれぞれの上端部の位置の相対的な差は、例えば、2μm程度である。
【0024】
合金層42は、カーボンナノチューブ41と接合されるとともに、半導体素子20と接合されている。合金層42は、例えば、カーボンナノチューブ41の下端部を被覆するように形成されている。多数のカーボンナノチューブ41は、合金層42により、図中横方向(半導体素子20の上面と略平行な平面方向)に連結されて一体化されている。このように、多数のカーボンナノチューブ41を平面方向に連結させ一体化することにより、熱伝導部材40における平面方向への熱伝導性を向上することができる。
【0025】
合金層42は、例えば、半導体素子20の上面に形成されている。合金層42の下面は、半導体素子20の上面と接触している。これにより、合金層42と半導体素子20とを面同士で接触させることができるため、合金層42と半導体素子20との間の接触熱抵抗を小さくすることができる。また、合金層42の一部は、金属膜22の少なくとも一部と同一平面上に形成されている。本例の合金層42は、その外側面の一部が金属膜22によって被覆されている。換言すると、金属膜22は、合金層42の外側面の一部を被覆して合金層42を囲むように形成されている。なお、合金層42の厚さは、例えば、5〜7μm程度とすることができる。
【0026】
合金層42の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)とパラジウム(Pd)と金属膜22を構成する金属元素(ここでは、Au)とを含む合金、Alとニッケル(Ni)と金属膜22を構成する金属元素(ここでは、Au)とを含む合金を用いることができる。合金層42の融点は、例えば、鉛フリーはんだの融点(216〜219℃程度)やインジウムの融点(156℃)よりも高い融点を有する。例えば、合金層42の融点は800〜1000℃程度である。
【0027】
合金層42は、例えば、金属膜22を構成する金属元素(ここでは、Au)の一部が合金化されて形成された金属層である。このため、合金層42は、半導体素子20の一部である金属膜22と金属的に一体化されている。これにより、合金層42と半導体素子20とを単に物理的に接触させただけの場合に比べて、合金層42と半導体素子20との間の接触熱抵抗を小さくすることができる。
【0028】
合金層43は、カーボンナノチューブ41と接合されるとともに、放熱板30と接合されている。合金層43は、例えば、カーボンナノチューブ41の上端部を被覆するように形成されている。多数のカーボンナノチューブ41は、合金層43により、図中横方向(凹部33の底面33Aと略平行な平面方向)に連結されて一体化されている。このように、多数のカーボンナノチューブ41を平面方向に連結させ一体化することにより、熱伝導部材40における平面方向への熱伝導性を向上することができる。
【0029】
合金層43は、例えば、凹部33の底面33A上に形成されている。合金層43の上面は、放熱板30の下面(具体的には、凹部33の底面33A)と接触している。これにより、合金層43と放熱板30とを面同士で接触させることができるため、合金層43と放熱板30との間の接触熱抵抗を小さくすることができる。合金層43の厚さは、例えば、カーボンナノチューブ41の長さのばらつきを吸収するために、最短のカーボンナノチューブ41と最長のカーボンナノチューブ41のそれぞれの先端部の位置の相対的な差よりも厚くすることが好ましい。例えば、合金層43の厚さは、2〜5μm程度とすることができる。
【0030】
合金層43の材料としては、例えば、パラジウム(Pd)と放熱板30を構成する金属元素(ここでは、Al)とを含む合金を用いることができる。合金層43の融点は、例えば、鉛フリーはんだの融点やインジウムの融点よりも高い融点を有する。例えば、合金層43の融点は800〜1000℃程度である。
【0031】
合金層43は、放熱板30を構成する金属元素(ここでは、Al)の一部が合金化されて形成された金属層である。このため、合金層43は、放熱板30と金属的に一体化されている。これにより、合金層43と放熱板30とを単に物理的に接触させただけの場合に比べて、合金層43と放熱板30との間の接触熱抵抗を小さくすることができる。
【0032】
次に、半導体装置1の製造方法について説明する。ここでは、まず、熱伝導部材40の製造方法について説明する。
図2(a)に示す工程では、まず、基材50を準備する。このとき、基材50としては、熱伝導部材40が多数個取れる大判の基材が使用される。すなわち、基材50は、熱伝導部材40が形成される個別領域C1を複数有している。基材50の材料としては、例えば、シリコンや銅を用いることができる。
【0033】
次に、
図2(b)に示す工程では、基材50の上面に多数のカーボンナノチューブ41を形成する。例えば、化学気相成長法(CVD:chemical vapor deposition)により、多数のカーボンナノチューブ41を、基材50の上面に林立するように形成する。
【0034】
詳述すると、まず、スパッタ法等により、基材50の上面に金属触媒層(図示略)を形成する。金属触媒層の材料としては、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)やニッケル(Ni)等を用いることができる。金属触媒層の厚さは、例えば、数nm程度とすることができる。
【0035】
次いで、金属触媒層が形成された基材50を所定の圧力及び温度に調整された加熱炉に入れ、CVD法により金属触媒層上にカーボンナノチューブ41を形成する。加熱炉の圧力及び温度は、例えば、0.1〜1.0kPa程度及び500〜800℃程度とすることができる。プロセスガスとしては、例えば、アセチレンガスを用いることができる。キャリアガスとしては、例えば、アルゴンガスや水素ガスを用いることができる。
【0036】
カーボンナノチューブ41は、金属触媒層上に、基材50の上面に略直角な方向に林立するように形成される。基材50の上面からカーボンナノチューブ41の上端部(先端部)までの長さは、カーボンナノチューブ41の成長時間によって制御することができる。但し、カーボンナノチューブ41の長さは、所定のばらつきを有する。なお、カーボンナノチューブ41は、アーク放電法やレーザ蒸発法などにより形成することもできる。
【0037】
次に、
図2(c)に示す工程では、カーボンナノチューブ41の上端部を被覆するように上端部側に金属層51及び金属層52を順次形成する。金属層51,52は、例えば、スパッタ法やめっき法により形成することができる。金属層51,52の材料としては、例えば、自己発熱性を有する金属を用いることができる。例えば、金属層51の材料としてアルミニウム(Al)を用いることができ、金属層52の材料としてパラジウム(Pd)を用いることができる。これら金属層51,52は、例えば、隣接するカーボンナノチューブ41の間に形成された貫通孔41X内に入り込むように形成されている。これにより、金属層51,52によってカーボンナノチューブ41の上端部が被覆される。
図2(c)では、簡略化のために、金属層51,52を一層ずつのみ図示した。但し、実際には、
図2(d)に示すように、複数層(ここでは、8層)のAl膜51A〜51Hと、複数層(ここでは、8層)のPd膜52A〜52Hとが交互に積層される。すなわち、カーボンナノチューブ41の上端部側にAl膜51Aが形成され、そのAl膜51A上に、Pd膜52A、Al膜51B、Pd膜52B、Al膜51C、Pd膜52C、Al膜51D、Pd膜52D、Al膜51E、Pd膜52E、Al膜51F、Pd膜52F、Al膜51G、Pd膜52G、Al膜51H、Pd膜52Hが順に積層される。これらAl膜51A〜51H及びPd膜52A〜52Hは、薄膜である。各Al膜51A〜51Hの厚さは例えば20〜30nm程度とすることができ、各Pd膜52A〜52Hの厚さは例えば20〜30nm程度とすることができる。この工程により、多数のカーボンナノチューブ41と金属層51,52とが図中横方向(基材50の上面と略平行な平面方向)に連結され一体化される。なお、以下の図では、
図2(c)と同様に、一層の金属層51と一層の金属層52のみを図示する。
【0038】
続いて、
図3(a)に示す工程では、上端部に金属層51,52が形成されたカーボンナノチューブ41を、
図2(c)に示した基材50から機械的に剥離する。換言すると、カーボンナノチューブ41から基材50を除去する。これにより、カーボンナノチューブ41の下端部が露出される。
【0039】
次いで、
図3(b)に示す工程では、カーボンナノチューブ41の下端部を被覆するように下端部側に金属層53及び金属層54を順次形成する。金属層53,54は、例えば、スパッタ法やめっき法により形成することができる。金属層53,54の材料としては、例えば、自己発熱性を有する金属を用いることができる。例えば、金属層53の材料としてパラジウム(Pd)を用いることができ、金属層54の材料としてアルミニウム(Al)を用いることができる。これら金属層53,54は、例えば、隣接するカーボンナノチューブ41の間に形成された貫通孔41X内に入り込むように形成されている。これにより、金属層53,54によってカーボンナノチューブ41の下端部が被覆される。
図3(b)では、簡略化のために、金属層53,54を一層ずつのみ図示した。但し、実際には、
図3(c)に示すように、複数層(ここでは、8層)のPd膜53A〜53Hと、複数層(ここでは、8層)のAl膜54A〜54Hとが交互に積層される。すなわち、カーボンナノチューブ41の下端部側にPd膜53Aが形成され、そのPd膜53A下に、Al膜54A、Pd膜53B、Al膜54B、Pd膜53C、Al膜54C、Pd膜53D、Al膜54D、Pd膜53E、Al膜54E、Pd膜53F、Al膜54F、Pd膜53G、Al膜54G、Pd膜53H、Al膜54Hが順に積層される。これらPd膜53A〜53H及びAl膜54A〜54Hは、薄膜である。各Pd膜53A〜53Hの厚さは例えば20〜30nm程度とすることができ、各Al膜54A〜54Hの厚さは例えば20〜30nm程度とすることができる。この工程により、多数のカーボンナノチューブ41と金属層53,54とが図中横方向に連結され一体化される。なお、以下の図では、
図3(b)と同様に、一層の金属層53と一層の金属層54のみを図示する。
【0040】
次に、
図3(d)に示す工程では、
図3(b)に示した構造体を破線で示した切断位置に沿って切断する、つまり、
図3(b)に示した構造体を個別領域C1毎に切断する。これにより、カーボンナノチューブ41の上端部側に金属層51,52が形成され、下端部側に金属層53,54が形成された熱伝導部材40Aが複数個得られる。
【0041】
続いて、
図4(a)に示す工程では、板状部31と枠状の側壁部32とを有する放熱板30を準備する。放熱板30には、例えばプレス加工や機械切削により、凹部33及び貫通孔34が形成されている。この凹部33の底面33A上に熱伝導部材40Aが載置される。具体的には、金属層52(Pd層)が放熱板30(Al層)に接触するように、熱伝導部材40Aが底面33A上に載置される。
【0042】
また、
図4(a)に示す工程では、半導体素子20が実装された配線基板10を準備する。ここでは、図示を省略して詳細な説明を割愛するが、配線基板10は例えば以下のような方法で製造される。すなわち、接続用パッド12を有する配線基板10を形成し、その接続用パッド12に半導体素子20の接続端子21をフリップチップ実装する。次に、配線基板10と半導体素子20との間にアンダーフィル樹脂25を形成する。このとき、半導体素子20の上面には、その上面全面を被覆する金属膜22が形成されている。この金属膜22は、半導体素子20の実装前に形成してもよいし、半導体素子20の実装後に形成してもよい。なお、金属膜22は、例えば、スパッタ法やめっき法により形成することができる。
【0043】
次いで、配線基板10の上面の外周縁に沿って枠状に接着剤35を塗布する。そして、配線基板10及び半導体素子20上に、熱伝導部材40Aが載置された放熱板30を配置する。具体的には、放熱板30の側壁部32の底面が接着剤35に対向するように、且つ、熱伝導部材40Aの金属層54(Al層)が金属膜22(Au層)に対向するように、配線基板10上に放熱板30及び熱伝導部材40Aを配置する。
【0044】
次に、
図4(b)に示す工程では、側壁部32の底面を接着剤35に接触させ、金属層54を金属膜22に接触させて押圧する。その後、接着剤35を硬化させることにより、配線基板10に放熱板30を装着する。すなわち、半導体素子20の上面と凹部33の底面33Aとの間に熱伝導部材40Aを配置した状態で、配線基板10の上面に放熱板30を搭載する。但し、このときの熱伝導部材40Aは、金属層52の上面が放熱板30の凹部33の底面33Aに物理的に単に接触し、金属層54の下面が金属膜22の上面に物理的に単に接触しているだけである。なお、放熱板30の貫通孔34は、平面視で熱伝導部材40Aと離間した位置から、金属層53,54の端部に向かう方向に斜めに形成されている。
【0045】
続いて、
図5(a)に示す工程では、例えば、放熱板30の貫通孔34を通じて、放熱板30及び配線基板10によって形成された収容部A1内にプローブ60を挿入し、プローブ60の先端を金属層53,54の端部(金属層54と金属膜22との境界部分)に近づける。次いで、プローブ60を用いて、例えば、金属層53,54の端部にスパークを発生させる。このスパークにより、金属層53,54の端部において、金属層53を構成する金属元素(ここでは、Pd)と、金属層54を構成する金属元素(ここでは、Al)と、金属膜22を構成する金属元素(ここでは、Au)との合金(例えば、金属間化合物)の合成が開始される。このように構成元素から直接化合物が合成されると、大量の反応熱が放出され、その反応熱により温度が1500〜3000℃程度まで上昇する。そして、合成時に放出される反応熱によって隣接する元素同士の化学反応が連鎖的に誘起されて合金が合成されていく。これにより、
図5(b)に示すように、カーボンナノチューブ41と半導体素子20との間にPdとAlとAuとの合金からなる合金層42が形成され、合金層42が半導体素子20と接合される。ここで、合金層42は、
図5(a)に示した金属層53を構成する金属元素と、金属層54を構成する金属元素と、金属膜22を構成する金属元素とが合金化されて生成される。すなわち、合金層42は、熱伝導部材40Aの一部である金属層53,54と、半導体素子20の一部である金属膜22とが合金化されて生成される。このため、合金層42の形成により、熱伝導部材40と半導体素子20とが金属的に一体化される。
【0046】
また、上記合成時に放出される反応熱は厚さ方向にも伝播されるため、その反応熱によって
図5(a)に示した金属層51,52及び放熱板30においても合成反応が進行する。すなわち、上記反応熱が金属層51,52に伝播されると、金属層51を構成する金属元素(ここでは、Al)と、金属層52を構成する金属元素(ここでは、Pd)と、放熱板30を構成する金属元素(ここでは、Al)との合金の合成が開始される。ここでも同様に、合成反応により、大量の反応熱が放出され、その反応熱により温度が1500〜3000℃程度まで上昇する。そして、合成時に放出される反応熱によって隣接する元素同士の化学反応が連鎖的に誘起されて合金が合成されていく。これにより、
図5(b)に示すように、カーボンナノチューブ41と放熱板30との間にAlとPdとの合金からなる合金層43が形成され、合金層43が放熱板30と接合される。ここで、合金層43は、
図5(a)に示した金属層51を構成する金属元素と、金属層52を構成する金属元素と、放熱板30を構成する金属元素とが合金化されて生成される。すなわち、合金層43は、熱伝導部材40Aの一部である金属層51,52と、放熱板30の表面部分の一部とが合金化されて生成される。このため、合金層43の形成により、熱伝導部材40と放熱板30とが金属的に一体化される。
【0047】
本工程では、上記スパークにより金属層53,54の端部において自己発熱反応が誘起され、その自己発熱によって合成反応が自発的に伝播されて合金層42,43が生成され、半導体素子20と放熱板30との間に熱伝導部材40が形成される。このとき、本例では、金属層53と金属層54とを、薄膜のPd膜53A〜53Hと薄膜のAl膜54A〜54H(
図3(c)参照)とを交互に多数積層する構造とした。また、金属層51と金属層52とを、薄膜のAl膜51A〜51Hと薄膜のPd膜52A〜52H(
図2(d)参照)とを交互に多数積層する構造とした。これらにより、金属層51〜54を各々一層ずつで構成する場合に比べて発熱量を増加することができ、自己発熱の伝播性を向上させることができる。
【0048】
以上説明した自己発熱反応では、数十ミリ秒という短い時間で合金を合成することができる。すなわち、合金層42,43を短時間で形成することができる。また、自己発熱反応では、自己発熱によって未反応部分に合成反応が自発的に伝播し、化合物の合成に要する誘起エネルギーを自己の反応熱で補いながら合成が進行するため、例えば、
図5(a)に示した構造体を高温の炉内に長時間保持する必要がない。さらに、自己発熱反応では、例えば1500〜3000℃程度の高温下において合金層42,43の生成が完了するため、融点の高い合金層42,43を生成することができる。
【0049】
その後、はんだボール13を形成することにより、
図1に示した半導体装置1が製造される。
以上説明した本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
【0050】
(1)カーボンナノチューブ41の下端部を被覆する金属層53,54を形成し、自己発熱反応を利用して、金属層53,54と半導体素子20の一部である金属膜22とを合金化して合金層42を形成する。また、カーボンナノチューブ41の上端部を被覆する金属層51,52を形成し、自己発熱反応を利用して、金属層51,52と放熱板30の一部とを合金化して合金層43を形成する。これらにより、合金層42と半導体素子20とが金属的に一体化され、合金層43と放熱板30とが金属的に一体化される。したがって、半導体素子20と熱伝導部材40との間の接触熱抵抗を低減することができ、放熱板30と熱伝導部材40との間の接触熱抵抗を低減することができる。このため、半導体素子20から発する熱を、熱伝導部材40を介して放熱板30に効率良く伝導することができる。ひいては、半導体装置1における放熱性を向上させることができる。
【0051】
(2)貫通孔34を、平面視で熱伝導部材40Aと離間した位置から、熱伝導部材40A(金属層53,54)の端部に近づく方向に貫通するように形成した。このため、貫通孔34から収容部A1に挿入したプローブ60を、熱伝導部材40の端部に好適に近づけることができる。さらに、プローブ60を用いて、熱伝導部材40の端部にスパークを好適に発生させることができる。換言すると、所望の位置以外の部分(例えば、半導体素子20の角部など)にスパークが発生することを好適に抑制することができる。
【0052】
(3)貫通孔34から挿入したプローブ60を用いて、熱伝導部材40の端部に自己発熱反応を誘起させ、合金層42,43を形成するようにした。これにより、数十ミリ秒という短い時間で合金層42,43を形成することができる。また、製造過程の構造体(例えば、
図5(a)に示した構造体)を高温の炉内に長時間保持することなく、合金層42,43を形成することができる。
【0053】
(4)さらに、融点の高い合金層42,43を生成することができる。これにより、合金層42,43を形成した後に、リフロー等の熱処理を実施する場合であっても、合金層42,43が溶融することを好適に抑制することができ、カーボンナノチューブ41と合金層42,43との間に破断等が生じることを好適に抑制することができる。
【0054】
(5)金属層51,52を、薄膜のAl膜51A〜51Hと薄膜のPd膜52A〜52H(
図2(d)参照)とを交互に多数積層する構造とし、金属層53,54を、薄膜のPd膜53A〜53Hと薄膜のAl膜54A〜54H(
図3(c)参照)とを交互に多数積層する構造とした。これにより、自己発熱反応において、金属層51〜54を各々一層ずつで構成する場合に比べて発熱量を増加することができ、自己発熱の伝播性を向上させることができる。
【0055】
(6)熱伝導部材40を、カーボンナノチューブ41の下端部が合金層42と接合し、カーボンナノチューブ41の上端部が合金層43と接合する構造とした。そして、合金層42を半導体素子20に接合し、合金層43を放熱板30に接合するようにした。これにより、カーボンナノチューブ41が熱伝導方向に林立されるため、熱伝導性を向上させることができる。また、高価なインジウム等を使用する必要がないため、熱伝導部材40のコストを低減することができる。
【0056】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、半導体素子20の上面に合金層42を形成するようにした。これに限らず、合金層42と半導体素子20との間に金属膜22を介在させるようにしてもよい。すなわち、合金層42を金属膜22上に形成するようにしてもよい。この場合には、例えば、合金層42の直下に形成される金属膜22は、合金層42の外側面を被覆する金属膜22よりも薄く形成されている。すなわち、この場合の合金層42は、金属層53,54と、金属層54に接触される金属膜22の厚さ方向の一部とが合金化されて形成されている。例えば、合金層42を形成する前の金属膜22を厚く形成することにより、合金層42と半導体素子20との間に金属膜22を介在させることができる。
【0057】
・上記実施形態における金属膜22を、複数種類の金属膜を積層した構造としてもよい。例えば、半導体素子20の上面に、チタン(Ti)からなるTi膜と、白金(Pt)からなるPt膜と、金(Au)からなるAu膜とを順に積層した金属膜22を形成するようにしてもよい。この場合において、Ti膜、Pt膜及びAu膜の一部から合金層42を形成するようにしてもよい。例えば、合金層42を、金属層53,54を構成する金属元素と、Au膜を構成する金属元素(Au)と、Pt膜を構成する金属元素(Pt)とを合金化して生成するようにしてもよい。この場合には、合金層42と半導体素子20との間に、少なくともTi膜が介在される。
【0058】
・上記実施形態における金属膜22を省略してもよい。この場合の合金層42は、金属層53を構成する金属元素と、金属層54を構成する金属元素と、半導体素子20を構成する元素(例えば、シリコン)とを含む合金からなる。
【0059】
・上記実施形態における半導体素子20の上面全面に熱伝導部材40が接触するように熱伝導部材40を形成してもよい。この場合には、合金層42の外側面を被覆する金属膜22は無くなる。
【0060】
・上記実施形態における放熱板30の表面のうち少なくとも熱伝導部材40Aが接触される部分に金属膜を形成するようにしてもよい。この金属膜としては、単層の金属膜であってもよいし、複数種類の金属膜が積層された構造であってもよい。金属膜の材料としては、例えば、ニッケル、チタン、金、白金を用いることができる。この金属膜は、例えば、スパッタ法やめっき法により形成することができる。
【0061】
・上記実施形態における金属層51〜54の材料は、自己発熱性を有する金属であれば特に限定されない。例えば、金属層51,54の材料をアルミニウムとし、金属層52,53の材料をニッケルとしてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、金属層54の下面を金属膜22の上面に接触させ、金属層52の上面を凹部33の底面33Aに接触させた状態で、放熱板30を配線基板10上に搭載するようにした。これに限らず、熱伝導部材40Aを上下逆にし、その上下逆にした熱伝導部材40Aを放熱板30と半導体素子20との間に配置した状態で、放熱板30を配線基板10上に搭載するようにしてもよい。すなわち、金属層52の上面を金属膜22の上面に接触させ、金属層54の下面を凹部33の底面33Aに接触させた状態で、放熱板30を配線基板10上に搭載するようにしてもよい。この場合には、例えば、カーボンナノチューブ41の半導体素子20側の端部の位置が所定のばらつきを有する。
【0063】
・上記実施形態では、放熱板30の板状部31に貫通孔34を形成するようにした。これに限らず、例えば、放熱板30の側壁部32に貫通孔34を形成するようにしてもよい。
【0064】
・上記実施形態における貫通孔34を金属材料や樹脂材料で充填するようにしてもよい。この場合には、例えば、合金層42,43を形成した後に、金属材料や樹脂材料を貫通孔34内に充填する。このとき、貫通孔34を充填する材料としては、熱伝導性が良好な材料であることが好ましい。
【0065】
・上記実施形態では、金属層53,54の端部のみにスパークを発生させるようにした。これに限らず、例えば、金属層53,54の端部にスパークを発生させるとともに、金属層51,52の端部にもスパークを発生させるようにしてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、金属層53,54の端部にスパークを発生させて自己発熱反応を誘起させるようにした。これに限らず、例えば、レーザ光の照射や過電流の通電等により自己発熱反応を誘起させるようにしてもよい。
【0067】
・
図6に示すように、熱伝導部材40の代わりに、熱伝導部材40Bを半導体素子20と放熱板30との間に設けるようにしてもよい。熱伝導部材40Bは、カーボンナノチューブ41と、合金層42とを有している。すなわち、熱伝導部材40Bは、
図1に示した熱伝導部材40から合金層43を省略した構造を有している。
【0068】
カーボンナノチューブ41は、放熱板30の凹部33の底面33A上に林立するように多数形成されている。このカーボンナノチューブ41は、例えば、底面33Aに金属触媒層を形成した後の放熱板30に対してCVD法等を施すことにより形成される。カーボンナノチューブ41の下端部の位置は、例えば、所定のばらつきを有する。最短のカーボンナノチューブ41と最長のカーボンナノチューブ41のそれぞれの下端部の位置の相対的な差は、例えば、2μm程度である。
【0069】
合金層42は、カーボンナノチューブ41と接合されるとともに、半導体素子20と接合されている。合金層42は、例えば、カーボンナノチューブ41の下端部を被覆するように形成されている。多数のカーボンナノチューブ41は、合金層42により、図中横方向(半導体素子20の上面と略平行な平面方向)に連結されて一体化されている。合金層42の厚さは、例えば、カーボンナノチューブ41の長さのばらつきを吸収するために、最短のカーボンナノチューブ41と最長のカーボンナノチューブ41のそれぞれの先端部の位置の相対的な差よりも厚くすることが好ましい。例えば、合金層42の厚さは、2〜5μm程度とすることができる。
【0070】
合金層42は、上記実施形態と同様に、半導体素子20の一部である金属膜22を構成する金属元素(ここでは、Au)の一部が合金化されて形成された金属層である。このため、合金層42は、半導体素子20と金属的に一体化されている。
【0071】
このような構造を採用した場合であっても、半導体素子20と熱伝導部材40Bとの間の接触熱抵抗を低減することができる。このため、半導体素子20から発する熱を、熱伝導部材40Bを介して放熱板30に効率良く伝導することができる。これにより、半導体装置1における放熱性を向上させることができる。
【0072】
・上記実施形態及び上記変形例における熱伝導部材40,40Bにおいて、隣接するカーボンナノチューブ41の間に形成された貫通孔41Xを樹脂で充填するようにしてもよい。
【0073】
・上記実施形態の配線基板10に実装される半導体素子20の個数は特に限定されない。例えば、配線基板10に2個以上の半導体素子20を実装するようにしてもよい。また、配線基板10に半導体素子20以外の電子部品を実装するようにしてもよい。
【0074】
・上記実施形態では、BGA型の配線基板10に具体化したが、例えば、PGA(Pin Grid Array)型の配線基板やLGA(Land Grid Array)型の配線基板に具体化してもよい。
【0075】
・上記実施形態の放熱板30の上方に放熱フィン、ヒートパイプやベーパチャンバなどの各種冷却・放熱手段を設けるようにしてもよい。さらに、この場合に、放熱板30と冷却・放熱手段との間や、冷却・放熱手段同士の間に熱伝導部材40を設けるようにしてもよい。