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特開2015-216241機能性素子、二酸化バナジウム薄膜製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-216241(P2015-216241A)
(43)【公開日】2015年12月3日
(54)【発明の名称】機能性素子、二酸化バナジウム薄膜製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/105 20060101AFI20151106BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20151106BHJP
   C01G 31/02 20060101ALI20151106BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20151106BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20151106BHJP
【FI】
   H01L27/10 448
   C23C14/08 G
   C01G31/02
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 626C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-98230(P2014-98230)
(22)【出願日】2014年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100102875
【弁理士】
【氏名又は名称】石島 茂男
(74)【代理人】
【識別番号】100106666
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英樹
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 光隆
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】逸見 充則
(72)【発明者】
【氏名】塚越 和也
(72)【発明者】
【氏名】露木 達郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 勲
(72)【発明者】
【氏名】鄒 弘綱
【テーマコード(参考)】
4G048
4K029
5F083
5F110
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AB01
4G048AC08
4G048AD02
4G048AD06
4G048AE05
4K029AA06
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA17
4K029BA43
4K029BA48
4K029BB02
4K029CA05
4K029CA06
4K029DA08
5F083FZ10
5F083HA10
5F083JA38
5F083JA39
5F083JA60
5F083PR12
5F083PR22
5F110CC01
5F110DD02
5F110DD05
5F110DD12
5F110DD13
5F110DD17
5F110GG01
5F110GG17
5F110GG24
5F110GG25
5F110GG43
(57)【要約】
【課題】低コストで量産性の高い薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】本発明の機能性素子27には、素子基板20上に形成された二酸化チタン薄膜から成るバッファ薄膜13の表面に、二酸化バナジウムから成る機能性薄膜16が形成されており、機能性薄膜16の結晶性が高いため、相転移前後の抵抗値が大きく異なる。従って、記憶素子やサーミスタ等の本発明の機能性素子27は、電気的特性に優れている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子基板と、
前記素子基板上に形成された二酸化チタン薄膜から成るバッファ薄膜と、
前記バッファ薄膜の表面に形成された二酸化バナジウム薄膜から成る機能性薄膜と、
を有し、前記機能性薄膜が、金属相と絶縁相との間で相転移される機能性素子。
【請求項2】
前記バッファ薄膜は、前記素子基板の表面に配置された金属チタン薄膜が酸化されて形成された二酸化チタン薄膜から成る請求項1記載の機能性素子。
【請求項3】
前記機能性薄膜は、金属バナジウムターゲットが、スパッタリングガスと酸化性ガスとを含有する真空雰囲気中でスパッタリングされて前記バッファ薄膜の表面に形成された請求項1又は2のいずれか1項記載の機能性素子。
【請求項4】
前記素子基板の表面には二酸化ケイ素が露出し、前記金属チタン薄膜は、前記二酸化ケイ素と接触された請求項3記載の機能性素子。
【請求項5】
素子基板の表面に二酸化チタン薄膜から成るバッファ薄膜を形成するバッファ薄膜形成工程と、
前記二酸化チタン薄膜から成るバッファ薄膜が形成された前記素子基板をスパッタリングガスと酸化性ガスとを含有する真空雰囲気中に配置し、金属バナジウムターゲットをスパッタリングして、前記バッファ薄膜の表面に、二酸化バナジウム薄膜を成長させる成長工程とを有する二酸化バナジウム薄膜製造方法。
【請求項6】
前記バッファ薄膜形成工程は、前記素子基板の表面に金属チタン薄膜を形成する金属薄膜形成工程と、
前記金属チタン薄膜を酸化させ、前記二酸化チタン薄膜から成る前記バッファ薄膜を形成する酸化工程と、を有する請求項5記載の二酸化バナジウム薄膜製造方法。
【請求項7】
前記二酸化チタン薄膜はスパッタリング成膜で形成する請求項5記載の二酸化バナジウム薄膜製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性酸化物薄膜の技術分野に係り、特に、相転移を示す二酸化バナジウム薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バナジウムには、例えば二酸化バナジウム(VO2)や、五酸化二バナジウム(V25)とが知られており、V25とVO2はそれぞれ約280℃と約65℃を相転移温度にして相転移を発生させる。
相転移が起こると、電気的特性や光学的特性が急激に変化するので、色々な応用が考えられており、特に、相転移温度が常温に近く、半導体−金属転移が発生するVO2が、スイッチング素子や記憶素子の材料として注目されている(特許文献1)。
【0003】
半導体−金属転移については、相転移前後での抵抗値変化が発生し、その変化量が大きいほど、スイッチング素子や記憶素子の性能が向上することから、抵抗値変化が大きい単結晶のVO2薄膜が求められている。
SiO2表面上では、VO2薄膜をエピタキシャル成長させることはできないが、サファイヤ基板上では、VO2薄膜はエピタキシャル成長し、抵抗値変化が大きいVO2薄膜が得られている。
【0004】
非特許文献1に開示された、図4に二重に記載されたグラフのうち、外側のグラフは、サファイア基板上にエピタキシャル成長させたVO2薄膜の温度−抵抗特性であり、約325〜340Kの温度範囲で、抵抗値が4桁程度急激に変化している。
内側のグラフは、そのVO2薄膜の温度−キャリア密度特性を示しており、約335K以上の温度で、キャリア密度が急激に増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−233686号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】New journal of physics 6 (2004) 52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、サファイヤ基板上に形成した二酸化バナジウム(VO2)薄膜からスイッチング素子や記憶素子を得る場合、コストが高い点や大面積化が困難である。また記憶素子は半導体製造工程であるため、シリコン基板が用いられることが好ましい。よって、二酸化バナジウム薄膜を半導体基板やガラス基板上に形成できる技術が求められている。
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するために創作されたものであり、相転移前後における抵抗値が大きく変化する二酸化バナジウムから成る機能性薄膜を形成できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、素子基板と、前記素子基板上に形成された二酸化チタン薄膜から成るバッファ薄膜と、前記バッファ薄膜の表面に形成された二酸化バナジウム薄膜から成る機能性薄膜と、を有し、前記機能性薄膜が、金属相と絶縁相との間で相転移される機能性素子である。
また、本発明は、前記バッファ薄膜は、前記素子基板の表面に配置された金属チタン薄膜が酸化されて形成された二酸化チタン薄膜から成る機能性素子である。
また、本発明は、前記機能性薄膜は、金属バナジウムターゲットが、スパッタリングガスと酸化性ガスとを含有する真空雰囲気中でスパッタリングされて前記バッファ薄膜の表面に形成された機能性素子である。
また、本発明は、前記素子基板の表面には二酸化ケイ素が露出し、前記金属チタン薄膜は、前記二酸化ケイ素と接触された機能性素子である。
また、本発明は、素子基板の表面に二酸化チタン薄膜から成るバッファ薄膜を形成するバッファ薄膜形成工程と、前記二酸化チタン薄膜から成るバッファ薄膜が形成された前記素子基板をスパッタリングガスと酸化性ガスとを含有する真空雰囲気中に配置し、金属バナジウムターゲットをスパッタリングして、前記バッファ薄膜の表面に、二酸化バナジウム薄膜を成長させる成長工程とを有する二酸化バナジウム薄膜製造方法である。
また、本発明は、前記バッファ薄膜形成工程は、前記素子基板の表面に金属チタン薄膜を形成する金属薄膜形成工程と、前記金属チタン薄膜を酸化させ、前記二酸化チタン薄膜から成る前記バッファ薄膜を形成する酸化工程と、を有する二酸化バナジウム薄膜製造方法である。
また、本発明は、前記二酸化チタン薄膜はスパッタリング成膜で形成する二酸化バナジウム薄膜製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
相転移の前後での抵抗値変化が大きいので、電気的特性が良好な機能性素子を得ることができる。
機能性薄膜の素子基板上の面内分布が均一なので、高歩留まりの機能性素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)〜(f):本発明の一例の機能性素子を製造する工程の前半を説明するための図
図2】(g)〜(i):その後半を説明するための図
図3】本発明の他の機能性素子の構造を説明するための図
図4】サファイア基板上にエピタキシャル成長させたVO2薄膜の温度−抵抗特性と温度−キャリア密度特性
図5】(a):二酸化ケイ素薄膜上に形成した比較例の二酸化バナジウム薄膜の測定結果 (b):二酸化チタン薄膜上に形成した実施例の二酸化バナジウム薄膜の測定結果 (c):二酸化チタン薄膜の測定結果
図6】比較例の測定結果 (a):成膜温度を変化させたとき (b):スパッタ電力を変化させたとき (c):膜厚を変化させたとき
図7】温度−抵抗値の測定結果 (a):比較例 (b):実施例
図8】二酸化バナジウム薄膜の異なる位置でのX線回折解析の測定結果 (a):比較例 (b):実施例
図9】異なる位置での温度−抵抗値の測定結果 (a):比較例 (b):実施例
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の高機能性酸化バナジウム薄膜の製造工程を説明する。
図1を参照し、同図(a)の符号20は、素子基板である。ここでは、素子基板20は、Si単結晶基板から成る半導体基板10と、半導体基板10の表面に形成されたシリコン酸化膜から成る絶縁薄膜11とで構成されている。
【0013】
<金属薄膜形成工程>
この素子基板20を、スパッタリング装置内に搬入する。
スパッタリング装置の内部は真空雰囲気にされており、金属チタンのターゲットが配置されている。第一のスパッタリング装置の内部にスパッタリングガスを導入し、ターゲットをスパッタリングして、半導体基板10の絶縁薄膜11の表面に、金属チタン薄膜を成長させる。図1(b)の符号12は、金属チタン薄膜を示している。
【0014】
<酸化工程>
金属チタン薄膜12が所定の膜厚に形成された後、素子基板20を第一のスパッタリング装置の内部からアニール装置の内部に移動させ、アニール装置の内部に酸素ガスを導入しながら、大気圧、酸素ガスを含有する雰囲気中で素子基板20を加熱して、650℃以上750℃以下の範囲に昇温させ、金属チタン薄膜12を酸化させ、二酸化チタン薄膜を形成する。同図(c)の符号13は、二酸化チタン薄膜から成るバッファ薄膜を示している。この二酸化チタン薄膜は多結晶である。
【0015】
<結晶成長工程>
次に、バッファ薄膜13が形成された素子基板20を、金属バナジウムのターゲットが配置された第二のスパッタリング装置の内部に搬入し、第二のスパッタリング装置の内部の真空雰囲気に、スパッタリングガスと酸素ガスとを導入し、また、素子基板20を350℃以上600℃以下の温度範囲に維持しながら、第二のスパッタリング装置の内部に配置された金属バナジウムのターゲットをスパッタリングする。
【0016】
このスパッタリングにより、ターゲットの表面から金属バナジウムや金属バナジウム酸化物がスパッタリング粒子となって飛び出し、スパッタリング粒子が素子基板20のバッファ薄膜13の表面に到達し、酸素ガスと反応し、バナジウム原子と酸素原子とが1:2の個数で規則的に並んだ二酸化バナジウムがバッファ薄膜13上で成長し、結晶性を有する二酸化バナジウム薄膜が形成される。同図(d)の符号15は、その二酸化バナジウム薄膜を示しており、多結晶である。
【0017】
素子基板20が350℃以上600℃以下の温度範囲外の温度にされた場合には、二酸化バナジウム薄膜は成長しない。
第一、第二のスパッタリング装置のスパッタリングガスは希ガスであり、ここではArガスが用いられている。
【0018】
<エッチング工程>
次に、二酸化バナジウム薄膜15を部分的にエッチングし、図1(e)に示すように、残った二酸化バナジウム薄膜から成る機能性薄膜16を形成する。
【0019】
<電極形成工程>
次に、同図(f)に示すように、素子基板20の機能性薄膜16が形成された側の表面に、機能性薄膜16と接触する金属薄膜(ここではニッケル薄膜)から成る内部電極膜18を形成する。
【0020】
次に、内部電極膜18をパターニングし、図2(g)に示すように、互いに分離され、それぞれ底面で機能性薄膜16の表面と接触した第一、第二の内部電極191,192を形成する。第一、第二の内部電極191,192は、機能性薄膜16によって互いに電気的に接続されている。
【0021】
次に、第一、第二の内部電極191,192が位置する表面に、同図(h)に示すように、金属薄膜(ここでは白金薄膜)から成る外部電極膜21を形成し、外部電極膜21をパターニングして、同図(i)に示すように、第一、第二の外部電極221,222を形成する。第一、第二の外部電極221、222は互いに分離されており、第一の外部電極221は第一の内部電極191に接触し、第二の外部電極222は第二の内部電極192に接触しており、第一、第二の外部電極221,222の間に電圧を印加すると、第一、第二の内部電極191,192を介して機能性薄膜16に電圧が印加され、機能性薄膜16に電流が流れる。
【0022】
酸化バナジウムは、金属相の状態と、絶縁相の状態とを取り得る性質を有しており、絶縁相の機能性薄膜16に第一の電圧のパルス電圧を印加すると金属相に相転移して抵抗値が小さくなり、金属相の機能性薄膜16に、第一の電圧よりも低電圧である第二の電圧のパルス電圧を印加すると絶縁相に相転移して抵抗値が大きくなる。
従って、この特性から、酸化バナジウムを用いた記憶素子である機能性素子27が得られている。
【0023】
上記の機能性素子27が有する電気的特性は、第一、第二の外部電極221,222の間の印加電圧が大きくなると、抵抗値が小さくなって電流を流せるようになることから、サーミスタである機能性素子としても用いることができる。
【0024】
また、上記製造工程では、Si単結晶基板から成る半導体基板10の表面に絶縁薄膜11を形成して素子基板20として用いたが、ガラス基板の表面にシリコン酸化膜から成る絶縁薄膜11を形成して素子基板20とし、絶縁薄膜11の表面に二酸化チタン薄膜を形成し、二酸化チタン薄膜の表面に二酸化バナジウム薄膜を形成してもよい。ガラス基板を素子基板として用い、ガラス基板表面に二酸化チタン薄膜を形成し、その二酸化チタン薄膜の表面上に二酸化バナジウム薄膜を成長させてもよい。
【0025】
また、図3に示すように、素子基板20の表面上に二酸化チタン薄膜から成るバッファ薄膜13を形成し、バッファ薄膜13の表面に二酸化バナジウム薄膜から成る機能性薄膜16を形成し、ソース電極231とドレイン電極232とを、機能性薄膜16と接触して配置し、ソース電極231上と、ドレイン電極232上と、ソース電極231とドレイン電極232との間に露出する機能性薄膜16上との間に亘ってゲート絶縁膜25とゲート電極26とをこの順序で積層させ、トランジスタである機能性素子28を構成させてもよい。この機能性素子28については、ゲート電極26に印加する電圧によって、機能性薄膜16に相転移を発生させ、ソース電極231とドレイン電極232との間の抵抗値を変化させることが期待されている。
【実施例】
【0026】
上記各工程に於いて、酸化工程では、650℃、酸素ガス、大気圧雰囲気下で金属チタン薄膜を酸化して二酸化チタン薄膜のバッファ薄膜を形成し、Arガスをスパッタリングガスに用い、酸素ガス(O2ガス)を酸化性ガスに用いて素子基板20を350℃以上600℃以下の温度に昇温させて、膜厚10nm以上70nm以下の範囲の二酸化バナジウム薄膜を形成し、実施例サンプルを得た。
【0027】
また、二酸化チタン薄膜ではなく、二酸化ケイ素(SiO2)薄膜上に、二酸化バナジウム薄膜を形成した他は、実施例サンプルと同じ条件で比較例サンプルを得た。
【0028】
図5(a)、(b)は、二酸化バナジウム薄膜を形成中に素子基板が500℃に加熱され、膜厚70nmに形成された二酸化バナジウム薄膜のX線回折解析の測定結果であり、同図(a)は、比較例サンプルの測定結果、同図(b)は、実施例サンプルの測定結果である。
【0029】
同図(a)のグラフのピーク位置から、比較例サンプルでは、表面が(011)面の単斜晶型の二酸化バナジウム薄膜が形成されていることが分かる。
同図(b)のグラフのピーク位置から、実施例サンプルでは、表面は(020)面になっており、単斜晶型の結晶が成長していることが分かる。
【0030】
同図(c)は、二酸化チタン薄膜のバッファ薄膜上に35nmの膜厚で形成された二酸化チタン薄膜の測定結果である。この図の二酸化チタン薄膜と、同図(b)の二酸化バナジウム薄膜とは、ともに40°付近にピークがあるから、同図(b)の真の二酸化バナジウム薄膜のピーク強度は、同図(b)のみかけのピーク強度1014cpsから、同図(c)の二酸化チタン薄膜のピーク強度230cpsを差し引いた784cpsであることが分かる。それに対し、同図(a)の二酸化バナジウム薄膜のピーク強度は62cpsであり、約12.6倍になっている。なお格別に図示しないが350℃、590℃でも同様の結果を得た。
【0031】
図6(a)〜(c)は、成膜温度、スパッタリング電力、膜厚を変え、二酸化ケイ素表面上に二酸化バナジウム薄膜を成長させたときの比較例サンプルのX線回折解析の測定結果であり、同図(a)は、成膜温度が200℃、350℃、500℃で形成された二酸化バナジウム薄膜のグラフであり、同図(b)は、スパッタリング電力が750W、1200W、1500Wで形成された二酸化バナジウム薄膜形成のグラフであり、同図(c)は、膜厚が125nm、235nm、460nmに形成された二酸化バナジウム薄膜のグラフである。
【0032】
これら図6(a)〜(c)のグラフでは、いずれも(020)の二酸化バナジウム薄膜のピーク強度は小さく、成膜温度、スパッタリング電力、及び膜厚を変化させても、二酸化ケイ素薄膜上では、良好な結晶性を示す二酸化バナジウム薄膜は得られないことが分かる。
実施例サンプルの二酸化バナジウム薄膜は、70nmの膜厚で、比較例の膜厚460nmの二酸化バナジウム薄膜よりも良好な結晶性が得られていることが分かる。
【0033】
次に、図7(a)、(b)は、二酸化バナジウム薄膜の温度−抵抗値の関係を示すグラフであり、同図(a)は、比較例サンプルの測定結果、同図(b)は、実施例サンプルの測定結果である。比較例サンプルと実施例サンプルのうち、どちらの二酸化バナジウム薄膜も膜厚70nm、成膜温度は500℃、スパッタリング電力は750Wであり、スパッタリングで形成する際の真空雰囲気中の酸素ガス含有率は13.9%である。
【0034】
図7(a)、(b)では、昇温するときの曲線と、冷却するときの曲線とは一致しておらず、ヒステリシス曲線が形成されているが、実施例サンプルのグラフでは温度幅が7.5℃であるのに対し、比較例サンプルのグラフでは温度幅が16℃であり、本発明の実施例の方がヒステリシス幅が小さくなっている。
【0035】
また、図7(a)、(b)では、低温側では絶縁相が見られ、高温側では金属相が見られており、20℃以上100℃以下の温度範囲中に相転移が生じる温度(75℃付近)がある。比較例サンプルでは、図7(a)から、3.83×103Ω以上2.62×106Ω以下の抵抗変化(1:1460)が生じており、実施例サンプルでは、同図(b)から、4.28×102Ω以上8.38×105Ω以下の抵抗変化(1:5110)が生じている。
【0036】
絶縁相と金属相との間の抵抗値の相違量は、実施例サンプルの方が大きくなっており、本発明の相転移による抵抗値変化は、20℃以上100℃以下の温度範囲内で3桁半の大きさがある。
【0037】
形成された二酸化バナジウム薄膜の均一性を比較するため、形成された位置が異なるときの、比較例サンプルと実施例サンプルとの結晶性と、温度−抵抗特性とを測定した。ここでは、円盤状のシリコン単結晶の半導体基板表面に二酸化ケイ素薄膜が形成された素子基板を用い、半導体基板の中心から放射方向に向けた、0mm、45mm、90mmの位置で測定した。二酸化バナジウム薄膜の膜厚は70nm、スパッタリングの際の投入電力は750W、スパッタリングの際の真空雰囲気中に含有される酸素ガスは、13.9%の含有率、成膜温度は500℃である。
【0038】
二酸化バナジウム薄膜の異なる位置でのX線回折解析の、比較例サンプルの測定結果を図8(a)に示し、実施例サンプルの測定結果を同図(b)に示す。
図8(a)、(b)を比較すると、実施例(図8(b))では、各位置に於いて測定強度が等しい(020)の二酸化バナジウム薄膜が得られており、均一性を確認することができるが、比較例(図8(a))では(020)の二酸化バナジウム薄膜は得られていない。
【0039】
異なる位置での温度−抵抗値の、比較例サンプルの測定結果を図9(a)に示し、実施例サンプルの測定結果を同図(b)に示す。
図9(a)、(b)を比較すると、実施例サンプル(図9(b))では、各位置の曲線が重なっており、各位置で特性が等しい二酸化バナジウム薄膜が得られたことが分かる。それに対し、比較例サンプル(図9(a))では、中心(0mm)以外の位置は相転移の発生が認められない。
【0040】
なお、上記各例では、スパッタリング装置に配置された金属バナジウムから成るスパッタリングターゲットを、そのスパッタリング装置に適した含有量で酸素ガスが含有されたスパッタリング雰囲気中でスパッタし、二酸化バナジウムを成長させて、結晶性二酸化バナジウムから成る機能性薄膜を形成していたが、金属ターゲットに限定されるものではなく、二酸化バナジウムのターゲットや他のバナジウム酸化物のターゲットを、酸素ガスを含有するスパッタリング雰囲気中でスパッタリングして二酸化バナジウムを成長させてもよい。
【符号の説明】
【0041】
20……素子基板
13……バッファ薄膜
16……機能性薄膜
27、28……機能性素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9