【課題】 繰り返し熱応力が負荷されても、伝熱管や熱媒容器そのもの、あるいは伝熱管と熱媒容器との継ぎ目にあたる溶接部などに破壊などの問題を生じることが極めて少ない気化器を提供する。
【解決手段】 液化ガスを加熱して気化させる液化ガス用気化器X1であって、熱媒が補充可能に収容される熱媒容器31と、熱媒容器31の内部を上下に貫通するとともに上端部および下端部が熱媒容器31に支持され、継ぎ目無しの直管により構成された伝熱管32と、を有する気化ユニット3を備え、熱媒容器31は、本体部311と、この本体部311よりも伸縮する伸縮部312と、を有し、伝熱管32内に気化すべき液化ガスを連続的に流して気化させるようにしている。
上記本体部は上下に延びる直管状であり、上記伸縮部は上記本体部の長手方向の途中に挿入された伸縮継手である、請求項1ないし4のいずれかに記載の液化ガス用気化器。
上記気化ユニットの数がN個(Nは2以上の整数。以下同じ)であるとき、上記熱媒用分岐路の流路断面積が上記熱媒供給管の流路断面積の1/N以下である、請求項7に記載の液化ガス用気化器。
上記気化ユニットの数がN個であるとき、上記液化ガス用分岐路の流路断面積が上記液化ガス供給管の流路断面積の1/N以下である、請求項7または9に記載の液化ガス用気化器。
上記気化ユニットの数がN個であるとき、上記気化ガス排出用分岐路の流路断面積が上記気化ガス排出管の流路断面積の1/N以下である、請求項8に記載の液化ガス用気化器。
【背景技術】
【0002】
液化窒素、液化酸素、液化アルゴンおよび液化炭酸ガスなどに代表される産業用ガスに加えて、LNG(液化天然ガス)、LPG(液化プロパンガス)などの燃料ガスを液状でタンクに蓄え、気化器などで蒸発気化させてガス状にして供給することは各産業分野で液化ガスの貯蔵と消費を繰り返す重要な工業的手法として用いられている。液化窒素、液化酸素や液化アルゴンは−180℃以下で、液化炭酸ガスは−25℃以下で、LNGは−160℃以下で、LPGは−40℃以下の低温で貯蔵している。気化器の加熱源としては、ガスの物性に応じて様々なものを使用することができるが、最近ではLNGサテライト設備の気化器として空気に加えて温水が使用されるようになっている。
【0003】
空気を加熱源とした空温式LNG気化器については、例えば特許文献1に開示されている。同文献に開示された気化器においては、伝熱管の内部に−160℃に近い低温液体が導入されると同時に外部から雰囲気空気で加熱されるため、空気中の水分が伝熱管の表面で氷結し、伝熱効率が著しく低下する可能性がある。
【0004】
これに対して、温水を用いた温水式LNG気化器としては、例えば特許文献2に開示されている。温水式の気化器においては、シェル(熱媒容器)の内部に伝熱管が設けられている。気化器の稼働時には、シェル側に温水を流しつつ伝熱管側に−160℃近い低温液体(LNG)を流す。このような温水式の気化器によれば、加熱源である温水は温水ボイラなどを使用することにより強制的に温度調節できるので、年間を通じて安定した性能が維持でき、また、気化器自体をコンパクトにできるため設置面積が小さくて済む。しかしながら、気化器を断続的に稼働させると、LNGの供給が断続的に行われ、シェル側と伝熱管側との間に金属の大きな熱膨張差による伸縮が繰り返される。そうすると、伝熱管の溶接部やマニホールドに固定されている溶接部に過剰な応力がかかり、気化器を間欠運転すると溶接部に割れが生じる問題をしばしば起こしていた。
【0005】
特許文献2では、シェル内部に設ける伝熱管として、螺旋状に巻かれた継ぎ目の無い鋼管が用いられている。このような構成によれば、螺旋状とすることで伝熱管の伸縮を吸収しつつ溶接部での応力による割れの問題を回避することができる。しかしながら、継ぎ目無し鋼管を螺旋状に巻くには、鋼管(直管)を強制的に曲げる必要があるので、伝熱管の各部に伸びた部分や縮んだ部分が存在し、曲げ加工によって相当に大きな歪が生じている。このような加工歪が大きい伝熱管においては、熱疲労を受けやすく、熱による伸縮が繰り返されると、伝熱管自体の破損の虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、繰り返し熱応力が負荷されても、伝熱管や熱媒容器そのもの、あるいは伝熱管と熱媒容器との継ぎ目にあたる溶接部などに破壊などの問題を生じることが極めて少ない気化器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明においては、液化ガスを加熱して気化させる液化ガス用気化器であって、熱媒が補充可能に収容される熱媒容器と、上記熱媒容器の内部を上下に貫通するとともに上端部および下端部が上記熱媒容器に支持され、継ぎ目無しの直管により構成された伝熱管と、を有する気化ユニットを備え、上記熱媒容器は、本体部と、この本体部よりも伸縮する伸縮部と、を有し、上記伝熱管内に気化すべき液化ガスを連続的に流して気化させるようにした、液化ガス用気化器が提供される。
【0010】
好ましくは、上記熱媒容器は、その上端部および下端部それぞれにキャップ部を有し、上記キャップ部は、第1の溶接部を介して上記伝熱管の上端部または下端部に接合されている。
【0011】
好ましくは、上記キャップ部は、先端側が凸となる曲面を有し、上記伝熱管は、上記キャップ部を貫通しており、上記第1の溶接部は、上記伝熱管および上記キャップ部を鈍角に跨って接合している。
【0012】
好ましくは、上記キャップ部と上記本体部とは別部材によって構成されており、上記キャップ部と上記伝熱管とは、同じ材質からなり、上記キャップ部は、第2の接合部を介して上記本体部に接合されている。
【0013】
好ましくは、上記本体部は上下に延びる直管状であり、上記伸縮部は上記本体部の長手方向の途中に挿入された伸縮継手である。
【0014】
好ましくは、上記熱媒容器の下端寄りの部分には、当該熱媒容器の内部に熱媒を供給するための熱媒導入ノズルが設けられており、平面視において、上記熱媒導入ノズルの中心線は上記熱媒容器の中心線から偏倚した位置にある。
【0015】
好ましくは、熱媒を供給するための熱媒供給管と、液化ガスを供給するための液化ガス供給管とを備え、上記気化ユニットは、上記熱媒供給管および上記液化ガス供給管に対応する位置に複数並列して配置されており、上記熱媒供給管と上記各熱媒容器の下端寄りの部分とが熱媒用分岐路を介して連通しており、上記液化ガス供給管と上記各伝熱管の下端とが液化ガス用分岐路を介して連通している。
【0016】
好ましくは、液化ガスを供給するための液化ガス供給管と、液化ガスが上記伝熱管内を流れることにより気化したガスを排出するための気化ガス排出管と、を備え、上記気化ユニットは、上記液化ガス供給管および上記気化ガス排出管に対応する位置に複数並列して配置されており、上記液化ガス供給管と上記各伝熱管の下端とが液化ガス用分岐路を介して連通し、かつ上記気化ガス排出管と上記各伝熱管の上端とが気化ガス排出用分岐路を介して連通している。
【0017】
好ましくは、上記気化ユニットの数がN個(Nは2以上の整数。以下同じ)であるとき、上記熱媒用分岐路の流路断面積が上記熱媒供給管の流路断面積の1/N以下である。
【0018】
好ましくは、上記気化ユニットの数がN個であるとき、上記液化ガス用分岐路の流路断面積が上記液化ガス供給管の流路断面積の1/N以下である。
【0019】
好ましくは、上記気化ユニットの数がN個であるとき、上記気化ガス排出用分岐路の流路断面積が上記気化ガス排出管の流路断面積の1/N以下である。
【0020】
好ましくは、上記伝熱管の下端と上端の少なくとも一方には、絞り機構が設けられている。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1、
図2は、本発明の実施形態に係る液化ガス用気化器の概略構成を示している。本実施形態の液化ガス用気化器X1は、熱媒供給管1と、液化ガス供給管2と、各々が熱媒容器31および伝熱管32を有する複数の気化ユニット3と、熱媒排出管4と、気化ガス排出管5と、を備えている。各伝熱管32の下端と上端には、絞り機構6,7が取り付けられている。なお、これらの
図1、
図2において、熱媒供給管1、液化ガス供給管2、熱媒容器31、伝熱管32、熱媒排出管4、気化ガス排出管5などの肉厚は簡略化のために図示を省略している。また、以下においては、気化される液化ガスが液化天然ガス(LNG)であるものとして説明を進める場合もあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
熱媒供給管1は、図示されていない熱媒供給源(温水供給源)から延びる配管に接続されており、水平方向に延びている。熱媒供給管1は、例えば圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG管)により構成される。
【0025】
液化ガス供給管2は、例えばステンレス鋼鋼管(SUSTP管)からなり、例えばLNG貯蔵タンクから延びる配管に接続されている。液化ガス供給管2は、熱媒供給管1が延びる方向と略平行な水平方向に延びている。
【0026】
複数の気化ユニット3は、熱媒供給管1および液化ガス供給管2が延びる方向において間隔を隔てて並列に配置されている。本実施形態では、4つの気化ユニット3が並んだ態様を示すが、気化ユニット3の数はこれに限定されるものではない。各気化ユニット3は、上下に延びる熱媒容器31と、この熱媒容器31の内部を上下に貫通する伝熱管32とを有する。
【0027】
熱媒容器31は、全体として直立円筒状をなしており、本実施形態では、本体部311と、伸縮部312と、キャップ部313とを有する。本体部311は、上下に延びる直管状であり、例えば圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG管)からなる。伸縮部312は、本体部311よりも伸縮する部分であり、例えば本体部311の長手方向(上下方向)の途中に挿入された伸縮継手によって構成される。伸縮部312としては、例えば金属製のベローズ形伸縮継手を採用することができる。
【0028】
図1、
図3、
図4に示すように、キャップ部313は、熱媒容器31の上端部および下端部にそれぞれ設けられており、本体部311の両端を塞いでいる。キャップ部313は、本体部311とは材質が異なる別部材によって構成されており、例えばステンレス鋼製である。キャップ部313は、凸状となる半球面状または曲面状になっている。
【0029】
伝熱管32は、上下のキャップ部313を貫通しており、熱媒容器31の内部において上下に延びている。伝熱管32は、例えば継ぎ目を有さない直管により構成されており、例えば市販の定尺物の継目無しステンレス鋼鋼管が使用される。定尺物の継目無しステンレス鋼鋼管(伝熱管32)は、例えばその長さが4mあるいは6mであり、直径(外径)が27.2mm、34.0mmあるいは42.7mmである。なお、熱媒容器31を構成する本体部311についても、例えば市販の定尺物の鋼管(圧力配管用炭素鋼鋼管)が使用される。定尺物の圧力配管用炭素鋼鋼管(本体部311)は、例えばその長さが4mあるいは6mであり、直径(外径)が89.1mm、114.3mmあるいは139.8mmである。また、本実施形態のように本体部311の途中に伸縮部312としての伸縮継手が挿入される構成では、定尺物の圧力配管用炭素鋼鋼管を適宜切断して使用すればよい。
【0030】
次に、伝熱管32の熱媒容器31に対する接続構造について説明する。
図3は、伝熱管32および熱媒容器31の上部における接続構造を示し、
図4は、伝熱管32および熱媒容器31の下部における接続構造を示す。
図3に示した伝熱管32および熱媒容器31の接続構造と、
図4に示した伝熱管32および熱媒容器31の接続構造とは、上下反転しているが同様の構成であるので、
図3に示された上部の接続構造について説明し、
図4に示された接続構造の説明は省略する。
【0031】
図3に示すように、キャップ部313の中央部を伝熱管32が貫通している。伝熱管32の上端部とキャップ部313との間は溶接部33a(第1の溶接部)により接合されている。また、キャップ部313の裾部と本体部311の端部との間は溶接部33b(第2の溶接部)により接合されている。
【0032】
図5に示されるように、熱媒容器31の下端寄りの部分には、当該熱媒容器31の内部に熱媒を導入するための熱媒導入ノズル34が設けられている。平面視において、熱媒導入ノズル34の中心線O2は、熱媒容器31の中心線O1から偏倚した位置にある。熱媒導入ノズル34は、例えば、熱媒供給管1から分岐状に延びる熱媒用分岐路11とフランジ接続されている。かかる構成により、熱媒供給管1と熱媒容器31の下端寄りの部分とは、熱媒用分岐路11および熱媒導入ノズル34を介して連通している。
【0033】
熱媒用分岐路11は、熱媒供給管1よりも小径とされており、熱媒供給管1を流れる熱媒がこの熱媒用分岐路11を通過する際に絞られ、熱媒導入ノズル34を介して熱媒容器31に供給される。熱媒用分岐路11の流路断面積は、熱媒供給管1の流路断面積に対して気化ユニット3の数に応じた比率とされている。気化ユニット3の数をNとすると、熱媒用分岐路11の流路断面積は、熱媒供給管1の流路断面積の1/N以下とされる。例えば気化ユニット3の数が4つである本実施形態の場合、熱媒用分岐路11の流路断面積は熱媒供給管1の流路断面積の1/4以下とされる。
【0034】
図6は、熱媒供給管1と熱媒容器31との接続構造の他の例を示している。
図6に示した接続構造において、熱媒容器31には比較的に大径(熱媒容器31の直径と同程度)の分岐路314が設けられており、この分岐路314には、熱媒導入ノズル34を具備する閉止フランジ35が接続されている。ここで、熱媒導入ノズル34の中心線O2は、熱媒容器31の中心線O1から偏倚する位置にある。そして、閉止フランジ35には、熱媒用分岐路11がフランジ接続されている。このような構成によれば、熱媒容器31(本体部311)と分岐路314が同径で一体化でき、例えばティー管を用いることができるので、製作が容易である。
【0035】
図1に示されるように、伝熱管32の下端には、液化ガス供給管2から分岐状に延びる液化ガス用分岐路21が溶接等により接続されている。かかる構成により、液化ガス供給管2と伝熱管32の下端とは、液化ガス用分岐路21を介して連通している。
【0036】
液化ガス用分岐路21は、液化ガス供給管2よりも小径とされており、液化ガス供給管2を流れる液化ガスがこの液化ガス用分岐路21を通過する際に絞られ、伝熱管32に供給される。液化ガス用分岐路21の流路断面積は、液化ガス供給管2の流路断面積に対して気化ユニット3の数に応じた比率されている。気化ユニット3の数をNとすると、液化ガス用分岐路21の流路断面積は、液化ガス供給管2の流路断面積の1/N以下とされる。例えば気化ユニット3の数が4つである本実施形態の場合、液化ガス用分岐路21の流路断面積は液化ガス供給管2の流路断面積の1/4以下とされる。
【0037】
図1に示すように、熱媒排出管4は、気化ユニット3の上端部付近の高さ位置に設けられている。熱媒排出管4は、熱媒供給管1が延びる方向と略平行な水平方向に延びている。
図2に示すように、熱媒排出管4には、複数の気化ユニット3それぞれに対応する複数の熱媒排出用分岐路41が設けられており、熱媒排出管4と各熱媒容器31の上端寄りの部分とが熱媒排出用分岐路41を介して連通している。
図2に示すように、例えば平面視において熱媒排出用分岐路41の中心線O3は、熱媒容器31の中心線O1から偏倚した位置にある。上記した熱媒導入ノズル34を介して熱媒容器31内に熱媒が順次供給されると、当該熱媒は熱媒容器31内を流れて上昇し、熱媒排出用分岐路41、熱媒排出管4を介して外部に排出される。外部に排出された熱媒は、図外の再加熱手段により再加熱され、再び図外の熱媒供給源に循環される。
【0038】
図1に示すように、気化ガス排出管5は、気化ユニット3の上端部付近の高さ位置に設けられており、液化ガス供給管2、熱媒排出管4が延びる方向と略平行な水平方向に延びている。気化ガス排出管5には、複数の気化ユニット3それぞれに対応する複数の気化ガス排出用分岐路51が設けられており、気化ガス排出管5と各伝熱管32の上端とが気化ガス排出用分岐路51を介して連通している。上記した液化ガス用分岐路21を介して伝熱管32内に液化ガスが順次供給されると、当該液化ガスは熱媒容器31の内部を貫通する伝熱管32内を上昇する過程で熱媒との熱交換により順次気化してガスとなる。伝熱管32内で完全に気化したガスは、気化ガス排出用分岐路51を介して気化ガス排出管5にて集合され、外部に排出される。気化ガス排出管5の下流側端部は、例えば天然ガス利用サイトにつながる配管(図示せず)に接続されている。気化ガス排出用分岐路51の流路断面積は、気化ガス排出管5の流路断面積に対して気化ユニット3の数に応じた比率とされている。気化ユニット3の数をNとすると、気化ガス排出用分岐路51の流路断面積は、気化ガス排出管5の流路断面積の1/N以下とされる。例えば気化ユニット3の数が4つである本実施形態の場合、気化ガス排出用分岐路51の流路断面積は気化ガス排出管5の流路断面積の1/4以下とされる。
【0039】
各伝熱管32の下端に設けられる絞り機構6は、
図7に示すように、例えばオリフィス8として構成される。オリフィス8は液化ガス用分岐路21や伝熱管32の流路の中心位置に形成された孔を有し、オリフィス8の流路断面積は、液化ガス用分岐路21の流路断面積よりも小さくされる。絞り機構6(オリフィス8)は、液化ガス供給管2より液化ガス用分岐路21を通じて導入された液化ガスの流れに抵抗を与える。本実施形態では、4つの気化ユニット3(伝熱管32)の全てに対して同じ流路断面積(口径サイズ)の絞り機構6(オリフィス8)が用いられる。絞り機構6における流れ抵抗は、4つの気化ユニット3のそれぞれの伝熱管32に分割流入した液化ガスの伝熱管32内での流れ抵抗より大きくなるようにする。この絞り機構6で液状の液化ガスの流入に対して強制的に流れ抵抗をつけることによって、それぞれの気化ユニット3の伝熱管32への液化ガス流量を均一化させる。
【0040】
各伝熱管32の上端に設けられる絞り機構7は、
図8に示すように、例えばオリフィス9として構成される。オリフィス9は伝熱管32や気化ガス排出用分岐路51の流路の中心位置に形成された孔を有し、オリフィス9の流路断面積は、伝熱管32の流路断面積よりも小さくされる。絞り機構7(オリフィス9)は、伝熱管32内を液化ガスが流れることによって気化したガスの流れに抵抗を与える。本実施形態では、4つの気化ユニット3(伝熱管32)の全てに対して同じ流路断面積(口径サイズ)の絞り機構7(オリフィス9)が用いられる。これらオリフィス9の口径サイズは、4つの気化ユニット3のそれぞれの伝熱管32から気化ガス排出用分岐路51に流出する気化ガス量を均一化するように決定される。このような絞り機構7(オリフィス9)を具備する構成によれば、伝熱管32から気化ガス排出用分岐路51への急激な流出量を制限する効果をも奏する。
【0041】
また、絞り機構6,7の口径サイズについては、そのサイズが小さくなるほど当該絞り機構6,7の流量の均一化が進む傾向にあるが、伝熱管32内での液化ガスないし気化したガスの流れ抵抗が所望の値となるように決定される。絞り機構6,7の口径サイズは、例えば伝熱管32の内径サイズの1/6〜1/3程度とされる。なお、絞り機構6には液体(液化ガス)が流れるが、絞り機構7には気体(気化ガス)が流れるので、流体の流れ抵抗は絞り機構7が絞り機構6よりも大きくなる。このため、絞り機構7の口径サイズを絞り機構6の口径サイズよりも大きくするのが好ましい。
【0042】
なお、
図7、
図8では、絞り機構6,7としてオリフィス8,9を設ける場合を示したが、絞り機構6,7の構造はこれに限定されない。絞り機構6,7は、流体流れが絞られるものであればよく、例えばスロート状(漸次的に流路断面積が減少ないし増加する構造)としてもよい。また、単一孔を有する構造に代えて、複数孔を有する構造としてもよい。
【0043】
液化ガスが液化ガス用分岐路21を通過すると、当該液化ガスは絞り機構6(オリフィス8)で絞られながら伝熱管32に流入していく。ここでは伝熱管32への流入時に伝熱管32内を流れる抵抗の数倍以上の抵抗をつかせることが望ましく、それによって液化ガス用分岐路21での各気化ユニット3への液分散性がより良好となる。本実施形態では、液化ガスが、オリフィス8の中心部に開けられた孔に向かって集中して流れた後、伝熱管32内へ一気に開放されるため、伝熱管32内での液分散性もよくなる。
【0044】
伝熱管32内を流れることにより完全に気化したガスは、絞り機構7(オリフィス9)で絞られながら気化ガス排出用分岐路51へ排出されていく。ここでは気化して流れ速度が上昇したガスがオリフィス9の中心部に開けられた孔に向かって集中して流れた後、一気に気化ガス排出用分岐路51へ排出される。さらに、気化ガス排出管5の流路断面積が気化ガス排出用分岐路51の流路断面積のN倍以上に拡大されているので、ガス流れ速度がN分の1以下に遅くなり、その上流側である伝熱管32内での液化ガスの分散性がよりよくなる。
【0045】
上記構成の液化ガス用気化器X1の稼働時には、熱媒供給管1から各気化ユニット3の熱媒導入ノズル34を介して、熱媒としての例えば40℃前後の温水が分配して熱媒容器31内に供給される。供給された温水は、熱媒容器31内を上昇しながら伝熱管32内のLNGとの間で熱交換を行い、熱媒排出用分岐路41、熱媒排出管4を介して外部に排出される。
【0046】
一方、液化ガス供給管2を介して各気化ユニット3の伝熱管32には、−160〜−140℃程度の低温液体であるLNGが分配して供給される。供給されたLNGは、伝熱管32を介して温水によって加熱気化され、伝熱管32は直管のまま0℃以上で最高40℃近くまで温度上昇する。伝熱管32はステンレス鋼製であるので、100℃の温度差によって1mあたり1.5mmの伸縮量の違いが生じる。熱媒容器31については、その本体部311は圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG管)であるので、100℃の温度差によって1mあたり1.2mmの伸縮量の違いが生じる。また、伝熱管32内を流れるLNGが気化する際の温度変化は相対的に大きく、熱媒容器31内を流れる温水の温度変化は相対的に小さいので、伝熱管32および熱媒容器31の間で温度差の違いが大きい。このようなことが相俟って、例えば液化ガス用気化器X1を間欠運転すると、伝熱管32の伸縮量が熱媒容器31の伸縮量に比べて大きくなる。
【0047】
本実施形態では、伝熱管32が継ぎ目の無い直管により構成されているので、伝熱管32自体に加工歪が生じておらず、伝熱管32について加熱および冷却が繰り返されても熱疲労が生じにくい。
【0048】
また、伝熱管32が温度変化によって伸縮しても、この伝熱管32の外側を囲むとともに上下両端部を支持する熱媒容器31において、本体部311よりも伸縮する伸縮部312が設けられていることから、この伸縮部312により伝熱管32の伸縮を吸収することができる。したがって、伝熱管32と熱媒容器31との接合部あるいは伝熱管32自体に繰り返し大きな応力が作用するのを回避することができる。なお、
図1では伸縮部312としての伸縮継手を1箇所に設ける例を示したが、離間する複数箇所に伸縮部312を設けてもよい。また、伸縮継手の形式についても、ベローズ形伸縮継手に限定されるものではない。
【0049】
伝熱管32と熱媒容器31との接合部には、キャップ部313が介在している。キャップ部313は、釣鐘状となっており、溶接部33a,33bにおいて溶接接合されている。キャップ部313は、先端側が凸となる曲面を有しており、伝熱管32は、キャップ部313を貫通している。そして、伝熱管32に対する溶接部33aについては、伝熱管32およびキャップ部313を鈍角に跨って接合している。このような構成によれば、伝熱管32が伸縮によって例えば
図3、
図4等に矢印aで示した力が作用しても、当該力がベクトルで矢印bのように分散される。したがって、本実施形態の構成によれば、曲面による応力分散効果が追加的に作用し、溶接部33aへの応力集中をより効果的に回避することができる。
【0050】
本実施形態では、キャップ部313は伝熱管32と同じ材質のステンレス鋼製である。伝熱管32の上下両端部はそれぞれ伝熱管32と同材質のキャップ部313を介して熱媒容器31に支持されているため、伝熱管32とキャップ部313の伸縮に伴う応力をそれぞれ熱媒容器31側の溶接部33bに分散することができ、応力集中を回避することができる。
【0051】
また、応力が集中する部位には異種金属の接触によってガルバニック腐食(イオン化傾向の違いから生まれる電気腐食)が生じやすいが、キャップ部313を伝熱管32と同材質のステンレス鋼製にしておくと、ガルバニック腐食の発生を回避するのにも適する。
【0052】
熱媒容器31の下部寄りに設けられた熱媒導入ノズル34は、その中心線O2が平面視において直立円筒状の熱媒容器31の中心線から偏倚する位置にある。このため、熱媒導入ノズル34を介して熱媒容器31内に供給された温水は、熱媒容器31の管内壁を円周状に沿うように、そして伝熱管32の周りを回るように流れ上昇していく。このように、温水は熱媒容器31内を渦流となって高速で流れていくので、伝熱管32内を流れるLNGを蒸発させるための熱伝達率は高くなる。
【0053】
なお、熱媒容器31の上端部付近に設けられた熱媒排出用分岐路41については、その中心線O3が平面視において熱媒容器31の中心線O1から偏倚する位置にあるのが好ましい(
図2参照)。このような構成によれば、伝熱管32の周囲を回りながら流れ上昇した温水が流れを変えずに排出され、熱媒容器31内でのスムーズな温水の流れが実現される。
【0054】
液化ガス用気化器X1において、熱媒供給管1や液化ガス供給管2に対して、複数の気化ユニット3が並列して設けられている。各気化ユニット3の熱媒容器31への温水の供給は、熱媒用分岐路11を介して行う。ここで、熱媒用分岐路11の流路断面積は、例えば熱媒供給管1の流路断面積の1/4以下とされている。このよう構成によれば、熱媒供給管1から流れ込む温水が熱媒用分岐路11によって絞られ、熱媒供給管1よりも速い流速、例えば2m/secで熱媒容器31内に温水が供給される。その結果、温水は回転する方向性が与えられ例えば0.05〜0.15m/secの流速で伝熱管32の周囲を回転しながら熱媒容器31内を上昇していく。そして、熱媒容器31内の温水の流れは高速の乱流状態となって、伝熱管32を高い伝熱効率で加温することができる。また、熱媒用分岐路11の流路断面積を気化ユニット3の数に対応させて絞ることにより、それぞれの熱媒容器31への温水の分配量について均等化を図ることができる。
【0055】
また、各気化ユニット3の伝熱管32へのLNGの供給は、液化ガス用分岐路21を介して行い、液化ガス用分岐路21の流路断面積は、液化ガス供給管2の流路断面積の1/4に絞られている。このよう構成によれば、液化ガス供給管2よりも速い流速にて伝熱管32内にLNGが供給される。その結果、LNGは例えば0.05〜0.1m/sec程度の速い流速で伝熱管32内に供給される。この伝熱管32で気化され5.0〜20m/secに増速されたLNGの気化ガスは、その後、この流速を1/4以下に戻すために気化ガス排出用分岐路51の流路断面積の4倍以上を有する気化ガス排出管5に排出されていく。
【0056】
さらに、伝熱管32において、下端には液状の液化ガス用の絞り機構6が、上端には気化したガス用の絞り機構7が設けられている。これら絞り機構6,7によって、それぞれ流れ差圧を強制的に設けることができるので、各気化ユニット3の伝熱管32内でのLNGの分散性がより良好になる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、当該実施形態による効果を纏めると以下のとおりである。
(1)伝熱管32に溶接部がなく継ぎ目の無い直管をそのまま使用し、螺旋状になるような曲げ加工をせず、金属材料自体に加工歪を与えていないので、伝熱管32を加熱したり冷却したりしても熱応力や熱疲労が少ない。
(2)伝熱管32に温度変化による自然な伸縮変化がおこっても、伝熱管32と平行して外側に配列される熱媒容器31の伸縮継手(伸縮部312)で吸収するので伝熱管32自体には繰り返し応力による金属疲労が殆どおこらない。
(3)伝熱管32と熱媒容器31の上下部での接合はキャップ部313を介して2箇所の溶接部33a,33bに分けて行っているので、伝熱管32とキャップ部313のそれぞれの伸縮に伴う熱応力を干渉させることなく分散することができる。伝熱管32に対する溶接部33aについては、キャップ部313における曲面による応力分散効果が追加的に作用するので、全体としての応力分散効果がさらに高まる。
(4)熱媒容器31の下部に供給される温水のノズル位置(熱媒導入ノズル34の位置)と熱媒容器31の上部から排出されるノズル位置(熱媒排出用分岐路41の位置)が直立円筒状の熱媒容器31の中心線O1から偏倚して取り付けられており、しかもそのノズル内温水流速が、気化ユニット3に供給される温水の熱媒供給管1内の温水流速より速くなるように作られているので、温水を熱媒容器31内で伝熱管32である直管に沿い回転しながら高速で乱流状態で伝熱管32を加温することができる。このように、直管を伝熱管32として用い、この直管(伝熱管32)を熱媒容器31で囲う二重管構造とすると、温水の流れ断面積を、伝熱管が螺旋状に巻かれた構成に比べて、1/10以下に小さくできる。その結果、例えば温水流速が9倍になるとレイノルズ数が3倍となり、温水側の熱伝達速度が約2倍となる。それによって温水がLNGを加温する総括伝熱係数は約1.5倍になり、格段に熱伝達効率が上昇する。このように熱伝達が効率よく行われることから、加温用の熱媒たる温水の温度についても、従来50〜60℃程度で供給していたものを、本発明では40℃以下程度の相対的に温度の低い温水を用いることができる。
(5)各々の伝熱管32に分配供給される液化ガス用分岐路21内の液化ガスの流速を、液化ガス供給管2内の液化ガスの流速より速くするので、気化ユニット3を複数並列設置しても液化ガスの流体分配を良好にすることができる。したがって、この気化ユニット3の大きさを最小単位のLNG気化ガス量となるように製作して、複数個を順次並列に接続しても、簡単に気化ユニット3の交換や追加接続ができるので予備器の不要な液化ガス用気化器X1ができる。
(6)各々の伝熱管32からガス状になって排出される気化ガス排出用分岐路51内の気化ガスの流速を、伝熱管32内の流速より遅くするので、気化ユニット3を複数並列設置しても液化ガスの流体分配を良好にすることができる。したがって、この気化ユニット3の大きさを最小単位のLNG気化ガス量となるように製作して、複数個を順次並列に接続しても、簡単に気化ユニット3の交換や追加接続ができるので予備器の不要な液化ガス用気化器X1ができる。
(7)さらに、伝熱管32の下端の液状の液化ガスが流入する入口部には絞り機構6が設けられ、伝熱管32の上端の気化ガスが流出する出口部には絞り機構7が設けられる。これにより、複数個順次並列に接続された気化ユニット3内での液化ガスの分散性をより高めることができる。
【0058】
本発明はその基本思想から逸脱しない範囲で種々に変形することができる。例えば、図示の実施形態では、伝熱管32等の素材をステンレス鋼製としたが、軽量化が望まれる場合にはアルミニウムやアルミニウム合金にて構成することもできる。また、図示の実施形態では、1つの気化ユニット3に対してそれぞれ1本の伝熱管32を用いているが、複数の直管を伝熱管32として相互に配置上干渉しないように設けてもよい。さらに、本発明の液化ガス用気化器は、LNGの気化のみならず、沸点が−183℃の液化酸素、−186℃の液化アルゴン、−196℃の液化窒素、−42℃のプロパンなどを液状で低温貯蔵された液化ガスを気化させる場合にも適用できるものである。