(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-222245(P2015-222245A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】歪計測方法、歪計測装置、及び格子パターン
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20151113BHJP
【FI】
G01B11/16 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-107520(P2014-107520)
(22)【出願日】2014年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】591248223
【氏名又は名称】株式会社計測リサーチコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】高木 健
(72)【発明者】
【氏名】岡本 卓慈
(72)【発明者】
【氏名】宮本 則幸
(72)【発明者】
【氏名】梅本 秀二
(72)【発明者】
【氏名】大畑 秀之
(72)【発明者】
【氏名】松尾 恵輔
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065BB02
2F065CC14
2F065FF04
2F065FF44
2F065FF51
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065LL42
2F065QQ18
2F065QQ24
2F065QQ31
2F065QQ42
2F065SS01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易に精度良く歪を計測可能な歪計測方法等を提供する。
【解決手段】ピッチp、p+Δpの異なる2つの格子パターン2A、2Bが重なり合うようにして計測対象物に配置され、格子パターン同士の干渉によって一定の周期で発生するモアレ縞の移動量を読み取ることで歪を計測する歪計測方法であって、格子パターン2A、2Bを重ね合わせたときに生じる2つの格子パターンを構成する直線格子が重畳する重畳部分が複数連続して繰り返されるようにして各格子パターン2A、2Bが形成されているとともに、格子パターン2Bの直線格子は、それぞれの直線格子の面積を一定としつつ、左右両側に所定の割合で凹凸部が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチの異なる2つの格子パターンが重なり合うようにして計測対象物に配置され、前記格子パターン同士の干渉によって一定の周期で発生するモアレ縞の移動量を読み取ることで歪を計測する歪計測方法であって、前記格子パターンを重ね合わせたときに生じる2つの前記格子パターンを構成する直線格子が重畳する重畳部分が複数連続して繰り返されるようにして各前記格子パターンが形成されているとともに、前記格子パターンの前記直線格子は、それぞれの前記直線格子の面積を一定としつつ、左右両側に所定の割合で凹凸部が形成されていることを特徴とする歪計測方法。
【請求項2】
前記凹凸部は、一方の前記格子パターンの重畳部分が複数連続して繰り返される部分において、所定の割合で区分けされ、区分けされた領域毎に前記直線格子の長手方向に形成される前記凹凸部の割合が異なることを特徴とする請求項1に記載の歪計測方法。
【請求項3】
一方の前記格子パターンの前記直線格子は、直線状の格子を含むことを特徴とする請求項1、又は2に記載の歪計測方法。
【請求項4】
ピッチの異なる2つの格子パターンが重なり合うようにして計測対象物に配置され、前記格子パターン同士の干渉によって一定の周期で発生するモアレ縞の移動量を読み取ることで歪を計測する歪計測装置であって、
直線格子で構成される格子パターンを有する一方の基体と、ピッチの異なる直線格子で構成される他方の格子パターンを有する他方の基体と、を備え、
一対の前記基体の各前記格子パターンは、前記格子パターンを重ね合わせたときに生じる2つの前記直線格子が重畳する重畳部分が複数連続して繰り返されるようにして形成されており、前記格子パターンの前記直線格子は、それぞれの前記直線格子の面積を一定としつつ、左右両側に所定の割合で凹凸部が形成されていることを特徴とする歪計測装置。
【請求項5】
ピッチの異なる2つの格子パターンが重なり合うようにして計測対象物に配置され、前記格子パターン同士の干渉によって一定の周期で発生するモアレ縞の移動量を読み取ることで歪を計測する歪計測方法に用いられる格子パターンであって、
前記格子パターンは、
直線格子で構成される一方の基体と、
ピッチの異なる直線格子で構成される他方の基体と、を備え、
一対の前記基体の各前記格子パターンは、前記格子パターンを重ね合わせたときに生じる2つの前記直線格子が重畳する重畳部分が複数連続して繰り返されるようにして形成されており、前記格子パターンの前記直線格子は、それぞれの前記直線格子の面積を一定としつつ、左右両側に所定の割合で凹凸部が形成されていることを特徴とする格子パターン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、歪計測方法及び歪計測装置に関し、より詳細には、構造物が変形する際の歪を計測する歪計測方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建設分野において構造物等の歪計測には、歪ゲージやレーザー変位計等のセンサが多く用いられている。このようなセンサによる歪計測は、非常に精度良く歪(変位)を計測できるものの、電源や配線など設備の設置に手間がかかること、電気的な要素を嫌う場所への設置が困難であること、設置コストが高価になる等の問題がある。
【0003】
また、これらの問題を解決する手法として、歪により生じた変位をモアレ縞を応用して拡大表示する手法が存在する(特許文献1参照)。
【0004】
この手法は、相互に重ね合わされ、それぞれに直線格子が表示された2枚の板状の部品を計測対象物に取り付け、この重ね合わされた直線格子が光学的に干渉することで明暗パターンからなるモアレ縞を生じる現象を利用して、歪により生じた変位をモアレ縞の移動量として拡大表示させるとともに、その移動量から変位を計測するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−191282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなモアレ縞を利用した歪計測では、直線格子を細くするほどモアレ縞を明瞭に表現でき、太くするほど、明瞭ではなくなる。そのため、直線格子を細くしたいが、繊細なパターンを製造するためには高価な印刷装置等が必要となり、計測装置導入にかかるコストが高騰するという問題がある。
【0007】
また、例えば、解像度が600dpi程度の一般的な印刷機を用いて直線格子を印刷した場合、特に大きな拡大率でモアレ縞を拡大表示させようとすると、明瞭なモアレ縞を得ることができずに、精度の高い歪計測を行うことができないという問題がある。
【0008】
本願は上記各問題点の解決を課題の一例として為されたもので、簡易に精度良く歪を計測可能な歪計測方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の歪計測方法は、ピッチ(p、p+Δp)
の異なる2つの格子パターン(2A、2B)が重なり合うようにして計測対象物に配置され、前記格子パターン同士の干渉によって一定の周期で発生するモアレ縞(30)の移動量を読み取ることで歪を計測する歪計測方法であって、前記格子パターン(2A、2B)を重ね合わせたときに生じる2つの前記格子パターンを構成する直線格子(2)が重畳する重畳部分が複数連続して繰り返されるようにして各前記格子パターン(2A、2B)が形成されているとともに、前記格子パターンの前記直線格子(2)は、それぞれの前記直線格子の面積を一定としつつ、左右両側に所定の割合で凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の歪計測方法は、請求項1に記載の歪計測方法において、前記凹凸部は、一方の前記格子パターンの重畳部分が複数連続して繰り返される部分において、所定の割合で区分けされ、区分けされた領域毎に前記直線格子の長手方向に形成される前記凹凸部の割合が異なることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の歪計測方法は、請求項1、又は2に記載の歪計測方法において、一方の前記格子パターンの前記直線格子は、直線状の格子を含むことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の歪計測装置は、ピッチ(p、p+Δp)の異なる2つの格子パ
ターン(2A、2B)が重なり合うようにして計測対象物に配置され、前記格子パターン同士の干渉によって一定の周期で発生するモアレ縞(30)の移動量を読み取ることで歪を計測する歪計測装置であって、直線格子で構成される格子パターンを有する一方の基体と、ピッチの異なる直線格子で構成される他方の格子パターンを有する他方の基体と、を備え、一対の前記基体の各前記格子パターンは、前記格子パターンを重ね合わせたときに生じる2つの前記直線格子(2)が重畳する重畳部分が複数連続して繰り返されるようにして形成されており、前記格子パターンの前記直線格子は、それぞれの前記直線格子の面積を一定としつつ、左右両側に所定の割合で凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の格子パターンは、ピッチ(p、p+Δp)の異なる2つの格子
パターン(2A、2B)が重なり合うようにして計測対象物に配置され、前記格子パターン同士の干渉によって一定の周期で発生するモアレ縞(30)の移動量を読み取ることで歪を計測する歪計測方法に用いられる格子パターンであって、前記格子パターンは、直線格子で構成される一方の基体と、ピッチの異なる直線格子で構成される他方の基体と、を備え、一対の前記基体の各前記格子パターンは、前記格子パターンを重ね合わせたときに生じる2つの前記直線格子(2)が重畳する重畳部分が複数連続して繰り返されるようにして形成されており、前記格子パターンの前記直線格子は、それぞれの前記直線格子の面積を一定としつつ、左右両側に所定の割合で凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】二つの直線格子によりモアレ縞を生じさせる一例を示す模式図である。
【
図2】変位量に応じて移動するモアレ縞の一例を示す模式図である。
【
図3】モアレ縞から歪を算出する手法を説明するための図であり、
図3(a)はデジタル撮像装置により撮影したモアレ縞の画像の一例を示す模式図、
図3(b)は取得したモアレ縞に基づいてsin関数に関数近似した状態図である。
【
図4】本実施形態の格子パターンの形成方法を説明するための模式図である。
【
図5】格子パターンの一例を示す模式図であり、
図5(a)は格子パターンの基本的な構成例を示す図、
図5(b)は本願発明の格子パターンを用いて2つの直線格子を重ね合わせた状態を示す図、
図5(c)は本願発明の格子パターン例を示す図である。
【
図6】実験結果の一例を示す図であり、
図6(a)は実験1における従来格子パターンの計測結果を示す図、
図6(b)は実験1における本願発明の格子パターンの計測の結果を示す図である。
【
図7】他の格子パターンの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願の実施形態について、
図1乃至
図8を用いて詳細に説明する。
【0016】
本実施形態の歪計測方法は、
図1に示すように、ピッチp、p+Δpの異なる2つの直
線状の平行線で構成される直線格子2が並列に配置された格子パターン2A、2Bを重ね合わせることで発生する一定の周期のモアレ縞30を利用したものである。
【0017】
この歪計測方法では、例えば、複数の直線格子2がそれぞれ所定のピッチp、p+Δp
を有して平行に並んで表示された透明な2枚のシート状の基体5、10が用いられる。各基体5、10は、例えば、コンクリート構造物を計測対象物として適用した場合において、互いの格子パターン2A、2Bが重なり合うようにして配置され、計測対象領域となる表面に取り付けられる。
【0018】
そして、計測対象物に作用する応力変動により計測対象領域に変位が生じ、例えば、一方の基体10に対して他方の基体5が移動すると、
図2(a)〜(e)に示すように、その変位量に応じて2つの直線格子の位置関係が変化することで直線格子同士の干渉によってモアレ縞30が所定のピッチWでA方向に移動する。
【0019】
ここで、ピッチp、Δp、Wの関係は、
【数1】
で表される。すなわち、モアレ縞は、位置関係の微少な変化に対して大きく変化し、この変位を視覚的に(p+Δp)/Δp倍に拡大表示することが可能である。
【0020】
次に、このモアレ縞を用いて歪を算出する方法について説明する。
【0021】
本実施形態における歪の算出方法では、モアレ縞30を撮影した上で、そのモアレ縞30の画像データを
図3(a)に示すように、直線格子を構成する平行線の長さ方向をy軸、幅方向をx軸として定義し、y軸方向の輝度値の平均値を求め、その平均値を計測値として用い、この計測値を最小二乗法を用いてsin関数に関数近似するとともに(
図3(b))、歪が生じた際に変化する位相から当該歪を算出する。
【0022】
したがって、精度良く歪を算出するには、計測値が精度良くsin関数に近似できる必要がある。
【0023】
また、このような歪計測方法では、ピッチ幅を適宜変更することで、モアレ縞30の移動量を実際の変位に対して大きな拡大率を得ることができる。すなわち、大きな拡大率を得るためには、ピッチpに対し、Δpを小さくすればよい。一方で、直線格子2のパターンが繊細であるほど、明瞭なモアレ縞30を得ることができるが、高価な印刷装置が必要となる。なお、例えば、解像度が600dpiの印刷機を用いた場合、1/600inchが最小の大きさであるため、Δp=1/600以上となる。
【0024】
そこで、本実施形態の歪計測方法では、
図4(a)に示すように、格子パターン2A、2Bを重ね合わせた時に生じる各格子パターン2A、2Bの直線格子2、2が重なり合う部分(以下、「重畳部分」という。)を順に(a)〜(d)・・・(N)とした場合に、
図4(b)又は
図5(a)に示すように、それぞれの重畳部分(a)〜(N)がn個(複数)連続して繰り返されるようにして基本となる格子パターン2A、2Bが構成される。よって、格子パターン2A、2Bは、ピッチpの重畳部分がn個連続して配置されたものを一塊(A)〜(N)として、その各塊(A)〜(D)・・・(N)がnp+Δpおきに
配置されたパターンを有する。
【0025】
このように格子パターン2A、2Bを構成することで、安価な印刷技術でも明瞭且つ大きな拡大率のモアレ縞30を生じさせることが可能である。
【0026】
一方、nを大きくすることで拡大率を非常に大きくできるものの、重畳部分を複数連続する関係上、隣接する重畳部分の隙間の有無によって、各塊(A)〜(N)の輝度値の差が大きくなる。
【0027】
そこで、本実施形態の歪計測方法では、
図5(c)に示すように、基本となる一方の格子パターン2Bの各直線格子2について、直線格子2を構成するそれぞれの格子の面積は一定としつつ、左右両側に所定の割合で凹凸部50を形成して、格子パターン2Bが構成される。
【0028】
具体的には、
図5に示すように、一方の格子パターン2Bを構成する各塊(A)〜(N)の各直線格子2に左から順に1〜nまで番号を繰り返し付けて説明すると、この直線格子2を縦方向にn/m本ずつ区分けした上で、横方向に1/mの割合でずらすようにしている。なお、nは各塊(A)〜(N)の直線格子2の個数を表し、mは各塊(A)〜(N)を所定の比率で分割する分割数を表すものであって、適宜決定することができる。また、本実施形態では、便宜上、n=12、m=3とする。
【0029】
格子パターン2Bは、具体的には、i=0、・・・、m−1とし、番号(n/m)i+
1、・・・、(n/m)(i+1)までの直線格子2をi/mの割合でΔpだけ右側にシフト(左側部分を凹ませ右側部分を突出させる)させる。例えば、
図5(c)に示すように、格子パターン2Bに関し、n=12、m=3とした場合、各塊(A)〜(N)におけるそれぞれの直線格子2の数をn/mずつ区分けし、番号1〜4の直線格子2は、その長さ方向においてそれぞれ0/3の割合でΔpだけ右側にシフトさせ(割合が0なのでずらさない)、番号5〜8の直線格子2は、その長さ方向においてそれぞれ1/3の割合でΔpだけ右側にシフトさせ、番号9〜12の直線格子2は、その長さ方向においてそれぞれ2/3の割合でΔpだけ右側にシフトさせる。なお、直線格子2の一部をシフトさせる割合は、直線格子2の長さ方向において適当に区分けされた長さに対して行われ、本実施形態では、平行線を5分割した長さに対してそれぞれ行われる。
【0030】
このように一方の格子パターン2Bを上述したパターンに構成することで、各塊(A)〜(N)の輝度値は、その境で大きく変化しないため、より精度よく位相を求めることができる。
【0031】
なお、上述した凹凸を形成する割合は一例であり、適宜変更することが可能である。例えば、
図7に示すように、各塊(A)〜(N)において、直線格子2の長さ方向を3分割し、右側の凸部の割合を徐々に増やすようにして異なる割合で左右に凹凸部を形成し、直線格子のパターンを形成しても構わない。また、この凹凸の形状は、特に矩形状に限定されるものではなく、例えば、半円形状、三角形状等であっても構わない。また、本実施形態では、i=0とした関係上、番号1〜4の直線格子は、両側に平滑面を有する直線状に構成されているが、iの初期値は任意の数とすることができる。例えば、格子パターン2Bの直線格子2のすべてに凹凸部を有するように、iの初期値を「1」としても構わない。
【0032】
以上に説明したように、本実施形態の歪計測方法は、ピッチp、p+Δpの異なる2つ
の格子パターン2A、2Bを重ね合わせること一定の周期で発生するモアレ縞30の移動量を読み取ることで歪を計測する歪計測方法であって、格子パターン2A、2Bを構成する2つの直線格子2が重畳する重畳部分が複数連続して繰り返されるようにして各格子パターン2A、2Bが形成されているとともに、一方の格子パターン2Bの直線格子2は、それぞれの直線格子2の面積を一定としつつ、左右両側に所定の割合で凹凸部を形成したものである。
【0033】
次に、格子パターン2A、2Bの従来の格子パターンと本発明の格子パターンの精度に関し検証実験を行った結果例を
図6に示し、詳述する。
【0034】
本実験は、直線格子が同一形状の従来の格子パターンと本発明の格子パターンを用意して、マイクロステージに当該格子パターンを有する2枚の基体を取り付け、微少な変位を与えることにより生じるモアレ縞を画像データとして取得し、その画像データからsin関数に関数近似した曲線を求めたものである。
【0035】
従来と本発明の格子パターンの大きな違いは、従来の格子パターンは、2つの直線格子が同一形状であるのに対し、本発明の格子パターンは、2つの直線格子の形状が上述したように異なる点にある。
【0037】
本実験では、上記表1に示すように、2種類の格子パターンを用いており、(1)及び(3)は従来の格子パターン、(2)及び(4)は本発明の格子パターンである。(1)、(2)は実験1における格子パターンの詳細を示し、(3)、(4)は実験2における格子パターンの詳細を示す。なお、Mは拡大率を示すものである。
【0038】
また、モアレ縞を撮像するための撮像装置にはマイクロビジョン製CMOSカメラを用い、画像サイズは1600×1200pixelで、フレームレートは5.6fpsで撮影した。また、撮像装置は、基体から750mm離れたところから撮影した。
【0039】
図6は、実験1の結果を示すものであり、
図6(a)は、格子パターン(1)により生じたモアレ縞の輝度値の平均と、sin関数に近似した曲線を算出した結果を示す。一方、
図6(b)は、格子パターン(2)により生じたモアレ縞の輝度値の平均と、sin関数に近似した曲線を求めた結果を示す。なお、実験2の結果も
図6と同様であったためその説明は省略するものとする。
【0040】
本結果より、
図6に示すように、従来の格子パターンによるモアレ縞の輝度値の平均は階段状になっているのに対して、本発明の格子パターンではなめらかな曲線になっており、sin関数にも良く近似できることが確認できた。
【0041】
また、レーザ変位計を用いて変位量を計測した結果、本発明の格子パターンにより得られた算出値の方が精度良く計測できていることが確認できた。
【0042】
また、上述した歪計測方法で用いられる歪計測装置Sは、
図8に示すように、複数の直線格子2がそれぞれ所定のピッチp、p+Δpを有して平行に並んで表示された透明な2枚のシート状の基体5、10と、この基体を被対象物に配置した際に得られるモアレ縞の画像データを取得する画像取得装置55と、取得した画像データから歪を算出する算出装置60と、を備える。
【0043】
また、基体5、10の材質はどのような材質であっても構わないが、基体5、10が特に軟らかい材質である場合、一方の基体5と他方の基体10との間、一方の基体5と計測対象物との間の隙間を均一にすることは難しい。この隙間が均一でない場合は誤差の要因となるため、例えば、図示しないが、液状の潤滑剤としての油等を隙間に入れる(基体5、10又は計測対象物に塗布するなど)ことで密着させることが好ましい。この潤滑剤により、表面張力により、基体5、10が引き付けられ隙間が均一となるため、簡単に誤差を軽減することができる。
【0044】
画像取得装置55は、例えば、デジタルカメラ等の光学式撮像装置であって、計測対象物2から所定の距離離れた場所から基体5、10の表面に表示されるモアレ縞5を撮像し、撮像した画像データを算出装置に送信する。
【0045】
算出装置60は、画像取得手段によって取得された画像データに基づいてモアレ縞5の歪を算出する。この算出手法は、従来から公知であるためその説明は省略するものとする。この算出装置60は、例えば、一般的に汎用コンピュータと称される装置である。
【0046】
また、この算出装置60は、CPU(Central Processing Unit)、作業用RAM(Random Access Memory)、及び各種プログラムやデータを記憶するROM(Read Only Memory)等によって構成されている。そして、CPUが例えばROM等に記憶された歪算出プログラムを実行することにより、取得された画像データに基づいて歪が算出される。
【0047】
なお、本実施形態は一形態であって、この形態に限定されるものではない。また、本実施形態では、一方の格子パターンの直線格子のみに、所定の割合で凹凸部を形成する形態について詳述しているが、両方の格子パターンの直線格子に、所定の割合で凹凸部を形成するようにしても構わない。
【符号の説明】
【0048】
p ピッチ
2 直線格子
2A、2B 格子パターン
30 モアレ縞