【解決手段】基板10の下面側に半導体層20を有する発光素子を準備する発光素子準備工程と、支持部材2上に、前記発光素子を半導体層20側から載置する発光素子載置工程と、原子層堆積法により、前記基板10の上面の少なくとも一部又は側面の一部を光取り出し領域として露出させるように、前記基板10の表面及び前記半導体層20の表面を前記光反射層30で被覆する光反射層30被覆工程とを、この順に含む。これにより、光反射層30を所期の設計通りに機能させることができ、信頼性の高い光反射層30でもって高品質な半導体発光装置を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。さらに、本明細書において、層上等でいう「上」とは、必ずしも上面に接触して形成される場合に限られず、離間して上方に形成される場合も含んでおり、層と層の間に介在層が存在する場合も包含する意味で使用する。
【0011】
一実施の形態に係る半導体発光装置の製造方法によれば、前記光反射層被覆工程において、前記基板の上面の少なくとも一部又は側面の一部にマスクを形成し、原子層堆積法によって前記基板の表面及び前記半導体層の表面を前記光反射層で被覆した後に、前記マスクを除去することができる。
【0012】
また、他の実施の形態に係る半導体発光装置の製造方法によれば、前記光反射層被覆工程において、原子層堆積法によって前記基板の表面及び前記半導体層の表面を前記光反射層で被覆した後に、前記基板を割断して、光取り出し領域を露出させることができる。
【0013】
さらに他の実施の形態に係る半導体発光装置の製造方法によれば、前記発光素子載置工程において、前記支持基板の上面には電極層を有しており、該電極層に前記半導体層が電気的に接続され、前記光反射層被覆工程において、前記基板の表面及び前記半導体層の表面と共に、前記支持部材の上面を前記光反射層で被覆することができる。
【0014】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置の製造方法によれば、前記光反射層を、誘電体多層膜とできる。
【0015】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置の製造方法によれば、前記光反射層に、誘電体多層膜と、前記誘電体多層膜の上に積層された金属層を含めることができる。
【0016】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置の製造方法によれば、前記誘電体多層膜は、SiO
2、TiO
2、Nb
2O
5、ZrO
2、Al
2O
3、Ta
2O
5、MgF
2、AlN、SiON、及びSiNよりなる群から選択された少なくとも二種類以上の層で構成できる。
【0017】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置の製造方法によれば、前記発光素子準備工程において、前記基板の幅が、前記半導体層の幅よりも大きい前記発光素子を準備することができる。
【0018】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置の製造方法によれば、前記発光素子準備工程において、前記基板に前記半導体層を、直接接合により接合することができる。
【0019】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置の製造方法によれば、前記発光素子準備工程において、前記基板に波長変換部材を含有させる一方、透光性の成長基板上に前記半導体層を成長させ、前記成長基板が前記基板に面する姿勢で、該基板と接合させることができる。
【0020】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置の製造方法によれば、前記基板の厚さを、前記成長基板の厚さよりも厚くすることができる。
【0021】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置によれば、さらに前記基板と前記半導体層との間に、透光性の成長基板を介在させ、前記基板には、波長変換部材を含有させることができる。
【0022】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置によれば、前記基板と前記成長基板とを、直接接合により接合させることができる。
【0023】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置によれば、前記光反射層に、炭素成分を含有させることができる。
【0024】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置によれば、さらに上面に電極層が設けられた支持部材を有し、該電極層に前記半導体層が電気的に接続され、前記光反射層は、前記基板の上面の少なくとも一部が光取り出し領域として露出するように、前記基板の表面及び前記半導体層の表面と共に、前記支持部材の上面を一体的に被覆することができる。
【0025】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置によれば、前記光反射層は、前記基板の側面の一部が光取り出し領域として露出するように、前記基板の表面と前記半導体層の表面とを一体的に被覆し、さらに前記光反射層のうち少なくとも前記基板の側面を被覆する部分を、光反射性の被覆部材で被覆することができる。
【0026】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置によれば、前記光反射層を、原子層堆積で形成することができる。
【0027】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置によれば、前記光反射層を、誘電体多層膜で構成できる。
【0028】
さらにまた、他の実施の形態に係る半導体発光装置によれば、前記光反射層に、誘電体多層膜と、該誘電体多層膜の上に積層された金属層を含むことができる。
(実施の形態1)
【0029】
次に、本発明の実施形態1に係る半導体発光装置100の積層構造の模式図を
図1に示す。これらの図に示す半導体発光装置100は、基板10と、基板10の下面と光学的に接続される半導体層20と、これら半導体層20の表面及び基板10の表面の一部を一体的に被覆する光反射層30を備えた発光素子1と、この半導体発光装置100を実装する支持部材2を備える。支持部材2は、セラミック基板やAl基板、ガラスエポキシ基板等が利用できる。支持部材2の表面(支持側実装面)には電極層3が設けられている。また発光素子1には、半導体層20の一面(素子側実装面)に電極が設けられている。この発光素子1は、バンプ5等を介して支持部材2上に実装される。さらに発光素子1の電極と、支持部材2の電極層3とがバンプ5でもって電気的に接続される。さらにまた発光素子1は、半導体層20が発する光を外部に出力するための光取り出し領域11を、基板10の一面(
図1において上面)としている。
(半導体層20)
【0030】
半導体層20は、透光性の成長基板24上に成長される。ここでは半導体層20は、
図2の要部拡大断面図に示すように、成長基板24側(光取り出し領域11側)から順に、n型半導体層21と活性領域22とp型半導体層23とを備えており、活性領域22から第一波長の光を発する。
(基板10)
【0031】
次に、半導体層20と基板10とが光学的に接続されるよう、成長基板24上に基板10を接合させる。ここで基板10は、半導体層20が発する第一波長の光を、これとは波長の異なる第二波長の光に変換する波長変換部材を含む波長変換層である。
図1の例では、複数の半導体層20を一方向に並べた状態で、各半導体発光層の成長基板24を共通の基板10(波長変換層)と接合させることで、各半導体層20が発する光を基板10内で反射・伝搬させて、各半導体素子のドット感を軽減し、面状光源として発光面の均一化に資することができる。
【0032】
なお、この例では半導体層20は複数を離間させて、共通の基板10に接合させているが、半導体層を一とすることもできる。例えば
図3に示す変形例に係る半導体発光装置300では、一の半導体層20’を成長基板24’を介して基板10’に接合している。また、複数の半導体層は、個別の半導体層とする他、共通の成長基板に対して複数の半導体層を用いることもできる。
【0033】
基板10と成長基板24とは、直接接合により接合されている。直接接合は接着層を介さず直接基板同士を接合する技術である。これによって強固な接合状態が得られる。また接着剤等が不要となるため、接着剤との界面で反射される回数を減らすことができ、光取り出し効率の向上にも寄与する。直接接合としては、拡散接合、常温接合、陽極接合などが利用できる。特に常温接合では表面活性化接合、水酸基接合、原子拡散接合等が利用できる。
【0034】
基板10の幅は、半導体層20の幅よりも大きくすることが好ましい。これにより、基板10の受光面を、発光素子1の出射面より幅広として光学的に接続することで、接合面における光の損失を低減できる。また原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)を用いることで、幅の広い基板に対しても、スパッタでは成膜しづらい、基板10の実装面側表面(下面)にも均一な光反射層30を積層できる。さらに基板10と半導体層20との間に、透光性の成長基板24を介在させることで、発光素子1の厚み(半導体層20、成長基板24、及び基板10の総厚み)が厚くなったとしても、その側面に均一な光学反射層30を設けることができる。特に基板10の厚さを成長基板24よりも厚くすることで、基板10の側面に均一な光反射層30を設け易くできる。また基板10の厚さを、成長基板24の厚さよりも厚くしてもよい。基板10を成長基板24よりも厚くしても、基板10の側面に均一な光反射層30を形成して、この領域での光の損失を低減できる。
【0035】
波長変換部材を含む基板10とする場合には、基本となる光透過部材として、ガラス板に波長換部材を備えたもの、あるいは波長換部材である蛍光体結晶若しくはその相を有する単結晶体、多結晶体、アモルファス体、セラミック体、あるいは蛍光体結晶粒子による、それと適宜付加された透光性材料との焼結体、凝集体、多孔質性材料、それらに透光性材料、例えば透光性樹脂を混入、含浸したもの、あるいは蛍光体粒子を含有する透光性部材、例えば透光性樹脂の成形体等で構成できる。なお光透過部材は、樹脂等の有機材料よりも無機材料で構成されることが耐熱性の観点からは好ましい。具体的には蛍光体を含有する透光性の無機材料からなることが好ましく、特に蛍光体と無機物(結合材、バインダー)との焼結体、あるいは蛍光体からなる焼結体や結晶とすることで信頼性が高まる。なお、波長変換部材としてYAGの蛍光体を用いる場合、YAGの単結晶や高純度の焼結体のほか、アルミナ(Al
2O
3)を結合材とするYAG/アルミナの焼結体、ガラスを結合材とした焼結体が信頼性の観点から好ましい。また、光透過部材を板状とすることで、面状に構成される発光素子1の出射面との結合効率が良く、光透過部材の主面とが略平行になるよう容易に位置合わせできる。加えて、光透過部材の厚みを略一定とすることで、通過する光の波長変換量を略均一として混色の割合を安定させ、発光面の部位における色むらを抑止できる。このため、1つの光透過部材に複数の発光素子1を搭載する場合において、個々の発光素子1の配置に起因する発光面内の輝度や色度の分布にむらが少なく略均一で高輝度の発光を得ることができる。なお、波長変換機能を備えた光透過部材の厚みは、発光効率や色度調整において、10μm以上500μm以下程度であることが好ましく、さらには30μm以上200μm以下程度であることがより好ましい。一方、半導体層20の厚さは10μm程度、成長基板24の厚さは、10μm〜400μmとすることが好ましい。
【0036】
なお、波長変換部材は、青色発光素子と好適に組み合わせて白色発光とでき、波長変換部材に用いられる代表的な蛍光体としては、ガーネット構造のセリウムで付括されたYAG系蛍光体(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)及びLAG系蛍光体(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)が挙げられ、特に、高輝度且つ長時間の使用時においては(Re
1-xSm
x)
3(Al
1-yGa
y)
5O
12:Ce(0≦x<1、0≦y≦1、但し、Reは、Y、Gd、La、Luからなる群より選択される少なくとも一種の元素である。)等が好ましい。
(実施の形態2)
【0037】
以上の例では、基板10が波長変換層の場合を説明したが、本発明は該構成に限られない。例えば基板10を成長基板24とすることもできる。このような例を実施の形態2として、
図4に示す。この図に示す半導体発光装置400は、半導体層20”の上面に、成長基板である基板10”が接続されている。ここでは成長基板として例えば透光性のサファイア基板等が利用できる。製造時において、サファイア基板上に半導体層20”をエピタキシャル成長させ、発光素子を得、これを支持部材2”上に実装している。
(光反射層30)
【0038】
光反射層30は、基板10と半導体層20を接合させた状態で表面を被覆する一方、基板10の一部のみを露出させて、露出させた部分を光取り出し領域11としている。また光反射層30は、
図1の模式断面図に示すように、基板10の表面及び半導体層20の表面と共に、支持部材2の上面を一体的に被覆している。なお
図1の例では、基板10の上面の全面を光取り出し領域11としているが、必ずしも全面を光取り出し領域とする必要はなく、例えば上面の一部を光反射層で被覆して、上面の内で被覆されていない領域を光取り出し領域とすることもできる。
【0039】
特に光反射層30は、基板10である波長変換層の側面も被覆するため、従来、波長変換層の端面から漏れていた光を基板10側に反射させて、光取り出し領域11から有効に取り出すことができ、光の取り出し効率を改善できる。
【0040】
この光反射層30は複数層で構成されている。ここでは、誘電体多層膜を光反射層(D
istributed Bragg reflector:DBR)としている。誘電体多層膜は、当該分野で公知の材料を用いることができるが、例えばSiO
2、TiO
2、Nb
2O
5、ZrO
2、Al
2O
3、Ta
2O
5、MgF
2、AlN、SiON、及びSiNよりなる群から選択された少なくとも二種類以上の層から構成されることが好ましい。また光反射層30の膜厚はほぼ均一としている。なお、本明細書において光反射層の膜厚がほぼ均一とは、膜厚の分布が平均値の±10%以内に収まっている状態を指す。また本明細書において光反射層とは、光を反射させる機能を奏する層であって、設計された波長の光成分を80%以上反射するものを指す。
(ALD)
【0041】
このような光反射層30は、ALDを用いて好適に積層できる。特に上記したDBRは、膜厚で反射光の波長を制御できるため、設計値通りの膜厚に成膜することが重要となる。従来、DBRはスパッタで成膜されていたところ、スパッタではあらゆる部位で均一な膜厚で成膜させることが困難であった。このため、スパッタ源から遠い部位では膜厚が不均一となる結果、設計通りの反射性能を発揮させることができず性能の低下を生じていた。これに対して、ALDでは原子レベルで均一な膜厚に制御できることから、膜厚の制御が重要な光反射層の成膜において理想的に使用できる。特に、複数膜を積層するDBRにおいて、各誘電体層の膜厚を正確に制御できるので、設計値に近付けた高品質なDBRの形成に好適となる。
【0042】
また、光反射層30をALDで成膜することにより、光反射層30内に炭素成分が含有される。これによって、光反射層30の熱伝導率が上がり、放熱性の向上期待できる。
(追加反射層)
【0043】
また光反射層30は、DBRの上面にさらに、追加の反射層を設けてもよい。追加反射層には、例えば
図2の拡大断面図に示すように、例えばAgやAlなどの光反射性に優れた金属膜32が利用できる。DBRを表面に設けたことで、電気的な分離、絶縁が図られているので、その上面にさらに金属膜32のような導電性の層を成膜することが可能となる。これにより、金属層をショートさせることなく配置できる。また、支持部材2の上面においては、金属層が表面側に配置されるため、戻り光に対して金属層で光反射することができる。特に光反射層30をDBRとする場合、は、発光素子1からの光の波長に対して設計されているため、これとは波長の異なる戻り光に対しては反射機能が不十分となる。よって、追加反射層として金属層を設けたことで、戻り光に特化した反射機能を付加できる。
【0044】
以上のように、高精度に膜厚を制御可能な光反射層30を、発光素子側面全体にも形成できるため、活性領域22が発する光や、基板10内で反射・伝搬された光を、光反射層30でもって効果的に反射させて、光取り出し領域11から出射させることができ、光取り出し効率を改善できる。特に従来の半導体発光装置500は、
図5の断面図に示すように半導体層520や光透過部材510の側面に直接、別途被覆部材540を設けて、装置500の側面方向からの光の漏れを阻止する構成を採用していた。しかしながらこの構成では、被覆部材540としてシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等、白色の有機系の材料が用いられていることから、経年劣化が生じて長期使用の際には信頼性が低下(光取り出し効率の低下)するという問題があった。また、被覆部材540を光透過部材510の周囲に設ける結果、装置が一回り大型化するという問題もあった。これに対して上述した実施形態に係る構成では、薄膜の光反射層30でもって側面方向からの光の漏れを阻止できるので、このような被覆部材540を省くことが可能となり、半導体発光装置の更なる小型化が可能となる。さらに有機材料の被覆部材を使用しないことで、無機系の材料で構成することが可能となり、長期使用時の信頼性も向上する。
(実施の形態3)
【0045】
ただし本発明は、光反射層30に加えて光反射性の被覆部材を設ける態様も含む。被覆部材を設けることで、側面など、光取り出し領域以外の部分からの光の漏れを一層低減して、光の封じ込め効果を一層高めることができる。さらに被覆部材と発光素子との間に光反射層を設けたことで、発光素子からの光が直接、被覆部材に照射されなくなる結果、被覆部材の劣化を軽減することができる。このような例を実施の形態3に係る半導体発光装置600として、
図6に示す。この例では、基板10及び半導体層20の、光取り出し領域11(
図6において右側)と反対側の側面(
図6において左側)の側面に設けられた光反射層30の上から、さらに被覆部材40を設けている。これによって、光反射層30をさらに透過する光成分を、被覆部材40でもって反射させている。
【0046】
また上述した
図1の例では、基板10である波長変換層の上面を光取り出し領域11としているが、本発明はこの構成に限られない。例えば、基板の側面の一部を光取り出し領域とすることもできる。この場合は、光反射層30でもって基板の表面と半導体層の表面とを一体的に被覆すると共に、光取り出し領域となる基板の側面の一部のみを露出させる。
図6の模式断面図に示す実施の形態2に係る半導体発光装置600でも、上述の通り基板10の側面(
図6において右側)を光取り出し領域11とした構成を採用している。
(半導体発光装置の製造方法)
【0047】
次に、
図1に示す半導体発光装置の製造方法を説明する。まず、基板10の下面側に半導体層20を有する発光素子を準備する。半導体層20は、成長基板24上にn型半導体層21、活性領域22、p型半導体層23等、必要な層を順にエピタキシャル成長して形成される。必要に応じて、半導体層20の上面を凹凸に加工して、光取り出し効率の向上を図ることができる。この際、SiON、Al
2O
3、TiO
2、Ta
2O
5、SiO
2、SiON、Nb
2O
5、SiN層等の介在層を設けることで半導体層の接合面を平坦化した上で、基板10を直接接合することができる。
【0048】
次に支持部材2上に、発光素子を半導体層20側から載置して実装する。ここでは、支持部材2の上面にパターニングされた電極層3に、半導体層20の電極をバンプ5などを介して電気的に接続する。
【0049】
さらに、基板10の光取り出し領域11を除く表面と半導体層20の表面、並びに支持部材2の上面を、ALDを用いて光反射層30で被覆する。これによって基板表面の一部が露出されて、光取り出し領域11が形成される。また光取り出し領域11となる部分には、予めマスクを配置し、マスクした状態で光反射層30を被覆させた後、マスクを除去する。これによって、基板10や半導体層20の表面と共に、支持部材2の上面が光反射層30で被覆された半導体発光装置が得られる。
【0050】
一方、
図6に示す半導体発光装置の製造方法を、
図7を参照して説明する。まず、上面側にガラス等の導光部材12を有する基板10の下面に、複数の半導体層20がそれぞれ介在層25を介して接合され、さらに接合された各半導体層20の下面側にn電極およびp電極が形成された発光素子1’を準備する。
【0051】
次に、
図7Aに示すように、導光部材12を上にした姿勢で、支持部材となる粘着シートAS上にn電極及びp電極が接するように発光素子1’を設置する。
【0052】
次に、
図7Bに示すように、原子層堆積法によって導光部材12の表面、基板10の表面、介在層25(AlON層等)及び半導体層20の表面を、一体的に光反射層30で被覆する。次に、
図7Cに示すように、隣接する半導体層20同士の間隙を埋めるように、光反射性を有する被覆部材40を配置する。なお、被覆部材40を成形する方法としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法等の一般的な成形法を採用することができる。
【0053】
そして
図7Dに示すように、隣接する少なくとも2つの半導体層20の間の位置で、被覆部材40、導光部材12及び基板10を切断することにより、割断された導光部材12及び成長基板10の端面に光取り出し領域11が露出される。なお、被覆部材40、導光部材12及び成長基板10を切断する方法は、例えばダイシングやダイヤモンドカットなどが用いられる。このような製造工程を経て、
図6に示すような半導体発光装置が得られる。
(比較試験)
【0054】
本実施の形態で用いた光反射層の性能を調べるため、
図1の半導体発光装置と、比較例として
図5に示す半導体発光装置を作成し、色度と光束を測定した結果を、
図8と
図9のグラフにそれぞれ示す。これらに図において、実施例1〜6は光反射層としてALDでDBRを設けている。また各実施例、比較例では発光素子として青色LEDを使用した。具体的には、実施例1〜3はいずれも被覆部材を有しない構成、実施例4〜6は被覆部材を有する構成としている。また光反射層として、反射光の波長を異ならせて設計したDBRを用いた。より具体的には、実施例1、4では青色光を反射させるDBR、を使用している。また実施例2、5は青色光と緑色光を反射するDBR、実施例3、6は緑色光を反射するDBRを、それぞれ使用している。一方比較例1は、青色LEDを使用しつつ、光反射層も被覆部材も有しない半導体発光装置としている。また比較例2は、被覆部材を備える構成を採用している。
図8及び
図9において、○は被覆部材を有しない実施例1〜3及び比較例1に係る半導体発光装置を、△は被覆部材を有する、実施例4〜5及び比較例2に係る半導体発光装置を、それぞれ示している。
【0055】
図8に示すように、○で示す被覆部材を有しない半導体発光装置は色度が広範囲に及ぶものの、△で示す被覆部材を設けた半導体発光装置の色度に近付けることが可能であることが判る。また
図9に示すように、△で示す被覆部材を有する半導体発光装置に比べ、○で示す被覆部材を有しない半導体発光装置の方が、取り出し効率が相対的に優れていることが確認できる。特に青色光と緑色光を反射するDBRを採用した実施例2は、高い光束を示しており、色度を従来の被覆部材を用いた半導体発光装置と同程度としつつ、光束を高めることが可能であることが確認された。このように、本実施の形態によれば、被覆部材を用いずとも、被覆部材で被覆した場合と同等の光閉じ込めを実現しつつ、光束値を向上させることが可能であることが判る。また上述の通り、被覆樹脂を使用しないことから、有機系樹脂等の有機物を排除して無機物のみで構成することが可能となり、信頼の向上も図られる。
【0056】
このように、ALDによれば、どの位置でも同じ膜厚で成膜でき、これによって全方向に均一な光学多層膜を形成できるので、光学性能を高めた半導体発光装置を実現できる。