【解決手段】発光素子と、前記発光素子が発する光を吸収して異なる波長の光を発する波長変換材料を含む波長変換部材を備え、前記波長変換部材の形状を変形させることが可能な変形部材と、前記波長変換部材の上面に、前記変形時に前記波長変換部材の表面形状を保つ保持部材とを備える。
前記波長変換部材は、前記発光素子の光出射面側に設けられており、前記保持部材は、前記波長変換部材の表面形状と対応した形状を有する透光性の部材である、請求項1に記載の発光装置。
前記変形部材によって前記波長変換部材の形状を変化させることで、前記発光装置の発光色を変化させることが可能なことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の発光装置。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子チップ(発光素子)や、発光素子と発光素子からの光を吸収して異なる波長の光を発する蛍光体とを組み合わせて用いた発光装置が、各種の照明装置に用いられている。このような発光装置は、チップや蛍光体等にばらつきがあるために、同様に生産しても得られる発光装置は異なる色度を持つ。
【0003】
この問題を解決するため、従来、発光装置の製造工程内で、ばらつきを抑制する工夫がなされてきたが、製造工程で厳格な色度の管理をするのではなく、製造後に色度を調整する技術も提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1 に、発光素子を封止する波長変換部材の厚みを変化させることで、色度を調整する技術が提供されている。
【0005】
上記技術は、波長変換部材を押圧することで変形させて光照射方向の厚みを変化させることで、色度を可逆的に調整するというものである。
また、発光装置を製造した後、例えば発光装置を組み込んだ照明装置の使用中に発光の色調を調整したいという要望もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の1つの実施形態について説明する側断面図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態に関して、波長変換部材を変形させた状態を説明する側断面図である。
【
図3A】本発明の保持部材の一例を説明する側断面図である。
【
図3B】本発明の保持部材と波長変換部材の一例を説明する側断面図である。
【
図4】本発明の1つの実施形態について説明する側断面図である。
【
図5】本発明の1つの実施形態に関して、波長変換部材を変形させた状態を説明する側断面図である。
【
図6】本発明の1つの実施形態について説明する側断面図である。
【
図7】本発明の1つの実施形態に関して、波長変換部材を変形させた状態を説明する側断面図である。
【
図8】本発明の1つの実施形態について説明する側断面図である。
【
図9】本発明の1つの実施形態に関して、波長変換部材を変形させた状態を説明する側断面図である。
【
図10A】本発明の1つの実施形態に関して説明する上面図である。
【
図10B】本発明の1つの実施形態に関して、波長変換部材を変形させた状態を説明する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具現化するための被覆部材付き発光素子及び発光装置を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる例示に過ぎない。尚、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0013】
(実施形態1)
本発明の第1実施形態における発光装置の構造を、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の発光装置の一実施形態を示す側断面図である。この発光装置は、導体パターンが形成された基板11上に実装されたLED チップ等の発光素子13を有している。
【0014】
また、基板11上には、発光素子13(より詳細には、発光素子13の光出射面となる上面と、発光素子13の側面)を被覆する波長変換部材15と、波長変換部材15を変形させることが可能な変形部材19とが備えられている。本実施形態の変形部材19は、波長変換部材15の側面を囲い、波長変換部材の側面と密着するよう配置されている。波長変換部材15の光出射面側の面(上面)は略平坦である。
【0015】
また、波長変換部材15の光照射方向の表面形状を保持するために、透光性の保持部材17が、波長変換部材15の上方に備えられている。本実施形態においては、波長変換部材15の上方に保持部材17を支持するため、変形部材19が保持部材17を支持する支持部を兼ねている。
図1に示すように、保持部材17の波長変換部材15と対向する面(接触面)は、略平坦である。また、波長変換部材15が変形していない状態では波長変換部材15と保持部材17は離間している。
【0016】
図2に示すように、変形部材19を発光装置の中心方向に移動させることで、変形部材19により波長変換部材15を側面方向から押圧し、波長変換部材15を変形させる。この時、波長変換部材15の光照射方向の厚みが変化する。そして、この変形の際、保持部材17(より詳細には保持部材17の接触面)が波長変換部材15の上面と接触することで、波長変換部材の表面形状を保持部材との接触面と同形状に保持することができる。
【0017】
上記により、波長変換部材の表面形状を保持したまま、発光の色調を調整することができる。
【0018】
保持部材17の形状によって、波長変換部材15の表面形状は任意のものとすることができる。例えば、上記の実施形態では、保持部材17の接触面の形状は、波長変換部材15の変形前の表面形状と略同様の形状としたが、変形前の表面形状と異なる形状としてもよい。たとえば、
図3Aに示すように、保持部材17の接触面を曲面とすることで、
図3Bに示すように、波長変換部材15の変形時の表面形状を保持部材の曲面と対応した形状とすることができる。
【0019】
(実施形態2)
本発明の第2実施形態における発光装置の構造を、
図4を参照して説明する。この発光装置は、基板11上に、波長変換部材15を備え、さらに、波長変換部材15の表面形状を保持したまま光照射方向から押圧する保持部材17を備えている。この保持部材17は本実施形態において、変形部材を兼ねており、保持部材17は、波長変換部材15を押圧する透光性の押圧面18を備える。
保持部材17を支持するため、基板11に接続され、保持部材17を支持する支持部20を備える。
保持部材17の押圧面18は波長変換部材15の上方に、保持部材17を支持する支持部20は波長変換部材15の周囲に配置されている。
図4では押圧面が波長変換部材15と接触しているが、離間した状態で配置されていてもよい。
【0020】
図5に示すように、保持部材17の波長変換部材を押圧するための押圧面18が、支持部20に沿って発光装置の上面側から波長変換部材15側に移動し、波長変換部材15を押圧して変形させることで、光照射方向の波長変換部材15の厚みが変化する。この場合でも、波長変換部材15のうち、少なくとも一部の表面形状を保持部材17の接触面の形状に制限し、保持することができる。
【0021】
変形部材を兼ねる保持部材17を移動させる方法の例として、モータと連動させて移動させる、空気で加圧するといった方法がある。
【0022】
(実施形態3)
図6に示すように、保持部材を兼ねた支持部20を波長変換部材15の側面に設け、波長変換部材15の形状に対応した形状とすることで、波長変換部材15の側面形状を維持したまま変形させることができる。またこの時、凹部12を基板11上に設けるとよい。
【0023】
基板11上に凹部12を設けることで、波長変換部材15が上方から押圧面18に押圧されて変形した際、波長変換部材15の一部が凹部12に収容される。これにより、波長変換部材15の上面および側面の形状を保持した状態で、厚みを薄くすることができる。一方で波長変換部材15の光照射方向側は押圧面18に、側面は支持部を兼ねた20により表面形状を保持されることになる。
以上より、光照射方向だけでなく側面の形状も保持したまま、波長変換部材15を変形させ、色ムラを少なくしながら発光の色調を調整することができる。
【0024】
本実施形態においては、波長変換部材の光出射面と側面の形状を保持しながら、発光の色調を調整することができる。
【0025】
(実施形態4)
本発明の第4実施形態における発光装置の構造を、
図8から
図10を参照して説明する。この発光装置は、波長変換部材15の上面に、変形部材を兼ねる保持部材17を有することに加え、波長変換部材15の側面に、保持部材を兼ねる支持部20を有している。
波長変換部材15は発光装置の上方に向かって広がる形状を有しており(つまり波長変換部材15の側面は基板11に対して傾斜している)、支持部20は、波長変換部材15の側面形状とほぼ一致する側面を有している。支持部の一部20´は、基板11上を横方向に移動することができる。
【0026】
図9に示すように、発光素子の上方から、保持部材17の押圧面18によって波長変換部材15の上面を押圧して変形させ、波長変換部材15の光照射方向の厚みを変化させる。この変形時、支持部の一部20´は、波長変換部材15の側面の角度を保持したまま、基板11上において、発光装置の中心から外側方向に向かって水平に移動する。
【0027】
波長変換部材15と支持部20の位置関係に関しての例を、
図10A、
図10Bに示す。
図10Aに波長変換部材15を押圧する前の、
図10Bは波長変換部材15を押圧して変形させた後の上面図である。
支持部20は4つの部分に分離しており、上面視において該4つの部分をそれぞれ1辺とする矩形をなしており、矩形の波長変換部材15を取り囲んでいる。
波長変換部材15を押圧して変形させることで支持部20が押圧され、
図10Bの20´で示す向かい合う2辺が移動することで、波長変換部材15の側面形状を保持したまま光照射方向の厚みを変化させることができる。
【0028】
以上の方法により、実施形態4においては、波長変換部材の表面および傾斜した側方の形状を保持したまま、発光の色調を調整することができる。
【0029】
次に、本発明の発光装置および各構成部材の構造について、以下に詳述する。
【0030】
(発光装置)
本発明の発光装置は、正負のリード電極や反射部材等を備えたパッケージ内に発光素子を収容した表面実装型発光ダイオードや砲弾型発光ダイオード、発光素子の周囲に樹脂や蛍光体層等を形成したチップサイズパッケージ型発光ダイオードなどを用いることができる。
【0031】
なお、発光素子は、例えば、p型半導体層と、光を放出する活性層と、n型半導体層と、p型半導体層と電気的に接続されるp側電極と、n型半導体層と電気的に接続されるn側電極を有する。発光素子の電極は、ダイボンディングやワイヤボンディングやフリップチップボンディング等によって正負のリード電極に電気的に接続されている。また、発光素子の電極は、発光装置の外部に露出して、実装基板等と接合されるリード電極とされていてもよい。
【0032】
発光素子が波長変換部材15や波長変換部材の変形に伴って変形する部材(例えば、波長変換部材の下方であって、発光素子の上に設けられた透光性層)に直接被覆されている場合には、発光素子はワイヤ等を用いないフリップチップボンディングで実装されることが好ましい。これにより、発光素子の断線等のおそれを低減することができる。
【0033】
発光素子は、発光波長や材料は、例えば、青色や紫色の発光をする発光素子、例えば、サファイア基板上にGaN系半導体が積層された発光素子を用いることができる。これにより、後述する波長変換部材と組み合わせて、容易に白色の光の発光装置を製造することができる。
【0034】
(波長変換部材)
発光装置は、発光素子からの発光だけでなく、その発光を吸収して異なる波長の発光を行う波長変換部材を有している。発光装置からの発光色(発光色調)は、これら発光素子からの発光と波長変換部材からの発光が合わさったものとなる。
【0035】
波長変換部材は波長変換材料を含有している。波長変換材料としては、例えば蛍光体を用いることができる。蛍光体は種々の方法で発光装置に設けられる。例えば、発光素子を封止する透光性の封止部材に含有させることができる。
【0036】
蛍光体としては、発光素子からの光を吸収して別の波長の光を発することのできる蛍光体であれば様々なものを用いることができる。例えば、ユーロピウム、セリウム等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体、より具体的には、ユーロピウムで賦活されたα又はβサイアロン型蛍光体、各種アルカリ土類金属窒化シリケート蛍光体、ユーロピウム等のランタノイド系元素、マンガン等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類のハロシリケート蛍光体、アルカリ土類金属シリケート蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属硫化物、アルカリ土類金属チオガレート、アルカリ土類金属窒化ケイ素、ゲルマン酸塩、セリウム等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩又はユーロピウム等のランタノイド系元素で主に賦活される有機物及び有機錯体等が挙げられる。特に、青色発光の発光素子と組み合わせる場合、黄色蛍光体であるYAG系蛍光体、赤色蛍光体であるSCASNやKSF、緑色蛍光体のβ−SiAlONやLAG系蛍光体等が好適に用いられる。これにより、白色ないし電球色の発光装置を製造することができる。
【0037】
また、1つの発光装置に2種類以上の蛍光体を用いてもよい。2種類以上の蛍光体は。混合された状態で設けられてもよく、層状に設けられていてもよい。
【0038】
色度を任意に調節するために、波長変換部材の変形は可逆的であることが好ましい。そのため波長変換部材が固体である場合には、弾性ないし靱性を有することが好ましい。例えば透光性のゴム状の樹脂や封止部材として用いることができる。
【0039】
また波長変換部材15は、液状であってもよい。これにより、波長変換部材15が変形する際、波長変換部材15が破壊される懸念や、変形時に発光素子13に圧力がかかって破壊する懸念を少なくすることができる、色度を調整することができる。
【0040】
封止部材は必要に応じて封止部材に、シリカや酸化チタン等のフィラーを備えていてよい。
【0041】
(変形部材)
変形部材は、波長変換部材を変形させることが可能な、変形させるための部材である。変形部材の材料や設ける位置は特に限定されず、変形させたい波長変換部材の形状や、発光装置の構造によって適宜選択される。
【0042】
波長変換部材を変形させ色度を調整するためには、波長変換部材の変形量を任意に調節する必要がある。そのため変形部材は、加圧量を任意に調節できる必要がある。
このように変形部材を駆動する機構としては、例えば圧電素子を備えた圧電アクチュエータやモータ、加圧エアー等を用いることができる。
【0043】
(保持部材)
保持部材は、少なくとも波長変換部材の上方に設けられ、波長変換部材の表面形状を保持しながら、発光素子から発せられた光や、波長変換部材により発せられた光を透過させる部材であればよい。また波長変換部材を変形させるときに圧力がかかるため、保持部材が変形しないよう剛性の高い物質が好ましい。
【0044】
保持部材として、例えば透光性のガラスや樹脂等が考えられる。
【0045】
保持部材は、波長変換部材を変形させる変形部材を兼ねてもよい。例えば、波長変換部材の上方に設けた保持部材の押圧部により波長変換部材を押圧して変形させてもよい。
【0046】
保持部材が変形部材を兼ねる場合、例えば押圧面をモーターと連動させて移動させる、あるいは押圧面の上面側(波長変換部材と接触していない側)を加圧雰囲気にして移動させることで、波長変換部材を押圧して変形させることができる。
【0047】
保持部材は、波長変換部材の上方だけでなく、側方にも設けられてもよい。この時、波長変換部材の上方の保持部材を支持する支持部が、保持部材を兼ねてもよい。
【0048】
その他、発光装置は、例えば、異なる色の発光をする複数の発光素子と蛍光体とを組み合わせたものであってもよい。具体的には、青色発光する発光素子と青色の発光を吸収して緑色発光する蛍光体を用いた発光装置から薄緑色(白色がかった緑色)の光を得て、赤色の発光素子もしくは赤色の発光素子を有する発光装置からの光を混色して白色領域の光を得るようにしてもよい。
【0049】
なお、発光装置の色度のばらつきは、種々の原因で起こる。例えば、蛍光体の量や分布、発光素子の発光波長、蛍光体の混合比、蛍光体を含有している樹脂等の粘度のばらつき、製造装置や測定装置などの各種装置の消耗やばらつきなどが原因で発生する。
【0050】
以上、発光装置の色度調整方法について、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【0051】
また、本明細書の一つの実施形態の記載の構成は、特に困難な場合を除き、別の実施形態にも適用可能である。