【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づき、後述の水生生物の増殖実験に用いる施肥材について更に説明する。
【0029】
(供試材料)
石炭灰は、粒子径は50μm以下のものを用いた。用いた石炭灰の成分組成を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
鉄粉との比較のため、鉄鋼スラグを用いた。用いた鉄鋼スラグの成分組成を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
鉄粉は日の丸産業(株)製で、Fe含有量が99%、粒子径が60μmのものを用いた。炭素は粒径1mm以下の高純度ピッチコークスを用いた。クエン酸は和光純薬(株)製(食品添加物、結晶状)を用いた。
【0034】
(サンプルの製造)
以下の各実験においてそれぞれに記す配合割合で原料を混合し、ドラム式造粒機に入れ、造粒機を回転させながら少しずつ水を加えて造粒し、直径1cm程度の球状のサンプルを作製して用いた。
【0035】
(実験1)
鉄粉と鉄鋼スラグによる鉄イオンの溶出量及び硫化水素の低減効果について検証した。
【0036】
本実験で用いたサンプル1〜6の原料の配合割合を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
(硫化水素溶液の調製)
ビーカーに超純水(Milli−Q水)を1L入れ、窒素で空気をパージし、溶存酸素濃度を0.1mg/L以下にした。これにNa
2S・9H
2O(試薬特級,ナカライテスク社製)を0,50,100mg−S/lとなるよう添加し、更にpHの緩衝剤として1M Tris−HCl(分子生物学用,和光純薬製)を30ml加えてpHを8.3±0.1に調節し、硫化水素溶液を調製した。以下、それぞれH2S0、H2S50、H2S100と記す。
【0039】
ガスクロマトグラフィー用ガラス製バイアル瓶(150ml,マルエム社製)に、サンプルを0.2g加えた後、硫化水素溶液を100ml入れ、瓶内の気相を窒素ガスで置換してゴム栓およびアルミ金具で密閉した。その後、MAGIC VAC(アズワン株式会社,20×30cm,ポリアミド・ナイロン/ポリエチレン製)にバイアル瓶を入れて密封し、25℃,40rpmの条件で7日間振とうした。
【0040】
7日後に硫化水素溶液中の硫化水素濃度を北川式検知管(光明理化学工業社製,200SA,2−1000ppm用)で測定した。
【0041】
更に、7日後のそれぞれの硫化水素溶液を0.45μmシリンジフィルター(MERCK MILLIPORE社,Millex−HN,ナイロン製)でろ過したろ液について、Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy(ICP−AES)分析装置(Perkin−Elmer社製、Optima7300DV)により、溶出したFe、Mn、Znの各濃度を測定した。
【0042】
図1にサンプル1〜3を加えた硫化水素溶液中の硫化水素濃度の測定結果を、
図2にサンプル4〜6を加えた硫化水素溶液中の硫化水素濃度の測定結果をそれぞれに示す。また、サンプル1〜3を加えた硫化水素溶液中のFe、Mn、Znの濃度をそれぞれ
図3、
図4、
図5に示す。また、サンプル4〜6を加えた硫化水素溶液中のFe、Mn、Znの濃度をそれぞれ
図6、
図7、
図8に示す。なお、各サンプルについて、それぞれ同じ実験を3回行っており、
図1〜
図8のシンボルが平均値、エラーバーが標準偏差を表している。また、後述の実験2〜実験5についても同様である。
【0043】
鉄鋼スラグを含有するサンプル1〜3でも、硫化水素はある程度減少しているが、鉄を含有するサンプル4〜6では、H2S50、H2S100のいずれについても、硫化水素はほぼ消失した。
【0044】
鉄の溶出量は、鉄粉を含有するサンプル4〜6では鉄鋼スラグを含有するサンプル1〜3に比べていずれも多い。また、他のZn、Mnについても、サンプル4〜6の方がサンプル1〜3よりも溶出量が多い。これらは鉄粉に含まれていない成分であるため、石炭灰から溶出しており、石炭灰と鉄との相性により、溶出量が高まったものと考えられる。
【0045】
これらの結果から、石炭灰と鉄を組み合わせることが鉄鋼スラグと組み合わせることよりも適切であることがわかった。
【0046】
(実験2)
金属イオンの溶出促進の補助剤として、クエン酸、炭素を用い、その影響について検証した。本実験で用いたサンプル11〜16の原料の配合割合を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
サンプル11〜16、硫化水素溶液H2S0を用いて実験1と同様に実験を行った。そして、実験1と同様に硫化水素溶液中のFe濃度を測定した。Fe濃度の測定結果を
図9に示す。
【0049】
炭素を含有するサンプル12、13では、炭素を含有しないサンプル11に比べて鉄の溶出が促進されたものの、鉄の溶出量は炭素を30重量%添加してもわずか3.6%程度の増加に留まった。
【0050】
一方、クエン酸を添加した場合、0.1重量%添加したサンプル14では、サンプル11に比べ、鉄の溶出量が10%程度増加しており、1.0重量%添加したサンプル16では、鉄の溶出量が28%程度増加した。この結果から、鉄の溶出という点で、クエン酸は炭素よりも遙かに効果が高いことがわかった。
【0051】
(実験3)
鉄粉と石炭灰の配合割合による影響について検証した。本実験で用いたサンプル21〜23の原料の配合割合を表5に示す。
【0052】
【表5】
【0053】
サンプル21〜23をそれぞれ用い、実験1と同様に実験を行った。そして、実験1と同様に、硫化水素溶液中の硫化水素濃度、並びに、Fe、Zn及びMn濃度を測定した。硫化水素溶液中の硫化水素濃度、並びに、Fe、Zn及びMn濃度の測定結果を
図10、
図11、
図12、
図13にそれぞれ示す。
【0054】
H2S100の試験区においては、サンプル21、22では硫化水素濃度は50ppm程度の減少、サンプル23では30ppm程度の減少が見られたが、H2S50の試験区においては、いずれのサンプルについても70〜80ppm程度の減少であった。
【0055】
また、Feの溶出量は石炭灰を多く含有するサンプル23で最大であり、5ppmほどの溶出が見られた。また、Zn、Mnについても、Feと同様に石炭灰を多く含有するサンプル23で多く溶出していた。
【0056】
これらの結果から、石炭灰と鉄粉の配合比率は、3:7〜7:3であればいずれでも硫化水素の低減効果が得られる。なお、石炭灰を多く含有するサンプル23では、崩れがみられたことや、Mn、Znの溶出量からすると、石炭灰:鉄粉の配合比率は4:6〜6:4が好ましいと考えられる。
【0057】
(実験4)
続いて、クエン酸の配合割合による影響について検証した。本実験で用いたサンプル31〜37の原料の配合割合を表6に示す。
【0058】
【表6】
【0059】
サンプル31〜37を用い、実験1と同様にして実験を行った。そして、実験1と同様に硫化水素濃度、並びに、Fe、Zn及びMn濃度を測定した。更に、H2S0を用いて行ったものについては、NO
3+NO
2−N、NO
2−N、NH
4−N、PO
4−P、SiO
2−Siをオートアナライザー(SWAAT,BLTEC社製)で測定し、それぞれCu−Cd還元法、ナフチルエチレンジアミン法、インドフェノール法、モリブデンブルー法、モリブデンブルー法で分析した。
【0060】
硫化水素濃度、並びに、Fe、Zn及びMn濃度の測定結果を
図14、
図15、
図16、
図17にそれぞれ示す。また、NO
3+NO
2−N、NO
2−N、NH
4−N、PO
4−P、SiO
2−Siのそれぞれの濃度の測定結果を
図18、
図19、
図20、
図21、
図22に示す。
【0061】
図14から、全てのサンプルで硫化水素低減傾向が見られ、クエン酸の含有量が多いほど硫化水素の低減効果が高いことがわかる。また、
図15〜
図17から、Fe、Zn、Mnの溶出量についても、クエン酸の含有量が多いほど増加していることがわかる。なお、MnはH2S0、H2S50、H2S100の各試験区において、濃度に大きな差がなく、また、Fe、Znについては、H2S0における濃度とH2S50、H2S100における濃度との差が大きかったことから、硫化水素の低減はFe、Znの溶出による効果が大きいものと考えられる。なお、このことは、
図11〜
図13でも示されている。
【0062】
また、H2S50試験区において、クエン酸を3重量%以上含有するサンプル34〜37で硫化水素濃度はほぼ0になっていたことから、施肥材はクエン酸を3重量%以上含有していることが好ましい。また、クエン酸を10重量%含有するサンプル37は脆く崩れやすかったことから、施肥材の成形性及び形状維持性の観点から、施肥材のクエン酸含有量が7重量%以下であることが好ましいと考えられる。
【0063】
また、
図18〜
図22から、N、P、Siの溶出量についても、クエン酸の含有量が多いほど増加している。N、P、Siは生態系の栄養素として機能する一方で、富栄養化した底質では有機物生産を助長することから、過度に溶出させない方がよいと考えられる。しかしながら、多く溶出したNH
4でも10数μモルであり、富栄養化を促進するほどの濃度ではない。また、クエン酸を10重量%含有するサンプル37において、溶出したN、P、Si、Feのモル濃度比をとると、20:0.8:16:1であり、レッドフィールド比と比較すると、Feが1000倍過剰であり、その他の元素はほぼ同等である。なお、レッドフィールド比とは、微細藻類の成長に最適な元素比を表すもので、生物体中の物質比率と環境水中の物質比率がほぼ同じで、生産と分解に係る物質のバランスに過不足がない状態を示す元素比の概念である。このように、N、P、Siの溶出量はレッドフィールド比と同様であるため、富栄養化した底質を更に悪化させるおそれもないと考えられるとともに、Fe等を多量に溶出させて硫化水素を低減させつつ、且つ、適度にN、P、Siを溶出させて栄養素を供給できることから水中における生態系の健全性回復のために好適であると言える。
【0064】
(実験5)
実験4におけるサンプル34(鉄粉:48.5重量%、石炭灰:48.5重量%、クエン酸:3重量%)を用い、海水での効果について検証した。
【0065】
超純水1Lに人工海水粉末(レッドシーソルト,レッドシーソルト社)を33g入れて、33psuの人工海水を調製した。更に、N
2ガスを吹き込んで空気をパージし、溶存酸素濃度を0.1mg/l以下にした。これにNa
2S・9H
2Oを0、50、100mg−S/lとなるよう添加し、硫化水素溶液を調製した。この硫化水素溶液をそれぞれSa−H2S0、Sa−H2S50、Sa−H2S100と記す。
【0066】
150mlバイアル瓶に上記の硫化水素溶液を100ml入れた。これにサンプル34を0.2g静かに加えた後、ゴム栓およびアルミ金具で密閉した。MAGIC VACに150mlバイアル瓶を入れ、密封用パックで密封し、25℃、40rpmで7日間振とうした後、硫化水素濃度を検知管で測定した。更に、0.45μmシリンジフィルターでろ過したろ液についてFe、Zn、Mnの各濃度をICP−AESで測定した。
【0067】
図23に硫化水素溶液中の硫化水素濃度の測定結果を示す。また、Fe、Zn、Mn濃度を
図24〜
図26にそれぞれに示す。
【0068】
実験4において超純水で調製したH2S0、H2S50、H2S100で行った場合に比べると、Fe、Zn、Mnの溶出は減少し、硫化水素の低減効果は若干劣る結果となったが、海水中においても硫化水素の低減効果を発揮することを確認した。
【0069】
続いて、実験4におけるサンプル34(鉄粉:48.5重量%、石炭灰:48.5重量%、クエン酸:3重量%)を用い、各種水生生物の増殖試験を行った。
【0070】
(微細藻類の増殖促進実験)
表層海水(2006年12月14日、山口県久賀沖で採取、GF/Cろ過済み)をもとにして作製した栄養塩強化培養液Guillard f/10(Tris−HCl規定量添加)に、微量金属混液(PS−II,Provasoli)およびビタミン混液を加え、Sterivex 0.02μmフィルターでろ過滅菌したものを基本培養液(Guillard f/2培養液)として用意した。
【0071】
これを培養用滅菌済みプラスチック容器(250mL,セルスター)に150mLずつ分取し、それぞれにサンプル34を1.5g(10g/L)を加えた。そして、下記のように藻類を添加し、培養した。
【0072】
用いた藻類は浮遊珪藻Skeletonema costatum及び付着珪藻Nitzschia pellucidaで、これらを初期濃度約10
3cells/Lで添加し、1日おきに7回(イニシャルを入れて8回)、フルオロイメージアナライザー(FLA−7000,富士フィルム社製)で蛍光強度を測定し、細胞増殖を観察した。
【0073】
実験はそれぞれ3つずつ行い、それらを照明付き培養機に入れ、温度をS.costatumでは15℃、N.pellucidaでは20℃、光条件は両種とも200μmol m
−2s
−1にして培養した(サンプル34添加区)。
【0074】
また、サンプル34を添加しない以外、上記と同様にして藻類を培養した(対照区1:ポジティブ・コントロール)。
【0075】
また、f/2培養液に代えて、表層ろ過滅菌海水を用いるとともに、サンプル34を添加せずに、上記と同様にして藻類を培養した(対照区2:ネガティブ・コントロール)。
【0076】
S.costatumの増殖試験の結果を
図27に、また、N.pellucidaの増殖試験の結果を
図28に示す。
【0077】
浮遊珪藻S.costatumでは、すべての栄養塩類が十分に入っているf/2培地(対照区1)で最も増殖が良かったが、14日後にサンプル34添加区はf/2培地とほぼ同等の蛍光強度となった。
【0078】
付着珪藻N.pellucidaでは、8日の時点ではf/2培地の増殖のほうが良かったが、14日後にはサンプル34添加区のほうが良好であった。このことは、f/2培地では栄養塩を使い果たされてしまうが、サンプル34から供給されるFeその他の栄養塩の供給が持続性に優れていると考えられる。S.costatumでも14日以降まで実験を続けていればN.pellucidaと同様の結果が得られていた可能性は高い。
【0079】
また、ろ過海水(対照区2)ではほとんど増殖しなかった、これは、用いたろ過海水中に栄養塩がほとんど無かったためであると考えられる。
【0080】
(アサリの増殖実験1)
2013年8月9日、広島県尾道市浦島観光干潟にて、10m×10mの区画にサンプル34を20kg(200g/m
2)鋤き込み、その上に食害防止網を被せた(サンプル34添加区)。
【0081】
また、34添加区に隣接する区域に、サンプル34を入れない以外、同様に鋤き込みを行い、食害防止網を設置した(対照区)。
【0082】
その後、2013年9月6日および2013年11月21日に、それぞれの区画内中央部にてアサリを採取し、アサリの個体数及びサイズを計測した。なお、2013年9月6日は、縦×横×深さ=1m×1m×0.2mの底泥中のアサリを採取し、2013年11月21日は、縦×横×深さ=0.25m×0.25m×0.25mの底泥中のアサリを採取した。
【0083】
また、アサリを採取した底泥を持ち帰り、酸揮発性硫化物(AVS)、有機態炭素(POC)を測定した。
【0084】
また、2013年11月21日に、それぞれの区画の底泥内間隙水中の金属濃度をICP−AESで測定した。
【0085】
2013年9月6日および2013年11月21日のアサリの採取結果を
図29に示す。アサリのサイズに優位性はないものの、サンプル34添加区では、対照区に比べ、アサリの個体数が多いことがわかる。
【0086】
また、POC、AVSの結果を
図30に、Fe、Mn、Zn濃度を表7に示す。
図30を見ると、サンプル34添加区では、対照区に比べ、増殖実験開始後の1ヶ月後では、AVSは少し高くなっているが、3ヶ月以上経過すると、POCが優位に高く、AVSが優位に低いことがわかる。また、表7を見ると、サンプル34添加区では、対照区に比べ、Fe,Mn濃度が高いことがわかる。サンプル34を底泥に漉き込むことで、底質中の硫化物量(AVS)が大きく減少し、餌(付着微細藻)の指標となるPOCが増加していることから、サンプル34添加区ではアサリの個体数が増加したと考えられる。
【0087】
【表7】
【0088】
(アサリの増殖実験2)
2013年6月10日、広島県尾道市浦島えび干潟にて、10m×10mの区画にサンプル34を20kg(200g/m
2)鋤き込み、その上に食害防止網を被せた(サンプル34添加区)。
【0089】
また、サンプル34添加区に隣接する区域に、サンプル34の鋤き込みを行わない以外、上記と同様に鋤きによる耕耘を行い、食害防止網を設置した(対照区)。
【0090】
そして、設置3ヶ月後(2013年9月11日)に、それぞれの区画内3カ所において、縦×横×深さ=50cm×50cm×20cmの底泥中のアサリを採取し、アサリの個体数及び重量を計測した。それぞれの区画内3カ所において採取されたアサリの総個数及び総重量を表8に示す。
【0091】
【表8】
【0092】
表8を見ると、サンプル34添加区では、対照区に比べて、アサリ個体数で約9倍、重量で約43倍であり、個体数、重量ともに大幅に増加していた。
【0093】
(アサリの増殖実験3)
2013年7月8日、尾道市の尾道東部漁協山波支所付近の干潟にて、10m×10mの区画にサンプル34を20kg(200g/m
2)鋤き込み、その上に食害防止網を被せた(サンプル添加区)。
【0094】
また、サンプル34添加区に隣接する区域に、サンプル34の鋤き込みを行わない以外、上記と同様に食害防止網を設置した(対照区)。
【0095】
そして、設置3ヶ月後(2013年9月11日)に、それぞれの区画内3カ所において、縦×横×深さ=50cm×50cm×20cmの底泥中のアサリを採取し、アサリの個体数及び重量を計測した。それぞれの区画内3カ所において採取されたアサリの総個数及び総重量を表9に示す。
【0096】
【表9】
【0097】
表9を見ると、サンプル34添加区では、対照区に比べて、アサリ個体数で約6倍、重量で約16倍であり、個体数、重量ともに大幅に増加していた。
【0098】
上記のアサリの増殖実験1〜3では、すべてサンプル34添加区でアサリの採取量、個体重量が増加していた。サンプル34を鋤き込むことによってアサリが生息する干潟の底質が改善されるとともに、アサリの餌となる付着珪藻が増加し、アサリの生存率の上昇によるものと考えられる。
【0099】
(牡蠣の増殖実験)
広島県東広島市安芸津町風早地区のカキ筏を利用し、カキの増殖実験を行った。
【0100】
2013年7月に種付けしたカキが垂下されるカキ筏に、サンプル34を設置した。サンプル34は2013年8月22日に以下のように設置した。サンプル34を300g入れた袋を、
図31(A)に示すように、15m×10mのカキ筏の15カ所に設置した。サンプル34を入れた袋は、
図31(B)に示すように、2連がけで吊した。即ち、一つのカキ筏に9kg(300g/袋×2×15箇所)のサンプル34を設置した。これを300g添加区と記す。
【0101】
また、袋にサンプル34を100g入れる以外、上記と同様に設置した。一つのカキ筏に設置したサンプル34は3kg(100g/袋×2×15)である。これを100g添加区と記す。また、サンプル34を設置しない対照区も設けた。それぞれの区画の位置を
図32に示す。
【0102】
そして、2013年12月10日に、それぞれの区画についてそれぞれ3カ所でカキを採取し、殻を剥いたむき身の重量を計測した。その結果を表10に示す。なお、100g添加区及び300g添加区については、サンプル34を設置した箇所直近の垂下カキからカキを採取した。また、対照区については、カキ筏全体から無作為にカキを採取した。
【0103】
【表10】
【0104】
カキ個体平均重量は、対照区12.6g、100g添加区13.3g、300g添加区14.0gであり、サンプル34の添加量が多いほど、カキ重量が大きいことがわかる。そして、対照区に対する100g添加区及び300g添加区の重量増加率は、それぞれ6%、11%であった。サンプル34から栄養分である鉄、窒素、リン、シリカ、マンガン、亜鉛などが溶出し、浮遊珪藻が増殖することで、これを餌としてカキが摂取して成長したものと考えられる。