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特開2015-226867アルデヒド類除去材、アルデヒド類除去用フィルター、及びアルデヒド類除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-226867(P2015-226867A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】アルデヒド類除去材、アルデヒド類除去用フィルター、及びアルデヒド類除去方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20151120BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20151120BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20151120BHJP
   C08F 261/04 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
   B01J20/26 G
   B01J20/26 A
   B01D53/02 Z
   A61L9/01 K
   C08F261/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-112892(P2014-112892)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】天野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】岩知道 直行
(72)【発明者】
【氏名】森川 圭介
【テーマコード(参考)】
4C080
4D012
4G066
4J026
【Fターム(参考)】
4C080AA05
4C080BB02
4C080CC02
4C080HH05
4C080JJ03
4C080JJ04
4C080JJ05
4C080KK08
4C080LL02
4C080LL10
4C080MM28
4C080NN25
4C080NN27
4C080QQ03
4D012BA01
4D012CE03
4D012CF10
4D012CG01
4D012CG04
4D012CG05
4G066AB13D
4G066AC12B
4G066AC13B
4G066AC35B
4G066BA01
4G066BA09
4G066BA16
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA52
4G066DA02
4G066DA03
4G066DA08
4G066DA10
4G066FA37
4J026AA30
4J026BA06
4J026BA29
4J026CA06
4J026DB02
4J026DB36
4J026EA09
(57)【要約】
【課題】アルデヒド類の除去に優れる除去材、及び取り扱い性に優れかつ効率的に除去できるアルデヒド類除去用フィルターの提供。さらには、当該フィルターを用いたアルデヒド類除去方法の提供。
【解決手段】アミノ基が化学結合によって導入されたエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むアルデヒド類除去材。さらには該アルデヒド類除去材100質量部に対してバインダー3〜10質量部を含むアルデヒド類除去用フィルターである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基が化学結合によって導入されたエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む、アルデヒド類除去材。
【請求項2】
前記アミノ基の導入量が3.0mmol/g〜15mmol/gである請求項1に記載のアルデヒド類除去材。
【請求項3】
粒子形状であり、かつ粒子径が10〜3000μmである請求項1または2に記載のアルデヒド類除去材。
【請求項4】
アミノ基がグラフト鎖に導入されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルデヒド類除去材。
【請求項5】
アミノ基が化学結合によって導入されたエチレン−ビニルアルコール共重合体が多孔質体であり、表面に形成された平均細孔径が0.01μm〜50μmの範囲内にある請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルデヒド類除去材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルデヒド類除去材100質量部に対して、バインダー3〜10質量部を含むアルデヒド類除去用フィルター。
【請求項7】
前記バインダーが、繊維状バインダーである請求項6項に記載のアルデヒド類除去用フィルター。
【請求項8】
前記繊維状バインダーがフィブリル化されたものであり、前記アルデヒド類除去材が、前記繊維状バインダーに担持されている請求項7に記載のアルデヒド類除去用フィルター。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のアルデヒド類除去用フィルターをハウジングに装填して用いるアルデヒド類除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒド類を含有する溶液または気体からアルデヒド類を効率よく除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、臭気に関する種々の問題が生じており、臭気閥値の観点からアルデヒドの除去が重要な問題となってきている。
従来から、アルデヒドを吸着するものとして活性炭、活性白土、シリカゲル、アルミナ等の無機吸着剤が知られている。また官能基として第1級または第2級アミノ基等を有する塩基性イオン交換樹脂も吸着剤として知られている。(「実用イオン交換」宮原、大曲、酒井共著P152、化学工業社 昭和47年発行)
【0003】
例えば、特許文献1にはヒドラジノ基を有する塩基性イオン交換樹脂の鉱酸塩とアルデヒド類を接触させることを特徴とするアルデヒド類の除去方法が開示されている。しかしながら、これらの吸着剤は低濃度のアルデヒド類に対して平衡吸着量が低く、必ずしも満足すべき脱臭効果が得られない問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許第2737290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、低濃度のアルデヒド類の吸着・除去性能に優れ、効率的に除去できるアルデヒド類除去材を提供することを目的とする。さらには当該除去材を用いた取り扱い性に優れるアルデヒド類除去用フィルターの提供、および当該フィルターを用いたアルデヒド類除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべくアミノ基を含有する材料について鋭意検討した結果、本発明に至った。本発明は以下の通りである。
【0007】
[1]アミノ基が化学結合によって導入されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を含む、アルデヒド類除去材。
[2]前記アミノ基の導入量が3.0mmol/g〜15mmol/gであるアルデヒド類除去材。
[3]粒子形状であり、かつ粒子径が10〜3000μmである前記アルデヒド類除去材。
[4]アミノ基がグラフト鎖に導入されている前記アルデヒド類除去材。
[5]アミノ基が化学結合によって導入されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体が多孔質体であり、表面に形成された平均細孔径が0.01μm〜50μmの範囲内にある前記アルデヒド類除去材。
[6]前記アルデヒド類除去材100質量部に対して、バインダー3〜10質量部を含むアルデヒド類除去用フィルター。
[7]前記バインダーが、繊維状バインダーである前記アルデヒド類除去用フィルター。
[8]前記繊維状バインダーがフィブリル化されたものであり、前記アルデヒド類除去材が、前記繊維状バインダーに担持されている前記アルデヒド類除去用フィルター。
[9]前記アルデヒド類除去用フィルターをハウジングに装填して用いるアルデヒド類除去方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルデヒド類除去材は、アルデヒド類の除去性に優れたものである。さらに該アルデヒド類除去材を用いたアルデヒド類除去用フィルターは取り扱い性にすぐれ、簡単な操作で、高効率かつ低コストでアルデヒド類を除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明のアルデヒド類除去材は、アミノ基が化学結合によって導入されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を含むものである。
【0010】
(エチレン−ビニルアルコール系共重合体)
本発明のアルデヒド類除去材に含まれる、アミノ基が化学結合によって導入されたエチレン−ビニルアルコール共重合体の基材として用いられるエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、所望の性能が得られる限り特に限定されないが、例えば、そのエチレン含有量は、10〜60モル%程度であってもよく、20〜50モル%程度が好ましい。エチレン含量が10モル%未満の場合、得られるアルデヒド類除去材の耐水性が低下する虞がある。一方、エチレン含量が60モル%を超えると製造が難しく入手が困難である。
【0011】
また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体のけん化度は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上が特に好ましい。けん化度が90モル%未満の場合、成形性が悪くなったり、得られるアルデヒド類除去材の耐水性が低下したりする虞がある。
【0012】
また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)についても特に限定されないが、0.1g/分以上が好ましく、0.5g/分以上がより好ましい。0.1g/分未満の場合、耐水性や強度が低下する虞がある。なお、メルトフローレートの上限は通常用いられる範囲であればよく、例えば、25g/分以下であってもよい。
【0013】
上記エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲でビニルアルコール単量体単位、ビニルエステル系単量体単位およびエチレンに由来しない不飽和単量体単位を含んでいてもよい。該不飽和単量体単位の含量は、10モル%以下であることが好ましく、5%モル以下であることがより好ましい。
このようなエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0014】
(アミノ基の導入)
エチレン−ビニルアルコール系共重合体へアミノ基を導入する方法としては、(1)エチレン−ビニルアルコール系共重合体形成時にアミノ基を有する単量体を共重合させることにより導入してもよく、(2)エチレン−ビニルアルコール系共重合体の形成後、該共重合体を基材として、アミノ基を有する化合物で化学修飾させてもよい。アルデヒド類吸着能を有するアミノ基を高密度に吸着材表面に形成する点から、エチレン−ビニルアルコール系共重合体基材の表面に化学修飾によりアミノ基を導入することが好ましい。同様の観点で、アミノ基は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を幹ポリマーとするグラフトポリマーのグラフト鎖(枝ポリマー)に導入されることが好ましい。
【0015】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体にアミノ基を有するグラフト鎖を導入する方法としては、(1)クロロメチルスチレンやクロロエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン化アルキル基を有する不飽和単量体、またはグリシジルメタクリレートなどのエポキシ基を有する不飽和単量体を、予めエチレン−ビニルアルコール系共重合体を基点してグラフト重合し、該グラフト鎖とアミノ基を有する化合物を反応させる方法、(2)アミノ基を有する不飽和単量体を、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を基点にグラフト重合し、グラフトポリマーを生成する方法、が挙げられる。反応の容易さの観点から、(1)の方法が好ましい。グラフト重合する方法としては、種々の公知の方法が可能であり、例えば、重合開始剤を用いたラジカル重合を利用してグラフト鎖を導入する方法、電離放射線を用いてラジカルを発生させ、グラフト鎖を導入する方法などが挙げられる。これらのうち、グラフト鎖の導入効率が高い観点から、電離放射線を用いて、グラフト鎖を導入する方法が好ましく用いられる。
【0016】
不飽和単量体としては前述のハロゲン化アルキルやエポキシ等の官能基を有する不飽和単量体だけでなく、性能を損なわない範囲で他の不飽和単量体を併用しても構わない。例えば、グラフト鎖の膨潤を抑制するために、多官能不飽和単量体として、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1−(アクリロイルオキシ)−3−(メタクロイルオキシ)−2−プロパノール、ビスメチレンアクリルアミドなどを用いることができる。
【0017】
電離放射線を用いて、エチレン−ビニルアルコール系共重合体に不飽和単量体をグラフト重合させる方法としては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と不飽和単量体とを共存下放射線を照射する混合照射法と、エチレン−ビニルアルコール系共重合体のみに予め放射線を照射した後、不飽和単量体とエチレン−ビニルアルコール系共重合体とを接触させる前照射法のいずれでも可能であるが、後者の方法である前照射法がグラフト重合以外の副反応を生成しにくい特徴を有する。
【0018】
電離放射線を照射する線量としては、特に限定されないが、5〜230kGyが好ましく、10〜200kGyがより好ましく、15〜180kGyがさらに好ましい。20〜160kGyが最も好ましい。5kGy未満の場合、線量が少な過ぎるためグラフト率が低下し目的のアルデヒド類除去性能が得られないことがある。230kGyを超える場合、処理工程にコストがかかる、照射時に樹脂が劣化するなどの懸念がある。
【0019】
上記グラフト鎖にアミン化合物を付加させる際のアミノ基を有する化合物としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、3−メチルアミノプロピルアミン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、2−メチル−1,2−プロパンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチレンヘキサミン、ヘキサメチレンヘプタミン、2−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミン、ベンジルアミン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、4−(メチルアミノ)ピリジン、4−アミノ(2−メチル)ピリジン、4−アミノ(3−メチル)ピリジン、2−ピコリルアミン、3−ピコリルアミン、4−ピコリルアミン、4−(エチルアミノメチル)ピリジン、3−(2−アミノメチル)ピリジン、2−(2−アミノエチル)ピリジン、ビス(3−ピリジルメチル)アミン、ビス(2−ピリジルメチル)アミン、2−アミノ−4−メチルピリジン、3−アミノ−4−メチルピリジン;2−アミノイミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、2−アミノベンゾイミダゾールなどのイミダゾール系化合物;4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾールなどのトリアゾール系化合物;1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物;4−アミノインドール、5−アミノインドール、6−アミノインドール、ヒスタミン、トリプタミン、トリプトファン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。これらの中でも、製造上の容易さ、アルデヒド類除去性能の観点から、特に、多価アミンが好ましい。
【0020】
上記アミノ基の導入量、すなわち、アミノ基が化学結合によって導入されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体が単位質量当たりに保有するアミノ基のモル数は特に限定されないが、アルデヒド類除去性能の観点から、3.0mmol/g〜15mmol/gであることが好ましく、4.0mmol/g〜12mmol/gであることがより好ましく、5.0mmol/g〜10mmol/gであることがさらに好ましい。導入量が3.0mmol/g未満の場合、アルデヒド類除去性能が充分に得られないことがある。一方、官能基のモル数が15mmol/gを超える場合、粒子の膨潤収縮が大きく、アルデヒド類除去材が体積変化による崩壊を招く恐れがあり、また製造上も困難な場合が多い。
【0021】
(形状)
本発明のアルデヒド類除去材の形状には特に制限はなく、粒子状、繊維状等が挙げられ、好適には、粒子状である。アルデヒド類除去材が粒子状の場合、その粒子径は特に制限はないが、10〜3000μmであることが好ましく、30〜2500μmであることがより好ましく、40〜2000μmであることがさらに好ましい。粒子径が10μm未満の場合、微粉が舞い易いなど取り扱いが難しい。粒子径が3000μmを超える場合は、アルデヒド類除去性能が十分に得られないことがある。なお、粒子とは粉体を含む概念であり、粒子径は篩分けにより分級された値を示す。
【0022】
本発明のアルデヒド類除去材に含まれる、アミノ基が化学結合によって導入されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、多孔質であってもよい。本発明において、多孔質とは、粒子中に複数個の細孔が存在することを意味している。この細孔は、連続構造であってもよく、独立構造であってもよい。表面に形成される細孔は、その平均細孔径が0.01μm〜50μm程度であってもよく、好ましくは0.05μm〜20μm、より好ましくは0.2μm〜10μm程度であってもよい。平均細孔径が0.01μm未満の場合、アルデヒド類除去性能が不十分である可能性がある。平均細孔径が50μmより大きい場合、アルデヒド類除去材の機械的強度が低く、使用環境下で崩壊してしまう虞がある。これら細孔の平均細孔径は、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
【0023】
(フィルター)
本発明のアルデヒド類除去用フィルターは、アルデヒド類除去材およびバインダーを用いて成形できる。当該フィルターに含まれるバインダーは、アルデヒド類除去材を保持してフィルター形状を保てる限りその種類及び形態には特に制限はなく、例として、繊維状バインダー、粉末状バインダー等が挙げられ、好ましくは、繊維状バインダーであり、より好ましくはフィブリル化(小繊維化)された繊維状バインダーである。繊維状バインダーは、合成品、天然品を問わず幅広く使用可能であり、その例としては、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維などが挙げられる。これらの繊維状バインダーは、叩解等の公知方法によりフィブリル化することができ、フィブリル化された繊維状バインダーは、市販品としても入手可能である。繊維状バインダーの繊維長は4mm以下が好ましい。
【0024】
アルデヒド類除去材がバインダーにより保持される形態には特に制限はないが、例えば、バインダーがフィブリル化された繊維状バインダーであった場合には、アルデヒド類除去材が、フィブリル化された繊維状バインダーが形成する網目構造に捕捉されて固着し、アルデヒド類除去材が、繊維状バインダーに担持された形態が望ましい。バインダーが熱融着性繊維状バインダー(例、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維等)であった場合には、アルデヒド類除去材同士が一旦溶融した繊維状バインダーによって接着されて、アルデヒド類除去材がバインダーにより保持される。その他、バインダーが、粉末状バインダーとして熱融着樹脂粉末バインダー(例、ポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、ポリスチレン粉末、ポリエチレンテレフタレート粉末等)であった場合には、アルデヒド類除去材同士が一旦溶融した粉末状バインダーによって接着されて、アルデヒド類除去材がバインダーにより保持される。
【0025】
本発明のアルデヒド類除去用フィルターのアルデヒド類除去材とバインダーの配合比は、アルデヒド類の吸着効果、フィルターの膨潤抑制と成形性などの点から、アルデヒド除去材100質量部に対してバインダーの含有量は3〜10質量部であり、好ましくは5〜8質量部である。
【0026】
アルデヒド類除去用フィルターの製造方法は、特に限定されず、バインダーを用いた公知の成形方法を採用することができる。効率よく製造できる点で、スラリー吸引方法が好ましい。スラリー吸引方法では、例えば、それぞれ多数の吸引用小孔を有する内管及び外管を備える二重管状容器を準備し、内管と外管との間に、アルデヒド類除去材及びバインダーを含むスラリーを流し込み、中心部(内管側)からスラリーを吸引することによって、中空型筒状に成形されたフィルターを得ることができる。スラリーは、効率よく製造できることから、アルデヒド類除去材及び繊維状バインダーを固形分濃度が5〜15質量%となるように水中に分散させることにより調製するとよい。
【0027】
本発明のアルデヒド除去材で除去されるアルデヒド類は特に限定されないが、一般には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、α−メチルアクロレイン、α−エチルアクロレイン、α−メチルクロトンアルデヒド、β−メチルクロトンアルデヒド、ヘキセナール、プロピナール、2−ブチナール、グリオキザール、コハク酸アルデヒド、グルタルアルデヒド、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、アジプアルデヒド等、脂肪族アルデヒド類、不飽和アルデヒド類および環状アルデヒド類が挙げられる。
【0028】
本発明のアルデヒド類除去方法では、アルデヒド類除去材とアルデヒド類との接触方法は特に制限されるものではなく、例えばアルデヒド類除去用フィルターを充填したハウジング内へアルデヒド類を含有する液体または気体を通す連続法、またアルデヒド類を含有する液体または気体を収容した容器中にアルデヒド類除去材を加え、撹拌または静置する方法等いずれの方法によってもアルデヒド類を除去することができる。さらには、アルデヒド類除去材を中空型筒状等に成形したフィルターをハウジングに装填し、アルデヒド類を含有する溶液を通液することで行うことができる。
本発明のアルデヒド類除去材とアルデヒド類を含有する溶液または気体の接触温度は、特に制限されるものではないが、通常100℃以下で実施される。また接触時間も特に制限されるものではなく、適宜予備実験を行うことにより設定することができる。
【0029】
本発明の溶液中及び気体状のアルデヒド類除去方法は、アルデヒド類除を効率良く吸着除去することができるので、例えば化学工場の廃水処理、し尿の湿式酸化処理工場の脱臭、糖液中からのアルデヒドの除去、タバコの煙等からの刺激成分の除去等に有効である。
【0030】
本発明のアルデヒド類除去材は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、架橋剤、無機微粒子、光安定剤、酸化防止剤などの添加剤を含んでいても良い。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各数値は以下の方法により測定した。
【0032】
[平均細孔径の算出]
走査型電子顕微鏡を用い粒子表面を観察した。表面に形成されている細孔から任意に50個選択し、それぞれの細孔の長径を計測した。50個の長径を平均し、平均値を導出して平均細孔径とした。但し、1nm以下の場合、傷、付着物等との区別がつかないため、選択から除外した。
【0033】
[グラフト率]
以下に示す式に従い算出した。
グラフト率[w/w(%)]=100×(付与したグラフト鎖の重量)/(基材の重量)
【0034】
[アミノ基導入量]
アミノ基を導入する反応を行う前後の質量変化をWとする。以下に示す式に従い算出した。
アミノ基導入量[mmol/g]=(反応基質1分子あたりの窒素原子数[個]×W[g]/反応基質分子量[g/mol])/(反応後の樹脂粒子質量)×1000
【0035】
(アルデヒド類除去性能の評価方法)
(実施例1〜4及び比較例1〜2)
アルデヒド類除去材を直径30mmのクロマトカラムに高さ60mmまで充填して、ホルムアルデヒド濃度30mg/L、グルタルアルデヒド濃度100mg/L、及びアセトアルデヒド濃度10mg/Lの20℃の水溶液0.85Lを、流速0.42L/時間で3時間循環する。その後、循環した溶液をサンプリングしてガスクロマトグラフ質量分析計(株式会社島津製作所製GCMS−QP2010)でアルデヒド類濃度(mg/L)を測定した。
(実施例5)
アルデヒド類除去用フィルターを1.5L容量のハウジングに装填して、ホルムアルデヒド濃度30mg/L、グルタルアルデヒド濃度100mg/L、及びアセトアルデヒド濃度10mg/Lの20℃の水溶液30Lを、流速15L/時間で3時間循環する。その後、循環した溶液をサンプリングしてガスクロマトグラフ分析(株式会社島津製作所製GC−14B)でアルデヒド類濃度(mg/L)を測定した。
【0036】
[実施例1]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、F101)90質量部とビニルアルコール系重合体(株式会社クラレ社製、PVA403)10質量部をラボプラストミルにて、溶融混練した後、溶融物を冷却固化させたコンパウンドを粉砕し、篩を用いて粒子径212μm〜425μmの粒子を分級して得た。さらに得られた粒子を100℃の熱水で処理しビニルアルコール系重合体を抽出し、多孔質なエチレン−ビニルアルコール系共重合体粒子を得た。該多孔質粒子の平均細孔径は0.23μmであった。該多孔質粒子に60kGyの電離放射線を照射し、80℃の窒素置換したグリシジルメタクリレート溶液に浸漬攪拌しグラフト重合を実施した。グラフト率を評価したところ310%であった。さらに、該粒子をエチレンジアミンのイソプロパノール溶液に浸漬し反応させた後、エチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋処理した。該粒子をメタノールで洗浄し、乾燥させ、篩を用いて粒子径300μm〜500μmの粒子に分級することで目的のアルデヒド類吸着材(A−1)を得た。評価結果を表1に示す。なお、該アルデヒド類吸着材のアミノ基導入量は6.0mmol/gであった。
【0037】
[実施例2]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、F101)90質量部とビニルアルコール系重合体(株式会社クラレ社製、PVA205)10質量部をラボプラストミルにて溶融混練した後、溶融物を冷却固化させたコンパウンドを粉砕し、篩を用いて粒子径106μm〜212μmの粒子を分級して得た。さらに得られた粒子を熱水中で処理しビニルアルコール系重合体を抽出し、多孔質なエチレン−ビニルアルコール系共重合体粒子を得た。該多孔質粒子の平均細孔径は0.27μmであった。該多孔質粒子に100kGyの電離放射線を照射し、80℃の窒素置換したグリシジルメタクリレート溶液に浸漬攪拌し、グラフト重合を実施した。グラフト率を評価したところ374%であった。さらに、該粒子をジエチレントリアミンのイソプロパノール溶液に浸漬し反応させた後、エチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋処理した。該粒子をメタノールで洗浄し、乾燥させ、篩を用いて粒子径212μm〜425μmの粒子に分級することで目的のアルデヒド類吸着材(A−2)を得た。評価結果を表1に示す。なお、該アルデヒド類吸着材のアミノ基導入量は8.7mmol/gであった。
【0038】
[実施例3]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、F101)を粉
砕した後、篩を用いて粒子径150μm〜300μmの粒子を作製した。該粒子には細孔
が形成されていなかった。該粒子に150kGyの電離放射線を照射し、80℃窒素置換したグリシジルメタクリレートの60質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄し乾燥した後、グラフト率を評価したところ210%であった。さらに、該粒子をエチレンジアミンのイソプロパノール溶液に浸漬し反応させた後、エチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋処理した。該粒子をメタノールで洗浄し、乾燥させ、篩を用いて粒子径212μm〜425μmの粒子に分級することで目的のアルデヒド類吸着材(A−3)を得た。評価結果を表1に示す。なお、該アルデヒド類吸着材のアミノ基導入量は5.4mmol/gであった。
【0039】
[実施例4]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、C109)99質量部とビニルアルコール系重合体(株式会社クラレ社製、PVA205)1質量部をラボプラストミルにて、210℃の温度で3分間溶融混練した後、溶融物を冷却固化させたコンパウンドを粉砕し、篩を用いて粒子径300μm〜500μmの粒子を作製した。さらに得られた粒子を100℃の熱水中で2時間攪拌してビニルアルコール系重合体のみを抽出し、多孔質なエチレン−ビニルアルコール系共重合体粒子を得た。該多孔質粒子の細孔の平均細孔径は0.13μmであった。該多孔質粒子に100kGyの電離放射線を照射し、80℃窒素置換したグリシジルメタクリレートの40質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄し乾燥した後、グラフト率を評価したところ365%であった。さらに、該粒子をジエチレントリアミンのイソプロパノール溶液に浸漬し反応させた後、エチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋処理した。該粒子をメタノールで洗浄し、乾燥させ、篩を用いて粒子径500μm〜710μmの粒子に分級することで目的のアルデヒド類吸着材(A−4)を得た。評価結果を表1に示す。なお、該アルデヒド類吸着材のアミノ基導入量は8.1mmol/gであった。
【0040】
[実施例5]
実施例2で得たアルデヒド類吸着材(A−2)100質量部に対して繊維状バインダーとしてフィブリル化アクリル繊維ビィパル(東洋紡績株式会社製)を4質量部の割合で水中に分散させてスラリーを調製した。次いで、得られたスラリーを、直径3mmの多数の細孔を有する外径75mm、内径29mm及び高さ255mmの二重管容器に入れて、350mmHgで吸引後、圧縮することなく、120℃で24時間乾燥させ、外径65mm、内径30mm及び高さ250mmの中空型円筒状のアルデヒド類除去用フィルターを得た。このアルデヒド類除去吸着用フィルターを全幅200mm、全高340mmのプラスチック製ハウジング(アドバンテック東洋株式会社製、1PP−1−FV)に装填し、前記の評価方法に従って評価を行った。評価結果を表1に示す。
示す。
【0041】
[比較例1]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ社製、F101)を粉砕した後、篩を用いて粒子径212μm〜425μmの粒子に分級することで目的のアルデヒド類吸着材(B−1)を得た。評価結果を表1に示す。
【0042】
[比較例2]
市販のポリエチレン(株式会社プライムポリマー社製 7000F)を粉砕した後、篩を用いて粒子径212μm〜425μmの粒子を作製した。該粒子に30kGyの電離放射線を照射し、空気中で1時間放置した後、80℃窒素置換したグリシジルメタクリレートの40質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄し乾燥した後、グラフト率を評価したところ7%であった。さらに、該粒子をジエチレントリアミンのイソプロパノール溶液に浸漬し反応させた後、エチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋処理した。該粒子をメタノールで洗浄し、乾燥させ、篩を用いて粒子径300μm〜500μmの粒子に分級することで目的のアルデヒド類吸着材(B−2)を得た。評価結果を表1に示す。なお、該アルデヒド類吸着材のアミノ基導入量は1.2mmol/gであった。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から明らかなように、本発明のアルデヒド類除去材は、優れたアルデヒド類除去性能を有する。また、フィルター状に加工した場合も高い性能を発現し、取り扱い性に優れた除去材の提供が可能となる。一方、比較例1のように、アミノ基を有しないエチレン−ビニルアルコール系共重合体を含むアルデヒド類除去材では、アルデヒド類除去性能は発現しない。比較例2のように、他の重合体を基材としたアルデヒド類除去材も、本発明の除去材の性能に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、アルデヒド類の除去性能に優れる、工業的に使用可能な新規な除去材を提供することができる。当該吸着材は、例えばフィルター状に加工することで、より簡便に取り扱うことができる。
【0046】
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。