【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0039】
まず、本発明の炭素粒子を評価する方法について説明する。
【0040】
<XRD定量法>
X線回折(XRD)の測定結果から、2θ=75°付近に現れるダイヤモンドの(220)面での回折ピークについて、面積強度を求め、予め作成した検量線を用いて、ダイヤモンドの含有割合を求めた。
【0041】
ダイヤモンドを定量するための基準物質として、本発明で別途製造したダイヤモンドを含む炭素粒子からグラファイト質の炭素などを過塩素酸で除去して精製したダイヤモンドを用いた。基準物質には、内部標準として、シリコン結晶の粉末(大阪薬研製Stansil−G03A、D50=5.2μm)を添加した。
【0042】
ダイヤモンド用の検量線は、5つの標準試料を用いて、上記回折ピークの面積強度と、各試料に添加したシリコン結晶の(220)面および(311)面での回折ピークの面積強度との比率から、4点検量して作成した。シリコン結晶の2つのピークを用いたのは、粉末シリコンの配向の影響を抑えるためである。5つの標準試料は、上記精製ダイヤモンドに、上記シリコン結晶の粉末を、ダイヤモンドの含有割合が0質量%、25質量%、50質量%、75質量または100質量%となるように混合したものである。
【0043】
ダイヤモンド用の検量線は、縦軸をダイヤモンドの含有割合、横軸をダイヤモンドとシリコンとの回折ピークの面積強度比D220/(Si220+Si311)として、5つの標準試料のデータをプロットすることにより得た。最小二乗法による直線近似により、含有割合yと面積強度比xとの関係式は、y=117.12xとなった。得られた検量線を
図4に示す。
【0044】
測定試料には、内部標準として、全炭素量に対して10質量%の上記シリコン結晶の粉末を添加した。X線回折(XRD)の測定結果から、上記回折ピークの面積強度比を算出し、
図4に示す検量線を用いて、ダイヤモンドの含有割合を求めた。得られたダイヤモンドの含有割合を炭素粒子の合計回収量に掛けて、ダイヤモンドの合計回収量を算出した。本発明の製造方法で得られた炭素粒子は、ダイヤモンドとグラファイト質の炭素を主成分とすることがわかった。それ以外の構造の炭素成分は、実質的に認められなかった。
X線回折の測定条件を以下に示す。
・X線回折装置の装置名:リガク製水平型X線回折装置SmartLab
・測定方法:θ−2θ
・X線源:Cu−Kα線
・励起電圧−電流:45kV−200mA
・発散スリット:2/3°
・散乱スリット:2/3°
・受光スリット:0.6mm
【0045】
<透過型電子顕微鏡観察>
透過型電子顕微鏡を用いた測定の結果から、本発明の製造方法で得られた炭素粒子は、ダイヤモンドとグラファイト質の炭素とから形成されていることを確認した。そのため、これらの炭素成分の格子像が観察できるCCDカメラと撮影倍率を有する透過型電子顕微鏡を用いた。透過型電子顕微鏡の測定条件を以下に示す。
・TEMの装置名:日本電子製透過型電子顕微鏡JEM−ARM200F
・測定方法:懸濁法、分散溶媒:メタノール
・加速電圧:200kV
・CCDカメラ:Gatan製UltraScan
・撮影倍率:30万倍、80万倍
・写真倍率:220万倍、A4サイズに印刷時は590万倍
【0046】
次に、本発明の製造方法により炭素粒子を製造した実験例について説明する。
【0047】
≪実験例1≫
本実験例では、原料物質としてTNTを用いて、かつ、爆発性物質としてヒドラジン系液体爆薬を用いて、爆轟法により炭素粒子を製造した。
【0048】
TNTは、市販されている円柱状の成型体(中国化薬製TNTの円柱形溶填物、直径10cm×長さ20cm)を用いた。TNT成型体の質量は2.52kg、密度は1.60g/cm
3であった。また、硝酸ヒドラジンと抱水ヒドラジンを質量比3:1で混合して、0.93kgのヒドラジン系液体爆薬を調製した。
【0049】
次に、
図1に示すような爆発装置を用いて、爆轟反応を行った。原料物質10としての前記成型体を内径12cm、高さ20cmの爆発容器20の中央部に設置し、その周囲に爆発性物質12としての前記液体爆薬を充填した。爆発容器20の頂部に伝爆薬22(SEP)、導爆線および6号電気雷管24を装着し、蓋をした後、液密性のポリエチレン袋に収納した。容量200Lの容器を冷却容器30として用いた。爆発容器20を冷却容器30内に設置した。このとき、鉄製の架台34と鉄製の穴あき円板36を用いて、爆発容器20の外底面が冷却容器30の内底面から高さ29.5cmに位置するように調整した。そして、冷却容器30に冷却材32として蒸留水を入れて、冷却容器30と爆発容器20との間隙に冷却材32を充填した。また、蒸留水を入れたポリエチレン袋を冷却容器の上部に載置した。合計200Lの蒸留水を用いた。冷却容器30に蓋をした後、ワイヤースリングを用いて、内容積30m
3の爆発チャンバー内に天井から懸架した。前記爆発チャンバー内を大気圧から真空引きし、残留する酸素ガスの量を計算値で約25.5gとした。
【0050】
このように設定した後、前記導爆線を前記雷管で起爆することにより、爆発性物質12を爆轟させた。そして、前記爆発チャンバー内から残渣を含む水約200Lを回収し、沈降分離して粗大な瓦礫を除去した。このとき、上澄み液は、強アルカリ性であるため、クエン酸を添加して弱酸性にpH調整した。弱酸性になった上澄み液は、そのまま廃液として回収した。沈殿物は、振動篩装置(KOWA製「KG−700−2W」)を用いて、目開き100μm/16μmの篩で分級した。16μm篩通過分は、そのまま回収した。篩上残分は、超音波振動装置(クレスト製「4G−250−3−TSA」)で約5分間解砕して、瓦礫表面から炭素分を分離した後、振動篩装置(KOWA製「KG−700−2W」)を用いて、目開き100μm/32μm/16μmの篩で再度分級し、篩通過分を回収した。なお、各篩通過分は、80℃の乾燥機(アズワン製「OF−450S」)内に24時間放置して、水分を蒸発させた後、乾燥粉末とした。
【0051】
かくして、16μm篩通過分104.5g、32μm篩通過分243.9gおよび100μm篩通過分144.1gとして、合計492.5gの炭素粒子を得た。本実験例における実験内容、炭素粒子の回収量および収率、ならびに、上記XRD定量法により求めたダイヤモンドの合計回収量および収率を下記表1に示す。
【0052】
≪実験例2≫
本実験例では、原料物質として、質量2.52kg、密度1.60g/cm
3のTNT成型体を質量3.82kg、密度1.61g/cm
3のTNT成型体(中国化薬製TNTの円柱形溶填物、直径10cm×長さ30cm)に変更したこと、爆発性物質であるヒドラジン系液体爆薬の使用量を0.93kgから1.29kgに変更したこと以外は、実験例1と同様にして、16μm篩通過分192.1g、32μm篩通過分356.5gおよび100μm篩通過分222.2gの炭素粒子を得た。炭素粒子の合計回収量は、770.8gであった。本実験例における実験内容、炭素粒子の回収量および収率、ならびに、上記XRD定量法により求めたダイヤモンドの合計回収量および収率を下記表1に示す。
【0053】
≪実験例3≫
本実験例では、原料物質として、質量2.52kg、密度1.60g/cm
3のTNT成型体を質量6.30kg、密度1.59g/cm
3のTNT成型体(中国化薬製TNTの円柱形溶填物、直径10cm×長さ50cm)に変更したこと、爆発性物質であるヒドラジン系液体爆薬の使用量を0.93kgから2.17kgに変更したこと、冷却材である蒸留水の使用量を200Lから220Lに変更したこと以外は、実験例1と同様にして、16μm篩通過分257.4g、32μm篩通過分531.8gおよび100μm篩通過分336.4gの炭素粒子を得た。炭素粒子の合計回収量は、1125.6gであった。本実験例における実験内容、炭素粒子の合計回収量および収率、ならびに、上記XRD定量法により求めたダイヤモンドの合計回収量および収率を下記表1に示す。
【0054】
得られた炭素粒子のうち、16μm篩通過分の透過型電子顕微鏡写真を
図2に示し、100μm篩通過分のX線回折チャートを
図3に示す。
図2の左写真から、粒径約4.1nmの炭素粒子を観察することができる。また、
図2の右写真から、粒径約9.5nmの炭素粒子を観察することができる。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から、火薬系原料のTNTとヒドラジン系液体爆薬を併用しても、爆轟法によりダイヤモンドとグラファイト質の炭素を含む炭素粒子を製造できることがわかる。しかも、得られた炭素粒子は、従来品に比べて、ダイヤモンドの含有割合が高い炭素粒子である。実際、ダイヤモンドの収率は、9.2〜11.3%という高い値である。これに対し、非特許文献1の表2によれば、従来法におけるダイヤモンドの収率は、TNTを単独で用いた場合に2.8%、TNTとRDXを併用した場合に4.1〜8.3%、TNTとHMXを併用した場合に3.75〜8.2%である。それゆえ、火薬系原料と液体爆薬を併用する本発明の製造方法によれば、火薬系原料を単独で用いるか、あるいは、火薬系原料と固体爆薬を併用する従来法に比べて、ダイヤモンドの収率が向上することがわかる。