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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-227480(P2015-227480A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】化学処理装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/08 20060101AFI20151120BHJP
【FI】
   C23F1/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-113142(P2014-113142)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 慎二
(72)【発明者】
【氏名】古賀 高廣
【テーマコード(参考)】
4K057
【Fターム(参考)】
4K057WA11
4K057WB04
4K057WC10
4K057WG03
4K057WH06
4K057WK06
4K057WL10
4K057WM03
4K057WM18
4K057WM19
4K057WN01
(57)【要約】
【課題】処理液の性能をより高精度に維持できる化学処理装置を提供すること。
【解決手段】エッチング槽B2のエッチング液に処理対象物W1を浸漬させて処理対象物W1の表面を加工するエッチング装置100は、処理対象物W1をエッチング槽B2から持ち出す際にエッチング槽B2から持ち出されるエッチング液の有効成分量と処理対象物W1と反応して消費されるエッチング液の有効成分量とを含む有効成分減少量Eを算出する有効成分減少量算出部11と、有効成分減少量Eに基づいてエッチング補給液の補給量Qを算出する補給量算出部12と、エッチング速度を測定するエッチング速度測定部D2と、エッチング速度測定部D2が測定したエッチング速度と目標エッチング速度との偏差に基づいて補給量算出部12が算出した補給量を補正する補給量補正部13とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽の処理液に処理対象物を浸漬させて前記処理対象物の表面を加工する化学処理装置であって、
前記処理対象物を前記処理槽から持ち出す際に前記処理槽から持ち出される前記処理液の有効成分量と前記処理対象物と反応して消費される前記処理液の有効成分量とを含む有効成分減少量を算出する有効成分減少量算出部と、
前記有効成分減少量に基づいて前記処理液の有効成分を含む補給液の補給量を算出する補給量算出部と、
前記処理液の性能を取得する性能取得部と、
前記性能取得部が取得した前記処理液の性能と所定の目標性能との偏差に基づいて前記補給量を補正する補給量補正部と、
を有する化学処理装置。
【請求項2】
前記有効成分減少量算出部による有効成分減少量の算出の頻度と、前記補給量補正部による前記補給量の補正の頻度は異なる、
請求項1に記載の化学処理装置。
【請求項3】
前記補給液の補給量を制御する補給量制御部を有し、
前記補給量制御部は、前記補給液を断続的に或いは連続的に補給する、
請求項1又は2に記載の化学処理装置。
【請求項4】
処理槽の処理液に処理対象物を浸漬させて前記処理対象物の表面を加工する化学処理装置の制御方法であって、
前記処理対象物を前記処理槽から持ち出す際に前記処理槽から持ち出される前記処理液の有効成分量と前記処理対象物と反応して消費される前記処理液の有効成分量とを含む有効成分減少量を算出する有効成分減少量算出ステップと、
前記有効成分減少量に基づいて前記処理液の有効成分を含む補給液の補給量を算出する補給量算出ステップと、
前記処理液の性能を取得する性能取得ステップと、
前記性能取得ステップで取得された前記処理液の性能と所定の目標性能との偏差に基づいて前記補給量を補正する補給量補正ステップと、
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理槽の処理液に処理対象物を浸漬させて処理する化学処理装置及びその制御方法に関し、例えば、処理対象物をエッチング液に浸漬させてエッチング処理するエッチング装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理対象物の表面の改質のために行うエッチング処理には主にディップ方式とシャワー方式がある。ディップ方式は、処理対象物をラックに取り付け或いはカセットに収納した状態でアルカリ性又は酸性のエッチング液に所定時間にわたって浸漬させる方式である。また、シャワー方式は、ポンプを用いて貯槽から吸い込んだエッチング液を処理対象物に加圧噴射する方式である。
【0003】
ディップ方式では、エッチング液は、ラック等の治具及び処理対象物に付着して前工程の水洗槽から持ち込まれる洗浄水で徐々に希釈され、且つ、ラック等の治具及び処理対象物に付着したままその一部が持ち出される。特に、多ピンリードフレーム等の処理対象物をエッチング処理する場合には、その処理対象物の表面積が大きいため、持ち込まれる洗浄水の量、及び、持ち出されるエッチング液の量は無視できない量になり、エッチング液の性能の変化も無視できないものとなる。また、エッチング処理の進行にしたがってエッチング液の有効成分が消費されるため、エッチング速度等のエッチング液の性能は徐々に低下する。なお、加工品質の均一性を維持しながら一定時間でエッチング処理を行うためには、エッチング液の性能を一定に維持する必要がある。そのため、エッチング液の性能を一定に維持するためのエッチング液の管理方法が提案されている。
【0004】
具体的には、エッチング液の煩雑な管理を避けるため定期的にエッチング液の全量を新しい液で更新する方法、エッチング液を段階的に更新する方法等がある。これらの方法は簡便ではあるが、エッチング液の劣化度合いが処理対象物の種類や量によって異なるため、エッチング液の劣化度合いが許容範囲内にあるうちに早めにエッチング液を更新する必要があり、不経済である。また、更新直後と更新直前でエッチング速度が異なるため、加工品質の均一性の維持を困難にする。さらに、これらの方法は、更新時に大量の使用済みエッチング液を廃水処理設備に向けて排出するため、廃水処理設備に過度の負担を掛けるおそれがある。
【0005】
上述の問題に対し、光学的な分析法によって処理液の有効成分濃度を測定して有効成分消費量を導き出し、その消費量分を補給して有効成分濃度を一定の範囲内に維持する方法が知られている(例えば特許文献1〜3参照。)。また、処理液中の特定成分の量と導電率との関係から特定成分の濃度を測定し、特定成分の量を一定の範囲内に維持する方法も知られている(例えば特許文献4〜6参照。)。しかしながら、これらの方法は、処理対象物の種類や量によって変化するエッチング液の劣化度に対応するには、オンラインリアルタイムの測定を必要とする。また、分析計が高価であるばかりでなく、試料を分析計の測定条件に合わせるために精密なサンプリング機構を必要とするため、測定システムが全体として高価なものとなってしまう。さらに、その分析結果は、光の吸光度や導電率との相関によって求まる値であるため、干渉成分の存在、試料の清浄度、温度等の測定値を乱す要因の影響を受け易く、その分析結果に基づく処理液の補給に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
これに対し、エッチング速度を一定に維持するためのエッチング液の補給速度を計算式によって算出する方法が知られている(例えば特許文献7参照。)。しかしながら、この方法は、1バッチ処理に要する数時間に対してのみ所定の加工品質を維持できるようにするための手段であり、計算式を構成する要素は1種類の処理対象物を一定のエッチング速度でエッチング処理する間は不変であり、エッチング処理中のエッチング液の変化に対応しているわけではない。したがって、ラック毎に数や種類が異なるリードフレームを浸漬させてエッチング処理を施すような装置に適用するには問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−127004号公報
【特許文献2】特開2008−106326号公報
【特許文献3】特開2004−319568号公報
【特許文献4】特開2004−137519号公報
【特許文献5】特開平07−176853号公報
【特許文献6】特開平11−1781号公報
【特許文献7】特開2004−315842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述に鑑み、本発明は、処理液の性能をより高精度に維持できる化学処理装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の実施例に係る化学処理装置は、処理槽の処理液に処理対象物を浸漬させて前記処理対象物の表面を加工する化学処理装置であって、前記処理対象物を前記処理槽から持ち出す際に前記処理槽から持ち出される前記処理液の有効成分量と前記処理対象物と反応して消費される前記処理液の有効成分量とを含む有効成分減少量を算出する有効成分減少量算出部と、前記有効成分減少量に基づいて前記処理液の有効成分を含む補給液の補給量を算出する補給量算出部と、前記処理液の性能を取得する性能取得部と、前記性能取得部が取得した前記処理液の性能と所定の目標性能との偏差に基づいて前記補給量を補正する補給量補正部とを有する。
【0010】
また、本発明の実施例に係る化学処理装置の制御方法は、処理槽の処理液に処理対象物を浸漬させて前記処理対象物の表面を加工する化学処理装置の制御方法であって、前記処理対象物を前記処理槽から持ち出す際に前記処理槽から持ち出される前記処理液の有効成分量と前記処理対象物と反応して消費される前記処理液の有効成分量とを含む有効成分減少量を算出する有効成分減少量算出ステップと、前記有効成分減少量に基づいて前記処理液の有効成分を含む補給液の補給量を算出する補給量算出ステップと、前記処理液の性能を取得する性能取得ステップと、前記性能取得ステップで取得された前記処理液の性能と所定の目標性能との偏差に基づいて前記補給量を補正する補給量補正ステップとを有する。
【発明の効果】
【0011】
上述の手段により、本発明は、処理液の性能をより高精度に維持できる化学処理装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るエッチング装置の駆動系を示す図である。
図2図1のエッチング装置の動きを説明する概略図である。
図3】補給量制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明の実施例に係るについて説明をする。図1は、本発明の実施例に係る化学処理装置の一例であるエッチング装置100の駆動系を示す。また、図2は、ディップ方式を採用するエッチング装置100の動きを説明する概略図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、エッチング装置100は、主に、制御装置10、入力部S1、液面レベル検出部D1、エッチング速度測定部D2、給液弁V1〜V3、排液弁V4〜V6、搬送機構M1、ポンプP1、フィルタF1、脱脂槽B0、水洗槽B1、エッチング槽B2、水洗槽B3、メッキ槽B4を含む。
【0015】
制御装置10は、エッチング装置100を制御する制御装置である。本実施例では、制御装置10は、CPU、RAM、ROM等を備えるコンピュータであり、入力部S1、液面レベル検出部D1、及びエッチング速度測定部D2からの出力を受けて各種演算を実行する。そして、制御装置10は、演算結果に応じた制御指令を給液弁V1〜V3、排液弁V4〜V6、搬送機構M1、及びポンプP1に対して出力する。
【0016】
入力部S1は、各種情報を制御装置10に入力する機能要素である。本実施例では、LAN等の通信ネットワークを介して外部サーバとしての生産管理システム20に接続される入力インタフェースである。そして、入力部S1は、例えば、生産管理システム20から処理対象物W1としての銅材リードフレームに関する情報等を取得する。なお、入力部S1は、タッチパネル、キーボード、テンキー、バーコードリーダ等の入力装置であってもよい。この場合、操作者は、入力部S1を通じて、製品シートに記載された銅材リードフレームに関する情報を制御装置10に入力する。
【0017】
搬送機構M1は、処理対象物を搬送する機構である。本実施例では、処理対象物W1を第1の処理槽まで搬送し、浸漬させ、取り出し、そして第2の処理槽まで搬送するという一連の動作を繰り返す機構である。なお、図2の二点鎖線は、搬送機構M1によって複数の層での浸漬と取り出しが繰り返される処理対象物W1の移動経路を表す。また、処理槽は、脱脂槽B0、水洗槽B1、エッチング槽B2、水洗槽B3、メッキ槽B4等を含む。
【0018】
脱脂槽B0は、処理対象物W1を脱脂する脱脂液を容れる槽である。また、水洗槽B1は、脱脂槽B0で脱脂された処理対象物W1を洗浄する洗浄液としての洗浄水を容れる槽である。また、エッチング槽B2は、水洗槽B1で洗浄された処理対象物W1の表面改質のためのエッチング処理で用いるエッチング液を容れる槽である。また、水洗槽B3は、エッチング槽B2でエッチング処理された処理対象物W1を洗浄する洗浄液としての洗浄水を容れる槽である。また、メッキ槽B4は、水洗槽B3で洗浄された処理対象物W1のメッキ処理で用いるメッキ液を容れる槽である。
【0019】
給液弁V1〜V3及び排液弁V4〜V6は、制御装置10からの制御指令に応じて開閉する弁である。具体的には、給液弁V1は、給水源(図示せず)と水洗槽B1とをつなぐ給液管C1の連通・遮断を切り替える弁である。また、給液弁V2は、エッチング液タンク(図示せず。)とエッチング槽B2とをつなぐ給液管C2の連通・遮断を切り替える弁である。また、給液弁V3は、給水源(図示せず)と水洗槽B3とをつなぐ給液管C3の連通・遮断を切り替える弁である。また、排液弁V4は、水洗槽B1と廃液タンクTとをつなぐ排液管C4の連通・遮断を切り替える弁である。また、排液弁V5は、エッチング槽B2と廃液タンクTとをつなぐ排液管C5の連通・遮断を切り替える弁である。また、排液弁V6は、エッチング槽B2と廃液タンクTとをつなぐ排液管C6の連通・遮断を切り替える弁である。
【0020】
制御装置10は、給液弁V1及び排液弁V4の開閉を制御して水洗槽B1の洗浄水が所定の液面レベル及び所定の清浄度となるように制御する。また、制御装置10は、給液弁V3及び排液弁V6の開閉を制御して水洗槽B3の洗浄水が所定の液面レベル及び所定の清浄度となるように制御する。なお、給液弁V2及び排液弁V5の開閉によるエッチング槽B2のエッチング液の管理については後述する。
【0021】
ポンプP1は、制御装置10からの制御指令に応じて動作するポンプである。本実施例では、ポンプP1は、エッチング槽B2のエッチング液を吸い込んでフィルタF1に向けて吐出する。フィルタF1は、エッチング液中を浮遊する反応生成物を除去するために用いられる。ポンプP1及びフィルタF1は、エッチング槽B2から出てエッチング槽B2に戻る管C7上に配置され、フィルタF1を出る(反応生成物が除去された)エッチング液はエッチング槽B2に戻る。
【0022】
液面レベル検出部D1は、処理液の有効成分を含む補給液の補給量を制御する補給量制御部を構成する機能要素である。本実施例では、液面レベル検出部D1は、エッチング槽B2のエッチング液の液面レベルを検出する液面レベルセンサであり、液面レベルが所定レベルとなった場合にその旨を制御装置10に通知する。また、本実施例では、補給量制御部は、主に、液面レベル検出部D1、給液弁V2、及び排液弁V5で構成され、エッチング補給液の補給量を制御する。なお、エッチング補給液は、エッチング槽B2にあるエッチング液の有効成分を含む補給液であり、典型的には、エッチング槽B2にあるエッチング液の有効成分濃度よりも高い有効成分濃度を有する。
【0023】
具体的には、制御装置10は、エッチング槽B2にエッチング補給液を補給する場合、排液弁V5に制御指令(連通指令)を出力する。そして、エッチング槽B2と廃液タンクTとの間を連通させてエッチング槽B2から廃液タンクTへのエッチング液の排出を開始させる。エッチング液の排出中、液面レベル検出部D1は、エッチング槽B2のエッチング液の液面レベルを監視し、徐々に下降するその液面レベルが所定レベルとなった場合に排液停止信号を制御装置10に対して出力する。排液停止信号を受信した制御装置10は、排液弁V5に制御指令(遮断指令)を出力してエッチング槽B2と廃液タンクTとの間の連通を遮断させてエッチング液の排出を終了させる。その後、制御装置10は、給液弁V2に制御指令(連通指令)を出力する。そして、エッチング液タンクとエッチング槽B2との間を連通させてエッチング液タンクからエッチング槽B2へのエッチング補給液の供給を開始させる。エッチング補給液の供給中、液面レベル検出部D1は、エッチング槽B2のエッチング液の液面レベルを監視し、徐々に上昇するその液面レベルが所定レベルとなった場合に給液停止信号を制御装置10に対して出力する。給液停止信号を受信した制御装置10は、給液弁V2に制御指令(遮断指令)を出力してエッチング液タンクとエッチング槽B2との間の連通を遮断させてエッチング補給液の供給を終了させる。
【0024】
なお、制御装置10は、給液管C2及び排液管C5のそれぞれに設置された流量計の出力に基づいて給液弁V2及び排液弁V5のそれぞれの開閉を制御してエッチング液の排出及びエッチング補給液の供給を行うようにしてもよい。この場合、液面レベル検出部D1としての液面レベルセンサは省略されてもよい。
【0025】
或いは、制御装置10は、給液弁V2の代わりに給液用定量ポンプを採用し、且つ、排液弁V5の代わりに排液用定量ポンプを採用し、エッチング液の排出及びエッチング補給液の供給を行うようにしてもよい。この場合、補給量制御部は、主に、給液用定量ポンプ及び排液用定量ポンプで構成される。また、制御装置10は、定量ポンプを用いる場合には、エッチング槽B2から廃液タンクTへのエッチング液の排出と、エッチング液タンクからエッチング槽B2へのエッチング補給液の供給とを同時に実行してもよい。この場合も、液面レベル検出部D1としての液面レベルセンサは省略されてもよい。
【0026】
エッチング速度測定部D2は、処理液の性能を取得する性能取得部の一例である。本実施例では、エッチング速度測定部D2は、エッチング処理による処理対象物W1の厚みの変化を測定してエッチング速度を導き出し、導き出したエッチング速度を制御装置10に対して出力する。なお、エッチング速度測定部D2は、エッチング速度を制御装置10に対して連続的(継続的)に出力してもよく、断続的(間欠的)に出力してもよい。また、エッチング速度測定部D2は、その処理の一部が手作業で行われてもよい。手作業による工程は、例えば、作業者がエッチング槽B2にあるエッチング液をサンプリングする工程、サンプリングしたエッチング液を用いて処理対象物W1に長時間にわたるエッチング処理を施す工程、長時間にわたるエッチング処理によって変化する処理対象物W1の厚みを測定する工程、測定結果を制御装置10に対して入力する工程等を含む。
【0027】
次に、制御装置10が有する各種機能要素について説明する。本実施例では、制御装置10は、有効成分減少量算出部11、補給量算出部12、及び補給量補正部13を有する。有効成分減少量算出部11は、エッチング液の有効成分の減少量を算出する機能要素である。また、補給量算出部12は、エッチング液の有効成分の減少量に基づいてエッチング補給液の補給量を算出する機能要素である。また、補給量補正部13は、補給量算出部12が算出したエッチング補給液の補給量を補正する機能要素である。
【0028】
具体的には、有効成分減少量算出部11は、処理対象物W1に付着して前工程の処理槽から現工程の処理槽に持ち込まれる処理液と、処理対象物W1に付着して現工程の処理槽から後工程の処理槽に持ち出される処理液とを考慮して現工程の処理槽における処理液の有効成分の減少分を算出する。本実施例では、有効成分減少量算出部11は、処理対象物W1に付着して水洗槽B1からエッチング槽B2に持ち込まれる洗浄水と、処理対象物W1に付着してエッチング槽B2から水洗槽B3に持ち出されるエッチング液とを考慮してエッチング槽B2におけるエッチング液の有効成分の減少分を算出する。
【0029】
ここで、前回のエッチング液補給時(例えば建浴時)のエッチング槽B2におけるエッチング液の有効成分濃度をdとし、現在(例えば補給時)のエッチング槽B2におけるエッチング液の有効成分濃度をdとする。また、前回の補給後においてエッチング槽B2にi回目(iは1以上の整数)に浸漬された浸漬対象物の表面積をSとする。浸漬対象物は、エッチング槽B2のエッチング液に浸漬される物全体を意味し、処理対象物W1及び処理対象物W1を保持する治具を含む。また、処理対象物に付着して持ち出されるエッチング液の単位面積当たりの付着液量をqとし、前回の補給後に行われたエッチング処理の回数をn(nは1以上の整数)とする。なお、処理対象物に付着してエッチング槽B2に持ち込まれる洗浄水の量と、処理対象物に付着してエッチング槽B2から持ち出されるエッチング液の量とは同じとする。
【0030】
この場合、処理対象物に付着して持ち出されるエッチング液の有効成分量(持ち出し有効成分量)Eは以下の(1)式で表される。
【0031】
【数1】
なお、
【0032】
【数2】
は、n回のエッチング処理のそれぞれに関する処理対象物に付着して持ち出されるエッチング液の有効成分濃度の平均値(近似値)を表す。
【0033】
また、前回の補給後においてエッチング槽B2にi回目に浸漬された処理対象物の表面積をsとし、所定のエッチング時間にわたるエッチング処理によって消費される単位面積当たりの有効成分消費率をkとする。なお、有効成分消費率kは、エッチング液の組成、エッチング速度等に応じて予め設定される値である。例えば、有効成分消費率kは、処理対象物W1を長時間にわたってエッチング液に浸漬させたときの処理対象物W1の厚みの変化、特定成分の消費量等の測定値に基づいて実験的に決定される。
【0034】
この場合、処理対象物をエッチング処理することによって消費されるエッチング液の有効成分量(消費有効成分量)Eは以下の(2)式で表される。
【0035】
【数3】
したがって、前回の補給後にエッチング槽B2から消失したエッチング液の有効成分量(有効成分減少量)EはE+Eで表される。このようにして、有効成分減少量算出部11は、有効成分減少量Eを算出する。
【0036】
補給量算出部12は、上述のようにして算出される有効成分減少量Eに基づいてエッチング補給液の補給量Qを算出する機能要素である。本実施例では、補給量算出部12は、所定の有効成分濃度dのエッチング補給液によって補給される有効成分量と有効成分減少量Eとが等しくなるようにエッチング補給液の補給量Qを算出する。
【0037】
具体的には、エッチング槽B2の有効容積をCとすると、現在のエッチング槽B2にあるエッチング液の有効成分量と前回の補給直後のエッチング槽B2にあったエッチング液の有効成分量との関係は以下の(3)式で表される。
【0038】
【数4】
また、以下の(4)式で示すように、エッチング槽B2の有効容積C(例えば900リットル)に比べ、処理対象物に付着して持ち出されるエッチング液の付着量vは無視できる程に小さい。
【0039】
【数5】
そのため、現在のエッチング槽B2にあるエッチング液の有効成分濃度dは、前回のエッチング液補給時のエッチング槽B2にあったエッチング液の有効成分濃度dにほぼ等しいと見なすことができ、d−dを値ゼロと見なすことができる。そのため、(1)式は以下の(5)式で置き換えられ、(3)式は以下の(6)式で置き換えられる。
【0040】
【数6】
【0041】
【数7】
そして、有効成分濃度dのエッチング補給液を補給量Qだけ補給して有効成分減少量Eを補う場合、補給される有効成分量(Q×d)と有効成分減少量Eとの関係は以下の(7)式で表される。
【0042】
【数8】
また、補給量Qは、(7)式を変形して以下の(8)式で表される。
【0043】
【数9】
なお、本実施例では、エッチング液の蒸発、水洗槽B1から持ち込まれる洗浄水の量とエッチング槽B2から持ち出されるエッチング液の量との差等に起因するエッチング槽B2の液面レベルの変動を抑制するため、図示しない純水補給システムで純水が補給される。そのため、実際に補給されるエッチング液の補給量(実補給量)Qは以下の(9)式で表される。なお、αは補正係数を表す。
【0044】
【数10】
補給量補正部13は、フィードバック制御を用い、上述のようにして算出される実補給量Qを補正する機能要素である。本実施例では、補給量補正部13は、PID制御により実補給量Qを補正する。
【0045】
具体的には、補給量補正部13は、エッチング速度測定部D2が測定したエッチング速度Rpと目標エッチング速度Rtとの偏差e(=Rt−Rp)が値ゼロとなるように実補給量Qを補正する。
【0046】
比例ゲインをKpとし、積分時間をTiとし、微分時間をTdとすると、補給量補正部13による補正量Qは以下の(10)式で表され、補正後補給量Qは以下の(11)式で表される。
【0047】
【数11】
【0048】
【数12】
なお、(11)式の「±」は、補給量補正部13が補給量の増大補正及び減少補正の双方に対応できることを表す。
【0049】
また、補給量補正部13は、望ましくは、エッチング処理された処理対象物W1の表面積の累積値が所定値に達する毎に補正量Qを算出して補正後補給量Qを決定する。但し、補給量補正部13は、エッチング処理された処理対象物W1の表面積の累積値にかかわらず、所定時間が経過する毎に補正量Qを算出して補正後補給量Qを決定してもよい。
【0050】
次に、図3を参照し、制御装置10が補給量を制御する処理(以下、「補給量制御処理」とする。)について説明する。なお、図3は、補給量制御処理の流れを示すフローチャートであり、制御装置10は、エッチング補給液の補給を行う際にこの補給量制御処理を実行する。なお、本実施例では、処理対象物W1は銅材リードフレームであり、浸漬対象物は銅材リードフレーム及び銅材リードフレームを把持する治具(ラック)である。また、1つのラックには例えば200枚の銅材リードフレームがセットされる。また、目標エッチング速度は2μm/分であり、処理対象物W1のそれぞれは、1.5分間にわたってエッチング槽B2のエッチング液に浸漬され、エッチング規定値3±0.5μmの加工精度でエッチング処理が施される。また、エッチング装置100は、メッキ処理の前処理としてこのような1.5分間のエッチング処理を間欠連続的に実行する。
【0051】
最初に、制御装置10は、前回の補給が行われた後の有効成分減少量Eを算出する(ステップST1)。本実施例では、制御装置10は、入力部S1を通じて処理対象物W1の表面積及び浸漬対象物の表面積を取得する。そして、制御装置10の有効成分減少量算出部11は、(2)式で示す消費有効成分量Eと、(5)式で示す持ち出し有効成分量)Eとの合計を有効成分減少量Eとして算出する。
【0052】
その後、制御装置10は補給量を算出する(ステップST3)。本実施例では、制御装置10は、(8)式及び(9)式を用いて有効成分濃度dのエッチング補給液の補給量Qを算出する。
【0053】
その後、制御装置10は処理液の性能を取得する(ステップST3)。本実施例では、制御装置10は、エッチング速度測定部D2の出力に基づいてエッチング槽B2にあるエッチング液のエッチング速度を取得する。
【0054】
その後、制御装置10は、現在の性能と目標性能との偏差に基づいて補給量を補正する(ステップST4)。本実施例では、制御装置10の補給量補正部13は、エッチング槽B2にあるエッチング液の現在のエッチング速度と目標エッチング速度との偏差から(10)式を用いて補正量Qを算出する。そして、(11)式に示すように、エッチング補給液の補給量Qに補正量Qを加算或いは減算して補正後補給量Qを算出する。
【0055】
その後、制御装置10は補正後補給量に基づいて補給を制御する(ステップST5)。本実施例では、制御装置10は、排液弁V5に制御指令(連通指令)を出力して有効成分濃度dのエッチング液の廃液タンクTへの排出を開始させる。また、制御装置10は、補正後補給量Qに関する情報を液面レベル検出部D1に対して通知する。液面レベル検出部D1は、エッチング槽B2のエッチング液の液面レベルが所定レベルとなった場合に排液停止信号を制御装置10に対して出力する。所定レベルは、エッチング液の排出量が補正後補給量Qに相当する量に達したときの液面レベルである。排液停止信号を受信した制御装置10は、排液弁V5に制御指令(遮断指令)を出力してエッチング液の排出を終了させる。その後、制御装置10は、給液弁V2に制御指令(連通指令)を出力して有効成分濃度dのエッチング補給液のエッチング槽B2への供給を開始させる。液面レベル検出部D1は、エッチング槽B2のエッチング液の液面レベルが所定レベルとなった場合に給液停止信号を制御装置10に対して出力する。所定レベルは、エッチング補給液の供給量が補正後補給量Qに相当する量に達したときの液面レベルである。給液停止信号を受信した制御装置10は、給液弁V2に制御指令(遮断指令)を出力してエッチング補給液の供給を終了させる。
【0056】
このようにして、制御装置10は、補給量制御部を適切に駆動させ、エッチング槽B2に対するエッチング補給液の補給を制御する。なお、本実施例では、制御装置10は、所定回数のエッチング処理が完了する毎にエッチング補給液の補給量を算出し、その補給量だけエッチング補給液をエッチング槽B2に補給する。すなわち、制御装置10は、エッチング補給液の補給を断続的に実行する。しかしながら、搬送機構M1によって処理対象物W1がエッチング槽B2に規則的に出し入れされる場合、制御装置10は、エッチング補給液を連続的に補給してもよい。具体的には、制御装置10は、搬送機構M1による処理対象物W1の搬送と、エッチング液の廃液タンクTへの排出と、エッチング補給液のエッチング槽B2への供給とを同時進行で実行してもよい。その結果、エッチング装置100は、処理対象物W1のエッチング処理に要する全体的な時間を短縮でき、エッチング処理の効率化を図ることができる。
【0057】
また、制御装置10は、エッチング槽B2にあるエッチング液における反応生成物の濃度が上昇して結晶化するのを防止するため、上述のようなエッチング補給液の補給とは別に、所定量のエッチング液の排出、所定量のエッチング補給液の供給、所定量の純水の供給を実行してもよい。
【0058】
また、制御装置10は、エッチング槽B2にあるエッチング液の蒸発に起因するエッチング液の液面レベルの低下を防止するために純水を供給してエッチング液の液面レベルの維持を図るようにしてもよい。
【0059】
以上の構成により、エッチング装置100は、適量のエッチング補給液を補給することによってエッチング処理の進行に伴うエッチング液の有効成分濃度の低下を補い、エッチング槽B2内のエッチング液の性能を維持できる。その結果、エッチング装置100は、処理対象物W1の加工品質の均一性を維持できる。また、エッチング装置100は、エッチング液の全量を定期的に一括して更新する手法を採用しないので、有効成分濃度が高い状態のエッチング液が廃棄されてしまうのを防止でき、経済的なエッチング液管理方法を提供できる。また、更新時に大量の使用済みエッチング液が廃水処理設備に向けて排出されてしまうのを防止でき、廃水処理設備に過度の負担を掛けるおそれもない。
【0060】
また、エッチング装置100は、エッチング槽B2にある現在のエッチング液のエッチング速度と目標エッチング速度との偏差が値ゼロとなるようにエッチング補給液の補給量をフィードバック制御する。そのため、処理対象物W1に付着して水洗槽B1からエッチング槽B2に持ち込まれる洗浄水と、処理対象物W1に付着してエッチング槽B2から水洗槽B3に持ち出されるエッチング液との差が累積した場合であってもエッチング槽B2にあるエッチング液の性能を維持できる。同様に、エッチング液の温度の変動によりエッチング速度が変化した場合であってもエッチング槽B2にあるエッチング液の性能を維持できる。
【0061】
なお、上述の補給量制御処理では、補給量の算出、補給量の補正、及びその補給が同じ制御周期(頻度)で実行されるが、補給量の算出及び補給と補給量の補正とは異なる頻度で実行されてもよい。具体的には、エッチング装置100は、有効成分減少量算出部11による有効成分減少量の算出の頻度、及び、補給量算出部12による補給量の算出の頻度と、補給量補正部13による補給量の補正の頻度とを異ならせてもよい。例えば、補給量の算出及び補給が数分乃至数時間毎に実行される場合であっても、補給量の補正は1日1回の頻度で実行されてもよい。したがって、補給量の補正に関連するエッチング速度の取得は1日1回の頻度で実行されてもよい。その結果、エッチング装置100は、補給量算出部12によって算出された補給量に基づくエッチング補給液の補給量の制御(フィードフォワード制御)と、補給量補正部13によって補正された補給量に基づくエッチング補給液の補給量の制御(フィードバック制御)とを柔軟に組み合わせることができる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0063】
例えば、エッチング装置100は、浸漬対象物及び処理対象物の表面積を取得できるのであれば、複数種類の治具を用いて複数種類の処理対象物をランダムにエッチング処理する場合であっても、1種類の治具を用いて1種類の処理対象物をエッチング処理する場合と同様にエッチング補給液の補給量を算出し、補正し、そして補給することができる。
【0064】
また、上述の実施例では、エッチング補給液の補給量を決定する場合について説明したが、本発明は、メッキ液等の他の処理液の有効成分を補給する場合にも適用され得る。例えば、メッキ補給液の補給量を決定する場合、性能取得部としてのエッチング速度測定部D2は、メッキ液の組成を分析可能な分析器で置き換えられる。そして、補給量補正部13は、メッキ液に含まれる特定の成分の濃度が所定レベルに維持されるよう、メッキ補給液の補給量を決定する。
【符号の説明】
【0065】
10・・・制御装置 11・・・有効成分減少量算出部 12・・・補給量算出部 13・・・補給量補正部 20・・・生産管理システム 100・・・エッチング装置 B0・・・脱脂槽 B1・・・水洗槽 B2・・・エッチング槽 B3・・・水洗槽 B4・・・メッキ槽 C1〜C3・・・給液管 C4〜C6・・・排液管 C7・・・管 D1・・・液面レベル検出部 D2・・・エッチング速度測定部 F1・・・フィルタ M1・・・搬送機構 P1・・・ポンプ S1・・・入力部 T・・・廃液タンク V1〜V3・・・給液弁 V4〜V6・・・排液弁 W1・・・処理対象物
図1
図2
図3