(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-227624(P2015-227624A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】汚水ポンプ用のケーシングライナ及びこれを備えた汚水ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 7/04 20060101AFI20151120BHJP
F04D 29/24 20060101ALI20151120BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
F04D7/04 H
F04D29/24 B
F04D29/24 C
F04D29/42 E
F04D7/04 M
F04D7/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-112800(P2014-112800)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】打田 博
(72)【発明者】
【氏名】川井 政人
(72)【発明者】
【氏名】坂頂 浩美
(72)【発明者】
【氏名】大渕 真志
(72)【発明者】
【氏名】磯野 美帆
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AA27
3H130AB22
3H130AB43
3H130AC07
3H130BA45A
3H130BA45C
3H130CA05
3H130CA21
3H130CB01
3H130EA06A
3H130EB01A
3H130EB04A
3H130EB04C
(57)【要約】
【課題】長尺で繊維質のゴミや大きくて大量のゴミを含んだ汚水を円滑に流すことができる汚水ポンプを提供すること。
【解決手段】汚水ポンプに使用されるケーシングライナ6であって、羽根車1の羽根の縁部が対向する表面の少なくとも一部には、所定の幅を有する少なくとも1本の溝18が形成され、溝18はその幅方向に関して、羽根車1の回転中心Lから近い側で所定の深さを有する第1部分21と、羽根車1の回転中心Lから遠い側で第1部分21よりも浅い第2部分22と、これら第1及び第2部分21,22を傾斜面で繋ぐ第3部分23とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水ポンプに使用されるケーシングライナであって、羽根車の羽根の縁部が対向する表面の少なくとも一部には、所定の幅を有する少なくとも1本の溝が形成され、
前記溝はその幅方向に関して、前記羽根車の回転中心から近い側で所定の深さを有する第1部分と、前記羽根車の回転中心から遠い側で前記第1部分よりも浅い第2部分と、これら第1及び第2部分を傾斜面で繋ぐ第3部分とを有する、ケーシングライナ。
【請求項2】
前記第1部分と第2部分は、前記ケーシングライナの内壁面と平行である、請求項1に記載のケーシングライナ。
【請求項3】
前記溝の両端は、前記ケーシングライナの表面に対して直角方向の壁面となっている、請求項1又は2に記載のケーシングライナ。
【請求項4】
前記溝は、前記羽根車の吸込端から出口端に対応する部位に向かう渦巻形状で形成されている、請求項1から3の何れか一項に記載のケーシングライナ。
【請求項5】
前記溝は、前記羽根車の回転方向と同一方向に向かってケーシングライナの外周部に近づくような渦巻形状である、請求項1から4の何れか一項に記載のケーシングライナ。
【請求項6】
前記溝は、前記ケーシングライナに対して前記羽根の縁部が対向する範囲に形成されている、請求項1から5の何れか一項に記載のケーシングライナ。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載のケーシングライナと、このケーシングライナに対向する羽根車と、この羽根車が取り付けられた回転軸と、この回転軸を回転させるモータとを備えた、汚水ポンプ。
【請求項8】
前記羽根車の羽根の吸込端縁は、前記回転中心側から半径方向外方に向かって、前記羽根車の回転方向とは逆方向に後退している、請求項7に記載の汚水ポンプ。
【請求項9】
前記羽根車は、セミオープン型である、請求項7又は8に記載の汚水ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水ポンプに係り、特に、主として、縄切れや紐切れ等の長尺で繊維質のゴミ(異物)や、大きくて大量の固形物を含んだ汚水の揚水に使用される汚水ポンプ、及びこれに使用されるケーシングライナに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、汚水には長尺で繊維質のゴミや大きくて大量の固形物等が含まれる場合がある。このような汚水を揚水する下水用ポンプ等においては、羽根車の吸込端にゴミが絡み付いたり、羽根車の羽根とケーシングライナとの間にゴミが詰まる場合がある。このようなゴミは時間の経過と共に次第に成長し、羽根車流路を閉塞してしまい、汚水ポンプが送りだす汚水の流量が減少する例が多く発生している。
【0003】
以上のような状況が生じている原因としては、近年の都市化が考えられる。すなわち、都市化の進展に伴い、下水処理場を住宅地に建設することができなくなり、郊外の処理場まで送水するための中継ポンプ場が住宅地に建設されるようになった。但し、住宅地におけるゴミの悪臭やゴミ運搬による環境汚染を避けるために、流入してくる多種多様なゴミを除去することを殆んどせずに、そのまま下水と共に下水処理場へ送水している。このため、上記のような汚水ポンプ内での閉塞問題か発生しやくなってきた。
【0004】
従来、長尺で繊維質のゴミや大きくて大量のゴミ等の異物を含む汚水や、厨房などから出る雑廃物を含む排水等を揚水する汚水ポンプにおいては、これらの異物が羽根車やケーシングに詰まらないように、オープン型羽根車やセミオープン型羽根車を使用してきた。それでも、羽根とケーシングライナとの隙間に異物が詰まってしまい、揚水が不可能になったり、駆動用モータの焼損等を起こしたりすることがあった。
【0005】
上記問題を解決するための手段として、羽根車に対向するケーシングライナに放射状の溝を設けたものが提案されている(特許文献1の
図2及び
図3、特許文献2の
図2及び
図3参照。)。これは、汚水ポンプの吸込口から吸い込まれた繊維質の夾雑物を、ケーシングライナの溝と羽根車とにより切断して、出口端へ向けて排出するようにしたものである。すなわち、ケーシングライナの内壁面の放射状の溝に異物が入り込み、その状態で、ケーシングライナと相対する形で羽根がカッターの役目を果たし、異物を切断することで、隙間への異物の詰まりを防止するようにしたものである。また、ポンプ羽根車の羽根が対向するポンプハウジングの表面に、深さが変化する溝を形成する発明も提案されている(特許文献3の
図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭49−108103号公報
【特許文献2】実開昭64−11390号公報
【特許文献3】特開平11−201087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の各先行技術文献に記載された各発明には、以下のような問題点がある。すなわち、長尺で繊維質の異物や大きくて大量の異物が羽根車の流路に入り込んだ場合、切断した異物が溝に詰まり、これらの異物をポンプ吐出口から円滑に排出することができない。特に、特許文献1及び2の発明では、溝の断面形状は左右対称であり、汚水
の流れ方向を考慮した形状とはなっていない。また、特許文献3の発明では、溝の深さは左右対象ではないが、深い部位から浅い部位に向かって深さが連続的に変化しているため、異物が溝の表面から離脱しにくい構造となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、第1の手段は、汚水ポンプに使用されるケーシングライナであって、羽根車の羽根の縁部が対向する表面の少なくとも一部には、所定の幅を有する少なくとも1本の溝が形成され、溝はその幅方向に関して、羽根車の回転中心から近い側で所定の深さを有する第1部分と、羽根車の回転中心から遠い側で第1部分よりも浅い第2部分と、これら第1及び第2部分を傾斜面で繋ぐ第3部分とを有する、という構成を採っている。
【0009】
以上のように構成された汚水ポンプにおいて、長尺で繊維質のゴミや大量の大きなゴミが汚水に含まれている場合がある。その際、繊維質のゴミが羽根車の吸込端に絡みつくこともある。羽根の吸込端に絡みつこうとしたゴミは、遠心力により羽根車の半径方向外方に追いやられる。ゴミが羽根の吸込端の最外周部まで到達すると、今度は汚水の流れによって、ゴミは羽根車とケーシングライナとの隙間に追いやられる。このようにして追いやられたゴミは、ケーシングライナに設けられた溝とケーシングライナに対向する羽根の縁部とによって切断される。また、切断された繊維状のゴミや大量の大きなゴミが溝に入り込んだ場合でも、溝の第1部分と第2部分とをつなぐ傾斜面である第3部分によって変化する流速とゴミの勢い(加速度)によって溝から離脱し、(その勢いで)円滑に溝から排出させることができる。
【0010】
第2手段は、第1手段の構成に加え、第1部分と第2部分は、ケーシングライナの内壁面と平行である、という構成を採っている。
【0011】
第3手段は、第1手段又は第2手段の構成に加え、溝の両端は、ケーシングライナの表面に対して直角方向の壁面となっている、という構成を採っている。
【0012】
第4手段は、第1手段から第3手段の何れかの構成に加え、溝は、羽根車の吸込端から出口端に対応する部位に向かう渦巻形状で形成されている、という構成を採っている。
【0013】
第5手段は、第1手段から第4手段の何れかの構成に加え、溝は、羽根車の回転方向と同一方向に向かってケーシングライナの外周部に近づくような渦巻形状である、という構成を採っている。
【0014】
第6手段は、第1手段から第5手段の何れかの構成に加え、溝は、ケーシングライナに対して羽根の縁部が対向する範囲に形成されている、という構成を採っている。
【0015】
第7手段は、第1手段から第6手段の何れかのケーシングライナと、このケーシングライナに対向する羽根車と、この羽根車が取り付けられた回転軸と、この回転軸を回転させるモータとを備えた汚水ポンプ、という構成を採っている。
【0016】
第8手段は、第7手段の構成に加え、羽根車の羽根の吸込端は、回転中心側から半径方向外方に向かって、羽根車の回転方向とは逆方向に後退している、という構成を採っている。
【0017】
第9手段は、第7手段又は第8手段の構成に加え、羽根車はセミオープン型である、という構成を採っている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るケーシングライナを示し、
図1(A)は平面図を示し、
図1(B)は
図1(A)のB−B線における断面図を示し、
図1(C)は
図1(B)の点線円内の拡大図である。
【
図2】
図1に開示したケーシングライナを備える汚水ポンプを示す一部断面図である。
【
図3】
図1(A)に開示したケーシングライナであり、
図3(A)は羽根車を仮想的に組み合わせた図であり、
図3(B)はケーシングライナの側面図である。
【
図4】
図1に開示したケーシングライナに羽根車を組み合わせた図であり、吸込口の方向から見た底面図である。
【
図5】第2の実施形態に係るケーシングライナ(溝の各部分が曲面で繋がれている形態)を示す断面図である。
【
図6】第3の実施形態に係るケーシングライナ(2本の溝が形成されている形態)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[全体概要]
次に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るケーシングライナ6を示す図であり、
図2はこのケーシングライナ6を具備する立型の汚水ポンプを示す図である。
図2に示すように、汚水ポンプは、下部にポンプ部を有すると共に、上部にモータ15を備えている。ポンプ部にはセミオープン型の羽根車1が設けられており、モータ15から延びる回転軸14の下端部にこの羽根車1がボルトで取り付けられている。羽根車1は、ポンプケーシング2とケーシングライナ6とポンプケーシングカバー11で囲まれた空間に配置されている。
【0020】
ポンプケーシング2には吐出口7が形成されており、さらに、汚水ポンプを設置するために必要なポンプケーシング脚8も備えられている。ポンプケーシングカバー11のモータ15側には、回転軸14との隙間から上がってきた漏洩水を封止するための軸封機構13が配置されており、その周囲には軸封機構13を潤滑するための潤滑油の油室10が設けられている。さらに、ポンプケーシングカバー11とモータ15との間には、スペーサ12が配置され、軸封機構13を上部から支持している。一方、軸封機構13は下部からもポンプケーシングカバー11で支持され、スペーサ12とポンプケーシングカバー11の両方によって固定される構造となっている。また、モータ15には、上部に電源ケーブル17と吊り下げ手段16を備えている。
【0021】
羽根車1は、1つまたは複数の羽根を有し、主板の裏側に回った高圧水の中に混入している異物を排除する為の裏羽根9を備えており、羽根車1を回転させることで、裏羽根9の機能が発揮される。また、羽根車1の羽根の縁部は、ケーシングライナ6の面と対向しており、ケーシングライナ6の下方には吸込口3が開口している。なお、本実施形態に係る羽根車1の羽根は2つである。
【0022】
[溝]
次に、本発明の特徴点の一つである渦巻形状の溝について、
図1に基づいて説明する。ここで、「渦巻形状」とは、二次元の渦巻形状の他、いわゆる螺旋形状と呼ばれる三次元の渦巻形状も含む趣旨である。ケーシングライナ6を示すこの
図1において、図中の矢印で示すように、羽根車1は時計回りに回転するようになっている。そして溝18は、渦巻形状で形成されており、中心に近い側の始点が時計の9時に相当する角度位置にあり、外周部の終点が時計の6時に相当する角度位置にある。このため、溝は約270°の角度範囲にわたって、羽根車の回転方向と同一の方向(時計回り方向)に向かって外周部に近づくような形状である。なお、上述の始点及び終点の角度位置は説明の便宜上のものである
。また、溝の角度範囲も270度に限定されるものではなく、90°や360°の角度範囲に設定してもよい。なお、ケーシングライナ6の吸込口3の部分は三次元の渦巻形状であり、ケーシングライナ6の内壁面(上面)に形成されている溝18は二次元の渦巻形状である。
【0023】
次に、
図1(B)に示すように、吸込口3の内部に形成されている溝18の始点は、吸込口3の高さ方向の略中間部に位置している。これは、
図2に示すように、羽根車1の吸込端4の最外周部が吸込口3の中間部に位置しているからである。すなわち溝18は、羽根車1の羽根の縁部に対向する位置に形成されている。また、
図1(A)と
図1(B)から明らかなように、溝18の渦巻形状は、時計の9時に相当する角度位置から時計の0時に相当する角度位置まで延びており、モータ15側に向かって上昇している。そして、時計の0時に相当する角度位置から時計の6時に相当する角度位置までは、渦巻形状となっている。溝18の終点となるケーシングライナ6の最外周部は、羽根車の出口端の位置に対応している。
【0024】
次に、溝18の断面形状について、
図1(C)に基づいて説明する。この
図1(C)は、
図1(B)の点線円C内を拡大した図である。溝18の両端は、ケーシングライナ6の内壁面(上面)に対して略直角な垂直面19,20となっている。また、溝18の底面はケーシングライナ6の内壁面と平行な面となっている。但し、溝18の幅方向における左側と右側とで深さが相互に異なっている。具体的には、異物が入ってくる側の深さが、異物が出てゆく側の深さよりも深くなっている。
【0025】
ここで、異物が入ってくる側と、異物が出てゆく側という語句の定義について説明する。
図1(C)において、溝18の左側は羽根車の回転中心L側であり、溝18の右側は羽根車の外周部側である。本実施形態の汚水ポンプは遠心式であり、異物は左側から右側に移動することになる。このため、
図1(C)においては、溝18の左側が異物が入ってくる側であり、溝の右側が異物が出て行く側と定義される。本実施形態の溝18は、異物が入ってくる側の深さが深い第1部分21であり、異物が出てゆく側が第1部分21より浅い第2部分22となっている。そして、第1部分21と第2部分22の間は、所定の角度を持った傾斜面である第3部分23でつながれている。この第3部分23の角度は、一例としては30〜60度である。この傾斜面は、切断された異物が溝18から排出するために、勢いを付けるための作用がある。この点は後述する。
【0026】
[作用]
次に、本実施形態に係るケーシングライナ6とその溝18の作用について、
図2及び
図3に基づいて説明する。モータ15の駆動力により羽根車1が回転していると、吸込口3から汚水が吸い込まれる。この汚水中には長尺で繊維質のゴミなどが含まれている場合がある。このような繊維質のゴミは羽根車1の吸込端4に絡みつく場合がある。このとき、本実施形態の羽根車1は、
図3に示すように、吸込端4が回転中心L側から外周部側に行くに従って、羽根車1の回転方向とは逆の方向に向かって後退してゆく。このため、仮に、羽根車1の吸込端4に繊維質のゴミが絡みついたとしても、遠心力と汚水の流れから受ける力によって、吸込端4の外周部側に移動する。
【0027】
繊維質のゴミが吸込端4の最外周部を超えると、汚水の流れによって羽根の縁部とケーシングライナ6との間に進入する。そして、繊維質のゴミが羽根の縁部と溝18の交差位置に存在すると、溝18の垂直面19,20と羽根の縁部との作用によって、
図3に示すように繊維質のゴミGが切断される。この作用によって、羽根車1とケーシングライナ6との間にゴミが詰まるのを確実に防止できる。本実施形態が効果を発揮するのは繊維質のゴミだけではなく、大きくて大量のゴミの場合にも同様に、溝の作用によってゴミを細かく分解でき、汚水と共に円滑に流すことができる。
【0028】
上記作用に加え、本実施形態では溝18の特徴的な断面形状に基づいて、更なる特別な作用を発揮する。すなわち、
図1(C)に示すように、溝18は深さの深い第1部分21と浅い第2部分22とを有し、これら第1及び第2部分21,22の間が傾斜面である第3部分23で繋がれている。第1部分21は羽根車1の回転中心Lに近い側に位置しているため、汚水は第1部分21から第2部分22に向かって流れることになる。このとき、一旦第1部分21にゴミが入った場合に、汚水の流れによってゴミは左側から右側に移動する。その際、第3部分23の傾斜面に沿ってゴミはケーシングライナ6の内壁面側(図中の上方)に向かう速度成分を与えられる。
【0029】
一方、第3部分23から第2部分22へは、傾斜面から水平面への急激な角度差が形成されている。このため、ゴミに与えられたケーシングライナ6の内壁面側に向かう速度成分によって、ゴミは第2部分22の表面から離脱する。これにより、ゴミは溝18から円滑に排除されて汚水と共に下流側に流れることとなる。再度説明すると、本実施形態の溝18では、溝が平行面→傾斜面→平行面という3つの部分21,23,22の組み合わせから形成されているため、溝18の内部にゴミが蓄積するのを確実に防止することができる。また、溝18は、ケーシングライナ6の吸込口3から出口端まで延びた渦巻形状であることから、この渦巻形状の溝18に沿って、ゴミが羽根の出口端に押し出されるように排出させることができる。
【0030】
以上のように、ケーシングライナに設けられた溝18と羽根の縁部とによって切断された繊維状のごみや、大量の大きなゴミを、溝18の作用によって、羽根車1の出口端に向かって、滞りなく排出することができる。なお、
図4は、発明の理解を助けるために、ケーシングライナ6及び羽根車1を吸込口3側から見た図である。羽根車1の入口端4は図に示すように、回転中心側から外周部に向かって角度αだけ、羽根車1の回転方向に対して後退している。このため、仮に吸込端に繊維質のゴミが絡みついたとしても、吸込端の外周部側へゴミが容易に移動する。
【0031】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係るケーシングライナ6aを示している。特にこの図は、溝の断面拡大図である。この図に示すように、溝18aは
図1(C)と同様に、第1部分21a→第3部分23a→第2部分22aを有している。しかし、
図1(C)の溝18は各部分が所定の角度で繋がっているのに対して、
図5の実施形態では、各部分の間が曲面で繋がっている。こうすることで、例えば第1部分21aと第3部分23aとの境界部分にゴミが蓄積されるのを防止することができる。
【0032】
[第3の実施形態]
図6に示す第3の実施形態では、2本の溝18bが形成されている点が、
図1に示した第1の実施形態とは異なる点である。このように溝18bを2本形成することで、羽根の縁部と溝18bが交差する場所の数が増加する。このため、繊維質のゴミや大きくて大量のゴミを切断する箇所が増えることになる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、遠心式の汚水ポンプのケーシングライナに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 羽根車
2 ポンプケーシング
3 吸込口
4 吸込端
5 出口端
6,6a,6b ケーシングライナ
7 吐出口
8 ポンプケーシング脚
9 裏羽根
10 油室
11 ポンプケーシングカバー
12 スペーサ
13 軸封部
14 回転軸
15 モータ
16 つり下げ手段
17 電源ケーブル
18,18a,18b 溝
19、20 垂直面
21、21a 第1部分
22、22a 第2部分
23、23a 第3部分