【課題手段】発光素子と、発光素子からの光により励起されて、波長が610nm〜650nmの範囲に発光ピークを有する第一発光スペクトルの蛍光を発する第一蛍光体と、発光素子からの光により励起されて、波長が500〜540nmの範囲に発光ピークを有する第二発光スペクトルの蛍光を発する第二蛍光体とを備え、発光素子からの光と第一蛍光体及び第二蛍光体からの蛍光との混色光を発する半導体発光装置であって、混色光の発光スペクトルは、波長が600nm〜640nmの範囲に第一発光ピークを有しており、640nmよりも大きく発光強度が第一発光ピークの30%となる波長と、第一発光ピークの波長との差が76nmよりも小さく、平均演色性評価数Raが90以上、特殊演色性評価数R9が50以上である。
【背景技術】
【0002】
発光装置として、青色発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)と黄色蛍光体を組み合わせた構成が利用されている(例えば、特許文献1を参照。)。この発光装置は、LEDからの青色光と、このLEDから発せられた青色光の一部を、黄色蛍光体で変換させた黄色光とを混色することにより、白色系の混色光を得ることができるようにしたものである。そのため、この発光装置に用いられる蛍光体としては、LEDから発光される420nm〜470nmの波長の青色光によって効率よく励起され、黄色に発光する特性が求められている。
【0003】
黄色蛍光体としては、セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「YAG系蛍光体」と呼ぶ。)が知られている。また、この黄色蛍光体のYの一部を、Lu,Tb,Gd等で置換したり、Alの一部をGa等で置換したりした蛍光体が知られている。このようなセリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、(Y,Lu,Tb,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ceと表示することができ、組成を調整することで幅広く発光波長を調整することが可能である。
【0004】
このような黄色蛍光体と青色LEDとを組み合わせた一般的な発光装置を、照明装置に用いる場合は、光束と演色性が重要である。例えば、青色LEDとYAG系蛍光体とを組み合わせると、青色と黄色の混色であることから緑色成分、赤色成分が不足して、演色性が低くなる傾向にある。このため、更に色温度の高い温かみのある電球色を発光させるには演色性を向上させる必要がある。そこで、温かみのある電球色に発光させ、かつ演色性を改善させるために、青色LEDと緑色から黄緑色に発光する蛍光体と、橙色から赤色に発光する蛍光体の2種類以上を組み合わせた発光装置が開発されている。
【0005】
このような緑色、黄緑色、赤色蛍光体として、例えば、ケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ホウ酸塩蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体等が知られている。さらに、これらの蛍光体に代わり、高エネルギーの励起においても輝度低下の少ない蛍光体として、例えば、サイアロン蛍光体、酸窒化物蛍光体、窒化物蛍光体等のように、結晶構造に窒素を含有する無機結晶を母体とする蛍光体が提案されている。
【0006】
発光装置に用いられる赤色蛍光体として代表的なものは、CaAlSiN
3を母体結晶としてEu
2+を付活させた窒化物蛍光体(以下、「CASN蛍光体」と呼ぶ。)が知られている(特許文献2)。この蛍光体は、650nm付近に発光ピーク波長を有しており、この蛍光体に緑色から黄緑色に発光する蛍光体を組み合わせることで、演色性の高い発光装置を得ることができる。
【0007】
さらに、CaAlSiN
3:EuのCaの一部をSrに置換した、組成式が(Sr,Ca)AlSiN
3:Euで表される蛍光体(以下、「SCASN蛍光体」と呼ぶ。)が知られており、Srが多いほど、短波長化する(特許文献2)。また、SCASN蛍光体は、そのピーク波長が610〜650nmであり、CASN蛍光体よりも短い発光を示す。このような波長の短い赤色蛍光体を用いることで、赤味成分を付与しながらも、視感度の影響により発光装置をより明るくすることができる。このためSCASN蛍光体は非常に有望な赤色蛍光体といえる。
【0008】
ここで、SCASN蛍光体は、概略以下に述べるような製造プロセスによって製造される。まず窒化カルシウム(Ca
3N
2)、窒化ストロンチウム(Sr
3N
2)窒化ケイ素(Si
3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ユーロピウム(EuN)の原料粉末をCa:Sr:Al:Si:Eu=0.1984:0.7936:1:1:0.008となるように窒素雰囲気のグローブボックス中で混合する。そして500μmのふるいを通して窒化ホウ素るつぼに自然落下させて充填した後、黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットし、1MPaの窒素ガス中において1800℃の温度で2時間保持するガス加圧焼結法により焼成する。このようにしてSCASN蛍光体が製造される。
【0009】
しかしながら、この合成方法ではCASN蛍光体と比較して、発光強度が約8割と特性の低い蛍光体しか得られないことが判明した。この原因は、このような合成条件ではCASN蛍光体は安定であるのに対して、SCASN蛍光体は安定して存在できず、徐々に別の化合物(Sr
2SiN
5,AlN等)に分解して、純粋なSCASNが得られためであった。このため、更に特性を改善する方法が検討されていた。
【0010】
このため、窒化カルシウムや窒化ケイ素、窒化アルミニウム等を用いず、カルシウム、ストロンチウム、ケイ素、アルミニウム、ユーロピウム金属を合金化し、合金を粉砕した粉末を窒化する方法が提案されている(特許文献3、非特許文献1(H. Watanabe, et al. "Synthetic Method and Luminescence Properties of Sr
xCa
1-xAlSiN
3:Eu
2+ Mixed Nitride Phosphors" Journal of The Electrochemical Society,155 (3) F31-F36 (2008)))。
【0011】
また演色性の高い、発光効率の高い発光装置を得るため、緑色蛍光体と赤色蛍光体の組み合わせが検討されているが、演色性と発光効率は不十分であり、更なる改善が求められている(特許文献4、5)。
【0012】
このように従来の発光装置は、実用性においては未だ演色性、発光効率が不十分なものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、半導体発光装置を例示するものであって、本発明は、半導体発光装置を以下のものに特定しない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0020】
本発明者等は、上述したような問題点に鑑み、更に鋭意研究を重ねた結果、発光装置の発光スペクトル形状、特に610nm以上の長波長領域の発光成分の強度と、520〜580nmの発光成分の強度を最適化し、またこの発光装置に用いる赤色蛍光体であるSCASN蛍光体の発光スペクトル形状、特に発光ピーク波長、半値幅又は反射率を制御することで、本発明を完成させたものである。
【0021】
すなわち、本発明は、発光素子と、その発光素子からの光により励起されて610nm〜650nmの波長領域に発光ピークを有する第一発光スペクトルの蛍光を発する第一蛍光体と、発光素子からの光により励起されて500nm〜540nmの波長領域に発光ピークを有する第二発光スペクトルの蛍光を発する第二蛍光体とを備えており、発光素子からの光と第一蛍光体及び第二蛍光体からの蛍光との混色光を発光可能な半導体発光装置である。混色光の発光スペクトルは、600nm〜640nmの波長領域に第一発光ピークを有している。また640nmよりも大きく発光強度が第一発光ピークの30%となる波長と、第一発光ピークの波長との差が76nmよりも小さく、平均演色性評価数Raが90以上、特殊演色性評価数R9が50以上である。
【0022】
なお、本明細書における近紫外線から可視光の短波長領域は、240nm〜500nm付近の領域をいう。励起光源は、240nm〜480nmに発光ピーク波長を有するものを用いることができる。そのうち、360nm〜470nmに発光ピーク波長を有する励起光源を用いることが好ましい。特に、半導体発光素子で使用されている380nm〜420nm若しくは450nm〜470nmの励起光源を用いることが好ましい。励起光源に半導体発光素子を利用することによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
【0023】
また本明細書において色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。具体的には、380nm〜455nmが青紫色、455nm〜485nmが青色、485nm〜495nmが青緑色、495nm〜548nmが緑色、548nm〜573nmが黄緑色、573nm〜584nmが黄色、584nm〜610nmが黄赤色、610nm〜780nmが赤色である。
(蛍光体)
【0024】
本発明の実施の形態に係る窒化物蛍光体は、ユーロピウムで付活され、近紫外線ないし青色光を吸収して赤色に発光する。この蛍光体は、一般式が(Sr,Ca)AlSiN
3:Euで示さる。また、この蛍光体には、フラックスとして種々の添加元素や、必要に応じてホウ素が含有されることもある。これにより、固相反応を促進させて均一な大きさの粒子を形成することが可能となる。
【0025】
また、本発明の実施の形態に係る窒化物蛍光体は、紫外線から可視光の短波長側領域の光を吸収して、励起光の発光ピーク波長よりも長波長側に蛍光体の発光ピーク波長を有する。可視光の短波長側領域の光は、主に青色光領域となる。具体的には250nm〜500nmに発光ピーク波長を有する励起光源からの光により励起され、600〜650nmの波長の範囲にピーク波長のもつ蛍光を発光する。このような範囲の励起光源を用いることにより、発光効率の高い蛍光体を提供することができるからである。特に、250nm〜420nm或いは420nm〜500nmに主発光ピーク波長を有する励起光源を用いることが好ましく、更に420〜480nmに発光ピーク波長を有する励起光源を用いることが好ましい。
【0026】
また、窒化物蛍光体は、少なくとも一部が結晶を有することが好ましい。例えばガラス体(非晶質)は構造がルーズであるため、その生産工程における反応条件が厳密に一様になるよう管理できなければ、蛍光体中の成分比率が一定せず、色度ムラを生じる。これに対し、本実施の形態に係る窒化物蛍光体は、ガラス体でなく結晶性を有するため製造及び加工し易い。また、この蛍光体は有機媒体に均一に溶解できるため、発光性プラスチックやポリマー薄膜材料の調整が容易である。具体的に、本実施の形態に係る窒化物蛍光体は、少なくとも50重量%以上、より好ましくは80重量%以上が結晶を有している。これは、発光性を有する結晶相の割合を示し、50重量%以上、結晶相を有しておれば、実用に耐え得る発光が得られるため好ましい。ゆえに結晶相が多いほど良い。これにより、発光輝度を高くすることができ、かつ加工し易くできる。
【0027】
本発明の実施の形態に係る窒化物蛍光体は、希土類であるユーロピウムEuが発光中心となる。ただ、ユーロピウムのみに限定されず、その一部を他の希土類金属やアルカリ土類金属に置き換えて、Euと共賦活させたものも使用できる。2価希土類イオンであるEu
2+は適当な母体を選べば安定に存在し、発光する効果を奏する。
(蛍光体原料)
【0028】
次に、窒化物蛍光体の製造方法について説明する。本発明の実施の形態に係る窒化物蛍光体は、湿式、乾式で、各種蛍光体原料を混合して製造される。蛍光体原料として、Sr、Ca、Si、Al、Eu、必要に応じて添加元素が単独で、あるいは各々の化合物が使用される。以下に個々の原料について説明する。
【0029】
蛍光体組成のSrは、単独、あるいはSrの一部を、Ca、Mg、Ba等で置換することもできる。蛍光体組成のCaもSrと同じく、単独あるいはCaの一部を、Sr、Mg、Ba等で置換することもできる。これにより、窒化物蛍光体の発光波長のピークを調整することができる。
【0030】
蛍光体組成のCaは、単体を使用することが好ましいが、イミド化合物、アミド化合物等の化合物を使用することもできる。また原料Caは、Li、Na、K、B、Al等を含有するものでもよい。原料は、精製したものが好ましい。これにより、精製工程を必要としないため、蛍光体の製造工程を簡略化でき、安価な窒化物蛍光体を提供することができるからである。原料のCaは、アルゴン雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。Caの粉砕の目安としては、平均粒径が約0.1μm〜15μmの範囲であることが、他の原料との反応性、焼成時及び焼成後の粒径制御等の観点から好ましいが、この範囲に限定されない。Caの純度は、2N以上であることが好ましいが、これに限定されない。
【0031】
蛍光体組成のSiも好ましくは単独で使用されるが、その一部を第IV族元素のGe、Sn、Ti、Zr、Hfで置換することもできる。ただ、Siのみを使用して、安価で結晶性の良好な窒化物蛍光体となる。
【0032】
蛍光体組成のAlも好ましくは単独で使用されるが、その一部を第III族元素のGaやIn、V、Cr、Coで置換することもできる。ただ、Alのみを使用して、安価で結晶性の良好な窒化物蛍光体となる。ただ、Alの窒化物、Alの酸化物を利用しても良い。これらの原料は精製したものを用いる方が良いが、市販の物を用いても良い。具体的にはAlの窒化物として窒化アルミニウムAlN、Alの酸化物として酸化アルミニウムAl
2O
3を使用できる。
【0033】
賦活剤のEuは、好ましくは単独で使用されるが、Euの一部を、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luで置換してもよい。Euの一部を他の元素で置換することにより、他の元素は、共賦活として作用する。共賦活とすることにより色調を変化することができ、発光特性の調整を行うことができる。Euを必須とする混合物を使用する場合、所望により配合比を変えることができる。ユーロピウムは、主に2価と3価のエネルギー準位を持つが、窒化物蛍光体は、母体の例えばCaに対して、Eu
2+を賦活剤として用いる。
【0034】
また、原料としてEuの化合物を使用しても良い。この場合、原料は精製したものを用いる方が良いが、市販の物を用いても良い。具体的にはEuの化合物として酸化ユーロピウムEu
2O
3、金属ユーロピウム、窒化ユーロピウム等も使用可能である。また、原料のEuは、イミド化合物、アミド化合物を用いることもできる。酸化ユーロピウムは、高純度のものが好ましく、また市販のものも使用することができる。本発明の実施の形態に係る蛍光体は発光の中心として2価のEuを用いるが、2価のEuは酸化され易く、一般に3価のEu
2O
3の組成で市販されている。
【0035】
さらに必要に応じて加える元素は、通常、酸化物、若しくは酸化水酸化物で加えられるが、これに限定されるものではなく、メタル、窒化物、イミド、アミド、若しくはその他の無機塩類でも良く、また、予め他の原料に含まれている状態でも良い。
【0036】
また、本発明の実施の形態に係る窒化物系蛍光体の組成中に酸素が含有されることがある。酸素は、原料となる各種酸化物から導入されるか、焼成中に原料が酸化されるか、或いは生成後の蛍光体に付着して混入すると考えられる。一般に組成中の酸素のモル比を制御することで、蛍光体の結晶構造を変化させ、蛍光体の発光ピーク波長をシフトさせることが可能である。しかし一方で、発光効率の観点からは、蛍光体に含まれる酸素濃度は少ない方が好ましく、生成相の質量に対して5w%以下の酸素濃度であることが好ましい。
(フラックス)
【0037】
本発明の実施の形態に係る窒化物蛍光体に、例えば、ホウ素のようなフラックスを添加させることができる。一般的に窒化物蛍光体は融点の高い物が多く、固相反応させた際に液相が生じ難く、反応がスムーズに進行しない場合が多い。しかし、ホウ素を含有したものでは、液相の生成温度が低下し、液相が生じ易くなるために、反応が促進され、さらには個相反応がより均一に進行するために発光特性に優れた蛍光体を得ることができると考えられる。窒化物蛍光体に添加するホウ素のモル濃度を0.5モル以下とし、好ましくは、0.3モル以下としてもよい。さらに、0.001モル以上とする。さらに好ましくは、ホウ素のモル濃度は、0.001以上であって、0.2以下の範囲とする。この範囲の濃度であれば、上記の効果が得られ、また、焼結が激しくならず、解砕工程で発光特性が低下しない効果が得られるからである。ホウ素化合物は熱伝導率が高い物質であるため、原料に添加することにより、焼成中における原料の温度分布が均一となり、個相反応を促進させ、発光特性が向上するものと推定される。添加の方法としては、原料混合の際に一緒に添加し、混合する方法が採用できる。
【0038】
蛍光体のホウ素原料として、ボロン、ホウ化物、窒化ホウ素、酸化ホウ素、ホウ酸塩等が使用できる。具体的には、蛍光体原料に添加するホウ素として、B、BN、H
3BO
3、B
2O
3、BCl
3、SiB
6、CaB
6等が挙げられる。これらのホウ素化合物は、原料に所定量を秤量して、添加する。
(蛍光体の製造方法)
【0039】
次に、本発明の実施の形態に係る窒化物蛍光体の一例として一般式Sr
tCa
vEu
wAl
xSi
yN
z(0.5≦t<1、0<v≦0.5、0.005<w≦0.03、t+v+w<1、0.90≦x≦1.1、0.90≦y≦1.1、2.5≦z≦3.5)の内、Sr
0.85Ca
0.135Eu
0.015AlSiN
3の製造方法を用いて説明するが、蛍光体の製造方法は、本製造方法に限定されない。
【0040】
まず原料のCaを粉砕する。次に原料のCaを、窒素雰囲気中で窒化する。即ち、窒素雰囲気中、原料のCaを600℃〜900℃で約5時間窒化することにより、Caの窒化物を得ることができる。Caの窒化物は、高純度のものが好ましい。この反応式を、化1に示す。
【0042】
さらにCaの窒化物を、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。
【0043】
また原料のSrもCaと同じように窒素雰囲気で窒化を行う。窒化は600℃〜900℃で行い、この反応式を化2に示す。
【0045】
一方、原料のSiを粉砕する。原料のSiは、単体を使用することが好ましいが、窒化物化合物、イミド化合物、アミド化合物等を使用することもできる。例えば、Si
3N
4、Si(NH
2)
2、Mg
2Si等である。原料のSiの純度は、3N以上のものが好ましいが、Li、Na、K、B、Al、Cu等の異なる元素が含有されていてもよい。Siも、原料のCaと同様に、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。Si化合物の平均粒径は、約0.1μm〜15μmの範囲であることが他の原料との反応性、焼成時及び焼成後の粒径制御等の観点から好ましいが、これに限定されない。
【0046】
次に原料のSiを、窒素雰囲気中で窒化する。具体的には、窒素雰囲気中、ケイ素Siを800℃〜2000℃で約5時間窒化することにより窒化ケイ素を得る。本発明の実施の形態で使用する窒化ケイ素は、高純度のものが好ましい。この反応式を、以下の化3に示す。
【0048】
さらに同様に、Siの窒化物を窒素雰囲気中、グローブボックス内で0.1μm〜10μmに粉砕を行う。
【0049】
また一方で、Alの直接窒化法等によりAlNを合成する。このAlの窒化物であるAlN、及びEuの化合物Eu
2O
3を粉砕する。粉砕後の平均粒径は、好ましくは約0.1μmから15μm、また、より好ましくは約0.1μmから10μmの範囲であれば、他の原料との反応性、焼成時及び焼成後の粒径制御等の観点から好適であるが、これに限定されない。ただし、すでに市販されているAlN粉を使用することもできる。これにより工程を簡易化できる。
【0050】
上記粉砕を行った後、例えばSr:Ca:Eu:Al:Si=0.85:0.135:0.015:1.0:1.0の組成比となるように、Srの窒化物、Caの窒化物、Siの窒化物、Alの窒化物、Euの酸化物と、必要に応じて添加元素の化合物を計量して混合する。なお、目的の蛍光体の組成比は、上記組成比に限定されることはない。また、この混合は乾式でも行うことができる。
【0051】
上記の混合物を窒素雰囲気中で焼成する。焼成は、ガス加圧電気炉を使用することができる。焼成温度は、1200℃から2200℃の範囲で焼成を行うことができるが、1500℃から2100℃の焼成温度が好ましい。焼成は、800℃から1400℃で一段階目の焼成を行い、徐々に加熱して1500℃から2100℃で二段階目の焼成を行う二段階焼成(多段階焼成)を使用することもできる。蛍光体の原料は、黒鉛等の炭素材質、窒化ホウ素(BN)材質のルツボ、ボートを用いて焼成を行うことが好ましい。上記以外に、アルミナ(Al
2O
3)やMo材質等のルツボを使用することもできるが、BNが好ましい。
【0052】
また、還元雰囲気は、窒素、水素、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニアの少なくとも1種以上を含む雰囲気とできる。ただ、これら以外の還元雰囲気下でも焼成を行うことができる。
【0053】
焼成により、Sr
0.85Ca
0.135Eu
0.015AlSiN
3で表される蛍光体を得ることができる。この焼成による窒化物蛍光体の反応式の例を、化4に示す。
【0055】
ただし、この組成は、配合比率より推定される代表組成である。また、各原料の配合比率を変更することにより、目的とする蛍光体の組成を変更することができる。
【0056】
また別の合成法も可能である。具体的には各元素の金属を所定の組成比になるように計量した後に溶融させ、合金を合成する。その合金の粉砕を行った後、N2ガス雰囲気中でガス加圧焼結炉やHIP炉により合金を窒化させて、目的組成となる窒化物を合成することもできる。
【0057】
以上の製造方法によって、目的とする窒化物蛍光体を得ることが可能である。また、Euは希土類元素であり、Euの一部を各種の希土類に置き換えて、又はEuに加えて、La、Ce、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Lu等の希土類元素を含んでいる窒化物蛍光体とすることも可能である。以上のようにして、良好な窒化物蛍光体を得ることができる。
【0058】
上記の窒化物蛍光体に係る発光特性のデータは後述するが、本発明の実施の形態に係る窒化物蛍光体は、発光ピーク波長と半値幅を制御でき、特に長波長成分を少なくし、半値幅を狭くできることが確認された。したがって、窒化物蛍光体を用いた発光装置において、窒化物蛍光体を用いることで演色性を損なうことなく、光束を高くできる特長を有する。
(粒径)
【0059】
窒化物蛍光体の粒径は5μm〜20μmの範囲が好ましい。5μm〜20μmの粒径範囲の蛍光体は、光の吸収率及び変換効率が高い。このように、光学的に優れた特徴を有する粒径の大きな蛍光体を後述する発光装置に含有させることにより、発光装置の発行効率が向上する。
【0060】
ここで粒径は、F.S.S.S.No.(Fisher Sub Sieve Sizer's No.)における空気透過法で得られる平均粒径を指す。具体的には、気温25℃、湿度70%の環境下において、1cm
3分の試料を計り取り、専用の管状容器にパッキングした後、一定圧力の乾燥空気を流し、差圧から比表面積を読み取り、平均粒径に換算した値である。本実施の形態で用いられる蛍光体の平均粒径は2μm〜15μmの範囲であることが好ましい。また、この平均粒径値を有する蛍光体が、頻度高く含有されていることが好ましい。また、粒度分布も狭い範囲に分布しているものが好ましい。このように粒径、及び粒度分布のバラツキが小さい蛍光体を用いることにより、より色ムラが抑制され、良好な色調を有する発光装置が得られる。
(発光装置)
【0061】
次に、上記の窒化物蛍光体を波長変換部材として利用した発光装置について説明する。発光装置には、例えば蛍光ランプ等の照明器具、ディスプレイやレーダー等の表示装置等が挙げられる。波長変換部材の励起光源には、半導体発光素子を使用する。ここで発光素子には、可視光を発する素子のみならず、近紫外光や遠紫外光等を発する素子も含める意味で使用する。また励起光源として、半導体発光素子以外に、既存の蛍光灯に使用される水銀灯等、紫外から可視光の短波長領域に発光ピーク波長を有する励起光源を適宜利用できる。
【0062】
ここでは発光装置の実施の形態として、励起光源に近紫外から可視光の短波長領域の光を放つ発光素子を備えた表面実装型の半導体発光装置を使用する。発光素子は、小型で電力効率が良く鮮やかな色の発光をする。また、発光素子は半導体素子であるため球切れ等の心配がない。さらに初期駆動性が優れ、振動やオン・オフ点灯の繰り返しに強いという特長を有する。そのため、発光素子と、窒化物蛍光体とを組み合わせる発光装置であることが好ましい。
(発光素子)
【0063】
発光素子は、サファイア基板上にそれぞれ窒化物半導体からなるn型層、活性層及びp型層の順に積層されてなる半導体層を有している。互いに分離されて露出されたn型半導体にはn電極が形成され、一方、p型半導体にはp電極が形成されている。
【0064】
具体的に、発光素子は、成長基板上に半導体層をエピタキシャル成長させた半導体発光素子が好適に利用できる。成長基板としてはサファイア基板が好適に挙げられるが、これに限定されず例えばスピネル、SiC、GaN、GaAs等、公知の部材を用いることができる。また、サファイア基板のような絶縁性基板でなく、SiC、GaN、GaAs等の導電性基板を用いることにより、p電極及びn電極を発光素子の上面と下面にそれぞれ対向して配置させることもできる。
【0065】
発光素子は、紫外線領域から可視光領域までの光を発することができる。特に350nm〜550nm近傍に発光ピーク波長を有する発光素子を使用し、蛍光物質を効率よく励起可能な発光波長を有する光を発光できる発光層を有することが好ましい。ここでは発光素子として窒化物半導体発光素子を例にとって説明するが、これに限定されるものではない。
【0066】
このように発光素子から放出される光を励起光源とすることで、従来の水銀ランプに比して消費電力の低い、効率の良い発光装置を実現できる。
【0067】
このような発光素子を搭載した発光装置として、いわゆる砲弾型や表面実装型等種々のタイプがある。本実施の形態では、
図1を参照しながら、表面実装型の発光装置について説明する。この図は、本実施の形態に係る発光装置100の模式図である。本実施の形態に係る発光装置100は、凹部を有するパッケージ40と、発光素子10と、発光素子10を被覆する封止部材50とを備える。発光素子10は、パッケージ40に形成された凹部の底面に配置されており、パッケージ40に配置された正負一対のリード電極20、30に導電性ワイヤ60によって電気的に接続されている。封止部材50は、凹部内に充填されており、蛍光体70を含有する樹脂によって形成されている。さらに正負一対のリード電極20、30は、その一端がパッケージ40の外側面に突出されて、パッケージ40の外形に沿うように屈曲されている。これらのリード電極20、30を介して、外部から電力の供給を受けて発光装置100が発光する。以下に、本実施の形態に係る発光装置を構成する部材について説明する。
(蛍光体)
【0068】
本実施の形態に係る蛍光体70は、封止部材50中で部分的に偏在するよう配合されている。このとき封止部材は、発光素子や蛍光体を外部環境から保護するための部材としてではなく、波長変換部材としても機能する。このように発光素子10に接近して載置することにより、発光素子10からの光を効率よく波長変換することができ、発光効率の優れた発光装置とできる。なお、蛍光体を含む部材と、発光素子との配置は、それらを接近して配置させる形態に限定されることなく、蛍光体への熱の影響を考慮して、発光素子と蛍光体を含む波長変換部材との間隔を空けて配置することもできる。また、蛍光体70を封止部材50中にほぼ均一の割合で混合することによって、色ムラのない光を得るようにすることもできる。
【0069】
また、蛍光体70は2種以上の蛍光体を用いてもよい。例えば、本実施の形態に係る発光装置100において、青色光を放出する発光素子10と、これに励起される実施の形態に係る蛍光体と、緑色光を発する蛍光体を併用することで、演色性に優れた白色系の混色光を得ることができる。
【0070】
また、発光ピーク波長が微妙に異なる緑色に発光する蛍光体をさらに追加することで、色再現性や演色性を更に向上させることができる。また、紫外線を吸収して青色に発光する蛍光体により、青色に発光する発光素子に代わりに紫外線を発光する発光素子を組み合わせることで、色再現性や演色性を向上させることもできる。
【0071】
緑色光を発する蛍光体としては、例えば、組成の一般式が、(Y,Gd,Tb,Lu)
3(Al,Ga)
5O
12:Ceで表されるCe付活アルミン酸塩蛍光体、Si
6-zAl
zO
zN
8-z:Euで表されるβ型サイアロン蛍光体、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce、あるいは(Ca,Sr,Ba)
2SiO
4:Eu、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce等のケイ酸塩蛍光体、(Ca,Sr)
8MgSi
4O
16Cl
2:Eu、Ca
8MgSi
4O
16Cl
2-δ:Eu,Mn等のクロロシリケート蛍光体、SrGaS
4:Eu、SrGa
2S
4:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、その他、(Ca,Sr,Ba)
3Si
6O
9N
4:Eu、(Ca,Sr,Ba)
3Si
6O
12N
2:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si
2O
2N
2:Eu、CaSc
2O
4:Ce、を用いることができる。
(封止部材)
【0072】
封止部材50は、発光装置100の凹部内に載置された発光素子10を覆うように透光性の樹脂やガラスで充填されて形成される。製造のし易さを考慮すると、封止部材の材料は、透光性樹脂が好ましい。透光性樹脂は、シリコーン樹脂組成物を使用することが好ましいが、エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等の絶縁樹脂組成物を用いることもできる。また、封止部材50には蛍光体70が含有されているが、さらに適宜、その他の材料を添加することもできる。例えば、光拡散材を含むことで、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。
[実施例]
【0073】
以下、本発明の実施例として、窒化物蛍光体及びそれを用いた発光装置を製造し、その発光特性を測定した結果について説明する。
(蛍光体の実施例および比較例)
【0074】
まず、第一蛍光体である一般式(Sr,Ca)AlSiN
3:Euで表される実施例1、2、比較例1の蛍光体は、その構成元素が下記の表2に各々示される仕込み組成比になるよう秤量された各材料から、上述したような蛍光体の製造方法によって製造した。
【0075】
得られた比較例1及び実施例1、2の蛍光体の発光特性を表1に示す。なお、表1において、Dは蛍光体の粒径(平均粒径)、x、yは蛍光体の色度、ENGはエネルギー、λpは発光ピーク波長を表す。また蛍光体の各元素の設計組成比を表2に示す。さらに
図2は、実施例1、2、比較例1の蛍光体について、規格化された発光スペクトルを示す。表1、
図2に示すようにこれら実施例1、2の蛍光体の発光波長は620〜635nmであり、半値幅が92nm(85nm以上)である比較例1の蛍光体と比較して、実施例1、2の蛍光体は、その半値幅が80nm,81nmと小さく、輝度は比較例1よりも高い。
【0078】
また、第二蛍光体として、一般式がCa
8MgSi
4O
16Cl
2:Eu(実施例3、5)、あるいは(Ba,Sr,Ca,Mg)
2SiO
4:Eu(実施例4)で表される実施例3,4,5の蛍光体と、一般式がLu
3Al
5O
12:Ceで示される比較例2の蛍光体、更に第三蛍光体として、一般式がY
3(Al,Ga)
5O
12:Ceで示される実施例6の蛍光体の発光特性を表3に、発光スペクトルを
図3に示す。
【0079】
表3、
図3に示されるように実施例3,4,5、比較例2の蛍光体は510〜530nmに発光ピークを有しているが、比較例2の蛍光体は半値幅が80nm以上であり、それに対して実施例3,4,5の蛍光体は半値幅が55〜70nmと狭い。
【0080】
【表3】
(発光装置の実施例および比較例)
【0081】
以上の実施例1〜6は、本発明に係る発光装置に使用可能な蛍光体例を説明した。次に実施例11以降では、上述した蛍光体にLEDを組み合わせた例について説明する。表4、5は、実施例1、比較例1の第一蛍光体と実施例3の第二蛍光体とを組み合わせて発光装置を構成した実施例11、比較例11の特性を評価した結果を示す。また、
図4に実施例11及び比較例11の発光装置の規格化された発光スペクトルを示す。本実施例および比較例の発光装置におけるLEDとして、大きさが500μm×290μmであり、発光ピーク波長が455nmであるLEDチップを用い、蛍光体と組み合わせて表面実装型の発光装置を試作した。
【0082】
なお、以下の説明における、x、yは発光装置の色度、Raは赤味を表す平均演色性評価数、R9は特殊演色性評価数、λ
p30%は640nm以上の波長領域で最高ピーク強度の30%となる波長、λ
p30%−λ
p100%は、640nmよりも大きい波長において発光強度が第一発光ピークの30%となる波長(λ
p30%)から第一の発光ピークの波長を引いた波長を示す。また、「第一発光ピークの強度と波長」は波長が600〜640nmの範囲の極大となる最大発光強度とその発光ピーク波長であり、「第二発光ピークの強度と波長」は波長が510〜545nmの範囲の極大となる最大発光強度とその発光ピーク波長であり、「極小の強度と波長」は545〜580nmの範囲で極小となる最小発光強度とその極小となる波長である。
【0083】
表4に示すように、この実施例11及び比較例11の発光装置の一般演色性Ra、R9は、ともに90よりも大きい値を示している。比較例11と実施例11のRa、R9はほぼ同じであるが、比較例11の光束を100%とした場合の実施例11の光束は、106.1%であり、比較例11よりも約6%高くなっている。
【0084】
また表5に示すように、実施例11の第一発光ピークの波長は623.1nm、第二発光ピークの波長は526.7nmであり、640nmよりも大きい波長において発光強度が第一発光ピークの30%となる波長688.4nm(λ
p30%)と、第一発光ピークの波長(λ
p100%)との差(λ
p30%−λ
p100%)は65.4nmであり、76nmより小さくなっている。つまり、これは発光強度が第一発光ピークの30%の強度となる波長が第一発光ピークの波長に近いことを示している。これにより、視感度の低い長波長成分が減少することで、実施例の光束が高くなっていると考えられる。
【0085】
また第二のピークの波長が526.7nm、黄色領域での極小が563.4nmにあり、凹凸を有する特殊な発光スペクトル形状にすることでRa、R9を高くすることができている。このように特定の蛍光体を用い、発光装置の発光スペクトルを調整することで、演色性Ra、R9を高くしながら、光束も高くすることができる。
【0088】
比較例12、13、実施例12における発光装置の発光特性を表6、7に示す。これらの発光装置の構成は、第二蛍光体について、実施例3の蛍光体から実施例4および比較例2の蛍光体へ、それぞれ変更した以外は比較例11、実施例11と同じである。表6、表7は、実施例12及び比較例12、13の発光装置の特性を示す。また、
図5は、実施例12、13及び比較例12の発光装置の規格化された発光スペクトルを、それぞれ示す。さらに、
図6は、規格化された発光スペクトルのうち波長を520〜580nmの範囲に限定し、第二発光ピークと極小を分かり易くするために示した発光スペクトルである。
【0089】
表6に示すとおり、実施例12は比較例12より光束が約7%高くなっている。このとき、実施例12の第一発光ピークの波長(λ
p100%)は618.6nm、λ
p30%−λ
p100%は69.1であり、76nmより小さく、これは長波成分が少ないことを示している。また第二発光ピークの波長は531.2nm、黄色領域での極小が560.4nmにある。また比較例13は第二発光ピークや極小がなく、光束は高いがRaが90より小さく、R9が50より小さくなっており、実施例12よりも演色性が劣る。それに対して、実施例12は演色性Ra、R9を高くしながら高い光束が得られた。
【0092】
比較例14、実施例13、14、15は第三蛍光体として実施例6の蛍光体を用い、第一蛍光体と第二蛍光体を表8に示す組み合わせとした以外は同様に発光装置を作成した。
表8、表9は、実施例13、14、15、16及び比較例14の発光装置の特性を示す。また、
図7A〜
図7Dは、実施例13、14、15、16及び比較例14における発光装置の規格化された発光スペクトルを示す。さらに、
図8A〜
図8Dは、その規格化された発光スペクトルのうち波長が520〜580nmの範囲を拡大して、第二発光ピーク、極小が分かり易く拡大した発光スペクトルを示す。
【0093】
これらに示すとおり、実施例13、14、15、16は比較例14よりそれぞれ0.4〜2.4%光束が高くなっている。このとき、実施例13、14、15、16の第一発光ピークの波長は、それぞれ620.1nm、619.3nm、614.9nm、615.6nmであり、λ
p30%−λ
p100%は、それぞれ63.1nm、69.1nm、73.5nm、72.1nmであり、76nmより小さく、長波成分が少ないことを示している。また第二発光ピークの波長は、それぞれ532.7nm、529.7nm、526.7nm、542.5nmであり、黄色領域での極小が551.4nm、551.4nm、550.0nm、551.4nmにある。その一方、比較例13は第二発光ピークや極小が観測されない。実施例13、14、15、16のようにスペクトルを調整することでRa、R9を高くしながら光束を高くすることができる。
【0096】
比較例15、実施例17は実施例15の組合せで、蛍光体配合比を変更し、色温度を約3000Kとした以外は同様の方法で発光装置を作成した。
表10、表11は、実施例17及び比較例15の発光装置の特性を示す。また、
図9は、実施例17及び比較例15の発光装置の規格化された発光スペクトルを示す。
【0097】
表10に示すとおり、実施例17は比較例15より1.6%光束が高くなっている。このとき、表11に示すとおり、実施例17の第一発光ピークの波長は、620.8nm、λ
p30%−λ
p100%は66.8nmであり、76nmより小さく、これは長波成分が少ないことを示す。また実施例17の第二発光ピークの波長は、531.2nmであり、黄色領域での極小が560.4nmにある。実施例17のようにスペクトルを調整することでRa、R9を高くしながら光束を高くすることができる。
【0100】
比較例16、実施例18は実施例15の組合せで、蛍光体配合比を変更し、色温度を約4000Kとした以外は同様の方法で発光装置を作成した。表12、表13は、実施例18及び比較例16の発光装置の特性を示す。また、
図10は、実施例18及び比較例16における発光装置の規格化された発光スペクトルを示す。
【0101】
表12に示すとおり、実施例18は比較例16より1.5%光束が高くなっている。このとき、表13に示すとおり、実施例18の第一発光ピークの波長は、616.4nm、λ
p30%−λ
p100%は72.1nmであり、76nmより小さく、長波成分が少ないことを示している。また第二発光ピークの波長は、529.7nm、黄色領域での極小が567.9nmにある。実施例18のようにスペクトルを調整することでRa、R9を高くしながら光束を高くすることができる。
【0104】
比較例17、実施例19は実施例15の組合せで、蛍光体配合比を変更し、色温度を約5000Kとした以外は同様の方法で発光装置を作成した。表14、表15は、実施例19及び比較例17の発光装置の特性を示す。また、
図11は、実施例19及び比較例17の発光装置の規格化された発光スペクトルを示す。
【0105】
表14に示すとおり、実施例19は比較例17より2.0%光束が高くなっている。このとき、表15に示すとおり、実施例19の第一発光ピークの波長は、617.9nm、λ
p30%−λ
p100%は69.8nmであり、76nmより小さく、長波成分が少ないことを示している。また第二発光ピークの波長は、524.5nm、黄色領域での極小が572.4nmにある。実施例19のようにスペクトルを調整することでRa、R9を高くしながら光束を高くすることができる。
【0108】
比較例18、実施例20は実施例15の組合せで、蛍光体配合比を変更し、色温度を約6300Kとした以外は同様の方法で発光装置を作成した。表16、表17は、実施例20及び比較例18の発光装置の特性を示す。また、
図12は、実施例20及び比較例18の発光装置の規格化された発光スペクトルを示す。
【0109】
表16に示すとおり、実施例20は比較例18より1.8%光束が高くなっている。このとき、表17に示すとおり、実施例19の第一発光ピークの波長は、611.9nm、λ
p30%−λ
p100%は75nmであり、76nmより小さく、長波成分が少ないことを示している。また第二発光ピークの波長は、524.5nm、黄色領域での極小が577.6nmにある。スペクトルを調整することでRa、R9を高くしながら光束を高くすることができる。
【0112】
以上のように実施例に係る発光装置によれば、混色光のスペクトル形状を最適化することで、演色性と発光効率を両立することが可能となる。また発光装置は、青色発光するLEDと緑色蛍光体と赤色蛍光体、あるいは第三蛍光体を組み合わせとして、赤色蛍光体にSCASN蛍光体を用いることが好適である。さらにSCASN蛍光体の発光スペクトルを制御することで、演色性と効率との両立が実現される。