(54)【発明の名称】ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器、1次元ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器及び2次元ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器
【課題】十分なパワーの局部発振波を供給することができ、かつビームスプリッタなどの大きな部品が不要となるホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器を提供する。
【解決手段】一対のフレームを組み合わせて、両者の間にホーンアンテナ45及び導波管43を形成する。両フレーム間には、マイクロストリップライン31とマイクロストリップライン31に電気的に接続された電子回路56を備える誘電体基板が挟み込みされている。誘電体基板は室温雰囲気で配置される。誘電体基板には、ホーンアンテナで受信して導波管に導かれた電磁波をマイクロストリップライン31へ変換するフィンライン変換器50を備える。電子回路56は局部発振波を局部発振波入力用マイクロストリップラインで入力するミキサ62を含む。ミキサ62は、局部発振波とマイクロストリップライン31に載せられた電磁波とを混合してヘテロダイン検波を行う中間周波数信号を生成する。
請求項1のホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器が複数個併設されて各ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器のホーンアンテナが直線状に並ぶように配置されてなる1次元ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器。
請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の1次元ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器を積み重ねた2次元ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態のホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器及び1次元ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器を
図1〜
図3を参照して説明する。説明の便宜上、ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器を、単に受信器といい、1次元ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器を、単に1次元アンテナアレイという。
【0021】
図1及び
図2に示すように、1次元アンテナアレイ10は、半割状の上部フレーム20A,半割状の下部フレーム20Bと、誘電体からなるプリント基板としての誘電体基板30を有する。なお、
図1、
図2に示すように、図面に示す左右方向をそれぞれ左右といい、図面に示す上下方向をそれぞれ上下といい、図面に示す前後方向を前後という。
【0022】
上部フレーム20A及び下部フレーム20Bは、表面が導電性を有するように金属フレームから構成されていてもよく、或いは、全体が合成樹脂などの絶縁材で形成されている場合であっても、後述する導波管となる溝42及びホーン形成凹部44の表面全体が金属層で覆われていればよい。前記金属層の形成は、例えば、メッキがあるが、メッキに限定されるものではなく、蒸着等の他の方法でもよい。さらに、金属層の表面はマイクロ波を透過する薄い絶縁膜で覆われていてもよい。
【0023】
なお、本明細書において、マイクロ波はミリ波を含む趣旨である。
上部フレーム20A及び下部フレーム20Bは、略平板状の板部40を有している。上部フレーム20A及び下部フレーム20Bは互いに重ね合わされて、上部フレーム20A、誘電体基板30及び下部フレーム20Bに設けられている図示しないネジ挿通孔に挿通されて、螺合により互いに締付けられている。そして、前記誘電体基板30は上部フレーム20Aと下部フレーム20B間に挟み込みされている。また、図示しないノックピンが、上部フレーム20A、下部フレーム20B及び誘電体基板30にそれぞれ設けられている図示しない貫通孔を貫通することにより、上部フレーム20A、誘電体基板30及び下部フレーム20Bの位置整合が図られている。
【0024】
図2に示すように上部フレーム20Aの板部40の下面側及び下部フレーム20Bの上面側には、複数の溝42が断面コ字状をなすように凹設されるとともに左右方向へ並ぶように配置されている。
【0025】
前記溝42の後端は閉塞端である。また、溝42において、閉塞端とは反対の前端は開口され、その開口端からは、前方へ行くほど上下長さが長く、かつ幅広(
図2において左右長さが長く)になるようにホーン形成凹部44が形成されている。なお、本実施形態では、先端へ行くほど上下長さが長くなるようにしたが、左右方向へ幅広にするだけでもよい。
【0026】
図1(b)に示すように上部フレーム20A及び下部フレーム20Bが重合状態では、互いに相対した一対の溝42により導波管43が形成されている。この結果、
図1(b)、
図2に示すように、高さa、幅b、奥行cの複数の方形の導波管43が形成されている。
【0027】
また、
図1(a)に示すように互いに相対したホーン形成凹部44同士により前記導波管43に連通するホーンアンテナ45が形成されている。このようにして、本実施形態の1次元アンテナアレイは、ホーンアンテナアレイとして構成されている。前記ホーンアンテナ45は、マイクロ波信号を集めて、導波管43に導く。
【0028】
誘電体基板30は、前記上部フレーム20Aの下面及び下部フレーム20Bの上面により挟着されている。
誘電体基板30において、各導波管43内に位置する部分には、フィンライン変換器50が設けられている。フィンライン変換器50は、
図1(b)に示すように誘電体基板30の上面においてメタライズされたパターン52と、誘電体基板30の下面においてメタライズされたパターン54を有する。誘電体基板30の下面においてメタライズされたパターン54は、該下面にメタライズされた図示しないグランドパターンに接続されている。メタライズするための金属は、例えば金であるが、限定されるものではない。
【0029】
誘電体基板30は、冷却手段で冷却されるものではなく、1次元アンテナアレイ10が配置される室温と同じ温度に曝されるものである。
図1(b)に示すようにフィンライン変換器50は、導波管43内をTE
10モードで伝搬してくるマイクロ波信号(電磁波)に対して、その磁界Hとフィンライン変換器50の面が直交し、電界Eと平行に配置されている。また、フィンライン変換器50は、ポインテイングベクトルから計算して電力密度が最大になる導波管43の横断面長辺の中央に位置するように配置されている。前記フィンライン変換器50により、導波管43の前記マイクロ波信号は後述する誘電体基板30のマイクロストリップライン31に導かれる。
【0030】
誘電体基板30の上面において、導波管43に相対する領域よりも後半部には、各導波管43毎に電子回路56が設けられている。電子回路56は、受信回路に相当する。
ホーンアンテナ45、導波管43、フィンライン変換器50、マイクロストリップライン31及び電子回路56で構成された1チャンネルの受信器は同一平面上において、複数並列に並べられて、複数チャンネルからなる1次元アンテナアレイ10とされている。
【0031】
図2に示すように誘電体基板30上面には、各チャンネルの電子回路56を囲むようにグランドパターン58が設けられている。
前記誘電体基板30の上面のグランドパターン58は、前記上部フレーム20Aと直接接触し、下面のグランドパターンは前記下部フレームと直接接触することにより、放熱が図られるとともに接地されている。
【0032】
また、前記上部フレーム20A及び下部フレーム20Bの各電子回路56に相対する領域は、回路室22、24がそれぞれに設けられている。上部フレーム20Aの回路室22間及び下部フレーム20Bの各回路室24間には、隔壁26、28がそれぞれ設けられている。前記隔壁26、28が誘電体基板30の上面のグランドパターン58及び誘電体基板30下面の図示しないグランドパターンに対してそれぞれ接触することにより、相互に隣接する各チャンネルの電子回路56同士は3次元的に分離されて電磁的にシールドされている。
【0033】
また、
図2に示すように上部フレーム20A、下部フレーム20Bの各隔壁26、28には、横断線用溝27、29が設けられている。前記横断線用溝27、29は、各チャンネルの電子回路56の渡り線が前記上部フレーム20A、下部フレーム20Bにそれぞれ接触しないように設けられている。前記渡り線としては、例えば、電源線、及びLo用マイクロストリップラインがある。前記電源線は、フレームの後端壁に設けられた電源端子を介して接続されている。また、前記Lo用マイクロストリップラインは、1つの回路室22内に配置された電子回路56に設けられた局部発振器70に対して接続される。
【0034】
図2に示すように、各回路室22を仕切る前記上部フレーム20Aの後端壁に溝25が貫通されている。前記溝25には、電子回路56にてヘテロダイン検波された信号を出力する出力端子66が装着されている。なお、前記溝25は上部フレーム20A及び下部フレーム20Bが重ね合わされた状態では、貫通孔となる。
【0035】
(電子回路56)
ここで、1チャンネルの電子回路56の概略を
図3を参照して説明する。
図3に示すように、電子回路56、前記電子回路56用のホーンアンテナ45、フィンライン変換器50、及びマイクロストリップライン31が、1チャンネル分の受信器となる。
【0036】
図3に示すように電子回路56を構成する各パーツは、誘電体基板30上に設けられたマイクロストリップライン31にて電気的に接続されている。具体的には、前記パーツとして、フィンライン変換器50に接続された高周波増幅器60と、ミキサ62と、中間周波数増幅器64がある。
【0037】
なお、誘電体基板30上に形成するマイクロストリップライン31、パターン52、54、グランドパターン58等のパターン形成は、金属薄膜を化学的に除去するエッチング、金属薄膜を機械的に除去するミーリング、絶縁基板上に導電性インクで印刷する方法、或いは絶縁基板上に金属薄膜を気相或いは液相で成長させるなどの方法で行ってもよい。
【0038】
前記マイクロストリップライン31の長さは制限する必要がなく、回路室22、24内に配置される誘電体基板30の部分において、各マイクロストリップライン31に、増幅器60、64、ミキサ62などの電子回路56に必要なパーツが接続される。これらのパーツはディスクリートのものでも、マイクロストリップラインだけで構成してもよい。又、必要に応じて半導体チップも使用することができる。
【0039】
高周波増幅器60は、フィンライン変換器50でマイクロストリップライン31に乗せたマイクロ波信号を増幅する。ミキサ62は、例えば、ダブルバランスドミキサを挙げることができる。
【0040】
なお、従来技術1では、導波管に入るように、ミキサとしては小さなダイオードミキサを用いている。本実施形態では、マイクロストリップライン31上に余裕があるため、ミキサ入力前段に前述の高周波増幅器60(マイクロ波増幅器)が導入できる。そして、本実施形態のミキサとして特性の良いダブルバランスドミキサなどを使用すると、前記高周波増幅器60によるマイクロ波の増幅においてミキサの変換損失を補うので信号雑音比(SN比)向上に大きく寄与する。
【0041】
ミキサ62は、局部発振器70から
図3に示すように局部発振波入力用マイクロストリップライン31aを通して入力される局部発振波と、前記増幅されたマイクロ波信号を混合して、ヘテロダイン検波して中間周波数信号を生成する。前記中間周波数信号は前記中間周波数増幅器64で増幅して、電子回路56の出力端子66に出力する。電子回路56は、前記高周波増幅器60は、なくても動作するが、あった方が、ミキサ62での変換損失を補うことで、より高感度化が可能となる。また、ミキサ62への局部発振波の入力パワーは、最適値に合わせることにより、より高感度化ができるものとなる。なお、感度に問題がない場合は、高周波増幅器60を省略してもよい。
【0042】
(複数チャンネルの電子回路56について)
複数チャンネルの電子回路56について、
図4を参照して説明する。なお、
図4では、2チャンネルの電子回路56が図示されているが、3チャンネル以上も同様に図示されているものと理解されたい。
【0043】
図4に示すように周波数ωxの局部発振波は、1つの電子回路56に併設されるようにして設けられた共通(単一)の局部発振器70から、分配器67、68…を介して各チャンネルの電子回路56に供与される。
図4に示す回路の場合、分配器67、68は局部発振器70が設けられた1つの電子回路56に、分配器67、68が設けられている。なお、分配器67、68は、最も適切な電子回路56に設けるようにすればよい。また、分配器67等を多段化することにより、多くのチャンネルに局部発振波を供給できることになる。
【0044】
各電子回路56に分配された周波数ωxの局部発振波は、ミキサ62に直接入力してもよいが、局部発振波の周波数が高い場合は、同軸ケーブルやマイクロストリップラインでの減衰が大きくなる。
【0045】
この障害を回避するため、
図4の実施形態では、局部発振器70により低周波の周波数ωxの局部発振波を生成するとともに局部発振波入力用マイクロストリップライン31a上に設けられた分配器67、68…で分配する。そして、分配された周波数ωxの局部発振波を、各電子回路56のミキサ62に入力する前に、逓倍器69で逓倍(例えば、n倍)するようにしている。また、逓倍されて周波数ω1(=nωx)となった局部発振波を局部発振波増幅器71で増幅した後、局部発振波入力用マイクロストリップライン31aを通してミキサ62に出力するようにしている。
【0046】
また、基本波である局部発振波の減衰が問題とならない場合は、前記逓倍器69を省略してもよい。一般にミキサ62への局部発振波の入力パワーには最適値があるため、局部発振波増幅器71で局部発振波のパワー調整を行った後、ミキサ62に前記局部発振波を入力することが好ましい。
【0047】
(複数チャンネルの電子回路56の他の変形態様について)
図4の実施形態は、共通(単一)の局部発振器70が生成した局部発振波を各チャンネルの電子回路56に分配するようにした。これに対して、
図5の変形態様における各チャンネルの電子回路56には、同期がとれて周波数を同一にすることが可能なシンセサイザ等よりなる局部発振器70aを備えているところが異なる。
【0048】
そして、低周波発振器72により低周波数の出力をマイクロストリップライン31上の分配器67、68…でチャンネル数に応じて分配して、分配した前記出力を同期信号として各チャンネルの電子回路56の局部発振器70aに供給する。低周波発振器72から出力される信号の周波数は、例えば、10MHzである。
【0049】
各局部発振器70aは、この同期信号に基づいて、局部発振波の周波数等を同一にするとともに位相を同期させる。そして、局部発振波増幅器71は、当該局部発振波を増幅した後、局部発振波入力用マイクロストリップライン31aを通して各ミキサ62に出力する。
【0050】
(実施形態及び変形態様の作用)
上記のように構成された1次元アンテナアレイ10の作用を説明する。
1次元アンテナアレイ10の各ホーンアンテナ45は、マイクロ波信号(電磁波)を導波管43に導く。導波管43内に配置されたフィンライン変換器50は、導波管43の前記マイクロ波信号を誘電体基板30のマイクロストリップライン31に導く。各電子回路56の高周波増幅器60は、フィンライン変換器50でマイクロストリップライン31に乗せたマイクロ波信号を増幅する。ミキサ62は、局部発振器70から来る局部発振波と、前記増幅されたマイクロ波信号を混合して、ヘテロダイン検波して中間周波数信号を生成する。中間周波数増幅器64は、前記中間周波数信号を増幅して、電子回路56の出力端子66に出力する。
【0051】
上記実施形態及び変形態様では、下記の特徴を有する。
(1)上記の受信器は、上部フレーム20A及び下部フレーム20Bを組み合わせて、両者の間にホーンアンテナ45及びホーンアンテナ45に連通する導波管43を形成している。また、上部フレーム20A及び下部フレーム20B間には、マイクロストリップライン31とマイクロストリップライン31に電気的に接続された電子回路56(受信回路)とを備える誘電体基板30を挟み込みする。また、誘電体基板30は室温雰囲気で配置されている。また、前記誘電体基板30には、ホーンアンテナ45で受信して導波管43に導かれた電磁波をマイクロストリップライン31へ変換するフィンライン変換器50を備えている。また、電子回路56(受信回路)は、局部発振波を局部発振波入力用マイクロストリップラインで入力するミキサ62を含んでいる。前記ミキサ62は、前記局部発振波とマイクロストリップライン31に載せられた電磁波とを混合してヘテロダイン検波を行う中間周波数信号を生成する。
【0052】
この結果、上記の受信器によれば、局部発振波を局部発振波入力用マイクロストリップラインを通してミキサに入力することから、十分なパワーの局部発振波を供給することができ、かつビームスプリッタなどの大きな部品が不要となる効果を奏する。
【0053】
従って、局部発振波をホーンアンテナ・ミキサ・アレイ前面から供給するビームスプリッタなどの光学系が不要となり、マイクロ波カメラの構造がより簡単に、より小さくできるだけでなく、ビームスプリッタによる局部発振波の損失をなくすることができる。また、局部発振波の信号レベルを最適値とすることもできる。
【0054】
また、上記の受信器によれば、フィンライン変換器を用いて導波管からマイクロストリップラインへ電磁波(マイクロ波信号)を乗せることから、モノポール変換器に比べ、周波数特性をフラットかつ広帯域にすることができる。また、ミキサ損失を補うように電磁波(マイクロ波信号)を増幅できるため、高感度化ができる。
【0055】
なお、従来技術1では、導波管端面から約1/4波長に設置するモノポールであり、この方式では周波数特性にピークやディップが現れやすいという欠点がある。
(2)上記の1次元アンテナアレイ10は、上記(1)の受信器が複数個併設されて各ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器のホーンアンテナが直線状に並ぶように配置されている。この結果、上記の1次元アンテナアレイ10によれば、導電性を有するフレームにより隣接する受信器同士が3次元的に分離されて電磁的にシールドされることになるため、クロストークが減少し、発振現象発生の予防を行うことができる。
【0056】
なお、1次元アンテナアレイのように複数チャンネルを有する場合、局部発振波Loの供給において、従来技術1では、ホーンアンテナ前面に入射する必要がある。そして、この方式では局部発振波Loの入射光学系が必要であるだけでなく、チャンネル数が増加すると単位チャンネルあたりの局部発振波Loのパワーが減少し、感度が悪くなる問題がある。
【0057】
これに対して、本実施形態の1次元アンテナアレイ10及び2次元アンテナアレイでは、マイクロストリップライン経由で局部発振波Loを入力し、増幅器を導入できるので最適値とすることができる。
【0058】
(3)上記の1次元アンテナアレイ10及び2次元アンテナアレイでは、各チャンネルの受信器のミキサに共通の局部発振器70からの局部発振波を分配する分配器67、68…が接続されている。この結果、分配器で多くのチャンネルの受信回路に局部発振波を供給することができる。
【0059】
(4)上記の1次元アンテナアレイ10では、局部発振波が共通の局部発振器70により低周波で発振されて分配器67、68…にて分配されるようにしている。また、分配器68とミキサ62との間には、前記低周波の局部発振波を逓倍して、ミキサ62に逓倍した局部発振波を出力する逓倍器69が設けられている。
【0060】
この結果、1次元アンテナアレイ10によれば、共通の局部発振器により高周波の局部発振波を発振した際、マイクロストリップラインによる減衰がなく、局部発振波入力用マイクロストリップライン31aを通してミキサ62に局部発振波を好適に供給ができる。すなわち、高周波数のマイクロ波は、マイクロストリップライン経由では減衰が大きいため、本実施形態では、低周波で分配し、ミキサ直前で逓倍することにより、十分なパワーの局部発振波Loを供給できる。
【0061】
(6)上記の1次元アンテナアレイ10では、各受信器のミキサに、共通の同期信号にて同期が可能な局部発振器70aを接続した構成にもできる。この場合は、前記同期信号により同期が可能な局部発振器をチャンネル毎に設けた場合においても、上記(5)と同様の効果を奏することができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、前記のように構成された1次元アンテナアレイ10を利用して、2次元ホーンアンテナ型ヘテロダイン・イメージング受信器(以下、単に2次元アンテナアレイという)に構成した実施形態を、
図6(b)を参照して説明する。本実施形態は、受動的マイクロ波カメラの構成に2次元アンテナアレイ80を使用する例である。
【0063】
前記2次元アンテナアレイ80は、1次元アンテナアレイ10を積み重ねて構成されたものであって、局部発振器70を外部に設けたものである。
局部発振器70と2次元アンテナアレイ80の接続端子81との間は同軸ケーブルを介して接続されている。そして、前記図示しない接続端子は、各チャンネルの電子回路のミキサに接続された分配器に接続されている。そして、前記局部発振器70からの局部発振波Loは、前記同軸ケーブルを介して外部から供給されて、2次元アンテナアレイ80内の各チャンネルの電子回路のミキサに対して前述した分配器を介して供給される。
【0064】
図6(b)に示すように、2次元アンテナアレイ80の前方には、マイクロ波を結像させる結像光学系100が設けられている。結像光学系100は物体110からのマイクロ波を2次元アンテナアレイ80の位置で結像させるレンズL1を備えている。
【0065】
このマイクロ波カメラでは、結像されたマイクロ波は、2次元アンテナアレイ80でヘテロダイン検波され、2次元アンテナアレイ80からの中間周波数信号IFはフィルタ82(例えばローパスフィルタ、或いはバンドパスフィルタ)により雑音が減らされる。そして、デジタイザ86は、前記フィルタ82を介して入力した信号を低周波数信号としてデータ収集を行う。フィルタ82とデジタイザ86間には、アナログスイッチ84が設けられており、アナログスイッチ84を切替えすることで、低周波増幅器、或いはデジタイザ86におけるチャンネル数を減らすことができる。デジタイザ86は図示しないコンピュータに接続されている。
【0066】
比較例として
図6(a)には、非特許文献1に記載の2次元アンテナアレイを備えた受動的マイクロ波カメラの概略が示されている。なお、
図6(b)と同一構成には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0067】
図6(a)に示すように従来の受動的マイクロ波カメラでは、前記結像光学系100に、さらに局部発振器70の局部発振波Loを2次元アンテナアレイ83の前面から入射する方式を採用している。具体的には、レンズL1と2次元アンテナアレイ83との間にビームスプリッタBSが配置されている。
【0068】
また、局部発振器70からの局部発振波Loを照射するマイクロ波照射器87と、照射された局部発振波Loを収束するレンズL2を備えている。レンズL2にて収束した局部発振波Loは、ビームスプリッタBSにて2次元アンテナアレイ83側の物体110の結像する位置に結像される。
【0069】
なお、非特許文献1の2次元アンテナアレイ83は、フィンライン変換器の代わりにモノポール変換器が使用されていること、内部の受信回路に含まれるミキサには局部発振波Loを直接入力する構成とはなっていないこと等が本実施形態とは大きく相違している。
【0070】
図6(a)の従来例と、
図6(b)の本実施形態とを比較すると分かるように受動的マイクロ波カメラでは、本実施形態の方が簡単かつコンパクトになることが理解できる。
なお、レンズL1による球面収差のなかでも、大きな像面湾曲収差がある場合は、2次元アンテナアレイ80のホーンアンテナ45側の端面を結像した像に合わせることにより、像湾曲収差を減らすことができる。
【0071】
このようなマイクロ波カメラは、濃霧、煙幕などの視界不良状態での透視、非破壊検査、温度イメージングなど幅広い応用分野で採用することが可能である。
なお、第1実施形態及び変形態様で説明した1次元アンテナアレイ10を積み重ねて2次元アンテナアレイ80を構成した場合、第1実施形態で特徴的な上記(2)〜(6)の効果を奏することは自明である。
【0072】
(第3実施形態)
次に、前記のように構成された1次元アンテナアレイ10を利用して、2次元アンテナアレイに構成した実施形態を、
図7を参照して説明する。本実施形態は、能動的マイクロ波カメラの構成に2次元アンテナアレイ80を使用する例である。なお、第2実施形態での構成と同一構成については、同一符号を付して説明する。
【0073】
図7に示すように本実施形態の結像光学系100は、マイクロ波照射器87を有する。また、本実施形態では、
図7に示すように、マイクロ波発振器150を備えている。
マイクロ波発振器150は、周波数ωの信号を発振する発振器152と、周波数ω0の局部発振波Loを発振する局部発振器70と、両信号を混合するミキサ154を備えている。ヘテロダイン受信のための局部発振波Loは、同軸ケーブルにより、接続端子81を介して2次元アンテナアレイ80に供給される。また、発振器152からの周波数ωの信号は、前記マイクロ波照射器87から物体110に対してマイクロ波RFとして照射される。
【0074】
照射されたマイクロ波RFは物体110により散乱されて、散乱波としてレンズL1により2次元アンテナアレイ80の位置で結像される。
このマイクロ波RFは、各チャンネルの電子回路56のミキサ62で、局部発振波Loと混合されて、中間周波数信号IFを得る。なお、マイクロ波RFの周波数ωは、局部発振波Loの周波数ω0より中間周波数信号IFの周波数ω2分だけ離れた周波数ω(=ω0+ω2)を用いる。
【0075】
また、
図7に示すように2次元アンテナアレイ80は、信号処理装置200に接続されている。信号処理装置200は、フィルタ82、アナログスイッチ84、検波器88、直交復調器89、デジタイザ86及びコンピュータ90を備えている。
【0076】
2次元アンテナアレイ80から中間周波数信号IFは、信号処理装置200に入力される。フィルタ82は、ローパスフィルタ、或いはバンドパスフィルタで雑音を減らし、アナログスイッチ84は、アナログスイッチ84を切替えることで、低周波増幅器、或いはデジタイザ86におけるチャンネル数を減らして、検波器88及び直交復調器89に中間周波数信号IFを入力する。前記検波器88は前記中間周波数信号IFの振幅Aを検波する。前記検波器88は、前記振幅Aに基づいてパワー検出を行う。
【0077】
また、直交復調器89は、マイクロ波発振器150のミキサ154から入力された周波数ω2の信号(搬送波)をレファレンスとして使用して、中間周波数信号IFに含まれている搬送波と同相のI信号及びI信号と直交するQ信号を検波する。検波器88は前記検波した振幅Aを、直交復調器89は、前記I信号、及びQ信号を、デジタイザ86を介してコンピュータ90に入力する。コンピュータ90は、前記振幅A、及び前記I信号、及びQ信号に基づいて位相φ=tan−1(Q/I)を検出する。
【0078】
本実施形態では、このように得られた位相φを用いることにより、被写体である物体110のカメラ方向の運動量が測定できるだけでなく、照射したマイクロ波RFの周波数をコンピュータ90が掃引することにより、被写体とカメラ(2次元アンテナアレイ80)との距離測定が可能となる。
【0079】
なお、
図7、
図8における結像光学系(L1)がない場合、合成開口イメージングの手法を用いることで、カメラ(2次元アンテナアレイ80)だけでも、撮像が可能である。
前記位相検出とパワー検出の同時計測は、地雷探査、コンクリート壁等の非破壊検査に期待されるマイクロ波コンピュータ・トモグラフィ(CT)の計測器としても有用である。
【0080】
なお、第1実施形態及び変形態様で説明した1次元アンテナアレイ10を積み重ねて2次元アンテナアレイ80を構成した場合、第1実施形態で特徴的な上記(2)〜(6)の効果を奏することは自明である。
【0081】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態を、
図8を参照して説明する。
図8に示すように、本実施形態では、1次元アンテナアレイ10の各チャンネルの電子回路を1つの集積回路ICで構成したものである。なお、
図8に示すホーンアンテナ45と導波管43は、上部フレーム20A及び下部フレーム20Bにおけるレイアウトが示されているものと理解されたい。また、
図8では、上部フレーム20A及び下部フレーム20Bにおいて、マイクロストリップライン31、フィンライン変換器50及び集積回路ICのレイアウトが示されているものと理解されたい。なお、マイクロストリップライン31、フィンライン変換器50及び集積回路ICは誘電体基板30に設けられているが、
図8では、誘電体基板30は説明の便宜上、図示していない。
【0082】
マイクロ波の減衰は、通常、導波管43よりもマイクロストリップライン31で大きいため、
図8に示すように、各ホーンアンテナ45に連通した導波管43は、後端(閉塞端)側に向かうほど相互に収束するように集められて配置されている。そして、本実施形態では各導波管43の集束した領域において、フィンライン変換器50が設けられている。そして、導波管43で集められたマイクロ波(電磁波)をフィンライン変換器50によりマイクロストリップライン31へ変換する。マイクロストリップライン31で変換されたマイクロ波は、マイクロストリップライン31を介して集積回路ICに集められる。
【0083】
上記の1次元アンテナアレイ10を複数積み重ねることにより、2次元アンテナアレイとして構成することも可能である。
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
【0084】
・
図4の例では、低周波で発振された局部発振波を逓倍する逓倍器69を設けたが、逓倍器69を省略してミキサ62をハーモニックミキサで構成してもよい。
この場合、低周波で発振された局部発振波を、ハーモニックミキサにより高周波の局部発振波に変換して前記電磁波と混合する。このように構成した場合は、逓倍器を省略することができる。
【0085】
また、高周波数のマイクロ波は、マイクロストリップライン経由では減衰が大きいため、本変形例では低周波で分配し、ハーモニックミキサで高周波に変換することで、十分なパワーの局部発振波Loを供給できる。
【0086】
・
図3では、局部発振器70をフレーム内の複数の電子回路56の設けるようにしたが、フレームの外部に設けてもよい。
・
図4、
図5では、局部発振器70をフレーム内の複数の電子回路56のうち、一部の電子回路に設けるようにしたが、フレームの外部に設けてもよい。
【0087】
・
図6の実施形態では、局部発振器70を2次元アンテナアレイ80の外部に配置したが、2次元アンテナアレイ83内部に設けてもよい。
・第3実施形態において、
図7では直交復調器89のレファレンスである周波数ω2の信号を、ミキサ154によりマイクロ波RFと局部発振波Loの差周波数を作って供給している。これに代えて、レファレンスを独立の発振器で生成し、アップコンバータで局部発振波Loとレファレンスとの和周波数を作り、マイクロ波RFを供給してもよい。
【0088】
・
図8の実施形態では、1次元アンテナアレイ10の各チャンネルの電子回路をIC化したが、IC化する対象は、各チャンネルの電子回路56に限定するものではない。例えば、
図6(b)及び
図7に示すマイクロ波カメラにおいて、アナログスイッチ84を用いて多チャンネルを1出力に変換する部分をIC化してもよい。