特開2015-229749(P2015-229749A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-229749光半導体装置用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物、及び光半導体素子搭載用ケース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-229749(P2015-229749A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】光半導体装置用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物、及び光半導体素子搭載用ケース
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20151124BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20151124BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20151124BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20151124BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   C08L83/04
   C08L83/06
   C08K5/56
   C08K3/36
   C08K5/5415
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-117562(P2014-117562)
(22)【出願日】2014年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(72)【発明者】
【氏名】堤 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】富田 忠
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP032
4J002CP061
4J002DE106
4J002DE136
4J002DJ017
4J002EG079
4J002EX038
4J002EX089
4J002EZ009
4J002FA087
4J002FD017
4J002FD096
4J002FD159
4J002FD169
4J002FD208
4J002GG01
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】光透過率が低く、成形性に優れ、成形時のバリが発生しにくい光半導体素子ケース用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び該組成物の硬化物からなるLED用等の半導体素子搭載用ケースの提供。
【解決手段】
(A)ヒドロキシ基を有するポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜20,000のレジン状オルガノポリシロキサン、(B)直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を有するオルガノポリシロキサン、(C)白色顔料、(D)(C)成分以外の無機充填材、(E)(A)レジン状オルガノポリシロキサンとの屈折率の差が0.02以上かつ大気圧下での沸点が200℃以上であるシランカップリング剤及び(F)硬化触媒を含むことを特徴とする光半導体装置用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(1)で表され、ポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜20,000のレジン状オルガノポリシロキサン:70〜95質量部、
(CHSi(OR(OH)(4−a−b−c)/2 (1)
(式中、Rは同一又は異種の炭素原子数1〜4の有機基を示し、a、b及びcは0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、及び0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
(B)下記一般式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を有し、1分子中に少なくとも1個のシクロヘキシル基またはフェニル基を含むオルガノポリシロキサン:5〜30質量部(但し、(A)及び(B)成分の合計は100質量部である)、
【化1】

(式中、Rは互いに独立にヒドロキシル基、炭素原子数1〜3のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ビニル基及びアリル基から選ばれる1価炭化水素基であり、mは5〜50の整数を示す。)
(C)白色顔料:3〜300質量部、
(D)(C)成分以外の無機充填材:400〜1200質量部、
(E)下記一般式(3)で表され、(A)レジン状オルガノポリシロキサンとの屈折率の差が0.02以上かつ大気圧下での沸点が200℃以上であるシランカップリング剤:0.2〜10.0質量部、
Si(OR4−d (3)
(式中、Rは炭素原子数6〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、dは1、2又は3である)
(F)硬化触媒:0.01〜10質量部、
を含むことを特徴とする光半導体装置用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
光半導体素子搭載ケース用である、請求項1に記載の白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分の無機充填材が平均粒径5.0〜20.0μmの球状シリカであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
(F)成分の硬化触媒が有機金属縮合触媒であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
更に、(G)成分として内部離型剤、及び(H)成分として(E)成分以外のカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物から形成された光半導体素子搭載用ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過率が低く、成形性に優れ、成形時のバリが発生しにくい光半導体装置用、特に光半導体素子搭載ケース用の、白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物、及び該組成物の硬化物からなる、LED用等の光半導体素子搭載用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)等の光半導体素子は、街頭ディスプレイや自動車ランプ、住宅用照明など種々のインジケータや光源として広く利用されるようになっている。LED等の半導体・電子機器装置の材料のひとつとして、ポリフタルアミド樹脂(PPA)が現在広く使用されている。
【0003】
しかし、近年、輝度向上のために光半導体装置の高出力化及び演色性向上のために光の短波長化が進み、光の高エネルギー化が進むことで特に無着色・白色の材料として従来のPPA樹脂材料を用いた光半導体素子封止およびケースでは、長期の使用により黄変する等により、光出力低下等が起こるという問題がある。
【0004】
更に詳述すると、特許文献1には、封止樹脂が、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を構成成分とするBステージ状の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記構成成分が分子レベルで均一に混合されている樹脂組成物の硬化体で構成されていることを特徴とする、光半導体装置が記載されている。この場合、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が主として用いられ、トリグリシジルイソシアネート等を使用し得ることも記載されているが、トリグリシジルイソシアネートは、実施例においてビスフェノール型エポキシ樹脂に少量添加使用されているもので、本発明者らの検討によれば、このBステージ状半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、特に高温・長時間の放置で黄変するという問題がある。
【0005】
更には発光素子封止用エポキシ樹脂組成物においてトリアジン誘導体エポキシ樹脂の使用については、特許文献2〜4に記載があるが、いずれも高温・長時間の放置で黄変するという問題は十分に解決されていない。
【0006】
更に、特許文献5には、350〜800nmにおける光反射率が70%以上の光反射用樹脂組成物についての記載がなされているが、該組成物はエポキシ樹脂組成物であるために、高温で長期使用する場合や、LEDがUVLED、白色LED、青色LEDなどの高輝度タイプの場合には黄変するといった問題が発生する可能性がある。
【0007】
また、特許文献6には、重量平均分子量が5×10以上のオルガノポリシロキサン及び縮合触媒を含有するLED封止用樹脂組成物が記載されている。しかし、このオルガノポリシロキサンは透明性を有する常温で液状のものでなければならないために、トランスファー成形や圧縮成形に適さないものである。
【0008】
更に、特許文献7には、シラノール基含有オルガノポリシロキサン、直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基含有オルガノポリシロキサン、白色顔料、シリカから成る無機充填剤及び縮合触媒を含有するトランスファー成形可能なLED反射材用樹脂組成物が記載されている。しかし、シラノール基含有オルガノポリシロキサンとシリカとの屈折率が近いために光が抜けやすく、成形時のバリも発生しやすいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2656336号公報
【特許文献2】特開2000−196151号公報
【特許文献3】特開2003−224305号公報
【特許文献4】特開2005−306952号公報
【特許文献5】特開2006−140207号公報
【特許文献6】特開2006−77234号公報
【特許文献7】特開2011−32392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、光透過率が低く、成形性に優れ、曲げ強度が高く、成形時のバリが発生しにくい光半導体装置用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物、及び該組成物の硬化物からなる、LED等の光半導体素子搭載用ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記の熱硬化性シリコーン樹脂組成物が、光透過率が低く、成形性に優れつつ成形時のバリが発生しにくい硬化物を与え、LED等の光半導体素子搭載用ケースに有用であることを見出した。
【0012】
即ち、本発明は、(A)下記平均組成式(1)で表され、ポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜20,000のレジン状オルガノポリシロキサン:70〜95質量部、
(CHSi(OR(OH)(4−a−b−c)/2 (1)
(式中、Rは同一又は異種の炭素原子数1〜4の有機基を示し、a、b及びcは0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、及び0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
(B)下記一般式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を有し、1分子中に少なくとも1個のシクロヘキシル基またはフェニル基を含むオルガノポリシロキサン:5〜30質量部(但し、(A)及び(B)成分の合計は100質量部である)、
【化1】

(式中、Rは互いに独立にヒドロキシル基、炭素原子数1〜3のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ビニル基及びアリル基から選ばれる1価炭化水素基であり、mは5〜50の整数を示す。)
(C)白色顔料:3〜300質量部、
(D)(C)成分以外の無機充填材:400〜1200質量部、
(E)下記一般式(3)で表され、(A)レジン状オルガノポリシロキサンとの屈折率の差が0.02以上かつ大気圧下での沸点が200℃以上であるシランカップリング剤:0.2〜10.0質量部、
Si(OR4−d (3)
(式中、Rは炭素原子数6〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、dは1、2又は3である)
(F)硬化触媒:0.01〜10質量部、
を含むことを特徴とする光半導体装置用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物を提供する。
本発明はまた、上記白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物から成る光半導体素子搭載用ケースを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光半導体装置用白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、光透過率が低く、室温での曲げ強度が高く、成形時のバリが発生しにくい硬化物を与える。また、該硬化物は、LED等の光半導体素子の搭載用ケースに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の光半導体素子搭載装置を示す。図1aはマトリックスタイプ凹型リフレクター基板、図1bは個片化リフレクター基板にLED素子を搭載した装置の断面図、図1cはその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
(A)レジン状オルガノポリシロキサン
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で表され、例えばトルエン等を展開溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜20,000のレジン状(即ち、分岐状又は三次元網状構造の)オルガノポリシロキサンであり、後述する(D)縮合触媒の存在下で、架橋構造を形成する。
(CHSi(OR(OH)(4−a−b−c)/2 (1)
(上記式(1)中、Rは同一又は異種の炭素原子数1〜4の有機基である。a、b及びcは、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5及び0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
【0016】
上記平均組成式(1)において、メチル基の含有量を示すaが0.8未満のオルガノポリシロキサンを含む組成物は、その硬化物が硬すぎて、耐クラック性に乏しい等の問題が生じやすくなり好ましくない。一方、aが1.5を超えると、得られるレジン状オルガノポリシロキサンは固形化しにくくなり好ましくない。好ましくは、0.8≦a≦1.2、より好ましくは0.9≦a≦1.1である。
【0017】
上記平均組成式(1)において、アルコキシ基の含有量を示すbが0.3を超えると、得られるレジン状オルガノポリシロキサンの分子量が小さくなりやすく、耐クラック性が低下することが多い。好ましくは0.001≦b≦0.2であり、より好ましくは0.01≦b≦0.1である。
【0018】
上記平均組成式(1)において、Si原子に結合したヒドロキシル基の含有量を示すcが0.5を超えると、得られるレジン状オルガノポリシロキサンは加熱硬化時の縮合反応により、高い硬度を示す一方で耐クラック性に乏しい硬化物を与えやすい。一方、cが0.001未満であると、得られるレジン状オルガノポリシロキサンは、融点が高くなる傾向があり、作業性に問題が生じる場合がある。好ましくは0.01≦c≦0.3であり、より好ましくは0.05≦c≦0.2である。cの値を制御するには、原料のアルコキシ基の完全縮合率を86〜96%にすることが好ましい。該完全縮合率が86%未満では融点が低くなり、96%を超えると融点が高くなりすぎる傾向にあるため好ましくない。
【0019】
以上のことから、上記平均組成式(1)において、好ましくは0.9≦a+b+c≦1.8であり、より好ましくは1.0≦a+b+c≦1.5である。
【0020】
上記平均組成式(1)中、Rは炭素原子数1〜4の有機基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基が挙げられ、原料の入手が容易である点で、メチル基及びイソプロピル基が好ましい。
【0021】
(A)成分のレジン状オルガノポリシロキサンは、GPC測定によるポリスチレン標準で換算した重量平均分子量が500〜20,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000である。該分子量が500未満であると、得られるレジン状オルガノポリシロキサンは固形化しにくく、該分子量が20,000を超えると、得られる組成物は粘度が高くなりすぎて流動性が低下して成形性が悪くなることがある。
【0022】
上記平均組成式(1)で表される(A)成分は、一般にQ単位(SiO4/2)、T単位(CHSiO3/2)、D単位((CHSiO2/2)及びM単位((CHSiO1/2)の組み合わせで表現することができる。(A)成分をこの表現法で示した時、全シロキサン単位の総モル数に対して、T単位の含有モル数の比率が70モル%以上(70〜100モル%)であることが好ましく、75モル%以上(75〜100モル%)であることがより好ましく、80モル%以上(80〜100モル%)であることが特に好ましい。該T単位のモル比が70モル%未満では、得られる硬化物の硬度、密着性、概観等の総合的なバランスが崩れる場合がある。なお、残部はM,D,Q単位でよく、全シロキサン単位に対するこれら単位の合計のモル比が30モル%以下(0〜30モル%)、特に0モル%を超え、30モル%以下であり、従ってT単位が100モル%未満であることが好ましい。
【0023】
上記平均組成式(1)で表される(A)成分は、下記一般式(4)で示されるオルガノシランの加水分解縮合物として得ることができる。
(CHSiX4−n (4)
(式中、Xは塩素等のハロゲン原子又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、nは0、1、2のいずれかである。)この場合、Xとしては、固体状のオルガノポリシロキサンを得る点からは、塩素原子またはメトキシ基であることが好ましい。
【0024】
上記式(4)で示されるシラン化合物としては、例えばメチルトリクロロシラン等のオルガノトリクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン;テトラクロロシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランなどが挙げられる。
【0025】
上記の加水分解性基を有するシラン化合物の加水分解及び縮合は、通常の方法で行えばよいが、例えば酢酸、塩酸、硫酸等の酸触媒、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ触媒の存在下で行うことが好ましい。例えば、加水分解性基としてクロロ基を含有するシランを使用する場合は、水添加によって発生する塩化水素ガス及び塩酸を触媒として、目的とする適切な分子量の加水分解縮合物を得ることができる。
【0026】
加水分解及び縮合の際に使用される水の量は、上記加水分解性基を有するシラン化合物中の加水分解性基(例としてクロロ基)の合計量1モルに対して、一般的には0.9〜1.6モルであり、好ましくは1.0モル〜1.3モルである。この添加量が0.9〜1.6モルの範囲を満たすと、後述の組成物は作業性に優れ、その硬化物は強靭性に優れたものとなりやすい。
【0027】
上記加水分解性基を有するシラン化合物は、通常、アルコール類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等の有機溶剤中で加水分解して使用することが好ましい。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、又はトルエン、キシレン等の芳香族化合物が好ましく、得られる組成物の硬化性および得られる硬化物の強靭性が優れたものとなる点で、イソプロピルアルコール、トルエン、又はイソプロピルアルコール・トルエン併用系がより好ましい。
【0028】
加水分解および縮合の反応温度は、好ましくは10〜120℃、より好ましくは20〜80℃である。反応温度がかかる範囲を満たすと、ゲル化しにくく、次の工程に使用可能な固体の加水分解縮合物が得られる。
【0029】
(B)オルガノポリシロキサン
(B)成分のオルガノポリシロキサンは、下記式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を有し、1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上のシクロヘキシル基またはフェニル基を含むことを特徴とする。
【化2】
【0030】
上記式(2)中、Rは、互いに独立に、ヒドロキシル基、炭素原子数1〜3のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ビニル基及びアリル基から選ばれる基である。Rは、好ましくはメチル基又はフェニル基である。mは5〜50、好ましくは8〜40、より好ましくは10〜35の整数である。mが5未満では、得られる硬化物は耐クラック性に乏しくなりやすく、この硬化物を含む装置に反りを起こす場合がある。一方、mが50を超えると、得られる硬化物の機械的強度が不足する傾向にある。
【0031】
(B)成分は、上記式(2)で示されるD単位(RSiO2/2)に加えて、上記式(2)に該当しないD単位(RSiO)、並びにM単位(RSiO1/2)及び/又はT単位(RSiO3/2)を含んでいてよい。D単位:M単位:T単位のモル比はそれぞれ、90〜24:75〜9:50〜1、特に70〜28:70〜20:10〜2(但し、これらの単位の合計は100)であることが硬化物特性から好ましい。ここでRはヒドロキシル基、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ビニル基又はアリル基を示す。これらに加えて、(B)成分はQ単位(SiO4/2)を含んでもよい。(B)成分のオルガノポリシロキサンは、式(2)のD単位(RSiO)、式(2)に該当しないD単位(RSiO)、M単位(RSiO1/2)及び/又はT単位(RSiO3/2)中に、シクロヘキシル基またはフェニル基を1分子中に少なくとも1個含む。
【0032】
(B)成分のオルガノポリシロキサン中の好ましくは30モル%以上(例えば、30〜90モル%)、特には50モル%以上(例えば、50〜80モル%)が、分子中でかかる一般式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン構造を形成していることが好ましい。また、(B)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜100,000である。該分子量がこの範囲にあると、(B)成分は固体もしくは半固体状であり、得られる組成物の作業性、硬化性などから好適である。
【0033】
(B)成分は、上記各単位の原料となる化合物を、生成ポリマー中で所要のモル比となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で加水分解して縮合を行うことによって合成することができる。
【0034】
ここで、T単位(RSiO3/2)の原料としては、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン等のトリクロロシラン類、これらそれぞれのトリクロロシラン類に対応するトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類を例示できる。
【0035】
上記式(2)の直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を形成するD単位(RSiO2/2)の原料としては、
【化3】

(ここで、m=0〜48の整数(平均値)、n=3〜48の整数(平均値)、かつm+nが3〜48(平均値))等を例示することができる。
【0036】
また、M単位、D単位等の原料としては、MePhSiCl、MeViSiCl、PhMeSiCl、PhViSiCl、MeSiCl、MeEtSiCl、ViMeSiCl2、PhSiCl、PhMeSiCl等のモノ又はジクロロシラン類、これらのクロロシランのそれぞれに対応するモノ又はジメトキシシラン類等のモノ又はジアルコキシシラン類を例示することができる。ここで、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
【0037】
これらの原料となる化合物を、所定のモル比で組合せて、例えば以下のとおりに反応させることで(B)成分を得ることが出来る。フェニルメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、Si数21個の両末端クロルジメチルシリコーンオイル、及びトルエンを投入混合し、水中に混合シランを滴下し、30〜50℃で1時間共加水分解する。その後、50℃で1時間熟成後、水を入れて洗浄し、その後共沸脱水や25〜40℃でアンモニア等を触媒として用いた重合を行い、濾過、減圧ストリップをする。
【0038】
なお、上記共加水分解及び縮合により製造した(B)成分には、シラノール基を有するシロキサン単位が含まれ得る。(B)成分のオルガノポリシロキサンは、かかるシラノール基含有シロキサン単位を、通常、全シロキサン単位に対して0.5〜10モル%、好ましくは1〜5モル%程度含有することが好ましい。上記シラノール基含有シロキサン単位としては、例えば、R(HO)SiO2/2単位、R(HO)SiO1/2単位、R(HO)SiO1/2単位が挙げられる(ここで、Rは、ヒドロキシル基以外の前記の基である)。該オルガノポリシロキサンはシラノール基を含有するので、上記式(1)で表されるヒドロキシル基を含む(A)成分のレジン状ポリオルガノシロキサンと縮合反応する。
【0039】
(B)成分の配合量は、(A)成分との合計100質量部に対し、好ましくは(A)成分と(B)成分の比が95:5〜70:30の範囲、より好ましくは90:10〜80:20の範囲となる量である。(B)成分の配合量が少なすぎると得られる組成物の連続成形性の向上効果が少なく、また得られる硬化物に低反り性や耐クラック性を達成しにくくなる。一方、(B)成分の配合量が多いと、得られる組成物の粘度が上昇しやすくなり、成形に支障をきたすことがある。
【0040】
(C)白色顔料
(C)成分の白色顔料は、硬化物の白色度を高めるために本発明の組成物に配合される。(C)成分の白色顔料は、光半導体装置のリフレクター(反射板)等の用途に用いられる硬化物を調製するためのシリコーン樹脂組成物において通常用いられているものでよい。(C)成分としては、例えば、二酸化チタン、アルミナ、酸化イットリウムを代表とする希土類酸化物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等が挙げられ、単独又は数種の白色顔料を併用して用いることができる。
【0041】
(C)成分の白色顔料としては白色度をより高めるために二酸化チタンを用いることが好ましい。この二酸化チタンの単位格子はルチル型、アナタース型、ブルカイト型のどれでも構わない。また、二酸化チタンの製造方法としても硫酸法、塩素法などいずれの方法により製造されたものも使用できるが、白色度の観点から塩素法の方が好ましい。
【0042】
また、(C)成分の平均粒径や形状も限定されないが、平均粒径は通常0.05〜5.0μmであり、1.0μm以下のものが好ましく、0.30μm以下のものがより好ましい。(C)成分は、樹脂成分や無機充填材との相溶性又は分散性を高めるために、アルミニウムやケイ素などの含水酸化物、ポリオールなどの有機物、又は有機ポリシロキサン等で予め表面処理することができる。なお、上記平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めた値である。
【0043】
(C)成分の配合量は、(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して、通常、3〜300質量部、好ましくは5〜200質量部である。該配合量が3質量部未満では十分な白色度が得られない場合がある。また、該配合量が300質量部を超えると機械的強度向上の目的で添加する他成分の割合が少なくなるだけでなく、得られる組成物の成形性が著しく低下することがある。なお、本発明のシリコーン樹脂組成物全体における(C)成分の割合は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは3〜40質量%の範囲である。
【0044】
(D)無機充填材
本発明のシリコーン樹脂組成物には、その硬化物の強度を高めるために、更に(D)成分として上記(C)成分以外の無機充填材が配合される。(D)成分の無機充填材としては、通常シリコーン樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、ガラス繊維、三酸化アンチモン等が挙げられるが、上記した(C)成分の白色顔料(白色着色剤)は除かれる。
(D)成分の無機充填材の平均粒径や形状は特に限定されないが、平均粒径は通常3〜40μmである。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めた値である。
【0045】
(D)成分としては、平均粒径が0.5〜40μmの球状シリカが好適に用いられる。また、得られる組成物の高流動化のため、0.1〜3μmの微細領域、3〜7μmの中粒径領域、10〜40μmの粗領域の球状シリカを組み合わせて使用することが好ましい。さらなる高流動化のためには、平均粒径がさらに大きい球状シリカを用いることが好ましいが、(D)成分としての球状シリカの平均粒径が40μmを超えると、(A)成分のレジン状オルガノポリシロキサンと球状シリカの屈折率が近いために光が透過しやすくなり、反射材として好ましい光特性が得られなくなる。また、破砕状シリカが含有されていると、得られる硬化物の強度が向上するが、組成物の流動性が大きく低下するため、好ましくない。
【0046】
(D)成分の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、400〜1,200質量部、特に600〜1,000質量部が好ましい。400質量部未満では、十分な強度を有する硬化物を得ることができないおそれがあり、1,200質量部を超えると、得られる組成物の増粘により、未充填不良や硬化物の柔軟性が失われることで、素子内の剥離等の不良が発生する場合がある。なお、本発明のシリコーン樹脂組成物全体における(D)成分の割合は、好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは20〜80質量%の範囲である。
【0047】
(E)シランカップリング剤
本発明のシリコーン樹脂組成物には、下記一般式(3)で表されるシランカップリング剤が配合される。
Si(OR4−d (3)
(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数6〜20の非置換又は置換の1価炭化水素、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基であり、dは1、2又は3である)。Rは官能基を有しない基、好ましくは炭素原子数6〜20のアルキル基又はアリール基、特にフェニル基、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基であるのが好ましい。
【0048】
(E)成分のシランカップリング剤は、(A)成分であるレジン状オルガノポリシロキサンとの屈折率の差が0.02以上かつ大気圧下での沸点が200℃以上であることが必要である。(A)成分と(E)成分の屈折率の差が0.02以上あると、光が反射しやすく且つ透過しにくくなり、結果的に光学特性が改善される。(E)成分の大気圧下での沸点が200℃以上であると、組成物の成形時に(E)成分が揮発しにくくなり、無機充填材表面に存在しやすく、定着しやすくなる。また、(E)成分を配合することで得られる組成物の流動性が向上する。
なお、本発明において、屈折率とは、JIS K 0062に準拠した方法で、アッベ型屈折率計により、温度25℃で、波長589.3nmにおいて測定した値である。
【0049】
上記式(3)中のRは、炭素原子数6〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基の群から選択される少なくとも1種の基であり、具体例としては、例えばヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトララデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;2−フェニルエチル基、2−メチル−2−フェニルエチル基等のアラルキル基;あるいはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子などで置換したハロゲン化炭化水素基、例えば2−(パーフロロブチル)エチル基、2−(パーフロロオクチル)エチル基、p−クロロフェニル基等が挙げられるが、特に、炭素原子数6〜14の非置換アルキル基が好ましい。また、Rは官能基、特にエポキシ基、アミノ基及びメルカプト基のような官能基、を有しない基であることが好ましい。
【0050】
また、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の1種もしくは2種以上のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが例示され、特にメチル基及びエチル基が好ましい。dは1、2あるいは3であり、特に1であることが好ましい。
【0051】
(E)成分の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対し、0.2〜10.0質量部、特に1.0〜5.0質量部が好ましい。(E)成分の配合量が0.2質量部より少ないと、得られる硬化物の透過率の低下と、得られる組成物の流動性の向上が得られず、10質量部より多いと、組成物の成形時にバリが発生しやすくなるだけでなく、成形物の強度低下も引き起こしやすくなる。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0052】
(F)硬化触媒
(F)成分の硬化触媒は、上記(A)及び(B)成分である熱硬化性オルガノポリシロキサンの硬化に用いるための縮合触媒であり、(A)及び(B)成分の安定性、被膜の硬度、無黄変性、硬化性などを考慮して選択される。例えば、有機金属触媒として、有機酸亜鉛、ルイス酸触媒、有機アルミニウム化合物、有機チタニウム化合物等が好適に用いられ、具体的には安息香酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、エチルアセトアセテ−トアルミニウムジ(ノルマルブチレ−ト)、アルミニウム−n−ブトキシジエチルアセト酢酸エステル、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸錫等が例示される。中でも、安息香酸亜鉛が好ましく使用される。
【0053】
硬化触媒の配合量は、上記(A)及び(B)成分のオルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、特に好ましくは0.1〜1.6質量部である。配合量がかかる範囲を満たすと、得られるシリコーン樹脂組成物の硬化性が良好となり、安定したものとなる。
【0054】
本発明は、上記成分に加え、下記の任意の成分を配合することができる。
(G)内部離型剤
本発明のシリコーン樹脂組成物には、内部離型剤を配合することができる。(G)成分は、成形時の離型性を高めるために配合するものであり、組成物全体に対して0.2〜5.0質量%含有するように添加するものである。該内部離型剤としては、天然ワックス、酸ワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸ワックスを代表とする合成ワックスなどがあるが、中でも融点が120〜140℃であるステアリン酸カルシウムを用いることが望ましい。
【0055】
(H):(E)成分以外のカップリング剤
本発明のシリコーン樹脂組成物には、(E)成分のシランカップリング剤以外に、シリコーン樹脂と無機充填材との結合強度を強くするために、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤を配合することができる。(H)成分のカップリング剤は、官能基、例えばエポキシ基、アミノ基及びメルカプト基から選ばれる少なくとも1種の官能基、を含むのが好ましい。
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0056】
(H)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜8.0質量部、好ましくは0.5〜6.0質量部である。(H)成分の配合量が0.1質量部未満であると、基材への接着効果が十分でなく、また(H)成分の配合量が8.0質量部を超えると、粘度が極端に低下して、ボイドの原因になる可能性がある。
【0057】
[その他の添加剤]
本発明のシリコーン樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的で種々のシリコーンパウダー、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム等の添加剤、樹脂の強度を上げる目的でガラス繊維やウイスカー状の繊維、接着力を向上させる目的で耐熱性の高いエポキシ樹脂であるトリアジン誘導体エポキシ樹脂などを本発明の効果を損なわない範囲で添加配合することができる。
【0058】
本発明の組成物の製造方法としては、シリコーン樹脂、白色顔料、無機充填材、シランカップリング剤、硬化触媒、その他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕してシリコーン樹脂組成物の成形材料とすることができる。本発明のシリコーン樹脂組成物の硬化物は、ガラス転移温度を超える温度での線膨張係数が30ppm/K以下、好ましくは25ppm/K以下であることが好ましい。
【0059】
本発明に示す光半導体素子搭載用ケースの最も一般的な成形方法としては、トランスファー成形法や圧縮成形法が挙げられる。トランスファー成形法では、トランスファー成形機を用い、成形圧力5〜20N/mm、成形温度120〜190℃で成形時間30〜500秒、特に成形温度150〜185℃で成形時間30〜180秒で行うことが好ましい。また、圧縮成形法では、コンプレッション成形機を用い、成形温度は120〜190℃で成形時間30〜600秒、特に成形温度130〜160℃で成形時間120〜300秒で行うことが好ましい。更に、いずれの成形法においても、後硬化(ポストキュア)を150〜200℃で2〜20時間行ってもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0061】
実施例及び比較例で使用した各成分を以下に示す。
尚、以下本発明において重量平均分子量は下記測定条件によりGPCで測定されたものである。
<分子量測定条件>
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流量:0.35mL/min
検出器:RI
カラム:TSK−GEL Hタイプ(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:5μL
【0062】
また、本発明、及び以下の実施例及び比較例において、屈折率はJIS K 0062に準拠した方法で、アッベ型屈折率計により、温度25℃で、波長589.3nmにおいて測定したものである。
【0063】
(A)レジン状オルガノポリシロキサンの合成
[合成例1]
メチルトリクロロシラン100質量部、トルエン200質量部を1Lのフラスコに入れ、氷冷下で、水8質量部とイソプロピルアルコール60質量部との混合液を液中滴下した。内温−5〜0℃で5〜20時間かけて滴下し、その後加熱して還流温度で20分間撹拌した。それから該混合液を室温まで冷却し、水12質量部を30℃以下、30分間で滴下し、20分間撹拌した。これに水25質量部を滴下後、得られた反応混合物を40〜45℃で60分間撹拌した。その後、該反応混合物に水200質量部を加えて有機層を分離した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過及び減圧ストリップをすることにより、下記平均式(A−1)で示される無色透明の固体(融点76℃、重量平均分子量3,060、屈折率1.43)のレジン状オルガノポリシロキサン(A−1)36.0質量部を得た。
(CH1.0Si(OC0.07(OH)0.101.4 (A−1)
【0064】
(B)オルガノポリシロキサンの合成
[合成例2]
フェニルメチルジクロロシラン100g(4.4モル%)、フェニルトリクロロシラン2,100g(83.2モル%)、Si数21個の両末端クロロ封鎖のジメチルポリシロキサンオイル2,400g(12.4モル%)、トルエン3,000gを混合し、水11,000g中に混合した上記シランを滴下し、30〜50℃で1時間共加水分解した。その後、30℃で1時間熟成後、水を入れて洗浄し、その後共沸脱水、ろ過、及び減圧ストリップをすることにより、無色透明な生成物(オルガノシロキサン(B−1))を得た。該シロキサン(B−1)はICIコーンプレートを用いた150℃での溶融粘度5Pa・sを有し、重量平均分子量50,000、屈折率1.49であった。
[(MeSiO)210.124(PhMeSiO)0.044(PhSiO1.50.832(B−1)
【0065】
(C)白色顔料
C−1:二酸化チタン ルチル型(CR−95、石原産業(株)製)
C−2:酸化亜鉛(酸化亜鉛1種、三井金属鉱業(株)製)
【0066】
(D)無機充填材
D−1:溶融球状シリカA(RS−8225/53C、(株)龍森製、平均粒径10μm)
D−2:溶融球状シリカB(ES−105、東海ミネラル(株)製、平均粒径35μm)
D−3:溶融球状シリカC(N−MSR−04、(株)龍森製、平均粒径4μm)
D−4:溶融球状シリカD(SO−25R、(株)アドマテック製、平均粒径0.5μm)
D−5:破砕状シリカ(FMT−10C、福島窯業(株)、平均粒径10μm)
【0067】
(E)シランカップリング剤
E−1:へキシルトリメトキシシラン(KBM−3063,信越化学工業(株)製、屈折率1.40、沸点202℃)
E−2:フェニルトリメトキシシラン(KBM−103、信越化学工業(株)製、屈折率1.47、沸点218℃)
E−3:メチルトリメトキシシラン(KBM−13、信越化学工業(株)製、屈折率1.37、沸点102℃)
E−4:デシルトリメトキシシラン(KBM−3103C,信越化学工業(株)製、屈折率1.42、沸点214℃
【0068】
(F)硬化触媒
F−1:安息香酸亜鉛(和光純薬工業(株)製)
【0069】
(G)離型剤
G−1:エステル系離型剤(カオーワックス220、花王(株)製)
【0070】
(H)(E)以外のシランカップリング剤
H−1:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803、信越化学工業(株)製、沸点198℃、屈折率1.44)
【0071】
[実施例1〜5,比較例1〜5]
表1に示す配合成分(質量部)を熱二本ロールにて溶融混合し、冷却し、そして粉砕して白色シリコーン樹脂組成物を得た。これらの組成物及び硬化物について、以下の諸特性を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
[スパイラルフロー値]
EMMI規格に準じた金型を使用して、成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間120秒の条件で各組成物から試験片を作成し、スパイラルフロー値を測定した。
【0073】
[最低溶融粘度]
高化式フローテスターを用い、25kgfの加圧下、直径1mmのノズルを用い、温度175℃で各組成物の粘度を測定した。
【0074】
[室温での曲げ強度、曲げ弾性率]
JIS−K6911規格に準じた金型を使用して、成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間120秒の条件で各組成物を成形し、得られた成形物を180℃、4時間ポストキュアした。ポストキュアした試験片を室温(25℃)にて、曲げ強度、曲げ弾性率について測定した。
【0075】
[光反射率]
成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間120秒の条件で、直径50mm×厚さ0.20mmの円板型硬化物を各組成物から作成し、エス・デイ・ジー(株)製X−rite8200を使用して、該硬化物の450nmでの初期光反射率を測定した。
【0076】
[光透過率]
成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間120秒の条件で、直径50mm×厚さ0.20mmの円板型硬化物を各組成物から作成し、エス・デイ・ジー(株)製X−rite8200を使用して、該硬化物の450nmでの初期光透過率を測定した。
【0077】
[バリ長さ]
成形温度175℃、成形圧力は6.9N/mm、成形時間120秒の条件で、バリ測定用金型を使用して各組成物を成形した場合、該金型に生じた30μm厚みのバリ長さの最大値を、ノギスを用いて測定した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、(A)成分のレジン状オルガノポリシロキサンに対して特定のシランカップリング剤(E)を使用することにより、硬化物の機械強度などの特性を維持したまま、組成物の成形性、及び硬化物の光特性を向上させることができることが分かる。
【0080】
[実施例6](リフレクターの成形と物性)
図1に示すように、実施例1及び比較例4で製造した樹脂組成物と全表面を銀メッキした銅リードフレーム102とを用いて、下記の成形条件で、該組成物を全トランスファー成形して、マトリックスタイプの凹型リフレクター基板10を作成した。
【0081】
成形温度:175℃
成形圧力:100N/mm
成形時間:120秒
更にポストキュアを180℃で4時間行った。
【0082】
得られたマトリックスタイプの凹型リフレクター基板10のそれぞれの凹状の底辺に露出した銅リードフレーム102上に、青色LED素子104を載せ、その電極を、シリコーンダイボンド剤105(商品名:LPS632D、信越化学(株)製)で銅リードフレーム102と接着固定した。また、青色LED素子104の他方の電極を、金線103を用いてリードフレーム102のもう一方のリード部と電気的に接続した。その後、透明なシリコーン封止剤106(LPS380:信越化学(株)製)を、LED素子104が配置された凹部内に注入し、120℃で1時間、更に150℃で1時間硬化させて封止した。
【0083】
このマトリックスタイプのリフレクター基板10をダイシングすることで個片化した。個片化した凹型リフレクター基板100は、上部壁厚:1mm、縦38mm、横16mmであった。これら個片化したリフレクター基板100を用いて組み立てたLED搭載装置を5個用い、コニカミノルタ(株)製CS−2000Aを用いて輝度を測定した。実施例1の組成物で形成したリフレクター基板100を用いたLED搭載装置の輝度を100とした場合、比較例4で作製したLED搭載装置の輝度は90と低下していた。
【符号の説明】
【0084】
10:凹型リフレクター基板
100:個片化した凹型リフレクター基板
101:樹脂組成物
102:リードフレーム
103:金線
104:LED素子
105:ダイボンド剤
106:透明封止樹脂
図1