特開2015-229799(P2015-229799A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2015229799-塩化コバルト溶液の浄液方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-229799(P2015-229799A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】塩化コバルト溶液の浄液方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 23/06 20060101AFI20151124BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   C22B23/06
   C22B3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-118303(P2014-118303)
(22)【出願日】2014年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 啓明
(72)【発明者】
【氏名】天野 道
(72)【発明者】
【氏名】早田 二郎
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA09
4K001BA19
4K001DB24
(57)【要約】
【課題】稼働率の良い塩化コバルト溶液の浄液方法を提供する。
【解決手段】不純物として少なくとも銅を含む塩化コバルト溶液に、硫化剤を添加して、不純物を硫化澱物として除去するにあたり、硫化剤として濃度が30〜100g/Lの水硫化ナトリウム溶液を用いる。硫化剤として水硫化ナトリウム溶液を用いるので、硫化水素ガスとは異なりボンベを切り替える必要がなく、稼働率が向上する。また、水硫化ナトリウム溶液の濃度が30〜100g/Lであるので、塩化コバルト溶液との接触により局所的な高pH領域が生じてコバルトが優先的に硫化することを防止できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物として少なくとも銅を含む塩化コバルト溶液に、硫化剤を添加して、不純物を硫化澱物として除去するにあたり、
硫化剤として濃度が30〜100g/Lの水硫化ナトリウム溶液を用いる
ことを特徴とする塩化コバルト溶液の浄液方法。
【請求項2】
前記硫化剤の添加量を、塩化コバルト溶液に含まれる不純物量に対して4〜10倍モル当量とする
ことを特徴とする請求項1記載の塩化コバルト溶液の浄液方法。
【請求項3】
前記硫化剤を、塩化コバルト溶液が供給された反応槽の底部から添加する
ことを特徴とする請求項1または2記載の塩化コバルト溶液の浄液方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化コバルト溶液の浄液方法に関する。さらに詳しくは、不純物として少なくとも銅を含む塩化コバルト溶液から不純物を除去するための塩化コバルト溶液の浄液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化物からニッケルやコバルトを回収する湿式製錬プロセスでは、原料であるニッケルマットやニッケル・コバルト混合硫化物(MS:ミックスサルファイド)を塩素浸出し、得られた浸出液から不純物を除去する浄液工程などを経て、電解工程で電気ニッケルや電気コバルトを回収する。
【0003】
図1に示すように、浸出工程から得られた浸出液は、セメンテーション工程において銅が除去され、脱鉄工程において鉄やヒ素などの不純物が除去された後、コバルト溶媒抽出工程に送られる。コバルト溶媒抽出工程では、溶媒抽出によりニッケルとコバルトとを分離し、粗塩化ニッケル溶液と粗塩化コバルト溶液とを得る。粗塩化ニッケル溶液は、さらに不純物が除去され高純度となってニッケル電解工程に送られる。ニッケル電解工程では電解採取により電気ニッケルが製造される。一方、塩化コバルト溶液は、さらに不純物が除去され高純度となってコバルト電解工程に送られる。コバルト電解工程では電解採取により電気コバルトが製造される。
【0004】
粗塩化コバルト溶液の浄液工程には複数の詳細工程が含まれるが、その中には脱銅工程がある。脱銅工程では、粗塩化コバルト溶液に硫化剤を添加することで不純物である銅および鉛を硫化澱物として除去する。硫化剤の添加により処理液のpHが低下するため、これを防ぐためにpH調整剤を添加して、処理液のpHを調整することが行われる。
【0005】
特許文献1および2には、硫化剤として硫化水素が好ましく用いられることが開示されている。しかし、塩化コバルト溶液に硫化水素を添加するには、ボンベに封入された液化硫化水素を気化させて硫化水素ガスを発生させ、これを液中に投入する必要がある。使用済みのボンベを切り替える際には、硫化水素ガスの供給が一時的に停止することから、これに伴って脱銅工程の操業も停止させる必要があり、稼働率が低下するという問題がある。また、ガスを扱うため添加量の調整が困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−285368号公報
【特許文献2】特開2008−274382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、稼働率の良い塩化コバルト溶液の浄液方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の塩化コバルト溶液の浄液方法は、不純物として少なくとも銅を含む塩化コバルト溶液に、硫化剤を添加して、不純物を硫化澱物として除去するにあたり、硫化剤として濃度が30〜100g/Lの水硫化ナトリウム溶液を用いることを特徴とする。
第2発明の塩化コバルト溶液の浄液方法は、第1発明において、前記硫化剤の添加量を、塩化コバルト溶液に含まれる不純物量に対して4〜10倍モル当量とすることを特徴とする。
第3発明の塩化コバルト溶液の浄液方法は、第1または第2発明において、前記硫化剤を、塩化コバルト溶液が供給された反応槽の底部から添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、硫化剤として水硫化ナトリウム溶液を用いるので、硫化水素ガスとは異なりボンベを切り替える必要がなく、稼働率が向上する。また、水硫化ナトリウム溶液の濃度が30〜100g/Lであるので、塩化コバルト溶液との接触により局所的な高pH領域が生じてコバルトが優先的に硫化することを防止できる。
第2発明によれば、硫化剤の添加量を不純物量に対して4〜10倍モル当量とするので、コバルトの共沈量を低減しつつ、不純物を十分に除去できる。
第3発明によれば、水硫化ナトリウム溶液を反応槽の底部から添加するので、水硫化ナトリウム溶液と塩化コバルト溶液との反応により生じた硫化水素が液面まで上昇する間に、硫化水素と不純物との硫化反応が生じるので、反応効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】湿式製錬プロセスの全体工程図である。
図2】脱銅工程の詳細工程図である。
図3】実施例1における塩化ナトリウム溶液の不純物濃度等の推移を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の一実施形態に係る塩化コバルト溶液の浄液方法は、以下に説明するニッケルおよびコバルトの湿式製錬プロセスに適用される。なお、本発明に係る塩化コバルト溶液の浄液方法は、塩化コバルト溶液の由来を問わず、不純物として少なくとも銅を含む塩化コバルト溶液を浄液するプロセスであれば、いかなるプロセスにも適用される。
【0012】
図1に示すように、ニッケルおよびコバルトの湿式製錬プロセスでは、まず、原料であるニッケル・コバルト混合硫化物(MS:ミックスサルファイド)およびニッケルマットを塩素浸出して浸出液を得る。浸出液は、主成分が塩化ニッケル溶液であり、コバルトのほか、鉄、銅、鉛等の不純物が含まれる。
【0013】
浸出工程から得られた浸出液は、セメンテーション工程および脱鉄工程を経て、コバルト溶媒抽出工程に送られる。コバルト溶媒抽出工程では、浸出液に含まれるコバルトを溶媒抽出により分離し、塩化ニッケル溶液と塩化コバルト溶液とを得る。なお、説明の便宜のため、コバルト溶媒抽出工程から得られた塩化ニッケル溶液および塩化コバルト溶液を、それぞれ粗塩化ニッケル溶液および粗塩化コバルト溶液と称する。粗塩化コバルト溶液には、不純物として銅や鉛等が含まれる。
【0014】
粗塩化コバルト溶液は、浄液工程で不純物が除去されて高純度塩化コバルト溶液となってコバルト電解工程に送られる。コバルト電解工程では電解採取により電気コバルトが製造される。
【0015】
粗塩化コバルト溶液の浄液工程には複数の詳細工程が含まれるが、その中には脱銅工程がある。図2に示すように、脱銅工程では、反応槽に供給した粗塩化コバルト溶液に、硫化剤を添加して、不純物である銅や鉛を硫化澱物として析出させる。また、硫化剤の添加により処理液のpHが低下するため、これを防ぐためにpH調整剤を添加して、処理液のpHを調整する。
【0016】
pH調整剤は、処理液のpHおよび/または硫化剤により、アルカリ性または酸性のpH調整剤が選ばれる。pH調整剤としては、特に限定されないが、アルカリ性pH調整剤として水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸コバルト等のアルカリ塩を用いることができ、酸性pH調整剤として塩酸、硫酸等の鉱酸を用いることができる。これらの中で、塩化コバルト溶液への他の金属の混入を防止できる炭酸コバルトが好ましい。
【0017】
反応槽から排出された中間スラリーは、フィルタープレス装置等の固液分離装置に送られ、高純度塩化コバルト溶液と硫化澱物とに分離される。このようにして、不純物を硫化澱物として除去することができる。
【0018】
得られた高純度塩化コバルト溶液は、必要に応じて他の工程を経て、コバルト電解工程に供給される。また、硫化澱物は浸出工程に繰り返され、硫化澱物に含まれるコバルト等が回収される。
【0019】
本実施形態は、以上の湿式製錬プロセスの脱銅工程において、硫化剤として濃度が30〜100g/Lの水硫化ナトリウム溶液を用いるところに特徴を有する。また、硫化剤の添加量を、塩化コバルト溶液に含まれる不純物量に対して4〜10倍モル当量とするところに特徴を有する。ここで、不純物量とは、銅や鉛等の不純物の量、例えば銅量と鉛量の和を意味する。
【0020】
硫化剤として液体である水硫化ナトリウム溶液を用いるので、硫化水素ガスとは異なりボンベを切り替える必要がない。そのため、ボンベの切り替えのたびに操業を停止させる必要がなく、稼働率が向上する。
【0021】
水流化ナトリウム溶液はアルカリ性であることから、濃度が高すぎると塩化コバルト溶液と接触した際に局所的な高pH領域が生じる。その領域では、溶解平衡的に硫化物が安定な鉛よりもマトリックス成分で濃度の高いコバルトが優先的に硫化してしまう。水硫化ナトリウム溶液の濃度を100g/L以下とすることで、局所的な高pH領域が生じてコバルトが優先的に硫化することを防止できる。また、水流化ナトリウム溶液の濃度が30g/L以上とすることで、塩化コバルト溶液の濃度が薄まるのを抑制できる。
【0022】
硫化剤の添加量が不純物量の4倍モル当量未満であると、不純物を十分に硫化澱物とすることができない。また、硫化剤の添加量が不純物量の10倍モル当量を超えると、コバルトの共沈量が多くなり、コバルトのロスが生じる。したがって、硫化剤の添加量を不純物量に対して4〜10倍モル当量とすれば、コバルトの共沈量を低減しつつ、不純物を十分に除去できる。
【0023】
また、本実施形態では、硫化剤を、塩化コバルト溶液が供給された反応槽の底部から添加するところに特徴を有する。これは、例えば、硫化剤の供給パイプを反応槽内に設け、硫化剤の排出口を液中に設けることで実現できる。
【0024】
硫化剤として水硫化ナトリウム溶液を添加すると、水硫化ナトリウムと塩化コバルト溶液との反応により硫化水素が生じる。水硫化ナトリウム溶液を反応槽の底部から添加することで、生じた硫化水素の気泡が液面まで上昇する間に、硫化水素と不純物との硫化反応が生じる。そのため、反応効率が向上する。
【実施例】
【0025】
つぎに、実施例を説明する。
(実施例1)
上記湿式精錬プロセスの脱銅工程において、塩化コバルト溶液15,000Lを反応槽に供給し、濃度が75g/Lの水硫化ナトリウム溶液を流量3.0L/分で反応槽の底部から添加した。なお、水硫化ナトリウム溶液の流量は、塩化コバルト溶液に含まれる銅量および鉛量の和に対して0.26倍モル当量/分に相当する。また、pH調整剤は添加しなかった。
【0026】
水硫化ナトリウム溶液を添加する前の塩化コバルト溶液は、銅濃度が75mg/L、鉛濃度が4.6mg/L、pH1.85、酸化還元電位(Ag/AgCl電極基準)が435mVであった。水硫化ナトリウム溶液を20L添加するたびに、塩化コバルト溶液をサンプリングし、その濾液に含まれる金属を分析した。なお、金属の分析にはICP発光分析法を用いた。その結果を図3に示す。
【0027】
図3より、濃度75g/Lの水硫化ナトリウム溶液の添加量を、塩化コバルト溶液に含まれる銅量および鉛量の和に対して4.6倍モル当量以上とすると、濾液の銅濃度が1mg/L未満、鉛濃度が0.2g/Lとなり、不純物の極めて少ない高純度塩化コバルト溶液が得られることが分かる。なお、図示した範囲では十分なCo収率を得られたが、図示しない範囲で水硫化ナトリウム溶液の添加量を10.8倍モル当量添加すると、コバルトの共沈が急速に進み、コバルト収率は悪化して不充分な結果となった。
【0028】
(比較例1)
塩化コバルト溶液4Lを40℃に加温して、濃度が300g/Lの水硫化ナトリウム溶液を流量2.0mL/分で添加した。水硫化ナトリウム溶液の添加量は、塩化コバルト溶液に含まれる銅量および鉛量の和に対して7.5倍モル当量とした。添加終了後、塩化コバルト溶液をサンプリングし、その濾液に含まれる金属を分析した。なお、金属の分析にはICP発光分析法を用いた。
【0029】
水硫化ナトリウム溶液を添加する前の塩化コバルト溶液は、銅濃度が110mg/L、鉛濃度が4.7mg/L、pH1.85であった。水硫化ナトリウム溶液の添加後は、濾液の銅濃度が1mg/L未満、鉛濃度が0.5g/Lであった。すなわち、比較例1は、実施例1に比べて鉛濃度が高い状態であった。
【0030】
この理由は、水硫化ナトリウム溶液はアルカリ性であることから、濃度が高いと塩化コバルト溶液と接触した際に局所的な高pH領域を生成し、その領域では溶解平衡的に硫化澱物を生成しやすい鉛よりも、マトリックス成分で濃度の高いコバルトが優先的に硫化反応を起こすためと考えられる。
図1
図2
図3