【実施例】
【0039】
以下に、本発明を製造例、実施例および比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、R値は、ポリアルキレンオキシド化合物の末端水酸基およびジオール化合物の水酸基の合計モル数に対する、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数の比(−NCO基/−OH基)を表す。
【0040】
[評価方法]
下記製造例に記載のポリアルキレンオキシド変性物について、(1)吸水能、(2)水溶出分を以下の方法に従って測定した。また、下記実施例にて作製した不織布シートについて(3)柔軟性、(4)吸い上げ速度、(5)吸水能、(6)保水性、(7)すべり性 を以下の方法に従って測定した。
【0041】
(1)吸水能
ポリアルキレンオキシド変性物の吸水能については、以下の方法により測定した。
約1gのポリアルキレンオキシド変性物を秤量(A[g])した後、200mL容のビーカーに計りとった100mLのイオン交換水に、室温下(22℃)で、24時間浸漬してゲル化させた。その後、200mesh(孔径:75μm)の金網にてゲルをろ過し、その質量(B[g])を測り、次式により、吸水能を算出した。
吸水能(g/g)=B/A
【0042】
(2)水溶出分
上記吸水能測定後のゲルを、50℃の熱風乾燥機にて8時間乾燥させた後の質量を秤量し(C[g])、次式により水溶出分を求めた。
水溶出分(質量%)=(A−C)/A ×100
【0043】
(3)柔軟性
30cm×30cmのシートを両手で丸め以下の2段階で評価した。
○:容易に丸めることができ、手触りも柔らかい。
×:丸めるのに抵抗があり、ゴワゴワ感がある。
【0044】
(4)吸い上げ速度
実施例および比較例により得られた不織布シートを2cm×30cmの短冊状に切断して、垂直に吊るした。短冊の下から5mmの位置までを青色に着色した水に浸し、10分間での吸い上げた距離を測定した(cm)。
10分間での距離が3cm以上であれば良好と判断できる。
【0045】
(5)吸水能
実施例および比較例にて得られた不織布シートを5cm×10cmの大きさに切断してその重量(A[g])を測定した。不織布シートを200mL容のビーカーに計りとった100mLのイオン交換水に、室温下(22℃)で、3時間浸漬した。(ポリアルキレンオキシド変性物部分は吸水してゲル化した。)不織布シートの両面をティシュで軽く拭き、吸収されていない水をとった後、その質量(B[g])を測り、次式により、吸水能を算出した。
吸水能[g/m
2]=(B−A)×200
【0046】
(6)保水性
(5)で測定した不織布シートを40℃の恒温槽に30分間放置した後にその質量(C[g])を測定した。
保水性[%]=(B−C)/B ×100
保水性が70%以上あれば良好と判断できる。
【0047】
(7)すべり性
実施例および比較例により得られた不織布シートを2cm(W)×5cm(L)に切断し、0.1mL水を滴下した。その後、摩擦感テスター(カトーテック株式会社製、型式:KES−SE)を用いて、以下の試験条件下、摩擦係数μをモニターした。
センサー:10mm角ピアノワイヤー
荷重 :50[g]
速度 :10[mm/秒]
【0048】
(i)平均摩擦係数(MIU)
表面をこする時に感じるすべりやすさ、すべりにくさと相関性がある。この値が大きくなるほどすべりにくくなる。
【0049】
摩擦係数μのモニター結果から平均摩擦係数(MIU)を求める概略図を、
図1に示す。
【0050】
図1に示すように、測定サンプルの表面をスキャンして、表面の摩擦係数μをモニターする。次に、20mmのモニター幅において、摩擦係数μについて積分する(
図1の斜線部分)。積分値をモニター幅(20mm)で除することによって、平均摩擦係数(MIU)を求める。なお、実施例及び比較例で用いた不織布そのもののMIUは次の通りであった。
PPスパンボンド不織布 MIU 0.25
レーヨン不織布 MIU 0.33
【0051】
(ii)平均摩擦係数の変動(MMD)
表面をこする時に感じるなめらかさ、ざらつき感と相関性がある。この値が大きいほど表面がざらざらしている。
【0052】
摩擦係数のモニター結果から平均摩擦係数の変動(MMD)を求める概略図を、
図2に示す。
【0053】
図2に示すように、20mmのモニター幅において、平均摩擦係数(MIU)と摩擦係数μとの差異の絶対値について積分する(
図2の斜線部分)。積分値をモニター幅(20mm)で除することによって、平均摩擦係数の変動(MMD)を求める。
【0054】
MMDの値が0.015以下のとき、表面のなめらかさが良好といえる。なお、実施例及び比較例で用いた不織布そのもののMMDは次の通りであった。
PPスパンボンド不織布 MMD 0.018
レーヨン不織布 MMD 0.025
【0055】
製造例1 ポリアルキレンオキシド変性物の製造
80℃に保温された攪拌機を備えた貯蔵タンクAに、十分に脱水した数平均分子量20,000のポリエチレンオキシド100質量部、1,4−ブタンジオール0.90質量部およびジオクチルスズジラウレート0.1質量部の割合で投入し、窒素ガス雰囲気下で攪拌して均一な混合物とした。これとは別に、30℃に保温された貯蔵タンクBにジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを投入し、窒素ガス雰囲気下で貯蔵した。
【0056】
定量ポンプを用いて、貯蔵タンクAの混合物を500g/分の速度にて、貯蔵タンクBのジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを19.4g/分の速度にて、110〜140℃に設定した2軸押出機に連続的に供給し(R値=1)、押出機中で混合して反応を行い、押出機出口からストランドを出し、ペレタイザーによりペレット化して、ポリアルキレンオキシド変性物を得た。
【0057】
得られたポリアルキレンオキシド変性物の吸水能は25g/g、水溶出分は19%であった。
【0058】
製造例2 ポリアルキレンオキシド変性物の製造
数平均分子量15,000のエチレンオキシド/プロピレンオキシド(質量比:90/10)共重合体を250g/分の速度にて、また、40℃に加熱したエチレングリコールを2.1g/分の速度にて、それぞれ40mmφ単軸押出機(L/D=40、設定温度:90℃)に供給して両者を溶融混合した。
【0059】
吐出口から得られる混合物(均一な溶融状態で吐出しており、HPLCにて分析して仕込み比で混合していることを確認した)を、30mmφの2軸押出機(L/D=41.5)のホッパー口(設定温度:80℃)へ連続的に供給した。同時に2軸押出機のホッパー口にはジオクチルスズジラウレートを0.5g/分の速度にて供給した。
【0060】
これとは別に、前記2軸押出機のホッパー口の下流側に位置するスクリューバレル部に、30℃に調整したジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを12.4g/分の速度にて供給し(R値=0.95)、窒素雰囲気下で連続的に反応させた(設定温度:180℃)。2軸押出機出口から得られるストランドを冷却後、ペレタイザーによりペレット化してポリアルキレンオキシド変性物を得た。
【0061】
得られたポリアルキレンオキシド変性物の吸水能は20g/g、水溶出分は15%であった。
【0062】
実施例1
製造例1で得られたポリアルキレンオキシド変性物をφ30mm単軸押出機にて溶融(170℃)させ300mm幅のスリットから押出し、10℃の冷却水が循環しているドラム型チラーにて、押出されたポリアルキレンオキシド変性物の片面に離型紙、もう片面にポリプロピレン製スパンボンド不織布(目付け 15g/m
2)を通して、それらで挟み込みながら、ポリアルキレンオキシド変性物量が30g/m
2になるよう不織布に溶融コーティングした。得られた不織布シートの評価結果を表1に示す。なお、本例及び下記例において、ポリアルキレンオキシド変性物を溶融して押出したものをチラーにて不織布や離型紙とあわせているが、このときはまだポリアルキレンオキシド変性物は溶融しており、溶融コーティングがなされる。
【0063】
実施例2
製造例2で得られたポリアルキレンオキシド変性物をφ30mm単軸押出機にて溶融(170℃)させ300mm幅のスリットから押出し、10℃の冷却水が循環しているドラム型チラーにて、押出されたポリアルキレンオキシド変性物の片面に離型紙、もう片面にレーヨン不織布(目付け 25g/m
2)を通して、それらで挟み込みながら、ポリアルキレンオキシド変性物量が200g/m
2になるよう不織布に溶融コーティングした。得られた不織布シートの評価結果を表1に示す。
【0064】
実施例3
製造例1で得られたポリアルキレンオキシド変性物を5[kg/hr]、及び共重合ナイロン(エムスケミー・ジャパン株式会社製 グリルテックスD1500A)を15[kg/hr]の条件で、180℃に設定したφ30mmの2軸押出機にそれぞれ供給し溶融させ、300mm幅のスリットからこれらの混合物を押出し、10℃の冷却水が循環しているドラム型チラーにて、片面に離型紙、もう片面にポリプロピレン製スパンボンド不織布(目付け 15g/m
2)を通して、それらで挟み込みながら、当該混合物量が120g/m
2になるよう不織布に溶融コーティングした。得られた不織布シートの評価結果を表1に示す。
【0065】
実施例4
製造例1で得られたポリアルキレンオキシド変性物を5[kg/hr]、及びエチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)(住友化学株式会社製 エバテートD5021)を20[kg/hr]の条件で、180℃に設定したφ30mmの2軸押出機にそれぞれ供給し溶融させ、300mm幅のスリットからこれらの混合物を押出し、10℃の冷却水が循環しているドラム型チラーにて、片面に離型紙、もう片面にポリプロピレン製スパンボンド不織布(目付け 15g/m
2)を通して、それらで挟み込みながら、当該混合物量が300g/m
2になるよう不織布に溶融コーティングした。得られた不織布シートの評価結果を表1に示す。
【0066】
比較例1
製造例1で得られたポリアルキレンオキシド変性物をφ30mm単軸押出機にて溶融(170℃)させ300mm幅のスリットから押出し、10℃の冷却水が循環しているドラム型チラーにて、押出されたポリアルキレンオキシド変性物の片面に離型紙を通し、ポリアルキレンオキシド変性物量が10g/m
2のシート(離型紙とポリアルキレンオキシド変性物からなる)を製造した。当該シートの評価結果を表1に示す。
【0067】
比較例2
製造例1で得られたポリアルキレンオキシド変性物を10[kg/hr]、共重合ナイロン(エムスケミー・ジャパン株式会社製 グリルテックスD1500A)を10[kg/hr]の条件で、180℃に設定したφ30mmの2軸押出機にそれぞれ供給し溶融させ、300mm幅のスリットからこれらの混合物を押出し、10℃の冷却水が循環しているドラム型チラーにて、押出されたポリアルキレンオキシド変性物の片面に離型紙を通し、当該混合物量が20g/m
2のシート(離型紙並びにポリアルキレンオキシド変性物及び共重合ナイロンの混合物からなる)を製造した。当該シートの評価結果を表1に示す。
【0068】
比較例3
製造例1で得られたポリアルキレンオキシド変性物をφ30mm単軸押出機にて溶融(170℃)させ300mm幅のスリットから押出し、10℃の冷却水が循環しているドラム型チラーにて冷却して、厚み35μmのポリアルキレンオキシド変性物のみからなるシートを作製した。当該シートを各評価に供する際には、当該シート上にポリプロピレン製スパンボンド不織布(目付け 15g/m
2)を置き、周囲を5mm幅でヒートシールしたものを用いた。評価結果を表1に示す。
【0069】
比較例4
ポリプロピレン製スパンボンド不織布(目付け 13g/m
2)単独での評価結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示された結果から明らかなように、ポリアルキレンオキシド変性物又はポリアルキレンオキシド変性物と熱可塑性樹脂の混合物を不織布に溶融コーティングした不織布シート(さらには、これに例えば離型シートなどが積層されてなる積層シート)は、柔軟性、初期濡れ性、吸水時の拡散性に優れ、吸水時の表面の潤滑性に優れる。