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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-230195(P2015-230195A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/29 20060101AFI20151124BHJP
   C09K 11/62 20060101ALI20151124BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20151124BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   G01T1/29 A
   C09K11/62CQF
   G01T1/20 L
   G01T1/20 B
   C09K11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-115381(P2014-115381)
(22)【出願日】2014年6月4日
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】今村 伸
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 卓
(72)【発明者】
【氏名】土屋 朋信
(72)【発明者】
【氏名】川野 源
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
【テーマコード(参考)】
2G188
4H001
【Fターム(参考)】
2G188BB10
2G188BB13
2G188CC09
2G188CC12
2G188CC15
2G188CC18
2G188CC21
2G188CC22
2G188DD44
4H001XA07
4H001XA13
4H001XA31
4H001XA49
(57)【要約】
【課題】
本発明は、高加速で入射する電子に基づいて発生する蛍光を、損失を抑制しつつ、高効率に検出する荷電粒子線装置の提供を目的とする。
【解決手段】
上記目的を達成するために本発明によれば、荷電粒子ビームの照射に基づいて得られる荷電粒子を検出する検出器を備えた荷電粒子線装置であって、前記検出器は、基板(サファイヤ)と、当該基板上に形成され、GaInNを含む第1の層と、GaNを含む第2の層が複数、且つ交互に積層された発光層(GaInN量子井戸層)とを備え、前記基板の前記発光層に対向する面には、複数の突起が形成される荷電粒子線装置を提案する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子源から放出された荷電粒子ビームの照射に基づいて得られる荷電粒子を検出する検出器を備えた荷電粒子線装置において、
前記検出器は、基板と、当該基板上に形成され、Ga1−x−yAlxInyN(但し0≦x<1、0≦y<1)を含む材料により構成される発光層とを備え、前記基板の前記発光層に対向する面には、複数の突起が形成されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記突起は、前記複数の突起間のピッチが、10〜2000nmとなるように形成されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記突起は、高さが10〜20000nmとなるように形成されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記突起は、前記複数の突起間のピッチが、10〜2000nmとなるように形成されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1の層、及び前記第2の層は15nm以上の厚さを有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記発光層は、300nm以上の厚さを有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記発光層は、前記第1の層と前記第2の層からなる20層以上の積層層であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
荷電粒子ビームの照射個所から放出された荷電粒子、或いは当該荷電粒子が荷電粒子線装置内の他部材に衝突して発生した荷電粒子を検出するシンチレータを備えた荷電粒子検出器において、
前記シンチレータは、基板と、当該基板上に形成され、Ga1−x−yAlxInyN(但し0≦x<1、0≦y<1)を含む材料により構成される発光層とを備え、前記基板の前記発光層に対向する面には、複数の突起が形成されることを特徴とする荷電粒子検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に係り、特に、試料に対する荷電粒子ビームの照射に基づいて得られる荷電粒子を検出する検出器を備えた荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に電子ビーム等の荷電粒子ビームを照射することによって得られる荷電粒子を検出する荷電粒子線装置には、荷電粒子を検出するための検出器が備えられている。例えば電子ビームを試料に走査することによって、試料から放出された電子を検出する場合、電子検出器に10kV程度の正電圧を印加することによって、電子を検出器のシンチレータに導く。電子の衝突によってシンチレータにて発生した光はライトガイドに導かれ、光電管などの受光素子によって電気信号に変換され、画像信号や波形信号となる。
【0003】
特許文献1には、蛍光に対して透明な基板と、当該基板の一方の面に形成され、電子の入射により蛍光を発する量子井戸構造を有する窒化物半導体層を備えた検出器が開示されている。また、特許文献2には、有機EL素子の発光部に対向して配置される透明基板に複数の突起を設けることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−298603号公報(対応米国特許USP7,910,895)
【特許文献2】特開2011−222306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような検出器の発光素子によれば、電子の入射によって発生する光を比較的高い応答速度で検出することができる。一方、上述したように、検出対象となる電子は10keV程度に加速されているため、発行素子の入射面から相応の深さまで電子が侵入する。また、この侵入深さは一定ではなく拡がりを持っている。異なる深さに到達した電子によって蛍光が発生する場合、蛍光を取り出すための基板側からみると、種々の方向から基板に向かって蛍光が入射することになる。複数の方向から入射する蛍光を、損失を抑制しつつ、取り込むことは困難である。特許文献1には、基板に対して複数の方向から入射する蛍光を、損失を低減しつつ、取り込む構成については何等論じられていない。また、特許文献2にも、10keV程度の加速エネルギーを持って入射する電子が生じさせる蛍光を高効率に取り込む構成については何等論じられていない。
【0006】
以下に、高加速で入射する電子に基づいて発生する蛍光を、損失を抑制しつつ、高効率に検出することを目的とする荷電粒子線装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための一態様として、荷電粒子ビームの照射に基づいて得られる荷電粒子を検出する検出器を備えた荷電粒子線装置であって、前記検出器は、基板と、当該基板上に形成され、GaInNを含む第1の層と、GaNを含む第2の層が複数、且つ交互に積層された発光層とを備え、前記基板の前記発光層に対向する面には、複数の突起が形成される荷電粒子線装置を提案する。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、高加速で入射する電子に基づいて発生する蛍光を、損失を抑制しつつ、高効率に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】荷電粒子線装置の一例を示す図。
図2】シンチレータ構造の一例を示す図。
図3】シンチレータの発光スペクトル特性の一例を示す図。
図4】実施例1のシンチレータを示す図。
図5】実施例2のシンチレータを示す図。
図6】実施例3の荷電粒子線検出器を示す図。
図7】実施例1の特性を示す図。
図8】質量分析装置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する実施例では、荷電粒子線装置の一例として主に電子線を照射することによって得られる電子を検出する電子顕微鏡を例にとって説明する。電子顕微鏡は、電子ビームを走査、或いは投射することによって、試料から放出される電子、或いは放出された電子が、他部材に衝突することによって発生する電子を検出することによって、画像信号や波形信号を生成する装置である。例えば、走査電子顕微鏡は、電子ビームを試料に走査することによって、試料から放出される電子等を検出し、当該電子の検出量に応じた輝度信号を走査信号に同期させることによって、画像信号化、或いは波形信号化する装置である。このような装置に内蔵された検出器では、電子を検出するための素子として、電子の入射により発光するシンチレータと呼ばれる物質を用いる。電子の入射による発光を導くライトガイドを介し、光電管などの受光素子で電気信号に変換し、画像情報として表示する。
【0011】
近年、電子顕微鏡を用いた測定や検査には、更なる高精細化、低ノイズ化、スループット向上などが要求されている。このような要求に応えるためには、検出器による電子の検出時間の短縮化と、検出器の検出面の検出面積の小型化を行う必要がある。このような相反する要求を満たすためには、を向上させる必要がある。また、シンチレータの応答速度を早くすることが必要である。
【0012】
また、測長SEM(Critical Dimension−Scanning Electron Microscope:CD−SEM)のような高精度で対象物の寸法を計測する装置では、電子ビームの照射により試料がチャージアップすると、像がゆがみ測長精度が低下する場合がある。電子線のスキャン速度を早くし、1画面を表示するためにかかる時間を短くすることで、チャージアップを低減することができる。そのためには、さらに応答速度が早く、かつ高感度のシンチレータが必要である。
【0013】
一方、応答速度を速めるためには、発光層を厚くするように、発光層の多層化を行うことが望ましい。しかしながら、多層化によって厚くなった発光層の厚み方向の異なる位置で蛍光が発生することになり、結果として応答速度を高めることができる。しかしながら、このように異なる位置で蛍光が発生すると、同じ位置で蛍光が発生する場合と比較して、発光層と、発光層にて発生した蛍光を導くためのライトガイドとの間の界面で、界面反射する蛍光の量が増大する。これにより、発光の多くが発光層に閉じ込められる。
【0014】
発光層の多層化により信号量を増大させることができても、界面反射により十分に信号を取り出すことができなければ、信号量増大の効果は限定的なものとなる。また、界面反射を抑制するために、シンチレータと受光素子の間に、シンチレータより小さい屈折率を持つ樹脂や空気層を介在させることも考えられるが、種々の方向から入射する蛍光の界面反射を包括的に抑制することは難しく、更に挿入される膜質に応じて発光出力が変化するため、やはり積層化による信号量増大の効果は限定的なものとなる。
【0015】
以下に説明する実施例は、応答が高速なシンチレータの発光を外部に効率よく取り出し受光素子に入射させることにより、シンチレータの出力を大幅に増やし、優れた特性を実現した放射線検出器に関するものである。
【0016】
以下に説明する実施例では主に、検出器において、荷電粒子線入射により発光する発光部を有し、前記発光部はGa1-x-yAlxInyN(0≦x<1, 0≦y<1)を含む材料により構成され、さらに、前記発光部と基板部の間、もしくは基板部の表面の少なくとも一方(基板部の発光層に対向する側の面)に、連続的に形成された構造ピッチ10〜2000nmかつ構造高さ1〜20000nmの突起状構造が連続的に形成されている構成とする。また、荷電粒子検出器にそのような構成のシンチレータを用いる。
【0017】
また、前記発光部はGa1-x-yAlxInyN(0≦x<1, 0≦y<1)を含む材料による層(第1の層)、及びGaNによる層(第2の層)が交互に積層された構造により構成されており、交互に積層された各層の厚さは15nm以上であり、交互に積層された層の数は20層以上であり、交互に積層された層全体の厚さは300nm以上である構成とすることでさらに良好な効果が得られる。
【0018】
また、前記した、交互に積層されたGa1-x-yAlxInyN(0≦x<1, 0≦y<1)の各層におけるIn組成yが0.1以上である構成とすることでさらに良好な効果が得られる。
【0019】
また、前記発光部に、発光材料と屈折率の異なる基板が用いられていた場合、上記突起状構造が、前記発光部と基板部の間、及び基板部の表面の両者に形成されている場合にはさらに良好な効果が得られる。
【0020】
上記構成によれば、シンチレータにおいて、シンチレータからの光が出力される界面でシンチレータ内に閉じ込められる光を効率よく取り出すことができ、発光出力を大幅に増加することができる。かかる構成によれば、応答が高速なシンチレータよりの発光を、損失を少なく受光素子に入射できるため、高速応答かつ高感度な検出器とすることができ、そのため、チャージアップが少なく高精度な評価が可能な荷電粒子線装置を提供できる。
【0021】
以下、図面等を用いて、荷電粒子線装置、及び当該荷電粒子線装置に用いられる検出器の具体的構成について説明する。以下の説明は、主に検出器の一具体例を示すものであり、発明がこれらの実施形態に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
本実施例は、荷電粒子線を試料に照射し、試料から発生する二次電子や反射電子等の二次粒子を検出することで試料の画像を得る装置に関する。以下、電子顕微鏡、特に走査電子顕微鏡の例について説明するが、これに限られることなく、例えば電子線の代わりにイオンビームを用いた走査イオン顕微鏡などの装置においても適用可能である。また、走査電子顕微鏡を用いた半導体パターンの計測装置、検査装置、観察装置等にも適用可能である。
【0023】
本明細書でのシンチレータとは、荷電粒子線を入射して発光する素子を指すものとする。本明細書におけるシンチレータは、実施例に示されたものに限定されず、様々な形状や構造をとることができる。
【0024】
図1は、電子顕微鏡の基本となる構成である。電子源9よりの一次電子線12が試料8に照射され、二次電子や反射電子等の二次粒子14が放出される。この二次粒子14を引き込み、シンチレータSに入射させる。シンチレータSに二次粒子14が入射するとシンチレータSで発光が起こる。シンチレータSの発光は、ライトガイド11により導光され、受光素子7で電気信号に変換する。以下、シンチレータS、ライトガイド11、受光素子7を合わせて検出系と呼ぶこともある。
【0025】
受光素子7で得られた信号を電子線照射位置と対応付けて画像に変換し表示する。一次電子線12を試料に集束して照射するための電子光学系、すなわち偏向器やレンズ、絞り、対物レンズ等は図示を省略している。電子光学系は電子光学鏡筒10に設置されている。また、試料8は試料ステージに載置されることで移動可能な状態となっており、試料8と試料ステージは試料室13に配置される。試料室6は、一般的には電子線照射の時には真空状態に保たれている。また、電子顕微鏡には図示しないが全体および各部品の動作を制御する制御部や、画像を表示する表示部、ユーザが電子顕微鏡の動作指示を入力する入力部等が接続されている。
【0026】
この電子顕微鏡は構成の一つの例であり、シンチレータ、ライトガイド、受光素子を備えた電子顕微鏡であれば、本発明は他の構成でも適用が可能である。また、二次粒子7には、透過電子、走査透過電子等も含まれる。また、簡単のため、検出器は1つのみ示しているが、反射電子検出用検出器と二次電子検出用検出器を別々に設けてもよいし、方位角または仰角を弁別して検出するために複数の検出器を備えていてもよい。
【0027】
図1に例示する検出器のシンチレータSには、例えば10kV程度の正電圧が印加されており、二次粒子14は、接地電位の電極15との電位差によって生ずる電界によって、10keVに加速されて、シンチレータSに衝突する。シンチレータSの具体的な構成として、Ga1-x-yAlxInyN (但し0≦x<1、0≦y<1)で表される組成よりの発光を用いるシンチレータを用いた例を説明する。図2に構造の一例を示す。構造及び作製方法の例は、サファイア基板上にGaNバッファ層を成長させ、その上にGa1-x-yAlxInyNの層を、組成を変えて多数の層を成長させ、さらにその上にキャップ層としてGaNの層を成長させた構造が使用可能である。仕様の例としては、基板は2〜6インチφの円盤状もしくはこれから切り出した形状であり、バッファ層の厚さは1〜10μmの範囲の厚さであり、多層構造はGaInNとGaNが交互に6周期〜30周期の範囲で重なったものであり、その厚さは20nm〜500nmの範囲であり、キャップ層の厚さが10nm〜100nmの範囲のものなどが使用可能である。さらに、この構造上に、Alの薄膜を40〜80nmの厚さの範囲で蒸着により形成し、電子入射時の帯電防止としたものが使用可能である。
【0028】
放射線検出器における受光素子としては、シリコンフォトダイオードやGaAsPフォトダイオード、Geフォトダイオードを用いることができる。また、光電子増倍管を使用することができる。シンチレータ材により発光中心波長が異なるので、発光中心波長近傍で高感度な受光素子を選定することが良い。
【0029】
シンチレータ素子と受光素子の間は、樹脂等で密着させた構造が可能である。また、シンチレータの発光の少なくとも一部を透過する材料で作成したライトガイドを介して、受光素子に発光を導光する構造が可能である。ライトガイドの例としては、材質はアクリル樹脂や、石英ガラス等であり、形状は、長さが5〜20cmの範囲で、直径が10φ及び20φの円筒状のものであるものが使用可能である。
【実施例1】
【0030】
実施例1のシンチレータについて以下説明する。図4は実施例1のシンチレータSを示す模式図である。シンチレータ発光部1の材料はGaNを含む量子井戸層による発光素子を用いる。
【0031】
実施例1のシンチレータ発光部1の構造及び作製方法として、サファイア基板上にGaNバッファ層を成長させ、その上にGa1-x-yAlxInyN(但し0≦x<1、0≦y<1)の層を、組成を変えて多数の層を成長させ、さらにその上にキャップ層としてGaNの層を成長させた。
【0032】
サファイヤ基板は2インチφの円盤状であり、バッファ層の厚さは1〜10μmの範囲の厚さであり、多層構造はGaInNとGaNが交互に6周期〜30周期の範囲で重なったものであり、その厚さは20nm〜500nmの範囲であり、キャップ層の厚さが10nm〜100nmの範囲とした。さらに、この構造上に、Alの薄膜を40〜80nmの厚さの範囲で蒸着により形成し、電子入射時の帯電防止とした。これから所定のサイズに切り出したものをシンチレータとして用いた。実施例1での発光スペクトルの一例を図3に示す。
【0033】
シンチレータ発光部1表面、すなわち、上記サファイア基板表面に、構造ピッチ10〜1000nmかつ構造高さ10〜10000nmの突起状構造5が連続的に形成されている。ここでは、ピッチを300〜500nm、構造高さを300〜500nmとした。
【0034】
実施例1の原理を以下に記す。本発明のシンチレータ材料は屈折率が高く、GaNの屈折率は2.3程度である。また、サファイア基板の屈折率は1.8程度である。シンチレータを用いた検出器は、このような高屈折率の発光を効率的に取出し、受光素子に入射させる必要がある。通常、受光素子の表面は、ガラスや樹脂で覆われており、屈折率は一般的に1.5前後である。また、空気や真空の屈折率はほぼ1である。
【0035】
シンチレータの発光は、シンチレータ材料からガラス、樹脂、空気中、または真空中などに取り出され、受光素子に入射する。このとき、光は高い屈折率の材料からそれより低い屈折率の材料に取り出されるが、このような場合は、一定以上の角度の光では全反射が生じて取り出せない。例えば屈折率2.3のGaNから屈折率1.8のサファイア基板へ光を取り出す場合には、半分以上の光が全反射され取り出せない。また、屈折率1.8のサファイア基板から空気中に取り出す場合は、33°程度以上の角度でサファイア基板から空気中へ出ようとする光は、全て全反射となり取り出せない。これを全周で積分すると、取り出せずに全反射する光は全体の90%程度となり、ほとんどの光は取り出せずに内部に閉じ込められる。
【0036】
実施例1の所定のサイズで形成した突起状構造は、通常のシンチレータによる発光の波長には、連続的に屈折率が変化した層としての効果を持つ。そのため、急峻な屈折率を持つ界面がなくなり、反射を大幅に低減する。また、光を回折させ、角度を変化させる働きを持つ。そのため、全反射による光の閉じ込めを低減することができる。これらにより、サファイア基板へ取り出される光量が増加し、さらに空気中への光量も増加し、受光素子7への発光出力も増加する。
【0037】
上記効果のためには、構造を発光波長に対して適切なサイズとすることが必要である。本実施例では、シンチレータの発光は350nm〜1000nm程度の波長を想定している。検討により、この波長範囲では、図7に示す構造ピッチサイズの場合に、回折が生じた。さらに、斜線をかけた範囲での構造ピッチサイズでは、広い角度範囲で回折が生じ、良好な結果が得られた。すなわち、構造ピッチが10〜2000nmの範囲とした場合に、望ましい特性が得られる。
【0038】
また、構造高さは、回折効果が十分生じる高さであり、また、屈折率変化をなだらかにすることができる高さが必要である。検討により、このような高さは、ピッチの1/10以上の高さが必要である。また、ピッチの10倍以下であれば効果は十分である。これより、構造高さは、1〜20000nmの範囲であれば効果が大きい。
【0039】
このような構造の作製方法の例としては、シンチレータ表面に、適切な開口部を持つマスクを形成し、ドライエッチを行うことで作製が可能である。このようなマスクは、微小な突起を持つ金型による転写や、フォトリソグラフィーや、電子線描画などで作成が可能である。また、このような構造を持つ材料を、シンチレータ表面に接合することでも形成が可能である。作製方法は、前記したものに限らず、上記のような構造の形成が可能であれば、どのような方法を用いてもかまわない。
【0040】
実施例1における光出力の変化を調べた結果、従来例に比べ大幅な光出力の増加が示された。このシンチレータを有する検出器を用いた構成により、高速なスキャンが可能で、SN比が高い、高精度な荷電粒子線検出器を得た。
【実施例2】
【0041】
実施例2のシンチレータについて以下説明する。図5は、実施例2のシンチレータSの模式図である。シンチレータ発光部1の材料はGaNを含む量子井戸層による発光素子を用いる。
【0042】
シンチレータ発光部1が基板6上に形成されており、基板6の両側の表面に突起状構造5を形成している点が実施例1と異なる。製造方法や概略寸法は実施例1とほぼ同様である。
【0043】
図5において、シンチレータ発光部1が形成されている基板6の両側の表面に構造ピッチ10〜2000nmかつ構造高さ1〜20000nmの突起状構造5が連続的に形成されている。本実施例における構造の一例では、ピッチを300〜500nm、構造高さを300〜500nmとした。 実施例2のシンチレータ発光部1の構造及び作製方法として、サファイア基板上にGaNバッファ層を成長させ、その上にGa1-x-yAlxInyNの層を、組成を変えて多数の層を成長させ、さらにその上にキャップ層としてGaNの層を成長させた。
【0044】
サファイア基板は2インチφの円盤状であり、バッファ層の厚さは1〜10μmの範囲の厚さであり、多層構造はGaInNとGaNが交互に6周期〜30周期の範囲で重なったものであり、その厚さは20nm〜500nmの範囲であり、キャップ層の厚さが10nm〜100nmの範囲とした。さらに、この構造上に、Alの薄膜を40〜80nmの厚さの範囲で蒸着により形成し、電子入射時の帯電防止とした。これから所定のサイズに切り出したものをシンチレータとして用いた。
【0045】
実施例2の光出力の変化を調べた結果、実施例1と同様もしくはそれ以上に大幅な光出力の増加が示された。実施例2の原理を以下に記す。基板6に、本実施例の所定サイズで形成した突起状構造は、通常のシンチレータによる発光の波長には、連続的な屈折率変化層としての効果を持つ。そのため、急峻な屈折率を持つ界面がなくなり、反射を大幅に低減する。また、光を回折させ、角度を変化させる働きを持つ。そのため、実施例1のように、全反射による光の閉じ込めを低減することができる。
【0046】
シンチレータ発光部1は基板6の一つの面上に成長しており、基板6より高屈折率である。また、基板6に取り出された発光は、もう一方の面で、樹脂や、空気中や、真空中などの低屈折率の層へ取り出す。そのため、通常は、両方の面で、界面の反射及び全反射による光閉じ込めが生じる。実施例5では、両方の面に上記構造を形成することにより、両方の面での界面反射及び光閉じ込めを低減できる。これらにより、サファイア基板6へ取り出される光量が増加し、さらに低屈折率な層2へ取り出される光量も増加し、発光出力が大幅に増加する。
【0047】
このシンチレータを有する検出器を用いた構成により、高速なスキャンが可能で、SN比が高い、高精度な荷電粒子線検出器を得た。
【実施例3】
【0048】
実施例3のシンチレータSを有する検出器について以下説明する。図6は実施例3の荷電粒子線検出器Dを示す模式図である。シンチレータ発光部1の材料として、GaNを含む量子井戸層による発光素子を用い、かつ、基板6の両側の表面に突起状構造5を形成している点が実施例1と異なる。また、検出器Dにおいて、シンチレータSと受光素子7の接合を、ライトガイド11を介して行っている。
【0049】
実施例1のシンチレータの構造及び作製方法として、サファイア基板上にGaNバッファ層を成長させ、その上にGa1-x-yAlxInyN(但し0≦x<1、0≦y<1)の層を、組成を変えて多数の層を成長させ、さらにその上にキャップ層としてGaNの層を成長させた。基板は2インチφの円盤状であり、バッファ層の厚さは1〜10μmの範囲の厚さであり、多層構造はGaInNとGaNが交互に6周期〜30周期の範囲で重なったものであり、その厚さは20nm〜500nmの範囲であり、キャップ層の厚さが10nm〜100nmの範囲とした。さらに、この構造上に、Alの薄膜を40〜80nmの厚さの範囲で蒸着により形成し、電子入射時の帯電防止とした。これから所定のサイズに切り出したものをシンチレータとして用いた。
【0050】
図6では、シンチレータSと受光素子7を、ライトガイド11を介して接合している。ここで、ライトガイド11の材質は、ガラス、石英、もしくはアクリル等の樹脂を用いた。形状は、長さが5〜20cmの範囲で、直径が10φの円筒状のものを用いた。
【0051】
シンチレータ発光部が形成されている基板6の両側の表面に構造ピッチ10〜2000nmかつ構造高さ1〜20000nmの突起状構造5が連続的に形成されている。本実施例における構造の一例では、ピッチを300〜500nm、構造高さを300〜500nmとした。また、ライトガイド11の一端に直接シンチレータSを接合し、もう一端に受光素子7の受光部を接合し、放射線検出器Dを得た。
【0052】
実施例3における光出力の変化を調べた結果、実施例1と同様もしくはそれ以上に大幅な光出力の増加が示された。この検出器を用いた構成により、高速なスキャンが可能で、SN比が高い、高精度な荷電粒子線検出器を得た。
【0053】
図8は、上述の検出器の他の適用例を示す図であり、質量分析装置の一例を示す図である。質量分析装置はイオンを電磁気的作用により質量分離し、測定対象イオンの質量/電荷比を計測する。質量分離部には、QMS型、ion trap型、 時間飛行(TOF)型、FT−ICR型、Orbitrap型, それら複合型等があるが、本荷電粒子線装置は、質量分離部にて質量選択されたイオンを、コンバージョンダイノードと呼ばれる変換電極に衝突させ、荷電粒子に変換、発生した荷電粒子をシンチレータにて検出し、発光した光を検出することで信号出力を得る。
【符号の説明】
【0054】
1 シンチレータ発光部
2 低屈折率層
3 光散乱粒子
4 微小粒子(発光部表面)
5 突起状構造
6 基板
7 受光素子
8 試料
9 電子源
10 電子光学鏡筒
11 ライトガイド
12 一次電子線
13 試料室
14 二次粒子
S シンチレータ
D 荷電粒子線検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8