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特開2015-230293生体分子検出用試験キット、及びこれを用いた生体分子の検出方法、並びにこれらに用いられる生体分子検出用試験片及び生体分子検出用標識試薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-230293(P2015-230293A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】生体分子検出用試験キット、及びこれを用いた生体分子の検出方法、並びにこれらに用いられる生体分子検出用試験片及び生体分子検出用標識試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20151124BHJP
   G01N 33/552 20060101ALI20151124BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20151124BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   G01N33/543 525E
   G01N33/543 521
   G01N33/543 575
   G01N33/552
   G01N33/543 525C
   G01N33/53 M
   G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-117972(P2014-117972)
(22)【出願日】2014年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(74)【代理人】
【識別番号】100131288
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 尚祐
(72)【発明者】
【氏名】會澤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】三好 一富
(72)【発明者】
【氏名】大久保 典雄
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA04
2G043EA01
2G043GA08
2G043GB19
2G043JA03
2G043KA02
2G043KA09
2G043LA02
(57)【要約】
【課題】より高い感度及び精度での生体分子の検出に用いることができる、生体分子検出用の試験片と、蛍光シリカナノ粒子を有する生体分子検出用試験キットを提供する。
【解決手段】生体分子検出用の試験片と、蛍光シリカナノ粒子からなる生体分子検出用の標識試薬を有する生体分子検出用試験キットであって、前記試験片は生体分子を捕捉する試験領域を有し、生体分子に対する結合性を有する第1の捕捉物質が第1の連結物質を介して前記試験領域に導入され、生体分子に対する結合性を有する第2の捕捉物質が第2の連結物質を介して前記蛍光シリカナノ粒子の表面に導入され、前記第1の連結物質と前記第2の連結物質は溶液中で互いに吸着しない物質からなる、生体分子検出用試験キット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子検出用の試験片と、蛍光シリカナノ粒子からなる生体分子検出用の標識試薬を有する生体分子検出用試験キットであって、
前記試験片は生体分子を捕捉する試験領域を有し、
生体分子に対する結合性を有する第1の捕捉物質が、第1の連結物質を介して前記試験領域に導入され、
生体分子に対する結合性を有する第2の捕捉物質が、第2の連結物質を介して前記蛍光シリカナノ粒子の表面に導入され、
前記第1の連結物質と前記第2の連結物質は、溶液中で互いに吸着しない物質からなる、
生体分子検出用試験キット。
【請求項2】
前記第1の連結物質及び前記第2の連結物質のそれぞれが、ウシ血清アルブミン、スカシガイヘモシアニン、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の連結物質である、請求項1に記載の試験キット。
【請求項3】
前記第1の連結物質と前記第2の連結物質が同種の連結物質である、請求項1又は2に記載の試験キット。
【請求項4】
前記第1の捕捉物質及び前記第2の捕捉物質のそれぞれがオリゴヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の試験キット。
【請求項5】
前記蛍光シリカナノ粒子の平均粒径が60nm以上300nm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の試験キット。
【請求項6】
生体分子検出用試験キットを用いた生体分子の検出方法であって、
前記生体分子検出用試験キットは、生体分子検出用の試験片と、蛍光シリカナノ粒子からなる生体分子検出用の標識試薬を有し、
前記試験片は生体分子を捕捉する試験領域を有し、
生体分子に対する結合性を有する第1の捕捉物質が、第1の連結物質を介して前記試験領域に導入され、
生体分子に対する結合性を有する第2の捕捉物質が、第2の連結物質を介して前記蛍光シリカナノ粒子の表面に導入され、
前記第1の連結物質と前記第2の連結物質は、溶液中で互いに吸着しない物質からなり、
前記蛍光シリカナノ粒子の第2の捕捉物質に結合した生体分子と、前記試験領域の第1の捕捉物質との結合により生じる、前記蛍光シリカナノ粒子の発光を検出することで、生体分子を検出する、
生体分子の検出方法。
【請求項7】
前記第1の連結物質及び前記第2の連結物質のそれぞれが、ウシ血清アルブミン、スカシガイヘモシアニン、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の連結物質である、請求項6に記載の生体分子の検出方法。
【請求項8】
前記第1の連結物質と前記第2の連結物質が同種の連結物質である、請求項6又は7に記載の生体分子の検出方法。
【請求項9】
前記第1の捕捉物質及び前記第2の捕捉物質のそれぞれがオリゴヌクレオチドである、請求項6〜8のいずれか1項に記載の生体分子の検出方法。
【請求項10】
前記蛍光シリカナノ粒子の平均粒径が60nm以上300nm以下である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の生体分子の検出方法。
【請求項11】
前記試験キットが核酸検出用試験キットであり、
第1及び第2の捕捉物質がそれぞれオリゴヌクレオチドであり、
前記の各オリゴヌクレオチドの塩基配列に対して相補的な塩基配列のオリゴヌクレオチドを生体分子に予め導入する、
請求項6〜10のいずれか1項に記載の生体分子の検出方法。
【請求項12】
生体分子を捕捉する試験領域を有する生体分子検出用試験片であって、生体分子に対する結合性を有する捕捉物質が、ウシ血清アルブミン、スカシガイヘモシアニン、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の連結物質を介して前記試験領域に導入されている、生体分子検出用試験片。
【請求項13】
前記捕捉物質がオリゴヌクレオチドである、請求項12に記載の生体分子検出用試験片。
【請求項14】
蛍光シリカナノ粒子からなる生体分子検出用標識試薬であって、生体分子に対する結合性を有する捕捉物質が、ウシ血清アルブミン、スカシガイヘモシアニン、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の連結物質を介して前記蛍光シリカナノ粒子の表面に導入されている、生体分子検出用標識試薬。
【請求項15】
前記蛍光シリカナノ粒子の平均粒径が60nm以上300nm以下である、請求項14に記載の生体分子検出用標識試薬。
【請求項16】
前記捕捉物質がオリゴヌクレオチドである、請求項14又は15に記載の生体分子検出用標識試薬。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子検出用試験キット、及びこれを用いた生体分子の検出方法、並びにこれらに用いられる生体分子検出用試験片及び生体分子検出用標識試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
生体中の核酸や抗原などの生体分子を検出する手法として、生体分子を捕捉する捕捉物質を担体に固定化させた多孔質の試験片と、生体分子を捕捉する標識試薬を用いた検出法がある。この方法では、検体液に含まれる生体分子を標識粒子に捕捉させ、多孔質支持体を毛細管現象により移動させる。そして、多孔質支持体に例えばライン状に固定された捕捉物質と生体分子とを接触させることによって、前記生体分子を濃縮し、捕捉物質が固定されたラインを標識試薬により発色させる。この発色によって生体分子の有無を判定することができる。
かかる生体分子の検出法の特徴として下記の3点が挙げられる。
(1)判定までに要する時間が短く迅速な検査が可能である。
(2)検体を滴下するだけで測定でき操作が簡便である。
(3)特別な検出装置を必要とせず判定が容易である。
これらの特徴を利用して、前記の検出法は妊娠検査薬やインフルエンザ検査薬に用いられており、新たなPOCT(Point Of Care Testing)の手法として利用されている。また、食品検査においても、例えば食物アレルゲンの検査試薬等として広く利用され益々注目を集めている。
【0003】
これまでに、各種生体分子検出用試験キットが提案されている。
例えば、生体分子検出用試験キットに用いられる標識試薬としては、ラテックス粒子からなる標識試薬や、金コロイド粒子からなる標識試薬が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、核酸検出用試験キットの試験片として、生体分子に対する結合性を有するオリゴヌクレオチドが試験片の試験領域に固定化されている試験片が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−225381号公報
【特許文献2】特開2013−59319号公報
【特許文献3】国際公開第2009/034842号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に記載されている生体分子検出用試験キットに用いられている標識試薬は、ラテックス粒子や金コロイド粒子からなる。これらの粒子を用いた生体分子の検出感度は低く、十分なものとは言えなかった。そこで、高感度な生体分子の検出には、ラテックス粒子や金コロイド粒子などの着色粒子に代えて、蛍光粒子が用いられている。
【0006】
そこで、本発明は、より高い感度及び精度での生体分子の検出に用いることができる、生体分子検出用の試験片と、蛍光シリカナノ粒子を有する生体分子検出用試験キットを提供することを課題とする。
また、本発明は、より高い感度及び精度で生体分子を検出することができる、生体分子検出用試験キットを用いた生体分子の検出方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、より高い感度及び精度での生体分子の検出に用いることができる、生体分子検出用試験片、及び蛍光シリカナノ粒子からなる生体分子検出用標識試薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、生体分子に結合性を有する物質(以下、「第2の捕捉物質」ともいう)を特定の連結物質を介して蛍光シリカナノ粒子の表面に導入することで、蛍光シリカナノ粒子に対する捕捉物質の固定化の効率が向上することを見い出した。
また、生体分子検出用試験片において、生体分子に結合性を有する物質(以下、「第1の捕捉物質」ともいう)を、特定の連結物質を介して試験片の試験領域に導入することで、捕捉物質の試験領域への固定化の効率が向上することを見い出した。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0008】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決された。
(1)生体分子検出用の試験片と、蛍光シリカナノ粒子からなる生体分子検出用の標識試薬を有する生体分子検出用試験キットであって、
前記試験片は生体分子を捕捉する試験領域を有し、
生体分子に対する結合性を有する第1の捕捉物質が、第1の連結物質を介して前記試験領域に導入され、
生体分子に対する結合性を有する第2の捕捉物質が、第2の連結物質を介して前記蛍光シリカナノ粒子の表面に導入され、
前記第1の連結物質と前記第2の連結物質は、溶液中で互いに吸着しない物質からなる、
生体分子検出用試験キット。
(2)前記第1の連結物質及び前記第2の連結物質のそれぞれが、ウシ血清アルブミン(以下、「BSA」ともいう)、スカシガイヘモシアニン(以下、「KLH」ともいう)、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の連結物質である、前記(1)項に記載の試験キット。
(3)前記第1の連結物質と前記第2の連結物質が同種の連結物質である、前記(1)又は(2)項に記載の試験キット。
(4)前記第1の捕捉物質及び前記第2の捕捉物質のそれぞれがオリゴヌクレオチドである、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の試験キット。
(5)前記蛍光シリカナノ粒子の平均粒径が60nm以上300nm以下である、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の試験キット。
【0009】
(6)生体分子検出用試験キットを用いた生体分子の検出方法であって、
前記生体分子検出用試験キットは、生体分子検出用の試験片と、蛍光シリカナノ粒子からなる生体分子検出用の標識試薬を有し、
前記試験片は生体分子を捕捉する試験領域を有し、
生体分子に対する結合性を有する第1の捕捉物質が、第1の連結物質を介して前記試験領域に導入され、
生体分子に対する結合性を有する第2の捕捉物質が、第2の連結物質を介して前記蛍光シリカナノ粒子の表面に導入され、
前記第1の連結物質と前記第2の連結物質は、溶液中で互いに吸着しない物質からなり、
前記蛍光シリカナノ粒子の第2の捕捉物質に結合した生体分子と、前記試験領域の第1の捕捉物質との結合により生じる、前記蛍光シリカナノ粒子の発光を検出することで、生体分子を検出する、
生体分子の検出方法。
(7)前記第1の連結物質及び前記第2の連結物質のそれぞれが、BSA、KLH、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の連結物質である、前記(6)項に記載の生体分子の検出方法。
(8)前記第1の連結物質と前記第2の連結物質が同種の捕捉物質である、前記(6)又は(7)項に記載の生体分子の検出方法。
(9)前記第1の捕捉物質及び前記第2の捕捉物質のそれぞれがオリゴヌクレオチドである、前記(6)〜(8)のいずれか1項に記載の生体分子の検出方法。
(10)前記蛍光シリカナノ粒子の平均粒径が60nm以上300nm以下である、前記(6)〜(9)のいずれか1項に記載の生体分子の検出方法。
(11)前記試験キットが核酸検出用試験キットであり、
第1及び第2の捕捉物質がそれぞれオリゴヌクレオチドであり、
前記の各オリゴヌクレオチドの塩基配列に対して相補的な塩基配列のオリゴヌクレオチドを生体分子に予め導入する、
前記(6)〜(10)のいずれか1項に記載の生体分子の検出方法。
【0010】
(12)生体分子を捕捉する試験領域を有する生体分子検出用試験片であって、生体分子に対する結合性を有する捕捉物質が、BSA、KLH、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の連結物質を介して前記試験領域に導入されている、生体分子検出用試験片。
(13)前記捕捉物質がオリゴヌクレオチドである、前記(12)項に記載の生体分子検出用試験片。
【0011】
(14)蛍光シリカナノ粒子からなる生体分子検出用標識試薬であって、生体分子に対する結合性を有する捕捉物質が、BSA、KLH、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の連結物質を介して前記蛍光シリカナノ粒子の表面に導入されている、生体分子検出用標識試薬。
(15)前記蛍光シリカナノ粒子の平均粒径が60nm以上300nm以下である、前記(14)項に記載の生体分子検出用標識試薬。
(16)前記捕捉物質がオリゴヌクレオチドである、前記(14)又は(15)項に記載の生体分子検出用標識試薬。
【発明の効果】
【0012】
本発明の生体分子検出用試験キットは、より高い感度及び精度での生体分子の検出に用いることができる。
また、本発明の生体分子の検出方法は、より高い感度及び精度で生体分子を検出することができる。
さらに、本発明の生体分子検出用試験片及び、及び蛍光シリカナノ粒子からなる生体分子検出用標識試薬は、より高い感度及び精度での生体分子の検出に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の生体分子検出用試験片の好ましい実施形態を模式的に示す図あり、図1(a)が平面図であり、図1(b)が展開断面図である。
図2】本発明の生体分子検出用試験片の別の好ましい実施形態を模式的に示す図あり、図2(a)が平面図であり、図2(b)が展開断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において「物質」とは、化合物又は化学合成された分子の他、生体分子(タンパク質、ペプチド、核酸等)を包含する。これらは人工起源のものであっても、天然起源のものであってもよい。
また、本明細書において「結合」又は「連結」とは、複数のものが分離した状態から連続して一体となることを全般的に指し、共有結合やイオン結合、水素結合といった化学的な結合のほか、化学吸着や物理吸着、そのほか嵌合、螺合、咬合した物理的な連結状態等も含む意味である。ここで、「結合」又は「連結」とは、直接複数のものが結合しても、別のものを介して間接的に結合してもよい意味である。
さらに、本明細書において「検出」とは、定性的な検出や定量的な検出のみならず、その他の各種の測定や同定、分析、評価等を含む概念である。
【0015】
本発明の生体分子検出用試験キットは、生体分子検出用の試験片と、蛍光シリカナノ粒子を有する。そして、本発明の生体分子の検出方法は、当該生体分子検出用試験キットを用いて、生体分子の検出を行う。
以下、本発明の構成についてその好ましい実施形態を中心に詳述する。
【0016】
[生体分子]
本発明において、検出対象(標的物質)としての生体分子に特に制限はなく、抗原、抗体、核酸、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド、その他生体活性を有する化学物質等が挙げられる。これらのうち、本発明は核酸の検出に好適に用いることができる。
また、生体分子は、後述する第1の捕捉物質に対する結合性を有する部位と、後述する第2の捕捉物質に対する結合性を有する部位それぞれを有していることが好ましい。
【0017】
本発明において、生体分子を含有する試料としては特に制限はないが、臨床検体(例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、尿、唾液、膵液、胃液、喀痰、鼻や咽等の粘膜から採取したぬぐい液等の体液や便等)、食品検体(例えば、液体飲料、半固形食品、固形食品等)、環境サンプリング検体(例えば、土壌、河川、海水等の自然界のサンプル、工場内の生産ラインやクリーンルームに設置されたエアーサンプラーによるサンプリング検体、ふき取り検体等)等が挙げられる。
また、試料は液体であればそのまま用いることもできる。試料が半固形又は固形物等の場合には、希釈や抽出等の処理を施した後に用いることもできる。
【0018】
[生体分子検出用の試験片]
本発明の生体分子検出用試験キットに用いる試験片(以下、「テストストリップ」ともいう)の形状に特に制限はないが、平面状の試験片であることが好ましく、ラテラルフロー用の試験片であることがより好ましい。
また、試験片の構造に特に制限はないが、試料添加用部材(サンプルパッド)と、生体分子を捕捉する試験領域を有するメンブレンと、吸収パッドとが、この順でそれぞれ相互に毛細管現象が生じるように直列に連結している構造であることが好ましい。そして、各構成部材は粘着剤付きバッキングシートにより裏打ちされていることが好ましい。
以下、上記形状及び構造を有する試験片について、本発明の好ましい実施形態を図1及び2を参照しながら説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
【0019】
(サンプルパッド)
サンプルパッド2は生体分子、標識試薬、これらの複合体を含む試料を滴下する構成部材である。サンプルパッドの材料や寸法等は特に限定されず、この種の製品に適用される一般的なものを利用することができる。
【0020】
(メンブレン)
メンブレン3は、サンプルパッド2から毛細管現象により移動してきた生体分子を捕捉するための構成部材である。
図1に示すように、メンブレン3は、生体分子を捕捉する試験領域10を少なくとも1つ有する。そして、生体分子に対する特異的な結合性を有し生体分子と複合体を形成しうる第1の捕捉物質が、第1の連結物質を介して試験領域10に導入されている。第1の連結物質を介することで第1の捕捉物質の試験領域10への固定化の効率が向上し、生体分子の検出感度を向上させることができる。
この試験領域10で第1の捕捉物質−生体分子−標識試薬からなる複合体が形成され、標識試薬が濃縮される。そして、標識試薬が有する蛍光色素の量の程度により生体分子を定性的又は定量的に検出することができる。
複数の生体分子を検出する場合は、メンブレン3に複数の試験領域を設けてもよい。例えば図2に示すように、異なる2種の生体分子を検出するために、メンブレン3に第1の試験領域20と第2の試験領域21とをそれぞれ平行となるように設けてもよい。
前記試験領域の形状としては、局所的に第1の捕捉物質が固定化されている限り特に制限はなく、ライン状、円状、帯状等が挙げられる。本発明において試験領域はライン状であることが好ましく、幅0.5〜1.5mmのライン状であることがより好ましい。
【0021】
<第1の連結物質>
本発明で用いる第1の連結物質に特に制限はなく、適宜選択することができる。本発明で用いる第1の連結物質としては、第1の捕捉物質を連結するために、アミノ基、カルボキシル基、チオール基などの官能基を有し、メンブレンに物理的な吸着が可能な物質が好ましい。
また、第1の連結物質と、後述する第2の連結物質は、溶液中で互いに吸着しない物質からなる。ここで「溶液中で互いに吸着しない」とは、各連結物質が、使用される環境の濃度、温度で、凝集や会合を生じず、単分散した状態のことを指す。これらの連結物質が互いに吸着する物質からなると、生体分子がなくても後述する標識粒子が前記試験領域に捕捉されてしまう非特異吸着を起こし、偽陽性の原因になるからである。
第1の連結物質の具体例としては、BSA、KLH、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンが挙げられる。このうち、BSA及びKLHが好ましく、BSAがより好ましい。
【0022】
<第1の捕捉物質>
本発明で用いる第1の捕捉物質は、生体分子に対する特異的な結合性を有し、試験領域で第1の捕捉物質−生体分子−標識試薬からなる複合体を形成しうるものであれば特に制限はない。
第1の捕捉物質と生体分子の組み合わせの例としては、抗体とその抗原の組み合わせ、抗原とその抗体の組み合わせ、核酸(DNAやRNA等)とストリンジェントな条件で該核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの組み合わせ、受容体とそのリガンドの組み合わせ、リガンドとその受容体の組み合わせ、レクチンと糖鎖の組み合わせ、アプタマーと該アプタマーに特異的に結合する分子の組み合わせが挙げられる。
なお、本明細書において、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
前述のように、本発明は核酸の検出に好適に用いることができる。したがって、第1の捕捉物質はオリゴヌクレオチドであることが好ましい。
第1の捕捉物質と、後述する第2の捕捉物質としてそれぞれオリゴヌクレオチドを用い、2種以上のオリゴヌクレオチドを生体分子として検出する場合、図2に示すようにメンブレン上の異なる位置にヌクレオチドの種類に合わせて複数の試験領域を設け、各試験領域に固定した第1の捕捉物質と相補的な配列と、後述する第2の捕捉物質に相補的な配列の両方を検出対象となるヌクレオチドに予め導入することで、2種以上のヌクレオチドを検出できる。ここで2種以上のオリゴヌクレオチドを検出する場合、各オリゴヌクレオチドそれぞれに対して異なる第1の捕捉物質を選択すれば、第2の捕捉物質はヌクレオチドの種類が異なっても同じ塩基配列でよい。これにより、1種類の第2の捕捉物質を結合した標識試薬を用いて、2種類以上のオリゴヌクレオチドの検出が可能となる。なお、2種類以上のオリゴヌクレオチドを検出対象とする場合、検出対象となるオリゴヌクレオチドをポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」ともいう)により増幅しておくことが好ましい。
【0023】
第1の捕捉物質としてオリゴヌクレオチドを用いる場合、生体分子との結合性を考慮して適宜選択することができる。
第1の捕捉物質がオリゴヌクレオチドの場合、第1の捕捉物質としてのオリゴヌクレオチドの塩基配列は、20塩基長以上、50塩基長以下(好ましくは40塩基長以下、より好ましくは35塩基長以下)であることが好ましい。この範囲であると、第1の捕捉物質の生体分子に対する特異性を確保しつつ、好ましいハイブリダイゼーション効率を確保することができる。
また複数の配列を使用する場合、正規直交化配列を用いることが好ましい。正規直交化配列とは、核酸の塩基配列であって、その融解温度が均一であるもの、即ち融解温度が一定範囲内に揃うように設計された配列であって、核酸自身が分子内(intramolecular)で構造化して、相補的な配列とのハイブリッド形成を阻害することのない配列であり、尚且つこれに相補的な塩基配列以外とは安定したハイブリッドを形成しない塩基配列を意味する。1つの正規直交化配列群に含まれる配列は、所望の組み合わせ以外の配列間及び自己配列内において反応が生じ難いか、又は反応が生じない。また、正規直交化配列は、PCRにより増幅させると、たとえば上述のクロスハイブリダイズのような問題に影響されずに、当該正規直交化配列を有する核酸の初期量に応じた量の核酸が定量的に増幅される性質を有している。正規直交化配列については、H.Yoshida and A.Suyama,DIMACS,Vol.54,p.9-20(2000)及び国際公開第2004/092376号パンフレットに詳細が記載されている。これらの文献に記載の方法を参照して正規直交化配列を設計することができる。
【0024】
第1の連結物質を介して試験領域に第1の捕捉物質を導入する方法としては特に制限はなく、常法に従って導入することができる。例えば、静電的引力、ファンデルワールス力、疎水性相互作用等によって第1の連結物質と第1の捕捉物質との複合体を形成し、複合体を試験領域に塗布、滴下又は噴霧後、乾燥することにより、第1の連結物質を介して第1の捕捉物質を試験領域に導入することができる。あるいは、架橋剤や縮合剤の化学結合により第1の連結物質と第1の捕捉物質との複合体を形成し、複合体を試験領域に塗布、滴下又は噴霧後、乾燥することにより、第1の連結物質を介して第1の捕捉物質を試験領域に導入することができる。なお、第1の連結物質と第1の捕捉物質とが直接結合して複合体を形成してもよいし、他の物質を介して間接的に第1の連結物質と第1の捕捉物質とが結合して複合体を形成していてもよい。第1の連結物質と第1の捕捉物質との複合体の形成方法については、Nucleic Acids Research,vol.15,p.5275(1987);Nucleic Acids Research,vol.16,p.3671(1988)などを参考にすることができる。
本発明において、第1の連結物質としてBSAを用い、第1の捕捉物質としてオリゴヌクレオチドを用いる場合、オリゴヌクレオチドの末端にアミノ基、カルボキシル基、チオール基などの官能基を導入し、導入した官能基とBSAの官能基とを縮合反応で結合させることにより、BSAとオリゴヌクレオチドとの複合体を形成することができる。そして、複合体を試験領域に塗布し乾燥させると、メンブレンに存在する疎水部分にBSAに存在する疎水部分が物理的に吸着することにより、BSAを介してオリゴヌクレオチドが試験領域に導入される。なお、メンブレンに対するオリゴヌクレオチドの物理的吸着力がBSAに比べて非常に弱いため、BSAが優先的にメンブレンに固定される。
【0025】
試験領域における第1の連結物質の結合量に特に制限はなく、適宜設定することができる。例えば、試験領域1cm2当たりの第1の連結物質の結合量は、0.1μg以上100μg以下が好ましく、1μg以上20μg以下がより好ましい。
また、試験領域における第1の捕捉物質の導入量に特に制限なく、適宜設定することができる。例えば、第1の連結物質がオリゴヌクレオチドである場合、試験領域1cm2当たりのオリゴヌクレオチドの導入量は、0.01μg以上100μg以下が好ましく、0.1μg以上10μg以下がより好ましい。なお、第1の連結物質の結合量は、第1の連結物質と第1の捕捉物質の複合体のうち第1の連結物質の重量割合から算出することができる。また、第1の捕捉物質の結合量は、第1の連結物質と第1の捕捉物質の複合体のうち第1の捕捉物質の重量割合から算出することができる。
【0026】
(吸収パッド)
吸収パッド4は、毛細管現象でメンブレン3を移動してきた溶液を吸収し、一定の流れを生じさせるための構成部材である。
【0027】
これら各構成部材の材料としては特に制限は無く、生体分子検出用の試験片に通常用いられる部材が使用できる。例えば、サンプルパッド2としてはGlass Fiber Conjugate Pad(商品名、MILLIPORE社製)等のガラスファイバーのパッドを好ましく用いることができる。メンブレン3としてはHi-Flow Plus180メンブレン(商品名、MILLIPORE社製)等のニトロセルロースメンブレンを好ましく用いることができる。吸収パッド4としてはCellulose Fiber Sample Pad(商品名、MILLIPORE社製)等のセルロースメンブレンを好ましく用いることができる。
前記粘着剤付きバッキングシート5としては、AR9020(商品名、Adhesives Research社製)等が挙げられる。
【0028】
試験片の作製法としては、サンプルパッド2、メンブレン3、吸収パッド4の並び順に、各部材間で毛管現象を生じさせ易くするために、それら各部材の両端と隣接する部材と1〜5mm程度重ね合わせて(好ましくはバッキングシート5上に)貼付することで、テストストリップ1を作製することができる。
【0029】
[標識試薬]
本発明の生体分子検出用試験キットに含まれる標識試薬は、蛍光シリカナノ粒子からなる。蛍光シリカナノ粒子を用いることで、着色粒子よりも高感度で生体分子を検出することができる。
【0030】
本発明で用いる蛍光シリカナノ粒子の調製方法に特に制限はなく、任意のいかなる調製方法によって蛍光シリカナノ粒子を得ることができる。例えば、Journal of Colloid and Interface Science,159,p.150-157(1993)に記載のゾル−ゲル法や、国際公開第2007/074722号パンフレットに記載されたコロイドシリカ粒子の調製方法を参照することができる。
【0031】
具体的に、蛍光材料としての蛍光色素を用いた蛍光シリカナノ粒子の調製例について説明する。
蛍光色素を含有するシリカ粒子は、蛍光色素とシランカップリング剤とを反応させ、共有結合、イオン結合その他の化学的に結合若しくは吸着させて得られた生成物に1種又は2種以上のシラン化合物を縮重合させシロキサン結合を形成させることにより調製することができる。これによりオルガノシロキサン成分とシロキサン成分とがシロキサン結合してなるシリカ粒子が得られる。1例としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル基、マレイミド基、イソシアナート基、イソチオシアナート基、アルデヒド基、パラニトロフェニル基、ジエトキシメチル基、エポキシ基、シアノ基等の活性基を有する又は付加した蛍光色素と、それら活性基と対応して反応する置換基(例えば、アミノ基、水酸基、チオール基)を有するシランカップリング剤とを反応させ、共有結合させて得られた生成物に1又は2種以上のシラン化合物を縮重合させシロキサン結合を形成させることにより調製することができる。
【0032】
前記シランカップリング剤としてアミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、シラン化合物としてテトラエトキシシラン(TEOS)を用いた場合を下記に例示する。
【0033】
【化1】
【0034】
前記活性基を有する又は付加した前記蛍光色素の具体例として、5-(及び-6)-カルボキシテトラメチルローダミン-NHSエステル(商品名、emp Biotech GmbH社製)や、下記式でそれぞれ表されるDY550-NHSエステル又はDY630-NHSエステル(いずれも商品名、Dyomics GmbH社製)等のNHSエステル基を有する蛍光色素化合物を挙げることができる。
【0035】
【化2】
【0036】
前記置換基を有するシランカップリング剤の具体例として、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。中でも、APSが好ましい。
【0037】
縮重合させる前記シラン化合物としては特に制限はないが、TEOS、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、APS、3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、及び3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシランを挙げることができる。中でも、前記シリカ粒子内部のシロキサン成分を形成する観点からはTEOSが好ましく、前記シリカ粒子内部のオルガノシロキサン成分を形成する観点からはMPS又はAPSが好ましい。
【0038】
上述のように調製すると、球状、又は球状に近いシリカ粒子を調製することができる。ここで、「球状に近いシリカ粒子」とは、具体的には長軸と短軸の比が2以下の形状である。
【0039】
本発明で用いる蛍光シリカナノ粒子の平均粒径に特に制限はないが、20nm以上1000nm未満であることが好ましく、20nm以上600nm以下であることがより好ましく、60nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。粒径が小さすぎると、検出感度が低下し、粒径が大きすぎると、生体分子検出用の試験片に用いられる多孔質支持体(メンブレン)の目詰まりの原因となる。
本発明において、前記平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の画像から無作為に選択した100個の標識試薬シリカ粒子の合計の投影面積から蛍光シリカナノ粒子の占有面積を画像処理装置によって求め、この合計の占有面積を、選択した蛍光シリカナノ粒子の個数(100個)で割った値に相当する円の直径の平均値(平均円相当直径)を求めたものである。
なお、前記平均粒径は、一次粒子が凝集してなる二次粒子を含む概念の後述する「動的光散乱法による粒度」とは異なり、一次粒子のみからなる粒子の平均粒径である。
所望の平均粒径の蛍光シリカナノ粒子を得るためには、YM−10、YM−100(いずれも商品名、ミリポア社製)等の限外ろ過膜を用いて限外ろ過を行い、粒径が大きすぎたり小さすぎる粒子を除去するか、または適切な重力加速度で遠心分離を行い、上清または沈殿のみを回収することで可能である。
本発明で用いる蛍光シリカナノ粒子は粒状物質として単分散であることが好ましい。蛍光シリカナノ粒子の粒度分布の変動係数、いわゆるCV値に特に制限はないが、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。
【0040】
本明細書において、前記「動的光散乱法による粒度」とは、動的光散乱法により測定され、前記の平均粒径とは異なり、一次粒子だけでなく、一次粒子が凝集してなる二次粒子をも含めた概念であり、前記複合粒子の分散安定性を評価する指標となる。
動的光散乱法による粒度の測定装置としては、ゼータサイザーナノ(商品名;マルバーン社製)が挙げられる。この手法は、微粒子などの光散乱体による光散乱強度の時間変動を測定し、その自己相関関数から光散乱体のブラウン運動速度を計算し、その結果から光散乱体の粒度分布を導出するというものである。
【0041】
本発明で用いる蛍光シリカナノ粒子の表面には、第2の連結物質を介して、生体分子に対する結合性を有する第2の捕捉物質が導入されている。第2の連結物質を介して第2の捕捉物質を導入することで、第2の捕捉物質の蛍光シリカナノ粒子への固定化の効率が向上し、生体分子の検出感度を向上させることができる。
【0042】
<第2の連結物質>
本発明で用いる第2の連結物質に特に制限はなく、適宜選択することができる。本発明で用いる第2の連結物質としては、蛍光シリカナノ粒子と第2の捕捉物質とを連結するために、アミノ基、カルボキシル基、チオール基などの官能基を分子内に2個以上有する物質が好ましい。また前述したように、第1の連結物質と第2の連結物質は、溶液中で互いに吸着しない物質からなる。
第2の連結物質の具体例としては、BSA、KLH、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンが挙げられる。このうち、BSA及びKLHが好ましく、BSAがより好ましい。
また、前記第1の連結物質と第2の連結物質は同種の物質であることが好ましい。第1の連結物質と第2の連結物質として同種の連結物質を選択することで、これらの連結物質は溶液中で凝集せず好ましい分散状態が維持される。そのため、蛍光シリカナノ粒子に結合した第2の連結物質が試験領域に結合した第1の連結物質と非特異的に吸着して測定誤差を生じることを抑制することができる。その結果、蛍光強度のS/N比が向上し、より高感度かつ高精度の生体分子の検出が可能となる。
【0043】
<第2の捕捉物質>
本発明で用いる第2の捕捉物質は、生体分子に対する特異的な結合性を有し、前記試験領域で第1の捕捉物質−生体分子−標識試薬からなる複合体を形成しうるものであれば特に制限はない。
第2の捕捉物質と生体分子の組み合わせの例としては、抗体とその抗原の組み合わせ、抗原とその抗体の組み合わせ、核酸(DNAやRNA等)とストリンジェントな条件で該核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの組み合わせ、受容体とそのリガンドの組み合わせ、リガンドとその受容体の組み合わせ、レクチンと糖鎖の組み合わせ、アプタマーと該アプタマーに特異的に結合する分子の組み合わせが挙げられる。
前述のように、本発明は核酸の検出に好適に用いることができる。したがって、第2の捕捉物質はオリゴヌクレオチドであることが好ましい。
【0044】
第2の捕捉物質としてオリゴヌクレオチドを用いる場合、生体分子との結合性を考慮して適宜選択することができる。
第2の捕捉物質がオリゴヌクレオチドの場合、第2の捕捉物質としてのオリゴヌクレオチドの塩基配列は、20塩基長以上、50塩基長以下(好ましくは40塩基長以下、より好ましくは30塩基長以下)であることが好ましい。この範囲であると、第2の捕捉物質の生体分子に対する特異性を確保しつつ、好ましいハイブリダイゼーション効率を確保することができる。
また複数の配列を使用する場合、前述の正規直交化配列を用いることが好ましい。
【0045】
第2の連結物質を介して蛍光シリカナノ粒子の表面に第2の捕捉物質を導入する方法としては特に制限はなく、常法に従って導入することができる。例えば、静電的引力、ファンデルワールス力、疎水性相互作用等によって第2の連結物質を介して蛍光シリカナノ粒子の表面に第2の捕捉物質を導入させてもよい。あるいは、架橋剤や縮合剤の化学結合によって、第2の連結物質を介して蛍光シリカナノ粒子の表面に第2の捕捉物質を導入させてもよい。また、蛍光シリカナノ粒子の表面に導入する第2の捕捉物質を導入したときに蛍光シリカナノ粒子同士が凝集する場合は、予め交互吸着法によって蛍光シリカナノ粒子の表面に表面処理を施しておいてもよい。
【0046】
以下、第2の捕捉物質としてオリゴヌクレオチドを用い、第2の連結物質としてBSAを用いて本発明で用いる蛍光シリカナノ粒子を調製する方法について説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
【0047】
まず、反応性官能基を有するシランカップリング剤を加水分解し、加水分解されたシランカップリング剤と蛍光シリカナノ粒子の表面に存在するヒドロキシル基とを縮重合させ、反応性官能基を蛍光シリカナノ粒子の表面に導入する。
反応性官能基を有するシランカップリング剤の具体例としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、MPS、APS、3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソチオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、(-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
【0048】
反応性官能基としてはチオール基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン基、ビニル基、エポキシ基及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基が好ましく、チオール基がより好ましい。
反応性官能基がチオール基である場合は、蛍光シリカナノ粒子表面におけるチオール基の密度は0.002〜0.2個/nm2が好ましく、0.002〜0.1個/nm2がより好ましい。当該含色素シリカ粒子の表面に存在するチオール基の量Bは、DNTB(5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸))を試薬として用いて測定することができる。DNTBを用いたチオール基の定量法としては、例えば、Archives of Biochemistry and Biophysics, 82, 70(1959)の方法で行うことができる。具体的な方法の一例としては、リン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した10mMのDNTBの溶液20μLと、200mg/mLに調製したシリカ粒子コロイド2.5mLとを混合し、1時間後に412nmの吸光度を測定し、標準物質としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)を用いて作成した検量線から粒子表面に存在するチオール基量を定量することができる。
【0049】
蛍光シリカナノ粒子の表面に導入した反応性官能基と、これと化学結合を形成するリンカー分子とを反応させる。そして、リンカー分子とBSAとを結合させ、蛍光シリカナノ粒子とBSAとの複合体を形成する。
反応性官能基がチオール基である場合は、チオール基が導入された蛍光シリカナノ粒子と、マレイミド基及びカルボキシル基を有するリンカー分子とを非プロトン性溶媒中に共存させる。これにより、チオール基とマレイミド基との間でチオエーテル結合を形成させて、リンカー分子が結合した粒子を作製する。続いて、リンカー分子が結合した粒子と、カルボジイミドと、アミノ基を有するBSAとを水系溶媒中に共存させる。これにより、カルボジイミドにより活性エステル化されたリンカー分子のカルボキシル基と、BSAが有するアミノ基との間でアミド結合を形成させ、蛍光シリカナノ粒子とBSAとの複合体を形成する。
反応性官能基がアミノ基、カルボキシル基、ビニル基、エポキシ基、イソシアネート基である場合も、常法によりBSAと蛍光シリカナノ粒子との複合体を形成することができる。これらの方法は、例えば、特開2009−274923号公報、特開2009−162537号公報、特開2010−100542号公報等の記載を参照することができる。
【0050】
そして、蛍光シリカナノ粒子に結合するBSAと、第2の捕捉物質としてのオリゴヌクレオチドとを常法に従って結合させる。例えば、静電的引力、ファンデルワールス力、疎水性相互作用等によってBSAとオリゴヌクレオチドとを結合させることができる。あるいは、架橋剤や縮合剤の化学結合によりBSAとオリゴヌクレオチドとを結合させることができる。なお、BSAとオリゴヌクレオチドとが直接結合して複合体を形成してもよいし、他の物質を介して間接的にBSAとオリゴヌクレオチドとが結合して複合体を形成していてもよい。BSAとオリゴヌクレオチドとの結合方法については、Nucleic Acids Research,vol.15,p.5275(1987);Nucleic Acids Research,vol.16,p.3671(1988)などを参考にすることができる。
【0051】
蛍光シリカナノ粒子における第2の連結物質の結合量に特に制限なく、適宜設定することができる。例えば、蛍光シリカナノ粒子1g当たりの第2の連結物質の結合量は、1mg以上200mg以下が好ましく、10mg以上50mg以下が好ましい。なお、蛍光シリカナノ粒子における第2の連結物質の結合量は、通常のタンパク定量法により確認することができる。
また、蛍光シリカナノ粒子の表面における第2の捕捉物質の導入量に特に制限なく、適宜設定することができる。例えば、第2の連結物質がオリゴヌクレオチドである場合、蛍光シリカナノ粒子の表面1nm2当たりのオリゴヌクレオチドの導入量は、0.0001個以上0.1個以下が好ましく、0.001個以上0.05個以下が好ましい。なお、蛍光シリカナノ粒子の表面におけるオリゴヌクレオチドの導入量は、蛍光シリカナノ粒子に結合した第2の連結物質の量と、第2の連結物質とオリゴヌクレオチドとの複合体のうちオリゴヌクレオチドの重量割合から算出することができる。
【0052】
[生体分子の検出方法]
次に、上記構成の生体分子検出用の試験片と蛍光シリカナノ粒子からなる標識試薬を有する生体分子検出用試験キットを用いた生体分子の検出方法について、好ましい実施態様に基づいて説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
【0053】
まず、第1の捕捉物質に対する結合性を有する物質と、第2の捕捉物質に対する結合性を有する物質それぞれを、生体分子に予め付与する。生体分子が核酸であり、第1及び第2の捕捉物質がそれぞれオリゴヌクレオチドである場合、各オリゴヌクレオチドの塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、本明細書において「タグ配列」ともいう)を生体分子である核酸に付与することが好ましい。生体分子にタグ配列を付与する方法については特に制限はなく、特開2013−59319号公報、特開2013−59320号公報、特開2013−59321号公報などを参考とすることができる。
【0054】
つぎに、タグ配列が付与された生体分子を含有しうる液体試料と本発明の標識試薬との混合物を、本発明の試験片1のサンプルパッド2に滴下する。サンプルパッド2に滴下する液体試料の量は、試験片の構成に合わせて適宜調節することができる。
【0055】
そして、毛細管現象によりサンプルパッド2からメンブレン3に移動してきた生体分子と蛍光シリカナノ粒子との複合体が、試験片1の試験領域(テストライン)上に導入された第1の捕捉物質との結合により濃縮される。この濃縮された複合体の蛍光シリカナノ粒子に含まれる色素の蛍光を検出することで、生体分子を検出することができる。
【0056】
色素の蛍光の検出方法に特に制限はなく、目視で検出してもよいし、汎用の蛍光検出器を用いて検出してもよい。
汎用の蛍光検出器は、励起光源及びフィルタからなる。前記励起光源としては水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、レーザダイオード、発光ダイオードなどが挙げられる。前記フィルタは、励起光源から特定の波長の光のみを透過するフィルタであり、前記蛍光微粒子の蛍光波長、蛍光波長から適宜選択する。前記蛍光検出器は、蛍光を受光する光電子倍増管又はCCD検出器を備えていてもよい。これにより目視では確認できない強度ないしは波長の蛍光も検出でき、さらにはその蛍光強度を測定できる。
照射する励起光の波長は特に限定されないが、300nm以上が好ましく、400nm以上がより好ましく、500nm以上が特に好ましい。また、700nm以下が好ましく、600nm以下がより好ましく、550nm以下が特に好ましい。
蛍光の波長は350nm以上が好ましく、450nm以上がより好ましく、530nm以上が特に好ましい。また、800nm以下が好ましく、750nm以下がより好ましく、580nm以下が特に好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
(調製例1)第2の連結物質を介して第2の捕捉物質が導入された蛍光シリカナノ粒子の調製
(1)蛍光シリカナノ粒子の調製
蛍光分子であるカルボキシローダミン6Gを含有する蛍光シリカナノ粒子を以下の方法で調製した。
5-(及び-6)-カルボキシローダミン6G・スクシンイミジルエステル(商品名、emp Biotech GmbH社製)31mgをジメチルホルムアミド(DMF)10mLに溶解した。これにAPS(信越シリコーン社製)12μLを加え室温(23℃)で1時間反応を行い、5-(及び-6)-カルボキシローダミン6G−APS複合体(5mM)を得た。
【0059】
得られた5-(及び-6)-カルボキシローダミン6G−APS複合体の溶液600μLと、エタノール140mL、TEOS(信越シリコーン社製)6.5mL、蒸留水20mL及び28質量%アンモニア水15mLを混合し、室温で24時間反応を行った。
反応終了後18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿した粒子に蒸留水4mLを加え粒子を分散させ、再度18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行った。本洗浄操作をさらに2回繰り返し、分散液に含まれる未反応のTEOSやアンモニア等を除去した。その結果、平均粒径271nmの蛍光分子を含有する蛍光シリカナノ粒子1.65gを得た(収率約94%)。
【0060】
(2)蛍光分子を含有する蛍光シリカナノ粒子へのチオール基の導入
上記で得た蛍光分子を含有する蛍光シリカナノ粒子1gを水/エタノール=1/4の混合液150mLに分散させた。これにMPS(和光純薬社製)1.5mLを加えた。続いて28%アンモニア水20mLを加え、室温で4時間混合した。
【0061】
反応終了後18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿した蛍光シリカナノ粒子に蒸留水10mLを加え蛍光シリカナノ粒子を分散させ、再度18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行った。本洗浄操作をさらに2回繰り返し、分散液に含まれる未反応のMPSやアンモニア等を除去した。その結果、チオール基が導入された蛍光シリカナノ粒子(以下、「チオール基導入蛍光シリカナノ粒子A」と呼ぶ。)を得た。
得られたチオール基導入蛍光シリカナノ粒子A 500mgについて、DNTBを用いて導入されたチオール基の定量分析を行った。その結果、チオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aの粒子表面のチオール基の密度は、0.046個/nmであった。
【0062】
(3)チオール基を介した蛍光シリカナノ粒子とBSAとの結合
以下の方法により、チオール基を介して、前記チオール基導入蛍光シリカナノ粒子AとBSAとを結合させた。
チオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aの分散液(濃度25mg/mL、分散媒:蒸留水)80μLにDMF420μLを加え、15000×gの重力加速度で10分遠心分離した。上清を除去し、DMFを500μL加え遠心分離し、上清を除去した。再度DMF500μLを加えチオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aを分散させた。これにリンカー分子として3-マレイミド安息香酸1mgを加え30分混合した。このようにして、前記リンカー分子のマレイミド基とチオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aのチオール基との間でチオエーテル結合を形成させた。
【0063】
この反応液を15000×gの重力加速度で10分遠心分離した。上清を除去後、蒸留水88.6μLを加え粒子を分散させた。続いて、0.5M MES(2-モルホリノエタンスルホン酸)(pH6.0)100μL、50mg/mL NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)230.4μL、19.2mg/mL EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)75μLを加え混合した。これにBSA(10mg/mL、Sigma Aldrich社製)を6.0μL加え、60分間混合した。
15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。これに10mM KH2PO4(pH7.5)400μLを加え、粒子を分散させた。続いて15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。再度10mM KH2PO4(pH7.5)400μLを加え、粒子を分散させてコロイドを得た。
【0064】
得られたコロイド200μLをサンプルとして、チオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aに結合したBSAの定量を行った。BSAの定量には、PierceBCA Protein Assay Kit(商品名、Thermo Fisher Scientific社製)を用いた。
その結果、チオール基導入蛍光シリカナノ粒子A1gあたりのBSAの結合量は、14.6mgであった。
【0065】
(4)BSAを介した蛍光シリカナノ粒子とオリゴヌクレオチドとの結合
BSA定量後に残ったコロイド200μLを15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。これに10mM KH2PO4(pH7.5)500μLを加え、粒子を分散させた。分散液を15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。続いて蒸留水を74.6μL加え粒子を分散させた。さらに0.5M MES(pH6.0)100μL、50mg/mL NHS230.4μL、19.2mg/mL EDC75μLを加え、よく混合した。
これに合成時に3’末端にアミノ基を導入したアミノ基含有オリゴヌクレオチドプローブ(配列(A)、5'-CCGTGTCCACTCTAGAAAAACCT-3'、配列番号1、1mg/mL)20μLを加え、60分間混合した。このようにして、BSAの有するカルボキシル基とオリゴヌクレオチドの末端に導入したアミノ基との間で、縮合剤(EDC)によりアミド結合を形成した。
【0066】
15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を回収した。
回収した上清液を用いてアガロース電気泳動を行い、バンドの蛍光強度からオリゴヌクレオチドの密度を測定した。その結果、初期濃度からの減少分である2.8μgがシリカ粒子に結合したことが分かった。これをチオール基導入蛍光シリカナノ粒子A1nm2当たりで計算すると、蛍光シリカナノ粒子の表面1nm2当たりのオリゴヌクレオチドの結合量は、0.021個であった。
上清を回収した後の粒子の沈降物に10mM KH2PO4(pH7.5)400μLを加え、粒子を分散させた。続いて15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。続いてHEPES(2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethane sulfonic acid)(同仁化学研究所社製)緩衝液400μLを加え粒子を分散させて、BSAを介してオリゴヌクレオチドが結合した蛍光シリカナノ粒子のコロイドを得た。
【0067】
(調製例2)オリゴヌクレオチドが結合する金ナノ粒子の調製
金コロイド(平均粒径:40nm、田中貴金属社製)900μLに100μg/mLのBSA溶液100μLを加え、金ナノ粒子にBSAを吸着させた。なお、金コロイド粒子1gあたりのBSAの結合量は、73mgであった。
続いて上記コロイドを15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。これに、10mM KH2PO4(pH7.5)を500μL加え、粒子を分散させた。15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。続いて蒸留水74.6μLを加え粒子を分散させた。さらに0.5M MES(pH6.0)100μL、50mg/mL NHS 230.4μL、19.2mg/mL EDC 75μLを加えよく混合した。
これに合成時に3’末端にアミノ基を導入したアミノ基含有オリゴヌクレオチドプローブ(配列(A)、5'-CCGTGTCCACTCTAGAAAAACCT-3'、配列番号1、1mg/mL)20μLを加え、60分間混合した。
15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。これに10mM KH2PO4(pH7.5)400μLを加え、粒子を分散させた。続いて15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。続いてHEPES(同仁化学研究所社製)緩衝液400μLを加え粒子を分散させて、オリゴヌクレオチドが結合した金ナノ粒子のコロイドを得た。なお、オリゴヌクレオチドの導入量は、金コロイド粒子の表面1nm2当たり0.024個であった。
【0068】
(調製例3)オリゴヌクレオチドが連結物質を介さずに結合する蛍光シリカナノ粒子の調製
下記の方法により、調製例1で用いたチオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aにオリゴヌクレオチドを直接結合させた。
チオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aの分散液(濃度25mg/mL、分散媒:蒸留水)40μLにDMF460μLを加え、15000×gの重力加速度で10分遠心分離した。上清を除去し、DMFを500μL加え遠心分離し、上清を除去した。再度DMFを500μL加えチオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aを分散させた。これにリンカー分子として3-マレイミド安息香酸を1mg加え30分混合した。このようにして、前記リンカー分子のマレイミド基とチオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aのチオール基との間でチオエーテル結合を形成させた。
この反応液を15000×gの重力加速度で10分遠心分離した。上清を除去後、10mM KH2PO4(pH7.5)500μLを加え粒子を分散させ、15000×gの重力加速度で10分遠心分離し上清を除去した。続いて蒸留水74.6μLを加え粒子を分散させた。さらに0.5M MES(pH6.0)100μL、50mg/mL NHS 230.4μL、19.2mg/mL EDC75μLを加えよく混合した。
これに合成時に3’末端にアミノ基を導入したアミノ基含有オリゴヌクレオチドプローブ(配列(A)、5'-CCGTGTCCACTCTAGAAAAACCT-3'、配列番号1、1mg/mL)20μLを加え、60分間混合した。
15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。10mM KH2PO4(pH7.5)400μLを加え、粒子を分散させた。続いて15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。続いてHEPES(同仁化学研究所社製)緩衝液400μLを加え粒子を分散させて、オリゴヌクレオチドが直接結合した蛍光シリカナノ粒子のコロイドを得た。なお、オリゴヌクレオチドの導入量は、蛍光シリカナノ粒子の表面1nm2当たり0.013個であった。
【0069】
(調製例4)第1の連結物質を介して第1の捕捉物質を導入した生体分子検出用メンブレンの作製
(1)オリゴヌクレオチドとBSAとの結合
BSA(10mg/mL、Sigma Aldrich社製)200μLに、蒸留水294.6μL、合成時に3’末端にアミノ基を導入したアミノ基含有オリゴヌクレオチド(配列(B)、5'-TGTTCTCTGACCAATGAATCTGC-3'、配列番号2、1mg/mL、)50μL、0.5M MES(pH6.0)100μL、50mg/mL NHS 230.4μL、19.2mg/mL EDC 75μLを加え60分間混合した。オリゴヌクレオチドとBSAとの前記混合液についてアガロース電気泳動を行い、バンドの蛍光強度からBSAに未結合のオリゴヌクレオチドの濃度を測定し、初期濃度との差からBSAに結合したオリゴヌクレオチドの量を算出した。そして、混合液を限外濾過し、未反応のオリゴヌクレオチド、NHS、EDC等を除去した。このようにして、オリゴヌクレオチドが結合したBSAの溶液(1mg/mL、溶媒:50mMリン酸バッファー(pH7.0))を調製した。
同様に、合成時に3’末端にアミノ基を導入したアミノ基含有オリゴヌクレオチド(配列(C)、5'-TGGAACTGGGAACGCTTTAGATG-3'、配列番号3)が結合したBSAの溶液(1mg/mL、溶媒:50mMリン酸バッファー(pH7.0))を調製した。
【0070】
(2)オリゴヌクレオチドが結合したBSAのメンブレンへの固定化
メンブレン(丈25mm、商品名:Hi-Flow Plus180 メンブレン、MILLIPORE社製)3の端から約6mmの位置に、幅約1mmの第1の試験領域(テストライン)20として、配列2のオリゴヌクレオチドが結合したBSAを1mg/mL含有する溶液((50mMKH2PO4、pH7.0)+2%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。また、メンブレン3の端から約10mmの位置に、幅約1mmの第2の試験領域(テストライン)21として、配列3のオリゴヌクレオチドが結合したBSAを1mg/mL含有する溶液((50mMKH2PO4、pH7.0)+2%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。このようにして、メンブレン3の試験領域20及び21上にBSAを介して2種のオリゴヌクレオチドを固定化させた。
なお、試験領域1cm2当たりのBSAの結合量は、10.5μgであった。また、試験領域1cm2当たりのオリゴヌクレオチドの導入量は、それぞれ2.1μgであった。また、BSAとオリゴヌクレオチドの複合体は、ほぼ全て前記試験領域20及び21に固定させた。
【0071】
(調製例5)オリゴヌクレオチドを直接固定化した生体分子検出用メンブレンの作製
メンブレン3(丈25mm、商品名:Hi-Flow Plus180 メンブレン、MILLIPORE社製)の端から約6mmの位置に、幅約1mmの第1の試験領域(テストライン)20として、合成時に3’末端にアミノ基を導入したアミノ基含有オリゴヌクレオチド(配列(B)、5'-TGTTCTCTGACCAATGAATCTGC-3'、配列番号2)を1mg/mLで含有する溶液((50mMKH2PO4、pH7.0)+2%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。同様に端から約10mmの位置に、幅約1mmの第2の試験領域(テストライン)21として、合成時に3’末端にアミノ基を導入したアミノ基含有オリゴヌクレオチド(配列(C)、5'-TGGAACTGGGAACGCTTTAGATG-3'、配列番号3)を1mg/mLで含有する溶液((50mMKH2PO4、pH7.0)+2%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。その後UV照射装置で約400mJ/cm2の紫外線光を照射し、メンブレン3の試験領域20及び21上に2種のオリゴヌクレオチドを直接固定化させた。
なお、試験領域1cm2当たりのオリゴヌクレオチドの導入量は、それぞれ10.1μgであった。
【0072】
(調製例6)調製例4で作成した生体分子検出用メンブレンを用いた生体分子検出用テストストリップの作製
サンプルパッド(商品名:Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP)、MILLIPORE社製)2、調製例4で作成した生体分子検出用メンブレン3、及び吸収パッド(商品名:Cellulose Fiber Sample Pad(CFSP)、MILLIPORE社製)4の順で、バッキングシート(商品名:AR9020、Adhesives Research社製)5上で組み立てた。続いて、5mm幅、長さ60mmのストリップ状に切断し、生体分子検出用テストストリップ1を作製した。
【0073】
(調製例7)調製例5で作成した生体分子検出用メンブレンを用いた生体分子検出用テストストリップの作製
調製例4で作成した生体分子検出用メンブレンを調製例5で作成した生体分子検出用メンブレンに代えた以外は、調製例6と同様にして生体分子検出用テストストリップ1を作製した。
【0074】
(試験例)DNAの検出
ヒト由来のゲノムDNAを用い、下記プライマー(D)、(E)、(F)及び(G)を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。
ここでプライマー(D)及び(E)の構造は、前記シリカ粒子又は金粒子を標識したオリゴヌクレオチド(配列(A))と相補的な配列を有する部分と、プロピレン鎖からなる下記に示すスペーサーXと、ヒトゲノムの標的DNAの一部と相補的な配列を有する部分から構成される。
また、プライマー(F)の構造は、メンブレン3に第1の試験領域20として固定したオリゴヌクレオチド(配列(B))と相補的な配列を有する部分と、プロピレン鎖からなる下記に示すスペーサーXと、ヒトゲノムの標的DNAの一部と相補的な配列を有する部分から構成される。
また、プライマー(G)の構造は、メンブレン3に第2の試験領域21として固定したオリゴヌクレオチド(配列(C))と相補的な配列を有する部分と、プロピレン鎖からなる下記に示すスペーサーXと、ヒトゲノムの標的DNAの一部と相補的な配列を有する部分から構成される。
これらのプライマーは、通常のオリゴヌクレオチド合成法により作成した。なお、プロピレン鎖からなるスペーサー部分は、下記に示すスペーサーXを試薬として用いて、通常のオリゴヌクレオチド合成法により導入した。
【0075】
【化3】
【0076】
【化4】
【0077】
PCRは、下記の方法により行った。
サンプル増幅用試薬として、QIAGEN社のmultiplex PCR master mixを使用した。サーマルサイクラーとして、Applied Biosystems社のGeneAmp PCR System9700を使用した。まず、蒸留水4.0μL、2×multiplex PCR master mix 5.0μL、プライマー混合物(各500nM)0.5μL、ゲノムDNA(50ng/μL)0.5μLを混合し、10.0μLのサンプル液を調製した。次に、サンプル液をサーマルサイクルプレートに移し、サーマルサイクル反応(95℃で15分後;95℃で30秒、80℃で1秒、64℃で6分を40サイクル、その後10℃に下げる)を行った。そして、増幅したサンプルをQIAGEN社のMinElute PCR Purification Kitを用いて精製し、アガロース電気泳動により意図した長さで増幅していることを確認した。また、蛍光強度から増幅量を算出した。
【0078】
PCRで得られた反応液を展開液(エーエムアール社製)で希釈し、目的の増幅産物の総量の濃度を100μg/mL、10μg/mL、1μg/mLに調整した。
続いて希釈液及び増幅産物を含まない展開液それぞれ100μLに、調製例1〜3で調製した粒子液(2.5mg/mL)1μLを加え混合した。
【0079】
そして、表1に示すように粒子とテストストリップとを用いて試験1〜4を行い、DNAの検出を行った(各試験5回ずつ)。
調製例6又は7で作製したテストストリップのサンプルパッド部分に、前記標識試薬粒子を滴下した。15分後、試験1〜3については下記検出装置を用いて、第1の試験領域の発光強度及び第2の試験領域の蛍光強度を数値化した。試験4については、目視で試験領域の発光の有無を判定した。
その結果を表1に示す。
【0080】
<検出装置>
光源と光学フィルタと光電子倍増管(PMT)からなる検出ユニットを有し、該検出ユニットが、モーターによって一定速度で直線移動する機構を備え、PMTの受光強度を50μ秒ごとに記録する記録機構を備えた検出装置を作製した。なお、検出ユニットは、光源が532nmのレーザダイオードであり、レーザダイオードをサンプルに照射し、反射光を550nm以上の波長の光のみを透過する光学フィルタを透過させた後にPMTで受光する機構を有する。
【0081】
【表1】
【0082】
表1の結果から、第1の試験領域20、第2の試験領域21いずれについても、試験1では検体濃度が1μg/mLの場合、試験領域の発光強度が、展開液だけを滴下した場合(濃度:0μg/mL)の試験領域の発光強度よりも、有意に高かった。すなわち、本発明によれば、生体分子濃度が1μg/mLという低濃度であっても生体分子を検出でき、生体分子の検出感度が向上したことがわかる。
また、試験1では、第1の試験領域20、第2の試験領域21いずれについても、展開液のみを滴下した場合の試験領域の発光強度が、試験2及び3に比べて低かった。これは、第1及び第2の連結物質として同種の物質を選択し、連結物質を介して各捕捉物質を固定することにより、生体分子が結合していない蛍光シリカナノ粒子が試験領域に非特異的に吸着することを抑制することを示す。
さらに、検体濃度が0μg/mL、1μg/mL、10μg/mL、100μg/mLの間で、それぞれ発光強度に有意差があった。したがって、検体濃度を定量分析することが可能であることがわかる。
【0083】
試験2では、第1の試験領域20、第2の試験領域21いずれについても、検体濃度が10μg/mL以上であれば、展開液だけを滴下した場合との発光強度との明確な有意差が得られた。また、検体濃度が10μg/mLと100μg/mLとの間では、発光強度に明確な有意差が得られた。すなわち、試験2では検体濃度が10μg/mL以上であれば、検体を検出することが可能であり、濃度差も知ることができる。検体濃度が1μg/mLの場合は、展開液だけを滴下した場合の試験領域の発光強度に対して有意差がなかった。これは、連結物質を介さずに、オリゴヌクレオチドを直接試験領域に固定化したメンブレンを用いたためである。
【0084】
試験3では、第1の試験領域20、第2の試験領域21いずれについても、検体濃度が10μg/mL以上であれば、展開液だけを滴下した場合との発光強度との明確な有意差が得られた。また、検体濃度が1μg/mLと10μg/mLの間、及び10μg/mLと100μg/mLの間では、それぞれ発光強度に明確な有意差が得られた。すなわち、試験3では検体濃度が10μg/mL以上であれば、検体を検出し、定量分析することも可能である。さらに試験3では、検体濃度が1μg/mL程度しか存在しない場合と、10μg/mL以上存在する場合とを区別して、検体を検出し、定量分析することも可能である。一方、検体濃度が1μg/mLの場合の試験領域の発光強度は、展開液だけを滴下した場合の試験領域の発光強度に対して有意差がなかった。これは、連結物質を介さずにオリゴヌクレオチドが結合する蛍光シリカナノ粒子を用いたためである。
【0085】
試験4では、第1の試験領域20、第2の試験領域21いずれについても、検体濃度が100μg/mLの場合でないと検体を検出できなかった。この結果から、本発明で規定する蛍光シリカ粒子からなる標識試薬又は試験片を用いて生体分子を検出する手法は、金粒子にオリゴヌクレオチドが結合した標識試薬を用いて、かつオリゴヌクレオチドが直接固定されたメンブレンを用いる手法よりも生体分子の検出感度が高く効果的であるといえる。
【符号の説明】
【0086】
1 テストストリップ
2 サンプルパッド
3 メンブレン
4 吸収パッド
5 バッキングシート
10 試験領域
20 第1の試験領域
21 第2の試験領域
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]