【解決手段】本発明は、温度23℃で測定された引張弾性率が1GPa〜15GPaであり、かつ、厚さが2μm〜35μmである絶縁性基材の片面または両面に、熱伝導層を有する熱伝導シートであって、50%圧縮強度が1.0×10
温度23℃で測定された引張弾性率が1GPa〜15GPaであり、かつ、厚さが2μm〜35μmである絶縁性基材の片面または両面に、熱伝導層を有する熱伝導シートであって、50%圧縮強度が1.0×105Pa〜1.2×107Paであることを特徴とする熱伝導シート。
前記アクリル系重合体が、炭素原子数10個〜20個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する単量体成分を重合して得られたものである請求項5に記載の熱伝導シート。
前記炭素原子数10個〜20個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、前記単量体成分の全量に対して50質量%以上含まれる請求項6に記載の熱伝導シート。
電気回路の片面または両面と、金属基材またはグラファイトシートとが、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱伝導シートを介して固定されたものであることを特徴とする電子部材。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の熱伝導シートは、温度23℃で測定された引張弾性率が1GPa〜15GPaであり、かつ、厚さが2μm〜35μmである絶縁性基材の片面または両面に、熱伝導層を有する熱伝導シートであって、50%圧縮強度が1.0×10
5Pa〜1.2×10
7Paであることを特徴とするものである。
【0014】
前記熱伝導シートは、前記絶縁性基材の片面または両面に熱伝導層を有する。前記熱伝導層は、前記絶縁性基材に表面に直接積層されていてもよく、プライマー層等の他の層を介して積層されていてもよい。
【0015】
前記熱伝導シートとしては、被着体の粗面に対して速やかに追従可能なレベルの柔軟性を備え、その結果、優れた熱伝導性及び絶縁性を発現するうえで、その50%圧縮強度が1.0×10
5Pa〜1.2×10
7Paであるものを使用する。前記熱伝導シートとしては、5.0×10
5Pa〜1.1×10
7Paの50%圧縮強度を有するものを使用することが好ましく、5.0×10
5Pa〜5.0×10
6Paの50%圧縮強度を有するものを使用することがより好ましく、5.0×10
5Pa〜2.0×10
6Paの50%圧縮強度を有するものを使用することがさらに好ましい。前記50%圧縮強度は、前記絶縁性基材及び熱伝導層の厚さ等を適宜選択することによって調整することができる。なお、前記50%圧縮強度は、引張・圧縮試験機(株式会社エー・アンド・デイ、商品名:テンシロン万能試験機 RTG―1210)を用い、実施例に記載の方法と同様の方法で測定した値を指す。
【0016】
前記熱伝導シートを構成する絶縁性基材としては、温度23℃で測定された引張弾性率が1GPa〜15GPaであり、かつ、厚さが2μm〜35μmであるものを使用する。かかる絶縁性基材を使用することによって、被着体の粗面に対して追従可能なレベルの柔軟性を損なうことなく、優れた熱伝導性及び絶縁性を備えた熱伝導シートを得ることができる。
【0017】
なお、前記引張弾性率は、引張・圧縮試験機(株式会社エー・アンド・デイ、商品名:テンシロン万能試験機 RTG―1210)を用いて、23℃及び50%RHの環境で、JIS K7161に規定する方法により引っ張り弾性率を測定した(引張速度:1mm/min、試験片の形状:JIS K7127の試験片タイプ2)。
【0018】
前記絶縁性基材の引張弾性率は、被着体の粗面に対して追従可能なレベルの柔軟性と、優れた熱伝導性及び絶縁性とを両立した熱伝導シートを得るうえで1GPa〜15GPaの範囲であることが好ましい。
【0019】
また、前記絶縁性基材の厚さは、2μm〜35μmの範囲であることが好ましく、4μm〜20μmの範囲であることが、被着体の粗面に対して追従可能なレベルの柔軟性を損なうことなく、優れた熱伝導性及び絶縁性を備えた熱伝導シートを得るうえで好ましい。
【0020】
また、前記絶縁性基材としては、より一層優れた絶縁性を備えた熱伝導シートを得るうえで、絶縁破壊電圧1.5kV以上であるものを使用することが好ましく、絶縁破壊電圧3.0kV以上であるものを使用することがより好ましく、6.0kV以上であるものを使用することがさらに好ましい。
【0021】
前記絶縁性基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリアクリレート、セロファン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ナイロン、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアミド、芳香族ポリイミド等のポリイミド等を用いて形成されたフィルムまたはシートを使用することができる。なかでも、前記基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミドを用いて得られるフィルムまたはシートを使用することが、被着体の粗面に対して追従可能なレベルの柔軟性を損なうことなく、優れた熱伝導性及び絶縁性を備えた熱伝導シートを得るうえで好ましい。
【0022】
前記絶縁性基材としては、前記熱伝導層との密着性をより一層向上させることを目的として、易接着処理が施されたものを使用することが好ましい。易接着処理法としては、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理法、コロナ放電処理法、クロム酸処理法、火炎処理法、熱風処理法、オゾン処理、紫外線照射処理法などの表面の酸化処理法、ポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂等を含有するプライマーを塗布しプライマー層を形成する方法が挙げられる。
【0023】
前記易接着処理が施された絶縁性基材としては、具体的にはユニチカ株式会社製の「EMBLET SG」、帝人株式会社製の「テイジンテトロンフィルム」、東レ株式会社製の「ルミラー」、「ミクトロン」、東レ・デュポン株式会社製の「カプトン」、三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製の「T100E」等が挙げられる。
【0024】
次に、前記熱伝導シートを構成する熱伝導層について説明する。
【0025】
前記熱伝導層は、前記絶縁性基材の片面側または両面側に積層される。前記熱伝導層は、粘着性または接着性を有するものであることが好ましい。
【0026】
前記熱伝導層は、50%圧縮強度が1.0×10
5Pa〜1.2×10
7Paである熱伝導シートを得るうえで、20μm〜1000μmの厚さであることが好ましく、30μm〜600μmの厚さであることがより好ましく、50μm〜300μmの厚さであることがさらに好ましい。
【0027】
前記熱伝導層は、50%圧縮強度が1.0×10
5Pa〜1.2×10
7Paであって、被着体の粗面に対して追従可能なレベルの優れた柔軟性と、優れた熱伝導性及び絶縁性とを備えた熱伝導シートを得るうえで、重合体(A)を含む有機成分と、熱伝導性充填剤(B)を含む無機成分とを含有する層であることが好ましい。
【0028】
熱伝導性に優れた熱伝導シートを得るべく、前記熱伝導性充填剤(B)等の無機成分の使用量を増加させると、一般に、熱伝導層の50%圧縮強度は高くなり、その結果、良好な柔軟性を発現できない場合がある。本発明の熱伝導シートは、例えば前記熱伝導性充填剤(B)等の使用量を増加させた場合であっても、優れた熱伝導性と柔軟性とを両立することができる。
【0029】
前記熱伝導層は、前記重合体(A)及び熱伝導性充填剤(B)等を含有する組成物(C)を用いることによって形成することができる。
【0030】
前記重合体(A)としては、前記熱伝導性充填剤(B)を保持可能で、好ましくは粘着性または接着性を有するものを適宜選択し使用することができ、例えばアクリル重合体、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を使用することができる。なかでも、前記重合体(A)としては、アクリル重合体を使用することが好ましく、炭素原子数10個〜20個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する単量体成分を重合して得られるアクリル重合体を使用することが、50%圧縮強度が1.0×10
5Pa〜1.2×10
7Paであって、被着体の粗面に対して追従可能なレベルの優れた柔軟性と、優れた熱伝導性及び絶縁性とを備えた熱伝導シートを得るうえで好ましい。
【0031】
前記炭素原子数10個〜20個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素原子数10個〜15個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましく、具体的はトリデシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等を使用することができる。なかでも、炭素原子数10個〜20個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、トリデシル(メタ)アクリレートを使用することが、50%圧縮強度が1.0×10
5Pa〜1.2×10
7Paであって、被着体の粗面に対して追従可能なレベルの優れた柔軟性と、優れた熱伝導性及び絶縁性とを備えた熱伝導シートを得るうえで好ましい。
【0032】
前記炭素原子数10個〜20個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、前記単量体成分の合計に対して50質量%〜100質量%含まれることが好ましく、70質量%〜100質量%以上含まれることが好ましく、95質量%〜100質量%以上含まれることがさらに好ましく、99質量%〜100質量%含まれることが、50%圧縮強度が1.0×10
5Pa〜1.2×10
7Paであって、被着体の粗面に対して追従可能なレベルの優れた柔軟性と、優れた熱伝導性及び絶縁性とを有し、かつ120℃程度の非常に高い温度下で使用した場合であっても、経時的に硬く、かつ、脆くなることなく、被着体の粗面に追従可能なレベルの優れた柔軟性を維持可能な熱伝導シートを得るうえで好ましい。
【0033】
前記アクリル重合体の製造に使用可能な単量体成分としては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記炭素原子数10個〜20個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の、その他のビニル単量体を使用することができる。
【0034】
前記その他のビニル単量体としては、例えば酸基を有するビニル単量体が挙げられる。
【0035】
前記酸基を有するビニル単量体としては、例えばカルボキシル基を有するビニル単量体が挙げられ、具体的にはβ−カルボキシアルキル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性コハク酸(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性コハク酸(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等が挙げられる。
【0036】
前記酸基を有するビニル単量体の使用量は、前記アクリル重合体の製造に使用する単量体成分の合計質量に対して0質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、0質量%〜30質量%の範囲であることがより好ましく、0質量%〜1質量%の範囲であることがさらに好ましく、0質量%〜0.5質量%であることが、120℃程度の非常に高い温度下で使用した場合であっても、経時的に硬く、かつ、脆くなることなく、被着体の粗面に追従可能なレベルの優れた柔軟性を維持可能な熱伝導シートを得るうえでさらに好ましい。
【0037】
すなわち、前記アクリル重合体としては、酸価が10以下であるものを使用することが好ましく、5以下であるものを使用することがより好ましく、2以下であるものを使用することがさらに好ましく、1以下であるものを使用することが、120℃程度の非常に高い温度下で使用した場合であっても、経時的に硬く、かつ、脆くなることなく、被着体の粗面に追従可能なレベルの優れた柔軟性を維持するうえでさらに好ましい。
【0038】
また、本発明の熱伝導シートの厚さを比較的厚くする場合には、例えば架橋剤との架橋点としてカルボキシル基を有するアクリル重合体を使用することが、前記熱伝導シートの厚膜化と、優れた柔軟性と熱伝導性等とを両立するうえで好ましい。
【0039】
前記アクリル重合体の製造に使用可能なその他のビニル単量体としては、前記したもののほかに、例えば炭素原子数1個〜9個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0040】
前記炭素原子数1個〜9個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を1種または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0041】
前記アクリル重合体の製造に使用可能なその他のビニル単量体としては、前記したもののほかに、必要に応じて高極性ビニル単量体を使用することができる。
【0042】
前記高極性ビニル単量体としては、水酸基を有するビニル単量体、アミド基を有するビニル単量体等を1種または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0043】
前記高極性ビニル単量体に使用可能な前記水酸基を有するビニル単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等を使用できる。
【0044】
アミド基を有するビニル単量体としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等を使用することができる。
【0045】
前記高極性ビニル単量体としては、前記したもののほかに酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有モノマー、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の末端アルコキシ変性(メタ)アクリレート等のその他の高極性ビニル単量体を使用することができる。
【0046】
前記アクリル重合体は、前記した単量体成分を、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法で重合させることによって製造することができる。なかでも溶液重合法を採用することが、アクリル重合体の生産効率を向上するうえで好ましい。
【0047】
前記溶液重合法としては、例えば前記単量体成分と重合開始剤と、有機溶剤とを、好ましくは40℃〜90℃の温度下で混合、攪拌し、ラジカル重合させる方法が挙げられる。
【0048】
前記重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイルや過酸化ラウリロイルなどの過酸化物、アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾ系の熱重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系の光重合開始剤等を使用することができる。
【0049】
前記方法で得たアクリル重合体は、例えば溶液重合法で製造した場合であれば、有機溶剤に溶解または分散した状態であってもよい。
【0050】
前記方法で得たアクリル重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィのポリスチレン換算による重量平均分子量は、30万〜80万であることが、被着体の表面凹凸に追従可能なレベルのより一層優れた柔軟性と、適度な粘接着性とを備えた熱伝導シートを得るうえで好ましい。
【0051】
次に、前記熱伝導層に含まれる熱伝導性充填剤(B)等の無機成分について説明する。
【0052】
前記熱伝導性充填剤(B)としては、被着体の粗面に対して追従可能なレベルの優れた柔軟性を損なうことなく、優れた熱伝導性及び絶縁性を備えた熱伝導シートを得るうえで使用する。
【0053】
前記熱伝導性充填剤(B)としては、本発明の熱伝導シートに優れた熱伝導性を付与するうえで、熱伝導率が5W/m・K以上であるものを使用することが好ましく、10W/m・K以上のものを使用することがより好ましく、20W/m・K以上のものを使用することが特に好ましい。前記熱伝導性充填剤(B)としては、無機充填剤(b)を使用することが、熱伝導シートの熱伝導率を調整しやすいため好ましい。
【0054】
前記無機充填剤(b)としては、例えば水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、窒化ホウ素等の電気絶縁性の無機充填剤;金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、カーボン、グラファイト等の導電性の無機充填剤を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0055】
前記無機充填剤(b)としては、前記重合体(A)を含む熱伝導層中での分散性を高めるうえで、シランカップリング処理、ステアリン酸処理などの表面処理が施されたものを使用してもよい。
【0056】
なかでも、前記無機充填剤(b)としては、電気絶縁性の無機充填剤を使用することが、例えば電子機器の内部に使用した場合における熱放散の促進と、部品間のショート防止とを両立するうえで好ましく、具体的には、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛等を使用することがより好ましく、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素を使用することがさらに好ましい。
【0057】
前記無機充填剤(b)としては、前記したとおり各種表面処理の施されたものを使用できるが、前記熱伝導層の電気絶縁性を向上する上で前記無機充填剤の表面にNa
2Oをできるだけ有さないものを使用することが好ましい。
【0058】
具体的には、前記無機充填剤(b)としては、炎光光度計を用いて測定される可溶性Na
2Oの含有量が0.01質量%未満であるものを使用することが好ましく、0.008質量%以下であることがより好ましい。かかる無機充填剤を使用することによって、熱伝導シートの電気絶縁性を向上させることができる。
【0059】
なお、前記可溶性Na
2Oの含有量は、JIS H1901−1977に準拠する炎光光度計にて測定される値である。具体的には、予め質量(X0)を測定した無機充填剤を10質量%含む水分散液を調製する。次に、前記水分散液を80℃の温度で2時間湯せんして得た水分散液に溶解したNa
2Oの含有量(X1)を、炎光光度計を用いて測定する。
【0060】
前記可溶性Na
2Oの含有量は、[X1/X0]×100によって求めた値である。
【0061】
前記熱伝導性充填剤(B)の配合量は、前記熱伝導シートを構成する熱伝導層の体積に対して、40体積%〜90体積%であることが好ましく、50体積%〜90体積%であることがより好ましく、60体積%〜85体積%であることがさらに好ましく、65体積%〜80体積%であることが、被着体の粗面に対して追従可能なレベルの優れた柔軟性と、優れた熱伝導性及び絶縁性とを備えた熱伝導シートを得るうえで特に好ましい。
【0062】
前記熱伝導性充填剤(B)としては、アスペクト比が1以上2未満で定義される充填剤を使用することが好ましい。なお、アスペクト比とは、充填剤粒子の長軸と短軸の比率を表す。
【0063】
前記熱伝導性充填剤(B)としては、規則的な形状または不規則な形状のいずれのものを使用することができ、なかでも前記アスペクト比が1以上2未満の範囲のものを使用することが好ましい。
【0064】
前記形状としては、例えば多角形状、立方体状、楕円状、球状、針状、平板状、鱗片状が挙げられ、球状のものを使用することが、熱伝導性充填剤(B)を、前記熱伝導層へ高密度に充填でき、その結果、より一層優れた熱伝導性を付与できるため好ましい。
【0065】
また、前記熱伝導性充填剤(B)としては、より一層優れた熱伝導性を付与することを目的として、2種以上を併用することができる。前記熱伝導性充填剤(B)としては、前記球状の無機充填剤と、平板状または鱗片状の無機充填剤、又は前記球状の無機充填剤の粒径が異なるものとを組み合わせ併用することが、熱伝導層に前記熱伝導性充填剤(B)を高最密に充填することができ、その結果、より一層優れた熱伝導性を付与できるため好ましい。
【0066】
前記熱伝導性充填剤(B)としては、熱伝導シートを構成する熱伝導層の厚さや、熱伝導シートを追従させたい被着体の、表面凹凸の高低差に応じた平均粒子径を有するものを適時選択し使用することができる。
【0067】
前記熱伝導性充填剤(B)の平均粒子径としては、例えば粒子状の無機充填剤であれば、0.5μm〜100μmの範囲であることが好ましく、1μm〜80μmの範囲であることがより好ましく、2μm〜50μmの範囲であることがさらに好ましく、5μm〜30μmであることが特に好ましい。前記熱伝導性充填剤(B)は、前記熱伝導層の厚さよりも小さいことが、発熱部材や受熱部材との接着性を向上するうえで好ましい。
【0068】
なお、前記平均粒子径は、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−200」を用いて測定を行った値を指し、センサで検出した粒子による回折/散乱光の光強度分布のデータから粒度分布を計算し、測定される粒子径の値に相対粒子量(差分%)を掛けて、相対粒子量の合計(100%)で割って求めた値を指す。なお、平均粒子径は粒子の平均直径である。
【0069】
前記熱伝導層は、架橋剤を使用することによって架橋構造が形成されたものであってもよい。特に、前記熱伝導層の凝集力をより一層向上させるとともに、熱伝導シートを剥離紙等から剥離する際に、前記熱伝導シートの千切れ等を防止することが求められる場合に、好適に使用することができる。一方、被着体の表面凹凸に追従可能なレベルの柔軟性をより一層向上させる場合には、前記架橋剤を使用しないことが好ましい。
【0070】
前記架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤等を、前記重合体(A)が有する官能基に応じて適宜選択し使用することができる。
【0071】
前記架橋剤は、前記重合体(A)と架橋剤とが架橋反応した有機成分のゲル分率(具体的には、前記重合体(A)及び架橋剤以外の成分、例えば熱伝導性充填剤(B)等の無機成分を含まないもののゲル分率)が40質量%以下となる範囲で使用することが好ましく、20質量%以下となる範囲で使用することがより好ましく、10質量%以下となる範囲で使用することがさらに好ましく、1質量%〜0質量%となる範囲で使用することが、被着体の表面凹凸に追従可能なレベルの柔軟性をより一層向上させる上で特に好ましい。なお、ゲル分率は、本願明細書の実施例に記載した方法により算出した値を指す。
【0072】
前記熱伝導層の形成に使用できる前記組成物(C)としては、前記重合体(A)及び熱伝導性充填剤(B)の他に、必要に応じてその他の成分を含有するものを使用することができる。
【0073】
前記その他の成分としては、熱伝導層の発熱部材や受熱部材に対する接着性を向上することを目的として、粘着付与樹脂を使用することができる。
【0074】
前記粘着付与樹脂としては、公知の脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂などの石油樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、不均化ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、重合ロジンエステル樹脂、ロジンフェノール等のロジン系樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等を、単独または2種以上併用して使用することができる。
【0075】
一方、本発明の熱伝導シートにUL94V−0やVTM−0等の優れた難燃性が求められる場合には、前記粘着付与樹脂の使用量を低減させることが好ましい。
【0076】
前記熱伝導層の形成に使用する組成物(C)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記した成分の他に、沈降防止剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤、分散剤等の添加剤を適宜使用することができる。
【0077】
なかでも、前記組成物(C)は、150℃程度の非常に高い温度下で使用した場合であっても、経時的に脆く等ならず、比較的良好な柔軟性を維持するうえで、酸化防止剤を含有するものを使用することが好ましい。
【0078】
前記酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤(HALS)、リン系酸化防止剤、ヒドロキシアミン系酸化防止剤等を使用することができ、なかでもフェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤を使用することが好ましく、芳香族環式構造を有する酸化防止剤を使用することがより好ましい。
【0079】
前記酸化防止剤は、前記重合体(A)の全量に対して、0.1質量%〜10質量%の範囲で使用することが好ましく、1質量%〜10質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0080】
前記組成物(C)は、前記重合体(A)またはその溶媒との混合物と、前記熱伝導性充填剤(B)と、必要に応じてその他の成分とを混合することによって製造することができる。前記溶媒としては、組成物(C)の塗工作業性等を向上することを目的として、酢酸エチル、ヘキサン、メチルエチルケトン等を使用してもよい。
【0081】
前記組成物(C)は、具体的には、重合体(A)またはその溶媒溶液を製造した後、必要に応じて粘着付与樹脂や有機溶剤を供給し、次に、前記熱伝導性充填剤(B)やその他の成分を供給し混合することによって製造することができる。
【0082】
前記混合には、必要に応じてディゾルバー、バタフライミキサー、BDM2軸ミキサー、プラネタリーミキサー等を使用することができ、ディゾルバー、バタフライミキサーを使用することが好ましい。
【0083】
前記組成物(C)としては、30質量%〜90質量%の固形分のものを使用することが、組成物(C)の良好な塗工作業性を維持するうえで好ましい。
【0084】
本発明の熱伝導シートは、前記絶縁性基材の片面または両面に、ロールコーターやダイコーター等を用い、前記組成物(C)を塗布、乾燥した後、前記離型ライナーを除去することによって製造することができる。また、前記熱伝導シートは、離型ライナーの表面に前記組成物(C)を塗布し乾燥することによって熱伝導層を形成し、かかる熱伝導層を、前記絶縁性基材の片面または両面に転写し、前記離型ライナーを除去することによって製造することもできる。
【0085】
前記熱伝導シートを構成する熱伝導層が粘着または接着性を有する場合には、前記離型ライナーが積層された状態、または、それをロール状に巻き取りした状態で保管等されてもよい。
【0086】
前記組成物(C)として前記架橋剤を含有するものを使用した場合には、前記熱伝導シートを製造した後、15℃〜50℃程度の温度で48時間〜168時間程度養生することが好ましい。前記架橋剤を使用しない場合には、前記養生工程を経る必要はない。
【0087】
前記剥離ライナーとしては、例えばクラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;ポリエチレン、ポリプロピレン(OPP、CPP)、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム;前記紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙、前記紙にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものの片面もしくは両面に、シリコーン系樹脂等の剥離処理を施したもの等を用いることができる。
【0088】
前記方法で得られた熱伝導シートの総厚さは、被着体の表面の凹凸の高低差に応じて適宜選択することができるが、概ね1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。前記総厚さの下限としては、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。なお、前記熱伝導シートの総厚さは、前記剥離ライナーを含まない厚さを指す。
【0089】
また、前記熱伝導シートを構成する熱伝導層の厚さは、被着体の表面の凹凸の高低差に応じて適宜選択することができるが、概ね1000μm以下であることが好ましく、600μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。なお、前記粘着剤層の厚さを概ね150μm以上とする場合には、例えば基材または離型ライナーの表面に、前記組成物(C)を1回塗布し乾燥した後、その熱伝導層の表面に、再度、前記組成物(C)を塗布し乾燥する方法を採用することが好適である。
【0090】
前記組成物(C)を用いて形成された熱伝導層の、損失正接のピークを示す温度は、−40℃以上、−10℃以下であることが好ましい。当該範囲とすることで、熱伝導性充填剤(B)を多く配合しても熱伝導層の良好な流動性と凝集性とを両立しやすい。なお、損失正接のピーク温度は、0.1mm厚の熱伝導層を、5mm厚にまで重ねたものを試験片とし、レオメトリックス社製粘弾性試験機アレス2kSTDに直径7.9mmのパラレルプレートを装着し、前記試験片を挟み込み周波数1Hz、温度分散法で測定した値である。
【0091】
前記方法で得られた本発明の熱伝導シートは、各種発熱部材の放熱に使用することができる。なかでも、中央演算処理装置等の半導体素子、LEDのバックライト、バッテリー等や、それらを備えた電気回路等の発熱部材と、金属基材やグラファイトシート等のヒートシンク材である受熱部材とが積層した物品を製造する際に使用することができる。
【0092】
前記物品としては、例えば前記発熱部材と、前記受熱部材とが、前記熱伝導シートを介して積層されたものが挙げられ、具体的には前記半導体素子等が搭載された電気回路の片面または両面に、前記金属基材やグラファイトシート等の受熱部材とが、前記熱伝導シートを介して積層された電子部材が挙げられる。
【0093】
前記受熱部材としては、例えば金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、これらの合金等からなる基材を使用することができる。
【0094】
前記銅からなる基材としては、例えば圧延銅からなる基材、電解銅からなる基材が挙げられる。
【0095】
また、前記受熱部材としては、従来知られるグラファイトシートを使用することができる。
【実施例】
【0096】
以下に実施例及び比較例について具体的に説明をする。
【0097】
[実施例1]
[熱伝導層形成用の組成物(C−1)の調製]
冷却管、撹拌機、温度計、滴下漏斗を備え、窒素置換した反応容器に、トリデシルアクリレート100質量部を仕込み、撹拌下、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。その後、前記反応容器に、予め酢酸エチルに溶解して得た2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)溶液1質量部(固形分5質量%)を添加した。
【0098】
次に、前記反応容器内を攪拌した状態で75℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過することによって、固形分50質量%、重量平均分子量55万であるアクリル重合体溶液(a1)を得た。
【0099】
プラネタリーミキサーの容器に、DAW−20(電気化学工業株式会社、酸化アルミニウム、平均粒子径20μm、熱伝導率36W/m・K、Na
2Oの含有量0.008質量%、アスペクト比1)740質量部とIRGANOX 1010(フェノール系酸化防止剤)3質量部とを加えた。
【0100】
次に、前記反応容器に前記アクリル重合体溶液(a1)200質量部を加え、30分間撹拌し混合した。
【0101】
次に、前記反応容器に酢酸エチルを加え、内容物の固形分を80質量%に調整することによって、粘度4000mPa・sの熱伝導層形成用の組成物(C−1)を得た。
【0102】
[熱伝導シートの作製]
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面がシリコーン化合物で剥離処理された離型フィルムの表面に、前記組成物(C−1)を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが122μmになるように塗工し、85℃に設定した乾燥機内で5分間乾燥させることによって、前記離型フィルムの表面に熱伝導層を形成した。
【0103】
次に、ルミラー6AF53(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ6μm、引張弾性率4GPa、絶縁破壊電圧1.8kV)からなる基材の両側に、前記熱伝導層をラミネートし、前記離型フィルムを除去することによって、厚さ250μmの熱伝導シートを得た。前記熱伝導層に含まれる熱伝導性充填剤の含有量は、前記熱伝導層に対して65体積%であった。また、前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、9.5×10
5Paであった。
【0104】
[実施例2]
DAW−20(電気化学工業株式会社、酸化アルミニウム、平均粒子径20μm、熱伝導率36W/m・K、Na
2Oの含有量0.008質量%、アスペクト比1)の使用量を740質量部から1000質量部に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で組成物(C−2)を得た。また、前記組成物(C−1)の代わりに前記組成物(C−2)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導層に含まれる熱伝導性充填剤の含有量は、前記熱伝導層に対して72体積%であった。また、前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、6.5×10
6Paであった。
【0105】
[実施例3]
DAW−20(電気化学工業株式会社、酸化アルミニウム、平均粒子径20μm、熱伝導率36W/m・K、Na
2Oの含有量0.008質量%、アスペクト比1)の使用量を740質量部から1600質量部に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で組成物(C−3)を得た。また、前記組成物(C−1)の代わりに前記組成物(C−3)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導層に含まれる熱伝導性充填剤の含有量は、前記熱伝導層に対して80体積%であった。また、前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、9.0×10
6Paであった。
【0106】
[実施例4]
前記組成物(C−1)を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが119μmになるように塗工すること、及び、基材としてルミラー6AF53(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ6μm)の代わりに、ルミラーS#12(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ12μm、引張弾性率4GPa、絶縁破壊電圧3.3kV)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、1.3×10
6Paであった。
【0107】
[実施例5]
前記組成物(C−1)の代わりに前記組成物(C−2)を使用すること以外は、実施例4と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導層に含まれる熱伝導性充填剤の含有量は、前記熱伝導層に対して72体積%であった。また、前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、7.2×10
6Paであった。
【0108】
[実施例6]
前記組成物(C−1)を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが112.5μmになるように塗工すること、及び、基材として、ルミラー6AF53(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ25μm)の代わりに、ルミラーS#25(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ25μm、引張弾性率4GPa、絶縁破壊電圧7.4kV)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、1.4×10
6Paであった。
【0109】
[実施例7]
前記組成物(C−1)の代わりに前記組成物(C−2)を使用すること以外は、実施例6と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導層に含まれる熱伝導性充填剤の含有量は、前記熱伝導層に対して72体積%であった。また、前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、8.4×10
6Paであった。
【0110】
[実施例8]
前記組成物(C−2)を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが110μmになるように塗工すること、及び、基材として、ルミラー6AF53(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ6μm)の代わりに、ルミラーZV#30(東レ株式会社製、ポリイミドコートポリエチレンテレフタレート、厚さ30μm、引張弾性率4.2GPa、絶縁破壊電圧9kV)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、7.8×10
6Paであった。
【0111】
[実施例9]
前記組成物(C−2)を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが119μmになるように塗工すること、及び、基材として、ルミラー6AF53(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ6μm)の代わりに、カプトン50V(東レ・デュポン株式会社製、ポリイミド、厚さ12.5μm、引張弾性率3.5GPa、絶縁破壊電圧4.4kV)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、6.3×10
6Paであった。
【0112】
[実施例10]
前記組成物(C−2)を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが119μmになるように塗工すること、及び、基材として、ルミラー6AF53(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ6μm)の代わりに、ミクトロン#12(東レ株式会社製、ポリイミド、厚さ12μm、引張弾性率10GPa、絶縁破壊電圧3.3kV)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、7.9×10
6Paであった。
【0113】
[実施例11]
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート96.4質量部と、β−カルボキシエチルアクリレート2.4質量部と、アクリル酸1.2質量部と、酢酸エチル98質量部とを仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。その後、前記反応容器に、予め酢酸エチルにて溶解したアゾビスイソブチロニトリル溶液2質量部(固形分5質量%)を添加した。
【0114】
次に、前記反応容器内を攪拌した状態で75℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過することによって、固形分50質量%、重量平均分子量50万であるアクリル重合体溶液(a’1)を得た。
【0115】
プラネタリーミキサーの容器に、DAW−20(電気化学工業株式会社、酸化アルミニウム)740質量部を加えた。次に、前記反応容器に前記アクリル重合体溶液(a’1)200質量部を加え、30分間撹拌し混合した。
【0116】
次に、前記反応容器に酢酸エチルを加え、内容物の固形分を80質量%に調整することによって、粘度4300mPa・sの熱伝導層形成用の組成物(C−4)を得た。
【0117】
前記組成物(C−1)の代わりに前記組成物(C−4)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導層に含まれる熱伝導性充填剤は65体積%であった。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、5.3×10
6Paであった。
【0118】
[実施例12]
前記組成物(C−4)を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが119μmになるように塗工すること、及び、基材として、ルミラー6AF53(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ6μm)の代わりに、ルミラーS#12(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ12μm、引張弾性率4GPa、絶縁破壊電圧3.3kV)を使用すること以外は、実施例11と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、6.5×10
6Paであった。
【0119】
[比較例1]
前記組成物(C−1)を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが100μmになるように塗工すること、及び、基材として、ルミラー6AF53(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ6μm)の代わりに、ルミラーS#50(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ50μm、引張弾性率4GPa、絶縁破壊電圧3.3kV)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、1.6×10
6Paであった。
【0120】
[比較例2]
前記組成物(C−1)の代わりに前記組成物(C−2)を使用すること以外は、比較例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導層に含まれる充填剤は72体積%であった。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、9.9×10
6Paであった。
【0121】
[比較例3]
前記組成物(C−1)を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが116μmになるように塗工し、さらに基材として、ルミラー6AF53(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ6μm)の代わりに、HA18(JX日鉱日石金属株式会社製、圧延銅箔、厚さ18μm、引張弾性率110GPa、導電性)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、5.2×10
6Paであった。
【0122】
[比較例4]
前記組成物(C−1)を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが118μmになるように塗工し、さらに基材として、ルミラー6AF53(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ6μm)の代わりに、軟質アルミニウム基材(株式会社UACJ、厚さ15μm、引張弾性率68GPa、導電性)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、5.8×10
6Paであった。
【0123】
[比較例5]
DAW−20(電気化学工業株式会社、酸化アルミニウム)の使用量を740質量部から1600質量部に変更すること以外は、実施例11と同様の方法で組成物(C−5)を得た。また、前記組成物(C−4)の代わりに前記組成物(C−5)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。前記熱伝導層に含まれる充填剤は80体積%であった。また、前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、1.5×10
7Paであった。
【0124】
[比較例6]
[粘着剤(I)の調製]
前記組成物(C−4)に対して、さらに架橋剤バーノックNC40(DIC社製のイソシアネート系架橋剤、固形分40質量%)2.6質量部加えること以外は、実施例11と同様の方法で組成物(C−6)を得た。
【0125】
前記組成物(C−1)の代わりに前記組成物(C−6)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シート作製し、さらに前記熱伝導シートを40℃環境下で72時間養生した。前記熱伝導層に含まれる熱伝導性充填剤は65体積%であった。前記熱伝導シートの50%圧縮強度は、1.4×10
7Paであった。
【0126】
[熱伝導シートの総厚さの測定方法]
熱伝導シートの総厚さは、テスター産業株式会社製厚さ計「TH−102」を用いて測定した。
【0127】
[熱伝導シートを構成する熱伝導層のゲル分率の測定方法]
実施例及び比較例で得た熱伝導シートを40mm×50mmに切断したものを試験サンプルとし、その質量(G0)を測定した。
【0128】
次に、前記試験サンプルを構成する基材及び熱伝導性充填剤の合計質量(G1)を、前記試験サンプルの製造に使用した熱伝導層形成用の組成物の組成及びその使用量に基づいて算出した。前記質量の差(G0−G1)を、前記試験サンプルを構成する熱伝導層に含まれる有機成分の初期質量(G2)とした。
【0129】
次に、前記試験サンプルを常温下でトルエンに浸漬し24時間静置した。
【0130】
前記浸漬後の残存物(不溶解分)を、乾燥機を使い105℃で1時間乾燥させ、室温で冷却した後、その質量(G3)を測定した。前記質量(G3)と、前記質量(G1)との差[G3−G1]を、トルエン浸漬後に残存した粘着剤層の質量(G4)とした。
【0131】
式〔(G4/G2)×100〕に基づいて算出した値を、熱伝導シートを構成する熱伝導層に含まれる有機成分のゲル分率とした。
【0132】
[熱伝導シートの熱伝導率の測定方法]
上記実施例及び比較例にて得られた熱伝導シートを空気巻き込みのないように2枚貼り重ね、その最外面に、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼合し、縦5cm及び横(幅)15cmの長方形に裁断したものを試験片とした。
【0133】
前記試験片の熱伝導率を、京都電子工業株式会社製の熱伝導率測定機QTM−500と、薄膜法測定用ソフトQTM−5Wを使用し測定した。
【0134】
[熱伝導シートの50%圧縮強度の測定方法]
実施例及び比較例で得られた熱伝導シートを25mm角に切断したものを試験サンプルとした。
【0135】
前記試験サンプルを、それより大きな面積のステンレス板の上に載せ、測定装置であるテンシロンRTG−1210(株式会社エー・アンド・デイ製)に取り付けた直径7mmφの円柱を、23℃及び50%RHの環境下で、10mm/分の速度で、前記試験サンプルの表面から125μm(もとの厚さの50%分)圧縮した時の強度を測定した。
【0136】
[熱伝導シートの絶縁破壊電圧の測定方法]
実施例及び比較例で得られた熱伝導シートを100mm角に切断して得た熱伝導シートの一方の面に、厚さ100μmのアルミニウム箔を貼り合せしたものを試験サンプルとした。耐電圧試験機(株式会社小島電機製作所製)を用いて、前記試験サンプルに1kV/秒の速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。前記試験サンプルが破壊した電圧を絶縁破壊電圧とした。
【0137】
[熱伝導シートの段差追従性の測定方法]
実施例及び比較例で得た熱伝導シートを65mm角に裁断したものを試験サンプルとした。
【0138】
次に、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを縦65mm×横(幅)10mmの長方形に裁断した。
【0139】
次に、ガラス板の表面に、前記長方形のポリエチレンテレフタレートフィルム2枚を15mmの間隔が空くよう載置した。これにより、前記ガラス板の表面とポリエチレンテレフタレートフィルムの表面とから構成される段差部を形成した。
【0140】
次に、前記ポリエチレンテレフタレートを含む前記ガラス板の全面を覆うように、前記試験サンプルを貼付し、その上に、ガラス板を載置した。
【0141】
次に、前記ガラス板の上から5kg荷重した状態で、70℃環境下に2時間静置した。
【0142】
前記静置後、試験サンプルとガラス板及びポリエチレンテレフタレートフィルムとの密着性を目視で確認し、前記ガラス板の面積(ポリエチレンテレフタレートフィルムが載置された範囲を含む)に対する、前記試験サンプルが前記ガラス板及びポリエチレンテレフタレートフィルムに密着した面積の割合を算出し、下記評価基準にしたがい評価した。
【0143】
◎:ガラス板の面積に対する試験サンプルの密着性が100%であり、前記試験サンプルは前記段差部に空隙を形成することなく密着していた。
【0144】
○:ガラス板の面積に対する試験サンプルの密着性が90%以上100%未満であり、前記試験サンプルは前記段差部にごくわずかに空隙を形成していたが、実用上問題ないレベルであった。
【0145】
△:ガラス板の面積に対する試験サンプルの密着性が80%以上90%未満であり、前記試験サンプルは前記段差部にごくわずかに空隙を形成していた。
【0146】
×:ガラス板の面積に対する試験サンプルの密着性が50%以上80%未満であり、前記試験サンプルは前記段差部に空隙を形成していた。
【0147】
××:ガラス板の面積に対する試験サンプルの密着性が50%未満であり、前記試験サンプルは前記段差部に明らかな空隙を形成していた。
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【0150】
【表3】