特開2015-231604(P2015-231604A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231604(P2015-231604A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/48 20060101AFI20151201BHJP
   B01J 7/02 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   C02F1/48 B
   B01J7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-119638(P2014-119638)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】小原 賢信
【テーマコード(参考)】
4D061
4G068
【Fターム(参考)】
4D061DA08
4D061DB19
4D061DC03
4D061DC04
4D061DC09
4D061EA15
4D061EB01
4D061EB07
4D061EB14
4D061EB16
4D061EB17
4D061EB19
4D061EB20
4G068DA10
4G068DB04
4G068DB23
(57)【要約】
【課題】放電プラズマを用いて被処理水中の物質を分解処理する水処理装置において、分解効率を高め、処理量を上げる。
【解決手段】被処理水を通過させる排水管路と、排水管路内に設置された被処理水の流通方向に貫通した一つもしくは複数の穴を持つ絶縁性の構造物と、一対の電極を有し、一対の電極間に高電圧を印加することにより、構造物の穴を含む空間に放電プラズマを発生させて水処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が流される排水管路と、
前記排水管路内に当該排水管路を塞ぐように設置され、被処理水の流通方向に貫通した一つもしくは複数の穴を有する電気絶縁性の構造物と、
一対の電極と、
前記一対の電極に接続された電源とを有し、
前記電源から前記一対の電極間に高電圧を印加することにより前記構造物の穴の付近に放電プラズマを発生させることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記一対の電極が前記構造物の上流側と下流側とに配置されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記一対の電極の一方が前記構造物の上流側もしくは下流側に配置され、他方が前記穴に接触していることを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記排水管路の径が1mmから10cmであり、前記穴の径が5μmから1mmであることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記穴の径と前記排水管路の径の比が1/10以下であることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記穴の長さが1cm以下であることを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記電源から前記一対の電極にパルス状の電圧を反復して印加することを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記電源から前記一対の電極に少なくとも2つの異なる電圧が含まれるパルス状の電圧を反復して印加することを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記電極と前記構造物の穴の相対位置を変化させる駆動機構を有することを特徴とする水処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記穴部付近に電極を有し、当該電極に電圧を印加して電気分解で発生した気泡を用いて前記放電プラズマを発生させることを特徴とする水処理装置。
【請求項11】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記構造物に加熱機構を備え、前記加熱機構によって前記構造物を加熱して前記構造物の穴に気泡を発生させることを特徴とする水処理装置。
【請求項12】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記構造物に光照射する光源を有し、
前記光源から前記構造物に光照射して前記構造物の穴付近に気泡を発生させることを特徴とする水処理装置。
【請求項13】
請求項1に記載の水処理装置において、
OHラジカル量を測定する測定部を備え、前記測定部による測定結果をもとに前記電源を制御する
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項14】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記構造物が前記排水管路の中に複数直列に配置されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項15】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記排水管路が外部の分析機器に接続され、前記分析機器からの排水を処理することを特徴とする水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術として、特許文献1がある。この公報は「被処理水を通過させる通水管路にノズルと対向電極を備えたリアクターからなる水処理装置であって、前記ノズルは、オリフィス形状を有し、前記リアクター内の通水方向上流側に設けられており、前記被処理水が前記オリフィスの最収縮部を通過直後、圧力が降下した領域において、沸騰現象によりキャビテーションを発生させ、前記対向電極は、高圧側電極と接地側電極が対向して成り、前記ノズルの下流側の前記キャビテーションが発生する空間に設けられており、前記対向電極間に高電圧を印加することにより、前記キャビテーションが発生する空間に放電プラズマを形成する水処理装置において、前記高圧側電極と前記接地側電極は通水方向に互いに間隔をおいて設置されていることを特徴とする水処理装置」を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−41914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された水処理装置は、キャビテーションを発生させるための機構が必要であり、構造が複雑になる。
【0005】
本発明は、被処理水中の放電プラズマを用いて被処理水中の物質を分解処理する水処理装置において、分解効率が高く、処理量の大きいものを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による水処理装置は、被処理水が流される排水管路と、排水管路内に当該排水管路を塞ぐように設置され、被処理水の流通方向に貫通した一つもしくは複数の穴を有する電気絶縁性の構造物と、一対の電極と、一対の電極に接続された電源とを有し、電源から一対の電極間に高電圧を印加することにより構造物の穴の付近に放電プラズマを発生させるものである。
【0007】
一対の電極は、構造物の上流側と下流側とに配置してもよいし、一対の電極の一方を構造物の上流側もしくは下流側に配置し、他方を構造物の穴に接触させて配置してもよい。
【0008】
電源は、一対の電極にパルス状の電圧を反復して印加するのが好ましい。
【0009】
パルス状の電圧には、2つの異なる電圧を含むのが好ましい。2つの異なる電圧は、典型的には、放電に必要な電圧より低く、かつ気泡の発生には十分な電圧と、放電を可能とする高い電圧である。
【0010】
一対の電極に高電圧を印加して放電プラズマを発生させるに先立ち、構造物の穴の部分に、電気分解、加熱、光照射など電圧印加以外の手段で予め気泡を形成しておくのも効率的に放電プラズマを発生させるのに有効である。
【0011】
また、OHラジカル量を測定する測定部を備え、測定部による測定結果をもとに電源を制御するようにしてもよい。
【0012】
構造物は、排水管路の中に複数直列に配置してもよい。
【0013】
一態様として、排水管路を外部の分析機器に接続し、分析機器からの排水を処理するように構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被処理水に含まれる物質の分解効率が高く、処理量の大きい水処理装置を提供できる。
【0015】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】水処理装置の構成例を示す模式図。
図2】高圧電源による電圧印加の時間変化を示す概念図。
図3】電圧印加に伴う構造物付近の変化の様子を示す模式図。
図4】電圧スイッチを有する水処理装置を示す模式図。
図5】電極の位置を時間的に変化させる機構を備える水処理装置の例を示す模式図。
図6】電極の位置変化の例を示す模式図。
図7】電気分解で気泡を発生させる水処理装置の構成例を示す模式図。
図8】熱で気泡を発生させる水処理装置の構成例を示す模式図。
図9】光で気泡を発生させる水処理装置の構成例を示す模式図。
図10】OHラジカルの量を計測し放電条件を制御する水処理装置の例を示す模式図。
図11】放電部がタンデムに構成された水処理装置の例を示す模式図。
図12】放電部が液体クロマトグラフに接続された水処理装置の例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
[実施例1]
図1は、本実施例の水処理装置の構成例を示す模式図である。
【0019】
被処理水は排水管路101に流される。排水管路101の内側には板102が排水管路101を塞ぐようにして配置され、板102には複数の穴103が貫通して設けられている。排水管路101を流れる被処理水は穴103を通過して板102の上流側から下流側に流される。この実施例では、被処理水は図の下側から上側に向かって流れているので、上流が下側、下流が上側という配置になっている。高圧電源106は電線107,108を介して板102の上流側に配置された電極105と板102の下流側に配置された電極104に接続されており、電極間104,105に高電圧を印加できる。
【0020】
排水管路101が被処理水で満たされた状態において、板102の上流側の電極105と下流側の電極104の間に、数百Vもしくは数kVの電圧を印加すると、被処理水の電気伝導度に応じて異なる電流が流れる。排水管路101の太い部分に比べて、板102の穴103の部分では、断面積が小さいため電気抵抗が大きく、結果として電界が集中することになる。電界集中の結果、穴103には比較的大きな電流密度で電流が流れる。そのため、穴103の内部の被処理水がジュール熱によって加熱されて気泡が生じ、その後その両端に高電圧がかかることによって、穴103付近に放電プラズマが生じる。生じた放電プラズマにより被処理水が処理され、被処理水中の物質を分解処理することができる。
【0021】
放電を生じさせる観点から、排水管路101の径は1mmから10cm程度が望ましく、さらには5mmから5cm程度が望ましい。また、効率的に放電を生じさせる観点から、板102に設ける穴103の径は5μmから1mm程度が望ましく、さらには50μmから500μm程度が望ましい。同様に、穴103の径と排水管路101の径の比は、1/10程度以下が望ましく、さらには1/100以下が望ましい。
【0022】
板102の厚み及び穴103の長さは1cm程度以下が望ましく、さらに望ましくは1mm程度以下が望ましい。板102の厚みが薄いことにより、電圧印加によって生じ成長した気泡が穴103に定在することを防ぎ、常に新しい気泡を穴103に生じさせて、溶液処理の均一性を向上することができる。板102は樹脂、ガラス等の電気絶縁性の材料で構成される必要がある。
【0023】
穴の形状については特に限定はないが、円柱、楕円柱、多角柱などの形状が考えられる。また予め多孔の材質を切り出して使うことも考えられる。各穴の放電の状態を均一にそろえ、水処理能力を高く維持する観点から、複数設けられる穴の大きさはある程度そろっていることが望ましい。
【0024】
板の上流側と下流側に配置された2つの電極104,105と板102の間の距離は、長すぎると放電を生じるのに非常に大きな電圧を必要とし、また短すぎると電極近傍の穴でのみ放電が生じやすくなるため、排水管路101の内径を基準として、1/3倍から3倍程度の範囲であることが望ましい。
【0025】
放電時に発生する気泡の滞留を防ぎ、処理の効率を高く保つため、被処理水は板102の複数の穴103のみを経由して流れることが望ましい。また、流れの向きは水平方向とすることも可能であるが、発生した気泡が流れにより自然に穴103から除かれるためには、流れの向きは鉛直方向下から鉛直方向上に向かう方向であることがより望ましい。
【0026】
被処理水の送液量は毎分1mLから5L程度が望ましく、さらには毎分5mLから100mL程度が望ましい。
【0027】
本実施例の構成では、被処理水が複数の穴103のいずれかを通過し、また複数の穴103及びその近辺で放電プラズマが生成するので、板102を通過する被処理水は必ず放電プラズマの近辺を通過することになるため、被処理水中の有機物等、物質の高い分解率を達成することができる。また複数の穴103を用いることで、被処理水の処理量を大きくすることができる。
【0028】
板102の穴103及びその付近で発生する放電プラズマに付随した気泡がそのまま穴103及びその付近に滞留すると放電を阻害するため、この気泡を効率的に取り除き、次の放電を繰り返し起こす必要がある。そのための手段の一つとして、電圧をパルス状に印加すると効果的である。例えば、電圧印加時間を数ミリ秒から数十ミリ秒、電圧非印加時間を数ミリ秒から数十ミリ秒とし、これを反復するとよい。一般的な条件下では、電圧印加時間をこれ以上に大きくすると気泡の成長により放電が停止してしまうことが多く、また、電圧非印加時間をこれ以上に長くすると、通過する被処理水の放電及びその生成物への接触効率が低くなり、有機物の分解効率が低下するためである。
【0029】
同様に、構造物である板102に複数の穴103が貫通している構造は、処理量を大きく保ったまま、気泡の除去を容易にし、結果として被処理水中の物質の分解率を向上する効果がある。例えば、比較の対象として、最も単純な系である、排水管路を複数並列し、その一つ一つに対して対向電極を配置し、放電プラズマを各排水管路に発生させる系を考えると、この系では、発生した気泡が配管の下流側を完全に塞いでしまい、放電が停止することや放電が安定しないことが想定される。太い排水管路に複数の穴を持つ構造物である板を配置する構造により、発生した気泡よりも排水管路の径を大きくすることができるため、気泡が排水管路を完全に防ぐという事態が生じず、被処理水中の物質の分解効率を高く保つことができる。また、仮に一部の穴が詰まりにより流通しない場合にも、他の穴で処理されるので、溶液中の固形分等の混入に対してもロバストな装置を実現できる。
【0030】
本実施例の構成によれば、放電の開始を容易にする気泡を電圧印加により形成することができるため、別途放電のための気体を排水管路に導入する機構が不要であり、簡便な構成となる。また同様に、特許文献1に記載のキャビテーションによる気泡の発生が不要であるため、キャビテーション発生用のノズルが不要となり、詰まりが少なく、流路抵抗の低い、構成の簡単な装置を実現できる。
【0031】
本実施例では、排水管路101内に設置する構造物として複数の貫通穴103を持つ板102を用いたが、構造物はこの構成に限定されるものではない。多孔質な無機膜や有機膜等も用いることが可能である。
【0032】
また、図1の例では電極として棒状の電極を使用しているが、電極の形状はそれに限定されるものではない。板状の電極や複数の突起部を持つ電極等も、電圧印加の均一性を保ち、分解効率を高く保つために効果がある。
【0033】
[実施例2]
本実施例では、電圧を変化させて印加することで更に被処理水中の物質の分解効率を向上する水処理装置の一例を説明する。水処理装置の全体構成は実施例1と同様である。
【0034】
図2は、本実施例の高圧電源106による電圧印加の時間変化を示す概念図である。図1に示した水処理装置の構成で、電極104,105間にかける電圧の時間変化を示している。図2において、V1は穴103に気泡は生じるが放電はしない電圧、V2は穴103に生じた気泡に放電が生じる電圧である。すなわち、高圧電源106は、一対の電極に2つの異なる電圧が含まれるパルス状の電圧を印加する。図2は、電圧V1の部分と電圧V2の部分を有する電圧印加パルス一つ分を示しており、水処理を実施する場合にはこの電圧パルスを反復して印加する。
【0035】
図3は、図2の電圧パルスを印加した時に構造物である板102の複数の穴103に生じる気泡及び放電プラズマの様子を時間と共に模式的に示したものである。時間t0において電圧0でスタートし、時間t1で電圧V1を印加する。電圧が印加されたことで穴103に電流が流れ、ジュール熱によって穴の部分の被処理水が加熱されることで気泡が発生する。この際全ての穴に気泡が同時に発生することが望ましいが、実際には電極配置や穴の径、形状の不均一性などから全ての穴に同時に気泡が発生しないことがありうる。図3に示した例では、6つの穴103のうちまず3つに気泡が発生している。時間t1に印加する電圧が放電に必要な電圧以上の高い電圧である場合、この気泡が発生した穴の部分にのみ放電が生じ、そこに集中的に電流が流れるので、全ての穴に放電プラズマを起こすことができない可能性がある。そこで、時間t1で印加する電圧を放電に必要な電圧より低く、かつ気泡の発生には十分な電圧V1とし、その電圧印加を続けることで、全ての穴103に気泡が発生する時間t2まで放電させずに待ち、その後放電させることが可能な高い電圧V2を印加することで全ての穴に放電プラズマを生じさせることができる。
【0036】
本実施例のみならず、本発明において、放電による有機物分解処理が行われる部分は、図示のように放電部のみに限定されず、放電部の周辺にまで広がっているため、放電していない部分でも有機物分解処理は行われる。
【0037】
このように印加する電圧を経時的に変化させることにより、より高い確率で多くの穴に放電プラズマを生じさせることができ、より被処理水中の物質の分解効率が高い水処理装置を実現できる。また、本実施例は電圧印加条件のみの変更で実現可能であり、排水管路内部の構成を変化させる必要がないという効果がある。
【0038】
本実施例では、印加電圧を2段階で変化させる例を示したが、必ずしも2段階で行う必要はない。気泡が発生し放電が生じない範囲での電圧が一定時間続いた後、放電に必要な電圧が印加される電圧の時間変化であればよく、例えば電圧を滑らかに上昇させるような電圧時間変化を行ってもよい。上記の一定時間とは、気泡が発生する時間オーダーを想定しており、例えば穴103の径が100μm程度であれば、上記の一定時間は100マイクロ秒程度とすればよい。
【0039】
[実施例3]
本実施例では、スイッチにより電圧が印加される電極の位置を時間的に変化させて、更に物質の分解効率を向上する水処理装置の一例を説明する。
【0040】
図4は、電圧スイッチにより電圧が印加される電極の位置を時間的に変化させる水処理装置の例を示す模式図である。本実施例の水処理装置は、複数の穴103が設けられ排水管路101を塞ぐように設置された板102の上流側に単一の電極105を配置し、板102の下流側に電圧スイッチ111に接続された複数の電極112を配置する構成とした。複数の電極112のそれぞれは、板102の異なる穴103の近傍に設置される。
【0041】
電圧スイッチ111により電圧印加のタイミング毎に異なる電極112と共通の電極105の間に電圧を印加することで、各電圧印加時に異なる穴103に高い電圧を集中して印加することができ、仮に放電が起こり難い構成の穴103が存在したとしても、その穴に電圧を集中印加することにより確実に放電を起こすことができる。電圧印加のタイミングは、穴103のそれぞれに対応する電極112毎に異なっていてもよいが、複数まとめて電圧を印加することも効果的である。
【0042】
本実施例の構成により、放電が起こらない穴103が無くなることで分解処理されずに板102の穴103を通過する被処理水がなくなり、分解効率の高い安定した動作を行う水処理装置を実現できる。
【0043】
[実施例4]
本実施例では、電極の位置を時間的に変化させて、更に分解効率を向上する水処理装置の一例を説明する。
【0044】
図5は、電極の位置を時間的に変化させる機構を備える水処理装置の例を示す模式図である。本実施例は、図1に示した水処理装置の構成で、電極104,105を電極121,122に変更したものに相当する。複数の穴103を有し排水管路101を塞ぐように設置された板102の上流側と下流側に配置される電極121,122はくし状の形状を有し、穴103の一部の穴近傍に設置されており、電圧印加時に電極121,122と板102の穴103の相対位置を変化させる駆動機構123を備える。
【0045】
図6は、本実施例の電極の位置変化の例を示す概念図である。この模式図では、くし型の電極121,122を板102を介して対向させ、板102の表面に沿った方向の位置関係を動かしている。具体的には図6の上図と下図とで電極121,122の位置が板102に対して左右方向にずれており、この電極位置の変更を繰り返す。電極121,122の移動は、例えばモーター及び歯車を備える駆動機構123によって行えばよい。
【0046】
板102の複数の穴103それぞれを介した電極121,122間の距離、抵抗はそれぞれ異なっているため、各穴の放電プラズマの生成状況は少しずつ異なっている。放電が十分に行われている場合には、被処理水中の物質の分解効率を高く保つことができるが、被処理水の性質によって各穴を介した放電の均一性の担保が難しい場合には、電極を動かすことにより、時間平均で見た各穴の放電容易性が均質化され、被処理水中の物質の分解効率を高く保つことが可能である。
【0047】
特に、板102の複数の穴103の径や形状を正確に同じにすることができない場合、電極の位置を動かして各穴の放電効率を高く保つことは、被処理水中の物質の分解効率を高く保つために効果がある。
【0048】
本実施例では、2つの電極121,122を板102に対して相対的に板102の表面に平行な方向に動かしているが、電極の動かし方はこの方法に限定するものではない。電極を板に対して相対的に回転させる方法や、左右方向の移動と回転を組み合わせる方法でもよい。また。電極と板及び穴の相対位置を変化させればよいので、板を回転させるなどして板の方を動かしてもよい。
【0049】
[実施例5]
実施例1から4では、穴に放電を生じさせる際の気泡の発生を、電圧印加により流れる電流のジュール熱によって穴の部分の被処理水を加熱することによって行ったが、気泡の発生方法はこれに限定されるものではない。本実施例では、放電を生じさせる穴にジュール熱以外の方法で気泡を発生させ、性能安定性を向上する水処理装置の一例を説明する。
【0050】
図7は、排水管路を塞ぐように設置された板に設けた穴に電気分解により気泡を発生させ、そこで放電プラズマを生成する水処理装置の構成例を示す模式図である。電気分解用の電極としても使用する金属製の板201を2枚の電気絶縁性の板202a,202bの間に接着する。複数の穴103は、金属製の板201及び2枚の電気絶縁性の板202a,202bを貫通するように形成する。すなわち、電気分解用の電極として作用する金属製の板201は、それぞれの穴103に接触(露出)している。金属製の板201にも電圧が印加できるように配線することで、水処理装置を構成する。
【0051】
本実施例の水処理装置は、まず金属製の板201に電気分解が起こる電圧として、例えば放電が起こる電圧に比較するとはるかに小さい数V程度の電圧を印加する。例えば金属製の板201を正極として電圧を印加すると、典型的な水溶液では気体酸素を生成することができる。実施例1のように電界集中した結果の発熱による気泡発生とは異なり、電気分解での気泡生成は各穴の形状等に影響を受けにくいため、より安定して各穴に均一的な気泡を発生させることができる。この後に、実施例1と同様に電極104,105間に高い電圧を印加することにより、各穴均一に放電を起こすことができる。
【0052】
実施例1から4に示した、電圧印加による発熱を用いた気泡の発生では、被処理水毎の電気伝導度の違いにより、気泡の発生状況に違いが生じ、条件の検討が必要となるが、電気分解での気泡発生は、被処理水毎にそれほど違いが生じないため、条件検討の負担が小さくなる、という効果がある。また酸素の気泡を生成することが可能であることから、放電により有機物の分解に有用な酸素系のラジカル生成量が増大し、有機物の分解効率をさらに上げることができる、という効果もある。
【0053】
電気絶縁性の板202a,202bで金属製の板201を挟み込む構成は、穴103の内側で電気分解が集中して起こり、気泡の発生が穴103の中で起こり、分解効率が安定する効果がある。
【0054】
また、金属製の板201を電気分解用の電極のみならず、放電電圧印加用の2つの電極104,105の一方を兼用させることも可能である。その場合には2つの電極104,105の一方、例えば電極105の役割を金属製の板201に担わせることで電極105を省略することができる。装置の運転に当たっては、最初、金属製の板201を電気分解用の電極として用いて小さな電圧を印加することで各穴103に気泡を発生させる。次に、金属製の板201を放電電圧印加用の電極として用い、電極104と金属製の板201の間に高い電圧を印加して各穴103の付近に放電プラズマを発生させる。この動作を反復して被処理水中の物質を分解処理する。
【0055】
[実施例6]
本実施例では、放電を生じさせる穴に電圧印加以外の方法で気泡を発生させ、性能安定性を向上する水処理装置の他の例を説明する。
【0056】
図8は、熱により板の穴に気泡を発生させ、そこで放電プラズマを生成する水処理装置の構成例を示す模式図である。図1に示した装置構成に対して、貫通する複数の穴103を持ち排水管路101を塞ぐように設置された板102に加熱機構としてヒーター211を設置した。ヒーター211により板102を加熱し、結果として穴103近傍の溶液を加熱することで穴103に気泡を発生させ、その後、板102の上流側と下流側に配置された電極104,105間に高電圧を印加することで、穴103の付近に放電プラズマを発生させる。本実施例によると、電圧印加によらない簡単な構成でそれぞれの穴103に気泡を発生させることができ、複数の穴103に均一にプラズマ放電を発生させて被処理水中の物質の分解性能の安定性を向上することができる。
【0057】
図9は、光照射により板の穴に気泡を形成し、そこで放電プラズマを生成する水処理装置の構成例を示す模式図である。本例では、貫通する複数の穴103を持ち排水管路101を塞ぐように設置された板102の一方の面、図の例では上流側の面に酸化チタン膜221を形成した。また、排水管路101の外部にUVランプ222を設置し、UVランプ222からの紫外光が排水管路101の管壁を通して酸化チタン膜221に照射されるようにした。排水管路101は、光を透過する石英ガラス等によって構成した。酸化チタンは光照射により気体を発生する性質があり、UVランプ222から酸化チタン膜221に紫外光を照射することで穴103の付近に発生した気泡は流れによって各穴103に導入される。その後、板102の上流側と下流側に配置された電極104,105間に高電圧を印加することで、穴103の付近に放電プラズマを発生させる。この実施例によると、電圧印加によらない簡単な構成でそれぞれの穴103に気泡を発生させることができ、複数の穴103に均一にプラズマ放電を発生させて被処理水中の有機物の分解性能の安定性の向上を実現することができる。
【0058】
[実施例7]
本実施例では、放電プラズマによるOHラジカルの生成をモニターし、条件を制御することにより、分解効率を向上する水処理装置の例を説明する。
【0059】
図10は、OHラジカルの量を計測し放電条件を制御する水処理装置の例を示す模式図である。本実施例の水処理装置は、実施例1と同様の構成にOHラジカルのモニターとその測定結果による放電制御系を組み込んで構成されている。
【0060】
排水管路101を塞ぐように設置された板102に設けられた穴103付近で発生する放電プラズマからの発光を、石英製のレンズ301で分光器302の入射スリット部分に集光し、OHラジカルの発光波長の一つである308nmのピーク強度を信号線303を介して制御装置304に取り込む。取り込まれた308nmのピーク強度はOHラジカル発生量の指標となるため、この信号の大きさに応じて高圧電源106の動作を制御すべく、信号線305を介して制御信号を高圧電源106に入力し制御する。
【0061】
OHラジカルの量が少ない場合には、OHラジカルの量が多くなるような電圧印加条件、例えば印加電圧を上昇させるといった制御を高圧電源106に対して行うことにより、より安定な水処理の性能を発揮する水処理装置を実現できる。
【0062】
本実施例ではOHラジカル量の測定指標としてOHラジカル由来の発光波長308nmの強度を測定したが、OHラジカル量の測定指標はこれに限定されるものではない。例えば、放電プラズマが発生する空間のすぐ下流にテレフタル酸を含む溶液を管306を通じて導入し、テレフタル酸にOHラジカルが反応しOH付加する量を、発光波長310nmのLEDで照射し、425nmの蛍光を観測する、といった蛍光プローブを使う方法等も考えられる。
【0063】
[実施例8]
本実施例では、放電部分をタンデムに接続し、更に分解効率を向上する水処理装置の例を説明する。
【0064】
図11は、放電部が2つタンデムに配列された水処理装置の一例を示す概念図である。貫通した複数の穴103を有する板102が2枚、排水管路101の長手方向に排水管路101を塞ぐようにして並んで配置されており、その2枚の板102の中間に高圧電源106に電線404を介して接続した電極403が設置されている。2枚の板102の上流及び下流側にはそれぞれ電線405を介して電源106とアースに接続した電極401,402が設置されている。
【0065】
放電プラズマを発生し水処理を行う場合には、電極403に高電圧を印加し、アースに接続された電極401,402との間にそれぞれ高電圧が印加することにより、2枚の板102の穴103付近に放電プラズマが形成される。排水管路101中に配置した2枚の板102で水処理を行うことにより、もし一方の板の一部の穴で放電の不均一性による水処理性能の低下が起こったとしても、少なくとも2度、2枚の板102付近で放電する構成をとることにより、被処理水が放電処理される確率を大幅に向上することができる。
【0066】
本実施例では、2枚の板102の間に電極403を設置したが、これを省略し、電極401と電極402の間に高電圧を印加して被処理水中の有機物分解を行うことも、構成の簡略化の点から効果的である。
【0067】
また、本実施例では、放電部分のタンデムは2つのみであったが、3つ以上のタンデムにすることも被処理水中の有機物の分解能を向上させるためにはより効果的である。
【0068】
[実施例9]
本実施例では、放電部を液体クロマトグラフの廃液処理部分に接続した水処理装置の例を説明する。
【0069】
図12は、放電部を液体クロマトグラフの廃液処理部分に接続した水処理装置の例を示す模式図である。液体クロマトグラフ501の溶液出口を配管502を通じて、図1に示した放電部分を備える排水管路101に接続し、その処理水を配管503を通じて廃液容器504に回収する。
【0070】
液体クロマトグラフの廃液を直接処理する構成により、液体クロマトグラフで使用する有機溶媒、着色試薬、酢酸などの悪臭物質を分解することができ、廃液の処理を容易にする効果がある。有機物濃度が低い場合には、分解後の溶液をそのまま廃棄することも可能となり、廃液処理のコストを軽減することができる。
【0071】
本実施例では液体クロマトグラフとの接続例を示したが、水処理装置を接続する機器、特に分析機器はこれに限るものではなく、さまざまな分野での適用が考えられる。アミノ酸分析計や分光光度計、蛍光光度計といった分析機器の廃液処理に利用すると効果的である。
【0072】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
101:排水管路、102:板、103:穴、104,105:電極、106:高圧電源、111:スイッチ、112:電極、121,122:電極、201:金属製の板、202a,202b:電気絶縁性の板、211:ヒーター、221:酸化チタン膜、222:UVランプ、301:レンズ、302:分光器、304:制御装置、306:管、401,402,403:電極、501:液体クロマトグラフ、502,503:配管、504:廃液容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12