(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232153(P2015-232153A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】めっき装置及びめっき方法
(51)【国際特許分類】
C25D 21/12 20060101AFI20151201BHJP
C25D 7/12 20060101ALN20151201BHJP
【FI】
C25D21/12 A
C25D7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-118554(P2014-118554)
(22)【出願日】2014年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】荒木 裕二
(72)【発明者】
【氏名】藤方 淳平
(72)【発明者】
【氏名】下山 正
(72)【発明者】
【氏名】長井 瑞樹
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024BA11
4K024BB11
4K024BB12
4K024BC01
4K024CA05
4K024CB24
(57)【要約】
【課題】所望の電流により近い電流を基板に印加することができるめっき装置及びめっき方法を提供する。
【解決手段】めっき装置10は、基板に直流電流を印加するように構成される整流器18と、直流電流の値を整流器18に指示するめっき装置制御部30と、を有する。めっき装置制御部30は、電流値を設定するための設定部32と、整流器18に指示される指示電流値と該指示電流値に従って整流器18が出力する実電流値との関係式を記憶する記憶部34と、設定部32に設定された電流値を上記関係式に基づいて補正して補正電流値を算出する算出部34と、算出部34で算出された補正電流値を整流器18に指示する指示部36と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にめっきするためのめっき装置であって、
前記基板に直流電流を印加するための整流器と、
直流電流の値を前記整流器に指示するためのめっき装置制御部と、を有し、
前記めっき装置制御部は、
電流値を設定するための設定部と、
前記整流器に指示される指示電流値と該指示電流値に従って前記整流器が出力する実電流値との関係式を記憶するための記憶部と、
前記設定された電流値を前記関係式に基づいて補正して補正電流値を算出するための算出部と、
前記補正電流値を前記整流器に指示するための指示部と、を有する、めっき装置。
【請求項2】
複数の前記整流器を有し、
前記記憶部は、複数の前記整流器にそれぞれ対応する複数の前記関係式を記憶し、
前記算出部は、複数の前記関係式に基づいて、前記設定された電流値を補正して複数の前記補正電流値を算出し、
前記指示部は、複数の前記補正電流値を複数の前記整流器のそれぞれに指示する、請求項1に記載されためっき装置。
【請求項3】
前記めっき装置制御部は、前記設定された電流値が所定値以下か否かを判定する判定部を有し、
前記算出部は、前記判定部が前記設定された電流値が所定値以下であると判定したときに、前記設定された電流値を前記関係式に基づいて補正して前記補正電流値を算出するように構成される、請求項1又は2に記載されためっき装置。
【請求項4】
前記関係式は、xを前記実電流値とし、yを前記指示電流値とした場合に、y=ax+b(a,bは定数)で表され、
前記算出部は、前記設定された電流値を前記関係式のxに代入して得られた値yを前記補正電流値とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載されためっき装置。
【請求項5】
前記記憶部に記憶される前記関係式は、前記整流器の複数の指示電流値に対応する複数の実電流値を測定することにより予め得られる、請求項1ないし4のいずれか一項に記載されためっき装置。
【請求項6】
基板にめっきするためのめっき方法であって、
電流値を設定する設定工程と、
整流器に指示された指示電流値と該指示電流値に従って前記整流器が出力する実電流値との関係式に基づいて、前記設定された電流値を補正して補正電流値を算出する算出工程と、
前記補正電流値を前記整流器に指示する指示工程と、
前記指示に基づいて前記基板に直流電流を印加する工程と、を有する、めっき方法。
【請求項7】
前記算出工程は、複数の整流器に対応する複数の前記関係式に基づいて、前記設定された電流値を補正して複数の補正電流値を算出することを含み、
前記指示工程は、前記算出された複数の補正電流値を、複数の前記整流器のそれぞれに指示することを含む、請求項6に記載されためっき方法。
【請求項8】
前記設定された電流値が所定値以下か否かを判定する判定工程を有し、
前記算出工程は、前記判定工程において前記設定された電流値が所定値以下であると判
定されたときに、前記設定された電流値を前記関係式に基づいて補正して前記補正電流値を算出する、請求項6又は7に記載されためっき方法。
【請求項9】
前記関係式は、xを前記実電流値とし、yを前記指示電流値とした場合に、y=ax+b(a,bは定数)で表され、
前記算出工程は、前記設定された電流値を前記関係式のxに代入して得られた値yを前記補正電流値とする、請求項6ないし8のいずれか一項に記載されためっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等の被めっき面にめっきするためのめっき装置及びめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウェーハ等の基板の表面に設けられた微細な配線溝、ホール、ビアホール、スルーホール、又はレジスト開口部にめっき膜を形成したり、半導体ウェーハの表面にパッケージの電極等と電気的に接続するバンプ(突起状電極)を形成したりするのにめっき装置が用いられている。
【0003】
めっき装置は、例えばめっき液内に浸漬されたアノードと基板とに直流電流を印加することで、基板表面にめっき膜を形成する。めっき装置では交流電流を直流電流に変換する整流器が用いられ、この整流器によりアノードと基板とに直流電流が印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭46−12574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
整流器は、固有の機械誤差を有することが知られている。整流器は、例えば設定値2.5Aのときに±1.3%以内の出力誤差を有する。したがって、めっき装置の制御部から整流器に設定値の指令を出し、整流器が設定値に対応する出力値を出力するときは、±1.3%以内の出力誤差を有する値が出力値として出力される。
【0006】
めっき装置が複数のめっき槽を有する場合、整流器はめっき槽毎にそれぞれ設けられる。この場合めっき装置の制御部は、例えばそれぞれの整流器に同一の設定値の指令を出す。ここで、個々の整流器の設定値2.5Aに対する出力値が±1.3%以内の出力誤差を有している場合、複数の整流器間の出力値の差は最大で設定値の2.6%になる。
【0007】
近年では、めっき膜厚のめっき槽間でのばらつきを抑えることが求められており、整流器間で2.6%の誤差があると、この要求を満たせないことがある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の電流により近い電流を基板に印加することができるめっき装置及びめっき方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1形態に係るめっき装置は、基板にめっきするためのめっき装置であって、前記基板に直流電流を印加するための整流器と、直流電流の値を前記整流器に指示するためのめっき装置制御部と、を有し、前記めっき装置制御部は、電流値を設定するための設定部と、前記整流器に指示される指示電流値と該指示電流値に従って前記整流器が出力する実電流値との関係式を記憶するための記憶部と、前記設定された電流値を前記関係式に基づいて補正して補正電流値を算出するための算出部と、前記補正電流値を前記整流器に指示するための指示部と、を有する。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第2形態に係るめっき装置は、第1形態のめっき装置において、複数の前記整流器を有し、前記記憶部は、複数の前記整流器にそれぞれ対応
する複数の前記関係式を記憶し、前記算出部は、複数の前記関係式に基づいて、前記設定された電流値を補正して複数の前記補正電流値を算出し、前記指示部は、複数の前記補正電流値を複数の前記整流器のそれぞれに指示する。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第3形態に係るめっき装置は、第1形態又は第2形態のめっき装置において、前記めっき装置制御部は、前記設定された電流値が所定値以下か否かを判定する判定部を有し、前記算出部は、前記判定部が前記設定された電流値が所定値以下であると判定したときに、前記設定された電流値を前記関係式に基づいて補正して前記補正電流値を算出するように構成される。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第4形態に係るめっき装置は、第1形態ないし第3形態のいずれかのめっき装置において、前記関係式は、xを前記実電流値とし、yを前記指示電流値とした場合に、y=ax+b(a,bは定数)で表され、前記算出部は、前記設定された電流値を前記関係式のxに代入して得られた値yを前記補正電流値とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第5形態に係るめっき装置は、第1形態ないし第4形態のいずれかのめっき装置において、前記記憶部に記憶される前記関係式は、前記整流器の複数の指示電流値に対応する複数の実電流値を測定することにより予め得られる。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第6形態に係るめっき方法は、基板にめっきするためのめっき方法であって、電流値を設定する設定工程と、整流器に指示された指示電流値と該指示電流値に従って前記整流器が出力する実電流値との関係式に基づいて、前記設定された電流値を補正して補正電流値を算出する算出工程と、前記補正電流値を前記整流器に指示する指示工程と、前記指示に基づいて前記基板に直流電流を印加する工程と、を有する。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第7形態に係るめっき方法は、第6形態に係るめっき方法において、前記算出工程は、複数の整流器に対応する複数の前記関係式に基づいて、前記設定された電流値を補正して複数の補正電流値を算出することを含み、前記指示工程は、前記算出された複数の補正電流値を、複数の前記整流器のそれぞれに指示することを含む。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の第8形態に係るめっき方法は、第6形態又は第7形態に係るめっき方法において、前記設定された電流値が所定値以下か否かを判定する判定工程を有し、前記算出工程は、前記判定工程において前記設定された電流値が所定値以下であると判定されたときに、前記設定された電流値を前記関係式に基づいて補正して前記補正電流値を算出する。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の第9形態に係るめっき方法は、第6形態ないし第8形態のいずれかに係るめっき方法において、前記関係式は、xを前記実電流値とし、yを前記指示電流値とした場合に、y=ax+b(a,bは定数)で表され、前記算出工程は、前記設定された電流値を前記関係式のxに代入して得られた値yを前記補正電流値とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所望の電流により近い電流を基板に印加することができるめっき装置及びめっき方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るめっき装置の概略側断面図である。
【
図2】整流器の指示電流値と測定値との関係を示すグラフである。
【
図3】本発明の実施形態に係るめっき方法のフロー図である。
【
図4】複数の整流器の所定の設定電流値に対する出力電流値のグラフである。
【
図5】複数の整流器の所定の設定電流値に対する出力電流値のグラフである。
【
図6】複数の整流器の所定の設定電流値に対する出力電流値のグラフである。
【
図7】複数の整流器の所定の設定電流値に対する出力電流値のグラフである。
【
図8】複数の整流器の所定の設定電流値に対する出力電流値のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るめっき装置の概略側断面図である。
図1に示すように、めっき装置10は、めっき液Qを収容するめっき槽12と、アノード20を保持したアノードホルダ14と、半導体ウェーハ等の基板Wを保持した基板ホルダ16と、アノード20及び基板Wに直流電流を印加する整流器18と、整流器18及びめっき装置10の他の要素を制御可能なめっき装置制御部30を有する。
【0021】
アノード20を保持したアノードホルダ14と基板Wを保持した基板ホルダ16は、めっき槽12内のめっき液Qに浸漬され、アノード20と基板Wの面が平行になるように対向して配置される。アノード20と基板Wは、めっき槽12のめっき液Qに浸漬された状態で、整流器18により直流電流が印加される。これにより、金属イオンが基板Wの被めっき面W1で還元され、被めっき面W1に膜が形成される。
【0022】
整流器18は、アノードホルダ14のアノード20に正電圧を印加し、基板ホルダ16の基板Wに負電圧を印加するように構成される。これにより、整流器18は、アノード20と基板Wとにめっき液Qを介して直流電流を印加可能に構成される。
【0023】
めっき装置制御部30は、整流器18と電気的に接続されている。めっき装置制御部30は、整流器18に所定の直流電流値(補正電流値)を指示可能に構成される。めっき装置制御部30は、所定の電流値(設定電流値)をめっき装置制御部30に設定するための設定部32と、設定された電流値(設定電流値)を補正する式(補正式)を記憶する記憶部34と、この補正式に基づいて設定電流値を補正して電流値(補正電流値)を算出する算出部38と、算出された電流値(補正電流値)を整流器18に指示する指示部36と、を有する。
【0024】
設定部32は、例えば外部インターフェースなどの入力装置から入力された値(電流値)をめっき装置制御部30に設定するように構成される。記憶部34は、例えばメモリ等の記憶媒体から構成される。記憶部34は、整流器18に指示される電流値(指示電流値)とこの電流値に従って整流器18が出力する電流値(実電流値)との関係を示す関係式(補正式)を記憶する。この関係式の詳細については後述する。
【0025】
算出部38は、設定部32により設定された電流値(設定電流値)を記憶部34に記憶されている上記関係式に基づいて補正し、補正電流値を算出する。整流器18は、めっき装置制御部30(指示部36)から指示された補正電流値に従ってアノード20及び基板Wに直流電流を印加する。
【0026】
図中省略しているが、めっき装置10は、複数のめっき槽12とこれに対応する複数の整流器18を有する。めっき装置制御部30の指示部36は、複数の整流器18に対して補正電流値を指示可能に構成される。また、めっき装置制御部30の記憶部34は、複数の整流器18に対応する上記関係式を記憶している。したがって、めっき装置制御部30は、複数の関係式に基づいて設定電流値を補正し、それぞれの補正電流値をそれぞれの整
流器18に指令することができる。
【0027】
上述したように、整流器18は固有の機械誤差を有する。本実施形態のように、めっき装置10が複数のめっき槽12及び複数の整流器18を有する場合、それぞれの整流器18に指示された電流値が同一であっても、整流器18のそれぞれの出力電流値は上記固有の機械誤差により異なる。本実施形態では、めっき装置制御部30が設定電流値に対してそれぞれの整流器18に対応する関係式に基づいて補正を行い、補正された各設定電流値(補正電流値)を各整流器18に指示する。これにより、所望の値である設定電流値に近い電流を各めっき槽12の基板Wに印加できるようにする。その結果、複数の整流器18の電流値のバラつきを抑制することができ、ひいては、めっき槽間のめっき膜厚のバラつきを抑制することができる。
【0028】
図1に示した記憶部34に記憶される関係式は、整流器18の複数の指示電流値に対応する複数の実電流値を測定することにより予め得られる。表1は、整流器18に指示された指示電流値と、この指示電流値に対して実際に整流器18が出力した電流の測定値とを示す一例である。
【0030】
表1に示すように、この例の整流器18は、指示電流値に対して幾分か小さい値の電流を出力するような機械誤差を有することがわかる。
【0031】
図2は、表1の結果をプロットしたグラフを示す。
図2のグラフにおいては、縦軸が指示電流値を示し、横軸が測定値(実電流値)を示す。この結果に対して例えば最小二乗法等の近似計算を行うことで、指示電流値と実電流値との関係式(y=ax+b;a,bは定数)が求められる。この例では、xを実電流値とし、yを指示電流値とした場合、y=1.0045x+0.0062という関係式が求められる。
【0032】
この関係式は、一般的に整流器18毎に異なるので、整流器18毎に求められた複数の関係式が
図1に示した記憶部34に記憶される。
図1に示した算出部38は、設定部32に設定された設定電流値を複数の関係式のそれぞれのxに代入して、複数個の値yを得る。これらの値yが補正電流値として指示部36によりそれぞれの整流器18に指示される。言い換えれば、設定部32に設定された設定電流値は基板Wに印加したい所望の電流値であり、この所望の電流値(設定電流値)に近い電流を基板Wに印加することができる指示電流値y(補正電流値)が上記関係式から求められることになる。したがって、整流器18の機械誤差を考慮した値である指示電流値y(補正電流値)を整流器18に指示することにより、整流器18から出力される出力電流値が所望の電流値(設定電流値)に近い値となる。
【0033】
図1に示した算出部38は、設定部32に設定された電流値(設定電流値)が所定値以下の場合に上記関係式により補正を行い、設定電流値が所定値を超える場合には補正を行わないようにしてもよい。設定電流値に対して補正を行わない場合は、
図1に示した指示部36は、設定電流値の値を指示電流値として整流器18に指示する。この所定値は、例えば記憶部34に予め記憶される。
【0034】
表1及び
図2に示すように上記関係式が0.25Aから10.00Aの指示電流値に対
応する実電流値を測定することにより得られる場合は、上記所定値を例えば10.00Aとすることができる。なお、整流器18は、指示電流値が大きいほど指示電流値と実電流値との誤差が小さくなる特性を有しているので、設定電流値が10.00A超の場合には、補正を行わなくとも指示電流値と実電流値との誤差が小さく、誤差がめっき膜に与える影響は少ない。このように、設定電流値が所定値超の場合には補正を行わないようにすることで、補正を行う設定電流値の範囲においてのみ指示電流値と実電流値との関係式を取得すればよい。
【0035】
次に、本実施形態に係るめっき方法について説明する。
図3は本実施形態に係るめっき方法のフロー図である。
まず、
図1に示しためっき装置10において、電流値が例えばオペレータ等のユーザにより入力装置から入力され、設定部32がこの設定電流値をめっき装置制御部30に設定する(ステップS101)。めっき装置制御部30(判定部)は、設定電流値が所定の値以下であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0036】
設定電流値が所定の値以下であると判定された場合(ステップS102,Yes)、算出部38は、記憶部34に記憶された上記関係式を読み出し、この関係式に基づいて、設定電流値を補正して補正電流値を算出する(ステップS103)。具体的には、算出部38は、上記関係式であるy=ax+b(a,bは定数)のxに設定電流値を代入して、補正電流値としての指示電流値yを取得する。なお、整流器18(めっき槽12)が複数存在する場合は、各整流器18に対応する関係式に基づいてそれぞれの整流器18に指示するための複数の補正電流値が算出される。続いて、指示部36は、算出された補正電流値を整流器18に指示する(S104)。整流器18が複数存在する場合は、指示部36は、算出された複数の補正電流値のそれぞれを各整流器18に指示する。
【0037】
一方で、設定電流値が所定の値より大きいと判定された場合(ステップS102,No)、設定電流値の補正は行われず、指示部36により設定電流値の値が整流器18に指示される(ステップS104)。
【0038】
整流器18は、指示部36からの指示に基づいて基板Wとアノード20とのめっき電流(直流電流)を印加する(ステップS105)。具体的には、整流器18は、指示部36から指示された補正電流値または設定電流値に基づいて、基板Wとアノード20とのめっき電流(直流電流)を印加する。
【0039】
以上のように、本実施形態に係るめっき装置及びめっき方法によれば、めっき装置制御部30が、整流器18に指示される電流値(指示電流値)とこの電流値に従って整流器18が出力する電流値(実電流値)との関係を示す関係式に基づいて設定電流値を補正して補正電流値を算出し、この補正電流値を整流器18に指示するように構成される。このため、めっき装置制御部30は、整流器18が設定電流値に近い値を出力し得る補正電流値を整流器18に指示することができ、所望の電流により近い電流を基板に印加することができる。
【0040】
また、めっき装置10が複数の整流器18を備えている場合は、めっき装置制御部30は整流器18に対応する関係式に基づいてそれぞれの整流器に指示するための複数の補正電流値が算出し、これらの補正電流値をそれぞれの整流器に指示する。これにより、それぞれの整流器18が設定電流値に近い値を出力し得る補正電流値を整流器18に指示することができ、所望の電流により近い電流を基板Wに印加することができる。ひいては、複数の整流器18間の出力差が小さくなり、めっき槽12間でのめっき膜厚のバラつきを抑制することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
本実施例においては、28個(No.1からNo.28)の整流器18を用意した。記憶部24に記憶された整流器18毎の関係式に基づいて、設定電流値を補正して算出した補正電流値をそれぞれの整流器18に指示し、各整流器18が実際に出力した出力電流値を測定した(実施例)。
【0042】
比較例として、18から23個の整流器を用意した。補正されていない設定電流値をそのまま各整流器に指示し、各整流器が実際に出力した出力電流値を測定した(比較例)。
【0043】
実施例及び比較例ともに、設定電流値として、0.25A(アンペア)、0.50A、1.25A、2.50A、10.0Aを設定した。それぞれの設定電流値における実施例及び比較例の結果を
図4ないし
図8に示す。
図4ないし
図8において縦軸が測定された出力電流値(アンペア)を示し、横軸が整流器ナンバーを示す。
【0044】
図4ないし
図8に示すように、実施例の出力電流値は、全体的に、比較例の出力電流値に比べて設定電流値に近い値となる傾向が見られる。その結果、実施例の出力電流値のバラつきは、比較例の出力電流値のバラつきに比べて小さい。
【0045】
表2は、
図4ないし
図8に示した実施例及び比較例の整流器間の出力電流値のバラつきを示す。ここでは、各整流器の出力電流値の最大値と最小値の差を出力電流値の平均値で割った値のパーセント表示を、出力電流値のバラつきとした。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示すように、実施例のバラつきの値は比較例のバラつきの値に比べて小さいことがわかる。
【0048】
以上のとおり、本実施例によれば、整流器の出力電流値を設定電流値により近い値とすることができる。これに加えて、表2に示すように、整流器毎の出力値のバラつきを低減することができる。ひいては、複数のめっき槽に流れる電流値のバラつきを低減できるので、めっき槽間のめっき膜厚のバラつきを抑制することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された
各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10…めっき装置
18…整流器
30…めっき装置制御部
32…設定部
34…記憶部
36…指示部
38…算出部