特開2015-232188(P2015-232188A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2015232188-表面処理炭素繊維フィルム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232188(P2015-232188A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】表面処理炭素繊維フィルム
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/513 20060101AFI20151201BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20151201BHJP
   D06M 11/77 20060101ALI20151201BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20151201BHJP
【FI】
   D06M13/513
   D06M15/643
   D06M11/77
   D06M101:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-119169(P2014-119169)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】浜本 佳英
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 紗以子
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
【テーマコード(参考)】
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4L031AA27
4L031AB01
4L031BA19
4L031DA05
4L031DA11
4L031DA14
4L031DA17
4L033AA09
4L033AB01
4L033AC02
4L033AC05
4L033AC06
4L033BA96
4L033CA59
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高強度で、耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性、柔軟性に優れ、熱伝導率が非常に高く、平均線膨張係数が低く、表面均一性に優れるプリント配線基板に用いる表面処理炭素繊維フィルムの提供。
【解決手段】表面を処理された炭素繊維フィルムであって、前記表面処理炭素繊維フィルムがケイ素含有化合物で表面処理されたものであり、炭素繊維を表面処理することによって、いわゆる「織布」状態から「フィルム」状態に変化する程度を示す指標として用いられるJISR3420記載の方法で測定した前記表面処理炭素繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値が、未処理炭素繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値に対して10倍から150倍である表面処理炭素繊維フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を処理された炭素繊維フィルムであって、前記表面処理炭素繊維フィルムがケイ素含有化合物で表面処理されたものであり、JIS R 3420記載の方法で測定した前記表面処理炭素繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値が、未処理炭素繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値に対して10倍から150倍であることを特徴とする表面処理炭素繊維フィルム。
【請求項2】
前記表面処理炭素繊維フィルムの100質量%に対してケイ素含有化合物の付着量が2質量%以上90質量%以下であり、前記炭素繊維フィルムを構成する炭素繊維の束の一部又は全部が前記表面処理により結束していることを特徴とする請求項1に記載の表面処理炭素繊維フィルム。
【請求項3】
前記ケイ素含有化合物がアルコキシシラン、ポリシラザン、及びこれらの部分加水分解縮合物あるいはシリコーン変性ワニスからなる群から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面処理炭素繊維フィルム。
【請求項4】
前記表面処理炭素繊維フィルムが、JIS C 6481記載の方法で測定されるガラス転移温度を250℃以下の範囲に有さないものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の表面処理炭素繊維フィルム。
【請求項5】
前記表面処理炭素繊維フィルムにおいて、X−Y方向の線膨張係数が、20ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表面処理炭素繊維フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面を処理された炭素繊維フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル技術の目覚しい発展に伴い、パソコン、携帯電話に代表される電子機器の軽薄短小化、高機能化が求められ、例えば代表部品であるプリント基板に対して高密度実装、軽薄短小化が必要とされている。これに対応するために、プリント基板の必須部品である各種繊維フィルムに対する特性向上の強い要求がある。また、近年の自動車は、ハイブリッドカーの拡販および安全対策の高まりとともに大量の電装品が組み込まれ、コンピュータ化されてきている。しかし、電装品が多いことで、発熱を抑え、熱伝導性を高めていく要求が非常に強くなってきている。そこで、プリント配線基板もしくは基板に対する要求として、高熱伝導性があり、より薄く、低熱膨張特性や高引張剛性特性を持つ各種繊維フィルムの要求もある。
【0003】
また、このうちの炭素繊維に関しては、飛行機や車載用に用いられるなど、近年需要は高まりを見せている。炭素繊維を各種基材の材料として用いることで軽量、高剛性及び高熱伝導の基材を提供することができる。炭素繊維の製造方法は昔からのオートクレーブ法や、近年ではVaRTM(真空アシスト レジントランンスファーモールド)法のように、製造方法は日々進化を遂げているが(特許文献1)、実際に使用されている樹脂はほとんどがエポキシ樹脂であり、樹脂自身の耐熱性などに乏しく、更に高耐熱を必要とする分野に関しては用いることが困難である。また、炭素繊維の柔軟性を出そうとウレタン粒子を添加したり(特許文献2)、結晶構造を持つ粘土材料を添加したりして強度をあげようともしているが(特許文献3)、柔軟性と高強度を両方付与させた炭素繊維フィルムを用いた基板は現状現れていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−214042号公報
【特許文献2】特許公報第4973808号
【特許文献3】特許公報第5294609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高強度で、耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性、柔軟性に優れ、熱伝導率が非常に高く、平均線膨張係数が低く、表面均一性に優れる表面処理炭素繊維フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、
表面を処理された炭素繊維フィルムであって、前記表面処理炭素繊維フィルムがケイ素含有化合物で表面処理されたものであり、JIS R 3420記載の方法で測定した前記表面処理炭素繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値が、未処理炭素繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値に対して10倍から150倍であることを特徴とする表面処理炭素繊維フィルムを提供する。
【0007】
このような表面処理炭素繊維フィルムであれば、高強度で、電気絶縁性、熱伝導性、耐熱性、寸法安定性、耐変色性、耐候性、柔軟性などに優れ、平均線膨張係数が低く、表面均一性に優れるものとすることができる。
【0008】
前記表面処理炭素繊維フィルムの100質量%に対してケイ素含有化合物の付着量が2質量%以上90質量%以下であり、前記炭素繊維フィルムを構成する炭素繊維の束の一部又は全部が前記表面処理により結束しているものであることが好ましい。
【0009】
このような表面処理炭素繊維フィルムであれば、電気絶縁性、耐熱性、寸法安定性、自立性、柔軟性により優れるものとすることができる。
【0010】
前記ケイ素含有化合物がアルコキシシラン、ポリシラザン、及びこれらの部分加水分解縮合物あるいはシリコーン変性ワニスからなる群から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。
【0011】
前記表面処理炭素繊維フィルムが、JIS C 6481記載の方法で測定されるガラス転移温度を250℃以下の範囲に有さないものであることが好ましい。
【0012】
このようなガラス転移温度を有する表面処理炭素繊維フィルムであれば、高耐熱性が要求されるデバイスに好適に用いることのできるものとなる。
【0013】
前記表面処理炭素繊維フィルムにおいて、X−Y方向の線膨張係数が、20ppm/℃以下であることが好ましい。
【0014】
このような線膨張係数の表面処理炭素繊維フィルムであれば、さらに高耐熱性が要求されるデバイスに好適に用いることのできるものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表面処理炭素繊維フィルムであれば、高強度で、電気絶縁性、熱伝導性、耐熱性、寸法安定性、耐変色性、耐候性、柔軟性などに優れ、平均線膨張係数が低いものとすることができる。さらに、本発明の表面処理炭素繊維フィルムは、炭素繊維の一部または全部が結束されているため、積層基板用の材料として用いた場合、よじれや目開きを生じることもなく、したがって得られる積層基板の均一性に優れ、高温時の応力集中がないため、高温下でも寸法安定性に優れた積層基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例で作製した基板の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述のように、軽量、高剛性、高熱伝導を示す炭素繊維に、高耐熱性、柔軟性、高強度を付与させた炭素繊維フィルムが求められていた。
【0018】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ケイ素含有化合物で表面処理された表面処理炭素繊維フィルムを提供することで、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明は、表面を処理された炭素繊維フィルムであって、前記表面処理炭素繊維フィルムがケイ素含有化合物で表面処理されたものであり、JIS R 3420記載の方法で測定した前記表面処理炭素繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値が、未処理炭素繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値に対して10倍から150倍である表面処理炭素繊維フィルムである。
【0020】
この慣用曲げ剛性の測定には、一般的なガラス繊維の試験方法であるJIS R 3420記載の方法を適用することができる。この倍数は、炭素繊維を表面処理することによって、いわゆる「織布」状態から「フィルム」状態に変化する程度を示す指標として用いるものであり、好ましくは10倍から90倍であり、更に好ましくは20倍から70倍である。
【0021】
10倍未満では本発明が目的とする寸法安定性や炭素繊維の固定化すなわちよじれ防止や目開き防止効果がほとんど得られず、またシロキサン特性に起因する電気絶縁性、耐熱性、耐候性などが不十分である。また150倍を超えると曲げ剛性が固くなりすぎて、クラックの発生やフレキシブル基板としての柔軟性が失われる。
【0022】
電気絶縁性、耐熱性、寸法安定性、柔軟性といった特性について、より良好なものを得るために、炭素繊維フィルムへのケイ素含有化合物の付着量は、表面処理後の炭素繊維フィルムの100質量%に対して、2質量%以上90質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上60質量%以下である。
【0023】
2質量%以上であれば、電気絶縁性、耐熱性、寸法安定性、自立性などの特性が良好となるため好ましい。また、90質量%以下であれば、耐熱性が低下したり、柔軟性が損なわれたりすることなく、電気絶縁性、寸法安定性などが得られるので好ましい。
【0024】
本発明で使用する炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、気相成長炭素繊維などを用いることができるが、高強度糸が得られやすいPAN系や、高弾性率を有するピッチ系炭素繊維が好ましい。
【0025】
紡糸法としては湿式、乾式、乾湿式などを採用できるが、高強度糸が得られやすい湿式あるいは乾湿式が好ましく、特に乾湿式紡糸が好ましい。紡糸原液にはPANのホモポリマー或いは共重合体の溶液あるいは懸濁液等を用いることができる。凝固、水洗、延伸、油剤付与されて前駆体原糸とし、さらに耐炎化、炭化、必要に応じて黒鉛化を行なう。炭化あるいは黒鉛化条件としては、本発明炭素繊維を得るためには不活性雰囲気中最高温度は1400℃以上が好ましく、より好ましくは1600℃以上である。焼成温度が高いほど弾性率は向上するが、引張り強度および樹脂との接着強度が低下するとともに比重が増加するため最適化することが好ましく、1400℃以上2200℃以下が好ましく、より好ましくは1600℃以上2000℃以下である。また同一焼成温度で引張強度および弾性率を向上させるために延伸を組み合わせることが好ましい。強度および弾性率を向上させるためには細繊度の炭素繊維が好ましく、炭素繊維の単繊維径で7.5μm以下が好ましく、より好ましくは6.5μm以下、さらに好ましくは5.5μm以下である。
【0026】
また、繊維の織り密度は3〜100本/25mmが好ましく、より好ましくは3〜50本/25mmであり、質量は5〜400g/mが好ましく、より好ましくは10〜300g/mである。この範囲であれば、本発明の表面処理炭素繊維フィルムとした時に上述の作用効果を容易に得ることができる。
【0027】
織りかたは特に制限なく、平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等を使用できる。また、双方または一方がテクスチャード加工を施された炭素繊維で製織された炭素繊維であっても良い。また、不織布や長繊維を一定方向に配列させた織物も使用可能である。
【0028】
ケイ素含有化合物による表面処理を行うに当たり、炭素繊維フィルムに集束剤が塗布されている場合は、予め除去しておくことが望ましい。
【0029】
本発明では、要求される特性に応じて、上記炭素繊維に、ガラスクロス、セラミック系などの無機繊維、ホウ素繊維、スチールファイバー、タングステン繊維などの金属繊維、アラミド、フェノール系などの新耐熱繊維などの繊維を混合した織布などを炭素繊維フィルムとして用いることができる。
【0030】
本発明の表面処理炭素繊維フィルムを得るために、炭素繊維に処理するケイ素含有化合物としては、アルコキシシラン、ポリシラザン、及びこれらの部分加水分解縮合物、あるいはシリコーン変性ワニスからなる群から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0031】
アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンなどのアルキルアルコキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランなどのアリールアルコキシシラン、ヒドロキシトリメトキシシラン、ヒドロキシトリエトキシシランなどのヒドロキシアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルケニルアルコキシシラン,3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有アルコキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(N−ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−(N−ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩などのアミノ基含有アルコキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアネートアルコキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリスエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のアルコキシシラン化合物が挙げられ、これらのアルコキシシランは1種あるいは2種以上混合して使用しても良い。また、これらに限定するものではない。
【0032】
ポリシラザンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザンなどの化合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0033】
シリコーン変性ワニスとしては、アルキッド変性ワニスやポリエステル変性ワニス、エポキシ変性ワニス、アクリル変性ワニスなど多様なシリコーン変性ワニスが使用されるが、最終用途、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0034】
好ましいケイ素含有化合物としては、アルコキシシランが挙げられる。中でも好ましいアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシランや官能基を有するアルコキシシランで一般にシランカップリング剤と称されるタイプから選択される。例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が例示される。
【0035】
また、アルコキシシランの部分加水分解縮合物も好ましいケイ素含有化合物である。特に上記シランカップリング剤を部分加水分解縮合した官能基とアルコキシシリル基を併せ持つアルコキシシランオリゴマーは、好ましいケイ素含有化合物である。具体的には、エポキシ基含有アルコキシシランオリゴマーX−41−1059A(信越化学工業(株)製)、アミノ基含有アルコキシシランオリゴマーX−40−2651(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0036】
本発明の表面処理炭素繊維フィルムの熱伝導率は1〜300W/m・Kが好ましく、より詳しくはPAN系炭素繊維で構成された表面処理炭素繊維フィルムの場合は5〜15W/m・K、またはピッチ系炭素繊維で構成された表面処理炭素繊維フィルムの場合は50〜300W/m・Kであることが好ましい。
【0037】
本発明の表面処理炭素繊維フィルムのX−Y方向の線膨張係数は、20ppm/℃以下が好ましい。X−Y方向の線膨張係数の測定方法としては、幅3mm、長さ25mm、厚み50〜300μmにサンプルを切り出し、熱機械的分析(TMA)装置にて100mNの荷重を加えながら5℃/minの昇温速度で−60℃から200℃の温度範囲での引張り試験による測定方法を例示できる。線膨張係数が20ppm/℃以下、即ち、低線膨張係数であれば、さらに優れた耐熱性が得られる。
【0038】
本発明による表面処理炭素繊維フィルムは、JIS C 6481記載の方法で測定されるガラス転移温度を250℃以下の範囲に有さないものであることが好ましく、ガラス転移温度を300℃以下の範囲に有さないものであることがより好ましく、ガラス転移温度が測定されないものであることが特に好ましい。250℃以下にガラス転移点を有さないものであれば、さらに耐熱性に優れたものが得られる。
【0039】
本発明の表面処理炭素繊維フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、一般的な炭素繊維の処理方法を適用することができる。例えば、一般的な炭素繊維の塗布方法(コーティング方式)を例示できる。代表的なコーティング方式としては、ダイレクトグラビアコーター、チャンバードクターコーター、オフセットグラビアコーター、一本ロールキスコーター、リバースキスコーター、バーコーター、リバースロールコーター、スロッタダイ、エアードクターコーター、正回転ロールコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、含浸コーター、MBコーター、MBリバースコーターなどがある。中でもダイレクトグラビアコーター、オフセットコーター、含浸コーター塗布方式が本発明の表面処理炭素繊維フィルムの製造には好ましい。
【0040】
使用するケイ素含有化合物により条件は異なるが、例えば、塗布後に乾燥させ、硬化目的で室温から300℃で1分から24時間加熱する方法を挙げることができる。この方法の場合、生産性やコスト、作業性を考慮して、好ましくは100℃から250℃で3分から4時間、より好ましくは150℃から230℃で5分から2時間の加熱処理で本発明の表面処理炭素繊維フィルムを製造することができる。
【0041】
上記塗布方法で用いる塗布液は前述のケイ素含有化合物を溶媒で希釈したものである。溶媒の例としては、水あるいは有機溶剤をそれぞれ単独あるいは2種以上混合して用いることができる。有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。この希釈液に、更にギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、などの有機酸やアンモニア水などのpH調整剤、顔料、充填剤、界面活性剤、増粘剤などを添加することもできる。
【0042】
また、アルコキシ基の縮合触媒を添加してもよく、例えば有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ビスマス化合物のような有機金属化合物系、アミン系化合物などが挙げられる。
【0043】
有機金属化合物系の縮合触媒としては、具体的には、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)、ジブチルスズビス(ベンジルマレート)、ジメチルスズジメトキサイド、ジメチルスズジアセテート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジラウレート、スズジオクテート、及びスズジラウレート等の有機スズ化合物、並びに、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラノルマルプロピルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、ジイソプロピルジターシャリーブチルチタネート、ジメトキシチタンビスアセチルアセトナート、ジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテート、ジターシャーリーブトキシチタンビスエチルアセトアセテート、及びジターシャリーブトキシチタンビスメチルアセトアセテート等の有機チタン化合物、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)又はビスマストリス(ネオデカノエート)等の有機ビスマス化合物などの金属ルイス酸等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
アミン系化合物の例としては、ヘキシルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。
これら縮合触媒の中では、有機チタン化合物が特に好ましい。
【0045】
塗布液は、塗布環境への影響を考慮して、水系の塗布液が好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤(商品例:KBM−903(信越化学工業(株)製))は水系での安定性に優れ、溶解性もよいことから好ましいケイ素含有化合物である。
【0046】
このような表面処理炭素繊維フィルムであれば、高強度で、耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性、耐候性、柔軟性に優れ、熱伝導率が非常に高く、平均線膨張係数が低く、表面均一性に優れる表面処理炭素繊維フィルムとなる。
【0047】
本発明の表面処理炭素繊維フィルムは、軽量、高剛性を示す炭素繊維に、上記のように優れた柔軟性と高強度を付与したものであるため、テニスラケットやゴルフシャフト、野球のバット、釣竿などのスポーツ、レジャー用品への素材としての応用なども考えられる。また、航空機や宇宙向けロケットなど補強材料として、自動車、自転車、船舶などの輸送分野の軽量高剛性高強度材料として、軽量高強度不燃性から防弾チョッキなどに、高強度・高耐久・耐候性を生かした橋脚の補強などインフラの改修工事向けとして土木分野などに、本発明の表面処理炭素繊維フィルムは多種多様な分野での使用が期待できる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0049】
[実施例1]
ケイ素含有化合物として、メチルトリメトキシシラン(商品名:KBM−13、信越化学工業製)を用いて、炭素繊維(使用糸:PAN系、密度:タテ糸7.9本/25mm、ヨコ糸7.9本/25mm、厚さ:86μm、質量:63g/m)に含浸させ、100℃×10分で加熱乾燥させた。その後100℃×1時間及び200℃×1時間加熱処理して炭素繊維フィルムを作製した。ケイ素含有化合物の付着量を表1に示す。また、得られた表面処理炭素繊維フィルムに対し、以下の測定を行なった。
【0050】
・機械的特性
得られた表面処理炭素繊維フィルムについて以下の機械的特性を測定した。
【0051】
1.慣用曲げ剛性
JIS R 3420(ガラス繊維一般試験方法)に記載の方法で測定を行い、縦糸方向での測定値を用いた。結果を表1に示す。
【0052】
2.線膨張係数
得られた表面処理炭素繊維フィルムについて、幅3mm、長さ25mm、厚み50〜300μmにサンプルを切り出し、熱機械的分析(TMA)装置(装置名:TMA/SS6000、(株)セイコーインスツルメンツ)にて100mNの荷重を加えながら5℃/minの昇温速度で−60℃から200℃の温度範囲で引張り試験を行った。温度に対する表面処理炭素繊維フィルムの伸び量から熱膨張係数を測定した。
【0053】
3.ガラス転移温度
得られた表面処理炭素繊維フィルムについて、幅4〜6mm、長さ30〜40mm、厚み50〜300μmにサンプルを切り出し、JIS C 6481記載の方法に従って、動的粘弾性測定装置(装置名:Q800、TA Instruments社製)により、−100℃〜300℃の範囲にわたって、前記フィルムに対して平行な方向(X−Y軸方向)のガラス転移温度を測定した。前記測定範囲にガラス転移温度が発現する場合はその値を表1に示し、前記温度範囲にガラス転移温度が発現しない場合は「検出されず」と表1に示した。
【0054】
4.貯蔵弾性率
得られた表面処理炭素繊維フィルムについて、幅5mm、長さ50mm、厚み200μmにサンプルを切り出し、JIS C 6481記載の方法に従って、動的弾性率測定装置(装置名:Q800 TA Instruments社製)より、−50℃〜250℃の範囲にわたって、前記フィルムに対して平行な方向(X−Y軸方向)の貯蔵弾性率を測定した。25℃における貯蔵弾性率の値を表1に示した。
【0055】
[実施例2]
ケイ素含有化合物として、メチルトリメトキシシランのかわりに、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業製)を用いたほかは、実施例1と同様の方法で炭素繊維フィルムを作製した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0056】
[実施例3]
ケイ素含有化合物として、メチルトリメトキシシランのかわりに、アミノシランカップリング剤の32質量%含有水溶液であるKBP−90(信越化学工業製)を用いたほかは、実施例1と同様の方法で炭素繊維フィルムを作製した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0057】
[実施例4]
ケイ素含有化合物として、メチルトリメトキシシランのかわりに、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−903、信越化学工業製)を用いたほかは、実施例1と同様の方法で炭素繊維フィルムを作製した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0058】
[実施例5]
ケイ素含有化合物として、メチルトリメトキシシランのかわりに、アミノ基含有オルガノアルコキシシランオリゴマー(X−40−2651、信越化学工業製)50gを用い、これをトルエン50gで希釈した塗布液を用いたほかは、実施例1と同様の方法で炭素繊維フィルムを作製した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0059】
[実施例6]
ケイ素含有化合物として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−903、信越化学工業製)を用いて、炭素繊維(使用糸:PAN系、密度:タテ糸7.9本/25mm、ヨコ糸7.9本/25mm、厚さ:86μm、質量:63g/m)に含浸させ、100℃×10分間乾燥させた。含浸・乾燥操作を3回繰り返し、炭素繊維フィルムを作製した。
【0060】
[実施例7]
ケイ素含有化合物として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−903、信越化学工業製)をトルエンで希釈して0.01質量%溶液を調整し、それを塗布液として用いたほかは実施例1と同様の方法で炭素繊維フィルムを作製した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0061】
[比較例1]
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(製品名:EPICRON N−695、(株)DIC製)10質量部、フェノールノボラック樹脂(製品名:PHENOLITE TD−2090、(株)DIC製)5質量部、イミダゾール系触媒(製品名:2E4MZ、(株)四国化成製)0.1質量部、球状シリカ(製品名:SC−2050−SE、(株)アドマテックス製)85質量部及びMEK溶剤50質量部からなるエポキシ樹脂組成物のスラリー溶液を用い、炭素繊維(使用糸:PAN系、密度:タテ糸7.9本/25mm、ヨコ糸7.9本/25mm、厚さ:86μm、質量:63g/m)に含浸させ、100℃×10分間乾燥し、未硬化状態のエポキシ樹脂含浸炭素繊維フィルムを得た。得られたフィルムについて、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0062】
[比較例2]
比較例1のスラリーから、球状シリカを除いた溶液を用いた以外、比較例1と同様の操作を行った。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0063】
[比較例3]
ケイ素含有化合物として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−903、信越化学工業製)をトルエンで希釈した0.1質量%溶液を用い、実施例1と同様の方法で炭素繊維フィルムを作製した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0064】
[比較例4]
ケイ素含有化合物として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−903、信越化学工業製)を用い、炭素繊維(使用糸:PAN系、密度:タテ糸7.9本/25mm、ヨコ糸7.9本/25mm、厚さ:86μm、質量:63g/m)に含浸させ、100℃×10分で加熱乾燥させた。含浸・乾燥操作を6回繰り返し、厚い炭素繊維フィルムを作製した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0065】
【表1】
*1 慣用曲げ剛性倍率(倍)=表面処理炭素繊維フィルムの慣用曲げ剛性
/未処理炭素繊維フィルムの慣用曲げ剛性
【0066】
表1の結果から、実施例1〜7の表面処理炭素繊維フィルムは、いずれも慣用曲げ剛性の値が、未処理炭素繊維フィルムの値に対して10倍から150倍の値であり、一方、比較例1〜4の表面処理炭素繊維フィルムにおいては、いずれも慣用曲げ剛性の値が、未処理炭素繊維フィルムの値に対して10倍から150倍の値ではなかった。
【0067】
5.形状変化試験
実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例7、比較例1、比較例2、比較例3及び比較例4で作製した表面処理炭素繊維フィルム及び、比較例5として未処理の炭素繊維(使用糸:PAN系、密度:タテ糸7.9本/25mm、ヨコ糸7.9本/25mm、厚さ:86μm、質量:63g/m)を用いて下記の比較評価試験を行った。
予め、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:EPICRON N−695、(株)DIC製)10質量部、フェノールノボラック樹脂(商品名:PHENOLITE TD−2090、(株)DIC製)5質量部、イミダゾール系触媒(商品名:1B2PZ、(株)四国化成製)0.1質量部、球状シリカ(商品名:SC−2050−SE、(株)アドマテックス製)85質量部及びMEK溶剤50質量部からなる高フィラー含有エポキシ樹脂組成物のスラリーを調製した。
各表面処理炭素繊維フィルムあるいは炭素繊維を、スクイズロールつきの簡易コーターを用いて上記高フィラー含有エポキシ樹脂組成物スラリーに含浸したのち、100℃で10分乾燥後、金型にセットし、温度:200℃、圧力:2MPa、加圧時間:70分でプレスして、フィルムの目開き、よじれなど形状変化を目視で観察した。また、得られた炭素繊維フィルムの両面に、接着層およびその最外層に銅箔(福田金属製、厚さ:18μm)を配置し、熱プレス機にて150℃で30分間加圧成型し、更にこれを150℃で1時間二次硬化させて積層板を得た。得られた積層板を用いて図1のような形状の基板を作製した。作製した基板に対し、IRリフロー(最高温度260℃)を3回行なった後の基板の長手方向の反り(単位mm)を測定した(寸法安定性)。また、リフロー後の表面の色の変化を目視で観察した(耐熱変色性)。
その時のその結果を表2に記載した。
【0068】
【表2】
*2 形状変化
○:良好、目開きなし ×:目開きあり、縒れあり
【0069】
表2の結果から、実施例2〜5、7の表面処理炭素繊維フィルム及び前記表面処理炭素繊維フィルムを用いて作製した基板は、いずれもプレス時の形状変化が少なく、寸法安定性に優れるものであり、また、表面の色の変化がないことから耐熱変色性にも優れるものであることが分かった。一方、比較例1〜4の表面処理炭素繊維フィルム及び前記表面処理炭素繊維フィルムを用いて作製した基板は、寸法安定性及び耐熱変色性に劣るものであることが分かった。
【0070】
[実施例8]
実施例1で得られた表面処理炭素繊維フィルム2枚を付加型シリコーン樹脂接着剤(製品名:KE−109、信越化学工業(株)製)によって貼りあわせ、熱プレス機にて圧力2MPa、150℃で30分間加圧成型し、更にこれを150℃で1時間2次硬化させて積層板を得た。得られた積層板について下記評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0071】
6.外観
得られた積層板の表面を目視で観察し、クロスの目開き、捩れの有無を確認した。
【0072】
7.耐熱変色性
得られた積層板に対して、IRリフロー装置(装置名:TNR15−225LH、(株)田村製作所製)により260℃、60秒間のIRリフロー処理を行った後、表面の色の変化を目視で観察した。
【0073】
[実施例9]
実施例3で得られた表面処理炭素繊維フィルムを用いて、実施例8と同様の方法で積層板を得た。得られた積層板を用いて、実施例8と同様にして、外観、耐熱変色性を評価した。結果を表3に記載した。
【0074】
[実施例10]
実施例6で得られた表面処理炭素繊維フィルムを用いて、実施例8と同様の方法で積層板を得た。得られた積層板を用いて、実施例8と同様にして、外観、耐熱変色性を評価した。結果を表3に記載した。
【0075】
[比較例6]
未処理のガラスクロス(使用糸:E250、密度:タテ糸59本/25mm、ヨコ糸57本/25mm、厚み:87μm、質量:95g/m)を用いて、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(製品名:EPICRON N−695、(株)DIC製)10質量部、フェノールノボラック樹脂(製品名:PHENOLITE TD−2090、(株)DIC製)5質量部、イミダゾール系触媒(製品名:2E4MZ、(株)四国化成製)0.1質量部、球状シリカ(製品名:SC−2050−SE、(株)アドマテックス製)85質量部及びMEK溶剤50質量部からなるエポキシ樹脂組成物のスラリー溶液に含浸し、100℃×10分間乾燥し、未硬化状態のエポキシ樹脂含浸ガラス繊維フィルムを得た。得られた未硬化状態のエポキシ樹脂含浸ガラス繊維フィルムを4枚用い、熱プレス機にて圧力2MPa、150℃で30分間加圧成型し、更にこれを150℃で1時間二次硬化させて積層板を得た。得られた積層板を用いて、実施例8と同様にして、外観、耐熱変色性を評価した。結果を表3に記載した。
【0076】
【表3】
*3 形状変化
○:良好、目開きなし ×:目開きまたは縒れ、もしくは両方の発生
【0077】
表3の結果から、実施例8〜10の積層板では、本発明の表面処理炭素繊維フィルムを用いているため、プレス時の形状変化が少ないことから寸法安定性に優れ、表面の色の変化がないことから耐熱変色性に優れた基板を提供できる。また、エポキシ樹脂などを含まずに積層板を製造しているため、従来の炭素繊維基材の欠点である基材の縒れ、目開きを抑えた積層板を得ることも可能になる。
一方、比較例6のガラスクロスを用いた積層板においては、プレス時の形状変化があり、表面の色の変化があることから、寸法安定性、耐熱変色性に劣るものであったため、上記のように基板に用いるのは不適当であると考えられる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1