特開2015-232420(P2015-232420A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2015232420-非鉄金属製錬炉用廃熱ボイラー 図000003
  • 特開2015232420-非鉄金属製錬炉用廃熱ボイラー 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232420(P2015-232420A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】非鉄金属製錬炉用廃熱ボイラー
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/10 20060101AFI20151201BHJP
   F22B 37/20 20060101ALI20151201BHJP
   F22B 15/00 20060101ALI20151201BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20151201BHJP
   C22C 19/05 20060101ALI20151201BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20151201BHJP
   C22C 27/06 20060101ALI20151201BHJP
   B23K 9/04 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   F22B37/10 M
   F22B37/20 A
   F22B15/00
   F27D17/00 101A
   C22C19/05 B
   B23K35/30 340L
   C22C27/06
   B23K9/04 H
   B23K9/04 N
   B23K9/04 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-119270(P2014-119270)
(22)【出願日】2014年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100083910
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 正緒
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 伸充
(72)【発明者】
【氏名】角 雄二
【テーマコード(参考)】
4K056
【Fターム(参考)】
4K056AA02
4K056BA01
4K056BB01
4K056CA04
4K056DA02
4K056DA13
(57)【要約】
【課題】 水管の腐食を抑えて長期間使用することができる非鉄製錬炉用廃熱ボイラーを提供する。
【解決手段】 キャスタブル21で内張りされた胴体部20と、その内壁面21a上に蛇行状に設けられた水管10とからなり、硫化鉱を原料とする製錬炉から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーであって、この水管10は少なくとも胴体部20の排ガス入口部近傍に配設された少なくとも隣接する2つの直管11及びこれらをつなぐU字状曲り管12、13において、内壁面21aに対向する側とは反対側が隙間のない平坦な面で構成されている。上記U字状曲り管12、13の平坦な面は、鉄にニッケルを40質量%以上及びクロムを10質量%以上含む合金又は酸化チタンを肉盛りすることで形成することができる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体部とその内壁面上に蛇行状に設けられた水管とからなり、硫化鉱を原料とする製錬炉から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーであって、前記水管は少なくとも前記胴体部の排ガス入口部近傍に配設された少なくとも隣接する2つの直管及びこれらをつなぐU字状曲り管において、該内壁面に対向する側とは反対側が隙間のない平坦な面で構成されていることを特徴とする非鉄金属製錬炉用の廃熱ボイラー。
【請求項2】
前記U字状曲り管の前記平坦な面は管の外周面のうち前記内壁面に対向する側とは反対側に肉盛りすることにより形成されたものであり、該肉盛りの材料は肉盛りされる管の材料と同じ材料、鉄にニッケルを40質量%以上及びクロムを10質量%以上含む合金、及び酸化チタンのうちのいずれか1つ以上を用いることを特徴とする、請求項1に記載の非鉄金属製錬炉用廃熱ボイラー。
【請求項3】
前記U字状曲り管の前記平坦な面は管の外周面のうち前記内壁面に対向する側とは反対側に肉盛りすることにより形成されたものであり、該肉盛りは鉄にニッケルを40質量%以上及びクロムを10質量%以上含む合金で肉盛りした後、その上に酸化チタンで肉盛りすることを特徴とする、請求項1に記載の非鉄金属製錬炉用廃熱ボイラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化鉱を原料とする非鉄金属製錬炉に設けられる廃熱ボイラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原料としての非鉄金属を溶融してマットとスラグとに分離する自溶炉などの非鉄金属製錬炉には、溶融時に発生する高温の排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーが設けられている。この廃熱ボイラーは、一般にキャスタブルで内張りされた胴体部の内側に水管を配設した構造になっている。この水管の内側を流れるボイラー水と水管の外側を流れる高温の排ガスとの熱交換により廃熱回収が行われる。
【0003】
上述の非鉄金属原料に硫化鉱を使用する場合は、製錬炉内に煙灰、からみ調整剤(フラックスとも称される)、補助燃料等の副原料が硫化鉱と共に装入され、更に反応用気体が製錬炉内に吹き込まれて製錬が行われる。そのため、上記廃熱ボイラーに送られる排ガスには煙灰が含まれており、この排ガス中の煙灰の一部が廃熱ボイラーの水管の外周面に付着することがあった。
【0004】
このように水管の外周面に煙灰が付着すると熱交換効率が低下するうえ、付着した煙灰に含まれる腐食性物質により水管が腐食することがあった。そこで、水管に例えばエアーを吹き付けて付着した煙灰を除去し、除去された煙灰を胴体部の下方に設けたチェーンコンベアなどの搬送設備により排出することが行われている。このような煙灰除去手段により、水管に付着した煙灰の大部分を除去することができるが、廃熱ボイラーの特に排ガス入口部分近傍に配されている水管の曲り管部分では依然として著しい腐食が生ずることがあった。
【0005】
非鉄金属製錬炉用の廃熱ボイラーではないが、特許文献1には鉛直方向に延在する複数の過熱器直管と、これらのうち隣接する過熱器直管同士を接続するU字状曲り管と、過熱器管寄せとからなる黒液回収ボイラー用の過熱器において、下側のU字状曲り管の下部に溶接肉盛りすることにより下向きに凸な突起を設ける技術が提案されている。これにより溶融煙灰が停滞しにくくなり、よって過熱器直管の腐食の程度を低減することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−196207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、非鉄金属製錬炉の原料に使用する硫化鉱にはハロゲンなどの腐食性の強い元素がより高い濃度で含まれる傾向にあり、これに伴って硫化鉱の溶融の際にこの腐食性の強い元素が煙灰に多量に含まれることがあった。その結果、煙灰の残留しやすい上記したU字状曲り管において特に激しい腐食が発生し、定修の度に取替を要する場合が増えていた。
【0008】
特許文献1に示す溶接肉盛りを行うことによりある程度腐食防止の効果が得られると考えられるが、溶接肉盛り部と非肉盛り部との境界部分や、隣接する水管同士の間に存在する隙間では付着した煙灰を除去しにくく、その部分から腐食が進むことが予想される。また、非鉄金属製錬炉用の廃熱ボイラーで熱回収される排ガスに含まれる煙灰は溶融しておらず固体であるため、特許文献1の技術をそのまま適用しても十分に効果を発揮させることができないと思われる。
【0009】
本発明は、上記した従来の問題に鑑みてなされたものであり、非鉄金属製錬炉において原料に含まれるハロゲンなどの腐食性の強い元素の濃度が増加して該製錬炉から排出される排ガスに当該腐食性の強い元素が多く含まれる場合であっても、該排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーの水管の腐食を抑えて長期間使用することができる非鉄製錬炉用廃熱ボイラーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の非鉄金属製錬炉用廃熱ボイラーは、胴体部とその内壁面上に蛇行状に設けられた水管とからなり、硫化鉱を原料とする製錬炉から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーであって、前記水管は少なくとも前記胴体部の排ガス入口部近傍に配設された少なくとも隣接する2つの直管及びこれらをつなぐU字状曲り管において、該内壁面に対向する側とは反対側が隙間のない平坦な面で構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非鉄金属製錬炉において原料に含まれるハロゲンなどの腐食性の強い元素の濃度が増加して該製錬炉から排出される排ガス中に該腐食性の強い元素が多量に含まれる場合であっても、該排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーの水管の腐食を抑えて長期間使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一具体例の非鉄金属製錬炉用の廃熱ボイラーの斜視図である。
図2】本発明の一具体例の非鉄金属製錬炉用廃熱ボイラーが有する水管の正面図である。
図3図2の水管のIII−III矢視を内張りされた胴体部の一部と共に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の非鉄金属製錬炉用の廃熱ボイラーの一具体例について、製錬炉としての自溶炉の原料に黄銅鉱などの硫化鉱を用いる場合を例に挙げて説明する。硫化鉱を原料とする乾式製錬の自溶炉では、硫化鉱は自身の酸化反応熱で溶融し、銅品位60〜65%程度のマットと、酸化鉄や珪酸などからなるスラグとに分けられる。廃熱ボイラーはこの溶融時に自溶炉から排出される高温の排ガスの廃熱を回収して蒸気を発生させる設備であり、廃熱が回収された後の排ガスは硫酸の原料ガスとして硫酸製造設備に送られる。
【0014】
上記の廃熱ボイラーは、例えば図1に示すように輻射部1と対流部2とから構成され、自溶炉から排出される排ガスは、白矢印で示すように輻射部1の胴体部の側面に設けられた排ガス入口部1aから入って輻射部1及び対流部2の内部で各々廃熱回収された後、対流部2の胴体部の側面に設けられた排ガス出口部2aから排出される。これら輻射部1及び対流部2の胴体部は、各々略直方体形状の上部と、対向する壁面の間隔が下方に向かって狭くなるテーパー構造の下部とから構成されており、排ガスから分離した煙灰はこのテーパー構造の下方に集められた後、図示しないチェーンコンベア等の煙灰排出装置を介して胴体部から排出される。
【0015】
この胴体部の内側に、排ガスとの熱交換を行うボイラー水が内部を流れる水管が設けられている。水管は排ガスの廃熱を効率よく回収できるように配設されており、具体的には輻射部1ではその胴体部の内壁面のほぼ全面に亘って蛇行状に水管が張り巡らされており、一方、対流部2では胴体部の内壁面と胴体部の空間部分とに水管が設けられている。これら水管は容易に設置できるように、一平面上において互いに平行に配設された複数の直管とこれらのうち隣接する直管同士の端部をつなぐU字状曲り管とが一体となったパネル状の形態で設置されることがある。
【0016】
本発明の一具体例の廃熱ボイラーでは、上記した胴体部の内壁面上に蛇行状に設けられた水管のうち、少なくとも排ガス入口部1aの近傍に配設された少なくとも隣接する2つの直管及びこれらをつなぐU字状曲り管において、該内壁面に対向する側とは反対側が隙間のない平坦な面で構成されている。具体的に説明すると、例えば図2に示すように、排ガス入口部1aの上側壁面上に設けられている水管10は、鉛直方向に延在する8本の直管11と、これら直管11のうち隣接するもの同士の上端部をつなぐ上側U字状曲り管12と、隣接するもの同士の下端部をつなぐ下側U字状曲り管13とがパネル状に一体化した構造になっている。なお、上記「近傍」とは、排ガス入口部1aが設けられている入口側壁面と、この入口側壁面に接続して設けられている側部壁面の内、排ガス入口部1a側端部から3mまでの範囲とをいうものとする。
【0017】
このようにパネル状に一体化した水管10は、図3に示すように、本体胴体部20を内張りしているキャスタブル21の内壁面21a上に当該パネルの面が内壁面21aと平行になるように設けられている。すなわち、廃熱ボイラーの外側から胴体部20、キャスタブル21、及びパネル状の水管10の順にアンカーボルトなどの固定手段を用いて取付けられている。そして、この一体化した水管10は全体に亘ってキャスタブル21の内壁面21aに対向する側とは反対側が隙間のない平坦な面10aで構成されている。ここで、「隙間のない」とは、平坦な面10aには隙間が全くないのが好ましいが、平坦な面を有する複数の直管と曲り管とを組み立ててパネル状に一体化させる際の作業性や加工精度等を考慮して、本発明の効果にほとんど悪影響を及ぼさない3mm程度までの隙間は隙間がないものとみなすことを意味している。
【0018】
上記構成により、胴体部20を内張りするキャスタブル21の内壁面21a上に蛇行状に設けられた水管10は、廃熱ボイラーの胴体部20内に入った排ガスに直接接するので、効率よく廃熱回収を行うことが可能になる。また、水管10のうち、当該排ガスに直接接する部分が上記のように水管10の全体に亘って隙間のない平坦な面10aで構成されているので、曲り管の窪み部分に煙灰が堆積しにくくなり、局所的な著しい腐食を防ぐことができる。なお、上記内壁面21aと上記水管10との隙間は、例えばキャスタブルなどで埋めても良い。
【0019】
ところで、従来の自溶炉廃熱ボイラーにおいては、排ガス入口部1a近傍の水管の局所的な減肉が近年ますます激しくなる傾向にあり、曲り管部分にニッケル基合金を溶接肉盛りすることで対応しても局所的な減肉が発生することがあった。このような近年の著しい減肉の原因について調査した結果、腐食と摩耗が相乗的に影響して著しい減肉を発生させていることが分かった。
【0020】
具体的には、近年の著しい腐食の原因としては、製錬炉の原料にハロゲンの他にNaやKなどのアルカリ元素が増加傾向にあることに起因していることが分かった。すなわち、非鉄金属製錬炉で使用する原料にハロゲンやアルカリなどの腐食性の強い元素がより多く含まれると、これに伴ってこれら腐食性の強い元素が煙灰となって排ガスに多量に含まれるため、水管に付着した煙灰から激しい腐食が生じることになる。
【0021】
一方、近年の著しい摩耗の原因としては、製錬炉における近年の硫化鉱処理量の増加に伴って排ガスの発生量およびこれに含まれる煙灰の濃度が増加傾向にあることに起因していることが分かった。すなわち、排ガス量が増えたことにより、排ガス温度が最も高い排ガス入口部1a近傍では排ガスの流速が極めて早くなり、その結果、排ガス入口部1a近傍の水管の曲り管の窪み部分や隣り合う曲り管の隙間部分において排ガスに渦流などの偏流が生じやすく、しかも排ガス入口部1a近傍は煙灰を含む排ガスの固気分離が行われる輻射部1の胴体部の入口側に位置しているので、排ガス入口部1a近傍の排ガスは多量の煙灰をそのまま含んでいるため、著しい摩耗を生ずることになる。
【0022】
このような近年の著しい腐食と摩耗とが生じる条件下であっても、上記したように水管10の全体に亘って胴体部20の内壁面に対向する側とは反対側を隙間のない平坦な面10aで構成することにより、U字状曲り管に煙灰が付着しにくくなるので、そこから腐食が進行するのを防ぐことができる。更に、排ガスを当該平坦な面10aに沿って滑らかに流すことが可能になるので曲り管の窪み部分や隣り合う曲り管の隙間部分等で排ガスが渦流などの局部的な偏流を起こしにくくなり、よって局所的な偏流に起因する著しい摩耗を防止することができる。
【0023】
上記した平坦な面10aは、例えば下記の方法で作製することができる。すなわち、直管部分においてはボイラー水管で用いられているいわゆるオメガチューブを使用し、このオメガチューブの平坦な面側が上記した胴体部20の内壁面に対向する側とは反対側となるように設置すればよい。U字状の曲り管については、上記の直管に用いたオメガチューブの平坦な面と同一の面となるように、一般的な断面円形のボイラー水管用の曲り管の外周面に溶接で肉盛りすればよい。その際、平坦な面の表面は、機械仕上げにおけるグラインダー仕上げと同等とするのが好ましい。
【0024】
平坦に肉盛りする材料には、上記した一般的なボイラー水管用配管と同じ材料でもよいし、例えばインコネルなどのニッケルを40%以上、クロムを10%以上含む合金を用いてもよい。このような合金を用いることで極めて高い耐食性を得ることができる。あるいは、この合金の肉盛りに代えて酸化チタン(チタニア)を用いてもよい。この場合は極めて高い耐摩耗性を得ることができる。なお、酸化チタンの場合は例えば溶射により肉盛りすることができる。
【0025】
あるいは、上記の平坦な面10aを形成する際、最初に上記したニッケルを40%以上、クロムを10%以上含む合金で溶接により肉盛りし、例えばグラインダーなどを使用して平坦に加工した後、この合金の平坦な加工面上に上記した酸化チタンで溶射により肉盛りしてもよい。この場合は、容易に曲り管に平坦な面を形成することができる上、当該平坦な面に高い耐食性と高い耐摩耗性の両方を兼ね備えることが可能になる。
【符号の説明】
【0026】
1 輻射部
1a 排ガス入口部
2 対流部
2a 排ガス出口部
10 水管
10a 平坦な面
11 直管
12 上側U字状曲り管
13 下側U字状曲り管
20 胴体部
21 キャスタブル
21a 内壁面
図1
図2
図3