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特開2015-232546X線分析用システムおよびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-232546(P2015-232546A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】X線分析用システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/06 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
   G01N23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-50662(P2015-50662)
(22)【出願日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-98700(P2014-98700)
(32)【優先日】2014年5月12日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】窪内 裕太
(72)【発明者】
【氏名】押村 信満
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001EA01
2G001GA01
2G001JA08
2G001LA11
2G001MA05
2G001NA16
2G001PA13
2G001QA02
(57)【要約】
【課題】複数のラミネートセルについてX線分析の測定結果を得るのに長い時間が必要であった。
【解決手段】セパレータを間に挟んで正極と負極を積層してなる電池要素を含むラミネートセルにX線を照射して分析データを得るin−situX線分析用のシステムであって、複数のラミネートセルを保持する試料ホルダー31を有し、X線の通過位置に配置するラミネートセルを試料ホルダーの移動によって切り替える試料切り替え装置27と、一つのラミネートセルについて1回のX線分析の測定が終了するたびに、X線の通過位置に配置するラミネートセルを切り替えるべく、試料切り替え装置27を駆動する試料切り替え制御部29とを備える。試料切り替え制御部29は、複数のラミネートセルをX線の通過位置に順に配置する一巡の切り替え動作を試料切り替え装置27が2回以上繰り返すように、試料切り替え装置31を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを間に挟んで正極と負極を積層してなる電池要素を、電解液とともにラミネートフィルムにより密封したラミネートセルを試料とし、前記ラミネートセルにX線を照射して分析データを得るin−situX線分析に用いられるX線分析用システムであって、
複数のラミネートセルを保持することができる試料ホルダーを有し、前記試料ホルダーで保持した前記複数のラミネートセルのうち、前記X線の通過位置に配置するラミネートセルを前記試料ホルダーの移動によって切り替える試料切り替え装置と、
前記試料ホルダーで保持した前記複数のラミネートセルを予め決められた充放電試験時間内に充放電させる充放電装置と、
前記充放電試験時間内に前記複数のラミネートセルのX線分析の測定を並行して行うように、前記試料切り替え装置および前記充放電装置を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とするX線分析用システム。
【請求項2】
前記制御装置は、一つのラミネートセルについて1回のX線分析の測定が終了するたびに、前記X線の通過位置に配置するラミネートセルを切り替えるべく、前記試料切り替え装置を駆動するとともに、前記複数のラミネートセルを前記X線の通過位置に順に配置する一巡の切り替え動作を前記試料切り替え装置が前記充放電試験時間内に少なくとも2回以上繰り返すように、前記試料切り替え装置を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のX線分析用システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記X線の通過位置に配置するラミネートセルの順序にあわせて前記複数のラミネートセルの充放電を順に開始するように、前記充放電装置を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のX線分析用システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ラミネートセルに照射するX線のエネルギーを調整するモノクロメータの動作に連動するように、前記試料切り替え装置の動作を制御する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のX線分析用システム。
【請求項5】
セパレータを間に挟んで正極と負極を積層してなる電池要素を、電解液とともにラミネートフィルムにより密封したラミネートセルを試料とし、前記ラミネートセルにX線を照射して分析データを得るin−situX線分析に用いられるX線分析用システムに用いられるプログラムであって、
複数のラミネートセルを保持することができる試料ホルダーを有し、前記試料ホルダーで保持した前記複数のラミネートセルのうち、前記X線の通過位置に配置するラミネートセルを前記試料ホルダーの移動によって切り替える試料切り替え装置と、
前記試料ホルダーで保持した前記複数のラミネートセルを予め決められた充放電試験時間内に充放電させる充放電装置と、を制御の対象とし、
前記充放電試験時間内に前記複数のラミネートセルのX線分析の測定を並行して行うように、前記試料切り替え装置および前記充放電装置を制御する制御装置として、コンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料のX線分析に用いられるX線分析用システムおよびプログラムに係り、特に、充放電過程における二次電池の電子状態や構造変化などを測定するために用いて好適なX線分析用システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池のなかでも、特にリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、作動電圧が高い電池として知られている。リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータといった携帯型の電子機器のほか、ハイブリッド自動車や電気自動車の電源などに広く用いられている。
【0003】
一般に、リチウムイオン二次電池は、正極活物質を主要構成成分とする正極と、負極活物質を主要構成成分とする負極と、正極と負極を分離するセパレータと、非水系電解質などから構成されている。これらの構成材料は、金属缶やアルミラミネートフィルムなどの外装材で封止されている。外装材に金属缶を用いたものはハードパック型と呼ばれ、アルミラミネートフィルムを用いたものはソフトパック型またはラミネートセルとも呼ばれている。
【0004】
電池材料の開発においては、電池材料を評価するためにX線分析が採用されている。X線分析のなかでも、特に、X線回折(X−ray Diffraction:以下、XRD)測定や、X線吸収微細構造(X‐ray Absorption Fine Structure:以下、XAFSと略す)測定は、結晶構造、構成元素それぞれの価数や局所構造(配位数、原子間距離)といった情報を与える分析手法であり、電池材料の評価に広く利用されている。
【0005】
電池材料のX線分析の方法は、大別すると、ex−situ測定と、in−situ測定とに分かれる。ex−situ測定は、充放電を行った電池セルを分解し、正極などの構成材料を取り出してX線分析を行うものである。in−situ測定は、電池を分解せずに充放電を行ったままX線分析を行うものである。リチウムイオン二次電池などの非水系電解質を用いる二次電池の場合、ex−situ測定では、電池の外装材の中から正極などの構成材料を取り出して大気中に暴露すると、正極中の正極活物質の状態が変化してしまうことがある。このため近年では、実際の電池反応に近い状態を評価できるin−situ測定が主流になりつつある。
【0006】
in−situでのX線分析に関しては、たとえば非特許文献1に記載されているように、金属ベリリウムを用いたX線分析用の特殊な電気化学セルが開発され、電池材料の評価に利用されている。金属ベリリウムは、導電性があり、かつ、X線の透過率が高いことから、X線を透過する窓部の材料に用いられている。しかしながら、金属ベリリウムを窓部の材料に用いる場合は、(1)ベリリウムの酸化物が毒物であるため取り扱いが難しい、(2)電気化学セルの構造が複雑であるためセルの作製コストが高くなる、といった問題があった。
【0007】
一方、特許文献1に記載されているように、アルミラミネートフィルムなどで外装した薄板状の電池(ラミネートセル)を対象に、直接、X線分析をする手法も採用されている。ラミネートセルは、正極、負極、外装などが十分に薄いため、X線を照射したときの透過率が高い。このため、ラミネートを分解せずに、そのままX線分析を実施することができる。この手法では、ラミネートセルの取り扱いが簡便であり、かつ、セルの作製コストが低いため、複数のセルを容易に作製できるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−230919号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】M. N. Richard et al, J. Electrochem. Soc. 144, 554, (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら従来においては、in−situでラミネートセルのX線分析を行う場合に、以下のような問題があった。
X線分析の一つであるXAFS測定などでは、ラミネートセルの充放電を行いながら、充放電中のラミネートセルのX線吸光度を測定している。XAFS測定では、充放電に伴う電池材料の経時的な状態の変化を調べるために、予め決められた充放電試験時間(たとえば、20時間前後)にわたってラミネートセルの充放電を行い、その時々のX線吸光度を測定している。このため、複数のラミネートセルについてX線分析の測定結果を得るには、少なくともラミネートセルの個数に充放電試験時間を乗算した分の時間が必要になる。したがって、すべてのラミネートセルの測定結果が得られるまでに長い時間がかかってしまう。
【0011】
また、ラミネートセルのX線分析では、非常に高いエネルギーのX線が用いられる。具体的には、高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設などの放射光から得られるX線が用いられる。このような大型放射光施設は日本国内に数カ所しかない。このため、研究開発を行うメーカーや機関、団体など(以下、「メーカー等」と総称)が大型放射光施設を利用する場合、大型放射光施設内の測定場所をあるメーカー等が使用している間は、他のメーカー等が使用できない状況になる。したがって、数少ない大型放射光施設を有効に利用するうえでも、ラミネートセルのX線分析を効率良く行うことが重要になる。
【0012】
本発明の主な目的は、複数のラミネートセルのX線分析を従来よりも効率良く行うことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、
セパレータを間に挟んで正極と負極を積層してなる電池要素を、電解液とともにラミネートフィルムにより密封したラミネートセルを試料とし、前記ラミネートセルにX線を照射して分析データを得るin−situX線分析に用いられるX線分析用システムであって、
複数のラミネートセルを保持することができる試料ホルダーを有し、前記試料ホルダーで保持した前記複数のラミネートセルのうち、前記X線の通過位置に配置するラミネートセルを前記試料ホルダーの移動によって切り替える試料切り替え装置と、
前記試料ホルダーで保持した前記複数のラミネートセルを予め決められた充放電試験時間内に充放電させる充放電装置と、
前記充放電試験時間内に前記複数のラミネートセルのX線分析の測定を並行して行うように、前記試料切り替え装置および前記充放電装置を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とするX線分析用システムである。
【0014】
本発明の第2の態様は、
前記制御装置は、一つのラミネートセルについて1回のX線分析の測定が終了するたびに、前記X線の通過位置に配置するラミネートセルを切り替えるべく、前記試料切り替え装置を駆動するとともに、前記複数のラミネートセルを前記X線の通過位置に順に配置する一巡の切り替え動作を前記試料切り替え装置が前記充放電試験時間内に少なくとも2回以上繰り返すように、前記試料切り替え装置を制御する
ことを特徴とする上記第1の態様に記載のX線分析用システムである。
【0015】
本発明の第3の態様は、
前記制御装置は、前記X線の通過位置に配置するラミネートセルの順序にあわせて前記複数のラミネートセルの充放電を順に開始するように、前記充放電装置を制御する
ことを特徴とする上記第1または第2の態様に記載のX線分析用システムである。
【0016】
本発明の第4の態様は、
前記制御装置は、前記ラミネートセルに照射するX線のエネルギーを調整するモノクロメータの動作に連動するように、前記試料切り替え装置の動作を制御する
ことを特徴とする上記第1〜第3の態様のいずれかに記載のX線分析用システムである。
【0017】
本発明の第5の態様は、
セパレータを間に挟んで正極と負極を積層してなる電池要素を、電解液とともにラミネートフィルムにより密封したラミネートセルを試料とし、前記ラミネートセルにX線を照射して分析データを得るin−situX線分析に用いられるX線分析用システムに用いられるプログラムであって、
複数のラミネートセルを保持することができる試料ホルダーを有し、前記試料ホルダーで保持した前記複数のラミネートセルのうち、前記X線の通過位置に配置するラミネートセルを前記試料ホルダーの移動によって切り替える試料切り替え装置と、
前記試料ホルダーで保持した前記複数のラミネートセルを予め決められた充放電試験時間内に充放電させる充放電装置と、を制御の対象とし、
前記充放電試験時間内に前記複数のラミネートセルのX線分析の測定を並行して行うように、前記試料切り替え装置および前記充放電装置を制御する制御装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数のラミネートセルのX線分析を従来よりも効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】X線分析装置の構成例を示す概略図である。
図2】X線分析の対象試料となるラミネートセルの構成例を示す概略断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るX線分析用システムの構成例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る試料切り替え装置の構成例を示す正面図である。
図5図4に示す試料切り替え装置の斜視図である。
図6】第1支持部材の正面図である。
図7】第1支持部材の斜視図である。
図8】第2支持部材の斜視図である。
図9】第1支持部材に窓部材を貼り付けた状態を示す正面図である。
図10】第2支持部材に窓部材を貼り付けた状態を示す正面図である。
図11】押さえ部の断面図である。
図12】複数のラミネートセルを充放電装置に電気的に接続した状態を示す模式図である。
図13】測定工程で行われる処理の手順を示すフローチャートである。
図14】試料ホルダーの移動に伴うラミネートセルの切り替え動作を説明する図(その1)である。
図15】試料ホルダーの移動に伴うラミネートセルの切り替え動作を説明する図(その2)である。
図16】試料ホルダーの移動に伴うラミネートセルの切り替え動作を説明する図(その3)である。
図17】試料ホルダーの移動に伴うラミネートセルの切り替え動作を説明する図(その4)である。
図18】4つのラミネートセルの充放電を同時に開始する場合のタイミングチャートである。
図19】4つのラミネートセルの充放電を異なるタイミングで順に開始する場合のタイミングチャートである。
図20】本発明の他の実施形態に係る試料切り替え装置の構成例を示す斜視図である。
図21】第1支持部材の斜視図である。
図22】試料ホルダーの正面図である。
図23】(A)は第1支持部材の平面図、(B)は第1支持部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施の形態においては、次の順序で説明を行う。
1.X線分析装置の構成
2.ラミネートセルの構成
3.X線分析用システムの構成
4.試料切り替え装置の構成
5.試料切り替え装置の動作
6.X線分析方法
7.実施の形態の効果
8.変形例等
9.他の実施の形態
【0021】
<1.X線分析装置の構成>
図1はX線分析装置の構成例を示す概略図である。
図示したX線分析装置は、X線放射光源1と、モノクロメータ2と、第1のX線検出器3と、試料設置部4と、第2のX線検出器5と、を備えている。X線放射光源1は、高エネルギーのX線を放射するものである。X線分析では、実験室系X線装置または放射光施設から発生するX線を用いることができる。モノクロメータ2は、試料に照射されるX線のエネルギー(波長)を、Braggの条件式に基づく回折によって調整するものである。具体的には、モノクロメータ2は、X線放射光源1から放射されたX線を取り込むとともに、取り込んだX線を回折させることにより、特定のエネルギー(波長)のX線を取り出す。モノクロメータ2としては、二結晶モノクロメータを用いることができる。二結晶モノクロメータを用いた場合は、二つの分光結晶の角度に応じて、特定のエネルギー(波長)のX線を取り出すことができ、出射ビームの位置を一定に保つことができる。また、モノクロメータ2の動作をBraggの条件式にしたがって制御することにより、モノクロメータ2の角度を連続的または断続的に変化させることができる。
【0022】
モノクロメータ2でエネルギーが調整されたX線の出射方向には、第1のX線検出器3と、試料設置部4と、第2のX線検出器5とが順に配置されている。試料設置部4は、X線分析の対象となる試料を設置する部分である。本実施の形態においては、X線分析の対象試料としてラミネートセル10を用いる。第1のX線検出器3は、ラミネートセル10に入射するX線の強度を検出するものである。第2のX線検出器5は、ラミネートセル10を透過したX線の強度を検出するものである。
【0023】
上記構成からなるX線分析装置においては、試料設置部4にラミネートセル10を設置した後、X線放射光源1からX線を放射させる。X線放射光源1から放射したX線は、モノクロメータ2でエネルギーが調整された状態でラミネートセル10に入射する。このとき、ラミネートセル10に入射するX線の強度を第1のX線検出器3で検出する。また、ラミネートセル10を透過したX線の強度を第2のX線検出器5で検出する。これにより、第1のX線検出器3で検出した入射X線強度と第2のX線検出器5で検出した透過X線強度との比によって、ラミネートセル10のX線吸光度を求めることができる。
【0024】
<2.ラミネートセルの構成>
図2はX線分析の対象試料となるラミネートセルの構成例を示す概略断面図である。図示したラミネートセル10は、正極11と、負極12と、セパレータ13とを含む電池要素14を備えた構成となっている。正極11は、たとえばアルミニウム箔を用いて、全体的に正面視矩形のシート状に形成されている。正極11の片面には正極活物質層15が形成されている。正極活物質層15は、正極11の一部を構成するものであって、たとえば、ニッケル酸リチウムと、導電助剤と、結着剤とを用いた塗膜によって形成されている。負極12は、たとえば銅箔を用いて、全体的に正面視略矩形のシート状に形成されている。負極12の片面には負極活物質層16が形成されている。負極活物質層16は、負極12の一部を構成するものであって、たとえば、グラファイトと、結着剤とを用いた塗膜によって形成されている。セパレータ13は、正面視矩形のシート状に形成されている。電池要素14は、セパレータ13を間に挟んで正極11と負極12を積層した構造になっている。この積層構造においては、正極11の正極活物質層15と負極12の負極活物質層16とが、セパレータ13を介して対向する状態に配置されている。
【0025】
また、電池要素14は、電解液17とともにラミネートフィルム18によって密封されている。ただし、正極11の端子部分Taと負極12の端子部分Tbは、充放電のための端子(不図示)を接続するために、それぞれラミネートフィルム18の外側に引き出される。ラミネートフィルム18は、電池要素14よりも一回り大きい、正面視矩形の袋状に形成されている。ラミネートフィルム18の内部には、非水系電解液からなる適量の電解液17が注入されている。これにより、ラミネートセル10は、ラミネートシート型のリチウムイオン二次電池を構成している。また、ラミネートセル10は、X線分析に必要とされる程度にX線を透過するように、正極11、負極12およびセパレータ13をそれぞれ単一のシートで構成した薄板状の構造になっている。
【0026】
<3.X線分析用システムの構成>
図3は本発明の実施の形態に係るX線分析用システムを含むX線分析システム全体の構成例を示す図である。
図示したX線分析システムは、上述したX線分析装置を用いてラミネートセル10のX線分析を行うシステムである。このX線分析システムは、上述したX線分析装置の構成要素(1〜5)の他に、X線分析用システム20と、計測器22と、X線制御部23と、データ取得部24と、を備えた構成となっている。また、X線分析用システム20は、制御装置25と、充放電装置26と、試料切り替え装置27と、を備えた構成となっている。
【0027】
計測器22は、第1のX線検出器3で検出された入射X線の強度データと第2のX線検出器5で検出された透過X線の強度データとを取り込むことにより、上述したラミネートセル10のX線吸光度を示す計測データを生成するものである。X線制御部23は、予め決められたX線の制御条件にしたがってモノクロメータ2の動作(角度)を制御することにより、試料(ラミネートセル10)に照射するX線のエネルギーを所定の範囲で可変制御するものである。データ取得部24は、計測器22で生成されたX線吸光度の計測データと、X線制御部23の制御条件に基づいて制御されたモノクロメータ2の角度データとを取得するとともに、それらの取得データを互いに対応付けて記憶するものである。たとえば、X線制御部23がモノクロメータ2の角度をθa,θb,θc,…と連続的(又は断続的)に変化させ、これに対応して計測器22がX線吸光度の計測データをDa,Db,Dc,…と生成したとする。そうした場合、データ取得部24は、モノクロメータ2の角度データθaとX線吸光度の計測データDa、モノクロメータ2の角度データθbとX線吸光度の計測データDb、モノクロメータ2の角度データθcとX線吸光度の計測データDc、をそれぞれ対応付けて記憶する。このようにデータ取得部24が取得して記憶するデータは、ラミネートセル10のX線吸光度に関する分析データとなる。ちなみに、モノクロメータ2によって調整されるX線のエネルギー(波長)は、モノクロメータ2の角度に依存する。このため、モノクロメータ2の角度データは、試料に照射されるX線のエネルギー又は波長を示すデータに変換することが可能である。
【0028】
(制御装置)
制御装置25は、X線分析用システム20全体の処理動作を統括的に制御するものである。制御装置25は、充放電装置26および試料切り替え装置27をそれぞれ制御の対象とする。そして、制御装置25は、予め決められた充放電試験時間内に複数のラミネートセル10の測定を並行して行うように、充放電装置26および試料切り替え装置27を制御する。また、制御装置25は、モノクロメータ2の動作に連動するように、試料切り換え装置27の動作を制御する。具体的な制御の仕方は後段で詳述する。
【0029】
制御装置25は、主として、充放電制御部28と、試料切り替え制御部29と、を備えている。充放電制御部28は、予め決められた充放電条件にしたがって充放電装置26を制御するものである。試料切り替え制御部29は、予め決められた切り替え条件にしたがって試料切り替え装置27の動作を制御するものである。
【0030】
制御装置25や各制御部28,29の機能は、コンピュータのハードウェア資源であるROM(Read Only Memory)又はハードディスク等に格納されたプログラムを、CPU(Central Processing Unit)がRAM(Random Access Memory)に読み出して実行することにより、実現可能である。また、そのためのプログラムは、予めコンピュータにインストールされていてもよいし、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよいし、有線または無線の通信網を介して提供されてもよい。
【0031】
充放電装置26は、ラミネートセル10の充放電を行うものである。ラミネートセル10の充放電は、予め決められた充放電試験時間内に充電と放電を順に行う。また、この充放電は、「充電」→「停止」→「放電」を一つのパターンとして行われる。具体的には、ラミネートセル10を一定の電流で「充電」していき、予め決められたカットオフ条件(カットオフ電圧等)を満たしたら充電を「停止」し、予め決められたカットオフ条件まで「放電」させる。充放電装置26は、同時に複数のラミネートセル10を電気的に接続可能な多チャンネル型の充放電装置によって構成されている。多チャンネル型の充放電装置を用いることにより、複数のラミネートセル10の充放電を並行して行うことができる。
【0032】
試料切り替え装置27は、第1のX線検出器3から第2のX線検出器5に向かうX線の通過位置に配置するラミネートセル10を切り替えるものである。以下に、試料切り替え装置27の具体的な構成について記述する。
【0033】
<4.試料切り替え装置の構成>
図4は本発明の実施の形態に係る試料切り替え装置の構成例を示す正面図であり、図5図4に示す試料切り替え装置の斜視図である。試料切り替え装置27は、大きくは、試料ホルダー31と、この試料ホルダー31を移動可能に支持するホルダー移動装置32と、を備えた構成となっている。
【0034】
(ホルダー移動装置)
ホルダー移動装置32は台座33に搭載されている。台座33は、X線分析装置の試料設置部4に設けられるものである。ホルダー移動装置32は、図示しないモータと、このモータを駆動源として回転する回転板34と、この回転板34を支持するステージ機構39と、を有している。駆動源となるモータとしては、たとえば、ステッピングモータやサーボモータなどを用いることができる。回転板34は円板形に形成され、その中心が回転中心35になっている。回転板34の前面には複数(図例では4つ)のネジ孔36が設けられている。これらのネジ孔36は、回転板34に試料ホルダー31を取り付けるためのものである。
【0035】
ホルダー移動装置32のステージ機構39は、ラミネートセル10に入射(照射)するX線の光軸方向と直交する方向で回転板34の位置を調整可能な位置調整機構に相当するものである。ステージ機構39は、XYステージを用いて構成されている。ステージ機構39は、XYステージを用いて構成されている。ステージ機構39は、X線分析装置の試料設置部4にホルダー移動装置32を設置した場合に、上記X線の光軸方向と直交する面内で垂直方向(縦方向)および水平方向(横方向)に回転板34を移動可能に支持するものである。ステージ機構39を構成するXYステージのうち、一方のステージは、マイクロメータヘッド37の回転にしたがって回転板34を垂直方向に移動させ、他方のステージは、マイクロメータヘッド38の回転にしたがって回転板34を水平方向に移動させる。このため、各々のマイクロメータヘッド37,38を適宜回転させることにより、回転板34の位置を垂直方向と水平方向で独立に調整することが可能である。
【0036】
(試料ホルダー)
試料ホルダー31は、上述したラミネートセル10を対象試料としてX線分析を行う際にラミネートセル10を保持するために用いられるものである。本実施の形態においては、「X線分析」の一例として、ラミネートセル10にX線を照射して分析データを得るin−situX線分析に適用する場合について説明する。「in−situX線分析」とは、リチウムイオン二次電池を構成するラミネートセル10を分解することなくX線分析を行うことをいう。
【0037】
試料ホルダー31は、複数のラミネートセル10を保持することができる構成になっている。本実施の形態においては、一つの試料ホルダー31を用いて最多で4つのラミネートセル10を同時に保持できる構成になっている。以下、4つのラミネートセル10を個々に区別して説明する場合は、適宜、個々のラミネートセル10に符号10A,10B,10C,10Dを付すことにする。
【0038】
試料ホルダー31は、一つの第1支持部材41と、4つの第2支持部材42と、第1支持部材41と第2支持部材42とを押さえる押さえ部43と、を備えた構成になっている。第1支持部材41は、4つのラミネートセル10に共通に対応する部材である。第2支持部材42は、4つのラミネートセル10に個別に対応する部材である。
【0039】
(第1支持部材)
図6は第1支持部材41の正面図であり、図7は第1支持部材41の斜視図である。
第1支持部材41は、適度な厚み(たとえば、5〜10mm程度の厚み)を有する平らな板状に形成されている。また、第1支持部材41は、正面視扇形に形成されている。具体的には、第1支持部材41は、主に、一つの円弧44と、この円弧44の両端に一端を接続した二つの辺45,46とによって扇形に形成されている。第1支持部材41を形作っている扇形の中心角は180°未満(本形態例では125°程度)になっている。二つの辺45,46の他端には、第1支持部材41の基部47が形成されている。基部47の一部は、上述した円弧44よりも曲率半径が小さく、かつ、円弧44と向きが反対の円弧状(半円形)に形成されている。
【0040】
第1支持部材41の一方の主面(以下、単に「主面」ともいう。)48は、4つのラミネートセル10を平面的に並べて配置できる大きさになっている。第1支持部材41の主面48は、上述した第2支持部材42との間でラミネートセル10を挟んで支持するための支持面となっている。第1支持部材41の主面48には、仮想的に4つの試料取付領域49が区画されている。試料取付領域49は、ラミネートセル10を取り付けるために確保された領域である。4つの試料取付領域49は、第1支持部材41の主面48上に4つのラミネートセル10を放射状に並べて配置できるように、隣り合う試料取付領域49の間に適度な間隔をあけて放射状に並んでいる。
【0041】
各々の試料取付領域49には、一つのX線透過用孔51と、4つのネジ取付用孔52とが設けられている。X線透過用孔51は、一つの試料ホルダー31で保持できるラミネートセル10の個数にあわせて、第1支持部材41全体で合計4つ設けられている。X線透過用孔51と各々のネジ取付用孔52は、いずれも第1支持部材41を厚み方向に貫通する状態で形成されている。X線透過用孔51は、X線を透過させるためのX線透過部として第1支持部材41に設けられたものである。X線透過用孔51は、試料取付領域49の中央部に設けられている。ネジ取付用孔52は、試料取付領域49の四隅に一つずつ設けられている。ネジ取付用孔52は、後述するネジ43(図11参照)を取り付けるためのものである。
【0042】
第1支持部材41の基部47の中心には試料ホルダー31の回転中心53が設定されている。基部47の回転中心53の周りには4つの連結用孔54が設けられている。これらの連結用孔54は、ホルダー移動装置32の回転板34に試料ホルダー31を連結するためのものである。先述した4つのX線透過用孔51は、上記回転中心53から等距離を隔てた位置で、かつ、互いに等しい角度間隔θ1(本形態例ではθ1=40°間隔)をあけた位置に形成されている。
【0043】
(第2支持部材)
図8は第2支持部材の斜視図である。
第2支持部材42は、適度な厚み(たとえば、10mm程度の厚み)を有する平らな板状に形成されている。また、第2支持部材42は、正面視矩形に形成されている。第2支持部材42の一方の主面(以下、単に「主面」ともいう。)55は、上述した第1支持部材41との間でラミネートセル10を挟んで支持するための支持面となっている。
【0044】
第2支持部材42には、一つのX線透過用孔56と、4つのネジ取付用孔57とが設けられている。X線透過用孔56と各々のネジ取付用孔57は、いずれも第2支持部材42を厚み方向に貫通する状態で形成されている。X線透過用孔56は、X線を透過させるためのX線透過部として第2支持部材42に設けられたものである。X線透過用孔56は、第2支持部材42の中央部に設けられている。また、X線透過用孔56は、第1支持部材41に設けられたX線透過用孔51と同じ大きさ(たとえば、直径が5mm)で円形に形成されている。ネジ取付用孔57は、第2支持部材42の四隅に一つずつ設けられている。ネジ取付用孔57は、後述するネジ43(図11参照)を取り付けるためにものである。
【0045】
第2支持部材42を正面視したときの外形寸法は、第1支持部材41に区画された試料取付領域49の外形寸法とほぼ同じ寸法に設定されている。第2支持部材42のネジ取付用孔57は、第1支持部材41のネジ取付用孔52と同じ大きさ(たとえば、直径が4mm)で円形に形成されている。また、第2支持部材42におけるX線透過用孔56と4つのネジ取付用孔57との位置関係は、第1支持部材41におけるX線透過用孔51と4つのネジ取付用孔52との位置関係と同一に設定されている。
【0046】
(窓部材)
上記構成からなる第1支持部材41および第2支持部材42のうち、第1支持部材41の一方の主面48には、図9に示すように4つの窓部材58が貼り付けられ、これに対応して第2支持部材42の主面55には、図10に示すように窓部材59が貼り付けられている。窓部材58は、X線透過用孔51の開口を塞ぐように貼り付けられ、窓部材59は、X線透過用孔56の開口を塞ぐように貼り付けられている。窓部材58,59は、第1支持部材41と第2支持部材42との間にラミネートセル10を挟んで支持する場合に、ラミネートセル10に直接、接触する部材である。窓部材58は、それぞれに対応する試料取付領域49に一つずつ貼り付けられている。各々の窓部材58,59は、互いに同じ材料を用いて、同じ形状および寸法に形成されている。さらに記述すると、各々の窓部材58,59は、薄いシート状をなして平面視矩形に形成されている。また、各々の窓部材58,59は、X線分析の測定に支障のない程度のX線透過率と、機械的な剛性とを併せ持つ材料で構成されている。窓部材58,59の材料としては、炭素繊維強化プラスチックを好適に用いることができる。
【0047】
ここで、ラミネートセル10、第2支持部材42および窓部材58,59の寸法例について記述する。ラミネートセル10の寸法は、たとえば、長手寸法=80mm、短手寸法=60mm、厚み寸法=1mmに設定することができる。この場合、第2支持部材42の寸法は、たとえば、長手寸法=100mm、短手寸法=40mm、厚み寸法=10mmに設定することができる。また、窓部材58,59の各部の寸法は、たとえば、長手寸法=80mm、短手寸法=20mm、厚み寸法=0.2mmに設定することができる。
【0048】
(押さえ部)
押さえ部43は、第1支持部材41と第2支持部材42との間にラミネートセル10を挟んで支持する場合に、第1支持部材41と第2支持部材42が離間しないように両者を押さえるものである。押さえ部43は、第1支持部材41と第2支持部材42の各X線透過用孔51,56を通過するX線と干渉しないように、X線透過用孔51,56の形成部位以外の箇所で第1支持部材41と第2支持部材42を押さえる。
【0049】
本実施の形態においては、一例として、上記図4に示すように、第2支持部材42の四隅を、それぞれ押さえ部43としている。押さえ部43は、たとえば図11に示すように、ネジ61とナット62からなる連結具を用いて構成される。ネジ61は、第1支持部材41に設けられたネジ取付用孔52と、これに対応して第2支持部材42に設けられたネジ取付用孔57とに挿入されるものである。ナット62は、ネジ61の雄ネジ部分に螺合するものである。このような連結具を用いて押さえ部43を構成した場合は、ネジ取付用孔52,57に挿入したネジ61にナット62を螺合させて締め付けることにより、第1支持部材41と第2支持部材42を互いに結合(連結)するように押さえることができる。
【0050】
(試料ホルダーにラミネートセルを取り付ける場合の手順)
次に、上記構成からなる試料ホルダー31にラミネートセル10を取り付ける場合の手順について説明する。ここでは一例として、試料ホルダー31にラミネートセル10を一つずつ取り付ける場合の手順を記述する。
【0051】
まず、第1支持部材41の主面48を上向きにして第1支持部材41を水平に支持し、この状態で第1支持部材41の主面48上にラミネートセル10を置く。このとき、一つの試料取付領域49に一つのラミネートセル10を置く。次に、ラミネートセル10の上に第2支持部材42を重ねて置く。このとき、光透過性を有する材料(典型的には透明な材料)で第1支持部材41と第2支持部材42を構成しておけば、それらの支持部材41,42の間にラミネートセル10を挟んだ状態でも、支持部材41,42の外側からラミネートセル10と窓部材58,59の位置関係を把握することができる。次に、第1支持部材41のネジ取付用孔52の位置と第2支持部材42のネジ取付用孔57の位置を合わせる。これにより、第1支持部材41のX線透過用孔51と第2支持部材42のX線透過用孔56とがほぼ同軸に配置される。
【0052】
次に、第1支持部材41と第2支持部材42とを互いに離間しないように押さえるべく、第2支持部材42の四隅にそれぞれネジ61とナット62を取り付ける。具体的には、互いに位置合わせされたネジ取付用孔52,57に第2支持部材42側からネジ61を挿入した後、ネジ61にナット62を螺合させる。このとき、第2支持部材42の四隅にそれぞれネジ61とナット62を取り付けて仮締めしてから、4つのナット62を徐々に締め付けて本締めすることにより、第1支持部材41に対して第2支持部材42を均等な力でバランス良く押さえることができる。ナット62による締め付け力は、少なくとも、第1支持部材41と第2支持部材42の間に挟んだラミネートセル10が落下しない程度の強さで、かつ、第1支持部材41や第2支持部材42が歪まない程度の強さとするのがよい。
【0053】
以上の手順で第1支持部材41に一つのラミネートセル10を取り付けたら、これと同様の手順で残り3つのラミネートセル10を取り付ける。これにより、上記図4に示すように、第1支持部材41に4つの第2支持部材42を用いてラミネートセル10A〜10Dが放射状に並べて装着される。各々のラミネートセル10は、第1支持部材41と第2支持部材42の間にサンドイッチ状に挟んで支持される。このとき、上記図11に示すように、第1支持部材41の主面48がラミネートセル10の一方の主面に対向するように配置されるとともに、第2支持部材42の主面55がラミネートセル10の他方の主面に対向するように配置される。また、第1支持部材41の主面48に貼り付けられている窓部材58がラミネートセル10の一方の主面に接触し、第2支持部材42の主面55に貼り付けられている窓部材59がラミネートセル10の他方の主面に接触した状態となる。
【0054】
(ホルダー移動装置に試料ホルダーを取り付ける場合の手順)
次に、ホルダー移動装置32に試料ホルダー31を取り付ける場合の手順について説明する。まず、第1支持部材41の基部47をホルダー移動装置32の回転板34に接触させる。このとき、第1支持部材41の基部47に設けられている4つの連結用孔54を、これに対応してホルダー移動装置32の回転板34に設けられている4つのネジ孔36に位置合わせする。また、回転板34の回転中心35の位置と基部47に設定された回転中心53の位置を合わせる。次に、4つの連結用孔54を通してホルダー取付用のネジ(不図示)をネジ孔36に螺合させた後、各々のネジを徐々に締め付ける。これにより、第1支持部材41の基部47がホルダー移動装置32の回転板34に固定される。以上の手順により、上記図4に示すようにホルダー移動装置32に試料ホルダー31を取り付けることができる。
【0055】
なお、試料ホルダー31にラミネートセル10を取り付ける場合や、ホルダー移動装置32に試料ホルダー31を取り付ける場合の手順は、ここで記載した手順に限らない。たとえば、第1支持部材41に第2支持部材42を取り付けたままで、ナット62を適度に緩めてラミネートセル10の着脱を行ってもよい。また、ホルダー移動装置32の回転板34に試料ホルダー31を取り付けたままで、ラミネートセル10の着脱を行ってもよい。
【0056】
<5.試料切り替え装置の動作>
次に、上記構成からなる試料切り替え装置27の動作について説明する。
まず、試料ホルダー31に4つのラミネートセル10を装着した状態で、ホルダー移動装置32のモータを回転駆動させると、回転中心35,53を中心に試料ホルダー31が回転板34と一体に回転する。また、試料ホルダー31が回転すると、各々のラミネートセル10の位置が円周方向に変化する。このため、X線の通過位置P(図4参照)に配置するラミネートセル10を、試料ホルダー31の回転移動によって切り替えることができる。ここで記述するX線の通過位置Pとは、上記図1においてX線放射光源1から放射されたX線がモノクロメータ2を経由して試料設置部4を通過するときの、当該試料設置部4におけるX線の通過位置、より具体的には上記図4に矢印で示すように、試料設置部4に設けられた台座33の上方をX線が通過するときの当該X線の通過位置をいう。これに対して、試料ホルダー31の回転軸は、試料設置部4を通過するX線の光軸と平行に配置されている。また、試料ホルダー31の回転軸は、X線の光軸よりも下方に配置されている。本実施の形態においては、好ましい形態の一つとして、試料ホルダー31の回転軸がX線の光軸の直下に設定されている。また、試料ホルダー31の回転方向、回転速度および回転量(回転角度)は、ホルダー移動装置32のモータの回転方向、回転速度および回転量に依存する。このため、たとえば、ホルダー移動装置32の駆動源にステッピングモータを用いた場合は、ステッピングモータに入力する駆動パルスの順序、周波数および個数によって、試料ホルダー31の回転方向、回転速度および回転量を制御することが可能となる。
【0057】
なお、4つのラミネートセル10を保持する試料ホルダー31をホルダー移動装置32の回転板34に取り付けると、回転中心35から大きく離れたところに試料ホルダー31の重心が位置する。このため、ホルダー移動装置32のモータの負荷が大きくなることが懸念される。そうした場合は、必要に応じて、ホルダー全体の質量バランスをとるための錘(不図示)を試料ホルダー31に取り付けてもよい。この構成を採用した場合は、試料ホルダー31に錘を取り付けない場合に比べて、試料ホルダー31の重心の位置を回転中心35に近づけることができる。このため、モータの負荷を軽減することが可能となる。
【0058】
<6.X線分析方法>
次に、本発明の実施の形態に係るX線分析用システムを用いたX線分析方法について説明する。本実施の形態においては、X線分析方法の一例として、予め決められた充放電条件でラミネートセル10の充放電を行うとともに、この充放電中のラミネートセル10にX線を照射して分析データを得るX線分析方法について説明する。より具体的には、充放電中のラミネートセル10のX線吸光度に関する分析データ(測定データ)を得る方法について説明する。
【0059】
(準備工程)
まず、準備工程として、次のような作業を行う。
すなわち、4つのラミネートセル10A〜10Dを装着した試料ホルダー31をホルダー移動装置32の回転板34に取り付ける。4つのラミネートセル10A〜10Dは、異なる材料(元素の種類など)や条件で製造したものでもよいし、同じ材料や条件で製造したものでもよい。
【0060】
次に、試料設置部4において、試料ホルダー31のいずれかのX線透過用孔51,56をX線が通過するように、試料ホルダー31の位置を調整する。試料ホルダー31の位置調整は、ホルダー移動装置32のマイクロメータヘッド37,38を適宜回転させて行う。次に、図12に模式的に示すように、4つのラミネートセル10A〜10Dを、それぞれ接続コードを用いて充放電装置26に電気的に接続する。このとき、第1支持部材41と第2支持部材42をそれぞれ絶縁性の材料によって構成しておけば、万一、充放電中に接続コードの端子が第1支持部材41や第2支持部材42に接触してもショートするおそれがない。
【0061】
(測定工程)
次に、測定工程として、図13に示す処理を行う。この処理はX線分析用システム20が実行する。また、測定工程においては、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10の順序を任意に設定または変更することが可能である。ここでは一例として、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を、ラミネートセル10A→ラミネートセル10B→ラミネートセル10C→ラミネートセル10D→ラミネートセル10A→…(以下、同様の繰り返し)の順序で切り替えるものとする。また、X線の通過位置Pに各々のラミネートセル10A〜10Dを1回ずつ配置するように切り替える動作を、一巡の切り替え動作と定義する。
【0062】
まず、充放電制御部28が充放電装置26を制御することにより、4つのラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始する(ステップS1)。また、ラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始してからの経過時間を、たとえば充放電制御部28が備えるタイマー機能部(不図示)で計測する。
【0063】
次に、試料切り替え制御部29が試料切り替え装置27を動作させることにより、図14に示すように、ラミネートセル10AをX線の通過位置Pに配置する(ステップS2)。ラミネートセル10AをX線の通過位置Pに配置すると、ラミネートセル10Aを支持している第1支持部材41と第2支持部材42のX線透過用孔51,56をX線が通過する状態となる。
【0064】
次に、X線制御部23がモノクロメータ2を動作させることにより、ラミネートセル10Aに所定のエネルギー範囲のX線を照射し、そのときのラミネートセル10AのX線吸光度を測定する(ステップS3)。この測定は、上述のようにX線の通過位置Pに配置されたラミネートセル10Aについての1回目のX線分析の測定となる。
【0065】
ここで、ラミネートセル10に照射されるX線のエネルギーと、ラミネートセル10のX線吸光度の測定との関係について説明する。
ラミネートセル10に照射されるX線のエネルギーは、予め決められた条件でX線制御部23がモノクロメータ2の角度を変更することにより、相対的に低エネルギー側から高エネルギー側へと変化する。また、モノクロメータ2は、X線を取り出すときの角度を変えることにより、特定の波長(エネルギー)のX線を取り出す。このため、低エネルギー側のX線を取り出すための初期角度を第1の角度とし、高エネルギー側のX線を取り出すための最終角度を第2の角度とすると、ラミネートセル10のX線吸光度の測定は、モノクロメータ2の角度を第1の角度から第2の角度まで変化させる過程で行われる。また、ラミネートセル10のX線吸光度の測定は、第1のX線検出器3の検出データと第2のX線検出器5の検出データとを計測器22に取り込むとともに、計測器22が生成する計測データとモノクロメータ2の角度データとをデータ取得部24が取得して記憶することにより行われる。これにより、ラミネートセル10に入射するX線を低エネルギー側から高エネルギー側に変化させたときのX線吸光度を示す分析データ(測定データ)が得られる。
【0066】
次に、上記ラミネートセル10AのX線分析の測定が終了すると、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を切り替えるべく、試料切り替え制御部29が試料切り替え装置27を動作させることにより、図15に示すように、ラミネートセル10BをX線の通過位置Pに配置する(ステップS4)。X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を、ラミネートセル10Aからラミネートセル10Bに切り替える場合は、試料切り替え制御部29からの制御指令にしたがってホルダー移動装置32が試料ホルダー31を一方向に所定角度(本形態例では40°)だけ回転移動させる。ラミネートセル10BをX線の通過位置Pに配置すると、ラミネートセル10Bを支持している第1支持部材41と第2支持部材42のX線透過用孔51,56をX線が通過する状態となる。
【0067】
次に、X線制御部23がモノクロメータ2を制御することにより、ラミネートセル10Bに所定のエネルギー範囲のX線を照射し、そのときのラミネートセル10BのX線吸光度を測定する(ステップS5)。この測定は、上述のようにX線の通過位置Pに配置されたラミネートセル10Bについての1回目のX線分析の測定となる。
【0068】
ここで、X線制御部23は、X線の照射位置Pに配置されるラミネートセル10ごとに、モノクロメータ2の動作条件(第1の角度および第2の角度の設定値)を可変制御する構成としてもよい。たとえば、ラミネートセル10Aに適用するモノクロメータ2の動作条件と、ラミネートセル10Bに適用するモノクロメータ2の動作条件が、それぞれ異なる場合に、X線制御部23は、X線の通過位置Pに配置されるラミネートセル10A,10Bごとに、モノクロメータ2の動作条件を変えてモノクロメータ2を制御し得る構成としてもよい。この点は、他のラミネートセル10C,10Dについても同様である。このような構成を採用した場合は、たとえば、4つのラミネートセル10A〜10Dの正極活物質をそれぞれ異なる材料で構成し、これによって各々のラミネートセル10A〜10Dごとにモノクロメータ2の動作条件を変更する必要がある場合などに、柔軟に対応することができる。
【0069】
次に、上記ラミネートセル10BのX線分析の測定が終了すると、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を切り替えるべく、試料切り替え制御部29が試料切り替え装置27を動作させることにより、図16に示すように、ラミネートセル10CをX線の通過位置Pに配置する(ステップS6)。X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を、ラミネートセル10Bからラミネートセル10Cに切り替える場合は、試料切り替え制御部29からの制御指令にしたがってホルダー移動装置32が試料ホルダー31を一方向に所定角度(本形態例では40°)だけ回転移動させる。ラミネートセル10CをX線の通過位置Pに配置すると、ラミネートセル10Cを支持している第1支持部材41と第2支持部材42のX線透過用孔51,56をX線が通過する状態となる。
【0070】
次に、X線制御部23がモノクロメータ2を制御することにより、ラミネートセル10Cに所定のエネルギー範囲のX線を照射し、そのときのラミネートセル10CのX線吸光度を測定する(ステップS7)。この測定は、上述のようにX線の通過位置Pに配置されたラミネートセル10Cについての1回目のX線分析の測定となる。
【0071】
次に、上記ラミネートセル10CのX線分析の測定が終了すると、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を切り替えるべく、試料切り替え制御部29が試料切り替え装置27を動作させることにより、図17に示すように、ラミネートセル10DをX線の通過位置Pに配置する(ステップS8)。X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を、ラミネートセル10Cからラミネートセル10Dに切り替える場合は、試料切り替え制御部29からの制御指令にしたがってホルダー移動装置32が試料ホルダー31を一方向に所定角度(本形態例では40°)だけ回転移動させる。ラミネートセル10DをX線の通過位置Pに配置すると、ラミネートセル10Dを支持している第1支持部材41と第2支持部材42のX線透過用孔51,56をX線が通過する状態となる。
【0072】
次に、X線制御部23がモノクロメータ2を制御することにより、ラミネートセル10Dに所定のエネルギー範囲のX線を照射し、そのときのラミネートセル10DのX線吸光度を測定する(ステップS9)。この測定は、上述のようにX線の通過位置Pに配置されたラミネートセル10Dについての1回目のX線分析の測定となる。
【0073】
この段階で、4つのラミネートセル10A〜10Dの各々について、1回目のX線分析の測定がすべて終了したことになる。また、X線分析の測定を開始してから、試料切り替え装置27による一巡の切り替え動作が、1回だけ行われたことになる。
【0074】
次に、4つのラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始してからの経過時間が、予め決められた充放電試験時間(所定時間)に到達したかどうかを判断する(ステップS10)。4つのラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始してからの経過時間が充放電試験時間に到達したかどうかは、上記経過時間を計測している充放電制御部28が判断する。
【0075】
次に、上記ステップS10で充放電制御部28がNoと判断すると、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を切り替えるべく、試料切り替え制御部29が試料切り替え装置27を動作させることにより、上記ステップS2と同様に、ラミネートセル10Aを再びX線の通過位置Pに配置する。X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を、ラミネートセル10Dからラミネートセル10Aに切り替える場合は、試料切り替え制御部29からの制御指令にしたがってホルダー移動装置32が試料ホルダー31をそれまでとは反対方向に所定角度(本形態例では120°)だけ回転移動させる。
【0076】
次に、上記ステップS3と同様に、X線制御部23がモノクロメータ2を制御することにより、ラミネートセル10Aに所定のエネルギー範囲のX線を照射し、そのときのラミネートセル10AのX線吸光度を測定する。この測定は、上述のようにX線の通過位置Pに再配置されたラミネートセル10Aについての2回目のX線分析の測定となる。
【0077】
次に、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を切り替えるべく、試料切り替え制御部29が試料切り替え装置27を動作させることにより、上記ステップS4と同様に、ラミネートセル10Bを再びX線の通過位置Pに配置する。
【0078】
次に、上記ステップS5と同様に、X線制御部23がモノクロメータ2を制御することにより、ラミネートセル10Bに所定のエネルギー範囲のX線を照射し、そのときのラミネートセル10BのX線吸光度を測定する。この測定は、上述のようにX線の通過位置Pに再配置されたラミネートセル10Bについての2回目のX線分析の測定となる。
【0079】
次に、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を切り替えるべく、試料切り替え制御部29が試料切り替え装置27を動作させることにより、上記ステップS6と同様に、ラミネートセル10Cを再びX線の通過位置Pに配置する。
【0080】
次に、上記ステップS7と同様に、X線制御部23がモノクロメータ2を制御することにより、ラミネートセル10Cに所定のエネルギー範囲のX線を照射し、そのときのラミネートセル10CのX線吸光度を測定する。この測定は、上述のようにX線の通過位置Pに再配置されたラミネートセル10Cについての2回目のX線分析の測定となる。
【0081】
次に、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を切り替えるべく、試料切り替え制御部29が試料切り替え装置27を動作させることにより、上記ステップS8と同様に、ラミネートセル10Dを再びX線の通過位置Pに配置する。
【0082】
次に、上記ステップS9と同様に、X線制御部23がモノクロメータ2を制御することにより、ラミネートセル10Dに所定のエネルギー範囲のX線を照射し、そのときのラミネートセル10DのX線吸光度を測定する。この測定は、上述のようにX線の通過位置Pに再配置されたラミネートセル10Dについての2回目のX線分析の測定となる。
【0083】
この段階で、4つのラミネートセル10A〜10Dの各々について、2回目のX線分析の測定がすべて終了したことになる。また、X線分析の測定を開始してから、試料切り替え装置27による一巡の切り替え動作が、合計2回繰り返されたことになる。
【0084】
以降は、4つのラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始してからの経過時間が、予め決められた充放電試験時間に到達したと充放電制御部28が判断(ステップS10でYesと判断)するまで、上記同様の処理を繰り返す。また、上記経過時間が充放電試験時間に到達したと判断すると、充放電制御部28は充放電装置26を停止して4つのラミネートセル10A〜10Dの充放電を終了する(ステップS11)。
【0085】
上記測定工程において、試料切り替え制御部29は、一つのラミネートセル10について1回のX線分析の測定が終了するたびに、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を切り替えるべく、試料切り替え装置27を制御する。また、試料切り替え制御部29は、4つのラミネートセル10A〜10DをX線の通過位置Pに順に配置する一巡の切り替え動作を試料切り替え装置27が少なくとも2回以上繰り返すように、試料切り替え装置27を制御する。また、試料切り替え制御部29は、充放電装置26によって充放電中とした4つのラミネートセル10A〜10Dの各々を充放電試験時間内に少なくとも2回以上にわたってX線の通過位置Pに配置するように、試料切り替え装置27を制御する。
【0086】
上記測定工程により、たとえば、充放電の開始から終了までの1サイクルあたりの充放電試験時間が18時間であって、一つのラミネートセル10のX線吸光度の測定を1回実施するのに必要な時間が4分であると仮定すると、単純計算で1サイクルあたり合計270個の分析データが得られる。また、個々のラミネートセル10A〜10D単位では、一つのラミネートセル10について、1サイクルあたり合計67個の分析データが得られる。このため、4つのラミネートセル10A〜10Dごとに、対応する67個の分析データを用いて、充放電中におけるラミネートセル10内の状態の変化を把握することが可能となる。
なお、データ取得部24が、たとえばパーソナルコンピュータで構成されている場合は、このパーソナルコンピュータにUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の補助記憶装置を接続し、上記測定工程によって得られた分析データを、この補助記憶装置に記憶させて活用してもよい。
【0087】
<7.実施の形態の効果>
本発明の実施の形態によれば、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を試料切り替え装置27で切り替えながら、各々のラミネートセル10A〜10DのX線分析の測定を順に繰り返すことにより、予め決められた充放電試験時間内に4つのラミネートセル10A〜10Dの測定を並行して行うことができる。このため、1サイクルあたりの充放電試験時間で比較した場合、従来では一つのラミネートセルの分析データしか得られなかったものが、本実施の形態によれば、4つのラミネートセル10A〜10Dの分析データを同時に得ることができる。したがって、4つのラミネートセル10A〜10DのX線分析を従来よりも効率良く行うことができる。その結果、数少ない大型放射光施設を、より有効に活用することが可能となる。
【0088】
<8.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0089】
たとえば、上記実施の形態においては、4つのラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始した後で、各々のラミネートセル10A〜10DのX線分析の測定を行うようにしたが、本発明はこれに限らない。たとえば、4つのラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始する前に、各々のラミネートセル10A〜10DのX線分析を1回ずつ行ってもよい。これにより、充放電前のラミネートセル10A〜10Dの状態を把握したうえで、充放電中のラミネートセル10A〜10Dの状態の変化を把握することが可能となる。
【0090】
また、充放電制御部28が充放電装置26を制御して4つのラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始する場合、各々のラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始するタイミングは、一律に同じタイミングであってもよいし、互いに異なるタイミングであってもよい。図18は4つのラミネートセルの充放電を同時に開始する場合のタイミングチャートである。図示したタイミングチャートにおいては、試料切り替え装置27の動作によりX線の通過位置Pに配置するラミネートセル10が切り替わるたびに、X線分析の測定を行うラミネートセル10が順に切り替わっている。
【0091】
一方、図19は4つのラミネートセルの充放電を異なるタイミングで順に開始する場合のタイミングチャートである。図示したタイミングチャートにおいては、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10の順序にあわせて4つのラミネートセル10A〜10Dの充放電を順に開始している。この場合、一つのラミネートセル10について1回のX線分析の測定に要する時間にあわせて、各々のラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始するタイミングの時間差を設定することが望ましい。たとえば、一つのラミネートセル10について1回のX線分析の測定に要する時間が4分である場合は、4つのラミネートセル10A〜10Dの充放電を4分間隔で順に開始するように設定することが好ましい。これにより、たとえば、ラミネートセル10Aとラミネートセル10Bで比較した場合に、ラミネートセル10Aの充放電を開始してからラミネートセル10Aの最初の測定を行うまでの時間と、ラミネートセル10Bの充放電を開始してからラミネートセル10Bの最初の測定を行うまでの時間を揃えることができる。この点は、他のラミネートセル10C,10Dで比較した場合も同様である。なお、各々のラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始するタイミングは、制御装置25(充放電制御部28)から充放電装置26に与えられる充放電開始命令にしたがって制御される。その場合の具体的な制御形態としては、主に2つ考えられる。第1の制御形態は、各々のラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始するにあたって、その都度、測定者が制御装置25を操作して充放電装置26に充放電開始命令を与えることにより、充放電装置26を制御する形態である。第2の制御形態は、予め決められた条件にしたがって充放電制御部28が自動的に充放電装置26に充放電開始命令を与えることにより、充放電装置26を制御する形態である。
【0092】
また、上記実施の形態においては、ラミネートセル10をX線分析の対象試料として、充放電に伴う電池材料の経時的な状態の変化を測定しているが、本発明はこれに限らない。すなわち、本発明は、何らかの外的要因によって試料の状態が経時的に変化し、その変化の過程を調べるために、一つの試料につき少なくとも2回以上にわたって繰り返しX線分析の測定を行う場合に広く適用することが可能である。
【0093】
また、上記実施の形態においては、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を試料ホルダー31の回転移動によって切り替える構成を例示したが、本発明はこれに限らない。たとえば図示はしないが、横長形状の試料ホルダーに複数のラミネートセルを並べて支持し、その試料ホルダーの直線移動によって、X線の通過位置に配置するラミネートセルを切り替える構成を採用してもよい。また、一つの試料ホルダーで同時に保持できるラミネートセルの個数は、4つに限らず、たとえば、2つ、3つ、または5つ以上であってもよい。
【0094】
<9.他の実施の形態>
以下に、本発明の他の実施の形態として、より多くのラミネートセルを同時に保持することが可能な試料ホルダーを備えた試料切り替え装置を用いる場合について説明する。
【0095】
図20は本発明の他の実施形態に係る試料切り替え装置の構成例を示す斜視図である。
本実施の形態においては、先述した実施の形態と比較して、特に、試料ホルダーの第1支持部材の構成と、ホルダー移動装置の構成が異なっている。以下、詳しく説明する。なお、本実施の形態においては、先述した実施の形態で記述した内容と重複する説明はできるだけ省略する。したがって、先述した実施の形態で記述した内容は、特に断らない限り、本実施の形態にも適用されるものとする。
【0096】
(試料ホルダー)
試料ホルダー100は、図21に示すように、一つの第1支持部材101と、最多で8つ(図20ではそのうちの2つだけを表示)の第2支持部材102と、第1支持部材101と第2支持部材102とを押さえる押さえ部103と、を備えた構成になっている。
【0097】
(第1支持部材)
図22は第1支持部材の斜視図である。また、図23(A)は第1支持部材の平面図、同(B)は第1支持部材の正面図である。
第1支持部材101は、正面視円形の板状(円盤状)に形成されている。第1支持部材101の中心部には突出部101Aが設けられている。突出部101Aは、第1支持部材101に一体に形成されている。突出部101Aは、第1支持部材101の他の部分よりも大きな厚み寸法を有することにより、第1支持部材101の厚み方向に突出した状態で形成されている。第1支持部材101の外周円と、突出部101Aの外周円とは、同心円になっている。突出部101Aには4つの連結用孔104が設けられている。これらの連結用孔104は、後述するホルダー移動装置120の回転板121に試料ホルダー100を連結するためのものである。
【0098】
第1支持部材101の一方の主面(以下、単に「主面」ともいう。)105は、最多で8つのラミネートセル10を平面的に並べて配置できる大きさになっている。第1支持部材101の主面105は、第2支持部材102との間でラミネートセル10を挟んで支持するための支持面となっている。上述した突出部101Aは、第1支持部材101の主面105とは反対側の主面から突出している。第1支持部材101に突出部101Aを設けた理由は、後述するホルダー移動装置120に試料ホルダー100を取り付けて、ホルダー移動装置120の駆動により試料ホルダー100を回転移動させたときに、ホルダー移動装置120と試料ホルダー100との干渉(接触)を避けるためである。
【0099】
第1支持部材101の主面105には、仮想的に8つの試料取付領域106が区画されている。8つの試料取付領域106は、第1支持部材101の主面105上に最多で8つのラミネートセル10を放射状に並べて配置できるように、隣り合う試料取付領域49の間に適度な間隔をあけて放射状に並んでいる。また、第1支持部材101の円周方向で隣り合う2つの試料取付領域106の間には、それぞれ抜き孔109が設けられている。抜き孔109は、第1支持部材101を厚み方向に貫通するように形成されている。抜き孔109は、第1支持部材101の円周方向に8つ並んで設けられている。また、抜き孔109は、第1支持部材101の円周方向に放射状に並んで設けられている。各々の抜き孔109は、正面視略三角形に形成されている。抜き孔109の2つの辺部は、第1支持部材101の円周方向で隣り合う両側2つの試料取付領域106の各長辺部に隣接するように形成されている。
【0100】
各々の試料取付領域106には、一つのX線透過用孔107と、4つのネジ取付用孔108とが設けられている。X線透過用孔107は、一つの試料ホルダー100で保持できるラミネートセル10の個数にあわせて、第1支持部材101全体で合計8つ設けられている。第1支持部材101の突出部101Aの中心には、試料ホルダー100の回転中心110が設定されている。先述した4つの連結用孔104は、突出部101Aにおける回転中心110の周りに設けられている。第1支持部材101の半径方向においては、8つのX線透過用孔107が上記回転中心110から等距離を隔てた位置(同一円周上)に形成されている。また、第1支持部材101の円周方向においては、8つのX線透過用孔107が互いに等しい角度間隔θ2(本形態例ではθ2=45°間隔)をあけて形成されている(図23(B)を参照)。
【0101】
(第2支持部材)
第2支持部材102は、第1支持部材101との間でラミネート10を挟んで支持するための支持面(不図示)と、一つのX線透過用孔112と、4つのネジ取付用孔113とを有する。第2支持部材102は、基本的に、先述した実施の形態の場合(図8に示す第2支持部材42)と同様の構成になっている。
【0102】
また、図示はしないが、第1支持部材101の主面105には窓部材が貼り付けられ、第2支持部材102の支持面(不図示)にも窓部材が貼り付けられている。
【0103】
(ホルダー移動装置)
ホルダー移動装置120は、先述したX線分析装置の試料設置部4に設けられる台座33に搭載されている。ホルダー移動装置120は、図示しないモータと、このモータを駆動源として回転する回転板121と、この回転板121を移動可能に支持するステージ機構122と、を有している。回転板121の前面には、試料ホルダー100を取り付けるためのネジ孔(不図示)が設けられている。
【0104】
ステージ機構122は、上部ステージ123と、下部ステージ124と、これら上部ステージ123と下部ステージ124を連結する複数(図例では4つ)のロッド125と、を備えている。上部ステージ123は、ロッド125の上端部に搭載されている。ロッド125は、下部ステージ124から垂直に起立するように設けられている。上部ステージ123は、マイクロメータヘッド126の回転にしたがって回転板121を垂直方向に移動させ、下部ステージ124は、マイクロメータヘッド127の回転にしたがって回転板121を水平方向に移動させる。このため、各々のマイクロメータヘッド126,127を適宜回転させることにより、回転板121の位置を、垂直方向および水平方向で独立に調整することが可能である。
【0105】
試料ホルダー100の回転中心110は、X線の通過位置P(図20図21参照)の直上に設定されている。X線の通過位置Pは、上記回転中心110の真下を通過するX線がステージ機構122と干渉しないように、次のように設定されている。すなわち、X線の通過位置Pは、試料ホルダー100を正面から見たときに水平方向で隣り合う2つのロッド125の間(中間位置)に設定されている。
【0106】
(取り付けの手順)
試料ホルダー100にラミネートセル10を取り付ける場合は、第1支持部材101の主面105を上向きにして、いずれかの試料取付領域106にラミネートセル10を置く。次に、ラミネートセル10の上に第2支持部材102を重ねて置く。次に、第1支持部材101と第2支持部材102を、押さえ部103によって押さえる。このような取り付け作業を繰り返すことにより、一つの試料ホルダー100に最多で8つのラミネートセル10を装着することができる。
【0107】
ホルダー移動装置120に試料ホルダー100を取り付ける場合は、第1支持部材101の突出部101Aをホルダー移動装置120の回転板121に固定する。具体的には、突出部101Aに設けられている4つの連結用孔104を、ホルダー移動装置120の回転板121に設けられている4つのネジ孔(不図示)に位置合わせし、その状態でホルダー取付用のネジ(不図示)を当該ネジ孔に螺合させて締め付ける。これにより、第1支持部材101の突出部101Aがホルダー移動装置120の回転板121に固定される。
【0108】
(試料切り替え装置の動作)
試料ホルダー100に8つのラミネートセル10を装着した状態で、ホルダー移動装置120のモータを回転駆動させると、回転中心110を中心に試料ホルダー100が回転板121と一体に回転する。また、試料ホルダー100が回転すると、各々のラミネートセル10の位置が円周方向に変化する。このため、X線の通過位置P(図20図21)に配置するラミネートセル10を試料ホルダー100の回転移動によって切り替えることができる。
【0109】
(X線分析方法)
上述したX線分析方法における測定工程を、上記構成の試料切り替え装置を用いて行う場合、試料切り替え制御部28は、以下のように試料切り替え装置の動作を制御することにより、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を順に切り替える。
ここでは試料ホルダー100に取り付けられる8つのラミネートセル10を、説明の便宜上、第1支持部材101の円周方向の並び順に符号10−1〜10−8で区別する。そして、上記測定工程では、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を、ラミネートセル10−1→ラミネートセル10−2→ラミネートセル10−3→ラミネートセル10−4→ラミネートセル10−5→ラミネートセル10−6→ラミネートセル10−7→ラミネートセル10−8→ラミネートセル10−1→…(以下、同様の繰り返し)の順序で切り替えるものとする。
【0110】
そうした場合、試料切り替え制御部28は、まず、ラミネートセル10−1をX線の通過位置Pに配置する。次に、ラミネートセル10−1のX線分析の測定が終了すると、試料切り替え制御部28は、ホルダー移動装置120を駆動して試料ホルダー100を一方向に所定角度(本形態例では45°)だけ回転させる。これにより、X線の通過位置Pに配置されるラミネートセル10が、ラミネートセル10−1からラミネートセル10−2に切り替わる。
【0111】
次に、ラミネートセル10−2のX線分析の測定が終了すると、試料切り替え制御部28は、ホルダー移動装置120を駆動して試料ホルダー100を一方向に所定角度(本形態例では45°)だけ回転させる。これにより、X線の通過位置Pに配置されるラミネートセル10が、ラミネートセル10−2からラミネートセル10−3に切り替わる。
【0112】
以降、試料切り替え制御部28は、上記同様の制御により、X線の通過位置Pに配置するラミネートセル10を、ラミネートセル10−4→ラミネートセル10−5→ラミネートセル10−6→ラミネートセル10−7→ラミネートセル10−8と順に切り替える。
【0113】
次に、ラミネートセル10−8のX線分析の測定が終了すると、試料切り替え制御部28は、ホルダー移動装置120を駆動して試料ホルダー100をそれまでとは反対方向に所定角度(本形態例では315°)だけ回転させる。これにより、X線の通過位置Pに配置されるラミネートセル10が、ラミネートセル10−8からラミネートセル10−1に切り替わる。以降は、ラミネートセル10A〜10Dの充放電を開始してからの経過時間が、予め決められた充放電試験時間に達するまで、上記同様の動作が繰り返される。
【0114】
上記の試料切り替え装置を用いた場合は、一つの試料ホルダー100に8つのラミネートセル10を保持することができるため、予め決められた充放電試験時間内に8つのラミネートセル10の測定を並行して行うことができる。したがって、ラミネートセル10のX線分析を、より効率的に行うことができる。
【0115】
なお、実際に試料切り替え装置を使用してX線分析の測定を行う場合は、試料ホルダーに必ずしも最多の個数でラミネートセルを取り付ける必要はなく、最多の個数よりも少ない個数のラミネートセルを試料ホルダーに取り付けて測定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…X線放射光源
2…モノクロメータ
3…第1のX線検出器
4…試料設置部
5…第2のX線検出器
10…ラミネートセル(試料)
11…正極
12…負極
13…セパレータ
14…電池要素
20…X線分析用システム
25…制御装置
26…充放電装置
27…試料切り替え装置
28…充放電制御部
29…試料切り替え制御部
31、100…試料ホルダー
32、120…ホルダー移動装置
図1
図2
図3
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図6
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