【解決手段】太陽電池ユニット1は、複数の太陽電池セル2と、太陽電池セル2同士を電気的に接続する配線部材5と、を備え、太陽電池セル2と配線部材5とが接着部材6で接着されて、配線部材5が太陽電池セル2のバスバー電極11a,11bに接続されている。そして、バスバー電極11a,11bの幅が配線部材5の幅よりも細く、接着部材6の全光線透過率が50%以上となっている。
複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セル同士を電気的に接続する配線部材と、を備え、前記太陽電池セルと前記配線部材とが接着部材で接着されて、前記配線部材が前記太陽電池セルのバスバー電極に接続された太陽電池ユニットであって、
前記バスバー電極の幅の少なくとも一部が前記配線部材の幅よりも細く、
前記接着部材の全光線透過率が50%以上である、太陽電池ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、クリーンで枯渇しないエネルギーの供給手段として太陽電池が一層注目を浴びるようになり、太陽電池特性の更なる向上が期待されている。太陽電池特性を向上させる手段の一つとして、太陽電池セルの受光面に入射する光を増加させることが挙げられる。しかしながら、例えば、上記の特許文献9に記載された太陽電池ユニットでは、太陽電池セルの受光面には接着部材、配線部材等が配置されている。このため、光の一部は、受光面に入光する前に接着部材、配線部材等によって遮蔽又は減衰されてしまうという課題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、バスバー電極の幅が配線部材の幅よりも細い太陽電池セルにおいて、良好な太陽電池特性を有する太陽電池ユニット及び太陽電池ユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の太陽電池ユニットは、複数の太陽電池セルと、太陽電池セル同士を電気的に接続する配線部材と、を備え、太陽電池セルと配線部材とが接着部材で接着されて、配線部材が太陽電池セルのバスバー電極に接続された太陽電池ユニットであって、バスバー電極の幅の少なくとも一部が配線部材の幅よりも細く、接着部材の全光線透過率が50%以上である。
【0009】
本発明の太陽電池ユニットによれば、上記構成を有することにより、配線部材下に回りこんだ光が、配線部材下の太陽電池セルの受光面にも入光して発電に寄与するため、太陽電池特性を向上させることができる。
【0010】
また、接着部材の屈折率が1.4以上3.6以下であることが好ましい。これにより、光を効率よく配線部材下に導くことができる。
【0011】
また、配線部材が接合された太陽電池セルを封止する封止部材を更に備え、接着部材の屈折率が封止部材の屈折率以上であることが好ましい。これにより、接着部材と封止部材との界面における光の反射を抑制し、光を効率よく配線部材下に導くことができる。
【0012】
また、接着部材のヘイズが90%以下であることがさらに好ましい。
【0013】
また、接着部材には金属粒子が含まれていることが好ましい。これにより、接着部材に接続性、導通性、弾性、耐熱性、耐水性、ガスバリア性及び適度な屈折率を付与することができる。
【0014】
また、配線部材は、外面の少なくとも一部に凹凸形状を有することが好ましい。これにより、接着部材との密着性が向上する。
【0015】
また、配線部材の断面は、曲率を有する形状であることが好ましい。これにより、配線部材下に回り込む光を取り込みやすくすることができる。
【0016】
また、配線部材の表面がAgであることが好ましい。これにより、配線部材表面での光反射を上げ、太陽電池セルの受光面に入射する光を増やすことができる。
【0017】
本発明の太陽電池ユニットの製造方法は、複数の太陽電池セルと、太陽電池セル同士を電気的に接続する配線部材と、を備える太陽電池ユニットの製造方法であって、太陽電池セルの表面電極上に、接着部材及び配線部材をこの順に配置する配置工程と、配置工程の後、0.1MPa以上2.0MPa以下の圧力で太陽電池セル及び配線部材を挟み、表面電極と配線部材とを接続する接続工程と、を含む。これにより、安定で確実な接続を実現することができる。
【0018】
また、配置工程では、フィルム状の配線部材を太陽電池セルの表面電極上に配置することが好ましい。これにより、安定で均一な接続を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バスバー電極の幅が配線部材の幅よりも細い太陽電池セルにおいて、良好な太陽電池特性を有する太陽電池ユニットが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、数値範囲は、その上下端値を含む。
【0022】
まず、
図9〜
図11を参照して、従来の太陽電池ユニットについて説明する。
図9〜
図11に示すように、従来の太陽電池ユニット101A,101Bに含まれる太陽電池セル102では、受光面102aに、複数本の細長い直線状の電極で構成される表面電極103が形成されている。そして、表面電極103よりも本数が少なく、表面電極103よりも幅の太い配線部材105の一端部が、表面電極103に直交するように、バスバー電極111aを介して受光面102aに配置されている。バスバー電極111aの幅の少なくとも一部は、配線部材105の幅よりも狭い。太陽電池セル102の裏面102bには、裏面電極104が形成されており、配線部材105の他端部が、バスバー電極111bを介して裏面102bに配置されている。なお、
図10に示す太陽電池ユニット101Aは、バスバー電極111aと表面電極103、バスバー電極111bと裏面電極104とが、はんだ(不図示)により接合されており、
図11に示す太陽電池ユニット101Bは、バスバー電極111aと表面電極103、バスバー電極111bと裏面電極104とが、接着部材106により接合されている。
【0023】
次に、
図1〜
図3を参照して、本実施形態に係る太陽電池ユニット及び太陽電池ユニットの製造方法について説明する。なお、
図3は、説明のために誇張して描かれている。
図5〜
図7、
図10〜
図11も同様である。
【0024】
図1〜
図3に示すように、本実施形態の太陽電池ユニット1は、複数の太陽電池セル2と、太陽電池セル2同士を電気的に接続する配線部材5(配線ワイヤ又はタブ線ともいう)と、を備えている。そして、太陽電池セル2と配線部材5とが接着部材6で接着されて、配線部材5が太陽電池セル2のバスバー電極11a,11bに接続されている。これにより、複数の太陽電池セル2が、配線部材5により相互に連結されている。
【0025】
詳しく説明すると、太陽電池セル2の受光面2aには、複数本の細長い直線状の電極で構成される表面電極3(細線電極又はフィンガー電極ともいう)が形成されており、太陽電池セル2の裏面2bには、その全面を覆う裏面電極4が形成されている。表面電極3は、例えばAgからなり、裏面電極4は、例えばAlからなる。太陽電池セル2の受光面2a側には、更に表面電極3と直交するように、配線部材5の幅よりも狭い幅のバスバー電極11aが形成されている。太陽電池セル2の裏面2b側には、更にバスバー電極11aと対向するように、配線部材5の幅よりも狭い幅のバスバー電極11bが形成されている。そして、太陽電池セル2の受光面2a側では、配線部材5の一端部が、太陽電池セル2の受光面2aと接着部材6により接着されて、バスバー電極11aに接続されている。また、太陽電池セル2の裏面2b側では、配線部材5の他端部が、太陽電池セル2の裏面2bと接着部材6により接着されて、バスバー電極11bに接続されている。
【0026】
接着部材6は、配線部材5と太陽電池セル2の受光面2a及び裏面2bとの間の接着性(接合性)を付与するとともに、配線部材5と表面電極3及び裏面電極4の間での導通性を付与する。このため、配線部材5と太陽電池セル2とは、安定で均一の接続状態が得られる。以下に、本実施形態の太陽電池ユニット1について更に詳しく説明する。
【0027】
表面電極3としては、電気的導通を得ることができる公知の材質のものが挙げられ、例えば、一般的な銀を含有したガラスペースト、接着剤樹脂に各種の導電性粒子を分散した銀ペースト、金ペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト、アルミペースト及び焼成又は蒸着によって形成されるITO等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、導電性、安定性、及びコストの観点から、銀を含有したガラスペースト電極が好適に用いられる。
【0028】
太陽電池セル2としては、単結晶シリコン又は多結晶シリコンの結晶系太陽電池セル、アモルファスシリコン、CIGS、CdTe等の薄膜系太陽電池セルなどが挙げられる。代表的なものとして、Siの単結晶、多結晶及び非結晶のうちの少なくとも一種以上からなる基板上に、スクリーン印刷などによってAg電極とAl電極とが表面電極としてそれぞれ設けられた太陽電池セルが挙げられる。太陽電池セル2は、
図5〜
図7に示すように、表裏両面にAgからなる表面電極3を有し、表裏両面ともに反射防止膜及びパッシベーション層が設けられた両面受光タイプの太陽電池ユニット31,41,51でもよい。なお、太陽電池ユニット31,41,51の詳細は後述する。
【0029】
接着部材6の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂等が挙げられ、これらを単体で用いるか、もしくは2種類以上を組み合わせた混合体又は共重合体として用いることができる。これらの中でも、接続信頼性の観点から、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエチレン樹脂及びアクリル樹脂のうちの少なくとも1つが接着部材6に含有されることが好ましい。
【0030】
これらの接着部材6は、配線部材5下に回りこんだ光が、配線部材5下の太陽電池セル2の受光面2aにも入光して発電に寄与するように、全光線透過率が50%以上であることが好ましく、全光線透過率が70%以上であることがより好ましく、全光線透過率が80%以上であることが更に好ましい。
【0031】
また、接着部材6のヘイズについては、JIS K 7136−1:2000に規定される。配線部材5下に回りこんだ光が、配線部材5下の太陽電池セル2の受光面2aにも入光して発電に寄与するように、ヘイズは90%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。
【0032】
全光線透過率はJIS K 7361−1:1997に規定されるが、結晶シリコン太陽電池の波長感度は600nm〜1100nmで高く、アモルファスシリコン太陽電池の波長感度は300nm〜600nmで高い。このため、太陽電池セル2の材質に合わせて、それぞれの波長感度帯における透過率が高いことが好ましい。
【0033】
また、接着部材6の屈折率は、配線部材5下に回り込む光を効率よく配線部材5下に導くために、1.4以上3.6以下であることが好ましく、1.48以上であることがより好ましい。特に、接着部材6の屈折率は、後述する封止部材8の屈折率以上であることが更に好ましい。
【0034】
一般に、樹脂の屈折率について、アクリル樹脂は1.49〜1.53、エポキシ樹脂は1.55〜1.66、ポリエチレン樹脂1.53〜1.6、ポリスチレン樹脂は1.5〜1.6、ポリエステル樹脂は1.60、MBS樹脂(メタクリル酸メチル、ブタジエン、スチレンの共重合体)は1.54、シリコーン樹脂は1.43、シアノアクリレート樹脂は1.48〜1.49、ブチルゴムは1.51、ポリカーボネート樹脂は1.59の屈折率を有する。接着部材6としては、これらの樹脂を単体で、もしくは2種類以上を組み合わせて使うことができる。
【0035】
更に、接着部材6には、接続性、導通性、弾性、耐熱性、耐水性、ガスバリア性及び適度な屈折率等を付与するために金属粒子が含まれていてもよい。例えば、太陽電池セル2に、金属粒子を含む接着部材6、配線部材5等を配置し、それらを圧着して、金属粒子がバスバー電極11a,11b及び配線部材5に食い込むことによって、アンカー効果によって接続の導電性、接続の強度等を向上させてもよい。金属粒子としては、酸化金属粒子又は金属膜で覆われた粒子、酸化金属膜で覆われた粒子等を用いることができる。それらの粒子としては、金、Ag、Cu、Ni、鉛、スズ、ビスマス、はんだ、金/ニッケルめっきプラスチック粒子、銅めっき粒子、ニッケルめっき粒子、はんだめっき粒子、ZnO、ITO、SiO
2、アルミナ、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。また、これらの粒子は、接合時の被着体表面に対する粒子の埋め込み性の観点から、毬栗状、球状等の粒子形状を有するものが好ましい。すなわち、このような形状の金属粒子は、太陽電池セル2のバスバー電極11a,11b又は配線部材5の外面5aの複雑な凹凸形状に対しても埋め込み性が高く、接続後の振動又は膨張などの変動に対して追随性が高いため、接続信頼性をより向上させることが可能となる。
【0036】
金属粒子の粒径は、1μm〜50μmの範囲が好ましく、1μm〜30μmの範囲がより好ましい。
【0037】
接着部材6における金属粒子の含有量は、接着部材6の全光線透過率、接着性等が著しく低下しない範囲であればよく、例えば、接着部材6の全体積を基準として10体積%以下、好ましくは0.1〜7体積%とすることができる。
【0038】
接着部材6は、例えば、上述した各種材料を溶剤に溶解又は分散させてなる塗布液をポリエチレンテレフタレートフィルム等の剥離フィルム上に塗布し、溶剤を除去することによってフィルム状として作製してもよい。こうして得られるフィルム状の接着部材6は、ペースト状の接着部材6と比較して、膜厚寸法精度又は圧着時の圧力配分の点で優れている。また、フィルム状とすることで、バスバー電極11a,11bの幅の少なくとも一部が配線部材5の幅よりも細い太陽電池セル2に配線部材5を接合するときに、均一で安定な接合が可能となり、歩留まり、信頼性向上等の向上に寄与する。
【0039】
上記では、剥離フィルムとしてプラスチックフィルムの例を挙げたが、剥離フィルムとして金属フィルムを使用することで、配線部材5と一体化させた接着フィルムとすることもできる。
【0040】
フィルム状とする場合の接着部材6の厚みは、上記塗布液中の不揮発分の調整およびアプリケータ又はリップコータのギャップ調整によって制御することができる。フィルム状とした接着部材6の厚みは、5μm〜50μmであることが好ましく、10μm〜35μmであることがより好ましい。
【0041】
配線部材5は、ワイヤー状の金属であることが好ましい。この金属としては、金、Ag、Cu、Ni、鉛、スズ、ビスマス、はんだ、ZnO、ITO、SiO
2、アルミナ、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。配線部材5は、それらをコア材と被覆材にそれぞれ用いて、2種類以上で構成されていてもよい。その中でも、入射光を効率良く反射させるために、最表面ははんだ、Al又はAgであることが好ましい。
【0042】
配線部材5の外面5aは、入射光を散乱させて太陽電池セル2の受光面2aに入射する光を増加させるため、及び接着部材6との密着性を向上させるために、凹凸形状が形成されていることが好ましい(
図7参照)。凹凸形状の最大段差は0.1μm〜200μmであり、より好ましくは1μm〜150μmであり、さらに好ましくは5μm〜100μmである。バスバー電極11a,11bと配線部材5とが確実に接続するために、凹凸形状は、配線部材5の外面5aに設けられ、配線部材5の長手方向にスジ状の凹凸が形成されていることが好ましい。凹凸形状は配線部材の外面5aの全表面、片面、両面のいずれに形成されていてもよい。
【0043】
また、タブ線の端とセルの距離を広げて、タブ線下に回り込む光を取り込みやすくするために、配線部材5の断面は、円又は楕円形等のように曲率を有する形状であることが好ましい。但し、配線部材5の断面は、矩形等のように曲率を有さない形状であってもよい。
【0044】
このように構成される太陽電池ユニット1は、次の方法により製造することができる。まず、太陽電池セル2のバスバー電極11a上に、接着部材6及び配線部材5をこの順に配置し、太陽電池セル2のバスバー電極11b上に、接着部材6及び配線部材5をこの順に配置する配置工程を行う。その後、0.1MPa以上2.0MPa以下の圧力で太陽電池セル2及び配線部材5を挟み、バスバー電極11a及びバスバー電極11bと配線部材5とを接続する接続工程を行う。なお、配置工程において、バスバー電極11a上への接着部材6及び配線部材5の配置とバスバー電極11b上への接着部材6及び配線部材5の配置とは、別のタイミングで行ってもよい。同様に、接続工程において、バスバー電極11aと配線部材5との接続とバスバー電極11bと配線部材5との接続とは、別のタイミングで行ってもよい。
【0045】
接続工程では、接着部材6は、加熱、紫外線、圧力等によって、配線部材5と接続させることができる。接合をし易くし、確実に樹脂を硬化させ、また配線部材5とバスバー電極11a,11bとの接触を確実にするためには、加熱及び加圧して接合(加熱圧着)することが特に好ましい。太陽電池セル2へのダメージを防ぐために、加熱温度については、接続温度は50℃〜200℃が好ましく、80℃〜180℃がより好ましい。また、圧力については、0.05MPa以上2.5MPa以下が好ましく、0.1MPa以上2.0MPa以下がより好ましい。または、ラミネートによる封止工程のみで他の封止部材8と一括で接合してもよい。ラミネートによる封止工程の条件としては、通常封止部材8として一般的に使用されるEVA等の架橋条件で決定されるが、一般的には150℃で10分程度保持するなどの条件が挙げられる。加熱圧着やラミネート後は、配線部材5の表面がバスバー電極11a,11bの少なくとも一部に食い込んだ状態にすることで、接続状態をより確実にしてもよい。
【0046】
接続工程の後、太陽電池セル2、接着部材6及び配線部材5から構成される太陽電池アレイの表裏面に、ガラス板9及びEVAなどの封止部材8を積層してラミネータ装置に設置し、ラミネートにより封止する封止工程を行う。そして、この封止工程を経て太陽電池ユニット1が製造される。
【0047】
このようにして作製された太陽電池ユニット1は、バスバー電極11a,11bの幅の少なくとも一部が配線部材5の幅よりも細い太陽電池セル2に接続する太陽電池において、良好な太陽電池特性を提供することができる。
【0048】
また、太陽電池ユニット1は、上述したように、バスバー電極11a,11bと配線部材5とが接続されているため、十分な太陽電池特性を得ることができる。
【0049】
太陽電池セル2と配線部材5とが適切に接合されているかを評価する方法として、ソーラーシミュレータによる電流−電圧(I−V)曲線測定が挙げられる。このとき得られる短絡電流(Isc)と開放電圧(Voc)の積を、最大電流値(Pmax)で除して得られる曲線因子(F.F.)の値で評価できる。
【0050】
上述した封止工程を経て太陽電池ユニット1が作製されるときのラミネータ装置に設置される積層体は、表面側から、ガラス板9、封止部材8、配線部材5、フィルム状の接着部材6、太陽電池セル2、フィルム状の接着部材6、配線部材5、封止部材8、バックシート10がこの順に配置されている。配線部材5及び接着部材6は、太陽電池セル2の表面電極3に直交する位置に配置されている。太陽電池セル2の受光面2a側には、バスバー電極11aが形成され、太陽電池セル2の裏面2b側には、バスバー電極11bが形成されている。
【0051】
ガラス板9としては、太陽電池用ディンプル付き白板強化ガラスなどが挙げられる。封止部材8としては、EVAからなるEVAシートが挙げられる。配線部材5としては、Cu線にはんだをディップ又はめっきしタブ線等が挙げられる。バックシート10としては、PET系又はテドラ−PET積層材料、金属箔−PET積層材料等が挙げられる。
【0052】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。上記実施形態では片面受光タイプの太陽電池ユニット1を例示したが、本発明は、例えば、
図4〜7に示すように、両面受光タイプの太陽電池ユニット31,41,51について適用することも可能である。
【0053】
両面受光タイプの太陽電池ユニット31では、
図4及び
図5に示すように、太陽電池セル2は、裏面2b側にも表面電極3を有している。そして、太陽電池セル2の裏面2b側の表面電極3に、接着部材6及び配線部材5が配置され、加熱、紫外線の照射、圧力の付与等の手段によって、太陽電池セル2の裏面2bと配線部材5とが接合される。これにより、太陽電池セル2の裏面2b側の表面電極3と配線部材5とが電気的に接続され、良好な導通性が得られる。また、太陽電池ユニット31では、太陽電池セル2の裏面2b側に配置された配線部材5に対して、更に封止部材8及びバックシート10が積層するように配置されている。これにより、受光面2a側から入射した光が太陽電池セル2に入光せずに裏面2b側に通過してしまった場合でも、裏面2b側に通過した光が、バックシート10によって反射され、太陽電池セル2の裏面2bに入光する。これにより、効率的な発電が可能となる。
【0054】
両面受光タイプの太陽電池ユニット41は、
図4及び
図6に示すように、太陽電池セル2の裏面2b側のバックシート10に代えて、ガラス板9が配置されている点のみ、太陽電池ユニット31(
図5参照)と相違する。これにより、裏面2b側から入射した光が、裏面2b側のガラス板9及び封止部材8を透過して太陽電池セル2の裏面2bに入光することで、効率的な発電が可能となる。
【0055】
両面受光タイプの太陽電池ユニット51は、
図4及び
図7に示すように、配線部材5の代わりに、外面の少なくとも一部に凹凸形状を有する配線部材5Aが設けられている点のみ、太陽電池ユニット31(
図5参照)と相違する。これにより、バスバー電極11a,11bと配線部材5Aとを確実に接続することができる。
【0056】
なお、受光面2a及び裏面2bに形成されるバスバー電極11a,11bは、
図4に示す形状に限定されるものではなく、例えば、
図8に示す形状とすることができる。
図8(a)に示すバスバー電極11a,11bは、表面電極3と直交する方向に沿ってジグザグ状に屈曲しながら延びている。
図8(b)に示すバスバー電極11a,11bは、表面電極3よりも太い直線状に形成されて、表面電極3と直交する方向に沿って間欠的に(所定の間隔を隔てて)配置されている。
図8(c)に示すバスバー電極11a,11bは、
図4に示すバスバー電極11a,11bと同様に表面電極3と直交する方向に沿って直線状に延びており、矩形状に拡幅した矩形拡幅部が所定の間隔で形成されている。つまり、
図8(a)に示すバスバー電極11a,11bは、
図4に示すバスバー電極11a,11bと
図8に示すバスバー電極11a,11bとを重ね合せたものである。
図8(d)に示すバスバー電極11a,11bは、
図4に示すバスバー電極11a,11bと同様に表面電極3と直交する方向に沿って直線状に延びており、円状に拡幅した円状拡幅部が所定の間隔で形成されている。
図8(e)に示すバスバー電極11a,11bは、表面電極3が部分的に広くなって形成されている。これらのバスバー電極の形状は、本発明を実現するための一例であって、本発明はこれらの形状に限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
<接着フィルム(接着部材6)の作製及び太陽電池ユニット1の作製>
(実施例1)
(ポリエチレン樹脂フィルム(接着部材6)の作製)
透明分散媒樹脂として東ソー株式会社製のエチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA):ウルトラセン634(紫外線吸収剤を含有しない)を100g用い、アルケマ吉富株式会社製の過酸化物熱ラジカル重合開始剤:ルペロックス101を1.5g、東レ・ダウコーニング株式会社製のシランカップリング剤:SZ6030を0.5gをロールミルで混練して、波長変換用樹脂組成物を得た。
【0059】
上記で得られた波長変換用樹脂組成物の約30gを離型シートに挟み、0.030mm厚ステンレス製スペーサーを用い、熱板を80℃に調整したプレスを用い、シート状にした。これを幅1.5mmにスリットし、膜厚は25μmのポリエチレン樹脂フィルムを得た。このポリエチレン樹脂フィルムの全光線透過率は89.20%であった。なお、ポリエチレン樹脂フィルムの全光線透過率は、硬化した状態のフィルムを用いて、濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH5000)で測定した。
【0060】
(太陽電池ユニット1の作製)
バスバー電極11aの幅が表面電極3と同じ幅の太陽電池セル2(156mm×156mm、多結晶シリコン)の受光面2aに、前記のポリエチレン樹脂フィルムを用いて、タブ線(日立電線株式会社製、SSA−TPS)を接続した。
【0061】
配線部材5(タブ線)を置いた太陽電池セル2の配線部材5上から圧着するための圧着ヘッドとその圧着ヘッドに加熱機構を備えた専用の加熱圧着機(芝浦メカトロニクス株式会社製)でポリエチレン樹脂フィルムの温度が180℃、接合部分にかかる圧力が2MPaとなるように配線部材5と太陽電池セル2とを30秒かけて加熱圧着して接合した。
【0062】
次に、配線部材5を接合した太陽電池セル2を、強化ガラス(旭硝子株式会社製)、封止部材8としてエチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA、屈折率1.54)、及びバックシート10を用いて、ガラス板9/EVA/太陽電池セル2/EVA/バックシート10の順に積層し、この積層体を真空ラミネータに設置し、150℃で、5分間真空引き、5分間温度保持する条件でラミネートを行い、太陽電池ユニット1を作製した。
【0063】
得られた太陽電池ユニット1について、株式会社ワコム電創製のソーラーシミュレータ(WXS−155S−10、AM1.5G)を用いてIVカーブを測定し、このI−V曲線から短絡電流I
SCを求めた。
【0064】
短絡電流I
SCは9351mAであり、太陽電池として十分な特性が得られていることが確認された。
【0065】
(実施例2)
(エポキシ樹脂フィルム(接着部材6)の作製)
フェノキシ樹脂(高分子量エポキシ樹脂)(ユニオンカーバイト社製、商品名「PKHC」)50gとエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「YL−980」)20g及びイミダゾール5gを酢酸エチル中に添加し、30質量%の酢酸エチル溶液を調製した。得られた混合組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にアプリケータ(YOSHIMITSU SEIKI社製)を用いて塗布し、ホットプレート上で70℃、10分間乾燥し、膜厚が25μmのエポキシ樹脂フィルムを作製した。このエポキシ樹脂フィルムの全光線透過率について、実施例1と同様に測定したところ、74.46%であった。
【0066】
(太陽電池ユニット1の作製)
前記のエポキシ樹脂フィルムを用いて配線部材5を太陽電池セル2に接続し、接合の温度が180℃、接合部分にかかる圧力が2MPaとなるように配線部材5と太陽電池セル2とを10秒かけて加熱圧着して接続した以外は実施例1と同様にして、太陽電池ユニット1作製した。得られた太陽電池ユニット1について、実施例1と同様にして短絡電流I
SCを求めた。
【0067】
短絡電流I
SCは9121mAであり、太陽電池として十分な特性が得られていることが確認された。
【0068】
(実施例3)
実施例2の酢酸エチル溶液を調製し、これに平均粒径5μmのNi粒子を、固形成分全体の体積に対して5体積%添加し、全光線透過率55.21%のエポキシ樹脂フィルムを用いて配線部材5を太陽電池セル2に接合した以外は実施例2と同様にして、太陽電池ユニット1を作製した。得られた太陽電池ユニット1について、上記と同様にして短絡電流I
SCを求めた。
【0069】
短絡電流I
SCは9088mAであり、太陽電池として十分な特性が得られていることが確認された。
【0070】
(実施例4)
実施例1の樹脂を全光線透過率100%のシアノアクリレート樹脂(東亜合成株式会社製、商品名アロンアルファ)を用いて配線部材5を太陽電池セル2に接続し、接合の温度が100℃、接合部分にかかる圧力が2MPaとなるように配線部材5と太陽電池セル2を30秒かけて加熱圧着後、室温で30分放置して接合した以外は実施例1と同様にして、太陽電池ユニット1を作製した。また、樹脂はガラス基板上に塗布し、硬化の膜厚が25μmにした状態で測定した。得られた太陽電池ユニット1について、上記と同様にして短絡電流I
SCを求めた。
【0071】
短絡電流I
SCは9060mAであり、太陽電池として十分な特性が得られていることが確認された。
【0072】
(比較例1)
ブチルゴムフィルム(日東シンコー株式会社製、ブチルゴムテープNo.11)を、ガラス棒を用いて延伸し25μm厚のシート状にした。これを幅1.5mmにスリットし、ブチルゴムフィルムを得た。このブチルゴムフィルムの全光線透過率を測定したところ6.42%であった。この実施例1の樹脂を用いて、配線部材5を太陽電池セル2に接続し、接合の温度が120℃、接合部分にかかる圧力が2MPaとなるように配線部材5と太陽電池セル2を50秒かけて加熱圧着して接合した以外は実施例1と同様にして、太陽電池ユニット1を作製した。得られた太陽電池ユニットについて、上記と同様にして短絡電流I
SCを求めた。
【0073】
短絡電流I
SCは8841mAであった。
【0074】
以上の結果を表1に示す。
【表1】