【実施例】
【0068】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断わりがない限り「部」、「%」は質量基準である。
【0069】
本発明で用いた分析機器類は下記の通りである。
1H−NMR:日本電子株式会社製、AL300、300Hz
TEM観察:日本電子株式会社製、JEM−2200FS
電気伝導度:株式会社堀場製作所製、B−173
SEM観察:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 S−3400
TG−DTA測定:SIIナノテクノロジー株式会社製、TG/DTA6300
プラズモン吸収スペクトル:株式会社日立製作所製、UV−3500
動的散乱粒径測定装置:大塚電子株式会社製、FPAR−1000
表面抵抗率測定:三菱化学株式会社製、低抵抗率計ロレスタEP(4端子法)
触媒吸着量:SIIナノテクノロジー株式会社製、ICP発光分析装置 SPS3100
【0070】
〔アニオン性官能基を有する化合物と金属ナノ粒子との複合体の水性分散体の合成例〕
本発明で用いる複合体、及びその水性分散体は、特開2010−209421号公報、特許4697356号公報をもとに、下記のように行なった。
【0071】
<合成例1:リン酸基を有する化合物と銀ナノ粒子との複合体の合成>
〔リン酸基を有する化合物(X−1)の合成〕
窒素雰囲気下、反応容器にエタノール210gと2−ブタノン174gを入れ、攪拌しながら75℃に加熱した。ここにライトエステルP−1M(共栄社化学株式会社製)600gをエタノール90gと2−ブタノン90gとの混合溶媒に溶解させた混合溶液を3.5時間かけて滴下し、重合開始剤「V−59」3g、連鎖移動剤(3−メルカプトプロピオン酸メチル)18gを2−ブタノン30gに溶解させたものを4.5時間かけて同時に滴下した。反応開始から21時間後に加熱を停止し、室温まで空冷の後、蒸留水300gを添加した。ロータリーエバポレータで溶剤を減圧留去し、蒸留水100gを足して再び減圧留去を行い、残液をポリプロピレンメッシュで濾過して、アニオン性官能基としてリン酸基を有する化合物(X−1)の水溶液を得た(1,030g、不揮発分58.8%、酸価488)。当該樹脂(化合物(X−1))のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された質量平均分子量は5,000程度であった。
【0072】
〔化合物(X−1)と銀ナノ粒子との複合体の水性分散体の合成〕
反応容器に、前記合成で得られたリン酸基を有する化合物(X−1)の水溶液14.6gを2−ジメチルアミノエタノール31g(0.35mol)、65%硝酸34g(0.35mol)、蒸留水39gの混合物に溶解させたものを入れ、更に150gの硝酸銀を150gの蒸留水に溶解させたものを添加し、最後に2−ジメチルアミノエタノール34.5g(0.39mol)を添加した。反応容器を油浴に浸け、内温50℃で4時間加熱し、茶黒色の分散体を得た。
【0073】
上記で得られた反応終了後の分散体を中空糸型UF膜モジュール(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製、膜面積0.13m
2)を使用して限外濾過精製を行った。濾液の電気伝導度は最初20mS/cm以上であり、これが10μS/cm以下になったところで限外濾過を終了した。次に、この残渣成分から粗大粒子を除去するために孔径0.45μmのメンブレンフィルタで吸引濾過を行い、銀ナノ粒子との複合体の水性分散体を濾液として得た(1,050g、不揮発分8.9%、収率89%)。このときの濾物(粗大粒子)は9.0g(原料の銀換算で8.5%)であった。
【0074】
得られた水性分散体をサンプリングし、10倍希釈液とすると黄褐色の液となり、その可視吸収スペクトルを測定すると、400nmにプラズモン吸収スペクトルのピークが認められたことから、銀ナノ粒子の生成を確認した。
【0075】
<合成例2:カルボキシ基を有する化合物と銀ナノ粒子との複合体の合成>
〔カルボキシ基を有する化合物(X−2)の合成〕
メチルエチルケトン(以下、MEK)70部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらメタクリル酸10部、メタクリル酸ベンジル10部、ブレンマーPME−1000(日油株式会社製)80部、チオグリコール酸2部、MEK80部、及び重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O、日油株式会社製)4部からなる混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、「パーブチル(登録商標)O」2部を添加し、80℃で更に22時間攪拌した。得られた反応混合物に水を加え、減圧脱溶剤した後、水で不揮発分量を調整した。このようにして、アニオン性官能基としてカルボキシ基有する化合物(X−2)の水溶液を得た(不揮発分33%)。当該樹脂(化合物(X−2))のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された質量平均分子量は10,000、酸価は76.5mgKOH/gであった。
【0076】
〔化合物(X−2)と銀ナノ粒子との複合体の水性分散体の合成〕
上記の合成で得た化合物(X−2)(固形分に換算して0.578g)を水12mLに溶解し、これに1mol/L硝酸12mLを加えた。硝酸銀2.00g(11.77mmol)を水35mLに溶解したものをこれに加え、トリエタノールアミン8.78g(58.85mmol)を加えて60℃で2.5時間攪拌した。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスピン20、分画分子量10万、4個)で濾過した。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えると、化合物(X−2)と銀ナノ粒子の複合体の水性分散体4.23gが得られた(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量94.8%(TG−DTA)、粒子径5〜40nm(TEM))。
【0077】
<合成例3:カルボキシ基を有する化合物と銅ナノ粒子との複合体の合成>
〔化合物(X−2)と銅ナノ粒子との複合体の水性分散体の合成〕
前記合成例2で得られた化合物(X−2)(固形分に換算して2.00g)を水40mLに溶解し、酢酸銅水和物10.0g(50.09mmol)を水500mLに溶解したものを加えた。これに穏やかに発泡が起こるよう80%ヒドラジン水溶液10g(約160mmol)を約2時間かけて滴下し、発泡得が止むまで室温で更に1時間攪拌すると、濃褐色の溶液が得られた。
【0078】
これを限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社製「ビバフロー50」、分画分子量5万、1個)に通し、更に限外濾過ユニットから約1Lの滲出液がでるまで脱気水を通過させて精製した。脱気水の供給を止め濃縮すると、化合物(X−2)と銅ナノ粒子の複合体の水性分散体15gが得られた(固形分約20w/w%)。この水性分散体一滴をエタノール(50mL)に溶解すると赤い溶液が得られ、その紫外可視吸収スペクトルを測定すると600nm付近に銅ナノ粒子のプラズモン共鳴に由来する吸収がみられた。
【0079】
<合成例4:リン酸基を有する化合物と銀ナノ粒子との複合体の合成>
〔リン酸基を有する化合物(X−3)の合成〕
窒素雰囲気下、反応容器にエタノール210gと2−ブタノン174gを入れ、攪拌しながら75℃に加熱した。ここに、ライトエステルP−1M(共栄社化学株式会社製)120g、ブレンマーPME−1000(日油株式会社製)450g、ブレンマーPME−100(日油株式会社製)30gをエタノール90gと2−ブタノン90gに溶解させた混合溶液を3.5時間かけて滴下し、重合開始剤「V−59」3g、連鎖移動剤(3−メルカプトプロピオン酸メチル)18gを2−ブタノン30gに溶解させたものを4.5時間かけて同時に滴下した。反応開始から21時間後に加熱を停止し、室温まで空冷の後、蒸留水300gを添加した。ロータリーエバポレータで溶剤を減圧留去し、蒸留水100gを足して再び減圧留去を行い、残液をポリプロピレンメッシュで濾過してアニオン性官能基としてリン酸基を有する化合物(X−3)の水溶液を得た(950g、不揮発分62.6%、酸価99)。当該樹脂(化合物(X−3))のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された質量平均分子量は7,000程度であった。
【0080】
得られた生成物の
1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CD
3OD)測定結果:
δ(ppm):3.85〜4.45(bs),3.45〜3.75(bs),3.20〜3.40,2.65〜2.95(bs),2.40〜2.65(bs),1.75〜2.35(bs),0.75〜1.50(m)
【0081】
〔化合物(X−3)と銀ナノ粒子との複合体の水性分散体の合成〕
反応容器に、前記で得られた化合物(X−3)の水溶液15.5gを2−ジメチルアミノエタノール155g(1.75mol)、65%硝酸170g(1.75mol)、蒸留水195gの混合物に溶解させたものを入れ、更に150gの硝酸銀を150gの蒸留水に溶解させたものを添加し、最後に2−ジメチルアミノエタノール172.5g(1.95mol)を添加した。反応容器を油浴に浸け、内温50℃で4時間加熱し、茶黒色の分散体を得た。
【0082】
上記で得られた反応終了後の分散体を中空糸型UF膜モジュール(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製、膜面積0.13m
2)を使用して限外濾過精製を行った。濾液の電気伝導度は最初20mS/cm以上であり、これが10μS/cm以下になったところで限外濾過を終了した。次に、この残渣成分から粗大粒子を除去するために孔径0.45μmのメンブレンフィルタで吸引濾過を行い、銀ナノ粒子との複合体の水性分散体を濾液として得た(1,029g、不揮発分9.9%、収率97%)。このときの濾物(粗大粒子)は135mg(原料の銀換算で0.14%)であった。
【0083】
得られた分散体をサンプリングし、10倍希釈液とすると黄褐色の液となり、その可視吸収スペクトルを測定すると、400nmにプラズモン吸収スペクトルのピークが認められたことから、銀ナノ粒子の生成を確認した。また、TEM観察より球形の銀ナノ粒子(平均粒子径6.8nm)が確認された。TG−DTAを用いて、固体中の銀含有率を測定した結果、93.5%を示し、このことから、複合体中の化合物(X−3)の含有量は6.5%と見積もることができた。
【0084】
<合成例5:リン酸基を有する化合物と銅ナノ粒子との複合体の合成>
〔化合物(X−3)と銅ナノ粒子との複合体の水性分散体の合成〕
反応容器に、前記合成例4で得られた化合物(X−3)の水溶液3.19g(固形分に換算して2.00g)を量り取り、水40mLで希釈した。これに、酢酸銅水和物10.0g(50.09mmol)を水500mLに溶解して加えた。この溶液に、穏やかに発泡が起こるよう80%ヒドラジン水溶液10g(約160mmol)を約2時間かけて滴下し、発泡が止むまで更に室温で1時間攪拌すると、赤褐色の溶液が得られた。
【0085】
これを限外濾過モジュール(ダイセン・メンブレン・システムズ社製、分画分子量15万)に通し、更に限外濾過モジュールから約1Lの滲出液がでるまで、窒素バブリングにより脱気した精製水を通過させて精製した。脱気水の供給を止め濃縮すると、加応物(X−3)と銅ナノ粒子との複合体の分散体15gが得られた(固形分約20w/w%)。この分散体一滴をエタノール(50mL)に溶解すると赤い溶液がえられ、その紫外可視吸収スペクトルを測定すると600nm付近に銅ナノ粒子のプラズモン共鳴に由来する吸収がみられた。
【0086】
<合成例6:リン酸基を有する化合物とパラジウムナノ粒子との複合体の合成>
〔化合物(X−3)とパラジウムナノ粒子との複合体の水性分散体の合成〕
前記合成例4で得られた化合物(X−3)(固形分に換算して0.102g)を水5mLに溶解し、硝酸パラジウム(II)(585mg、2.54mmol)を水5mLに溶解したものを加えた。これにジメチルアミノエタノール1.81g(20.31mmol)と水5mLの混合物を加え、室温で2時間攪拌した。これを限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社製「ビバスピン20」、分画分子量5万、2個)に分け入れ、遠心力(5800G)により濾過を行った。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えて全量2.5gとすると、化合物(X−3)とパラジウムナノ粒子との複合体の水性分散体が得られた(固形分約10w/w%)。この水性分散体は茶色であり、その一滴をエタノール(50mL)に溶解して紫外可視吸収スペクトルを測定すると、約520nm付近に弱い吸収が確認された。
【0087】
<合成例7:スルホン酸基を有する化合物と銀ナノ粒子との複合体の合成>
〔スルホン酸基を有する化合物(X−4)の合成〕
70w/w%エタノール40部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながら2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸10部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(分子量100)5部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(分子量1000)85部、β−メルカプトプロピオン酸メチル5部、70w/w%エタノール80部からなる混合物、及び重合開始剤「パーブチル(登録商標)O」(日油株式会社製)0.5部、エタノール5部からなる混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、「パーブチル(登録商標)O」1部を添加し、80℃で12時間攪拌した。
【0088】
得られた溶液に、イオン交換水を加え、減圧脱溶剤により除去した後、水を加えて不揮発分を調製した。このようにして、アニオン性官能基としてスルホン酸基を有する化合物(X−4)の水溶液を得た(不揮発分40%)。ゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された質量平均分子量5,800、酸価は54.1mgKOH/gであった。
【0089】
〔化合物(X−4)と銀ナノ粒子との複合体の水性分散体の合成〕
上記の合成で得た化合物(X−4)0.245g(固形分に換算して0.098g)を水6mLに溶解し、これに1mol/L硝酸6mLを加えた。硝酸銀1.00g(5.89mmol)を水17.5mLに溶解したものをこれに加え、トリエタノールアミン4.39g(29.43mmol)を加えて60℃で2.5時間攪拌した。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社製「ビバスピン20」、分画分子量10万、2個)で濾過した。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えて全量を2.1gの分散液とすると、化合物(X−4)と銀ナノ粒子との複合体の水性分散体が得られた(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量96.2%(TG−DTA)、粒子径40〜50nm(TEM))。
【0090】
<比較合成例1:カチオン性官能基をする非重合性の化合物を用いた銀ヒドロゾルの合成>
特許文献3の実施例1に基づき、硝酸銀50μmolを純水94mLに溶解した溶液を激しく撹拌しながら、この溶液にステアリルトリメチルアンモニウムクロライド10mgを含む水溶液1mL及び水素化ホウ素ナトリウム200μmolを含む水溶液5mLを順次注入したところ、溶液の色が黄褐色に変化し、銀粒子を0.5mg含有する均一透明な銀ヒドロゾル100mLが得られた。
【0091】
<比較合成例2:スルホン酸基を有する非重合性の化合物を用いた銀ヒドロゾルの合成>
特許文献3に基づき、界面活性剤であるステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの代わりにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた以外は、比較合成例1と同様にして、均一透明なヒドロゾルを調製した。
【0092】
<比較合成例3:アニオン性官能基を有さず、ポリエチレングリコール鎖を有する化合物を用いた銀ヒドロゾルの合成>
特許文献3に基づき、界面活性剤であるステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの代わりにポリエチレングリコール−p−ノニルフェニルエーテルを用いた以外は、比較合成例1と同様にして、均一透明なヒドロゾルを調製した。
【0093】
<比較合成例4:スルホン酸基を有する非重合性化合物とポリエチレングリコール鎖を有する化合物を同時に存在させた銀ヒドロゾルの合成>
特許文献3に基づき、界面活性剤であるステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの代わりにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5mgとポリエチレングリコール−p−ノニルフェニルエーテル5mgと含む水溶液1mLを用いた以外は、比較合成例1と同様にして、均一透明なヒドロゾルを調製した。
【0094】
<比較合成例5:アニオン性官能基を有さない水溶性高分子を用いた銀ヒドロゾルの合成>
特許文献3に基づき、界面活性剤であるステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの代わりに水溶性高分子であるポリビニルピロリドンを用いた以外は、比較合成例1と同様にして、均一透明なヒドロゾルを調製した。
【0095】
<比較合成例1〜5で得たヒドロゾルの分散性>
比較合成例1〜5で得た銀ヒドロゾルを、エバポレータで0.5g/Lとなるように濃縮したところ、いずれの場合にも、銀コロイドの凝集が認められ、安定な分散液が得られなかった。
【0096】
前記の合成例1〜7で得た化合物と金属ナノ粒子複合体の水性分散体を、それぞれ精製水で希釈して、所定の濃度に調整したものを触媒液−1〜8とした。同様に、前記の比較合成例1〜5で得たヒドロゾルを、それぞれ精製水で希釈し、0.05g/Lの濃度に調整したものを比較触媒液−1〜5とした。表1に、合成例1〜7、及び比較合成例1〜5で調製した触媒液をまとめた。
【0097】
【表1】
【0098】
<実施例1:触媒液−1〜7を用いた銅の無電解めっき皮膜の作製>
触媒液−1〜7を用いて、下記の被めっき物に対し、下記の工程により無電解めっきを行った。
【0099】
〔被めっき物〕
1.ガラス繊維強化エポキシ樹脂板:FR4規格銅張基板(基板厚み1.6mm、銅箔厚み18μm)。
【0100】
2.1のFR−4規格銅張基板の一部にドリル穿孔して孔長1.6mm×孔径0.8mmのスルーホールを形成した後、過硫酸ナトリウム水溶液に浸漬して、銅箔をエッチングして除去した樹脂基板。
【0101】
3.ビルドアップ基板用層間絶縁材:
FR4基板(基板厚み0.8mm、銅箔厚み18μm)の銅箔表面を、「CZ8100」及び「CZ8300」(メック株式会社製)に浸漬して粗面化処理した後、エポキシ樹脂系絶縁材料「ABF−GX13」(40μm厚)、もしくは「ABF−GX92」(40μm厚)を、真空ラミネートした後、デスミア処理を行ったもの。
【0102】
基材のデスミア処理は、下記の操作により行った。
1)膨潤工程:60℃に設定した、OPC−1080コンディショナー(奥野製薬工業株式会社製)500mL/L、水酸化ナトリウム15g/Lを加えた水1Lに、基材を10分間浸漬した後、水洗した。
2)マイクロエッチング工程:85℃に設定した、KMnO
430g/L、「OPC1200エポエッチ」(奥野製薬工業株式会社製)200mL/Lを加えた水1Lに、1)で処理した基材を20分間浸漬した後、水洗した。
3)中和工程:45℃に設定した、OPC−1300ニュートライザー(奥野製薬工業株式会社製)200mL/Lを加えた水1Lに、2)の処理を行った基材を5分間浸漬した後、水洗を行い、デスミア処理を行った。
【0103】
〔無電解めっき工程〕
1.脱脂及びコンディショニング工程:
脱脂・コンディショニング剤(OPCコンディクリーンFCR、奥野製薬工業株式会社製)25mLを水に溶かし500mLとし、65℃に保持した。これに被めっき物を5分間浸漬した。この工程により被めっき物表面の脱脂とカチオン化を行い、その後、温水で2分間洗浄し、続いて流水洗浄を2分間行った。
【0104】
2.ソフトエッチング工程:
過硫酸ナトリウム50g及び98%精製硫酸2.5mLを水に溶かして500mLとし、25℃に保持した。これに、前記脱脂及びコンディショニング工程後の処理被めっき物を2分間浸漬し、その後、流水洗浄を2分間行った。
【0105】
3.脱スマット工程:
98%精製硫酸50mLを水に溶かし、500mLとし、25℃に保持した。これに、前記ソフトエッチング工程後の処理被めっき物を2分間浸漬した後、流水洗浄を2分間行った。更に純水で1分間洗浄した。
【0106】
4.触媒付与工程:
前記触媒液−1〜7を、25℃に保持し、これに前記脱スマット工程後の処理被めっき物をそれぞれ5分間浸漬して当該処理被めっき物の表面に複合体を吸着させた。
【0107】
5.無電解めっき工程:
無電解銅めっき薬液(「MOON−700カッパー−1」(15mL)、「MOON−700カッパー―2」(15mL)、「MOON−700カッパー―3」(100mL)、いずれも奥野製薬工業株式会社製)を水に混合して500mLとし、45℃に保持した。これに前記触媒付与工程後の処理被めっき物を15分間浸漬して、銅めっき皮膜を析出させた。
【0108】
得られためっき皮膜の評価は、以下の方法によった。
〔銅めっき皮膜の評価〕
1.皮膜被覆率(%):
被めっき物の面積と、銅めっき皮膜が形成された面積を計測し、その割合から算出した。
【0109】
2.スルーホールめっき性:
100倍の顕微鏡下、スルーホール部の裏から光を照射し、光透過の程度を観察することでスルーホールのめっき充填度を評価した。
【0110】
3.めっき皮膜断面の観察:
銅めっき皮膜をGa収束イオンビーム法(FIB法)で切断し、断面をSEMにより観察した。これにより、ビアホール部のめっき付き回り性の良否を判断した。
【0111】
<比較例1:Sn−Pdコロイド触媒を用いた無電解銅めっき皮膜>
前記実施例1で用いた触媒液に代えて、市販のパラジウム−錫コロイド液を使用し、実施例1と同様の被めっき物に対して、無電解めっきを行った。工程1〜3については、実施例1と同様であったが、更に、下記の様に、プリディップ、活性化工程の2工程が必要な煩雑な工程であった。
【0112】
4.プリディップ工程:
プリディップ液(「OPC−SAL−M」、奥野製薬工業株式会社製)130gを水で希釈して500mLとし、25℃に保持した。これに前記脱スマット工程後の処理被めっき物を1分間浸漬した。
【0113】
5.触媒化合物の付与工程:
プリディップ液(OPC−SAL−M、奥野製薬工業株式会社製)130gとSn−Pdコロイド触媒液(OPC−90キャタリスト、奥野製薬工業株式会社製)15mLを水で希釈して500mLとし、25℃に保持した。これに前記プリディップ工程後の処理被めっき物を5分間浸漬した後、流水洗浄を2分間行った。
【0114】
6.活性化工程:
活性化液(「OPC−505アクセレーターA」、奥野製薬工業株式会社製)50mL及び活性化液(「OPC−505アクセレーターB」、奥野製薬工業株式会社製)4mLを水で希釈して500mLとし、30℃に保持した。これに前記触媒化合物の付与工程後の処理被めっき物を5分間浸漬した後、流水洗浄を2分間行った。
【0115】
7.無電解めっき工程:
前記のMOON−700カッパーシリーズ(奥野製薬工業株式会社製、無電解銅めっき薬原液)を用いる無電解銅めっきにより、前記活性化工程後の処理被めっき物に銅めっき皮膜を形成した。
【0116】
<比較例2:Pdコロイド触媒を用いた無電解銅めっき皮膜>
前記実施例1で用いた触媒液に代えて、市販のパラジウムコロイド液を使用し、実施例1と同様の被めっき物に対して、下記の工程によって無電解めっきを行った。プリディップ工程、活性化工程を必要とするため、実施例1と比較して2工程を多く必要とする煩雑な工程であった。
【0117】
1.脱脂及びコンディショニング工程:
脱脂・コンディショニング剤(「OPC−370コンディクリーンMA」、奥野製薬工業株式会社製)50mLを水に溶かし500mLとし、65℃に保持した。これに被めっき物を5分間浸漬した。この工程により被めっき物表面の脱脂とカチオン化を行い、その後、温水で2分間洗浄し、続いて流水洗浄を2分間行った。
【0118】
2.ソフトエッチング工程:
実施例1と同様の過硫酸ナトリウムを用いるソフトエッチングを行った。
【0119】
3.脱スマット工程:
実施例1と同様の硫酸を用いる脱スマットを行った。
【0120】
4.プリディップ工程:
プリディップ液(「OPCプリディップ49L」、奥野製薬工業株式会社製)5mL及び98%精製硫酸0.75mLを水に溶かし500mLとし、25℃に保持した。これに前記脱スマット工程後の処理被めっき物を1分間浸漬した。
【0121】
5.触媒化合物の付与工程:
Pdコロイド触媒前駆体液(OPC−50インデューサーAならびにOPC−50インデューサーC、いずれも奥野製薬工業株式会社製)各25mLを水に溶かし500mLとし、40℃に保持した。これに前記脱プリディップ工程後の処理被めっき物を5分間浸漬した後、流水洗浄を2分間行った。
【0122】
6.活性化工程:
活性化液(OPC−150クリスターMU、奥野製薬工業株式会社製)75mLを水に溶かし500mLとし、25℃に保持した。これに触媒化合物の付与工程後の処理被めっき物を5分間浸漬した後、流水洗浄を2分間行った。
【0123】
7.無電解めっき工程:
前記のMOON−700カッパーシリーズ(奥野製薬工業株式会社製、無電解銅めっき薬原液)を用いる無電解銅めっきにより、前記活性化工程後の処理被めっき物に銅めっき皮膜を形成した。
【0124】
<比較例3:Sn−Agコロイド触媒を用いた無電解銅めっき皮膜>
前記実施例1で用いた触媒液に代えて、市販の錫−銀コロイド触媒液を使用し、実施例1と同様の被めっき物に対して、下記の工程によって無電解めっきを行った。Snを除去するための活性化工程を必要とするため、実施例1と比較して1工程を多く必要とする煩雑な工程であった。
【0125】
1.脱脂及びコンディショニング工程:
脱脂・コンディショニング剤(MOON−300コンディクリーン、奥野製薬工業株式会社製)50mLを水に溶かし500mLとし、60℃に保持した。これに被めっき物を5分間浸漬した。この工程により被めっき物表面の脱脂とカチオン化を行い、その後、温水で2分間洗浄し、続いて流水洗浄を2分間行った。
【0126】
2.ソフトエッチング工程:
実施例1と同様の過硫酸ナトリウムを用いるソフトエッチングを行った。
【0127】
3.脱スマット工程:
実施例1と同様の硫酸を用いる脱スマットを行った。
【0128】
4.触媒化合物の付与工程:
Sn−Ag触媒液(「MOONー−500キャタリスト」、奥野製薬工業株式会社製)を25℃に保持した。これに前記脱スマット工程後の処理被めっき
物を5分間浸漬した後、流水洗浄を2分間行った。
【0129】
5.活性化工程:
活性化液(「MOON−600アクセレーター」、奥野製薬工業株式会社製)50mLを水に溶かし500mLとし、45℃に保持した。これに前記触媒化合物の付与工程後の処理被めっき物を5分間浸漬した後、流水洗浄を2分間行った。
【0130】
6.無電解めっき工程:
前記のMOON−700カッパーシリーズ(奥野製薬工業株式会社製、無電解銅めっき薬原液)を用いる無電解銅めっきにより、前記活性化工程後の処理被めっき物に銅めっき皮膜を形成した。
【0131】
<比較例4:比較触媒液−1〜5を用いた無電解めっき皮膜の作製>
実施例1において、触媒液を比較触媒液−1〜5に変えた以外は、実施例1と同様にして、被めっき物に無電解めっきを行った。
【0132】
実施例1、比較例1〜4において得られためっき皮膜の物性は以下のとおりである。
【0133】
【表2】
【0134】
<実施例2>
実施例1で作製した、ABF−GX92をラミネートしたビルドアップ基板用層間絶縁材に、孔径70μmのビアホールを形成した基材を用い、触媒液−4及び、比較例1で用いたSn−Pdコロイド触媒を用いて、実施例1と同様にして、被めっき物表面上に無電解めっきを行った。ビアホール内へのめっき付き回り性を確認するため、ビアホール部をFIB法で切断し、断面のSEM観察を行ったところ、Sn−Pdコロイド触媒と比べて2工程少ない、簡便な方法によって、同等のめっき付き回り性を示すことが確認できた。
図1に、触媒液−4を用いてめっき処理を行った基材の断面SEM写真を、
図2に、比較例1で用いたSn−Pd触媒液を用いてめっき処理を行った基材の断面SEM写真、それぞれ示す。
【0135】
<実施例3:触媒液−1〜8を用いた銅の無電解めっき皮膜の作製>
上記とは別の脱脂・コンディショニング剤及び無電解銅めっき薬液を使用する態様として、触媒液−1〜8を用いて、下記の被めっき物に対し、下記の工程により無電解めっきを行った。
上記の無電解めっき工程中、工程1の脱脂・コンディショニング剤としてNACEコンディショナー(奥野製薬工業株式会社製)を使用し(使用量は50mL)、工程5の無電解銅めっき薬液としてNACEカッパー−1(15mL)、NACEカッパー−2(15mL)、NACEカッパー−3」(100mL)(いずれも奥野製薬工業株式会社製)を使用し、工程5中の保持温度を40℃に変更する以外は、上記の無電解めっき工程と同様にして銅めっき皮膜を析出させた。
得られためっき皮膜の評価は、実施例1と同様に行い結果は表3に示す。
【0136】
【表3】