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特開2015-25807スイッチング・サイクル表示方法及び試験測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-25807(P2015-25807A)
(43)【公開日】2015年2月5日
(54)【発明の名称】スイッチング・サイクル表示方法及び試験測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20150109BHJP
【FI】
   G01R13/20 T
   G01R13/20 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-152213(P2014-152213)
(22)【出願日】2014年7月25日
(31)【優先権主張番号】2485/MUM/2013
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】IN
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ・エヌエイチ・スリ
(72)【発明者】
【氏名】ガジェンドラ・クマー・パトロ
(72)【発明者】
【氏名】アブヒハブ・バル
(72)【発明者】
【氏名】ガルシダッパ・エムエヌ
(57)【要約】
【課題】スイッチング・デバイスのスイッチング・サイクルをグラフィカルに表示する。
【解決手段】被試験デバイスの複数のスイッチング・サイクルの間に、電圧プローブ及び電流プローブを介して、被試験デバイスからスイッチング電圧及びスイッチング電流がそれぞれ取り込まれる。スイッチング電圧及びスイッチング電流は、複数のスイッチング・サイクルのそれぞれにつき1つの曲線として、電圧対電流プロット300上にプロットされる。電圧対電流プロット上の複数の曲線のそれぞれは、互いにオーバーラップされて、ユーザに対して表示される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験測定装置上でスイッチング・デバイスのスイッチング・サイクルをグラフィカルに表示する方法であって、
被試験デバイスの複数のスイッチング・サイクルの間に、電圧プローブ及び電流プローブを介して上記被試験デバイスからスイッチング電圧及びスイッチング電流をそれぞれ取込む処理と、
複数の上記スイッチング・サイクルのそれぞれにつき1つの曲線として、電圧対電流プロット上に上記スイッチング電圧及び上記スイッチング電流をプロットする処理と、
上記電圧対電流プロット上で複数の上記曲線のそれぞれをオーバーラップさせる処理と、
上記曲線を用いて上記電圧対電流プロットを表示する処理と
を具えるスイッチング・サイクル表示方法。
【請求項2】
上記曲線上のポイントの選択をユーザから受ける処理と、
上記電圧対電流プロット上の上記ポイントに関連する特定の曲線を強調表示する処理と
を更に具える請求項1記載のスイッチング・サイクル表示方法。
【請求項3】
複数の上記スイッチング・サイクルの一部だけを表示するための命令を受ける処理と、
上記命令に応じて、複数の上記スイッチング・サイクルの上記一部だけを表示する処理と
を更に具える請求項1記載のスイッチング・サイクル表示方法。
【請求項4】
被試験デバイスからスイッチング電圧を取り込むための電圧プローブと、
上記被試験デバイスからスイッチング電流を取り込むための電流プローブと、
上記電圧プローブ及び上記電流プローブからの上記スイッチング電圧及び上記スイッチング電流を受けるように構成される取込みユニットと、
電圧対電流プロット上で、複数のスイッチング・サイクルのそれぞれにつき1つの曲線とすると共に、複数の上記曲線のそれぞれを上記電圧対電流プロット上でオーバーラップさせて、上記スイッチング電圧に対する上記スイッチング電流をプロットするように構成されるコントローラと、
上記電圧対電流プロットを表示するように構成される表示デバイスと
を具える試験測定装置。
【請求項5】
ユーザから上記曲線上のポイントの選択を受けるよう構成される入力デバイスを更に具え、
上記電圧対電流プロット上の上記ポイントに関連する特定の曲線が強調表示されることを特徴とする請求項4記載の試験測定装置。
【請求項6】
上記コントローラが、上記特定の曲線のスイッチング損失値を計算するよう構成されることを特徴とする請求項5記載の試験測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング・デバイスの信号測定に関し、特に、デジタル・ストレージ・オシロスコープ(DSO)のような試験測定装置を用いて、スイッチング・デバイスから得られる信号のスイッチング・サイクルを測定し、表示する方法及び試験測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源のようなスイッチング・デバイスの電力消費の全体において、電力損失は重要な要素であり、これは、35%〜40%と推定されている。電力損失は、効率と信頼性の低下をもたらし、ヒート・シンクが大きくなってしまうといった点で、スイッチング電源の性能に悪影響を与える。
【0003】
正確な影響を知るために、スイッチング・デバイスの特定のスイッチング・サイクル中のスイッチング損失はもちろんのこと、総合的なスイッチング損失を測定し、特性を明かにすることは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6876936号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】拡張パワー測定/解析ソフトウェア「DPOPWR」データシート、テクトロニクス社、[オンライン]、[2014年7月14日検索]、インターネット< http://jp.tek.com/datasheet/dpopwr-datasheet>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在は、全てのスイッチング・サイクルに関して、最大値、最小値、平均値の統計値を求めることはできる。しかし、ある1つの特定スイッチング・サイクル中における特定のスイッチング損失を測定する測定ツールは、現在、残念ながら市販されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は多数考えられるが、その1つとしては、試験測定装置上で、スイッチング・デバイスのスイッチング・サイクルをグラフィカルに表示する方法がある。この方法は、被試験デバイスの複数のスイッチング・サイクルの期間に、電圧プローブ及び電流プローブを介して被試験デバイスからスイッチング電圧及びスイッチング電流をそれぞれ取込む処理を含む。次に、スイッチング電圧及びスイッチング電流は、複数のスイッチング・サイクルのそれぞれにつき1つの曲線として、電圧対電流プロット300(図3)上にプロットされる。電圧対電流プロット300上の複数曲線のそれぞれは、表示画面上で互いにオーバーラップされて表示される。
【0008】
本発明の別の実施形態としては、電圧対電流プロット300をプロットする試験測定装置がある。この試験測定装置には、被試験デバイスからスイッチング電圧を取り込むための電圧プローブと、被試験デバイスからスイッチング電流を取り込むための電流プローブとが用意される。試験測定装置は、更に、取込みユニットと、コントローラと、表示デバイスとを含んでいる。取込みユニットは、電圧プローブ及び電流プローブからのスイッチング電圧及びスイッチング電流を受けるように構成される。コントローラは、電圧対電流プロット300上で、複数のスイッチング・サイクルのそれぞれにつき1つの曲線として、スイッチング電圧に対するスイッチング電流をプロットするように構成され、このとき、複数曲線のそれぞれが電圧対電流プロット300上でオーバーラップされる。表示デバイスは、電圧対電流プロット300を表示するように構成される。
【0009】
より具体的には、本発明の概念1は、試験測定装置上でスイッチング・デバイスのスイッチング・サイクルをグラフィカルに表示する方法であって、
被試験デバイスの複数のスイッチング・サイクルの間に、電圧プローブ及び電流プローブを介して上記被試験デバイスからスイッチング電圧及びスイッチング電流をそれぞれ取込む処理と、
複数の上記スイッチング・サイクルのそれぞれにつき1つの曲線として、電圧対電流プロット上に上記スイッチング電圧及び上記スイッチング電流をプロットする処理と、
上記電圧対電流プロット上で複数の上記曲線のそれぞれをオーバーラップさせる処理と、
上記曲線を用いて上記電圧対電流プロットを表示する処理と
を具えている。
【0010】
本発明の概念2は、上記概念1の方法であって、
上記曲線上のポイントの選択をユーザから受ける処理と、
上記電圧対電流プロット上の上記ポイントに関連する特定の曲線を強調表示する処理と
を更に具えている。
【0011】
本発明の概念3は、上記概念1の方法であって、上記スイッチング・デバイスのオン・パスが上記スイッチング電圧に対する上記スイッチング電流を用いてプロットされると共に、上記スイッチング・デバイスのオフ・パスが上記スイッチング電圧に対する上記スイッチング電流を用いてプロットされることを特徴としている。
【0012】
本発明の概念4は、上記概念2の方法であって、上記特定の曲線のスイッチング損失値を計算する処理を更に具えている。
【0013】
本発明の概念5は、上記概念1の方法であって、
上記電圧対電流プロットを第1表示ウィンドウ内に表示する処理と、
上記スイッチング電圧及び上記スイッチング電流から生成される電力波形を第2表示ウィンドウ内に表示する処理と
を更に具えている。
【0014】
本発明の概念6は、上記概念1の方法であって、
複数の上記スイッチング・サイクルの一部だけを表示するための命令(input:指示の入力)を受ける処理と、
上記命令に応じて、複数の上記スイッチング・サイクルの上記一部だけを表示する処理と
を更に具えている。
【0015】
本発明の概念7は、上記概念1の方法であって、
上記電圧対電流プロットに適用されるマスクに基いて、上記スイッチング・デバイスの合格状態又は不合格状態を示す処理と
を更に具えている。
【0016】
本発明の概念8は、電圧対電流プロットをプロットする試験測定装置であって、
被試験デバイスからスイッチング電圧を取り込むための電圧プローブと、
上記被試験デバイスからスイッチング電流を取り込むための電流プローブと、
上記電圧プローブ及び上記電流プローブからの上記スイッチング電圧及び上記スイッチング電流を受けるように構成される取込みユニットと、
電圧対電流プロット上で、複数のスイッチング・サイクルのそれぞれにつき1つの曲線とすると共に、複数の上記曲線のそれぞれを上記電圧対電流プロット上でオーバーラップさせて、上記スイッチング電圧に対する上記スイッチング電流をプロットするように構成されるコントローラと、
上記電圧対電流プロットを表示するように構成される表示デバイスと
を具えている。
【0017】
本発明の概念9は、上記概念8の試験測定装置であって、
ユーザから上記曲線上のポイントの選択を受けるよう構成される入力デバイスを更に具え、上記電圧対電流プロット上の上記ポイントに関連する特定の曲線が強調表示されることを特徴としている。
【0018】
本発明の概念10は、上記概念8の試験測定装置であって、
上記コントローラが、上記電圧対電流プロットを上記表示デバイス中の第1ウィンドウ内に表示すると共に、上記スイッチング電圧及び上記スイッチング電流から生成される電力波形を上記表示デバイス中の第2ウィンドウ内に表示するよう構成されることを特徴としている。
【0019】
本発明の概念11は、上記概念9の試験測定装置であって、上記コントローラが、上記特定の曲線のスイッチング損失値を計算するよう構成されることを特徴としている。
【0020】
本発明の概念12は、上記概念8の試験測定装置であって、上記スイッチング・デバイスのオン・パスが上記スイッチング電圧に対する上記スイッチング電流を用いてプロットされると共に、上記スイッチング・デバイスのオフ・パスが上記スイッチング電圧に対する上記スイッチング電流を用いてプロットされることを特徴としている。
【0021】
本発明の概念13は、上記概念8の試験測定装置であって、上記コントローラが、ユーザの入力に応じて、複数の上記スイッチング・サイクルの上記一部だけを表示するよう構成されることを特徴としている。
【0022】
本発明の概念14は、上記概念8の試験測定装置であって、上記コントローラが、上記電圧対電流プロットに適用されるマスクに基いて、上記スイッチング・デバイスの合格状態又は不合格状態を示すよう構成されることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明による代表的な試験測定装置のハイレベル・ブロック図である。
図2図2は、被試験デバイス(DUT)から受ける波形の例を示す。
図3図3は、本発明による実施形態の例に基づく理想化した電圧対電流プロットを示す。
図4図4は、本発明による実施形態の別の例に基づく理想化した電圧対電流プロットを示す。
図5図5は、本発明による実施形態の別の例に基づく理想化した電圧対電流プロットを示す。
図6図6は、本発明による実施形態の別の例に基づく理想化した電圧対電流プロットを示す。
図7図7は、本発明による実施形態の別の例に基づく電圧対電流プロット及び電力波形の理想的な表示を示す。
図8図8は、本発明に基づく電圧対電流プロットをプロットする方法のフローチャートを示す。
図9図9は、図3のリアルタイムのシミュレーションを示す。
図10図10は、図5のリアルタイムのシミュレーションを示す。
図11図11は、図4のリアルタイムのシミュレーションを示す。
図12図12は、マスクを用いた図4のリアルタイムのシミュレーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願は、複数の図面を用いて実施形態を説明していくが、これら図面の縮尺は必ずしも同一ではない。また、これら図面において、類似又は対応する要素については、同じ符号を用いて参照する。
【0025】
本発明による装置及び方法は、スイッチング電源中のMOSFET、バイポーラ・ジャンクション・トランジスタ(BJT)、IGBTのようなスイッチング・デバイスのオン及びオフのスイッチング損失を、電圧対電流プロット300上の曲線としてグラフで提示するのに使用されると共に、特定のスイッチング・サイクルのスイッチング損失を計算するのに使用される。
【0026】
以下では、本願出願人である米国オレゴン州ビーバートンのテクトロニクス社による拡張パワー測定/解析ソフトウェア「DPOPWR」(非特許文献1参照)のような電力測定及び解析ソフトウェアに基いて、本発明を説明する。典型的には、電力測定プロブラム・ツールが、デジタル・ストレージ・オシロスコープ(DSO)のようなデジタイジング試験測定装置のローカル・メモリ中にインストール及び記憶され、これによって、DSOが、スイッチング電源のトランジスタのような回路中のスイッチング損失を迅速に測定し、リアルタイムで分析する分析ツールとして機能するものとする。本発明を実現するDSOは、オプションで、任意にカスタマイズ可能な形式で詳細な試験レポートを生成するようにしても良い。しかし、当業者であれば、本願で開示する発明は、この他のデジタイジング測定装置でも実現可能であることが理解できよう。
【0027】
図1は、本発明による分析ツールを装備した代表的な試験測定装置のブロック図である。具体的には、本発明による試験測定装置100は、電圧プローブ102及び電流プローブ104を利用し、取込み回路106、トリガ回路108、コントローラ110、処理回路112及び表示デバイス114を有している。電圧プローブ102及び電流プローブ104は、被試験デバイス(DUT)116からのアナログの電圧信号及び電流信号のそれぞれを検出するのに適した既存の任意の電圧又は電流プローブで良い。電圧プローブ102及び電流プローブ104の出力信号は、取込み回路106に送られる。
【0028】
取込み回路106は、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)118を有する。取込み回路106は、ADC118と共に動作して、DUT116からの1つ以上の信号を任意のサンプル・レートでデジタル化し、コントローラ110又は信号処理回路112で利用できるようにする。取込み回路106は、この結果得られるサンプル・ストリームをコントローラ110へと送信する。
【0029】
コントローラ110は、取込み回路106で取り込まれて供給された複数のサンプル・ストリームを処理し、これらサンプル・ストリームのそれぞれに関する複数の波形データを生成するよう動作する。表示デバイス上には、例えば、格子(マス目)状の目盛りがあり、横軸を時間軸、縦軸を電圧軸として、横軸に関しては1目盛り当たりの時間(time/div)が、縦軸に関しては1目盛り当たりの電圧(voltage/div)が、ユーザによって設定されるか、又は取り込んだ信号の値に応じて試験測定装置により自動で設定される。こうした所望の横軸の1目盛り当たり時間パラメータと縦軸の1目盛り当たり電圧パラメータに対して、コントローラ110は、取り込まれたサンプル・ストリームに関する生データを加工(つまり、ラスタライズ)し、所望の1目盛り当たり時間パラメータと1目盛り当たり電圧パラメータとを有する対応する波形データを生成するよう動作する。コントローラ110は、1目盛り当たり時間と1目盛り当たり電圧が所望のものでない波形データを、これらに関する所望パラメータに合致するように加工することによって、所望の1目盛り当たり時間パラメータ及び所望1目盛り当たり電圧パラメータを有する波形データを生成するようにしても良い。コントローラ110は、表示デバイス114で後ほど表示するために、波形データを処理回路112へと供給する。
【0030】
コントローラ110は、複数の構成要素を含み、これらには、少なくとも1つのプロセッサ120、サポート回路122、入出力(I/O)回路124、メモリ126、1つ以上の通信バス132がある。通信バス132は、コントローラ内の構成要素間の通信に利用される。サポート回路122は、メモリ126中に記憶されたソフトウェア・ルーチンの実行を補助する回路に加えて、例えば、電源、クロック回路、キャッシュ・メモリなどから構成され、プロセッサ120と共に動作する。こうしたことから、ソフトウェア処理として本願で説明される処理ステップの中には、プロセッサ120と共に動作して、種々のステップを実行する回路のようなハードウェア内で実行可能なものもあると考えられる。コントローラ110は、I/O回路124も含み、これは、コントローラ110と通信を行う種々の機能要素間のインタフェースを形成する。
【0031】
I/O回路124には、例えば、ユーザがコントローラ110との間で入出力を行うのに適したキーパッド、ポンティング・デバイス、タッチ・スクリーンなどの手段が含まれる。コントローラ110は、ユーザの入力に応答して、取込み回路106の動作が、種々の機能の中でも特に、データの取込み、処理、表示のための通信を実行するのに適したものとなるようにする。また、コントローラ110は、ユーザの入力に応答して、トリガ回路108の動作がトリガ処理動作の実行に適したものとなるようにする。加えて、ユーザ入力を、校正機能を自動で行うきっかけとして利用したり、表示デバイス114の他の動作パラメータを最適化したり、論理的分析に利用したり、他のデータ取込みデバイスの動作を最適化するのに利用しても良い。
【0032】
メモリ126は、揮発性メモリの中でも特に、SRAMやDRAMのような揮発性メモリとしても良い。また、メモリ126は、特にディスク・ドライブやテープ媒体、又は、特にEPROMのようなプログラマブル・メモリなどの不揮発性メモリでも良い。メモリ126は、試験測定装置100のオペレーティング・システム(OS:基本ソフト)と、分析モジュール130を記憶する。分析モジュール130は、詳しくは後述するように、スイッチング・デバイスのオン・パス及びオフ・パスの電圧対電流プロット300を表示デバイス114上でグラフィカルに表示するのに使用される。また、分析モジュール130は、オン・パス及びオフ・パスのいずれかの曲線のスイッチング損失を計算するのにも使用される。
【0033】
図1のコントローラ110は、本発明に従った種々の制御機能を実行するようにプログラムされた汎用コンピュータとして描かれているが、本発明は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)のようなハードウェアで実現されても良い。このように、本願で説明するプロセッサ120は、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせによって、等価的に実現されるものと解釈すべきである。
【0034】
当業者であれば、図示せずも、本願で説明する種々の機能を実現するのに必要となるバッファ処理回路、信号調整回路などのような標準的な信号処理コンポーネントも採用されるべきであることが理解できよう。例えば、取込み回路106は、コントローラ110や処理回路112での適切な処理を可能とする十分に高いサンプリング・レートでDUT116からの信号をサンプルする。
【0035】
実施形態によっては、トリガ回路108は、トリガ・イネーブル信号をトリガ・コントローラ(図示せず)に供給する。トリガ・イネーブル信号は、データ・ワードのある部分を示す論理レベルの特定シーケンスなどのような所望のトリガ処理イベントを入力信号から受けたと取込み回路106内の回路が判断するのに応答して、アサート(有効な状態に)される。この所望トリガ処理イベントは、入力信号に適用される論理機能の任意の組み合わせ又は任意のシーケンスに基づくものでも良いし、取込み回路106が受ける任意の試験方法に基づくものでも良い。特定のトリガ・イベントは、コントローラ110を介してトリガ回路108に入力される。
【0036】
処理回路112は、取り込まれた信号ストリーム又は波形データを画像又はビデオ信号に変換するのに適したデータ処理回路を含む。このデータ処理回路は、視覚的なイメージを提供するのに適したもの(例えば、ビデオ・フレーム・メモリ、表示フォーマット及びドライバ回路など)である。処理回路112が、表示デバイス114を含んでいても良く、また、外部の表示デバイス1114で使用するのに適した出力信号を提供するようにしても良い。
【0037】
処理回路112は、オプションで、ユーザ・インターフェース・イメージ(例えば、ユーザ・プロンプト、診断情報など)に加え、垂直表示パラメータ(例えば、1目盛り当たり電圧:volt/division)及び水平表示パラメータ(例えば、1目盛り当たり時間:time/division)のような種々のパラメータや、コントローラ110に応答して動作する。取込み回路106を用いたデータ取込みシステムということに関してだけ言えば、取込み回路106中に表示デバイス114や表示回路に設けることは、必ずしも必要でないことが当業者には理解できよう。更には、取込み回路106が、コンピューティング・デバイス内に挿入されたモジュール若しくはカードから構成されるか、又は、バックプレーンを用いて配置された場合では、単一の表示回路及び表示デバイス114で、取込み回路106に関する画像処理機能を提供するようにしても良い。
【0038】
図2は、DUT116に関する電圧波形202、電流波形204及び電力波形206を描いている。1つのスイッチング・サイクルは、DUTのトランジスタがオンになり、続いてオフになる場合に生じる。これは、図2に示すように、電流波形がハイ(高)に移行するときに電圧波形がロー(低)に移行し、続いて電流波形がロー(低)に移行するときに電圧波形がハイ(高)に移行する場合に対応する。DUT116が試験測定装置100に接続されている場合、発生する多数のスイッチング・サイクルはメモリ126に記録される。
【0039】
電力波形206及びトランジスタのオン領域及びオフ領域の開始及び終了は、電圧波形202及び電流波形204を用いて、分析モジュール130で算出される。当然ながら、図2に示すオン領域及びオフ領域(電圧と電流の掛け算がゼロにならない部分)において、電力の損失が生じる。よって、その面積を算出すれば、電力損失が得られる。電圧波形及び電流波形は、電圧プローブ102及び電流プローブ104をDUT116に接続することによって取り込まれる。電圧プローブ102及び電流プローブ104は、上述のように、試験測定装置に接続される。また、スイッチング電圧やスイッチング電流だけでは、スイッチング・サイクルを特定できないような場合(不連続な動作モードの場合など)では、スイッチング・サイクルを特定するのに、スイッチング・デバイスのゲート・ドライブ信号も取り込み、分析に利用することがある。
【0040】
図3に示すように、オン・パス302の電流及び電圧と、オフ・パス304の電流及び電圧は、表示デバイス114上の電圧対電流プロット300上でグラフィカルに表示される。図3は、単一のスイッチング・サイクル中のスイッチング・デバイスに関するオン・パス302及びオフ・パス304をグラフィカルに表示している。オン・パス302は、スイッチング電源のトランジスタがオンに遷移する場合を示している。図3が示すように、最初、オフ状態中は、電圧がハイで電流がローである。トランジスタがスイッチ・オンになると、電流がハイに移行し、電圧がローに移行する。オフ・パス304は、スイッチング電源のトランジスタがオフに遷移する場合を示している。図3に示すように、最初は、電流がハイで電圧がローである。トランジスタがスイッチ・オフになると、オン・パス302と反対に、電流がローに移行し、電圧がハイに移行する。
【0041】
図4は、複数のスイッチング・サイクルに関する複数のスイッチング損失のグラフを示し、これを表示デバイス114上で表示しても良い。図4は、安定状態での動作におけるスイッチング・サイクルのみを示している。図5は、DUT116がオンになる場合のスイッチング・サイクルを示し、これを表示デバイス114上で表示しても良い。パス502及び504は、DUT116が最初にオンになった場合を示している。パス506及び508は、トランジスタの初期の何回かのスイッチング・サイクルにおいて、電流及び電圧が上昇することを示している。最後に、パス302及び304は、デバイスが安定動作状態に入った場合を示している。これによって、ユーザは、DUT116と共にスイッチング・デバイスを最初にオンにしたときのレスポンス(応答)を観測することができる。
【0042】
分析モジュール130を用いた試験測定装置100のユーザは、例えば、図4に示すように、各スイッチング・サイクルが電圧対電流プロット300上に描かれ、そしてオーバーラップされるので、ある期間におけるスイッチング・デバイスの振る舞いを観測できる。更に、ユーザは、オン・パス及びオフ・パスのグラフを見ることによって、スイッチング過渡現象306及びダイオード逆回復電流(ネガティブ電流)領域308を測定できる。
【0043】
ユーザは、I/O回路124を介して、図3〜6に示す電圧対電流プロット300に対してインタラクティブに操作/設定等が行える。ユーザは、電圧対電流プロット300上のスカラー値について、図6に示すような第1カーソル602のようなカーソルを配置できるようにしても良い。あるスカラー値が選択されたとき、それに関連する曲線(カーブ)は、図6に示す第1カーソル602及び第2カーソル604(プロット・カーソル)によって強調表示される。また、選択されたときに、図6に示すように、ユーザが選択したポイントに関する電流値及び電圧値(例えば、I1及びV1とI2及びV2)を、カーソルの隣に示すようにしても良い。続いて、分析モジュール130は、2つのカーソル間のスイッチング損失を計算できる。従って、ユーザは、グラフの最悪の場合の部分にカーソルを配置して、そのポイントにおいては、どういうことになるかを理解する、といった利用も可能になる。続いて装置は、どのスイッチング・サイクルが、グラフ上のそのポイントに関連するのかを表示する。なお、強調表示とは、その部分の輝度や色、線の太さなどを変化させて、他の部分と区別できるように表示することである。
【0044】
ユーザは、I/O回路124を通して、試験測定装置100上の図示しない「次」ボタン及び「前(previous:以前の)」ボタンを利用し、あるスイッチング・サイクルからその次のスイッチング・サイクルへとジャンプしたり、その逆に、あるスイッチング・サイクルからその前のスイッチング・サイクルへとジャンプすることもできる。これによって、互いに近い関係にある複数の種々のスイッチング・サイクルを簡単に見ることができ、DUT116で何が起こっているかを判断できる。この応用としては、時間的に表示すべき1つ又は複数のスイッチング・サイクルを特定して表示させることもできる。例えば、図5において、パス502及び504だけを表示したり、パス506及び508だけを表示したりすることもできる。
【0045】
ユーザは、I/O回路124を通して、ある特定の1つ又は複数のスイッチング・サイクルを特定し、表示デバイス114上で観測することもできる。例えば、ユーザは、スイッチング・サイクル番号500からスイッチング・サイクル番号550までを特定して観測することができる。すると、これら特定のスイッチング・サイクルだけが電圧対電流プロット300上に表示される。更に、ユーザは、I/O回路124を通して、オン・パス302だけ、又は、オン・パス304だけを観測するように選択することもできる。これに応じて、選択された形式のパスだけが表示デバイス114上で表示されることになる。更には、選択された1つ又は複数のオン・パスだけで生じる損失電力や、選択された1つ又は複数のオフ・パスだけで生じる損失電力を計算するようにしても良い。このように、スイッチング・サイクルを1つの単位として損失電力を計算するだけでなく、スイッチング・サイクル中の選択した部分だけに関する損失電力を計算するようにしても良い。更には、例えば、図6に示した第1カーソル602及び第2カーソル604で曲線上の任意の範囲を選択し、選択した範囲だけの損失電力を計算するようにしても良い。
【0046】
図7に示すように、表示デバイス114が、電圧対電流プロット300と共に、電力波形206も一緒に両方を表示するようにしても良い。ユーザは、I/O回路124を通して、この機能を選択できる。更に、電力波形206上のオン領域部分と、プロット300上の対応するオン・パスを同じ色で表示することで、対応関係にあることがわかるようにしても良い。同様に、電力波形206上のオフ領域部分と、プロット300上の対応するオフ・パスを同じ色で表示することで、対応関係にあることがわかるようにしても良い。更に、プロット300上の任意のオン・パスが、図6に示したようにカーソルを用いて選択されて強調表示された場合に、電力波形206上の対応するオン領域が同じ色を用いて強調表示されても良い。オフ・パスが選択された場合も同様である。
【0047】
ユーザの設定により、又は、コントローラが自動で、トリガ回路108にマスクを供給するようにしても良い。ユーザ又はコントローラがマスクを用いて設定するスイッチング損失リミットのどこかを、もしトリガ回路108への入力データの値が突破した場合には、トリガ回路108が不合格(fail:失敗、フェイル)状態を示す信号を供給するようにしても良い。入力データの値がスイッチング損失リミット内に収まっている場合には、トリガ回路108が合格(pass:パス)状態を示す信号を供給するようにしても良い。
【0048】
図8は、スイッチング・デバイスのオン・パス及びオフ・パスをグラフィカルに表示する方法のフローチャートを示す。最初に、ステップ802では、DUT116の複数のスイッチング・サイクルの間、電圧プローブ102及び電流プローブ104を介して、DUT116のスイッチング電圧及びスイッチング電流がそれぞれ取り込まれる。ステップ804では、分析モジュール130が、受け取ったスイッチング電圧に対するスイッチング電流を、電圧対電流プロット300上で複数のスイッチング・サイクルのそれぞれにつき1つの曲線としてプロットする。次に、ステップ806では、電圧対電流プロット300上の複数の曲線のそれぞれがオーバーラップ(重複表示)される。ステップ808では、これら複数曲線の全てを用いて電圧対電流プロット300が表示される。当業者にとっては当然のことであるが、試験測定装置は、オン・パス及びオフ・パスをリアルタイムでグラフィカルに表示できる。このため、スイッチング・サイクルの新しい曲線は、どれも電圧対電流プロット300上の既存の曲線上にオーバーラップされる。ステップ810では、分析モジュール130が選択された特定の曲線に関するスイッチング損失を計算する。
【0049】
図9は、図3のリアルタイムのシミュレーションであり、スイッチング・デバイスのオンからオフまで、1つのスイッチング・サイクルに関するシミュレーションの結果である。図10は、図5のリアルタイムのシミュレーションであり、スイッチング・デバイスがオンになるのに続いて、オン・パス及びオフ・パスの電流及び電圧が一度上昇してピークに達し、続いて、低下して安定状態へ向かうことが示されている。図11は、図4のリアルタイムのシミュレーションであり、スイッチング・デバイスの安定状態の動作における複数のスイッチング・サイクルをオーバーラップして示している。図12は、マスクを用いた図4のリアルタイムのシミュレーションであり、マスク600を用いてスイッチング損失のリミットが設定されている。
【0050】
好ましい実施形態を参照しながら本発明の原理を図示及び説明してきたが、こうした原理から離れることなく、図示した実施形態の構成や詳細を変更したり、望ましい形態に組み合わせても良いことが理解できよう。
【符号の説明】
【0051】
100 試験測定装置
102 電圧プローブ
104 電流プローブ
106 取込み回路
108 トリガ回路
110 コントローラ
112 処理回路
114 表示デバイス
116 被試験デバイス(DUT)
118 アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)
120プロセッサ
122 サポート回路
124 入出力(I/O)回路
126 メモリ
128 OS(基本ソフト)
130 分析モジュール
132 通信バス
202 電圧波形
204 電流波形
206 電力波形
300 電圧対電流プロット
302 オン・パス
304 オフ・パス
306 スイッチング過渡現象領域
308 ダイオード逆回復電流領域
502 オン・パス(最初)
504 オフ・パス(最初)
506 オン・パス(初期の数回)
508 オフ・パス(初期の数回)
600 マスク
図1
図2
図3
図5
図8
図9
図10
図11
図12
図4
図6
図7