【課題】廃棄物等のセメント原料から発生するセメント焼成炉燃焼排ガス中の悪臭物質を特定及び定量し、配合するセメント原料の使用量を決定することが可能なセメント原料配合方法を提供する。
【解決手段】セメント原料を試験装置で加熱し、セメント原料の単位重量から発生する悪臭物質を特定及び定量して臭気データを得る試験工程S1と、セメント原料の実機での使用予定量における悪臭物質濃度増加量を臭気データに基づいて算出し、悪臭物質濃度増加量から得られる第1臭気指数相当値と、現状の排ガス中の悪臭物質濃度から得られる第2臭気指数相当値とを加えた合算臭気指数相当値が目標臭気指数より小さくなるように前記セメント原料の使用量を決定する使用量決定工程S2とを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実機による悪臭物質の発生についてのテストでは、テスト品以外の種々のセメント原料を使用していることから、テスト品の燃焼により発生する悪臭物質を特定、定量することが困難であった。更に、実機によるテストでは、短期で段階的にテスト品の使用量を増加させ、テスト品の使用量に対する影響度合いを定量化することは困難であり、例えば、事前に廃棄物の契約処理数量を求められる場合の数量決定には過去の同様原料の使用状況を参考にするなど定性的にせざるを得なかった。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、天然資源、廃棄物等のセメント原料から発生するセメント焼成炉燃焼排ガス中の悪臭物質を実機使用前に特定及び定量し、配合するセメント原料の使用量を決定することが可能なセメント原料配合方法、セメント原料配合工程を有するセメント製造方法、及びセメント製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、セメント焼成設備の加熱条件を模擬した試験装置でセメント原料を加熱し、発生したガス組成、発生量を分析することにより、セメント焼成炉排ガス中の悪臭物質を発生するセメント原料を特定し、発生量に応じて特定したセメント原料の使用量を調整することにより、セメント焼成炉排ガス中の悪臭物質を減じることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1]セメント原料を試験装置で加熱し、前記セメント原料の単位重量から発生する悪臭物質を特定及び定量して臭気データを得る試験工程と、前記セメント原料の実機での使用予定量における悪臭物質濃度増加量を前記臭気データに基づいて算出し、前記悪臭物質濃度増加量から得られる第1臭気指数相当値と、現状の排ガス中の悪臭物質濃度から得られる第2臭気指数相当値とを加えた合算臭気指数相当値が目標臭気指数より小さくなるように前記セメント原料の使用量を決定する使用量決定工程とを含むセメント原料配合方法。
[2]前記試験工程における前記セメント原料の加熱条件は、温度範囲300〜700℃である[1]に記載のセメント原料配合決定方法。
[3]前記温度範囲において、一定温度に保持する段階を有する段階加熱とする[2]に記載のセメント原料配合方法。
[4]前記試験工程における前記セメント原料の加熱条件は、酸素濃度2〜10%である[1]〜[3]のいずれかに記載のセメント原料配合方法。
[5]前記試験装置は、管状電気炉である[1]〜[4]のいずれかに記載のセメント原料配合方法。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のセメント原料配合方法によるセメント配合決定工程を有するセメント製造方法。
[7]セメント原料を試験装置で加熱し、前記セメント原料の単位重量から発生する悪臭物質を特定及び定量して臭気データを得る試験手段と、前記セメント原料の実機での使用予定量における悪臭物質濃度増加量を前記臭気データに基づいて算出し、前記悪臭物質濃度増加量から得られる第1臭気指数相当値と、現状の排ガス中の悪臭物質濃度から得られる第2臭気指数相当値とを加えた合算臭気指数相当値が目標臭気指数より小さくなるように前記セメント原料の使用量を決定する使用量決定手段とを備えるセメント製造装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セメント原料から発生するセメント焼成炉燃焼排ガス中の悪臭物質を実機使用前に特定及び定量し、配合するセメント原料の使用量を決定することが可能なセメント原料配合方法、セメント原料配合工程を有するセメント製造方法、及びセメント製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係るセメント配合決定方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施の形態に係るセメント配合決定方法における試験工程を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施例において、セメント配合決定方法の加熱試験で第1試料を用いた場合に発生する悪臭物質及び悪臭物質発生量を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施例において、セメント配合決定方法の加熱試験で第2試料を用いた場合に発生する悪臭物質及び悪臭物質発生量を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施例において、セメント配合決定方法の加熱試験で第3試料を用いた場合に発生する悪臭物質及び悪臭物質発生量を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施例において、セメント配合決定方法の加熱試験で第4試料を用いた場合に発生する悪臭物質及び悪臭物質発生量を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施例において、セメント配合決定方法の加熱試験で第5試料を用いた場合に発生する悪臭物質及び悪臭物質発生量を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施例において、セメント配合決定方法の加熱試験で第6試料を用いた場合に発生する悪臭物質及び悪臭物質発生量を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施例におけるセメント配合決定方法の加熱試験結果と実機からの排ガス実測値との臭気指数の比較を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施例において、第5試料の使用量の変化による実機からの排ガス臭気指数に及ぼす影響を推算したグラフである。
【
図11】本発明の実施例における第6試料の使用量の変化による実機からの排ガス臭気指数に及ぼす影響を推算したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[セメント配合決定方法]
本発明の実施の形態に係るセメント配合決定方法は、
図1に示すように、試験工程S1と、使用量決定工程S2とを含む。
【0010】
<試験工程>
試験工程S1は、試験手段にて、セメント原料を試験装置で加熱し、セメント原料の単位重量から発生する悪臭物質を特定及び定量して臭気データを得る工程である。試験工程S1は、
図1に示すステップS11〜S13を含む。
【0011】
ステップS11において、セメント原料の加熱試験を行うための加熱条件を決定する。加熱条件は、基本的には実機であるセメント焼成炉の条件と同等となるように選定される。具体的な加熱条件として、セメント原料を加熱する温度範囲は、悪臭物質が揮発し、且つ悪臭物質が分解しない温度であるという観点から、300〜700℃であることが好ましく、400〜600℃であることが更に好ましい。加熱条件として決定した上述の温度範囲において、一気に加熱させることも可能であるが、一定の温度域での発生する悪臭物質を特定し、悪臭物質の発生量を検知する等の観点から、また、実機での滞留時間を考慮、模擬する観点から一定温度に保持する段階を有する段階加熱とすることが好ましい。また、加熱条件として、セメント原料を加熱する際の酸素濃度は、実機での燃焼の制御範囲であり、還元雰囲気及び酸化雰囲気とならないで、実機と同じ悪臭物質を生成させるという観点から、2〜10%であることが好ましく、3〜7%であることが更に好ましい。しかしながら、実機での酸素濃度範囲が上記範囲外となっている場合、例えば、冷風導入等を行い操業している場合などは、上記酸素濃度範囲によらず、実機酸素濃度範囲を試験条件として用いることは差し支え無い。
【0012】
次いで、上述の加熱条件に基づいてセメント原料の加熱試験を行う。加熱試験は、
図2に示す一連の試験装置により、セメント原料1から加熱により生じる臭気に関する試験を行う。
まず、規定量のセメント原料1を石英ボード22に乗せ、石英ボード22と共にセメント原料1を試験装置20に備える石英管21に挿入する。石英管21内に配置されたセメント原料1は、試験装置20によって、加熱条件に準じた温度に加熱される。ここで、試験装置20は、加熱条件の調整が可能である管状電気炉であることが好ましい。
試験装置20の石英管21には、実機相当の成分に調整した混合ガスを規定の流量、例えば、実機においての原料使用量と排ガス量の比率に準じた流量で通じさせる。石英管21に導入するガスは、酸素ボンベ10a、窒素ボンベ10b、二酸化炭素ボンベ10cにそれぞれ備えられたマスフローコントローラ11a〜11cによって調整されたガスである。実機相当の成分に調整した混合ガスとするためには、マスフローコントローラ11a〜11cによって、例えば、酸素が5%、窒素が70%、二酸化炭素が25%の組成となるように調整し、且つ、混合ガスの流量が0.5L/minとする。酸素ボンベ10a、窒素ボンベ10b、二酸化炭素ボンベ10cからのガス量は、それぞれに備えられた流量計12a〜12cで計測され、からなる混合ガスのガス量は、流量計13で計測される。
混合ガスは、石英管21を通ることで、セメント原料1から発生する悪臭物質を含む排ガスと成り、除湿瓶30a,30bを経て、捕集バック40で捕集される。捕集する排ガスは、加熱条件で決定したセメント原料1の温度範囲における種々の温度にて発生した規定時間分の排ガスを捕集することが好ましい。
【0013】
ステップS12において、捕集バック40で捕集された排ガスは、前処理が施され、セメント原料1から発生したガス中の特定悪臭物質について定量分析をする。定量分析をする分析機器としては、質量分析計(GC−MS)、水素炎イオン化検出器(GC−FID)、フレーム光度型検出器(GC−FPD)等のガスクロマトグラフィー分析機器を用いることができる。
【0014】
ステップS13において、ステップS12で得た定量分析結果から、セメント原料1の単位重量から発生する悪臭物質量に関する臭気データを算出する。
【0015】
<使用量決定工程>
使用量決定工程S2は、使用量決定手段にて、セメント原料の実機での使用予定量における悪臭物質濃度増加量を臭気データに基づいて算出し、悪臭物質濃度増加量から得られる第1臭気指数相当値と、現状の排ガス中の悪臭物質濃度から得られる第2臭気指数相当値とを加えた合算臭気指数相当値が目標臭気指数より小さくなるようにセメント原料の使用量を決定する工程である。使用量決定工程S2は、
図1に示すステップS21〜S26を含む。
【0016】
ステップS21において、ステップS13で得た臭気データに基づいて、セメント原料の実機での使用予定量における悪臭物質濃度増加量を算出する。以下に、悪臭物質濃度増加量の算出方法を示す。
臭気データより、セメント原料の単位重量wを加熱した際に発生する悪臭物質量xが得られているので、悪臭物質発生源単位yは、y=x/wで表すことができる。そして、実機でのセメント原料を使用する予定量が使用予定量Wであり、実機の排ガス量が実機排ガス量Qである場合、悪臭物質濃度増加量D1は、D1=y×W/Qで算出することができる。
【0017】
ステップS22において、ステップS21で算出した悪臭物質濃度増加量D1から第1臭気指数相当値N1を算出する。第1臭気指数相当値N1は、以下に示す式(1)にて算出する。
N1=10×log{Σ(D1n/Tn)}・・・・・(1)
式(1)中で示すD1nは、試験工程S1で求められた各悪臭物質の悪臭物質濃度増加量(ppm)であり、Tnは、各悪臭物質の検知閾値(ppm)である。
【0018】
ステップS23において、現状の排ガス中の悪臭物質濃度D2から得られる第2臭気指数相当値N2を算出する。第2臭気指数相当値N2は、以下に示す式(2)にて算出する。
N2=10×log{Σ(D2n/Tn)}・・・・・(2)
式(2)中で示すD2nは、現状の排ガス中の各悪臭物質の悪臭物質濃度増加量(ppm)であり、Tnは、各悪臭物質の検知閾値(ppm)である。
【0019】
ステップS24において、第1臭気指数相当値N1と第2臭気指数相当値N2とを加えた合算臭気指数相当値Nが目標臭気指数より小さいか判定する。セメント原料の実機での使用予定量における第1臭気指数相当値N1と現状の排ガス中の悪臭物質濃度D2から得られる第2臭気指数相当値N2とを加算することにより、セメント原料の実機での使用予定量における臭気指数(合算臭気指数相当値N)が推定できる。ここで、目標臭気指数とは、条例等により決められた悪臭規制に用いられる臭気指数、工場敷地境界での規制値及び基準値から煙突の拡散効果を用いて逆算した煙突排出口での臭気指数、上記規制値及び基準値を考慮し定めた社内基準値による臭気指数等をいう。
合算臭気指数相当値Nが目標臭気指数より大きい場合(No)、ステップS25へ移行する。合算臭気指数相当値Nが目標臭気指数より小さい場合(Yes)、ステップS26へ移行する。合算臭気指数相当値Nは、以下に示す式(3)にて算出する。
N=N1+N2
=10×log{Σ(D1n/Tn)+Σ(D2n/Tn)}・・・・・(3)
【0020】
ステップS25において、ステップS24における合算臭気指数相当値Nが目標臭気指数より大きい場合には、セメント原料の実機での使用予定量を低減させる見直しをする。セメント原料の実機での使用予定量を見直した後は、ステップS21〜ステップS24を再び実行する。
【0021】
ステップS26において、ステップS24における合算臭気指数相当値Nが目標臭気指数より小さい場合には、ステップS21で用いたセメント原料の実機での使用予定量を実際の使用量として決定する。
【0022】
本発明の実施の形態に係るセメント配合決定方法によれば、実機使用前に、新たに活用を検討する産業廃棄物等のセメント原料を、試験装置における燃焼試験により発生する悪臭物質を特定及び定量し、セメント原料の使用量を試験により得られたデータから実機への影響が推定可能なため、実機での使用可能量を定量的に決定することが可能となる。
以上により、実機臭気への影響を最小限にとどめながら、産業廃棄物等のセメント原料を最大限活用することが可能となる。
また、既存のセメント原料を同試験方法にて評価し、臭気影響の大きい原料を減ずることにより、実機臭気影響の低減が可能となる。特定したセメント原料の使用を中止又は試験結果を基に実機に影響の少ない範囲まで使用量を低減することにより、セメントキルン燃焼排ガスの臭気を低減させることができる。
【0023】
[セメント製造方法]
本発明の実施の形態に係るセメント製造方法は、上述のセメント配合決定方法によるセメント配合決定工程を有する。
【0024】
セメント原料としては、Ca、Si、Al、Fe等を含むものであれば、酸化物、炭酸化物などの形態を問わず用いることができ、また、それらの混合物を用いることができる。例えば天然原料の例として、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料が挙げられ、工業的な原料の例として、汚泥等の廃棄物原料、高炉スラグ、フライアッシュ等が挙げられる。また、かかるセメント原料の混合割合に関しては、特に限定されるものではなく、上述のセメント配合決定方法によるセメント配合決定工程によって決定された目標臭気指数以下となる鉱物組成に対応した成分組成となるように原料配合を定めることができる。セメント原料の調整として、具体的には、各種原料を表1に示す配合で行うことが好ましい。
【0026】
焼成は、通常、原料の予熱手段としてプレヒーターを備えるロータリーキルンを用いて行われる。焼成工程としては、例えば、セメント原料を、所定の第1焼成温度及び第1焼成時間で加熱して焼成を行う第1焼成工程と、該第1焼成工程後、第1焼成温度から所定の第2焼成温度まで所定の昇温時間をかけて昇温させる昇温工程と、該昇温工程後、第2焼成温度及び所定の第2焼成時間で加熱して焼成を行う第2焼成工程とを含む。
【0027】
例えば、ロータリーキルンを用いた場合、セメント原料を、1000℃の焼成温度(第1焼成温度)で30分間(第1焼成時間)加熱して焼成を行った後(第1焼成工程)、1450℃(第2焼成温度)まで30分間(昇温時間)かけて昇温させ(昇温工程)、さらに1450℃で15分間(第2焼成時間)加熱して焼成を行った後(第2焼成工程)、焼成物を急冷することにより、セメントクリンカを製造する。
【0028】
なお、焼成条件は、上記に特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。例えば電気炉を用いる場合には、第1焼成温度は、850〜1150℃が好ましく、900〜1100℃がより好ましく、950〜1050℃がさらに好ましい。第1焼成時間は、15〜45分が好ましく、20〜40分がより好ましく、25〜35分がさらに好ましい。第2焼成温度は、1200〜1600℃が好ましく、1350〜1550℃がより好ましく、1400〜1500℃がさらに好ましい。昇温時間は、15〜45分が好ましく、20〜40分がより好ましく、25〜35分がさらに好ましい。第2焼成時間は、5〜25分が好ましく、10〜20分がより好ましく、12〜18分がさらに好ましい。
【0029】
上記の様にして製造されたセメントクリンカを、石膏との混合物とすることにより、セメントを作製することができる。また、セメントクリンカと石膏とを例えばボールミル等で粉砕することにより、セメントを作製することができる。
【0030】
以上のような工程を経ることにより、例えば、JIS R 5210に記載の普通ポルトランドセメントまたは早強ポルトランドセメントの規格に適合するセメントを作製することができる。また、セメントがJIS R 5210に記載の普通ポルトランドセメントまたは早強ポルトランドセメントの規格に適合することにより、幅広い用途に適用可能となる。
【0031】
このようにして作製されたセメントを、水と混合することにより、セメントミルクを作製することができ、水及び砂と混合することにより、モルタルを作製することができ、砂及び砂利と混合することにより、コンクリートを作製することができる。また、上記セメントからモルタル及びコンクリートを作製する際、高炉スラグ及びフライアッシュ等を添加することもできる。
【0032】
[セメント製造装置]
本発明の実施の形態に係るセメント製造装置は、上述のセメント配合決定方法を実施する試験手段と使用量決定手段とを備える。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
<試料>
6種のセメント原料である第1〜第6試料を試料として、悪臭物質を特定及び定量する試験を行った。
試験に用いた各試料量は乾燥重量10gである。
尚、第1試料は、実機投入原料であり、後述の実機排ガス測定時に実機から採取し3日分を混合したものである。
【0035】
<試験方法>
管状電気炉で段階的に試料を加熱し、下記各区分で発生した排ガスを捕集バックで捕集し特定悪臭物質をGC−MS、GC−FID、GC−FPDにて定量分析した。
第1区分としては、室温(24℃)〜400℃まで、昇温速度10℃/minにて加熱した。
第2区分としては、400℃にて30分間保持した。
第3区分としては、400〜600℃まで、昇温速度10℃/minにて加熱した。その後、600℃にて20分間保持した。
【0036】
管状電気炉に通じさせる混合ガスの組成は、実機相当の成分とするために、酸素が5%、窒素が70%、二酸化炭素が25%となるように試験用ガスボンベを用いて混合した。管状電気炉に通じさせる混合ガスの流量は、0.5L/minとした。
【0037】
<試験結果>
各第1〜第6試料の単位重量から発生する特定悪臭物質発生量を算出した。測定21物質のうち発生量の大きい11物質を、
図3〜
図8に図示する。
図3〜
図8より、第1区分の400℃昇温までで11物質ともに発生が始まる。各原料ともアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドのアルデヒド類の発生量が多く、特に第5試料及び第6試料からの発生量が多かった。
【0038】
<試験の妥当性検証>
試験の妥当性を確認するために第1試料(実機投入原料)の試験結果とセメント焼成炉実機の排ガス実測値とを比較した結果を
図9に示す。第1試料の試験結果(各温度での悪臭物質濃度増加量)は、送窯原単位(kg/t−ck)、排ガス原単位(m
3N/t−ck)を用い、悪臭物質をアミン類、アルデヒド類、有機酸類に分類して実機規模の臭気指数に換算した。実測値は、日にちが異なる3日分の実機のバグフィルターからの出口ガスを採取し、実測値A〜Cとした。
図9より、比較結果としては、加熱試験結果と実測値A〜Cは良く一致している。実機でも悪臭物質は、600℃までの加熱部で発生すると推定された。本試験方法を用いることにより、セメント原料の悪臭物質発生量の推定が可能であることがわかった。
【0039】
[実施例2]
<試料>
試料として、実施例1で用いた第5試料及び第6試料を用いた。
【0040】
<試験方法>
実施例1と同様の試験を行った。
【0041】
<試験結果>
第5試料及び第6試料の使用量の変化による実機からの排ガス臭気指数に及ぼす影響を推算した。第5試料及び第6試料を単独で使用した場合の臭気指数、現状の排ガスの臭気指数、第5試料及び第6試料を含有させた場合の排ガスの臭気指数を
図10、11に図示する。
第5試料は、使用量が湿潤重量で1000t/月であっても、臭気指数が28から29に上昇すると推算された。この場所での目標臭気指数が30であるので、第5試料を用いることによる悪臭物質の発生の影響が小さいので、1000t/月の使用が可能であることがわかった。
第6試料は、使用量が湿潤重量で1000t/月とした場合、臭気指数が28から34に上昇すると推算された。目標臭気指数の30以下とするためには、第6試料の使用量は150t/月であれば使用が可能であることがわかった。