(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-33664(P2015-33664A)
(43)【公開日】2015年2月19日
(54)【発明の名称】洗米廃水の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/56 20060101AFI20150123BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20150123BHJP
【FI】
C02F1/56 C
B01D21/01 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-164928(P2013-164928)
(22)【出願日】2013年8月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000232863
【氏名又は名称】日本錬水株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097928
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 数彦
(72)【発明者】
【氏名】沼野 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】横田 敏彦
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA12
4D015BA19
4D015BB09
4D015BB14
4D015CA04
4D015DA04
4D015DA06
4D015DA13
4D015DA22
4D015DB02
4D015DB03
4D015DB08
4D015DB12
4D015DB23
4D015DC07
4D015EA06
4D015EA16
4D015EA32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高濃度の洗米廃水を希釈することなしに処理することが出来、しかも、無機凝結剤の使用量を軽減し得る洗米廃水の処理方法を提供する。
【解決手段】洗米廃水に凝結剤として、無機凝結剤、あるいは無機凝結剤と共に有機凝結剤を添加した後に、高分子凝集剤を添加する洗米廃水の処理方法において、高分子凝集剤として、カチオン性高分子凝集剤を使用する洗米廃水の処理方法。
【効果】凝集スラッジ量の削減と沈降時間が大幅な改善が達成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗米廃水に凝結剤を添加した後に高分子凝集剤を添加する洗米廃水の処理方法において、高分子凝集剤としてカチオン性高分子凝集剤を使用することを特徴とする洗米廃水の処理方法。
【請求項2】
無機凝結剤と共に有機凝結剤を使用することを特徴とする請求項1記載の洗米廃水の処理方法。
【請求項3】
カチオン性高分子凝集剤のカチオン性構成単位が全単量体単位に対して10〜100モル%である請求項1又は2に記載の洗米廃水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗米廃水の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酒造工程、大規模炊飯工場または無洗米化精白米製造工程で生じる洗米廃水は、SS値が6,000mg/L、BOD値が4,000mg/L程度の高濃度の汚水であり、このままでは有害廃水であり、何らかの処理が必要とされる。
【0003】
洗米廃水の処理方法の一例として、洗米廃水に塩化カルシウムを加え、その後、浮遊物を凝集分離する方法が知られている(特許文献1)。この方法は、高濃度の洗米廃水を希釈することなしに処理し得るため、処理水量や廃液タンクの容量を可及的に小さく出来る利点がある。
【0004】
ところで、上記の方法ではかなりの量の塩化カルシウムが必要とされている。すなわち、その実施例においては、洗米廃水2Lに5重量%の塩化カルシウム水溶液20mL添加しており、洗米廃水に1L対する塩化カルシウム量は500mg/L、カルシウム量は180mg/Lである。しかも、従来の凝集沈殿法として、洗米廃水に凝結剤:PAC(ポリ塩化アルミニウム)200ppmを添加した後に高分子凝集剤を添加した例が記載されているが、沈殿速度が極端に遅いとして、実用性に欠ける問題が指摘されているものの、具体的な高分子凝集剤の種類は例示されておらず、その有効性は明確となっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−190891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、前記方法と同様に高濃度の洗米廃水を希釈することなしに処理し得る他の処理方法を提供することにより、技術の豊富化に資する点にある。本発明の他の目的は、無機凝結剤の種類が限定されない洗米廃水の処理方法を提供することにある。本発明の更に他の目的は、無機凝結剤の使用量を軽減し得る洗米廃水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成すべく、洗米廃水に凝結剤を添加した後に高分子凝集剤を添加する洗米廃水の処理方法について鋭意検討を重ねた結果、凝結剤として、無機凝結剤、あるいは無機凝結剤と共に有機凝結剤を使用し、さらにカチオン性高分子凝集剤を使用するならば、上記の目的を達成し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、洗米廃水に凝結剤を添加した後に高分子凝集剤を添加する洗米廃水の処理方法において、高分子凝集剤として、カチオン性高分子凝集剤を使用することを特徴とする洗米廃水の処理方法に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば前記の課題である凝集スラッジ量の削減と沈降時間が大幅な改善が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、洗米廃水としては、例えば、前記従来技術に記載の洗米廃水と同様、SS値およびBOD値が高濃度の洗米廃水を使用することが出来る。通常、SS値は1,000〜10,000mg/L、BOD値は1,000〜10,000mg/L、COD値は1,000〜7,000mg/Lである。
【0013】
<無機凝結剤>
無機凝結剤は、特に限定されず、一般的に利用されているものを使用できる。例えば、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、ポリ塩化第二鉄、石灰等が使用できる。これらの中では、特に、硫酸バンド及びPACが好適である。無機凝結剤は、洗米廃水中の懸濁物質表面の電荷を中和し、ファンデルワールス力(分子間引力)により溶媒中に分散する粒子を集合させる凝結作用により凝結を生じさせる。なお、無機凝結剤は無機凝集剤と呼ばれることもある。
【0014】
<有機凝結剤>
有機凝結剤は、特に限定されず、一般的に利用されているものを使用できる。例えば、ポリアミン、ジアリルジメチル塩化アンモニウムの重合物、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート塩化アルキル4級塩の重合物、ジアルキルアミノアルキルアクリレート塩化アルキル4級塩とアクリルアミドとの共重合物などが挙げられる。
【0015】
上記のような有機凝結剤は、分子内に多数のカチオン基を有する高分子電解質であるので、無機凝結剤と同様の荷電中和作用を有するが、有機凝結剤は無機凝結剤よりもカチオンの電荷密度が高いために、その凝結作用は無機凝結剤よりはるかに大きい特長がある。さらに高分子鎖による吸着作用により懸濁物質の凝結を高める特長があり、特に洗米廃水のような高SSでは、懸濁物相互の距離が近くなることにより、この効果が顕著となり、無機凝結剤に比較して大幅に少量で効果を示す。この点で、後述のいわゆる高分子凝集剤とは別個のものである。すなわち、高分子凝集剤は、小さな集合体を集めて大きな集合体(フロック)を作る凝集作用により溶媒中に分散する粒子を凝集させる。そしてその固有粘度は通常7dL/g以上である。これに対して、有機凝結剤は、高分子凝集剤より低分子であり、5dL/g以下であることが好ましい。
【0016】
<高分子凝集剤>
本発明で使用する高分子凝集剤は、カチオン性の高分子凝集剤が好ましい。カチオン性高分子凝集剤としては、公知の各種単量体を原料とし、それを重合して得ることができる。例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩の重合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩化メチル4級塩とアクリルアミドとの共重合物が挙げられる。一般的に凝集沈殿処理にはアニオン性高分子凝集剤が使用されるが、本発明の洗米廃水のような高SSでは、凝結された洗米廃水のイオン性バランスが未だアニオン性が残っているためにカチオン性高分子凝集剤が好適である。さらにはカチオン性構成単位は全単量体単位に対して10〜100モル%であることが凝集沈殿速度及び濁度の点で好ましい。カチオン性構成単位は全単量体単位に対して20〜60モル%であることがより好ましい。これは、アクリルアミドのアミド基による水素結合が凝集の主要因であるためと考えられる。
【0017】
カチオン性高分子凝集剤の重合方法は、沈殿重合、塊状重合、分散重合、水溶液重合等が挙げられる。一例として水溶液重合法による製造方法について以下に述べる。
先ず、所定量のジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩化メチル4級塩と、アクリルアミドと、イオン交換水とを計量し、所定の温度に調節した後、密閉可能な断熱容器に仕込む。次いで、窒素ガスで溶存酸素を置換し、重合開始剤、連鎖移動剤等の薬品を添加する。重合開始剤としては、公知の一般的なアゾ開始剤、レドックス系開始剤等を使用することが出来る。
重合の進行に伴い重合温度が上昇するが、温度がピークに達した後、1時間熟成し、反応容器より重合ゲルを取り出す。ミートチョッパー等により重合ゲルを細断し、送風乾燥機で80℃の温度で乾燥する。乾燥ポリマーを粉砕機で0.5〜1mm程度の粒径になるよう粉砕しカチオン性高分子凝集剤を得る。
本発明におけるカチオン性や両性高分子凝集剤には、粘性の低下や反応性の向上のために固体酸を添加することが出来る。固体酸としては、スルファミン酸が一般的に使用される。
【0018】
前記した各薬剤の添加は、それぞれ別々の槽を設置して機械攪拌下に行うのが好ましいが、廃水ライン中の洗米廃水に凝結剤を添加して凝集槽に導いた後に高分子凝集剤を添加する方法或いは洗米廃水ライン中の廃水に凝結剤と高分子凝集剤の添加位置をずらして添加する方法も採用することも出来る。ライン混合の場合は十分な乱流状態であることが必要であり、不十分な場合にはラインミキサー等の設置も有効である。
【0019】
無機凝結剤と有機凝結剤とは、同時に添加しても各別に添加してもよく、添加順序も任意であるが、洗米廃水では、無機凝結剤の添加に引き続いて有機凝結剤の添加が好ましい。また、通常、粉末状の有機凝結剤や高分子凝集剤は水に溶解して適当な濃度の水溶液(例えば0.1〜0.3質量%の水溶液)として使用される。なお、凝結剤や高分子凝集剤によっては、その機能を最大に発揮させるために適用pH範囲が定められていることがあり、その場合は、常法に従って、薬剤の添加前に適切なpH調節を行う。
【0020】
各薬剤の添加量は、洗米廃水のBOD、COD、濁度により変動するが、無機凝集剤の添加量は通常50〜600mg/L、有機凝結剤の添加量は通常1〜100mg/L、高分子凝集剤の添加量は通常0.1〜10mg/Lである。本発明においては、無機凝結剤と共に有機凝結剤を併用したことにより、無機凝結剤の使用量を低減することが出来るが、無機凝結剤の低減量は有機凝結剤の使用量によって異なる。そのため、両者の使用比率は全体量を考慮して適宜決定される。なお、凝集生成したフロックの固液分離は常法に従って行うことが出来る。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、使用した洗米廃水、薬剤、測定項目は次のとおりである。
【0022】
<洗米廃水>
BOD:3,220(mg/L)、CODMn:2,400(mg/L)、TOC:639(mg/L)、SS:2,000(mg/L)、pH5.0の洗米廃水を使用した。
【0023】
<薬剤>
(1)有機凝結剤:表1に記載の有機凝結剤。有機凝結剤は0.3重量%の水溶液として使用した。
(2)無機凝結剤:硫酸バンド、PAC(ポリ塩化アルミニウム)
(3)カチオン性高分子凝集剤:表1に記載の高分子凝集剤。カチオン性高分子凝集剤は0.3重量%の水溶液として、アニオン性高分子凝集剤は0.1重量%の水溶液として使用した。
【0024】
<測定項目>
(1)有機凝結剤及び高分子凝集剤の固有粘度:
固有粘度は、1N硝酸ナトリウム水溶液中、温度30℃の条件で、ウベローデ希釈型毛細管粘度計を使用し、定法に基づき測定した(高分子学会編、「新版高分子辞典」、朝倉書店,p.107)。
(2)フロック径:
凝集フロックのフロック径は、目視により全体を測定し平均の値をフロック径とした。
(3)沈降時間:
高分子凝集剤の所定量を添加し、所定時間攪拌混合した後に攪拌を停止する。そして、生成した凝集フロックが500mlのビーカーの底に沈殿する迄の時間を測定した。
(4)上澄液BOD:JIS K 0102−21及び同−32.3に基づき測定した。
(5)上澄液COD:JIS K 0101に基づき測定した。
(6)上澄液濁度:JIS K 0101に基づき測定した。
(7)上澄液TOC:JIS K 0101に基づき測定した。
【0025】
実施例1〜4:
原水(洗米廃水)300mLをビーカーに採取し、150rpmの回転数で攪拌しながら、表2に示す種類と量の無機凝結剤を添加して1分間混合し、次いでpH調節剤(1mol/L水酸化ナトリウム水溶液)を添加してpH7に調節した後、さらに1分間攪拌、混合した。次いで、表2に示す種類と量の高分子凝集剤を添加し、上記と同様に攪拌、混合した。2分間の攪拌時間が経過したら攪拌を停止、フロック粒径、沈降時間を測定した後、更に、その2分後に処理液の上澄みを液面から3cmの深さよりシリンジにて採取し、前記の各項目の測定を行った。結果を表2に示す。
【0026】
実施例5〜16:
前記実施例において、pH7に調節した後、表2に示す種類と量の有機凝結剤を添加すること以外は前記実施例と同様に操作し、前記の各項目の測定を行った。結果を表2に示す。
比較例1〜7:
前記実施例において、表2に示す種類と量の高分子凝集剤を添加した以外は、前記実施例と同様に操作し、前記の各項目の測定を行った。結果を表2に示す。
【0027】
【表1】
表1中の構成成分の略号は下記を示す。
DMC:ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩
DME:ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩
AAM:アクリルアミド
AA:アクリル酸
【0028】
【表2】
【0029】
表2から次のことがわかる。
実施例1〜16では比較例1〜7に比して良好な凝集性能を示し、処理水の濁度が良好であった。実施例5〜16では実施例1〜4に比して大幅に無機凝結剤の使用量が低減されている。さらに、カチオン性高分子凝集剤のカチオン性構成単位が好ましい範囲である実施例7〜11は、実施例5、6(カチオン性構成単位が多い)に比し凝集フロックの沈降性の点でも優れており、実施例12(カチオン構成単位が少ない)に比し処理水の濁度の点でも優れている。