【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例より、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。また、特に断りがない限り、例中の「部」及び「%」は質量基準によるものである。
【0021】
以下に、本発明の製造例で使用したビスフェノールF、及び製造されたエポキシ樹脂の分析方法を記述する。
【0022】
エポキシ樹脂の分析方法
(1)2核体純度の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、2核体成分のピーク面積/全成分のピーク面積×100(面積%)で求めた。測定装置はHLC−8220(東ソー株式会社製)を使用し、RI検出器で検出した。移動相にテトラヒドロフランを用い、流量は1mL/minとした。分離カラムにはTSK−GEL 2000HXL、TSK−GEL 2000HXL、TSK−GEL 1000HXLの3本(東ソー株式会社製)を用いてカラム温度は40℃とした。
(2)エポキシ当量の測定は、JIS K 7236に準拠して測定した。
(3)軟化点の測定は、JIS K 7234に準拠して測定した。
【0023】
本発明の実施例、比較例で得られた粉体塗料組成物の評価方法を記述する。
【0024】
粉体塗料組成物の評価方法
(1)ゲルタイムの測定は、150℃に加熱したホットプレート上に粉体塗料0.1gを乗せ溶融した時点からテフロン棒で掻き混ぜ、ゲル化するまでの時間を測定した。
(2)最低溶融粘度の測定は、測定装置としてHAAKE社製Rheo Stress600を使用した。予め粉体塗料0.25gを直径13mmのタブレットに成形し、170℃に予熱したディスポーザブルプレートに設置、すぐさまパラレル型ディスポセンサーとのギャップを0.5mmにし、温度を維持したまま、オシレーションモードで測定を開始し、粘度測定値で最も低下した値を示した。この時周波数1Hz、せん断応力100Paで測定した。
(3)最低溶融粘度到達から40秒後の溶融粘度は、(2)の操作のまま測定を継続し、最低溶融粘度を示してから40秒後の粘度測定値を示した。
(4)ブロッキング性の測定は、粉体塗料を40℃で1ヶ月貯蔵した後の塗料の状態を以下の判定で表示した。
ブロッキングなし:○ ブロッキングあり:×
【0025】
本実施例、比較例での塗膜評価において、可撓性試験、耐衝撃性試験、温度勾配試験の試験板は以下のように塗装した。
【0026】
管厚5mm×直径200mm×管長500mmのダクタイル鋳鉄管の中央部に各評価用の試験板を置き、240℃の熱風循環オーブン中で30分間予熱した。試験板の下には合計の厚さが管厚と同じ5mmとなるような厚みの同サイズのスペーサー板を敷いた。予熱後、ダクタイル鋳鉄ごと取り出し塗装装置に設置して、管の外温が所定温度になるまで放冷した。管温度が所定温度になった後、塗装ノズルより粉体塗料を塗布した。粉体塗料は1000g/分の塗出量で、ノズルを管内で1往復半移動させ、試験板上の膜厚が500μmになるように塗装した。塗装板はそのまま管中で30分間放冷して硬化した。
【0027】
塗膜物性の評価方法を以下に示した。
【0028】
塗膜物性の評価方法
(1)可撓性試験は、JIS Z 5528、5.4.4の規格に従い、JIS Z 2247でエリクセン試験を行い、可撓性を判断した。
3mm以上:○、 3mm未満:×
(2)耐衝撃性試験は、JIS Z 5528、5.4.3の規格に従い、JIS K 5400、8.3.2でデュポン衝撃試験を行った。撃ち型は半径1/4インチで500gの錘を50cmの高さから落とした。
割れ、はがれなし:○、 割れ、はがれあり:×
(3)温度勾配試験
塗膜面を50℃、被塗装面を25℃になるように水中に浸漬し、14日後の塗膜外観を評価した。
異状なし:○、 僅かなフクレあり:△、 全面フクレ:×
【0029】
ピンホール試験、塗膜外観試験、MEKラビングテストには以下の試験管を使用した。
管厚5mm×直径200mm×管長500mmのダクタイル鋳鉄管を240℃の熱風循環オーブン中で30分間予熱した。予熱後、ダクタイル鋳鉄ごと取り出し塗装装置に設置して、管の外温が所定温度になるまで放冷した。管温度が所定温度になった後、管を500mmで回転させながら、塗装ノズルより粉体塗料を塗布した。粉体塗料は1000g/分の塗出量で、ノズルを管内で1往復半移動させ、膜厚が500μmになるように塗装した。塗布終了後、30秒間回転を継続後、回転を止め放冷して硬化した。
【0030】
(4)ピンホール試験
塗装した試験管を目視にて評価した。
ピンホールなし:〇、 ピンホールあり:×
(5)塗膜外観試験
塗装した試験管を目視にてピンホール以外の塗膜外観異常を評価した。
異状なし:〇、 異状あり:× と表記して異状の種類を( )内に記した。
(6)MEKラビングテスト
硬化性の確認としてMEKラビングを行い、以下の基準で判断した。
塗膜付着なし:○、 塗膜付着あり:×
【0031】
合成例1
攪拌機、窒素導入管、側温抵抗体、滴下装置及び冷却コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに49%苛性ソーダ水溶液110.6部と水399部を仕込み、攪拌しながら系内水分を窒素置換した。次に、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定による2核体純度が90面積%のビスフェノールFを200部添加し、系内温度を50℃に制御して攪拌溶解した。次いで、エピクロロヒドリン110.5部を滴下ロートから投入した。投入後、系内温度を92℃に制御して2時間反応を行った。反応終了後、メチルイソブチルケトン330部を加え15分間攪拌後静置して、下層の水を除去した。次いでリン酸で中和、水洗を行い水層を除去し、ろ過した後メチルイソブチルケトンを留去してエポキシ樹脂(A−1)を得た。エポキシ当量は1350g/eq、軟化点は92℃であった。
【0032】
合成例2
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定による2核体純度が98面積%のビスフェノールFを使用した以外は合成例1と同様の装置、操作を行いエポキシ樹脂(A−2)を得た。エポキシ当量は1200g/eq、軟化点は89℃であった。
【0033】
合成例3
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定による2核体純度が80面積%のビスフェノールFを使用した以外は合成例1と同様の装置、操作を行いエポキシ樹脂(A−3)を得た。エポキシ当量は2500g/eq、軟化点は119℃であった。
【0034】
合成例4
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定による2核体純度が68面積%のビスフェノールFを使用した以外は合成例1と同様の装置、操作を行いエポキシ樹脂(A−4)を得た。エポキシ当量は3080g/eq、軟化点は133℃であった。
【0035】
合成例5
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定による2核体純度が100面積%のビスフェノールFを使用し、49%苛性ソーダ水溶液137.1部と水535部、エピクロロヒドリン129.5部に変更した以外は合成例1と同様の装置、操作を行いエポキシ樹脂(A−5)を得た。エポキシ当量は690g/eq、軟化点は65℃であった。
【0036】
合成例6
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定による2核体純度が100面積%のビスフェノールFを使用し、49%苛性ソーダ水溶液132.2部と水511部、エピクロロヒドリン124.9部に変更した以外は合成例1と同様の装置、操作を行いエポキシ樹脂(A−6)を得た。エポキシ当量は750g/eq、軟化点は72℃であった。
【0037】
合成例7
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定による2核体純度が70面積%のビスフェノールFを使用した以外は合成例1と同様の装置、操作を行いエポキシ樹脂(A−7)を得た。エポキシ当量は2900g/eq、軟化点は128℃であった。
【0038】
実施例1
合成例1で得られたエポキシ樹脂(A−1)100部、硬化剤として2−フェニルイミダゾリン(商品名キュアゾール2PZL 四国化成工業株式会社)3部、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン(商品名キュアゾール2MZ−A 四国化成工業株式会社)2部、2−フェニルイミダゾール(商品名キュアゾール2PZ(商品名キュアゾール2PZ 四国化成工業株式会社)0.5部、体質顔料として平均粒径50μmの珪石粉40部、着色顔料として酸化チタン(JR−301 テイカ株式会社)12部、カーボンブラック(MA−100 三菱化学株式会社)0.3部、流れ調整剤としてアクリル系重合体(モダフローIII 日本モンサント株式会社)0.4部を計量混合した。混合物をヘンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製 形式10B)でドライブレンドし、次いでエクストルーダー(池貝鉄工株式会社製 PCM−30)で100℃で溶融混練を行い、冷却ロールで厚さ3〜5mmまでフレーキングし、常温まで冷却後に微粉砕、分級により平均粒径50μmの粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0039】
実施例2
エポキシ樹脂を合成例2で得られた(A−2)とし、珪石粉を50部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0040】
実施例3
エポキシ樹脂を合成例3で得られた(A−3)とし、硬化剤として2−フェニルイミダゾリン1部、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン2部、2−フェニルイミダゾール1部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0041】
実施例4
エポキシ樹脂を合成例1で得られた(A−1)とし、硬化剤として2−フェニルイミダゾリン2部、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン1部、2−フェニルイミダゾール1部とし、珪石粉を60部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0042】
実施例5
エポキシ樹脂を合成例6で得られた(A−6)とし、珪石粉を10部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0043】
実施例6
エポキシ樹脂を合成例7で得られた(A−7)とし、珪石粉を100部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0044】
実施例7
エポキシ樹脂を合成例6で得られた(A−6)とし、硬化剤として2−フェニルイミダゾリン5部、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン3.5部、2−フェニルイミダゾール0.5部とし、珪石粉を30部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0045】
実施例8
エポキシ樹脂を合成例3で得られた(A−3)とし、硬化剤として2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン0.5部とし、珪石粉を70部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0046】
比較例1
エポキシ樹脂を合成例4で得られた(A−4)とし、硬化剤として2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン0.5部、とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0047】
比較例2
エポキシ樹脂を合成例4で得られた(A−4)とし、硬化剤として2−フェニルイミダゾール0.09部とし、とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0048】
比較例3
エポキシ樹脂を合成例5で得られた(A−5)とし、硬化剤としてアジピン酸ジヒドラジド(ADH)2部、芳香族アミンアダクト(TH−1000 新日鉄住金化学株式会社製BPA型エポキシ樹脂のジアミノジフェニルメタンアダクト)3.0部、珪石粉を50部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0049】
比較例4
エポキシ樹脂を合成例5で得られた(A−5)とし、硬化剤として2−フェニルイミダゾリン5部、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン1部、2−フェニルイミダゾール2部とし、珪石粉を50部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0050】
比較例5
エポキシ樹脂を合成例5で得られた(A−5)とし、硬化剤として2−フェニルイミダゾリン5部、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン1部、2−フェニルイミダゾール2部とし、珪石粉を50部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0051】
比較例6
エポキシ樹脂を合成例3で得られた(A−3)とし、珪石粉を110部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0052】
比較例7
エポキシ樹脂を合成例7で得られた(A−7)とし、硬化剤として2−フェニルイミダゾリン3部、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン2部、2−フェニルイミダゾール0.5部、珪石粉を5部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0053】
比較例8
エポキシ樹脂を合成例7で得られた(A−7)とし、硬化剤として2−フェニルイミダゾリン3部、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン4.5部、2−フェニルイミダゾール3部、珪石粉を100部とした以外は実施例1と同様の配合、操作を行い粉体塗料を得た。塗料物性、塗膜物性を表−1に示した。
【0054】
【表1】