【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0036】
1.使用材料
(1)アンカー筋:SNB7 先端寸切り
(2)プライマーNo.1(エポキシ系):ADOX1380W(日本アドックス社製)
(3)プライマーNo.2(エポキシ系):E200(コニシ社製)
(4)プライマーNo.3(エポキシ系):EP−150(日本シーカ社製)
(5)プライマーNo.4(アクリル系):ライオンボンドA(住友大阪セメント社製)の3倍液
(6)無機系充填材:セメフォースアンカー(住友大阪セメント社製)
(7)有機系(エポキシ系)充填材:HIT RE−500(HILTI社製)
(8)セメント(住友大阪セメント社製 普通ポルトランドセメント)
(9)細骨材a(茨城県神栖市産 砂)、細骨材b(栃木県佐野市産 砕砂)
(10)粗骨材c(茨城県笠間市産 砕石)、粗骨材d(栃木県佐野市産 石灰砕石)
【0037】
2.試験体の作成
<実施例1>
・上記の使用材料を用いて、下記表1〜3に示す各配合で、圧縮強度の異なるコンクリート構造物(内径がφ216mm×180mmの鋼管内に打設されて28日経過したもの)を作製した。なお、圧縮強度は、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して測定した。
・得られたコンクリート構造物の中央部に下記表4に記載の条件で穿孔を形成した。
・次に、穿孔の内面に下記表4に記載の条件でプライマーを塗布した。
・穿孔の内面に塗布されたプライマーが硬化する前に、穿孔内に充填材を注入した。
・そして、穿孔内に充填材を注入した直後に、埋め込み深さが下記表4に記載の定着長L1となるようにアンカー筋を穿孔内に挿入して7日間養生し、充填材を硬化させることで、試験体を作製した。なお、試験体は、二つ作製した。
【0038】
3.試験方法
・一方の試験体を20℃の恒温槽に、他方の試験体を60℃の恒温槽に、それぞれ18時間配置した。
・そして、各温度環境においてアンカー筋を穿孔内から引き抜く際の最大荷重(引き抜き強度)Aを測定した。測定結果については、下記表5に示す。
・最大荷重(引き抜き強度)Aと付着面積Bから付着強度Cを算出した。付着強度Cについては、下記表5に示す。なお、付着面積Bおよび付着強度Cは、下記式(1)および(2)により算出した。
・付着面積B=アンカー筋の直径D×π×定着長(埋め込み深さ)L…(1)
・付着強度C=最大荷重A/付着面積B…(2)
【0039】
<実施例2〜9、比較例1〜4>
穿孔、プライマー、充填材に関連する条件を下記表4に記載の条件としたこと以外は、実施例1と同一条件で試験体を作製し、同一条件で試験を行った。最大荷重(引き抜き強度)Aおよび付着強度Cについては、下記表5に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
<まとめ>
引き抜き強度Aおよび付着強度Cについて、比較例1と、実施例2,5,7とを比較すると、実施例2,5,7の方が各温度環境において高い値を示すことが認められる。つまり、本願発明の範囲の塗布量でプライマーを穿孔内に塗布してコンクリートに含浸させることで、プライマーを塗布しない場合よりも、引き抜き強度Aおよび付着強度Cを向上させることができる。
【0046】
また、比較例2と、実施例2,5,7とを比較すると、20℃の環境においては、比較例2の方が高い値を示すが、60℃の環境においては、実施例2,5,7の方が高い値を示すことが認められる。つまり、本願発明の範囲の塗布量でプライマーを穿孔内に塗布してコンクリートに含浸させることで、プライマーの塗布量が本願発明の範囲を超える場合よりも、比較例高温の環境においても高い引き抜き強度Aおよび付着強度Cを得ることができる。
【0047】
比較例3と、実施例2,7とを比較すると、20℃の環境においては、比較例3の方が高い値を示すが、60℃の環境においては、実施例2,7の方が高い値を示すことが認められる。つまり、充填材として、無機系充填材を使用することで、有機系充填材を使用する場合よりも、比較例高温の環境においても高い引き抜き強度Aおよび付着強度Cを得ることができる。
【0048】
比較例4と、実施例2,6,7とを比較すると、実施例2,6,7の方が各温度環境において高い値を示すことが認められる。これは、比較例4のようにプライマーの粘度が高い場合、プライマーを穿孔の内面に塗布しても、プライマーがコンクリートに含浸されないため、コンクリートの穿孔を形成する部分をプライマーによって補強することができない。一方、実施例2,6,7のような粘度のプライマーを用いることで、プライマーがコンクリートに含浸されるため、コンクリートの穿孔を形成する部分をプライマーによって補強することができる。つまり、本願発明のように、プライマーを穿孔内に塗布して含浸させることで、温度環境に影響されることなく、良好な引き抜き強度Aおよび付着強度Cを得ることができる。
【0049】
実施例1〜4を比較すると、穿孔径が大きい方が引き抜き強度Aおよび付着強度Cが高い値を示すことが認められる。これは、穿孔径が大きくなることによって、プライマーによって補強された部分の面積が大きくなるため、補強された部分と硬化した無機系充填材との付着面積が大きくなるからである。特に、穿孔径がアンカー筋の直径の1,4倍以上であることで、より高い引き抜き強度Aおよび付着強度Cを得ることができる。
【0050】
また、実施例2と実施例7とを比較すると、実施例2の方が各温度環境において高い値を示すことが認められる。つまり、エポキシ系のプライマーを使用することで、アクリル系のプライマーを使用する場合よりも、より高い引き抜き強度Aおよび付着強度Cを得ることができる。
【0051】
実施例2,8,9を見ると、圧縮強度が高い方が引き抜き強度が高くなることが認められる。また、実施例8,9と比較例1とを比較すると、実施例8,9の方が圧縮強度が低いにもかかわらず、引き抜き強度Aおよび付着強度Cが比較例1と同等以上になることが認められる。更に、実施例8,9と比較例5,6とを比較すると、実施例8,9の方が引き抜き強度Aおよび付着強度Cが高いことが認められる。つまり、圧縮強度の比較的低いコンクリート構造物であっても、本願発明のようにプライマーを所定量塗布することで、良好な引き抜き強度Aおよび付着強度Cを得ることができる。