(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-55118(P2015-55118A)
(43)【公開日】2015年3月23日
(54)【発明の名称】地盤の液状化対策工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/08 20060101AFI20150224BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20150224BHJP
【FI】
E02D3/08
E02D3/10 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-189869(P2013-189869)
(22)【出願日】2013年9月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100098132
【弁理士】
【氏名又は名称】守山 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 一司
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA06
2D043DA04
2D043EA05
2D043EA06
2D043EB02
(57)【要約】
【課題】 間隙水圧の上昇を抑制する排水能力に加えて、ドレーン柱自体の強度による地盤の変位を抑制する能力を備えたドレーン柱により、地盤の液状化対策を実現する工法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る地盤液状化対策工法は、セメントクリンカーを含有するドレーン材により、地盤G中に透水性を有するドレーン柱3を造成する。ドレーン柱3は、セメントクリンカー同士が表面の一部で接触して接着することにより、隙間を有した構造となって透水性を維持するとともに、セメントクリンカー同士の接合力によって、砕石柱の場合と比べてドレーン柱自体が強度を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントクリンカーを含有するドレーン材により、地盤中に透水性を有するドレーン柱を造成することを特徴とする地盤液状化対策工法。
【請求項2】
請求項1に記載の地盤液状化対策工法において、
前記セメントクリンカーは、粒径2mm以上であることを特徴とする地盤液状化対策工法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の地盤液状化対策工法において、
前記セメントクリンカーは、水中に浸漬させた後に前記ドレーン材に用いることを特徴とする地盤液状化対策工法。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の地盤液状化対策工法において、
前記ドレーン材は、更に高炉スラグ粉末を含有し、セメントクリンカー100質量部に対して、高炉スラグ粉末を20質量部以下の割合で含有することを特徴とする地盤液状化対策工法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の地盤液状化対策工法において、
前記ドレーン材は、更に水を加えて混合されていることを特徴とする地盤液状化対策工法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液状化対策工法において、
前記ドレーン柱の造成に際して、施工した前記ドレーン材に締め固めを施すことを特徴とする液状化対策工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤にドレーン材により透水性を有するドレーン柱を造成する地盤液状化対策工法に関し、特に、セメントクリンカーを含有するドレーン材を用いる地盤の液状化対策工法に関する。
【背景技術】
【0002】
緩い砂質地盤に対する主な液状化防止の原理としては、密度の増大(締固め)、地震時等の間隙水圧上昇の抑制(排水)、地盤のせん断変形の抑制、地盤の不飽和化等がある。
間隙水圧上昇を抑制するための排水工法の一つにグラベルドレーン工法がある。従来のグラベルドレーン工法は、ドレーン材として砕石を用い、対象地盤に透水係数の大きい砕石柱(ドレーン柱)を造成し、地震時に発生する過剰な間隙水圧をドレーン柱を通して素早く消散させることで、地盤の液状化を防止して地盤の安定を保つことができる。
【0003】
グラベルドレーン工法の施工方法は、例えば
図1に示すように、略全長に亘ってスクリューを周設したケーシングパイプ1を用いて、ケーシングパイプ1を回転駆動によって地盤G中に貫入させ(a)、ケーシングパイプ1内に砕石(ドレーン材)を投入しながらケーシングパイプ1を引き抜き(b)、地盤G中に排水用の砕石柱(ドレーン柱)2を造成するものである。
なお、砕石として、一般に7号砕石(JIS A 5001 粒径2.5〜5mm)を使用することが多い。
【0004】
特開2003−82649号公報(特許文献1)には、軟弱地盤中に所定間隔で掘削した掘削孔内に、膨張性を有するスラグを充填し、このスラグが軟弱地盤中の水分を吸収することにより、スラグを膨張させて周囲地盤の締め固めを行うようにする軟弱地盤の改良工法が記載されている。
なお、特許文献1には、スラグを用いる点は記載されているが、セメントクリンカーを用いる点は記載されていない。
【0005】
特開2005−146609号公報(特許文献2)には、ケーシングを水面下の軟弱地盤中に埋設し、ケーシング内に粒状物を投入し、投入が完了したらケーシングの底部の蓋を開けてケーシングを上昇せしめることで、粒状物をケーシングの下端から地盤中に排出して、地盤改良パイルを形成する地盤改良方法において、粒状物として、スラッジに1重量%以上の生石灰または石灰系固化材を混合し造粒された粒状物を用いることが記載されている。
なお、特許文献2には、スラグを用いる点は記載されているが、セメントクリンカーを用いる点は記載されていない。
【0006】
特開2009−102801号公報(特許文献3)には、JIS K 0058−1に規定される溶出試験条件に従い、利用有姿のままの試料に、その10倍量の蒸留水を加え、毎分200回転で6時間撹拌した後の蒸留水のpHが11.5以下である鉄鋼スラグからなる低置換サンドコンパションパイル用材料であり、特にMg(OH)2の析出によるサンドコンパションパイルの透水性の低下を抑え、長期透水係数を1×10
−3cm/s以上に維持できる低置換サンドコンパションパイル用材料が記載されている。
なお、特許文献3には、鉄鋼スラグを用いる点は記載されているが、セメントクリンカーを用いる点は記載されていない。
【0007】
特開2010−208904号公報(特許文献4)には、コンクリート廃材を粉砕する際に発生するコンクリート微粉末と、生コンスラッジから分離生成された脱水ケーキとを、水を添加して撹拌混合した後に、そのまま固化させ、あるいは造粒、整粒して所定粒径の固化粒状物を生成するようにした再生粒状物及びその製造方法が記載されている。
なお、特許文献4には、コンクリート廃材の微粉末や生コンスラッジの脱水ケーキを用いる点は記載されているが、セメントクリンカーを用いる点は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−82649号公報
【特許文献2】特開2005−146609号公報
【特許文献3】特開2009−102801号公報
【特許文献4】特開2010−208904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のグラベルドレーン工法は、地盤を穿孔し、その孔に砕石を投入し柱状にドレーン(ドレーン柱)を造成するものであり、砕石のドレーン柱が周辺地盤より透水係数が大きいことを利用して、周辺地盤における水圧の上昇を緩和するというものである。
しかしながら、砕石のドレーン柱には、間隙水圧の上昇を抑制する能力を有するものの、地震等により地盤が変形する力が加わった場合には、地盤の支持力や地盤の変形を抑制する強度がほとんどないため、ドレーン柱の形状を維持することができず崩壊してしまい、地震等の液状化の変位を防ぐ能力が十分なものとはいえないという課題があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、間隙水圧の上昇を抑制する能力に加えて、ドレーン柱の強度による地盤の変位を抑制する能力を備えた、地盤の液状化対策工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る地盤の液状化対策工法は、セメントクリンカーを含有するドレーン材により、地盤中に透水性を有するドレーン柱を造成することを特徴とする。
【0012】
ドレーン柱に主体的に含まれるセメントクリンカーは、周囲に存在する水分により、セメントクリンカーの表面や細かいセメントクリンカー粒子が水和反応を起こし、セメントクリンカー同士が接触した面が接着する。
そのため、このドレーン柱は、セメントクリンカー同士が表面の一部で接触して接着することにより、隙間を有した構造となって透水性を維持するとともに、セメントクリンカー同士の接合力によって、砕石柱の場合と比べてドレーン柱自体が強度を有するようになる。
【0013】
ここで、本発明に係る地盤の液状化対策工法では、セメントクリンカーは粒径2mm以上であるのが好ましく、これによって、ドレーン柱に水分が透過する十分な間隙を備え、透水性を容易に高めることができる。
【0014】
また、本発明に係る地盤の液状化対策工法では、セメントクリンカーは、水中に浸漬させた後にドレーン材に用いるのが好ましく、これによって、セメントクリンカー自体の圧壊強度を高めることができる。
【0015】
本発明に係る地盤の液状化対策工法では、ドレーン材は更に高炉スラグ粉末を含有することが好ましく、これによって、セメントクリンカー単独で使用した場合に比べて、ドレーン柱の強度を更に高めることができる。
【0016】
また、ドレーン材中、セメントクリンカー100質量部に対して、高炉スラグ粉末を20質量部以下の割合で含有するのが好ましく、これによって、要求される透水性と強度を満足させるに、より好適なドレーン柱を得ることができる。
【0017】
また、本発明に係る地盤の液状化対策工法では、ドレーン材が高炉スラグ粉末を含有する場合、ドレーン材は、水を加えて混合されているのが好ましく、これによって、高炉スラグ粉末の飛散防止を図ることができる。
【0018】
また、本発明に係る液状化対策工法では、ドレーン柱の造成に際して、施工時にドレーン材に締め固めを施すようにしてもよい。
また、本発明に係る液状化対策工法では、ドレーン柱を造成した地盤の表面に、透水性を有するマット層を敷設するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、ドレーン柱による地盤間隙水圧の上昇を抑制する能力に加えて、ドレーン柱自体の強度が増大するため、地震等による地盤の変位、特にせん断変形に対して抵抗力を増大することができ、従って地震等においても優れた地盤の液状化対策を実現することできる。
更に、本発明によると、間隙水圧の上昇抑制能力だけの砕石を用いたドレーン柱に比べて、間隙水圧の上昇抑制能力と地盤変位に対する抵抗力を増大して地盤の液状化に有効に対処できるため、ドレーン柱の本数を減らすことも可能となって、工事期間の短縮やコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】グラベルドレーン工法の一例を説明する概略図である。
【
図2】本発明によるドレーン柱の一例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る地盤の液状化対策工法を、図面を参照して一実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の地盤液状化対策工法は、セメントクリンカーを含有するドレーン材により、地盤中に透水性を有するドレーン柱を造成する、地盤液状化対策工法である。
本実施形態の液状化対策施工法は、例えば
図1に示したようなグラベルドレーン工法により行なうことができる。なお、サンドドレーン工法やバーチカルドレーン工法等と称せられる施工方法を用いても同様に実施することが可能である。
まず、ケーシングパイプを地盤中に貫入させ、ケーシングパイプ内にドレーン材を充填し、ケーシングパイプを引き抜いて、
図2に示すように、液状化対策を施す対象地盤G中に透水性を有する、ドレーン柱3を必要本数造成する。
【0022】
本発明においては、ドレーン柱を構成するドレーン材としてセメントクリンカーを含有するものを用いるため、周囲の水分、例えば地盤中に含まれる水分や降雨等による水分によりセメントクリンカー間の接着力が増して、地盤Gのせん断変形に対する抵抗力が増大し、液状化抵抗を増大させることができる。
なお、ドレーン材として使用できるセメントクリンカーとしては、特に限定されず、任意のセメントクリンカーを使用することができる。
ドレーン材に用いるセメントクリンカーは、得られるドレーン柱の良好な透水性を保持するため、粒径2mm以上、好ましくは2.5mm以上であることが望ましい。かかる粒径は7号砕石とほぼ同レベルの粒径である。
なお、粒径はJIS篩により決定した粒径である。
【0023】
なお、セメントクリンカーは砕石と比べて粒子の圧壊強度がやや小さく、そのためにドレーン柱の性能が低下することはないが、施工時に振動等の締め固めを伴う場合にはセメントクリンカー粒子の破壊や磨り減りにより微粒分が増加し、ドレーン柱の透水性が低下してしまうことがある。これに対処するため、セメントクリンカーを施工前に水中に浸漬、例えば数日間(1〜2日)以上に浸漬することによって、セメントクリンカー粒子自体の圧壊強度を増加させることができる。
【0024】
また、ドレーン柱の強度を更に増加させる場合には、ドレーン材として、セメントクリンカーに加えて更に高炉スラグ粉末を含有するドレーン材を用いることができる。使用することができる高炉スラグは、特に限定されず、任意のものを適用することができる。
かかるドレーン材によっても、ドレーン柱3は、時間の経過とともにセメントクリンカー粒子間の接着力が増すとともに、セメントクリンカーによるアルカリ刺激で高炉スラグ粉末自体が硬化し、セメントクリンカー粒子をより強固に接着させ、地盤Gのせん断変形に対する抵抗力が増大し、液状化抵抗が更に大きくなる。
【0025】
高炉スラグ粉末を含有する場合には、ドレーン柱の強度を更に増加させるとともに、ドレーン柱の良好な透水性を保持するために、セメントクリンカー100質量部に対して、高炉スラグ粉末を20質量部以下、好ましくは12質量部以下とすることが望ましい。
【0026】
ドレーン材として、セメントクリンカーに加えて高炉スラグ粉末を含む場合には、セメントクリンカー、高炉スラグ粉末及び水を予め混合して調製したドレーン材をドレーン柱に適用することが、高炉スラグ粉末の飛散を防止し、早期にドレーン柱の強度を発現させるために好ましい。またこの際に、前記したように、セメントクリンカーを予め水中に浸漬したセメントクリンカーを用いると、セメントクリンカー自体の圧壊強度が非水浸のものより増加することで、地盤投入中に粒子破砕が起こる可能性が小さくなり、より望ましい。
【0027】
上記ドレーン材を、地盤中のケーシングパイプ内に充填し、充填したドレーン材に振動等を与えて、ドレーン材を締め固めるとともに、周辺地盤も締め固めするようにしてもよい。これにより、周辺地盤が締め固められることにより、地盤のせん断強さが増加し、地盤全体の耐液状化性能が向上させることができる。
【0028】
また、
図2に示すように、ドレーン柱3の施工の前又は後で、対象地盤Gの上面にマット層4を敷設してもよい。このマット層4は、例えば、砕石、砂、本実施形態と同様なドレーン材(セメントクリンカー又はセメントクリンカーと高炉スラグ粉末の混合物)で形成することができる。
クリンカ柱の直上を盛り土等とした場合には、クリンカ柱の上部への排水が不可能となり、過剰間隙水圧が消散されず、また他種の構造物の場合でも構造物下面に排水された水がたまることにより、排水能力が抑制されることがある。 かかるマット層を敷設することで、上部に構造物が有る場合でも、このマット層に沿って横方向へ排水を行うことができるため、過剰間隙水圧を速やかに消散できる。
【0029】
このように造成されたドレーン柱3は地盤Gより透水性が良いため、地震時等において、地盤Gの過剰間隙水圧がドレーン柱3を通して消散し、地盤Gの液状化が防止される。
【0030】
従来の砕石を用いたドレーン柱は、ドレーン柱自体に強度がないため、地震時等の地盤の変位を抑制することができないため、液状化の抑制効果としては排水による間隙水圧の上昇抑制のみである。
【0031】
これに対して、本実施形態では、ドレーン柱を構成するセメントクリンカーが水と反応して固まる性質により、ドレーン材中のセメントクリンカー粒子同士が接する表面が接着し、更に高炉スラグ粉末を加えた場合は、セメントクリンカーによるアルカリ刺激で高炉スラグ粉末自体が硬化し、セメントクリンカー粒子をより強固に接着させる。
このため、ドレーン柱の強度が向上し、地震時等における間隙水圧の上昇抑制効果とせん断変形への抵抗力の増加効果が得られる。
更に、本実施形態のドレーン柱は、これら効果により各ドレーン柱の液状化防止能力が高まるため、砕石のドレーン柱の場合に比べて、液状化対策のために地盤に造成するドレーン柱の本数を少なくすることができる。
【実施例】
【0032】
A.ドレーン材自体の性能試験
(圧壊試験)
JIS Z 8841に準拠した圧壊試験を行なって、表1に示すように、セメントクリンカー粒子(普通ポルトランドセメントクリンカー:住友大阪セメント株式会社製)と砕石(栃木県佐野市産硬質砂岩砕石7号:粒径2.5mm〜5mm)の圧壊強度を測定した。圧壊試験は、それぞれ20個のセメントクリンカー粒子と砕石について実施し、得られた圧壊強度分布と平均値とを下記表1に示す。
なお、表1中、セメントクリンカーについては、前処理として粒子を3日間水中に浸漬させた後、粒子表面の水分を拭き取ったもの(水浸)と、前処理を行なわないもの(乾燥)との2種類を圧壊試験に供した。
砕石については、上記前処理を行なわないものを圧壊試験に供した。
【0033】
【表1】
【0034】
上記圧壊試験の結果、セメントクリンカー粒子自体は、水中に浸漬することにより砕石と同程度の強度を呈することがわかった。
【0035】
B.ドレーン柱の性試験
上記表1に示すセメントクリンカー(浸漬)及び砕石を用い、砕石のみのドレーン材によるドレーン柱供試体(表2)、セメントクリンカーのみのドレーン材によるドレーン柱供試体(表3)、セメントクリンカーと高炉スラグ粉末とを混合したドレーン材によるドレーン柱供試体(表4)について、透水性試験及び一軸圧縮試験を実施した。
【0036】
(透水試験)
透水試験は、JIS A 1218に準拠して実施し、各供試体の透水係数を求めた。
砕石からなるドレーン柱供試体(表2)は、表1の砕石の6号砕石(比較例1:栃木県佐野市産硬質砂岩砕石6号)と7号砕石(比較例2:栃木県佐野市産硬質砂岩砕石7号)とをそれぞれJIS A1218に規定されているφ10cm×高さ12cmの透水試験用円筒へ自然落下で投入して(締固めは実施しない)、当該試験に供した。
その結果を表2に示す。
【0037】
実施例1のセメントクリンカーからなるドレーン柱供試体(表3)は、表1のセメントクリンカーを水中に浸漬させたもの(水浸)を水中から引き上げて、JIS A1218に規定されているφ10cm×高さ12cmの透水試験用円筒に投入し、水中養生を20℃で28日間実施し、当該試験に供した。
また実施例2のセメントクリンカーのみのドレーン柱供試体(表3)は、実施例1のセメントクリンカーからJIS篩で2mm篩通貨分を除去したセメントクリンカーを用いた以外は、実施例1と同様にして、セメントクリンカーを水中に浸漬させたもの(水浸)を水中から引き上げて、JIS A1218に規定されているφ10cm×高さ12cmの透水試験用円筒に自然落下で投入して(締固めは実施しない)、水中養生を20℃で28日間実施し、当該試験に供した。
その結果を表3に示す。
【0038】
実施例3〜7及び比較例3〜5のセメントクリンカーと高炉スラグ粉末とが混合されたドレーン柱供試体(表4)は、実施例2のセメントクリンカー(JIS篩で2mm通過分を除去したもの)を水中に浸漬させたものを(水浸)水中から引き上げて高炉スラグ粉末と水とを表3に示す配合割合でそれぞれ混合し、これを実施例1と同様のφ10cm×高さ12cmの透水試験用円筒へ自然落下で投入して(締固めは実施しない)、20℃で気中養生を1日実施した後、水中養生を20℃で27日間実施して、当該試験に供した。
その結果を表4に示す。
【0039】
(一軸圧縮試験)
一軸圧縮試験は、JIS A 1216に準拠して実施して、各供試体の一軸圧縮強さを求めた。その結果もそれぞれ表2〜4に示す。
実施例1、実施例2及び実施例3〜7及び比較例3〜6の各供試体は、上記「透水性試験」と同様に調製し、それぞれ水中養生後に、型枠からはずしたドレーン柱供試体を、当該試験に供した。
また、比較例1及び2の砕石からなるドレーン柱供試体(表4)は、表1の砕石の6号砕石(比較例1)と7号砕石(比較例2)とをそれぞれ実施例1と同様のφ10cm×高さ20cmの軽量モールド(住商セメント(株))へ自然落下で投入して(締固めは実施しない)、型枠を外した。この場合、ドレーン柱形状を維持することができず、圧縮強度の測定は不可能であった。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
(評価)
一般に、ドレーン柱に一般的に要求される透水率は10
−3m/sec以上であり、表2の結果から、砕石によるドレーン柱は、透水率による間隙水圧の抑制効果は期待できるものの、ドレーン柱の形状を維持できず、せん断変位等に耐え得る強度が得られないことがわかる。
【0044】
表3の結果から、セメントクリンカーのみからなる供試体は、セメントクリンカーの粒径にかかわらず、ドレーン柱に要求される透水率及び一軸圧縮強さを示し、間隙水圧の上昇を抑制する能力と、ドレーン柱自体の強度による地盤の変位に対する抵抗性能とを備えたドレーン柱であることがわかる。
【0045】
また、実施例1と実施例2とを比較すると、セメントクリンカーに粒径の小さいものを含むと、一軸圧縮強さは増大するが、透水率は若干低下しており、セメントクリンカーとして粒径2mm以上(実施例2)のセメントクリンカーを用いることが好ましい。また、セメントクリンカーが粒径2mm以上(2mm篩通過分を除去した粒子)であると、一般によく使われる7号砕石と同等以上の透水性を有する。
【0046】
表4は、セメントクリンカー(粒径2mm以上)に混合する高炉スラグ粉末の質量割合を種々変更した供試体についての試験結果であるが、この結果から、次のことがわかる。なお、水は、高炉スラグ粉末の混合に応じて、均一に混合するために適当量が添加される。
高炉スラグ粉末の混合割合が増えるにしたがって、一軸圧縮強さが増大するが、透水率は低下する傾向があることがわかる。ドレーン柱に一般的に要求される透水率(10
−3m/sec以上)に鑑みると、本発明のセメントクリンカー100質量部に対して、高炉スラグ粉末を20質量部以下の割合で混合した実施例の供試体は、十分な一軸圧縮強さと、必要な透水率を得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の液状化対策工法は、軟弱地盤等にドレーン柱を造成して液状化対策を施す工法に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・ケーシングパイプ、
2・・・砕石柱、
3・・・ドレーン柱、
4・・・マット層、
G・・・地盤