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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-57465(P2015-57465A)
(43)【公開日】2015年3月26日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/22 20060101AFI20150227BHJP
【FI】
   C08G59/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-147868(P2014-147868)
(22)【出願日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-166859(P2013-166859)
(32)【優先日】2013年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089406
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100096563
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 榮四郎
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 奈央樹
(72)【発明者】
【氏名】青柳 栄次郎
(72)【発明者】
【氏名】野沢 英則
(72)【発明者】
【氏名】軍司 雅男
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AE07
4J036BA09
4J036DA01
4J036FB07
4J036JA07
4J036JA08
4J036JA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低誘電性、高耐熱性に優れた性能を有し、積層、成型、注型、接着等の用途に有用なエポキシ樹脂組成物及びその硬化物を提供するものである。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)を含有するエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物である。

(Xはナフチレン基;Yはフェニレン基,ナフチレン基;m及びnは1〜9の整数;Gはグリシジル基)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)を含有するエポキシ樹脂組成物。
【化1】
(式中、mは繰り返し数で、平均値は0<m<10であり、nは繰り返し数で、平均値は0≦n<10であり、Xはそれぞれ独立して、ナフチレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するナフチレン基、または下記一般式(2)で表される基のいずれかであり、Yはそれぞれ独立して、フェニレン基、ナフチレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するフェニレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するナフチレン基、または下記一般式(2)で表される基のいずれかであり、Gはグリシジル基である。)
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン原子のいずれかであり、Rは単結合または二価の基である。)
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物(a)1モルに対し、下記一般式(4)で表されるハロゲン化メチル基含有化合物(b)を0.001〜1.0モルの範囲で反応させて得られる下記一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物(c)を、さらにエピクロルヒドリンと反応させることによって得られるエポキシ樹脂である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化3】
(式中、Yはフェニレン基、ナフチレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するフェニレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するナフチレン基、または下記一般式(2)で表される基のいずれかである。)
【化4】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン原子のいずれかであり、Rは単結合または二価の基である。)
【化5】
(式中、Xはナフチレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するナフチレン基、または下記一般式(2)で表される基のいずれかであり、Zはハロゲン原子を示す。)
【化6】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン原子のいずれかであり、Rは単結合または二価の基である。)
【化7】
(式中、mは繰り返し数で、平均値は0<m<10であり、Xはそれぞれ独立して、ナフチレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するナフチレン基、または下記一般式(2)で表される基のいずれかであり、Yはそれぞれ独立して、フェニレン基、ナフチレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するフェニレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するナフチレン基、または下記一般式(2)で表される基のいずれかである。)
【化8】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン原子のいずれかであり、Rは単結合または二価の基である。)
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1モルに対して、前記硬化剤(B)の活性水素基が0.4〜1.2モルの範囲である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とするプリプレグ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とする接着シート。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とするエポキシ樹脂積層板。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とするエポキシ樹脂封止材。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とするエポキシ樹脂注型材。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電特性、高耐熱性、低吸湿性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物及びその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の情報通信機器の信号帯域、コンピュータのCPUクロックタイムはGHz帯に達し、高周波化が進行している。
【0003】
電気信号の誘電損失は、回路を形成する絶縁体の比誘電率の平方根、誘電正接および使用される信号の周波数の積に比例する。そのため、使用される信号の周波数が高いほど誘電損失が大きくなる。
【0004】
誘電損失は、電気信号を減衰させて信号の信頼性を損なうので、これを抑制するために絶縁体には誘電率、誘電正接の小さな材料を選定する必要がある(特許文献1)。
【0005】
こういった特性を有する熱硬化性樹脂組成物を提供する材料そして、フェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物をエポキシ樹脂用硬化剤として用いる技術が知られているが、耐熱性が十分ではなかった(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−221968号公報
【特許文献2】特開平11−130939号公報
【特許文献3】特開平7−82348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、低誘電性、高耐熱性に優れた性能を有し、積層、成型、注型、接着等の用途に有用なエポキシ樹脂組成物及びその硬化物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)を含有するエポキシ樹脂組成物である。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン原子のいずれかであり、Rは単結合または二価の基である。)
【0011】
また、前記エポキシ樹脂(A)は、下記一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物(a)1モルに対し、下記一般式(4)で表されるハロゲン化メチル基含有化合物(b)0.001〜1.0モルを反応させて下記一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物(c)を得た後、そのジヒドロキシ化合物(c)とエピクロルヒドリンとを反応させることによって得られるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0012】
【化3】
(式中、Yは前記一般式(1)のYと同義である。)
【0013】
【化4】
(式中、Xは前記一般式(1)のXと同義であり、Zはハロゲン原子を示す。)
【0014】
【化5】
(式中、m,X,Yは前記一般式(1)のm,X,Yとそれぞれ同義である。)
【0015】
また、前記エポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1モルに対して前記硬化剤(B)の活性水素基が0.4〜1.2モルの範囲であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は前記エポキシ樹脂組成物から得られるプリプレグ、接着シート、エポキシ樹脂積層板、エポキシ樹脂封止材、またはエポキシ樹脂注型材である。また、本発明は前記エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエポキシ樹脂組成物は低誘電性、高耐熱性に優れた硬化物を与え、積層、成型、注型、接着等の用途に好適に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)と前記硬化剤(B)を必須成分とする。
【0019】
前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)において、mは繰り返し数であり、平均値は0<m<10であることが必要であり、好ましくは0.01<m<8であり、より好ましくは0.05<m<5である。mが0では水酸基量の低減が十分でなく、低誘電特性に効果がなく、mが10以上では高粘度となる恐れがある。また、nは繰り返し数であり、平均値は0≦n<10であることが必要であり、好ましくは0≦n<5であり、より好ましくは0≦n<4であり、さらに好ましくは0≦n<3である。nが10以上では高粘度となる恐れがある。また、エポキシ当量は特に規定がないが、2000g/eq.以下が好ましく、1000g/eq.以下がより好ましい。エポキシ当量が2000g/eq.より大きいと分子量が大きくなるために高粘度となる恐れがある。ここで、平均値は数平均である。
【0020】
また、前記一般式(1)のXはそれぞれ独立して、ナフチレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するナフチレン基、または前記一般式(2)で表される基のいずれかである。Yはそれぞれ独立して、フェニレン基、ナフチレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するフェニレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するナフチレン基、または前記一般式(2)で表される基のいずれかである。なお、置換基としての炭素数1〜10の炭化水素基の具体例としては、後述する前記一般式(2)中のRと同じものが挙げられる。
【0021】
前記一般式(2)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン原子のいずれかである。炭素数1〜10の炭化水素基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜10の直鎖または分岐アルキル基や、シクロヘキシル基等の炭素数4〜10の環状アルキル基や、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、インダニル基等の炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基や、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2,6−ジメチルベンジル基、3,5−ジメチルベンジル基、α−メチルベンジル基等の炭素数7〜10の置換基を有していてもよいアラルキル基等の置換基が挙げられ、好ましい置換基はメチル基、エチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、α−メチルベンジル基である。
【0022】
また、前記一般式(2)中、Rは単結合または二価の基であり、ハロゲン原子及び硫黄原子、窒素原子、酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。二価の基の具体的な例としては、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−C(CF−、−CO−、−COO−、−O−、−S−、−SO−、ベンジリデン基、α−メチルベンジリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロペンチリデン基、9H−フルオレン−9−イリデン基、またはシクロヘキセニル基等が挙げられ、これらの基の芳香族骨格にはさらにRと同義の置換基を有していてもよい。好ましい二価の基としては、−CH−、−C(CH−、−CO−、−COO−、−O−、−S−、−SO−、9H−フルオレン−9−イリデン基である。
【0023】
また、前記一般式(1)〜(5)において、同一の記号は、特段の断りがない限り、同一の意味を有する。
【0024】
前記エポキシ樹脂(A)は、まず、前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化メチル基含有化合物(b)を反応させて前記ジヒドロキシ化合物(c)を得た後、そのジヒドロキシ化合物(c)とエピクロルヒドリンを反応させて水酸基をグリシジルエーテル化とすることで得られる。その反応の際に、エポキシ基が開環して重合した構造の成分が少量生成することがあるが、このような成分が混入していても差し支えない。
【0025】
従来より、水酸基をアルカリ金属塩としハロゲン化物との反応によるポリエーテル合成が知られており、前記ヒドロキシ化合物(c)を得るための前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化メチル基含有化合物(b)との反応ではこのポリエーテル合成法を用いることができる。なお、前記一般式(1)と(5)のmは同義であるが、mは前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化メチル基含有化合物(b)のモル比からおよその計算が可能であり、モル比が1に近いほどmが大きくなる。しかし、両末端がヒドロキシ基となる必要があることから、(a)/(b)比は1より大きい。
【0026】
前記ジヒドロキシ化合物(a)を具体的に例示すれば、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等のフェニレン基含有ジヒドロキシ化合物、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のナフタレンジオール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、4,4’−オキシビスフェノール、4,4’−カルボニルビスフェノール、ビスフェノールフルオレン、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ビスフェノールアセトフェノン、4−ヒドロキシ安息香酸−4−ヒドロキシフェニル等の2価のフェノール類が挙げられ、さらに前記一般式(2)のRと同義の、炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子を置換基として有するこれらの化合物等が挙げられる。好ましくは、4−ヘキシルレゾルシノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2−tert−ブチルヒドロキノン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビフェノール、4,4’−オキシビスフェノール、4,4’−カルボニルビスフェノール、ビスフェノールフルオレン、テトラブロモビスフェノールAが挙げられ、より好ましくは、テトラメチルビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、テトラブロモビスフェノールAが挙げられる。
【0027】
前記ハロゲン化メチル基含有化合物(b)を具体的に例示すれば、ビスクロロメチルナフタレン、ビスクロロメチルビフェニル、ビスブロモメチルビフェニル、ビスクロロメチルフルオレン等であり、さらに前記一般式(2)のRと同義の、炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子を有するこれらの化合物等が挙げられる。
【0028】
前記エポキシ樹脂(A)に適した前記ジヒドロキシ化合物(c)を得るためには、前記で例示したジヒドロキシ化合物(a)と前記で例示したハロゲン化メチル基含有化合物(b)とをどのように組み合わせてもよいが、前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化メチル基含有化合物(b)とのより好ましい組み合わせは、ビスクロロメチルナフタレンとテトラメチルビスフェノールS、ビスクロロメチルナフタレンとテトラメチルビフェノール、ビスクロロメチルナフタレンとジヒドロキシナフタレン、ビスクロロメチルナフタレンとビスフェノールA、ビスクロロメチルナフタレンとテトラメチルビスフェノールA、ビスクロロメチルナフタレンとテトラメチルビスフェノールF、ビスクロロメチルナフタレンと2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ビスクロロメチルナフタレンと置換基としてα−メチルベンジル基を有するビスフェノールF、ビスクロロメチルビフェニルとテトラメチルビスフェノールS、ビスクロロメチルビフェニルとテトラメチルビフェノール、ビスクロロメチルビフェニルとジヒドロキシナフタレン、ビスクロロメチルビフェニルとビスフェノールA、ビスクロロメチルビフェニルとテトラメチルビスフェノールA、ビスクロロメチルビフェニルとテトラメチルビスフェノールF、ビスクロロメチルビフェニルと2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノンと、ビスクロロメチルビフェニルと置換基としてα−メチルベンジル基を有するビスフェノールF、ビスブロモメチルビフェニル、とテトラメチルビスフェノールF、ビスクロロメチルフルオレンとテトラメチルビスフェノールF等が挙がられる。これらの中でもさらに好ましい組み合わせとして、接着性の点からビスクロロメチルナフタレンとテトラメチルビスフェノールS、ビスクロロメチルビフェニルとテトラメチルビスフェノールS、ビスクロロメチルビフェニルとテトラメチルビスフェノールF、ビスクロロメチルビフェニルと置換基としてα−メチルベンジル基を有するビスフェノールFが、耐熱性の点からビスクロロメチルナフタレンとテトラメチルビスフェノールS、ビスクロロメチルナフタレンとジヒドロキシナフタレン、ビスクロロメチルナフタレンと2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ビスクロロメチルビフェニルとテトラメチルビスフェノールS、ビスクロロメチルビフェニルとテトラメチルビフェノール、ビスクロロメチルビフェニルとテトラメチルビスフェノールFが挙げられる。
【0029】
また、前記エポキシ樹脂(A)に適した前記ジヒドロキシ化合物(c)を得るためには、前記ジヒドロキシ化合物(a)1.0モルに対し、前記ハロゲン化メチル基含有化合物(b)を0.001〜1.0モルの範囲で反応させることが必要であり、好ましい範囲は0.01〜0.9モルであり、より好ましい範囲は0.05〜0.8モルであり、さらに好ましい範囲は0.1〜0.7モルである。前記ハロゲン化メチル基含有化合物(b)が1モルを超えると、前記ジヒドロキシ化合物(c)の末端基がハロゲンになるため前記一般式(1)で表される前記エポキシ樹脂(A)が得られない。
【0030】
前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化メチル基含有化合物(b)との反応は炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に行うことができ、アルカリ金属水酸化物の使用量は前記ジヒドロキシ化合物(a)1.0モルに対し1.8〜2.5モルが好ましく、2.0〜2.2モルがより好ましい。また、反応温度は20〜100℃であり、好ましくは40〜80℃であり、より好ましくは50〜60℃である。反応時間は1〜10時間であり、好ましくは2〜5時間である。20℃以下では反応が進行せず、100℃以上では副反応として親電子置換反応が起きる恐れがある。
【0031】
前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化メチル基含有化合物(b)を反応させて得られた前記ジヒドロキシ化合物(c)を、さらにエピクロルヒドリンを反応させることにより、前記エポキシ樹脂(A)を得ることができる。例えば、前記ジヒドロキシ化合物(c)を過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に、20〜150℃、好ましくは、30〜80℃の範囲で1〜10時間反応させ、エポキシ化反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留分をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより目的の前記エポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0032】
この際のアルカリ金属水酸化物の使用量は、前記ジヒドロキシ化合物(c)の水酸基1モルに対して、0.8〜2.5モル、好ましくは0.85〜2.0モル、より好ましくは0.9〜1.5モルの範囲である。
【0033】
また、エピクロルヒドリンの使用量は前記ジヒドロキシ化合物(c)中の水酸基に対して過剰に用いられ、通常、水酸基1モルに対して、1.5〜15モル、好ましくは2〜10モルの範囲である。
【0034】
前記エポキシ樹脂(A)を得るより好ましい方法としては、前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化メチル基含有化合物(b)を反応した後、中和工程を経て前記ジヒドロキシ化合物(c)として反応系外に取り出すことをしないで、直ちにエピクロルヒドリンと反応させる方法が挙げられる。この方法では、前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化メチル基含有化合物(b)との反応で残存したアルカリ金属水酸化物もエポキシ化反応に使用するアルカリ金属水酸化物として加算して考える。
【0035】
なお、前記一般式(1)のnの平均値は、前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量から計算で求めることができる。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる前記硬化剤(B)としては、各種フェノール樹脂類や酸無水物類、アミン類、ヒドラジッド類、活性エステル類等の通常使用されるエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができ、これらの硬化剤は単独で使用しても2種類以上併用してもよい。また、低誘電正接化には硬化後に官能基濃度の低くなる硬化剤が好ましく、高水酸基当量フェノール樹脂や活性エステル類が好ましい。
【0037】
前記フェノール樹脂類を具体的に例示すれば、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等に代表される3価以上のフェノール化合物、さらにはフェノール類、ナフトール類、または、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ナフタレンジオール等の2価フェノール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−キシリレングリコール、p−キシリレングリコールジメチルエーテル、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジメトキシメチルビフェニル類、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル類等の架橋剤との反応により合成される多価フェノール化合物、フェノール類とビスクロロメチルビフェニル等から得られるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフトール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるナフトールアラルキル樹脂類等が挙げられる。
【0038】
前記酸無水物類を具体的に例示すれば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0039】
前記アミン類を具体的に例示すれば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、ジシアンジアミドやダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0040】
前記ヒドラジッド類を具体的に例示すれば、アジピン酸ヒドラジッド、セパチン酸ヒドラジッド、イソフタル酸ヒドラジッド等が挙げられる。
【0041】
前記活性エステル類を具体的に例示すれば、EPICLON HPC−8000−65T(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1モルに対して、前記硬化剤(B)の活性水素基が0.4〜1.2モルの範囲が好ましく、0.5〜1.1モルがより好ましく、0.7〜1.0モルがさらに好ましい。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて硬化促進剤を使用することができる。使用できる硬化促進剤を具体的に例示すれば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられる。これらの硬化促進剤は単独で使用しても2種類以上併用してもよい。これらの硬化促進剤は本発明のエポキシ樹脂組成物中の前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して0.02〜5.0質量部が必要に応じて用いられる。これらの硬化促進剤を用いることにより、硬化温度を下げたり、硬化時間を短縮することができる。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として前記一般式(1)で表される前記エポキシ樹脂(A)を必須のエポキシ樹脂としているが、本発明の目的を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂を併用することもできる。
【0045】
併用できる他のエポキシ樹脂を具体的に例示すれば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシン、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類のエポキシ化物、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類のエポキシ化物、ジシクロペンタジエンとフェノール類から得られる共縮合樹脂のエポキシ化物、クレゾール類とホルムアルデヒドとアルコキシ基置換ナフタレン類から得られる共縮合樹脂のエポキシ化物、フェノール類とパラキシリレンジクロライド等から得られるフェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物、フェノール類とビスクロロメチルビフェニル等から得られるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフトール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるナフトールアラルキル樹脂類のエポキシ化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で使用しても2種類以上併用してもよい。これらの配合量は、本発明の目的を損なわない範囲であればよいが、前記一般式(1)で表される前記エポキシ樹脂(A)と他のエポキシ樹脂の合計に対して、好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは40質量%未満であり、さらに好ましくは25質量%未満である。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、粘度調整用として有機溶剤も用いることができる。用いることができる有機溶剤を具体的に例示すれば、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で使用しても2種類以上混合して使用してもよい。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特性を損ねない範囲でエポキシ樹脂以外の硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を配合してもよい。具体的に例示すれば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂、インデン樹脂、インデンクマロン樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ビニル化合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルホルマール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じてフィラーを用いることができる。具体的に例示すれば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、焼成タルク、クレー、カオリン、水酸化チタン、ガラス粉末、シリカバルーン等の無機フィラーが挙げられるが、有機系または無機系の耐湿顔料、鱗片状顔料等顔料等を配合してもよい。一般的無機充填剤を用いる理由として、耐衝撃性の向上が挙げられる。また、ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填剤や、微粒子ゴム、熱可塑性エラストマー等の有機充填剤等を配合することができる。
【0049】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、必要に応じて、難燃剤、揺変性付与材、流動性向上剤等の添加剤を配合してもよい。揺変性付与材としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系等を挙げ類ことができる。更に必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を配合できる。
【0050】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて得られるプリプレグについて説明する。シート状基材としては、ガラス等の無機繊維や、ポリエステル等、ポリアミン、ポリアクリル、ポリイミド、ケブラー等の有機質繊維の織布または不織布を用いることができるが、これに限定されるものではない。本発明のエポキシ樹脂組成物及び基材からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば前記シート状基材を、前記エポキシ樹脂組成物を溶剤で粘度調整した樹脂ワニスに浸漬して含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30〜80質量%とすることが好ましい。
【0051】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて得られる接着シートについて説明する。接着シートを製造する方法としては、特に限定するものではないが、例えばポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等のエポキシ樹脂組成物に溶解しないキャリアフィルム上に、本発明のエポキシ樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥してシート状に成型する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で樹脂シートが形成されるものである。この時エポキシ樹脂組成物を塗布するシートにはあらかじめ離型剤にて表面処理を施しておくと、成型された接着シートを容易に剥離することができる。ここで接着シートの厚みは5〜80μmに形成することが望ましい。このようにして得られた接着シートは通常、絶縁を有する絶縁接着シートとなるが、前記エポキシ樹脂組成物に導電性を有する金属や金属コーティングされた微粒子を混合することで、導電性接着シートを得ることができる。
【0052】
次に、本発明のプリプレグや絶縁接着シートを用いて積層板を製造する方法を説明する。プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、プリプレグを一枚または複数枚積層し、片側または両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。積層物を加熱加圧する条件としては、エポキシ樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧量があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成型性を満足する条件で加圧することが望ましい。例えば温度を160〜220℃、圧力を0.49〜4.9MPa(5〜50kgf/cm)、加熱時間を40〜240分間にそれぞれ設定することができる。更にこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作成することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の、片面または両側の回路形成面に、プリプレグや絶縁接着シートにて絶縁層を形成するとともに、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板を形成するものである。絶縁接着シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の回路形成面に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するとともに、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔を絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。積層板にエポキシ樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合は、内層材の最外層の回路形成面樹脂を前記エポキシ樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で1〜90分加熱乾燥してシート状に形成する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5〜80μmに形成することが望ましい。このようにして形成された多層積層板の表面に、更にアディティブ法やサブストラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を形成することができる。また更にこのプリント配線板を内層材として前記工法を繰り返すことにより、更に多層の積層板を形成することができるものである。またプリプレグにて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚または複数枚を積層したものを配置し、さらにその外側に金属箔を配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成するとともに、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層板として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることもできる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。このようにして成形された多層積層板の表面に、更にアディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を成型することができる。また更にこのプリント配線板を内層材として前記工法を繰り返すことにより、更に多層の多層板を形成することができるものである。
【0053】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させれば、エポキシ樹脂硬化物とすることができ、この硬化物は低誘電特性、耐熱性、低吸湿性等の点で優れたものとなる。また、この硬化物は、エポキシ樹脂組成物を注型、圧縮形成、トランスファー形成等の方法により、成型加工して得ることができる。この際の温度は通常、120〜250℃の範囲である。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂組成物とその組成物を使用して得られたプリプレグ、接着シート、積層板、封止剤、注型物、硬化物は、優れた低誘電特性、耐熱性、低吸湿性、接着性に優れた特性を示すものであった。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例において、特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。また、本発明では以下の試験方法を使用した。
【0056】
(1)エポキシ当量の測定
JIS K 7236規格に準拠して測定した。具体的には、電位差滴定装置を用い、溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸−酢酸溶液を用いた。
【0057】
(2)軟化点の測定
JIS K 7234規格、環球法に準拠して測定した。具体的には、自動軟化点装置(株式会社メイテック製、ASP−MG4)を用いた。
【0058】
(3)ガラス転移温度の測定
JIS K 7121、示差走査熱量測定に準拠して測定した。SII社製EXTER DSC6200を使用して、20℃から10℃/分の昇温速度により測定し、2サイクル目に得られたDSCチャートの補外ガラス転移開始温度(Tig)より求めた。
【0059】
(4)比誘電率及び誘電正接の測定
空洞共振法(ベクトルネットワークアナライザー(VNA)E8363B(アジレント・テクノロジー製)、空洞共振器摂動法誘電率測定装置(関東電子応用開発製))によって、1GHzの値を測定した。
【0060】
(5)接着力の測定
JIS K 6854−1に準拠し、島津製作所製オートグラフにて、25℃雰囲気下、50mm/min.により測定した。
【0061】
(6)耐水性の測定
耐水性の指標としてPCT後ハンダ耐熱を測定した。JIS C 6481に準じて作製した試験片を121℃、0.2MPaのオートクレーブ中に3時間処理した後、260℃のハンダ浴中につけて、20分以上膨れやはがれが生じなかったものを○とし、10分以内に膨れやはがれが生じたものを×とし、それ以外を△と評価した。
【0062】
(7)引張り強度
JIS K 7113に準じた。
【0063】
合成例1(エポキシ樹脂(A1)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを806部と水酸化カリウムを201.5部仕込み撹拌しながら、これにジヒドロキシ化合物(a)としてビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン(以下、TMBPSと略す)を550部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)として4,4’−ビスクロロメチルビフェニル(以下、BCMBと略す)を4.5部と溶剤としてビス(2−メトキシエチル)エーテル(以下、DEDMと略す)を488部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。反応終了後、0.0067MPa(50mmHg)の減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量を留去したのち、エピクロルヒドリンを1644部入れ撹拌溶解させた。均一に溶解後、0.024MPa(180mmHg)の減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液148部を2時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、更に水洗したのちエピクロルヒドリンを留去し、淡黄色固形状のエポキシ樹脂600部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は212g/eq.であり、軟化点は60℃であった。
【0064】
合成例2(エポキシ樹脂(A2)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを366部と水酸化カリウムを91.6部仕込み撹拌しながら、これにジヒドロキシ化合物(a)としてTMBPSを125部と4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを90部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてBCMBを61.5部と溶剤としてDEDMを360部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。反応終了後、50mmHgの減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量とDEDM43部を留去したのち、エピクロルヒドリンを528部入れ撹拌溶解させた。均一に溶解後、180mmHgの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液48部を1時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、更に水洗したのちエピクロルヒドリンを留去し、淡黄色固形状のエポキシ樹脂253部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は313g/eq.であり、軟化点は92℃であった。
【0065】
合成例3(エポキシ樹脂(A3)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを293部と水酸化カリウムを73.3部仕込み撹拌しながら、これにジヒドロキシ化合物(a)としてTMBPSを200部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてBCMBを114.8部と溶剤としてDEDMを440部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。 反応終了後、50mmHgの減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量とDEDM333部を留去したのち、エピクロルヒドリンを182部入れ撹拌溶解させた。均一に溶解後、180mmHgの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液10部を30分間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに90分間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、エピクロルヒドリンを留去し、淡黄色固形状のエポキシ樹脂247部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は776g/eq.であり、軟化点は135℃であった。
【0066】
合成例4(エポキシ樹脂(A4)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを366部と水酸化カリウムを99部仕込み撹拌しながら、これにジヒドロキシ化合物(a)として4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)(以下、TMBPFと略す)を250部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてBCMBを122.5部と溶剤としてDEDMを265部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。反応終了後、50mmHgの減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量を留去したのち、エピクロルヒドリンを632部入れ撹拌溶解させた。均一に溶解後、180mmHgの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液27部を1時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、更に水洗したのちエピクロルヒドリンを留去し、淡黄色固形状のエポキシ樹脂285部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は454g/eq.であり、軟化点は67℃であった。
【0067】
合成例5(エポキシ樹脂(A5)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを256部と水酸化カリウムを676部仕込み撹拌しながら、これにジヒドロキシ化合物(a)として9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(以下、BPFLと略す)200部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてBCMBを71.7部と溶剤としてDEDMを378部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。反応終了後、50mmHgの減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量を留去したのち、エピクロルヒドリンを264部入れ撹拌溶解させた。均一に溶解後、180mmHgの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液25部を1時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、エピクロルヒドリンを留去し、淡黄色固形状のエポキシ樹脂226部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は497g/eq.であり、軟化点は147℃であった。
【0068】
合成例6(エポキシ樹脂(A6)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを185部と水酸化カリウムを62部仕込み撹拌しながら、これにジヒドロキシ化合物(a)としてTMBPFを125部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてBCMN(1,4−ビス(クロロメチル)ナフタレンと1,5−ビス(クロロメチル)ナフタレンの混合物)を55部と溶剤としてDEDMを220部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、4時間反応した。 反応終了後、50mmHgの減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量とDEDM180部を留去したのち、エピクロルヒドリンを310部入れ撹拌溶解させた。均一に溶解後、180mmHgの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液29部を1時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、エピクロルヒドリンを留去し、淡黄色固形状のエポキシ樹脂115部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は396g/eq.であり、軟化点は71℃であった。
【0069】
合成例7(エポキシ樹脂(A7)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを366部と水酸化カリウムを91.6部仕込み撹拌しながら、これにジヒドロキシ化合物(a)として2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン(以下、DBHQと略す)を182部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてBCMBを61.7部と溶剤としてDEDMを360部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。反応終了後、50mmHgの減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量とDEDM43部を留去したのち、エピクロルヒドリンを528部入れ撹拌溶解させた。均一に溶解後、180mmHgの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液48部を1時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、更に水洗したのちエピクロルヒドリンを留去し、淡黄色固形状のエポキシ樹脂286部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は270g/eq.であり、軟化点は104℃であった。
【0070】
実施例及び比較例で使用した、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤は以下の通りである。
【0071】
エポキシ樹脂(A)
(A1):合成例1のエポキシ樹脂
(A2):合成例2のエポキシ樹脂
(A3):合成例3のエポキシ樹脂
(A4):合成例4のエポキシ樹脂
(A5):合成例5のエポキシ樹脂
(A6):合成例6のエポキシ樹脂
(A7):合成例7のエポキシ樹脂
(A8):TX−0902(新日鉄住金化学株式会社製、TMBPSとエピクロルヒドリンの反応生成物、エポキシ当量=212g/eq.、軟化点=56℃)
(A9):エポトートYD−011(新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量=475g/eq.、軟化点=68℃)
(A10):エポトートYD−903N(新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量=812g/eq.、軟化点=96℃)
(A11):エポトートYDC−1312(新日鉄住金化学株式会社製、DBHQとエピクロルヒドリンの反応生成物、エポキシ当量=178g/eq.、融点=142℃)
【0072】
硬化剤(B)
(B1):ショウノールBRG−557(昭和電工株式会社製、フェノールノボラック樹脂、フェノール性水酸基当量=105g/eq.、軟化点=86℃)
(B2):ジシアンジアミド(DICY、活性水素当量=21g/eq.)
(B3):リカシッドMH−700(新日本理化株式会社製、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物、活性水素当量=164g/eq.)
(B4):カヤハードAA(日本化薬株式会社製、ジエチルジアミノジフェニルメタン、活性水素当量=63g/eq.、粘度=2,500mPa・s)
【0073】
硬化促進剤
(C1):2E4MZ(四国化成株式会社製、2−エチル−4−メチルイミダゾール)
(C2):DCMU(保土谷化学工業株式会社製、3,4−ジクロロフェニル−1,1−ジメチルウレア)
【0074】
実施例1〜5、及び比較例1〜2
表1に示す配合処方によりエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤、及び溶剤を配合し、不揮発分が50%のエポキシ樹脂組成物ワニスを得た。エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び硬化促進剤は予めメチルエチルケトン(MEK)に溶解して使用した。得られたエポキシ樹脂組成物ワニスをガラスクロス(日東紡株式会社製、IPC規格の2116)に含浸させた後、その含浸クロスを熱風循環オーブン中にて、150℃で8分間乾燥させ、Bステージ状のプリプレグを得た。さらに、得られたプリプレグ4枚と銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC−III、厚み35μm)を重ね、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、0.5mm厚の両面銅張積層板を得た。得られた両面銅張積層板を用いて、ガラス転移温度、接着力、及び耐水性の評価を行った。また、Bステージ状のプリプレグのガラスクロスからBステージ状の樹脂組成物を分離し、190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、比誘電率及び誘電正接評価用の硬化物を得た。評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
実施例6〜9及び比較例3〜5
表2に示す配合処方によりエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び硬化促進剤を配合し、加熱ニーダーに入れて加熱混合し、樹脂組成物を得た。次に高強度炭素繊維(東レ株式会社製、T700、引張り強さ4.8GPa、引張弾性率235GPa)を一方向に引き揃えた後に、得られた樹脂組成物を加熱溶融し、圧力を加えて含浸させて樹脂含有率35%の一方向炭素繊維プリプレグを得た。得られたプリプレグを長さ30cm、幅30cmに裁断したものを繊維方向が同一になるように17枚積層して積層体を形成し、リリースクロスを重ねた後、ブリーダークロスを重ね、更にブリーダークロスを重ね、ナイロンパックで包み、成形用スタックを形成した。この形成用スタックを130℃、1時間の条件下でオートクレーブ成形して、繊維体積含有率60%の炭素繊維複合材料を得た。得られた炭素繊維複合材料を用いて、ガラス転移温度、曲げ強度、及び曲げ弾性率の評価を行った。なお、プリプレグ中の樹脂含有率の測定法はJIS K 7071に、繊維体積含有率はJIS H 7401に準じて測定した。また、加熱ニーダーに入れて加熱混合した樹脂組成物を、190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、比誘電率及び誘電正接評価用の硬化物を得た。評価結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
実施例10〜13及び比較例6〜8
表3に示す配合処方によりエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び硬化促進剤を配合し、120℃に加熱しながら、撹枠し均一化してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を減圧下で脱泡した後、金型に注型し、熱風循環オーブン中にて、150℃で2時間、次いで、180℃で3時間硬化して注型硬化物を得た。得られた注型硬化物を用いて、ガラス転移温度、比誘電率、及び誘電正接の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0079】
【表3】