【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22〜24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構太陽エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発 三層協調界面構築による高効率・低コスト・量産型色素増感太陽電池の研究開発(高効率・高耐久性モジュール材料の研究開発)委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】主面として(001)面が露出したアナターゼ型の酸化チタン粒子であって、[001]方向の粒子長さA/[100]方向の粒子長さBの比が0.1以上2.5未満であり、かつナトリウム含有量が500ppm以下である酸化チタン粒子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、色素増感太陽電池電極材料として利用することができる酸化チタン粒子であって、主面として(001)面が露出したアナターゼ型酸化チタン粒子は存在していない。
【0009】
また、非特許文献1の方法では、界面活性剤はナトリウムイオンを含んでいるため、その界面活性剤を用いて合成された酸化チタン微粒子にはナトリウムイオン成分が残存し、光電変換効率を低下させてしまう虞があり、色素増感太陽電池電極材料として利用することは難しい。また、酸化チタン原料として、チタンテトライソプロポキシドをそのまま用いて水熱合成を行っているため、原料からイソプロパノールが多量に発生し、圧力が上昇する虞があり水熱合成に適さないという問題もあった。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、主面として(001)面が露出したアナターゼ型の酸化チタン粒子、酸化チタン粒子の合成方法、色素増感型太陽電池用ペースト、酸化物半導体膜、酸化物半導体電極、及び色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、アルコキシドを予め縮合触媒であるアミンと反応させた界面活性剤を結晶面制御剤として用いることで、主面として(001)面が露出したアナターゼ型酸化チタン粒子ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、次の[1]〜[7]を提供するものである。
[1] 主面として(001)面が露出したアナターゼ型の酸化チタン粒子であって、
[001]方向の粒子長さA/[100]方向の粒子長さBの比が0.1以上2.5未満であり、かつナトリウム含有量が500ppm以下である酸化チタン粒子。
[2] 形状が六面体形状である[1]に記載の酸化チタン粒子。
[3] 対向する1対の面が(001)面であり、他の4面が(100)面である[2]の酸化チタン粒子。
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン粒子の製造方法であって、
チタンアルコキシドと水酸基含有アミンとを反応させて酸化チタン源を得る工程と、
得られた前記酸化チタン源を溶解させた水溶液中に、炭素数8以上の有機酸とアミンとを反応させた有機酸アミン塩を添加して水熱合成を行う工程
とを含む酸化チタン粒子の合成方法。
[5] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子と、前記酸化チタン粒子を分散させる分散媒とを含有する色素増感型太陽電池用ペースト。
[6] [5]に記載の色素増感型太陽電池用ペーストを、透明導電性基板上で焼成し、形成されてなる酸化物半導体膜。
[7] [6]に記載の酸化物半導体膜を備えている色素増感型太陽電池。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、主面として(001)面が露出したアナターゼ型の酸化チタン粒子、酸化チタン粒子の合成方法、色素増感型太陽電池用ペースト、酸化物半導体膜、酸化物半導体電極、及び色素増感型太陽電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施形態により説明する。なお、この実施形態は、発明の趣旨をよりよく理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
[酸化チタン粒子]
本実施形態に係る酸化チタン粒子は、
図1に示すように、主面として(001)面が露出したアナターゼ型であって、[001]方向の粒子長さA/[100]方向の粒子長さBの比が0.1以上2.5未満であり、かつナトリウム含有量が500ppm以下である。
ここで「主面として(001)面が露出している」とは、A/B<2.5であることをいう。アナターゼ型酸化チタン粒子の単位格子は、粒子長さA=9.6Åであり、B=3.8Åであるので、A/B<2.5の場合、(001)面が表面に露出しているといえる。
なお、(100)面が主面として露出しているときは、A/B≧2.5となる。
ここで示す結晶方位である[001]及び[100]は、(001)及び(100)のそれぞれの面の法線方向を示す。つまり、粒子長さAは、対向する(001)面の距離を示し、粒子長さBは、対向する(100)面の距離を示す。例えば、粒子長さAと粒子長さBが略等長である場合には、酸化チタン粒子の形状は立方体状となる。
【0017】
酸化チタン粒子のA/B比は、0.1以上2.5未満が好ましく、0.1以上2.0以下がより好ましい。更に、酸化チタン粒子の粒子長さAと粒子長さBとの関係は、酸化チタン粒子の表面が主に(001)面で構成される観点から、A≦Bであることが好ましく、A<Bであることがより好ましい。酸化チタン粒子の平均粒子長は、酸化チタン粒子含有膜の透明性を損なわない観点から、1nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることがより好ましい。
【0018】
なお、酸化チタン粒子の大きさや形状は、例えば、電界放射型透過型電子顕微鏡(FEM−2100F、日本電子社製)により観察する。合成された酸化チタン粒子の一例として、TEM像を
図2に示す。
図2のTEM像より、合成した酸化チタン粒子には、面間隔2.4Åである酸化チタン粒子の(001)面、及び面間隔1.8Åである酸化チタン粒子の(100)面が露出している。また、A/Bが1.3であり、主面として(001)面が露出している。
なお、平均粒子長は、例えば、顕微鏡での観察により、100個以上の粒子、好ましくは500個以上の粒子それぞれの粒子径を測定し、平均値を算出することで求められる。
【0019】
本実施形態に係る酸化チタン粒子は、ナトリウム含有量が500ppm以下であり、さらにアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が500ppm以下であることが好ましい。酸化チタン粒子に含有するアルカリ金属としては、Li、Na、K等が挙げられる。また、酸化チタン粒子に含有するアルカリ土類金属としては、Ca、Sr、Ba等が挙げられる。
酸化チタン粒子のナトリウム含有量は、光電変換効率を所望の値以上に維持するという観点から、1ppm以上400ppm以下であることが好ましく、1ppm以上300ppm以下であることがより好ましく、1ppm以上かつ200ppm以下であることがさらに好ましい。
また、酸化チタン粒子のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量は、上記と同様の観点から、含有されていないことが好適であるが製造上の制限から、1ppm以上400ppm以下であることが好ましく、1ppm以上300ppm以下であることがより好ましい。
【0020】
[酸化チタン粒子の合成方法]
以下に、本実施形態に係る酸化チタン粒子の合成方法を説明する。
【0021】
<酸化チタン源を得る工程>
本実施形態に係る酸化チタン粒子の合成方法は、まず、チタンアルコキシドと水酸基含有アミンとを反応させて酸化チタン源を得る工程を経る。
酸化チタン源を得る工程では、まず、酸化チタン原料であるチタンテトライソプロポキシドと、水酸基を含有するアミンを混合して反応させ、アルコール交換によってチタン及びアミンから成るアルコキシド(チタン・アミンアルコキシド)を合成する。次いで、チタンテトライソプロポキシドと水酸基を含有するアミンとの反応により発生したイソプロパノールを減圧加熱により除去する。
【0022】
酸化チタン源を得る工程で用いるチタンアルコキシドとしては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタン等を例示することができる。安定性と酸化チタン合成後に発生するアルコールの水溶性の観点から、テトライソプロポキシチタン及びテトラノルマルプロポキシチタンが好適であり、テトライソプロポキシチタンが特に好適である。
【0023】
酸化チタン源を得る工程で用いる水酸基を含有するアミンとしては、具体的にはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンの群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0024】
<水熱合成工程>
本実施形態に係る酸化チタン粒子の合成方法は、次いで、得られた酸化チタン源を溶解させた水溶液中に、炭素数8以上の有機酸とアミンとを反応させた有機酸アミン塩を界面活性剤として添加して水熱合成を行う工程を経る。
【0025】
本実施形態に係る酸化チタン粒子の合成方法に用いる原料は、最終的に生成される酸化チタン粒子に含有するアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が500ppmを超えないように、これらの不純物が少ない原料を選択して用いるのがよい。
ここでいう「界面活性剤」とは、合成する酸化チタン粒子の(001)面の成長を制御する機能を有するものをいう。界面活性剤としては、合成する酸化チタン粒子の(001)面の成長を制御するという観点から、炭素数8以上である有機酸アミン塩を用いることが好ましく、炭素数12以上である有機酸のアミン塩を用いることがより好ましい。
【0026】
有機酸アミン塩は、有機酸と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンの群から選ばれる少なくとも一種であるアミンとの中和反応により得られる反応生成物である。有機酸としては、具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸等が挙げられる。そして、本発明に用いられる有機酸アミン塩としては、オレイン酸が好ましい。
【0027】
有機酸アミン塩を生成する際に使用する有機酸とアミンとの混合モル比(アミン/有機酸)は、1以上20以下とすることが好ましく、1以上10以下とすることがより好ましい。
水熱合成において、有機酸アミン塩の量は、酸化チタン粒子の反応速度を調製し、粒径を制御する観点から、反応系において、2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
水熱合成における反応温度は、100℃以下では酸化チタン粒子が生成されず、250℃以上では、反応速度が速すぎて結晶面の制御が困難であるので、100℃以上250℃以下が好ましく、140℃以上210℃以下がより好ましい。
【0029】
以上の酸化チタン粒子の合成方法により、主に(001)面が露出した六面体形状である立方体構造又は直方体構造のアナターゼ型酸化チタン粒子が合成される。
合成された酸化チタン粒子は、ナトリウムイオン等の金属イオンを含まない界面活性剤を用いて合成されるので、ナトリウムイオン成分等が残存することがなく、光電変換効率を低下させることがない。
【0030】
本実施形態に係る酸化チタン粒子の合成方法によれば、界面活性剤としての有機酸アミン塩が結晶面制御剤として機能することで、主面として(001)面が露出したアナターゼ型の酸化チタン粒子を合成することができる。
すなわち、界面活性剤として、ナトリウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含有しない有機酸アミン塩を用いているので、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属は不純物程度しか含有されない。そのため、光電変換効率に優れた、主面として(001)面が露出したアナターゼ型の酸化チタン粒子を得ることができる。
【0031】
[色素増感型太陽電池用ペースト]
色素増感型太陽電池用ペーストは、上述の製造方法で得られた酸化チタン粒子の合成方法より合成された酸化チタン粒子と、酸化チタン粒子を分散させる分散媒とを含有する。色素増感型太陽電池用ペーストは、酸化チタン粒子、分散媒、及びその他含有物等を適宜混合することにより得られる。
【0032】
分散媒は、酸化チタン粒子を分散させることができれば特に限定されないが、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール等のジオール類、及びターピネオール等の高沸点有機溶媒を用いることが好ましい。
【0033】
色素増感型太陽電池用ペーストにおいては、酸化チタン粒子と、分散媒との含有割合は、得られる酸化物半導体膜の性能を得やすいという観点から、質量比で1:0.01〜1:5の範囲が好ましく、1:0.1〜1:1の範囲がより好ましい。
【0034】
色素増感型太陽電池ペーストは、粘度や膜厚を調整するためのエチルセルロース等のセルロース系樹脂及びアクリル系樹脂等を含有してもよい。
色素増感型太陽電池用ペーストは、レベリング剤、キレート化剤、界面活性剤、チタンカップリング剤、増粘剤等の一般的に用いられる添加剤を適宜添加してもよい。レベリング剤としては、水、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びグリセリン等が挙げられる。キレート化剤としては、アセチルアセトン、ベンジルアセトン、酢酸等が挙げられる。界面活性剤としては、ポリエチレングリコール等が挙げられる。増粘剤としては、セルロース系の増粘剤が挙げられる。
【0035】
本実施形態に係る色素増感型太陽電池用ペーストによれば、酸化チタン粒子は、ナトリウムイオン等の金属イオンを含んでいないので光電変換効率の低下を防ぐことができる。
【0036】
[酸化物半導体膜]
酸化物半導体膜は、本実施形態に係る色素増感型太陽電池用ペーストを透明導電性基材上で焼成し、形成されてなる。
酸化物半導体膜の厚さは、色素が吸着するのに十分な膜の表面積を得る観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以上50μm以下、さらに好ましくは5μm以上30μm以下である。尚、酸化物半導体膜は、複数層であってもよい。
【0037】
透明導電性基材としては、特に制限はないが、一般的には、ガラス基板等の透明基板と、その透明基板上に形成される酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアルミニウムドープ酸化亜鉛等を設けた基材が用いられる。透明導電性基材は、さらに、表面に酸化スズ又はフッ素ドープ酸化スズの被膜を設けた光透過性の透明導電膜を構成した基材であってもよい。
【0038】
酸化物半導体膜の製造方法は、本実施形態に係る色素増感型太陽電池用ペーストを透明導電性基材の表面に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて乾燥し、次いで焼成することにより得られる。
透明導電性基材の表面に色素増感型太陽電池用ペーストを塗布する方法としては、バーコーター法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ナイフコーター法等を用いることが好ましく、パターニング性などに優れているスクリーン印刷法及びグラビア印刷法を用いることがより好ましい。
【0039】
焼成温度は、250℃以上600℃以下が好ましく、より好ましくは400℃以上550℃以下である。焼成温度が上記の範囲であれば、良好な粒子間結合が得られ、作製した酸化物半導体膜が低抵抗な膜となる。また、焼成温度が上記の範囲であれば、近傍の粒子との粒成長が抑制され、比表面積が増加して好適な光電変換素子の電極にすることができる。
さらに、このようにして得られた酸化物半導体膜に、四塩化チタン水溶液を塗布または浸漬し、空気中550℃程度以下の温度で焼成する工程を行うことが好ましい。この工程により、酸化物半導体膜中の酸化物半導体微粒子同士の接触部分の電子移動性を向上させることができる。
【0040】
本実施形態に係る酸化物半導体膜によれば、本実施形態に係る色素増感型太陽電池用ペーストを焼成してなるので、光電変換効率の低下を防ぐことができる。
【0041】
[酸化物半導体電極]
酸化物半導体電極は、本実施形態に係る酸化物半導体膜に色素を吸着させてなる。
酸化物半導体膜に吸着させる色素としては、例えば、金属錯体系色素、有機色素等を用いることができる。金属錯体系色素としては、金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン等やルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛を1以上含有する錯体等の金属錯塩が挙げられる。なかでも、ルテニウム金属錯体を好ましく用いることができ、その中でもルテニウムビピリジン錯体、ルテニウムターピリジン錯体が好ましい。一方、有機色素としては、クマリン誘導体系色素、ポリエン系色素、メロシアニン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、スチリル系色素、キサンテン系色素等などが挙げられる。なかでも、クマリン誘導体系色素を好ましく用いることができる。
【0042】
酸化物半導体電極は、本実施形態に係る酸化物半導体膜が積層した基板ごと、上記の色素を溶解した色素溶液に浸漬させることによって、酸化物半導体膜に色素を吸着させることで得られる。
【0043】
色素を溶解する溶媒としては、適宜選択して用いればよいが、例えば、メタノール、エタノール、2プロパノール、1ブタノール、t-ブタノール等のアルコール類、及びアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3メトキシプロピオニトリル等のニトリル類、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。
【0044】
本実施形態に係る酸化物半導体電極によれば、本実施形態に係る酸化物半導体膜を有しているので、光電変換効率の低下を防ぐことができる。
【0045】
[色素増感型太陽電池]
本実施形態に係る色素増感型太陽電池は、本実施形態に係る酸化物半導体電極に対して対向電極を配置してセルを構成し、その内部に側枠部材を介して電解質を封入してなる。
【0046】
図3は、太陽電池の一例を模式的に示したものである。
図3に示す色素増感型太陽電池10は、透明電極11と対向電極12とを対向配置してセルを構成し、その内部に側枠部材15を介して電解質14を封入したものである。透明電極11は導電性ガラスからなり、アノード電極を構成する。対向電極12は導電性ガラスからなり、カソード電極を構成する。透明電極11上には、色素が吸着された酸化物半導体電極13が設けられている。酸化物半導体電極13は、例えば酸化チタン粒子を溶剤と混合し、それを透明電極11上に塗布、焼成することによって酸化物半導体膜を形成した後、色素を吸着させたものである。
【0047】
透明電極11と対向電極12とは、数十μm〜数mmの間隔をおいて、電解質14を介して対向配置されており、透明電極11の、酸化物半導体電極13に吸着されている色素が可視光によって励起され、発生した電子を酸化物半導体電極(酸化チタン粒子)13に渡すことによって発電が行われる。
【0048】
対向電極12は、特に限定されず、例えば、Al、ステンレス等の金属、ガラス、及びプラスチック等から構成される基板と、その上に形成されるPt、C、Ni、Cr、ステンレス、フッ素ドープ酸化スズ、及びITO等の導電層から構成される。なお、対向電極12は、表面にフッ素ドープ酸化スズ等の導電層を設けた導電性ガラスを構成することもできる。
【0049】
電解質14は、固体状及び液体状のものを使用することができる。電解質14として、具体的には、ヨウ素系電解質、臭素系電解質、セレン系電解質、硫黄系電解質等各種の電解質を用いることが可能であり、I
2、LiI、ジメチルプロピルイミダゾリウムヨージド等をアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカボネート等の有機溶剤に溶かした溶液等が好適に用いられる。
なお、液体状の電解質14を用いる場合は、酸化物半導体電極13と対向電極12との間に隔壁を設け、このようにして形成された空間内に電解質14を注入するようにする。
【0050】
本実施形態に係る色素増感型太陽電池によれば、本実施形態に係る酸化物半導体電極を備えているので、光電変換効率の低下を防ぐことができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に従って具体的に説明するが、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
<酸化チタン粒子の合成>
セパラブルフラスコに、チタンテトライソプロポキシド(高純度化学社製)170.6g(0.6mol)及びトリエタノールアミン(日本触媒社製)179.0g(1.2mol)を配合して、30分間攪拌した。次いで、エバポレータを用いて配合物の重量が218.0gとなるまで加熱、減圧し、イソプロパノールを除去してチタン及びトリエタノールアミンから成る酸化チタン源を得た。
得られた酸化チタン源を純水450gに溶解させたフラスコに、オレイン酸33.9gのトリエタノールアミン89.5gによる中和物(アミン塩)を投入し、攪拌して溶解させた後、全量が1000gとなるように純水を追加投入して反応液を得た。
得られた反応液を、オートクレーブに投入して180℃で8時間保持し、水熱合成により実施例1の酸化チタン粒子を含む分散液を得た。
【0053】
<酸化チタン粒子の観察及び評価>
得られた酸化チタン分散液を、透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、立方体状の粒子が合成されており、立方体の上面と下面が(001)面であり、側面が(100)面であることを確認した。この酸化チタン粒子の平均粒子長は20nmであり、また、A/B比は1.0であった。
また、この分散液100gに1mol/Lの硝酸を加えてpHを2とし、200℃のホットプレート上で乾燥させた酸化チタン粉を、X線回折装置(Philips社製)により、回折ピークを解析したところ、合成した粒子はアナターゼ型酸化チタンの単相からなることを確認した。
また、この分散液をICP発光分析により測定した結果、酸化チタン粒子に含有されるナトリウム含有量は200ppm以下、カリウム含有量は100ppm以下、カルシウム含有量は100ppm以下であった。
【0054】
<色素増感型太陽電池用ペーストの作製>
得られた酸化チタン粒子と、粘度及び膜厚調整に用いるエチルセルロースと、分散媒としてのターピネオールとを混合し、実施例1の色素増感型太陽電池用ペーストを調製した。
この酸化物半導体粒子含有ペーストの組成比は、酸化チタンが26質量%、エチルセルロース8質量%、ターピネオール66質量%であった。
【0055】
<酸化物半導体膜の作製>
得られた色素増感型太陽電池用ペーストを透明導電性基板上に、焼成膜厚が7μmとなるようにスクリーン印刷し、焼成することによって、実施例1の酸化物半導体膜を作製した。
【0056】
<酸化物半導体電極の作製>
得られた酸化物半導体膜を0.3mMのRu金属色素(Black Dye色素、ダイソル社製)溶液中に24時間浸漬させて、実施例1の酸化物半導体電極を得た。
【0057】
<色素増感型太陽電池の作製>
アセトニトリルに、支持電解質として1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムのヨウ素塩を0.6M、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M、ターシャリーブチルピリジンを0.5Mとなるように混合して、電解液を作製した。
【0058】
得られた酸化物半導体電極と、表面に白金膜が形成された対極基板とを対向するように配置し、基板間に得られた電解液を注入し、密封することにより、実施例1の色素増感型太陽電池を作製した。
【0059】
<光電変換効率の評価>
ソーラーシミュレーター(山下電装社製)を用いて、本実施例の色素増感太陽電池セルに、擬似太陽光を照射し、電流電圧測定装置(山下電装社製)にてI−V特性を測定することによって光電変換効率を求めた。その結果を表1に示す。
【0060】
[実施例2]
水熱合成における反応温度を140℃とした以外は実施例1と同様にして実施例2の酸化チタン粒子を含む分散液を得た。
得られた酸化チタン分散液を実施例1と同様に評価したところ、ナトリウム含有量は200ppm以下、カリウム含有量は100ppm以下、カルシウム含有量は100ppm以下で、立方体状の粒子が合成されており、上面と下面が(001)面、側面が(100)面であり、アナターゼ型酸化チタン単相であることを確認した。この酸化チタン粒子の平均粒子長は15nmであり、また、A/B比は1.0であった。
【0061】
〈色素増感型太陽電池の作製〉
実施例1の酸化チタン粒子を用いる替わりに、実施例2の酸化チタン粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の色素増感型太陽電池用ペースト、酸化物半導体膜、酸化物半導体電極、色素増感型太陽電池を得た。
実施例1と同様にして測定した光電変換効率を表1に示す。
【0062】
[実施例3]
水熱合成における反応温度を210℃とした以外は実施例1と同様にして実施例3の酸化チタン粒子を含む分散液を得た。
得られた酸化チタン分散液を実施例1と同様に評価したところ、ナトリウム含有量は200ppm以下で、カリウム含有量は100ppm以下、カルシウム含有量は100ppm以下立方体状の粒子が合成されており、上面と下面が(001)面、側面が(100)面であり、アナターゼ型酸化チタン単相であることを確認した。この酸化チタン粒子の平均粒子長は30nmであり、また、A/B比は1.0であった。
【0063】
〈色素増感型太陽電池の作製〉
実施例1の酸化チタン粒子を用いる替わりに、実施例3の酸化チタン粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の色素増感型太陽電池用ペースト、酸化物半導体膜、酸化物半導体電極、色素増感型太陽電池を得た。
実施例1と同様にして測定した光電変換効率を表1に示す。
【0064】
[比較例1]
<酸化チタン粒子の合成>
オレイン酸33.9gのトリエタノールアミン89.5gによる中和物の替わりに、オレイン酸ナトリウム6.1gを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の酸化チタン粒子を含む分散液を得た。この粒子を実施例1と同様に評価したところ、立方体状の粒子が合成されており、上面と下面が(001)面、側面が(100)面であり、アナターゼ型酸化チタン単相であることを確認した。この酸化チタン粒子の平均粒子長は20nmであり、また、A/B比は1.0であった。また、ナトリウム含有量は500ppmを超えていた。
【0065】
実施例1の酸化チタン粒子を用いる替わりに、比較例1の酸化チタン粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の色素増感型太陽電池用ペースト、酸化物半導体膜、酸化物半導体電極、色素増感型太陽電池を得た。
実施例1と同様にして測定した光電変換効率を表1に示す。
【0066】
【表1】