【課題】流動性が良好で施工性に優れているという、気泡含有セメント組成物が本来有する特性を極力損なわないようにしつつ、帯水環境下での施工において、孔や隙間等の空洞部分に好適に充填することができる気泡含有セメント組成物、気泡含有セメント組成物の製造方法および気泡含有セメント組成物を用いた施工方法を提供することを課題とする。
【解決手段】セメントと、起泡剤と、水とが含まれ、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上であり、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.06質量%以下であるか、又は前記水の組成物の総量に対する含有量が36質量%以下であり、密度が1.0t/m
セメントと、起泡剤と、水とが含まれ、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上36質量%以下であり、密度が1.0t/m3以上1.48t/m3以下である気泡含有セメント組成物。
セメントと、起泡剤と、水とが含まれ、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上0.06質量%以下で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上であり、密度が1.0t/m3以上1.48t/m3以下である気泡含有セメント組成物。
セメントと、起泡剤と、水とを、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上36質量%以下となるように混合し、密度が1.0t/m3以上1.48t/m3以下となるように調製する気泡含有セメント組成物の製造方法。
セメントと、起泡剤と、水とを、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上0.06質量%以下で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上となるように混合し、密度が1.0t/m3以上1.48t/m3以下となるように調製する気泡含有セメント組成物の製造方法。
セメントと、起泡剤と、水とを、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上36質量%以下となるように混合し、密度が1.0t/m3以上1.48t/m3以下となるように調製することで気泡含有セメント組成物を得て、前記気泡含有セメント組成物を用いて施工を行なう気泡含有セメント組成物を用いた施工方法。
セメントと、起泡剤と、水とを、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上0.06質量%以下で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上となるように混合し、密度が1.0t/m3以上1.48t/m3以下となるように調製することで気泡含有セメント組成物を得て、前記気泡含有セメント組成物を用いて施工を行なう気泡含有セメント組成物を用いた施工方法。
【背景技術】
【0002】
近年、セメントミルクやモルタルに起泡剤を含有させて気泡を発生させたエアミルクやエアモルタルが用いられている。エアミルクやエアモルタルは、気泡を含むのでセメントミルクやモルタルに比べて流動性が良好で施工箇所における充填部分の隅々にまで充填することができる等、施工性に優れ、またセメントミルクやモルタルに比べて密度が小さく軽量であるので施工箇所への荷重負担も軽減される等の特性を有することから、空洞充填工法や軽量盛土工法等に用いられている。このようなエアミルク及びエアモルタル等の気泡含有セメント組成物に関する技術として、たとえば特許文献1や特許文献2のような特許出願がなされている。
【0003】
特許文献1には、超速硬セメントに所定量の水及び必要な混和剤(エアモルタルの場合にはさらに細骨材)を混練してセメントミルクまたはセメントモルタルを形成し、それとは別に、起泡剤と水とで気泡を形成し、前記セメントミルクまたはセメントモルタルと、前記気泡とを混合するエアミルクまたはエアモルタルの製造方法が記載されている。
【0004】
また特許文献2には、所定量の粉末起泡剤をセメント等と予め混合し、これに水を添加して起泡させることにより気泡モルタル(エアモルタル)を製造する方法が記載されている。また、特許文献2には、気泡を強固にするために、粉末起泡剤とともに粘土鉱物等を併用することが記載されている。
【0005】
ところで、エアミルクやエアモルタル等の気泡含有セメント組成物が用いられる上記空洞充填工法には、地上からボーリング孔等を介して地下の空洞部分に気泡含有セメント組成物を充填することで該地下空洞部分を閉塞して地盤の安定化を図る地下空洞充填工法と称される工法や、トンネルの地山と矢板の間の隙間が放置されることにより残存している空洞部分に気泡含有セメント組成物を充填してトンネルにおけるひび割れや圧縮破壊を防止するトンネル空洞充填工法と称される工法、その他、土や砂等で埋め戻しができないような種々の箇所の空洞部分に気泡含有セメント組成物を充填する空洞充填工法等がある。
【0006】
これらの空洞充填工法のうち、地下空洞充填工法においては、空洞部分に水が流入することがあり、水が流入した空洞部分に気泡含有セメント組成物を充填しなければならないことになる。すなわち、地中の透水層には、地下水によって飽和している帯水層と称される地層があり、そのような帯水層の環境下に空洞部分があると、その空洞部分には必然的に水が流入することとなるので、水が流入した空洞部分に気泡含有セメント組成物を充填しなければならないのである。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2で用いられるエアミルクやエアモルタル等の気泡含有セメント組成物は密度が0.3〜0.8t/m
3程度であり、水よりも軽量であるので、上記のように水が流入した空洞部分に充填する場合に、気泡含有セメント組成物が水に浮いて空洞部分に好適に充填することができないという問題が生じていた。
【0008】
このような問題は、上記のような地下空洞充填工法に限らず、帯水環境下で孔や隙間等にエアミルクやエアモルタル等の気泡含有セメント組成物を充填しなければならない箇所での施工には同様に生じることが考えられるが、いずれにしても、上記従来の気泡含有セメント組成物は、密度が0.3〜0.8t/m
3程度であるので、上記のような帯水環境下では施工し難いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記問題点に鑑み、流動性が良好で施工性に優れているという、エアミルクやエアモルタル等の気泡含有セメント組成物が本来有する特性を極力損なわないようにしつつ、上記のような帯水環境下での施工において、孔や隙間等の空洞部分に好適に充填することができる気泡含有セメント組成物、気泡含有セメント組成物の製造方法および気泡含有セメント組成物を用いた施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、気泡含有セメント組成物中の起泡剤又は水の含有量を特定の含有量とし、気泡含有セメント組成物の密度を1.0t/m
3以上とすることで、流動性が良好で施工性に優れているという気泡含有セメント組成物が本来有する特性を極力損なわないようにしつつ、さらに帯水環境下における空洞部分に気泡含有セメント組成物を充填する場合に、該気泡含有セメント組成物が水に浮いて空洞部分への充填が困難となるようなことがなく、該空洞部分への充填を好適に行なうことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、本発明の気泡含有セメント組成物は、セメントと、起泡剤と、水とが含まれ、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上36質量%以下であり、密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下であることを特徴とするものである。また他の側面では、本発明の気泡含有セメント組成物は、セメントと、起泡剤と、水とが含まれ、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上0.06質量%以下で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上であり、密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下であることを特徴とするものである。
【0013】
さらに本発明の気泡含有セメント組成物の製造方法は、セメントと、起泡剤と、水とを、
前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上36質量%以下となるように混合し、密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下となるように調製することを特徴とするものである。さらに別の側面では、本発明の気泡含有セメント組成物の製造方法は、セメントと、起泡剤と、水とを、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上0.06質量%以下で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上となるように混合し、密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下となるように調製することを特徴とするものである。
【0014】
さらに本発明の気泡含有セメント組成物を用いた施工方法は、セメントと、起泡剤と、水とを、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上36質量%以下となるように混合し、密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下となるように調製することで気泡含有セメント組成物を得て、前記気泡含有セメント組成物を用いて施工を行なうことを特徴とするものである。さらに別の側面では、本発明の気泡含有セメント組成物を用いた施工方法は、セメントと、起泡剤と、水とを、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上0.06質量%以下で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上となるように混合し、密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下となるように調製することで気泡含有セメント組成物を得て、前記気泡含有セメント組成物を用いて施工を行なうことを特徴とするものである。
【0015】
起泡剤の含有量は0.01質量%以上とされる。起泡剤の含有量が0.01質量%未満になると、気泡含有セメント組成物として機能させるのに必要な気泡が組成物中に保持されなくなり、結果として気泡含有セメント組成物が本来有する特性である流動性が損なわれるおそれがあるからである。
【0016】
また、水の含有量は15質量%以上とされる。水の含有量が15質量%未満になると、気泡含有セメント組成物が本来有する特性である流動性が損なわれるおそれがあるからである。
【0017】
一方、起泡剤の含有量又は水の含有量の上限は、そのいずれかが設定されればよく、具体的には、起泡剤の含有量が0.06質量%以下とされるか、又は水の含有量が36質量%以下とされることで、気泡含有セメント組成物の密度が小さくならないようにされ、その密度が1.0t/m
3以上とされることとなる。
【0018】
このように、本発明の気泡含有セメント組成物においては、起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上であり、起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.06質量%以下であるか、又は水の組成物の総量に対する含有量が36質量%以下であり、密度が1.0t/m
3以上であるので、流動性が良好で施工性に優れているという、気泡含有セメント組成物が本来有する特性を極力損なわないようにしつつ、さらに帯水環境下における空洞部分に本発明の気泡含有セメント組成物を充填する場合に、該気泡含有セメント組成物が水に浮いて空洞部分への充填が困難となるようなことがなく、該空洞部分への充填を好適に行なうことができる。
【0019】
一方、本発明の気泡含有セメント組成物は、密度が1.48t/m
3以下であるので、材料分離をおこしにくい。
【0020】
尚、本発明でいう気泡含有セメント組成物とは、起泡剤によって形成された気泡を含むセメント組成物を意味し、たとえばエアモルタルやエアミルクがこれに含まれる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、流動性が良好で施工性に優れているという、エアミルクやエアモルタル等の気泡含有セメント組成物が本来有する特性を極力損なわないようにしつつ、帯水環境下での施工において、孔や隙間等の空洞部分に好適に充填することができる気泡含有セメント組成物、気泡含有セメント組成物の製造方法および気泡含有セメント組成物を用いた施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。先ず、本発明の気泡含有セメント組成物についての実施形態を説明する。
【0023】
本実施形態の気泡含有セメント組成物は、セメントと、起泡剤と、水とが含まれ、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上36質量%以下であり、密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下とされているものである。また他の実施形態の気泡含有セメント組成物は、セメントと、起泡剤と、水とが含まれ、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上0.06質量%以下で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上であり、密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下とされているものである。
【0024】
気泡含有セメント組成物とは、起泡剤によって形成された気泡を含むセメント組成物をいい、たとえばセメントと水とを含むセメントスラリーに、起泡剤で形成した気泡を含有させたエアミルク、エアモルタル等が挙げられる。
【0025】
セメントとしては、公知のセメントであれば特に制限されることはないが、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメント;超速硬セメント、アルミナセメントなどが挙げられる。中でも、高炉セメント、普通セメント等が、可使時間の調整が容易であること、および低コストであることから好ましい。
【0026】
起泡剤としては、例えばアルファオレフィンスルホン酸系の起泡剤が用いられる。アルファオレフィンスルホン酸系の起泡剤を用いることで、気泡含有セメント組成物中の気泡を安定的に維持することができ、予め、起泡剤と起泡剤以外のセメント組成物成分とを混合した気泡含有セメント組成物の状態で施工現場まで搬送することができる。さらに、比較的短時間で所望の強度が発現され、施工後、比較的早期に施工箇所の供用が開始できる。
【0027】
そのアルファオレフィンスルホン酸系の起泡剤としては、例えば、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムの粉末等が例示される。このような起泡剤として、例えば、ライオン株式会社製の商品名「リポランPJ−400」、ライオン株式会社製の商品名「リポランPB−800」などを用いることができる。前記起泡剤は、粉末であることには限定されるものではないが、粉末起泡剤である場合には、予め、セメント等の粉体成分と混合しておくことができ、製造しやすいため好ましい。
【0028】
さらに起泡剤には、たとえば上記アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムのような起泡成分以外の成分が含有されていてもよい。ここで起泡剤に起泡成分とともに起泡成分以外の成分が含まれている場合、上記起泡剤の組成物の総量に対する含有量(質量%)は、組成物の総量に対する起泡成分の含有量(質量%)であることを意味する。起泡成分としては、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、及び脂肪酸石鹸の群より選ばれた1種又は2種以上が挙げられる。
【0029】
本実施形態の気泡含有セメント組成物においては、さらに粘土鉱物が含まれていてもよい。粘土鉱物が含まれることで、組成物中で気泡が保持され易くなるという利点がある。
【0030】
粘土鉱物としては、層状粘土鉱物、繊維状粘土鉱物、非晶質粘土鉱物、シリカ鉱物、長石、沸石、ドロマイト、及びこれらの焼成物、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。中でも、層状粘土鉱物、繊維状粘土鉱物、およびこれらの焼成物からなる群から選択される1種以上である粘土鉱物が好ましい。かかる層状粘土鉱物、繊維状粘土鉱物、非晶質粘土鉱物、およびこれらの焼成物からなる群から選択される1種以上の粘土鉱物は、気泡の安定性をより良好にすることができ、且つ施工後により短時間で所望の強度が得られるからである。前記層状粘土鉱物としては、カオリン鉱物、蛇紋岩及び類縁鉱物、パイロフィライト、タルク、雲母粘土鉱物、緑泥岩、バーミキュライト、スメクタイト、ベントナイト等が挙げられる。前記繊維状粘土鉱物としては、セピオライト、アタパルジャイト等が挙げられる。前記粘土鉱物の焼成物としては、カオリンの焼成物であるメタカオリン、ハロイサイトの焼成物であるメタハロイサイト等が挙げられる。
【0031】
前記粘土鉱物の中でも、ベントナイト、アタパルジャイト等が気泡の安定性が良好になるという観点から、および、比較的短時間での所望の強度が得られやすいという観点から、好ましい。
【0032】
前記粘土鉱物は、膨潤力が15ml/2g以上50ml/2g以下であることが好ましい。前記粘土鉱物の膨潤力が前記範囲である場合には、より気泡の安定性が良好になる。尚、前記膨潤力は、日本ベントナイト工業会の標準試験方法(JBAS−104)に規定される方法に準拠して測定される膨潤力をいう。
【0033】
本実施形態の気泡含有セメント組成物においては、組成物の総量に対する起泡剤の含有量は0.01質量%以上とされる。起泡剤の含有量が0.01質量%未満になると、気泡含有セメント組成物として機能させるのに必要な気泡が組成物中に保持されなくなり、結果として気泡含有セメント組成物が本来有する特性である流動性が損なわれるおそれがあるからである。また、水の含有量は15質量%以上とされる。水の含有量が15質量%未満になると、気泡含有セメント組成物が本来有する特性である流動性が損なわれるおそれがあるからである。
【0034】
一方、組成物の総量に対する起泡剤の含有量は0.06質量%以下とされるか、又は水の含有量は36質量%以下とされ、いずれかの含有量の上限値が設定されることで、気泡含有セメント組成物の密度が小さくならないようにされ、その密度が1.0t/m
3以上とされることとなる。
【0035】
尚、気泡含有セメント組成物には上述のように粘土鉱物が含まれていてもよく、その場合には上述のように組成物中で気泡が保持され易くなるので、組成物中に含有させる起泡剤の含有量が少なくて済むこととなる。このことから、気泡含有セメント組成物に粘土鉱物が含まれている場合には、主として起泡剤の含有量が組成物の総量に対して0.06質量%以下となるように調整されて気泡含有セメント組成物の密度が1.0t/m
3以上とされる。一方、気泡含有セメント組成物に粘土鉱物が含まれていない場合には、組成物中で気泡が保持されにくくなるので、起泡剤の含有量を少なくしても密度が1.0t/m
3以上とならない可能性がある。このことから、気泡含有セメント組成物に粘土鉱物が含まれていない場合には、主として組成物の総量に対する水の含有量が36質量%以下とされて気泡含有セメント組成物の密度が1.0t/m
3以上とされる。
【0036】
気泡含有セメント組成物に粘土鉱物が含まれる場合、組成物の総量に対する粘土鉱物の含有量は5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。5質量%未満になると、材料分離を起こし易くなり、その一方で30質量%を超えると混練しにくくなるからである。
【0037】
さらに組成物の総量に対するセメントの含有量は35質量%以上50質量%以下であることが好ましい。35質量%未満になると混練不可となるおそれがある一方で、50質量%を超えると材料分離するおそれがあるからである。この観点からは、40質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
本実施形態のセメント組成物には、さらに、遅延剤、減水剤などを含んでいてもよい。また、気泡含有セメント組成物としてエアモルタルを得る場合には、骨材をさらに含んでいてもよい。
【0039】
次に、本発明の気泡含有セメント組成物の製造方法の実施形態について説明する。
【0040】
本実施形態の気泡含有セメント組成物の製造方法においては、セメントと、起泡剤と、水とを、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上であり、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.06質量%以下であるか、又は前記水の組成物の総量に対する含有量が36質量%以下となるように混合し、密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下となるように調製する。
【0041】
具体的には、起泡剤が粉末である場合には、粉体成分であるセメントと、起泡剤とを混合して混合粉体とし、該混合粉体に、所定の水を加えて混練して気泡含有セメント組成物を得る方法が挙げられる。或いは、前記粉体成分の各成分と、水とを一度に混合して混練することで気泡含有セメント組成物を得る方法が挙げられる。いずれの方法においても、前記起泡剤が水に溶解することで気泡が発生し、混練によって該気泡をスラリー状のセメント組成物中に均一に混合することで、エアミルクあるいはエアモルタル等の気泡含有セメント組成物を製造する。前記混練は、例えば、数L〜数10Lの容器に、各材料を入れて、ハンドミキサー等で混練りすることで行なうことができる。
【0042】
また粉体成分として、前記セメントとともに粘土鉱物を用いることも可能である。
【0043】
尚、前記粉体成分として、充填材、骨材(エアモルタルの場合)などをさらに加えてもよく、液体成分として、遅延剤、減水剤などを水にさらに加えてもよい。
【0044】
前記充填材を用いる場合に、重油を用いた乾燥を行っていない充填材を用いることが好ましい。充填材としては、例えばけい石粉、けい砂粉(エアモルタルの場合)などが挙げられ、これらは微粉であることが好ましい。硫黄酸化物及び窒素酸化物が付着していない充填材を用いることにより、気泡の安定性をより高めることができる。これは、乾燥時に発生する硫黄酸化物(SO
x)及び窒素酸化物(NO
x)が気泡を潰す要因の1つであると考えられるためである。
【0045】
次に、前述のように製造された気泡含有セメント組成物を施工現場で用いて施工を行なう施工方法について説明する。本実施形態のセメント組成物の施工方法では、セメントと、起泡剤と、水とを、前記起泡剤が組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で前記水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上であり、前記起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.06質量%以下であるか、又は前記水の組成物の総量に対する含有量が36質量%以下となるように混合し、密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下となるように調製することで気泡含有セメント組成物を得て、前記気泡含有セメント組成物を用いて施工を行なう。
【0046】
この場合、製造された気泡含有セメント組成物においては、起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.01質量%以上で水の組成物の総量に対する含有量が15質量%以上であり、起泡剤の組成物の総量に対する含有量が0.06質量%以上であるか、又は水の組成物の総量に対する含有量が36質量%以上であり、密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下とされているので、このような気泡含有セメント組成物を帯水環境下の施工現場に搬送し、そのような施工現場で空洞部分に気泡含有セメント組成物を充填するような場合、流動性が良好で施工性に優れているという、エアミルクやエアモルタル等の気泡含有セメント組成物が本来有する特性を極力損なわないようにしつつ、帯水環境下において気泡含有セメント組成物を空洞部分に好適に充填することができる。
【0047】
また、本実施形態の気泡含有セメント組成物の施工方法では、予め工場などの施工現場から離れた場所において気泡含有セメント組成物を前述のような製造方法によって製造して、その後、施工現場に搬送して、施工現場で気泡含有セメント組成物として用いることができる。
【0048】
このように気泡含有セメント組成物を施工現場に搬送する場合、気泡含有セメント組成物中に粘土鉱物が含まれていると、気泡が組成物中に維持され易く、予め、セメントミルクまたはセメントモルタル等のスラリー状のセメント組成物と、起泡剤とを別々に搬送せずに事前に混合した状態で搬送できるので、搬送コストも抑制できる。さらに、搬送に先立って混合した材料の必要分のみを製造、搬送すればよいので、材料ロスが小さく、コスト的に有利である。また、施工現場では、別々の搬送媒体で搬送されたスラリー状のセメント組成物と起泡剤とを専用装置で混合する必要がなく、よって、施工現場において設備の小型化を図ることができる。
【0049】
前記気泡含有セメント組成物を施工現場へ搬送する方法は特に限定されないが、例えば、ミキサー車、モービル車等の搬送車両を用いることが挙げられる。数L〜数10m
3の工事規模の場合には、モービル車またはミキサー車を用い、数10m
3以上の工事規模の場合には、ミキサー車を用いることが好ましい。あるいは、製造場所から施工現場まで接続された移送パイプ等の搬送車両以外の搬送装置を用いて搬送してもよい。
【0050】
前記施工現場に搬送された気泡含有セメント組成物は、そのまま、施工現場で施工してもよく、あるいは、施工現場でさらに水等を添加してから施工してもよい。
【0051】
このように、本実施形態のセメント組成物、気泡含有セメント組成物の製造方法及び気泡含有セメント組成物の施工方法は、施工場所に大型設備を必要としないので、施工量が小規模(例えば100m
3未満)の場合に特に有利である。
【0052】
尚、本実施形態は以上のとおりであるが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を示して、本発明にかかる気泡含有セメント組成物としてのセメントミルクについて、さらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(セメント組成物の含有)
本実施例で用いるセメントミルク用のセメント組成物として表1の含有量の実施例1乃至5、並びに比較例1乃至8を準備した。尚、表1において、セメント組成物の各材料の含有量の単位はgである。また起泡剤と水の含有量のカッコ内の数値は質量%である。さらに使用した各材料の詳細は以下のとおりである。
【0055】
(材料)
セメント:高炉セメント(商品名「高炉セメントB種」、住友大阪セメント株式会社製)
粘土鉱物:ベントナイト(ホージュン社製 スーパークレイ:膨潤力30ml/2g)
粉末起泡剤:アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム(商品名「リポランPB−800」、ライオン株式会社製)
【0056】
【表1】
【0057】
(製造方法)
まず、粉体成分として、セメント、粘土鉱物および粉末起泡剤を容量5Lの容器に入れてゴム栓2個を入れて振とうして混合した後、容量5Lの容器で表1に記載の各分量の水を加えて、ハンドミキサー(商品名「UT−1305」、マキタ社製)を用いて1300rpmで2分間混練して、エアミルクを得た。
【0058】
(評価方法)
各実施例および比較例について、密度、空気量、フロー値、性状および圧縮強度を以下のように測定した。
《密度/空気量》
混練から2分後の各エアミルクの総重量および体積を測定した。
密度は、前記総重量と体積とから求めた。体積については、各原料粉体及び水の密度から算出した。さらに、空気量は、密度及び重量から求めた。
《フロー値》
フロー値は、NEXCO試験法313に記載のフロー試験に準じて測定した。
《圧縮強度》
圧縮強度は、JIS A 1216に記載の土の一軸圧縮試験方法に準じた方法を用いて、材齢1日、7日、28日の圧縮強度を測定した。
【0059】
《性状》
混練直後のエアミルクをブリーディング袋に充填し、3時間後の性状を目視で観察し、消泡、分離、底部の水が溜まりの有無を評価した。
【0060】
これらの結果を表2及び表3に示した。表2において、密度の単位はt/m
3、フロー値の単位はmm、総重量の単位はg、体積の単位はcm
3、空気量の単位はcm
3である。また表3において圧縮強度の単位はkN/m
2である。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
(評価結果)
表1及び表2に示すように、実施例1では水の含有量を比較例1乃至3と同じ1000g(組成物の総重量に対して約50質量%)としたが、起泡剤の含有量は0.5g(組成物の総重量に対して0.025質量%)とし、比較例1乃至3の起泡剤の含有量6.0g(組成物の総重量に対して比較例1乃至3でいずれも0.30質量%)に比べて少なくした。この結果、組成物の密度は比較例1で0.0627t/m
3、比較例2で0.0682t/m
3、比較例3で0.717t/m
3といずれも1.0t/m
3未満であったが、実施例1では1.091t/m
3で1.0t/m
3以上であった。
【0064】
また、比較例4、5でも水の含有量を比較例1乃至3と同じ1000g(組成物の総重量に対して約50質量%)としたが、比較例4では起泡剤の含有量を4.0g(組成物の総重量に対して0.20質量%)とし、比較例5では起泡剤の含有量を2.0g(組成物の総重量に対して0.010質量%)とし、比較例1乃至3に比べて少なくした。この結果、比較例4では組成物の密度は0.793t/m
3、比較例5では0.856t/m
3となり、いずれも比較例1乃至3よりも密度が高くなったが、1.0t/m
3以上となることはなかった。
【0065】
さらに、比較例7では水の含有量を900g(組成物の総重量に対して約47質量%)とし、比較例1乃至3と同程度としたが、起泡剤の含有量を10.0g(組成物の総重量に対して0.52質量%)とし、比較例1乃至3より多くした。この結果、比較例7の組成物の密度は0.0610t/m
3で、比較例1乃至3より低くなった。
【0066】
一方、実施例2では起泡剤の含有量を比較例1乃至3と同じ6.0g(組成物の総重量に対して0.40質量%)としたが、水の含有量は500g(組成物の総重量に対して33.2質量%)とし、比較例1乃至3の水の含有量に比べて少なくした。この結果、実施例2の組成物の密度は1.135t/m
3で1.0t/m
3以上であった。また実施例3、4では、それぞれ起泡剤の含有量を4.0g(組成物の総重量に対して0.27質量%)及び3.0g(組成物の総重量に対して0.20質量%)と実施例2に比べて少なくしたが、水の含有量は500g(組成物の総重量に対して33.2質量%、33.3質量%)で実施例2と同じとした。この結果、実施例3、4においても、組成物の密度は1.279t/m
3、1.380t/m
3で1.0t/m
3以上であった。
【0067】
一方、比較例6でも起泡剤の含有量を比較例1乃至3と同じ6.0g(組成物の総重量に対して0.37質量%)としたが、水の含有量を600g(組成物の総重量に対して37.4質量%)とし、比較例1乃至3に比べて少なくした。この結果、比較例6では組成物の密度は0.743t/m
3となり、比較例1乃至3よりも密度が高くなったが、1.0t/m
3以上となることはなかった。これに対して、実施例5では、起泡剤の含有量は比較例1乃至3及び6と同じ6.0g(組成物の総重量に対して0.43質量%)としたが、水の含有量は400g(組成物の総重量に対して28.4質量%)とし、比較例6に比べてさらに少なくした。この結果、実施例5では、組成物の密度が1.471t/m
3で1.0t/m
3以上であった。
比較例8では、起泡剤の含有量を2.0g(組成物の総重量に対して0.13質量%)とし、水の含有量を500g(組成物の総重量に対して33.3質量%)とした。この結果、比較例8の組成物の密度は1.495t/m
3で1.0t/m
3以上であったが、1.48t/m
3を超えた。
さらに、実施例1乃至5のエアミルクのフロー値は135〜250mm程度で、全体として173〜315mm程度の比較例1乃至8のエアミルクのフロー値よりも低かった。
【0068】
以上のことから、起泡剤又は水のいずれかの含有量を減らすことで組成物の密度が高くなることがわかったが、起泡剤の含有量を実施例1の量とし、或いは水の含有量を実施例2乃至5の量とすることで組成物の密度が1.0t/m
3以上1.48t/m
3以下となり、フロー値も小さくなることがわかった。従って、実施例1乃至5のエアミルクを帯水環境下での施工に用いれば、孔や隙間等の空洞部分に好適に充填することができると考えられる。
【0069】
次に、目視による性状観察においては、比較例1、6では泡が消えて減少しており、均一な泡がなかった。さらには、消泡によるセメントミルクの分離が発生していた。また比較例3の性状観察では分離による水溜りが発生していた。これに対して実施例1乃至5のエアミルクではこのような消泡や分離、底部の水溜まりは認められなかった。
【0070】
さらに、実施例1のエアミルクは、圧縮強度が材齢1日で150kN/m
2を超え、材齢7日で2200kN/m
2を超え、材齢28日で3400kN/m
2を超えていた。また実施例2乃至5のエアミルクは、圧縮強度が材齢1日で500kN/m
2を超え、材齢7日で2200kN/m
2を超え、材齢28日で7500kN/m
2を超えていた。
【0071】
これに対して、比較例1、6、8のエアミルクは材齢1日、7日、28日のいずれにおいても圧縮強度を測定できなかった。比較例2乃至5のエアミルクでは材齢1日、7日、28日の圧縮強度を測定でき、比較例7のエアミルクでは材齢7日、28日の圧縮強度を測定できたが、いずれも実施例1乃至5のエアミルクに比べて圧縮強度が劣っていた。
【0072】
このように実施例1乃至5のエアミルクは、密度が1.0t/m
3以上であり、フロー値が各比較例のエアミルクより小さく、且つ、十分に気泡を含み、あるいは、気泡抜けが抑制され、さらに、気泡の均一性が高いことがわかった。また実施例1乃至5のエアミルクは、圧縮強度が各比較例のエアミルクより高いことがわかった。