特開2015-59350(P2015-59350A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-59350(P2015-59350A)
(43)【公開日】2015年3月30日
(54)【発明の名称】地盤の液状化対策工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/08 20060101AFI20150303BHJP
   E02D 3/10 20060101ALI20150303BHJP
【FI】
   E02D3/08
   E02D3/10 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-193980(P2013-193980)
(22)【出願日】2013年9月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100098132
【弁理士】
【氏名又は名称】守山 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 一司
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA06
2D043DA04
2D043EA05
2D043EA06
2D043EA10
2D043EB02
(57)【要約】
【課題】 間隙水圧の上昇を抑制する排水能力に加えて、ドレーン柱自体の強度による地盤の変位を抑制する能力を備えたドレーン柱により、地盤の液状化対策を実現する工法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る地盤液状化対策工法は、スラグ塊及び生コンスラッジを、スラグ塊100質量部に対して生コンスラッジの固形分を1乃至30質量部の割合で含有するドレーン材により、地盤G中に透水性を有するドレーン柱3を造成する。ドレーン柱3は、スラグ塊同士が生コンスラッジのアルカリ刺激により接触面で接着することにより、隙間を有した構造となって透水性を維持するとともに、スラグ塊同士の接合力によって、砕石柱の場合と比べてドレーン柱自体が強度を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラグ塊と生コンスラッジとを含有するドレーン材であって、スラグ塊100質量部に対して、生コンスラッジの固形分を1乃至30質量部の割合で含有するドレーン材により、地盤中に透水性を有するドレーン柱を造成することを特徴とする液状化対策工法。
【請求項2】
請求項1に記載の液状化対策工法において、
前記スラグ塊は、粒径2mm以上であることを特徴とする液状化対策工法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液状化対策工法において、
前記ドレーン材は、更に石膏を含有し、スラグ塊100質量部に対して、生コンスラッジの固形分と石膏との合計が1乃至30質量部であることを特徴とする液状化対策工法。
【請求項4】
請求項3に記載の液状化対策工法において、
前記ドレーン材は、生コンスラッジの固形分が20質量部以下、石膏が20質量部以下であることを特徴とする液状化対策工法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの項記載の液状化対策工法において、
前記ドレーン材は、スラグ塊を水に浸漬させた後に、生コンスラッジまたは生コンスラッジと石膏と混合して調製されることを特徴とする、液状化対策工法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの項に記載の液状化対策工法において、
前記ドレーン柱の造成に際して、施工した前記ドレーン材に締め固めを施すことを特徴とする液状化対策工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤にドレーン材により透水性を有するドレーン柱を造成する地盤液状化対策工法に関し、特に、スラグ塊と生コンスラッジを含有するドレーン材を用いる地盤の液状化対策工法に関する。
【背景技術】
【0002】
緩い砂質地盤に対する主な液状化防止の原理としては、密度の増大(締固め)、地震時等の間隙水圧上昇の抑制(排水)、地盤のせん断変形の抑制、地盤の不飽和化等がある。
間隙水圧上昇を抑制するための排水工法の一つにグラベルドレーン工法がある。従来のグラベルドレーン工法は、ドレーン材として砕石を用い、対象地盤に透水係数の大きい砕石柱(ドレーン柱)を造成し、地震時に発生する過剰な間隙水圧をドレーン柱を通して素早く消散させることで、地盤の液状化を防止して地盤の安定を保つことができる。
【0003】
グラベルドレーン工法の施工方法は、例えば図1に示すように、略全長に亘ってスクリューを周設したケーシングパイプ1を用いて、ケーシングパイプ1を回転駆動によって地盤G中に貫入させ(a)、ケーシングパイプ1内に砕石(ドレーン材)を投入しながらケーシングパイプ1を引き抜き(b)、地盤G中に排水用の砕石柱(ドレーン柱)2を造成するものである。
なお、砕石として、一般に7号砕石(JIS A 5001 粒径2.5〜5mm)を使用することが多い。
【0004】
特開2003−82649号公報(特許文献1)には、軟弱地盤中に所定間隔で掘削した掘削孔内に、膨張性を有するスラグを充填し、このスラグが軟弱地盤中の水分を吸収することにより、スラグを膨張させて周囲地盤の締め固めを行うようにする軟弱地盤の改良工法が記載されている。
なお、特許文献1には、スラグを用いる点は記載されているが、生コンスラッジを用いる点は記載されていない。
【0005】
特開2005−146609号公報(特許文献2)には、ケーシングを水面下の軟弱地盤中に埋設し、ケーシング内に粒状物を投入し、投入が完了したらケーシングの底部の蓋を開けてケーシングを上昇せしめることで、粒状物をケーシングの下端から地盤中に排出して、地盤改良パイルを形成する地盤改良方法において、粒状物として、スラッジに1重量%以上の生石灰または石灰系固化材を混合し造粒された粒状物を用いることが記載されている。
なお、特許文献2には、スラグを用いる点は記載されているが、スラッジは砕石微粉等であり、生コンスラッジではない。
【0006】
特開2009−102801号公報(特許文献3)には、JIS K 0058−1に規定される溶出試験条件に従い、利用有姿のままの試料に、その10倍量の蒸留水を加え、毎分200回転で6時間撹拌した後の蒸留水のpHが11.5以下である鉄鋼スラグからなる低置換サンドコンパションパイル用材料であり、特にMg(OH)2の析出によるサンドコンパションパイルの透水性の低下を抑え、長期透水係数を1×10−3cm/s以上に維持できる低置換サンドコンパションパイル用材料が記載されている。
なお、特許文献3には、鉄鋼スラグを用いる点は記載されているが、生コンスラッジを用いる点は記載されていない。
【0007】
特開2010−208904号公報(特許文献4)には、コンクリート廃材を粉砕する際に発生するコンクリート微粉末と、生コンスラッジから分離生成された脱水ケーキとを、水を添加して撹拌混合した後に、そのまま固化させ、あるいは造粒、整粒して所定粒径の固化粒状物を生成するようにした再生粒状物及びその製造方法が記載されている。
なお、特許文献4には、コンクリート廃材の微粉末や生コンスラッジの脱水ケーキを用いる点は記載されているが、コンクリート廃材微粉はスラグではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−82649号公報
【特許文献2】特開2005−146609号公報
【特許文献3】特開2009−102801号公報
【特許文献4】特開2010−208904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のグラベルドレーン工法は、地盤を穿孔し、その孔に砕石を投入し柱状にドレーン(ドレーン柱)を造成するものであり、砕石のドレーン柱が周辺地盤より透水係数が大きいことを利用して、周辺地盤における水圧の上昇を緩和するというものである。
しかしながら、砕石のドレーン柱には、間隙水圧の上昇を抑制する能力を有するものの、地震等により地盤が変形する力が加わった場合には、地盤の支持力や地盤の変形を抑制する強度がほとんどないため、ドレーン柱の形状を維持することができず崩壊してしまい、地震等の液状化の変位を防ぐ能力が十分なものとはいえないという課題があった。
【0010】
一方、生コン工場では、ミキサ―設備やコンクリート運搬車の洗浄により発生する生コンスラッジの処理については、従来より問題となっている。生コン工場設備等の水洗浄により発生する残渣はコンクリート用骨材として利用できる部分が取り除かれ、残りは沈殿槽で上澄み水とスラッジとに分離される。上澄み液は所定の処理をされて、コンクリートの混練水として利用されるが、沈殿した固形分はフィルタープレス等で水分を除去され、生コンスラッジとして処分されている。生コン工場から排出されるスラッジの発生量は多く、そのために処分費が高額となる課題があり、有効な生コンスラッジの有効活用法が求められている。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、間隙水圧の上昇を抑制する能力に加えて、ドレーン柱の強度による地盤の変位を抑制する能力を備えた、地盤の液状化対策工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る地盤の液状化対策工法は、スラグ塊と生コンスラッジとを含有するドレーン材であって、スラグ塊100質量部に対して、生コンスラッジの固形分を1乃至30質量部の割合で含有するドレーン材により、地盤中に透水性を有するドレーン柱を造成することを特徴とする。
【0013】
ドレーン柱に主体的に含まれるスラグ塊は生コンスラッジと上記特定の範囲の割合で混合してドレーン材とした場合、生コンスラッジがアルカリ刺激材となり、スラグ塊の表面が水和反応を起こし、スラグ塊同士が接触した面が接着する。
そのため、このドレーン柱は、スラグ塊同士が表面の一部で接触して接着することにより、隙間を有した構造となって透水性を維持するとともに、スラグ塊同士の接合力によって、砕石柱の場合と比べてドレーン柱自体が強度を有するようになる。
また、スラグ塊は、水和反応する際に膨張するため、ドレーン柱の周辺の地盤が締め固められ密度が増大する。
【0014】
ここで、本発明に係る地盤の液状化対策工法では、スラグ塊は粒径2mm以上であるのが好ましく、これによって、ドレーン柱に水分が透過する十分な間隙を備え、透水性を容易に高めることができる。
【0015】
本発明に係る地盤の液状化対策工法では、ドレーン材には更に石膏を含有し、スラグ塊100質量部に対して、生コンスラッジの固形分と石膏との合計が1乃至30質量部とすることが好ましく、これによって、スラグ塊と生コンスラッジを使用した場合に比べて、ドレーン柱の強度を更に高めることができる。
【0016】
特に、スラグ塊と生コンスラッジと石膏を含む前記ドレーン材中、特に生コンスラッジの固形分は20質量部以下で、石膏も20質量部以下とすることが好ましく、これによって、要求される透水性と強度を満足させ、より好適なドレーン柱を得ることができる。
【0017】
また、本発明に係る地盤の液状化対策工法では、ドレーン材は、スラグ塊を水に浸漬させた後に、生コンスラッジと、又は、生コンスラッジ及び石膏と混合して調製されることが好ましく、これによって、スラグ塊の周囲に生コンスラッジと、必要に応じて添加される石膏とを有効に付着させることができる。
【0018】
また、本発明に係る液状化対策工法では、ドレーン柱の造成に際して、施工時にドレーン材に締め固めを施すようにしてもよい。
また、本発明に係る液状化対策工法では、ドレーン柱を造成した地盤の表面に、透水性を有するマット層を敷設するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、ドレーン柱による地盤間隙水圧の上昇を抑制する能力に加えて、ドレーン柱自体の強度が増大するため、地震等による地盤の変位、特にせん断変形に対して抵抗力を増大することができ、従って地震等においても優れた地盤の液状化対策を実現することできる。
更に、本発明によると、間隙水圧の上昇抑制能力だけの砕石を用いたドレーン柱に比べて、間隙水圧の上昇抑制能力と地盤変位に対する抵抗力を増大して地盤の液状化に有効に対処できるため、ドレーン柱の本数を減らすことも可能となって、工事期間の短縮やコストの低減を図ることができる。
更に、従来は処分に多くの費用を必要とする生コンスラッジを有効利用を図れることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】グラベルドレーン工法の一例を説明する概略図である。
図2】本発明によるドレーン柱の一例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る地盤の液状化対策工法を、図面を参照して一実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の地盤液状化対策工法は、スラグ塊と生コンスラッジとを含有する含有するドレーン材により、地盤中に透水性を有するドレーン柱を造成する、地盤液状化対策工法である。
本実施形態の液状化対策施工法は、例えば図1に示したようなグラベルドレーン工法により行なうことができる。なお、サンドドレーン工法やバーチカルドレーン工法等と称せられる施工方法を用いても同様に実施することが可能である。
まず、ケーシングパイプを地盤中に貫入させ、ケーシングパイプ内にドレーン材を充填し、ケーシングパイプを引き抜いて、図2に示すように、液状化対策を施す対象地盤G中に透水性を有する、ドレーン柱3を必要本数造成する。
【0022】
本発明においては、ドレーン柱を構成するドレーン材として、スラグ塊と生コンスラッジとを含有するものを用いるため、アルカリ刺激材としての生コンスラッジのもとでスラグ塊が反応してスラグ塊間の接着面の接着力が増して、地盤Gのせん断変形に対する抵抗力が増大し、液状化抵抗を増大させることができる。
また、スラグ塊が水和反応する際に膨張し、ドレーン柱周辺の地盤を締固め密度を増大させることが可能となる。
【0023】
ドレーン材として使用できるスラグ塊としては、特に限定されず、任意のスラグ塊を使用することができる。
ドレーン材に用いるスラグ塊は、得られるドレーン柱の良好な透水性を保持するため、粒径2mm以上、好ましくは2.5mm以上であることが望ましい。かかる粒径は7号砕石とほぼ同レベルの粒径である。
なお、粒径はJIS篩により決定した粒径である。
【0024】
また、通常、生コン工場から排出された生コンスラッジは、セメント粒子(水和物と未水和状態の混合物)及び細骨材の微粒分から構成されている。かかる生コンスラッジは、通常、含有される水分をフィルタープレス等により除去して処理されるが、本発明のドレーン材にスラグ塊とともに含まれる生コンスラッジは、フィルタープレス等により水分を除去した後のスラッジを乾燥・粉砕して粉末状で用いても、またはフィルタープレス等により水分を除去した後の湿潤状態で用いても、あるいはフィルタープレス等で水分を除去する前のスラッジ、例えば沈殿槽等から直接採取したスラッジを用いてもよい。
【0025】
生コンスラッジにはセメントが多く含まれ、スラッジ自体から六価クロムが溶出する可能性により地盤汚染が懸念されるが、スラグ塊には還元能力があり、本発明においてはスラグ塊とともに生コンスラッジを使用するため、六価クロムの外部への流出抑制が可能であり、周辺地盤を汚染することはない。
【0026】
生コンスラッジがスラグ塊の周囲に付着することで、該生コンスラッジがアルカリ刺激材となってスラグ塊の接触面が水和反応を起こしてスラグ塊同士の良好な接着を得て、ドレーン柱に要求される透水率及び一軸圧縮強さを呈するために、ドレーン材に含まれるスラグ塊と生コンスラッジとは、スラグ塊100質量部に対して、生コンスラッジの固形分が1乃至30質量部の割合で含有される。
【0027】
また、ドレーン柱の強度を更に増加させる場合には、ドレーン材として、スラグ塊及び生コンスラッジに加えて更に石膏を含有するドレーン材を用いることができる。使用することができる石膏は、特に限定されず、半水石膏、二水石膏、無水石膏等、任意のものを適用することができる。
かかるドレーン材によっても、ドレーン柱3は、時間の経過とともにスラグ塊同士の接着力が増すとともに、石膏自体が硬化し、得られるドレーン柱をより強固に接着させ、地盤Gのせん断変形に対する抵抗力がより増大するとともに、スラグ塊の膨張も大きくなり、液状化抵抗が更に大きくなる。
【0028】
石膏を含有する場合には、ドレーン柱の強度を更に増加させるとともに、ドレーン柱の良好な透水性を保持するために、スラグ塊100質量部に対して、生コンスラッジの固形分と石膏との合計が1乃至30質量部であることが好ましく、特に生コンスラッジの固形分が20質量部以下で石膏が20質量部以下であることがより望ましい。
【0029】
ドレーン材は、スラグ塊を水に浸漬させた後やスラグ塊に水を噴霧等させた後に、生コンスラッジまたは生コンスラッジと石膏と撹拌混合して調製される。このように、スラグ塊表面を湿潤させることにより、スラグ塊表面に生コンスラッジ粉および必要に応じて配合された石膏を有効に付着させることができる。
また、スラグ塊と、生コンスラッジ等を混合する際に、生コンスラッジとともにまたは生コンスラッジと石膏とともに水を混合することが、生コンスラッジ粉の飛散を防止し、またスラグ塊の表面に有効に生コンスラッジまたは生コンスラッジと石膏とを付着させることができ、早期にドレーン柱の強度を発現させるために好ましい。
【0030】
上記ドレーン材を、地盤中のケーシングパイプ内に充填し、充填したドレーン材に振動等を与えて、ドレーン材を締め固めるとともに、周辺地盤も締め固めするようにしてもよい。これにより、周辺地盤が締め固められることにより、地盤のせん断強さが増加し、地盤全体の耐液状化性能が向上させることができる。
【0031】
また、図2に示すように、ドレーン柱3の施工の前又は後で、対象地盤Gの上面にマット層4を敷設してもよい。このマット層4は、例えば、砕石、砂、本実施形態と同様なドレーン材(スラグ塊と生コンスラッジ又はスラグ塊と生コンスラッジと石膏)で形成することができる。
該ドレーン柱の直上を盛り土等とした場合には、該ドレーン柱の上部への排水が不可能となり、過剰間隙水圧が消散されず、また他種の構造物の場合でも構造物下面に排水された水がたまることにより、排水能力が抑制されることがある。
かかるマット層を敷設することで、上部に構造物が有る場合でも、このマット層に沿って横方向へ排水を行うことができるため、過剰間隙水圧を速やかに消散できる。
【0032】
このように造成されたドレーン柱3は地盤Gより透水性が良いため、地震時等において、地盤Gの過剰間隙水圧がドレーン柱3を通して消散し、地盤Gの液状化が防止される。
【0033】
従来の砕石を用いたドレーン柱は、ドレーン柱自体に強度がないため、地震時等の地盤の変位を抑制することができないため、液状化の抑制効果としては排水による間隙水圧の上昇抑制のみである。
【0034】
これに対して、本実施形態では、ドレーン柱を構成するスラグ塊が生コンスラッジのアルカリ刺激により水和反応を起こしてスラグ塊表面同士が接着し、更に石膏を加えた場合は、石膏自体が硬化し、スラグ塊を強固に接着させる。かかるスラグ柱は時間の経過とともにスラグ塊間の接着力が増加するために、ドレーン柱の強度が向上し、地震時等における間隙水圧の上昇抑制効果とせん断変形への抵抗力の増加効果が得られる。
また、スラグ柱が周辺地盤方向に膨張し、周辺地盤を締固めて地盤密度を増大させることで、地盤自体の液状化抵抗をより増大させることができる。
【0035】
更に、本実施形態のドレーン柱は、これらの周辺地盤の密度を増大させる効果等やドレーン柱自体の強度で、砕石ドレーンの水圧消散効果の場合よりも、ドレーン柱の液状化防止能力が高まるため、砕石のドレーン柱の場合に比べて、液状化対策のために地盤に造成するドレーン柱の本数を少なくすることができる。
【実施例】
【0036】
(1)ドレーン材料
・スラグ塊:
A 道路用スラグ(MS−25) 新日鐵住金株式会社製 0.075〜31.5mm
B スラグ塊Aのうちの2mmJIS篩通過分を除去したもの
・コンクリートスラッジ:生コン工場(東京エスオーシー株式会社 市川工場)より採取した生コンンスラッジを天日乾燥した粉末
・石膏:硫酸カルシウム(試薬 和光純薬株式会社製)
・砕石6号:栃木県佐野市硬質砂岩砕石6号
・砕石7号:栃木県佐野市硬質砂岩砕石7号
【0037】
(2)ドレーン柱の性能試験
上記スラグ塊と生コンスラッジ、砕石を用い、砕石のみのドレーン材によるドレーン柱供試体(表1)、スラグ塊のみのドレーン材(表2)、スラグ塊及び生コンスラッジ及び水のドレーン材によるドレーン柱供試体(表2)、スラグ塊と生コンスラッジと石膏と水のドレーン材によるドレーン柱供試体(表2)について、透水性試験及び一軸圧縮試験を実施した。
【0038】
(透水試験)
透水試験は、JIS A 1218に準拠して、φ10cm×高さ12cmの透水試験用円筒へ、各ドレーン材を自然落下で投入して(締固めは実施しない)、当該試験に供して各供試体の透水係数を求めた。
【0039】
比較例としての砕石からなるドレーン柱供試体(表1)は、上記6号砕石(比較例1:栃木県佐野市産硬質砂岩砕石6号)と7号砕石(比較例2:栃木県佐野市産硬質砂岩砕石7号)とをそれぞれJIS A1218に規定されているφ10cm×高さ12cmの透水試験用円筒へ自然落下で投入して(締固めは実施しない)、当該試験に供した。
その結果を表1に示す。
【0040】
比較例としてのスラグ塊のみからなるドレーン柱供試体(表2)は、上記スラグ塊AをJIS A1218に規定されているφ10cm×高さ12cmの透水試験用円筒へ自然落下で投入して(締固めは実施しない)、当該試験に供した。
その結果を表2に示す。
【0041】
実施例1〜7及び比較例4のドレーン柱供試体(表2)は、スラグ塊を水浸させた後水中から引き上げたスラグ塊を、生コンスラッジ粉及び水と混合して調製した各ドレーン材を、JIS A1218に規定されているφ10cm×高さ12cmの透水試験用円筒に投入し、気中養生を20℃で7日間、その後水中養生を20℃で50日間実施し、当該試験に供した。
その結果を表2に示す。
【0042】
実施例8〜11及び比較例5〜6のドレーン柱供試体(表2)は、スラグ塊を水浸させた後水中から引き上げたスラグ塊を、生コンスラッジ粉及び石膏と水と混合して調製した各ドレーン材を、JIS A1218に規定されているφ10cm×高さ12cmの透水試験用円筒に投入し、気中養生を20℃で7日間、その後水中養生を20℃で50日間実施し、当該試験に供した。
その結果を表2に示す。
【0043】
(一軸圧縮試験)
一軸圧縮試験は、JIS A 1216に準拠して実施して、各供試体の一軸圧縮強さを求めた。その結果もそれぞれ表1〜2に示す。
各供試体は、上記「透水性試験」と同様に調製し、φ10cm×高さ20cmの軽量モールド(住商セメント(株))へ自然落下で投入して(締固めは実施しない)、20℃で7日間気中養生後に脱型し、その後90日間20℃で水中養生後に、当該試験に供した。
【0044】
また、比較例1及び2の砕石からなるドレーン柱供試体(表1)は、上記6号砕石(比較例1)と7号砕石(比較例2)とをそれぞれ実施例1と同様のφ10cm×高さ20cmの軽量モールド(住商セメント(株))へ自然落下で投入して(締固めは実施しない)、型枠を外した。
また、比較例3のスラグ塊からなるドレーン柱供試体(表2)も、スラグ塊Aを実施例1と同様のφ10cm×高さ20cmの軽量モールド(住商セメント(株))へ自然落下で投入して(締固めは実施しない)、型枠を外した。
上記各場合、ドレーン柱形状を維持することができず、圧縮強度の測定は不可能であった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
(評価)
一般に、ドレーン柱に一般的に要求される透水率(透水性能)は10−3m/sec以上であり、表1及び表2の結果から、砕石によるドレーン柱やスラグ塊によるドレーン柱は、透水率による間隙水圧の抑制効果は期待できるものの、ドレーン柱の形状を維持できず、せん断変位等に耐え得る強度が得られないことがわかる。
【0048】
表2の実施例1〜7及び比較例4の結果から、スラグ塊とスラッジと水とからなる供試体は、スラグ塊100質量部に対して、生コンスラッジを30質量部まで配合する場合には、ドレーン材としての上記透水性能を満足するが、生コンスラッジが30質量部を超えて35質量部(比較例4)となると、細粒分の増加により、スラグ柱の上記透水性能が低下し、ドレーン材としての性能を満たさない。
【0049】
また、スラグ塊のみからなる供試体(比較例3)では一軸圧縮強度試験は上記したように不可能であったが、生コンスラッジを加えることでスラグ柱自体の強度が大きくなり、特に生コンスラッジをスラグ塊100質量部に対して10質量部以上加えた場合には、十分な強度が発現した。
【0050】
表2の実施例8〜11及び比較例5〜6の結果より、更に石膏を加えることで、スラグ柱の強度は、スラグ塊と生コンスラッジを含み石膏を含まない場合に比べて増加した。また透水性能は、スラグ塊100質量部に対して、生コンスラッジと石膏との合計が30質量部までは、ドレーン材としての上記透水性能を満足するが、30質量部を超えて35質量部となると(比較例5〜6)上記透水性能が悪化し、ドレーン材としての性能を満たさない。
【0051】
このように本発明によるドレーン柱は、ドレーン柱に要求される透水率及び一軸圧縮強さを示し、間隙水圧の上昇を抑制する能力と、ドレーン柱自体の強度による地盤の変位に対する抵抗性能とを備えたドレーン柱であることがわかる。
【0052】
また、実施例1と実施例2、実施例3と実施例4とを比較すると、スラグ塊の粒径の小さいものを含むと、一軸圧縮強さは増大するが、透水率は若干低下しており、スラグ塊として粒径2mm以上(実施例2、実施例4)のスラグ塊を用いることが好ましい。また、スラグ塊の粒径が粒径2mm以上(2mm篩通過分を除去した粒子)であると、一般によく使われる7号砕石と同等以上の透水性を有する。
【0053】
表2は、スラグ塊に混合する生コンスラッジ粉末や石膏の質量割合を種々変更した供試体についての試験結果であるが、この結果から、次のことがわかる。なお、水は、均一に混合するために適当量が添加される。
生コンスラッジや石膏の混合割合が増えるにしたがって、一軸圧縮強さが増大するが、透水率は低下する傾向があることがわかる。ドレーン柱に一般的に要求される透水率(10−3m/sec以上)に鑑みると、本発明のスラグ塊100質量部に対して、生コンスラッジと石膏との合計含量が30質量部以下の割合で混合した実施例の供試体は、十分な一軸圧縮強さと、必要な透水率を得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の液状化対策工法は、軟弱地盤等にドレーン柱を造成して液状化対策を施す工法に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・ケーシングパイプ、
2・・・砕石柱、
3・・・ドレーン柱、
4・・・マット層、
G・・・地盤
図1
図2