特開2015-59839(P2015-59839A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-59839コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法
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  • 特開2015059839-コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法 図000021
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-59839(P2015-59839A)
(43)【公開日】2015年3月30日
(54)【発明の名称】コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20150303BHJP
【FI】
   G01N33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-193979(P2013-193979)
(22)【出願日】2013年9月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100098132
【弁理士】
【氏名又は名称】守山 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】小田部 裕一
(72)【発明者】
【氏名】神部 直也
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用する骨材によりコンクリートの乾燥収縮ひずみを対策する場合のコンクリート乾燥収縮ひずみを短期に評価する方法を提供する。
【解決手段】コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法は、次の式(1)

により、コンクリート中の骨材の平均吸水率Qave(%)を決定し、コンクリート中のn種類の粗骨材の乾燥収縮ひずみ値を測定し、次の式(2)

により、長期材齢におけるコンクリート乾燥収縮ひずみを評価する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート収縮ひずみの評価方法は、次の式(1)
(但し、上記式(1)中、Vsmは細骨材の絶対容積(L)、Vgnは粗骨材の絶対容積(L)、Qsmは細骨材の吸水率(%)、Qgnは粗骨材の吸水率(%)、mは細骨材の種類の数であり1〜mまでの整数、nは粗骨材の種類の数であり1〜nまでの整数を示す)
により、コンクリート中の骨材の平均吸水率Qave(%)を決定し
コンクリート中のn種類の粗骨材の乾燥収縮ひずみ値(εg1×10−6〜εgn×10−6)を測定し(但し、粗骨材の表面を平坦処理した後にひずみゲージを貼付し、水に粗骨材を浸漬して完全吸水させた後、当該粗骨材を温度20±2℃,湿度60±5%の条件で乾燥させて、前記完全吸水させた時点を起点として、乾燥10日目のひずみ測定値であり、nは粗骨材の種類の数であり1〜nまでの整数を示す)、
次の式(2)
(但し、上記式(2)中、Qave(%)は上記式(1)で得られたコンクリート中の骨材の平均吸水率、εg1(×10−6)〜εgn(×10−6)はコンクリート中のn種類の粗骨材の上記測定した乾燥収縮ひずみ値、X〜Xnは1〜n種類のそれぞれの粗骨材の全粗骨材中に占める容積割合(%)を示す)
により、長期材齢におけるコンクリート乾燥収縮ひずみ(ε×10−6)を評価する、コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法。
【請求項2】
請求項1記載のコンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法において、当該コンクリートは、低減収縮剤を含まず、普通ポルトランドセメントを用いた水セメント質量比45〜55%のコンクリートであることを特徴とする、コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法に関し、特にコンクリートの乾燥収縮に起因して生じるひび割れを制御するために、長期に渡るコンクリートの乾燥収縮による長さ変化率(以下、「乾燥収縮ひずみ」と称す)を短期材齢のコンクリートで、使用する骨材の観点から早期に高精度で評価することができる、コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは乾燥に伴ってその体積を減少させ、かかる現象は乾燥収縮と呼ばれている。コンクリート構造物にかかる乾燥収縮が生じると、ひび割れの発生原因となるため、乾燥収縮ひずみが規制されている。
【0003】
一方、コンクリートの乾燥収縮ひずみを低減する対策としては,収縮低減剤を使用するほか、近年では石灰石骨材のような収縮低減に資する骨材の使用による対策が挙げられる。
また、使用する骨材を選定することの方が、収縮低減剤を添加使用することより、対費用効果が高いといった考えもある。
【0004】
コンクリートの乾燥収縮ひずみの低減対策において、収縮低減剤を使用する場合では、使用する低減収縮剤のカタログ等によって目標とする乾燥収縮ひずみの低減量に見合った使用量を決定することができる。そのため、低減効果を確認するための各収縮ひずみ試験(例えば、JIS A 1129)等を省略することが可能になる。
【0005】
一方、コンクリートの乾燥収縮ひずみを低減するための骨材を選定する場合、使用候補とした骨材の低減効果は未知であるため、乾燥収縮ひずみを確認しなければならない。
しかし、乾燥収縮ひずみは、長期に亘って発現し、その数値が完全に収束するには数年レベルの年月を要する。
【0006】
従って、コンクリートの乾燥収縮ひずみを制御するためには、長期材齢に渡り進行して達する乾燥収縮ひずみを予測評価することが重要であるが、現実には長期の測定データを確認することは困難な状況である。
【0007】
コンクリートの乾燥収縮率(乾燥収縮ひずみ)を測定する長さ変化試験(JIS A 1129)では、一般に材齢7日まで水中養生を行った後乾燥させ、通常6ヶ月程度の期間の測定が必要となる。
一般的なコンクリート工事において、半年以上前にコンクリートの品質確認を行うことは難しく、上述の試験をそのままコンクリート工事のために適用することは現実的ではない。
このため、短期間で得たコンクリートの乾燥収縮のデータから長期材齢での乾燥収縮ひずみを推定するために、種々の推定式が提案されており、乾燥収縮ひずみを規制するための判定は、短期のデータに基づいた推定値が用いられている。
【0008】
日本建築学会「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)」や土木学会「コンクリート標準示方書」では、コンクリートの乾燥収縮ひずみ発現は、長期に亘り最終値に漸近するといった特性上、下記式(3)、式(4)のような関数式で近似して推定している。
【0009】
【数1】
【0010】
【数2】
【0011】
ここで上記式中、ε(t)は材齢t日の乾燥収縮ひずみ(×10−6)、εは乾燥収縮ひずみの最終値(×10−6)、α、β、γ、δは実験定数である。
【0012】
上記式(3)は日本建築学会「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)」、上記式(4)は土木学会「コンクリート標準示方書」が採用しているものであり、上記両式とも乾燥収縮ひずみの膨大なデータに基づき、α=0.16(V/S)1.8(Vはコンクリート試験体の容積(mm)、Sは試験体の表面積(mm)と規定しており、またJIS規格(JIS A 1129)で定められた乾燥収縮ひずみを測定する長さ変化試験ではV/S=22.2mmのため、α=42.4となる)、β=1.4(V/S)−0.18(β=0.8)、γ=0.108、δ=0.56と定めている。
【0013】
日本建築学会「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)」や土木学会「コンクリート標準示方書」では、上記式(3)及び上記式(4)の実験定数を定めることによって、乾燥収縮ひずみの評価式の運用を図っている。
【0014】
上記式(3)及び式(4)に示した近似式に、コンクリートの任意の短期材齢(t)日における乾燥収縮ひずみの具体的測定データ(ε(t)(×10−6))を代入し、乾燥収縮ひずみの最終値(ε)を求めることによって長期的な乾燥収縮ひずみ(ε(t)(×10−6))を評価している。
なお、コンクリートの乾燥収縮ひずみを測定するJIS A 1129に規定される長さ変化試験により、乾燥収縮ひずみの規制値は材齢6ヶ月が対象となっている。
【0015】
乾燥収縮ひずみの試験期間が6ヶ月を必要とすることは、乾燥収縮ひずみ試験に係る労力やコストも大きく、早期評価を実施することができない。
したがって、使用しようとする骨材が数多く存在すると、乾燥収縮ひずみ試験に膨大な時間と労力、更にはコストがかかってしまい、現実的ではないという問題がある。
【0016】
また、コンクリートの乾燥収縮率を推定する方法として、特開2008−8753号公報(特許文献1)には、コンクリート乾燥収縮率の早期推定方法として、コンクリートの乾燥収縮に影響を与える因子を係数として乗じてなる経時変化特性係数から終局乾燥収縮率の1/2の乾燥収縮率に達する乾燥期間算出基準期間を設定し、該乾燥期間算出基準期間と1個の短期乾燥期間測定データとをもとに外挿1次補完係数を求め、前記乾燥期間算出基準期間と外挿1次補完係数とから、前記乾燥期間算出基準期間以後の任意の乾燥期間経過時のコンクリートの乾燥収縮率を推定することを特徴とするコンクリート乾燥収縮率の早期推定方法が提案されている。
【0017】
特許第5246113号公報(特許文献2)には、コンクリート乾燥収縮ひずみを早期に推定するにあたり、次の式(5)
【0018】
【数3】
【0019】
(但し、上記式(5)中、ε(t)は材齢tのコンクリートの乾燥収縮ひずみ(×10−6)、εは該コンクリートの乾燥収縮ひずみの最終値(×10−6)を示し、βは次の式(6)
【0020】
【数4】
【0021】
(但し、上記式(6)中、V及びSはそれぞれコンクリート試験体の容積(mm)及び表面積(mm)を示す)、またωは次の式(7)
【0022】
【数5】
【0023】
(但し、上記式(7)中、Qはコンクリートに含有される細骨材の吸水率(%)、QRSはコンクリートに含有される再生細骨材の吸水率(%)、pRSは全細骨材容積に占める再生細骨材の容積、Qはコンクリートの含有される粗骨材の吸水率(%)、QRGはコンクリートに含有される再生粗骨材の吸水率(%)、pRGは全粗骨材容積に占める再生粗骨材の容積、W/Cは水セメント比(%)、Wは単位水量(t/m)、V及びSはコンクリート試験体の容積(mm)及び表面積(mm)をそれぞれ示す))
を用いて、任意の長期材齢におけるコンクリート乾燥収縮ひずみを推定することを特徴とする、コンクリート収縮ひずみの早期推定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2008−8753号公報
【特許文献2】特許第5246113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、使用する骨材によりコンクリートの乾燥収縮ひずみを対策する場合に、上述した問題点を解消し、使用する骨材の要因を加味したコンクリート乾燥収縮ひずみを短期に評価する方法であって、コンクリートに使用する骨材の平均吸水率と粗骨材の乾燥収縮ひずみ値より、長期材齢におけるコンクリートの乾燥収縮ひずみを、高精度にかつ評価することができる、コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するため、請求項1記載のコンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法は、次の式(1)
【0027】
【数6】
【0028】
(但し、上記式(1)中、Vsmは細骨材の絶対容積(L)、Vgnは粗骨材の絶対容積(L)、Qsmは細骨材の吸水率(%)、Qgnは粗骨材の吸水率(%)、mは細骨材の種類の数であり1〜mまでの整数、nは粗骨材の種類の数であり1〜nまでの整数を示す)
により、コンクリート中の骨材の平均吸水率Qave(%)を決定し、
コンクリート中のn種類の粗骨材の乾燥収縮ひずみ値(εg1×10−6〜εgn×10−6)を測定し(但し、粗骨材の表面を平坦処理した後にひずみゲージを貼付し、水に粗骨材を浸漬して完全吸水させた後、当該粗骨材を温度20±2℃,湿度60±5%の条件で乾燥させて、前記完全吸水させた時点を起点として、乾燥10日目のひずみ測定値であり、nは粗骨材の種類の数であり1〜nまでの整数を示す)、
次の式(2)
【0029】
【数7】
【0030】
(但し、上記式(2)中、Qave(%)は上記式(1)で得られたコンクリート中の骨材の平均吸水率、εg1(×10−6)〜εgn(×10−6)はコンクリート中のn種類の粗骨材の上記測定した乾燥収縮ひずみ値、X〜Xnは1〜n種類のそれぞれの粗骨材の全粗骨材中に占める容積割合(%)を示す)
により、長期材齢におけるコンクリート乾燥収縮ひずみ(ε×10−6)を評価する、コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法である。
【0031】
請求項2記載のコンクリートの乾燥収縮ひずみの評価方法は、請求項1記載のコンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法において、当該コンクリートは、低減収縮剤を含まず、普通ポルトランドセメントを用いた水セメント質量比45〜55%のコンクリートであることを特徴とする、コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明のコンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法は、使用する細骨材及び粗骨材の吸水率(%)と当該粗骨材の乾燥収縮ひずみ実測値を測定することで、長期材齢における乾燥収縮ひずみを高精度かつ早期に評価することが可能となる。
したがって、使用する骨材によるコンクリートの乾燥収縮ひずみの低減効果を確認することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の乾燥収縮ひずみの評価方法による乾燥収縮ひずみの推定値と実測値との相関関係を示す一例の相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明のコンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法について以下に詳細に説明する。
本発明のコンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法は、次の式(1)
【0035】
【数8】
【0036】
(但し、上記式(1)中、Vsmは細骨材の絶対容積(L)、Vgnは粗骨材の絶対容積(L)、Qsmは細骨材の吸水率(%)、Qgnは粗骨材の吸水率(%)、mは細骨材の種類の数であり1〜mまでの整数、nは粗骨材の種類の数であり1〜nまでの整数を示す)
により、コンクリート中の骨材の平均吸水率Qave(%)を決定し、
コンクリート中のn種類の粗骨材の乾燥収縮ひずみ値(εg1×10−6〜εgn×10−6)を測定し(但し、粗骨材の表面を平坦処理した後にひずみゲージを貼付し、水に粗骨材を浸漬して完全吸水させた後、当該粗骨材を温度20±2℃,湿度60±5%の条件で乾燥させて、前記完全吸水させた時点を起点として、乾燥10日目のひずみ測定値であり、nは粗骨材の種類の数であり1〜nまでの整数を示す)、
次の式(2)
【0037】
【数9】
【0038】
(但し、上記式(2)中、Qave(%)は上記式(1)で得られたコンクリート中の骨材の平均吸水率、εg1(×10−6)〜εgn(×10−6)はコンクリート中のn種類の粗骨材の上記測定した乾燥収縮ひずみ値、X〜Xnは1〜n種類のそれぞれの粗骨材の全粗骨材中に占める容積割合(%)を示す)
により、長期材齢におけるコンクリート乾燥収縮ひずみ(ε×10−6)を評価する、コンクリート乾燥収縮ひずみの評価方法である。
【0039】
具体的には、まず、使用する骨材によりコンクリートの乾燥収縮ひずみを低減することを意図するコンクリートに用いる細骨材の吸水率(Qs%)及び粗骨材の吸水率(Qg%)を測定する。
当該吸水率(%)の測定方法は、特に限定されず、任意の測定方法により測定することができるが、JIS A 1109「細骨材の澪都度及び吸水率試験方法」、JIS A 1110「粗骨材の密度及び吸水率試験方法」による測定を例示することができる。
【0040】
また、細骨材及び粗骨材は、それぞれ1種類の細骨材や粗骨材を用いても、2種類以上の細骨材や粗骨材を用いてもよく、その場合には、各細骨材や粗骨材について、吸水率(%)を測定する。
使用する細骨材の種類がm種類、粗骨材の種類がn種類あると、吸水率は細骨材についてm種類(Qs1、Qs・・・・Qs)、粗骨材についてn種類(Qg1、Qg・・・Qg)測定することとなる。
【0041】
また、使用する細骨材と粗骨材の絶対容積(L)を測定する。
絶対容積(L)は、コンクリートの配合に依存して決定されるが、コンクリートの配合は、土木学会コンクリート標準示方書による方法や日本建築学会JASS5による方法等による。
使用する細骨材の種類が種類、粗骨材の種類がn種類とすると、絶対容積は、細骨材についてm種類(Vs、Vs・・・・Vs)、粗骨材についてn種類(Vg、Vg・・・Vg)測定することとなる。
【0042】
次いで、使用する各細骨材及び粗骨材について、上記測定した吸水率と絶対容積を用いて、
下記式(1)によりコンクリート中の骨材の平均吸水率(Qave%)を決定する。
【0043】
【数10】
【0044】
上記式(1)中、Vsmは細骨材の絶対容積(L)、Vgnは粗骨材の絶対容積(L)、Qsmは細骨材の吸水率(%)、Qgnは粗骨材の吸水率(%)、mは細骨材の種類の数であり1〜mまでの整数、nは粗骨材の種類の数であり1〜nまでの整数を示す。
【0045】
また、n種類の粗骨材の乾燥収縮ひずみ値(εg1×10−6〜εgn×10−6)を測定する。
各粗骨材の乾燥収縮ひずみ(εg1×10−6〜εgn×10−6)の測定方法は、特に限定されず、例えば、20mm程度の粗骨材の表面を平坦処理した後にひずみゲージを貼付し、水に粗骨材を浸漬するが、当該粗骨材が水を吸水して膨張する膨張量が安定するまで浸漬させて完全に吸水後(約10日程度)、当該粗骨材を温度20±2℃,湿度60±5%の条件で乾燥させて、乾燥収縮ひずみを乾燥開始から連続的に測定する。かかる方法による測定期間は平坦処理等の前処理も含めて約3週間程度(吸水期間10日、乾燥期間10日)である。粗骨材の乾燥収縮ひずみ(ε×10−6)は、前記完全吸水させた時点(例えば吸水10日目)を起点として、乾燥10日目のひずみ値とすることができる。
なお各種類の粗骨材に関する測定数は5〜10個とし,当該粗骨材の乾燥収縮ひずみ(ε×10−6)はこれら平均値とする。
【0046】
次いで、上記測定した平均吸水率と粗骨材の乾燥収縮ひずみ値を用いて、下記式(2)によりコンクリートの乾燥収縮ひずみ(ε)値を決定することができる。
【0047】
【数11】
【0048】
上記式(2)中、Qave(%)は上記式(1)で得られたコンクリート中の骨材の平均吸水率、εg1(×10−6)〜εgn(×10−6)はコンクリート中のn種類の粗骨材の上記測定した乾燥収縮ひずみ値、X〜Xnは1〜n種類のそれぞれの粗骨材の全粗骨材中に占める容積割合(%)を示す。
【0049】
また、対象となるコンクリートに用いられるセメントや水/セメント質量比は、特に限定されないが、セメントとしては、特に限定されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の各種混合セメント等を例示することができ、普通ポルトランドセメントを好ましく用いることができえる。
また、また水/セメント質量比は45〜55%であることが好ましい。
更に、本発明の乾燥収縮ひずみの評価方法は、乾燥収縮低減作用を有する混和剤である乾燥低減収縮剤を含まないコンクリートに適用することができる。
【実施例】
【0050】
本発明による乾燥収縮ひずみの評価方法を検証するため、合計23種類のコンクリートを調製した。
各コンクリートの調製に用いたセメントは普通ポルトランド(住友大阪セメント株式会社製)であり、水は水道水を用いた。
【0051】
下記表1に示す配合割合(水セメント質量比、単位水量、細骨材及び粗骨材の吸水率及び容積比率)で、JIS規格(JIS A 1129)に準じて各コンクリート試験体No.1〜23を作製した。各コンクリートには、乾燥収低減剤は含まれていない。
なお、表1中の細骨材の吸水率(Qsm%)はJIS A 1109「細骨材の密度及び吸水率試験方法」に準じて、また粗骨材の吸水率(Qgn%)はJIS A 1110「粗骨材の密度及び吸水率試験方法」に準じて測定した値である。また、粗骨材の乾燥収縮ひずみ(ε×10−6)は、上記したように、20mm程度の粗骨材の表面を平坦処理した後にひずみゲージを貼付し、水に粗骨材を浸漬(吸水期間10日)し、当該粗骨材を温度20±2℃,湿度60±5%の条件で乾燥させて、前記完全吸水させた時点(例えば吸水10日目)を起点として、乾燥10日目のひずみ値とした。
なお1種類の粗骨材に関する測定数は5〜10個とし,当該粗骨材の乾燥収縮ひずみ(ε×10−6)はこれら平均値とした。
【0052】
各コンクリートNo.1〜23の乾燥収縮ひずみ値を、以下に評価する。
細骨材は2種類(s、s)を使用し、粗骨材は1種類(g)を使用した。
表1中の各コンクリートの細骨材1(s)、細骨材2(s)及び粗骨材(g)の各吸水率(Qs、Qs、Qg)及び容積比率の値より、下記式(1)を用いて、全骨材の平均吸水率Qave(%)を決定する。
なお、表1中の細骨材の容積比率、粗骨材の容積比率と絶対容積(L)との関係は以下の式(8)で示される。
ΣVsn+ΣVgn=1=L・・・(8)
(但し、上記式(8)中、nは1及び2、nは1である)。
【0053】
【数12】
【0054】
但し、上記式(1)中、Vsmは細骨材の絶対容積(L)、Vgnは粗骨材の絶対容積(L)、Qsmは細骨材の吸水率(%)、Qgnは粗骨材の吸水率(%)、mは使用する細骨材の種類の数であり1及び2、nは使用する粗骨材の種類の数であり1を示す。
【0055】
次いで、上記式(1)により決定された各コンクリート中の全骨材の平均吸水率Qave(%)と表1に示されている粗骨材(g)の乾燥収縮ひずみ値(ε×10−6)から、次の式(2’)を用いて、各コンクリートの乾燥収縮ひずみ評価値(ε×10−6)を決定する。
【0056】
【数13】
【0057】
上記評価を、各コンクリートNo.1〜23まで実施し、得られた各コンクリートの乾燥収縮ひずみ評価値を、表1に示す。
また、各コンクリートの乾燥収縮ひずみ実測値を測定し、得られた実測値も表1に示す。
なお、表1中のコンクリートの乾燥収縮ひずみ実測値は、JIS A 1129−2に準じて材齢182日で測定した乾燥収縮ひずみ値の測定値である。
【0058】
【表1】
【0059】
上記各コンクリート乾燥収縮ひずみの実測値と評価値との関係を図1に示す。
表1及び図1より、コンクリートの乾燥収縮ひずみの評価値と実測値とは概ね一致していることがわかる。また、評価値と実測値との平均誤差は15×10−6であり、本発明の評価方法により、小さい推定誤差で長期の乾燥収縮ひずみを高精度に推定評価することができる。
従って、任意の長期材齢におけるコンクリートの乾燥収縮ひずみを高精度かつ早期に判定することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、コンクリートのひび割れに関連する乾燥収縮ひずみを、骨材の種類に応じて、早期かつ正確に推定評価するのに適用することができる。
図1