【実施例】
【0063】
以下、実施例1〜8及び比較例1〜4により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
凝集粒子の合成を行った。
ここでは、まず、Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Fe源として硫酸鉄(II)(FeSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Fe:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、170℃にて1時間、水熱合成を行った。
【0065】
この反応後に室温になるまで冷却し、沈殿しているケーキ状の反応生成物を得た。
このケーキ状物質を70℃にて2時間真空乾燥させ、乾燥粉体を得た。
この乾燥粉体から若干量の試料を採取し、この試料をX線回折法にて同定したところ、単相のLiFePO
4が生成していることが確認された。
この乾燥粉体を走査型電子顕微鏡にて観察し、無作為に500個の粒子を選び出して、各々の一次粒子径を測定し、平均一次粒子径を算出した。その結果、平均一次粒子径は15nmであった。
【0066】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液と、凝集剤としてゼラチン2質量部を、純水中に投入し、撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が3μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
【0067】
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行うことにより、粒子表面に炭素質被膜を形成するとともに、これらの粒子を凝集してなる凝集粒子を得た。
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径(平均二次粒子径)、比(D30/D70)、体積密度、比表面積、タップ密度、圧粉体密度、炭素量、炭素質被膜の被覆率、凝集粒子の崩れ易さ、をそれぞれ評価した。
評価方法は、次のとおりである。
【0068】
(1)平均粒子径及び比(D30/D70)
レーザー式回折粒度分布測定装置 SALD−1000(島津製作所(株)社製)を用いて測定した。
(2)体積密度
水銀ポロシメーターを用いて、凝集粒子全体の質量と、凝集粒子の粒子間隙の体積とを測定し、これらの質量及び体積を基に凝集粒子の体積密度(%)を算出した。
(3)比表面積
比表面積計 BELSORP−mini(日本ベル社製)を用いて、凝集粒子の比表面積を、窒素(N
2)吸着によるBET法により測定した。
【0069】
(4)タップ密度
凝集粒子から所定の質量の試料を採取し、この試料を容積10mLのガラス製のメスシリンダーに投入し、この試料をメスシリンダーとともに振動させ、この試料の容積が変化しなくなった時点で試料の容積を測定し、この試料の質量を容積で除した値をタップ密度とした。
(5)圧粉体密度
所定量の凝集粒子を0.38t/cm
2の圧力にて成形し、得られた成形体の質量と容積から圧粉体密度を算出した。
(6)炭素量
凝集粒子の炭素量を、炭素分析計を用いて測定した。
【0070】
(7)炭素質被膜の被覆率
凝集粒子の炭素質被膜を、透過型電子顕微鏡(TEM)及びエネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて観察し、凝集粒子の表面のうち炭素質被膜が覆っている部分の割合を算出し、被覆率とした。
(8)凝集粒子の崩れ易さ
凝集粒子の崩れ易さを、圧粉体密度/タップ密度比により評価した。
ここでは、圧粉体密度/タップ密度比が1.6以上となったものを崩れ易い(○)とし、圧粉体密度/タップ密度比が1.6未満となったものを崩れ難い(×)とした。
【0071】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は1.20μm、比(D30/D70)は0.23、体積密度は71.6%、比表面積は14.87m
2/g、タップ密度は1.62g/cm
3、圧粉体密度は2.6g/cm
3、炭素量は4.87%、凝集粒子の崩れ易さは「○」であった。
これらの評価結果を表1に示す。また、凝集粒子の粒度分布及び累積粒度分布を
図1に示す。
【0072】
(実施例2)
Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Fe源として硫酸鉄(II)(FeSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Fe:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、170℃にて5時間、水熱合成を行った。得られたケーキ状の反応生成物の平均一次粒子径は98nmであった。
【0073】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液と、凝集剤としてゼラチン2質量部を、純水中に投入し、撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が5μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行い、実施例2の凝集粒子を得た。
【0074】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は7.50μm、比(D30/D70)は0.32、体積密度は70.3%、比表面積は8.99m
2/g、タップ密度は1.23g/cm
3、圧粉体密度は2.2g/cm
3、炭素量は1.04%、凝集粒子の崩れ易さは「○」であった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0075】
(実施例3)
Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Fe源として硫酸鉄(II)(FeSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Fe:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、170℃にて10時間、水熱合成を行った。得られたケーキ状の反応生成物の平均一次粒子径は130nmであった。
【0076】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液と、凝集剤としてゼラチン2質量部を、純水中に投入し、撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が10μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行い、実施例3の凝集粒子を得た。
【0077】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は10.50μm、比(D30/D70)は0.40、体積密度は72.0%、比表面積は7.29m
2/g、タップ密度は1.34g/cm
3、圧粉体密度は2.2g/cm
3、炭素量は2.68%、凝集粒子の崩れ易さは「○」であった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0078】
(実施例4)
Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Fe源として硫酸鉄(II)(FeSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Fe:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。得られたケーキ状の反応生成物の平均一次粒子径は560nmであった。
【0079】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液と、凝集剤としてゼラチン2質量部を、純水中に投入し、撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が50μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行い、実施例4の凝集粒子を得た。
【0080】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は52.30μm、比(D30/D70)は0.37、体積密度は58.5%、比表面積は7.65m
2/g、タップ密度は1.32g/cm
3、圧粉体密度は2.4g/cm
3、炭素量は1.94%、凝集粒子の崩れ易さは「○」であった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0081】
(実施例5)
Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Fe源として硫酸鉄(II)(FeSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Fe:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、200℃にて5時間、水熱合成を行った。得られたケーキ状の反応生成物の平均一次粒子径は920nmであった。
【0082】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液と、凝集剤としてゼラチン2質量部を、純水中に投入し、撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が100μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行い、実施例5の凝集粒子を得た。
【0083】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は81.60μm、比(D30/D70)は0.41、体積密度は64.5%、比表面積は4.58m
2/g、タップ密度は1.02g/cm
3、圧粉体密度は1.7g/cm
3、炭素量は0.98%、凝集粒子の崩れ易さは「○」であった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0084】
(実施例6)
Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Mn源として硫酸マンガン(II)(MnSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Mn:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、170℃にて1時間、水熱合成を行った。得られたケーキ状の反応生成物の平均一次粒子径は21nmであった。
【0085】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液と、凝集剤としてゼラチン2質量部を、純水中に投入し、撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が5μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行い、実施例6の凝集粒子を得た。
【0086】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は3.55μm、比(D30/D70)は0.22、体積密度は72.2%、比表面積は30.12m
2/g、タップ密度は1.44g/cm
3、圧粉体密度は2.5g/cm
3、炭素量は1.96%、凝集粒子の崩れ易さは「○」であった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0087】
(実施例7)
Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Mn源として硫酸マンガン(II)(MnSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Mn:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、170℃にて5時間、水熱合成を行った。得られたケーキ状の反応生成物の平均一次粒子径は120nmであった。
【0088】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液と、凝集剤としてゼラチン2質量部を、純水中に投入し、撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が20μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行い、実施例7の凝集粒子を得た。
【0089】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は20.80μm、比(D30/D70)は0.27、体積密度は73.1%、比表面積は52.30m
2/g、タップ密度は1.65g/cm
3、圧粉体密度は2.7g/cm
3、炭素量は2.73%、凝集粒子の崩れ易さは「○」であった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0090】
(実施例8)
Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Mn源として硫酸マンガン(II)(MnSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Mn:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。得られたケーキ状の反応生成物の平均一次粒子径は720nmであった。
【0091】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液と、凝集剤としてゼラチン2質量部を、純水中に投入し、撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が100μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行い、実施例8の凝集粒子を得た。
【0092】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は92.10μm、比(D30/D70)は0.36、体積密度は62.0%、比表面積は20.12m
2/g、タップ密度は1.10g/cm
3、圧粉体密度は2.0g/cm
3、炭素量は1.20%、凝集粒子の崩れ易さは「○」であった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0093】
(比較例1)
Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Fe源として硫酸鉄(II)(FeSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Fe:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、170℃にて0.5時間、水熱合成を行った。得られたケーキ状の反応生成物の平均一次粒子径は7nmであった。
【0094】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液とを、純水中に投入し撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。この懸濁したスラリーには凝集剤を添加しなかった。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が1μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行い、比較例1の凝集粒子を得た。
【0095】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は0.32μm、比(D30/D70)は0.63、体積密度は48.3%、比表面積は18.90m
2/g、タップ密度は1.76g/cm
3、圧粉体密度は2.6g/cm
3、炭素量は6.26%、凝集粒子の崩れ易さは「×」であった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0096】
(比較例2)
Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Fe源として硫酸鉄(II)(FeSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Fe:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、200℃にて10時間、水熱合成を行った。得られたケーキ状の反応生成物の平均一次粒子径は1180nmであった。
【0097】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液とを、純水中に投入し撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。この懸濁したスラリーには凝集剤を添加しなかった。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が100μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行い、比較例2の凝集粒子を得た。
【0098】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は121.80μm、比(D30/D70)は0.19、体積密度は71.1%、比表面積は3.79m
2/g、タップ密度は0.98g/cm
3、圧粉体密度は1.3g/cm
3、炭素量は0.31%、凝集粒子の崩れ易さは「×」であった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0099】
(比較例3)
Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Mn源として硫酸マンガン(II)(MnSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Mn:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、170℃にて0.5時間、水熱合成を行った。得られたケーキ状の反応生成物の平均一次粒子径は8nmであった。
【0100】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液を、純水中に投入し撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。この懸濁したスラリーには凝集剤を添加しなかった。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が1μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行い、比較例3の凝集粒子を得た。
【0101】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は0.88μm、比(D30/D70)は0.79、体積密度は42.6%、比表面積は20.90m
2/g、タップ密度は1.79g/cm
3、圧粉体密度は2.7g/cm
3、炭素量は5.91%、凝集粒子の崩れ易さは「×」であった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0102】
(比較例4)
Li源として酢酸リチウム(LiCH
3COO)を、Mn源として硫酸マンガン(II)(MnSO
4)を、P源としてオルトリン酸(H
3PO
4)を、それぞれ用い、これらをモル比でLi:Mn:P=1:1:1となるように、純水に溶解して、0.1モル/kgの原料スラリーを作製して耐圧容器に収納し、200℃にて10時間、水熱合成を行った。得られたケーキ状の反応生成物の平均一次粒子径は1240nmであった。
【0103】
次いで、この反応生成物93質量部と、有機化合物として固形分換算で5質量部となるように調製したポリビニルアルコール10%水溶液を、純水中に投入し撹拌することにより、懸濁したスラリーを得た。この懸濁したスラリーには凝集剤を添加しなかった。
次いで、このスラリーを、スプレードライヤーを用いて、100℃の大気雰囲気下にて、凝集粒子径が100μm程度になるようにスラリー濃度および送液速度を調整し、乾燥造粒した。乾燥造粒後の粉体は球形であった。
次いで、この粉体を、窒素ガス雰囲気中、600℃にて1時間、焼成を行い、比較例4の凝集粒子を得た。
【0104】
このようにして得られた凝集粒子の平均粒子径は132.50μm、比(D30/D70)は0.15、体積密度は41.2%、比表面積は3.24m
2/g、タップ密度は0.88g/cm
3、圧粉体密度は1.3g/cm
3、炭素量は0.38%、凝集粒子の崩れ易さは「×」であった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
(リチウムイオン電池の作製)
実施例1〜8及び比較例1〜4各々の正極を作製した。
ここでは、実施例1〜8及び比較例1〜4各々にて得られた凝集粒子をリチウムイオン電池用電極材料とし、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、これらを混合し、実施例1〜8及び比較例1〜4各々のペーストを作製した。なお、ペースト中の質量比、リチウムイオン電池用電極材料:AB:PVdFは85:10:5であった。
次いで、これらのペーストを厚み30μmのアルミニウム(Al)箔上に、300μm程度の厚みで塗布し、乾燥した。その後、40MPaの圧力にて圧密し、100μm程度の厚みの正極とした。
【0107】
次いで、この正極を成形機を用いて面積が2cm
2の円板状に打ち抜き、真空乾燥後、乾燥Ar雰囲気下にてステンレススチール(SUS)製の2032コイン型セルを用いて、実施例1〜8及び比較例1〜4各々のリチウムイオン電池を作製した。なお、負極には金属Liを、セパレーターには多孔質ボリプロピレン膜を、電解質溶液には1MのLiPF
6溶液を、それぞれ用いた。このLiPF
6溶液の溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの比が1:1のものを用いた。
【0108】
「電池特性試験」
実施例1〜8及び比較例1〜4各々のリチウムイオン電池の電池特性試験を、環境温度25℃、充電電流1Cで10秒間充電し、その後10分間休止し、次いで、0.1C放電を行ったときの放電容量(0.1C放電容量)を測定し、さらに、第2サイクルとして、3C充電を10秒間行った後、10分休止し、次いで、3C放電を行ったときの放電容量(3C放電容量)を測定した。
ここでは、3C放電容量の0.1C放電容量に対する比(3C放電容量/0.1C放電容量)が83%以上を「良品」とし、83%未満を「不良品」とした。
実施例1〜8及び比較例1〜4各々のリチウムイオン電池の放電容量を表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
これらの評価結果によれば、実施例1〜8では、比(D30/D70)が0.2以上かつ0.48以下、タップ密度が1.0g/cm
3以上かつ1.7g/cm
3以下、圧粉体密度が真密度の50%以上かつ80%以下であることから、0.1C放電容量及び3C放電容量共に優れていることが分かった。
一方、比較例1〜4では、比(D30/D70)が0.20以上かつ0.48以下、タップ密度が1.0g/cm
3以上かつ1.7g/cm
3以下、圧粉体密度が真密度の50%以上かつ75%以下のいずれも満足していないことから、0.1C放電容量及び3C放電容量共に、実施例1〜8と比べて劣っていることが分かった。